JP4449873B2 - 車両の発進時段差乗り越え検出装置および段差乗り越え発進時駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
かように段差を乗り越えながらの車両発進時においては、段差乗り越えを可能にするために、段差乗り越え発進であることを検出することと、段差乗り越えが可能になるような駆動力を増大させる制御が要求される。
ハイブリッド車両にあっては、段差乗り越え時にアクセルペダルの踏み込みに伴うエンジン回転上昇により生起されるトルクコンバータのトルク増大機能を利用して段差乗り越えを可能にしたり、段差乗り越え後にアクセルペダルの踏み戻しに伴うエンジン回転低下に起因したトルクコンバータのトルク増大解除による車両突き出し感防止効果を期待することができない。
先ず、前提となる車両を説明するに、これは、
動力源としてモータを具え、モータからの動力で発進を行うようにしたものである。
段差検知手段は、車両の発進時における駆動力および車輪速から、駆動力に見合う車輪速の上昇がない状態をもって、車輪が段差に遭遇したと判定する。
乗り越え中断検知手段は、段差検知手段により車輪が段差に遭遇したと判定した後において、段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知する。
再進入検知手段は、乗り越え中断検知手段により段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知した後に、車輪が再度段差に接近するのを検知して段差乗り越えと判定する。
図1は、本発明の一実施例になる発進時段差乗り越え検出装置および段差乗り越え発進時駆動力制御装置を具えたフロントエンジン・フロントホイールドライブ式(前輪駆動式)ハイブリッド車両のパワートレーンを、その制御系とともに示す。
これがため、単純遊星歯車組4を可とする差動装置を設け、単純遊星歯車組4はサンギヤ4sと、リングギヤ4rと、これらに噛合した複数個のピニオン4pを回転自在に支持するキャリア4cとで構成する。
キャリア4cへのエンジン回転は、一方でサンギヤ4s、および、入力軸5上で回転する中空軸6を経てジェネレータ(発電機)7に伝達し、他方でリングギヤ4r、スプロケット8、チェーン9、終減速機10およびディファレンシャルギヤ装置11を経て左右前輪3に伝達するようになす。
なお車両の発進時は、エンジン1を停止し、モータ2からの動力のみがリングギヤ4rから、スプロケット8、チェーン9、終減速機10、およびディファレンシャルギヤ装置11を経て左右前輪3に伝達されて、当該発進を行うものとする。
エンジン1の要求負荷状態を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ14からの信号と、
エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ15からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ16からの信号と、
バッテリ12の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ17からの信号と、
前輪3の回転速度ωを検出する車輪速センサ18からの信号とを入力する。
目標エンジントルクtTeはエンジンコントローラ19に供給され、このエンジンコントローラ19は、エンジントルクが目標エンジントルクtTeとなるようエンジン1を制御する。
そして、目標モータトルクtTmおよび発電負荷tTgはモータ/ジェネレータコントローラ20に供給される。
他方でモータ2のトルクが目標モータトルクtTmとなるよう、ジェネレータ7からの電力および/またはバッテリ12からの電力をインバータ21を介してモータ2に供給する。
図3のステップS1(図2の段差検知および段差量推定部31)においては、駆動力Fを車速VSPおよびアクセル開度APO(エンジン負荷)から推定すると共に、センサ16により検出した車速VSPを読み込み、これら駆動力Fおよび車速VSPから、駆動力Fに見合う車速VSPの上昇がない状態をもって前輪3が段差に遭遇したと判定する。
図3のステップS1で当該段差検知がなされない間は、制御を元に戻して、ステップS1でのチェックを継続する。
車両重量をW、車輪半径をR、路面勾配をθ、走行抵抗をDとしたとき、これらと、上記のように推定した駆動力Fと、センサ18で検出した車輪速ωとを用いた、次式で表される運動方程式
W・R(dω/dt)=F−W・sinθ−D
の演算により、上式における勾配抵抗を表したW・sinθを求める。
従って、上式の演算により求めた勾配抵抗W・sinθの大きさが段差の大きさと相関関係にあり、この勾配抵抗W・sinθから段差の大きさを推定する。
よって、図3のステップS1およびステップS2(図2の段差検知および段差量推定部31)は、本発明における段差検知手段に相当する。
次のステップS4(図2の段差位置検知/記憶部32)においては、アクセル開度APOを低下させるとか、車両の進行方向(車輪3の回転方向や、走行方向レンジ)が反転したとか、段差乗り越えを諦めたことを示す運転状態があったか否かをチェックし、かかる運転状態がなければ段差乗り越えが可能であって駆動力増大制御が不要であるから制御をステップS1に戻す。
従って、図3におけるステップS3〜S5(図2の段差位置検知/記憶部32)は、本発明における乗り越え中断検知手段に相当する。
次のステップS7(図2の段差乗り越え判定部33)においては、この再乗り越え待ちタイマTMが設定時間を示すようになる前に車輪3が再び段差に接近する再進入が行われたか否かにより、段差乗り越えがあるか否かを判定する。
従って、ステップS6,S7(図2の段差乗り越え判定部33)は、本発明における再進入検知手段に相当する。
更に、車輪が段差位置に達した時に駆動力をこの段差乗り越え要求駆動力したのでは、駆動力の急変を生じて滑らかに段差を乗り越えることができないことから、滑らかな段差乗り越えを狙って段差乗り越え要求駆動力を図5に細い実線で示すように段差の手前位置から最終値に向かって徐々に漸増させるようにすることができる。
また、このとき車輪速ωの変化をみて車輪速ωが大きく低下したら段差乗り越え要求駆動力を更に上乗せするフィードバック制御も組み合わせて制御性を向上させることもできる。
図3のステップS10(図2の慣性力補正部35)においては、運転者のアクセル繰作で段差遭遇時に車速が発生している場合は、段差乗り越え要求駆動力を図5に太い実線(慣性力を−補正)で示すごとく、車速VSPに応じた車両の慣性力分だけ低下させることにより駆動力が惰性力により過大になるのを防止する。
段差乗り越えが終了していなければ、制御をステップS14(図2の駆動力指令値決定部37)へスキップさせて、上記のごとくに決定した段差乗り越え要求駆動力と、図2の目標駆動力生成部36で決定した、アクセル開度APOおよび車輪速ωに応じた運転操作要求駆動力tFoとの大きい方を選択して駆動力指令値tFとし、統合コントローラ13はこの駆動力指令値tFが得られるような目標モータトルクtTmをモータ/ジェネレータコントローラ20へ出力する。
なお換言すれば、上記の駆動力指令値tFは、段差乗り越え要求駆動力および運転操作要求駆動力tFoのうち、大きい方(段差乗り越え制御中は段差乗り越え要求駆動力)に対して不足する駆動力分(段差乗り越え要求駆動力−運転操作要求駆動力tFo)だけ駆動力を増大したものに相当する。
かかる駆動力の上乗せにより、ハイブリッド車両を確実に段差乗り越え発進させることができる。
そして統合コントローラ13は、この求め直した駆動力指令値tFが得られるような目標モータトルクtTmをモータ/ジェネレータコントローラ20へ出力する。
これにより段差乗り越え終了判定以後は、駆動力が段差乗り越え要求駆動力から運転操作要求駆動力に向け漸減され、駆動力が運転操作要求駆動力に一致したところで段差乗り越え発進時駆動力制御を終了することとなり、段差乗り越え終了後に車両の突き出し感が発生するのを確実に防止することができる。
アクセル開度APOを図示のごとくに開いて発進を行うが、アクセル開度APOに対応した駆動力Fに見合う車輪速ωの上昇がないと判定する瞬時t1に、段差検知信号が発生して段差の検知が行われる。
これにより段差乗り越えが終了して車輪速ωが急上昇する瞬時t3に、段差乗り越え終了判定がなされる。
その後は、ハッチングを付して示す駆動力上乗せ量が漸減されて、駆動力Fが徐々にアクセル開度APO対応の運転操作要求駆動力に戻り、戻りきった瞬時t4に段差乗り越え制御信号を消失させて全ての制御を終了する。
駆動力Fに見合う車輪速ωの上昇がない状態をもって車輪3が段差に遭遇したと判定し、その後に、段差乗り越えを一旦諦めたことを示す運転状態があったのを検知し、更にその後に、車輪が再度段差に接近するのを検知して段差乗り越えと判定するため、
この発進時段差乗り越え検出に当たってエンジン回転数を用いないこととなり、発進時にエンジンを停止させておくハイブリッド車両であっても、その段差乗り越え発進を確実に検出することができる。
当該運転状態を発進時段差乗り越え検出に用いることとなり、
ハイブリッド車両が障害物に接触している状態などのように、段差乗り越え以外の状態を段差乗り越えと誤判定するのを回避することができ、段差乗り越え検出の精度を高めることができる。
上記の発進時段差乗り越え検出時に、モータから車輪への駆動力を段差の大きさに応じて制御するよう構成したため、
トルクコンバータを伝動系に有しないハイブリッド車両であっても、アクセルペダル踏み込み量を極端に大きくすることなく段差乗り越え発進が可能であると共に、段差乗り越え後アクセルペダルを、それほど大急ぎで、また大きく踏み戻さなくても、車両が突き出されるような感じを生ずることがなくなり、これらにより、ハイブリッド車両の段差乗り越え発進時における運転操作性を改善することができる。
段差乗り越えを諦めた時のデータを利用して段差の大きさを知ることができ、段差乗り越え時の駆動力制御を正確に、且つ、高応答に実行することができる。
この記憶した段差位置への車輪の接近を検知して、車輪が再度段差に接近し段差乗り越えすると判定するため、
段差乗り越えを諦めた時のデータを利用して段差乗り越え判定を行い得ることとなり、段差乗り越え判定を正確に、且つ、高応答に行うことができる。
また、段差乗り越え中に車輪速が低下したら駆動力を増大させるため、駆動力不足により段差乗り越えが不能になる事態を生ずることがなく、滑らかな段差乗り越えを実現することができる。
段差が大きくても、駆動力不足により段差を乗り越えられないということがなくて、確実に段差を乗り越えることができる。
運転者が自分で段差乗り越えに必要な駆動力を指令している間は、これを優先させて運転操作要求駆動力に任せることとなり、運転操作要求駆動力では駆動力不足である場合のみ前記の駆動力制御を実行させて、運転者の運転操作による意志を忠実に駆動力制御に反映させることができる。
また、駆動力Fに見合う車輪速ωの上昇が発生した状態をもって、車輪が段差乗り越えを終了したと判定するため、この判定を簡単、且つ、確実に行うことができる。
段差乗り越え終了後における駆動力の復帰が滑らかになり、ショックや違和感が生ずるのを防止することができる。
2 モータ
3 前輪(駆動輪)
4 単純遊星歯車組
5 入力軸
6 中空軸
7 ジェネレータ
8 スプロケット
9 チェーン
10 終減速機
11 ディファレンシャルギヤ装置
12 バッテリ
13 統合コントローラ
14 アクセル開度センサ
15 エンジン回転センサ
16 車速センサ
17 バッテリ蓄電状態センサ
18 車輪速センサ
19 エンジンコントローラ
20 モータ/ジェネレータコントローラ
21 インバータ
31 段差検知および段差量推定部
32 段差位置検知/記憶部
33 段差乗り越え判定部
34 段差乗り越え要求駆動力演算部
35 慣性力補正部
36 目標駆動力生成部
37 駆動力指令値決定部
Claims (15)
- 動力源としてモータを具え、モータからの動力で発進を行うようにした車両において、
車両の発進時における駆動力および車輪速から、駆動力に見合う車輪速の上昇がない状態をもって、車輪が段差に遭遇したと判定する段差検知手段と、
前記段差検知手段により車輪が段差に遭遇したと判定した後において、段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知する乗り越え中断検知手段と、
前記乗り越え中断検知手段により段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知した後に、車輪が再度段差に接近するのを検知して段差乗り越えと判定する再進入検知手段とを具備してなることを特徴とする車両の発進時段差乗り越え検出装置。 - 請求項1に記載の装置において、
前記乗り越え中断検知手段は、段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知している間、段差遭遇位置からの車輪速の積算により求めた段差から車輪までの距離と、操舵情報とをもとに、車輪に対する段差の相対位置を記憶するものであり、
前記再進入検知手段は、この記憶した段差位置への車輪の接近を検知して、車輪が再度段差に接近し段差乗り越えすると判定するものであることを特徴とする車両の発進時段差乗り越え検出装置。 - 請求項2に記載の装置において、
前記段差検知手段は、駆動力に見合う車輪速の上昇が発生した状態をもって、車輪が段差乗り越えを終了したと判定するものであることを特徴とする車両の発進時段差乗り越え検出装置。 - 車両が車外監視手段を具えたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置にお
いて、
前記段差検知手段は、車外監視手段をも用いて前記段差遭遇判定を行うものであることを特徴とする車両の発進時段差乗り越え検出装置。 - 動力源としてモータを具え、モータからの動力で発進を行うようにした車両において、
車両の発進時における駆動力および車輪速から、駆動力に見合う車輪速の上昇がない状態をもって、車輪が段差に遭遇したと判定する段差検知手段と、
前記段差検知手段により車輪が段差に遭遇したと判定した後において、段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知する乗り越え中断検知手段と、
前記乗り越え中断検知手段により段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知した後に、車輪が再度段差に接近するのを検知して段差乗り越えと判定する再進入検知手段と、
前記再進入検知手段により段差乗り越えと判定するとき、前記モータから車輪への駆動力を段差の大きさに応じて制御する駆動力制御手段とを具備してなることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5に記載の装置において、
前記段差検知手段は、前記段差検知時の駆動力に対する車輪速の変化量をもとに、この変化量が小さいほど前記段差が大きいと判定して、段差量の検出をも行うものであり、
前記駆動力制御手段は、この検出した段差の大きさに応じて前記駆動力を制御するものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5又は6に記載の装置において、
前記乗り越え中断検知手段は、段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知している間、段差遭遇位置からの車輪速の積算により求めた段差から車輪までの距離と、操舵情報とをもとに、車輪に対する段差の相対位置を記憶するものであり、
前記再進入検知手段は、この記憶した段差位置への車輪の接近を検知して、車輪が再度段差に接近し段差乗り越えすると判定するものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5又は6に記載の装置において、
前記段差検知手段は、前記車両発進時の駆動力に対する車輪速の変化量をもとに、この変化量が大きいほど前記段差が大きいと判定して、段差量の検出をも行うものであり、
前記乗り越え中断検知手段は、段差乗り越えを中断したことを示す運転状態があったのを検知している間、段差遭遇位置からの車輪速の積算により求めた段差から車輪までの距離と、操舵情報とをもとに、車輪に対する段差の相対位置を記憶するものであり、
前記駆動力制御手段は、前記段差検知手段により検出した段差の大きさ、および、前記乗り越え中断検知手段により記憶した段差位置にもとづき、車輪が滑らかに段差を乗り越えるよう前記駆動力を制御するものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5〜8のいずれか1項に記載の装置において、
前記駆動力制御手段は、段差乗り越え中に車輪速が低下したら前記駆動力を増大させるものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5〜9のいずれか1項に記載の装置において、
前記段差検知手段は、前記車両発進時の駆動力に対する車輪速の変化量をもとに、この変化量が大きいほど前記段差が大きいと判定して、段差量の検出をも行うものであり、
前記駆動力制御手段は、該段差の大きさが最大駆動力のもとでも乗り越えられないと判定する場合、段差遭遇前より前記駆動力を増大させて惰性力により段差乗り越えを可能にするものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5〜10のいずれか1項に記載の装置において、
前記駆動力制御手段は、段差乗り越えに必要な段差乗り越え要求駆動力、および、運転操作に対応した運転操作要求駆動力のうち、大きい方に対して不足する駆動力分だけ駆動力を増大するものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記駆動力制御手段は、車輪が段差に遭遇する前における車両の慣性力分だけ駆動力を低下させるものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5〜12のいずれか1項に記載の装置において、
前記段差検知手段は、駆動力に見合う車輪速の上昇が発生した状態をもって、車輪が段差乗り越えを終了したと判定するものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項5〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記駆動力制御手段は、前記段差検知手段による前記段差乗り越え終了判定時より、駆動力を運転操作に対応した運転操作要求駆動力に向け徐々に低下させるものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 車両が車外監視手段を具えたものである、請求項5〜14のいずれか1項に記載の装置において、
前記段差検知手段は、車外監視手段をも用いて前記段差遭遇判定を行うものであることを特徴とする車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。
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