JP4590767B2 - 自動変速機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力軸に連結された減速用複式遊星歯車装置及び変速用複式遊星歯車装置の要素に連結されたクラッチ及びブレーキを係脱して前記入力軸の回転を複数段に変速して出力軸に伝達する自動変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
サンギヤ、該サンギヤに噛合するロングピニオンと該ロングピニオンに噛合する中間ピニオンとを支承するキャリヤ、前記ロングピニオンに噛合する第2リングギヤ及び前記中間ピニオンに噛合する第1リングギヤを有する減速用複式遊星歯車装置を設け、該減速用複式遊星歯車装置の第2リングギヤを入力軸に連結し、サンギヤ及び第1リングギヤを第1、第2ブレーキに夫々連結するとともに、第1クラッチにより相互に係脱可能に連結し、第1及び第2遊星歯車機構で変速用複式遊星歯車装置を構成し、第1遊星歯車機構のリングギヤと第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して入力軸に第2クラッチにより係脱可能に連結するとともに第3ブレーキに連結し、第2遊星歯車機構のリングギヤを減速用複式遊星歯車装置のキャリヤに連結し、第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチで係脱可能に連結するとともに、第1遊星歯車機構のサンギヤを第4ブレーキに連結し、第1遊星歯車機構のキャリヤを出力軸に連結して前進7段、後退3段のギヤ比を成立する自動変速機が2000−266138号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の自動変速機は、前進7段、後退3段の間でギヤ比を切り換えることが可能である。しかし、近年は燃費及び動力伝達性能向上を図るため、或いは運転者の嗜好にマッチしたギヤ比を得るために、簡単な構造で、適切に離間した前進7段以上のギヤ比を成立することができる自動変速機が求められている。
【0004】
本発明は係る要望に応えるためになされたもので、簡単な構造で適切に離間した前進7段以上のギヤ比を得ることができる自動変速機を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、小径及び大径サンギヤ、該小径及び大径サンギヤと夫々噛合する大径及び小径ピニオンからなる段付ピニオンを支承する共通キャリヤ並びに入力軸に連結され前記大径ピニオンと噛合する共通リングギヤを有し、前記小径及び大径サンギヤの回転が第1、第2ブレーキにより選択的に規制されて前記共通キャリヤに前記入力軸の回転より回転数が小さい第1回転又は該第1回転より回転数が小さい第2回転を生成する減速用複式遊星歯車装置と、第1及び第2遊星歯車機構で構成され速度線図においてギヤ比に対応した間隔で順次並べられた4個の要素に並び順にそれぞれ対応する第1、第2、第3及び第4要素を有する変速用複式遊星歯車装置とを設け、前記減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤを前記変速用複式遊星歯車装置の前記第1要素に連結し、前記入力軸を前記第2要素に第2クラッチを介して連結し、前記第2、第4要素を第3、第4ブレーキに夫々連結し、前記第3要素を出力軸に連結し、前記変速用複式遊星歯車装置は、前記減速用複式遊星歯車装置から前記第1回転及び前記第2回転の選択された方が前記第1要素に伝達された場合に、前記第4ブレーキにより前記第4要素が回転規制されることにより前記入力軸の回転数より前記出力軸の回転数が小さい減速段を形成し、前記減速用複式遊星歯車装置から前記第1回転及び前記第2回転の選択された方が前記第1要素に伝達された場合に、前記入力軸の回転が前記第2クラッチで前記第2要素に伝達されることにより前記入力軸の回転数より前記出力軸の回転数が大きい増速段を形成することである。
【0006】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の自動変速機において、前記減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤと大径サンギヤとを第1クラッチにより係脱可能に連結し、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを前記第1要素とし、前記第1遊星歯車機構のリングギヤと前記第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して前記第2要素とし、前記第1遊星歯車機構のキャリヤを前記第3要素とし、前記第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチを介して連結して前記第4要素とし、前記第1遊星歯車機構のサンギヤを前記第4ブレーキに連結したことである。
【0007】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2に記載の自動変速機において、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを第5ブレーキに連結したことである。。
【0008】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項2に記載の自動変速機において、前記入力軸を第5クラッチを介して前記減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤに連結したことである。
【0009】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の自動変速機において、前記変速用複式遊星歯車装置の前記第1要素を前記第2ブレーキと前記減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤに第1、第4クラッチにより夫々係脱可能に連結し、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを前記第1要素とし、前記第1遊星歯車機構のリングギヤと前記第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して前記第2要素とし、前記第1遊星歯車機構のキャリヤを前記第3要素とし、前記第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチを介して連結して前記第4要素とし、前記第1遊星歯車機構のサンギヤを前記第4ブレーキに連結したことである。
【0010】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の自動変速機において、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを前記第1要素とし、前記第1遊星歯車機構のリングギヤと前記第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して前記第2要素とし、前記第1遊星歯車機構のキャリヤを前記第3要素とし、前記第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチを介して連結して前記第4要素とし、前記第1遊星歯車機構のサンギヤを前記第4ブレーキに連結し、前記第2遊星歯車機構のサンギヤと前記第2要素とを第6クラッチを介して連結したことである。
【0011】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項6に記載の自動変速機において、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを第5ブレーキに連結したことである。
【0012】
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項6に記載の自動変速機において、前記入力軸を第5クラッチを介して前記減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤに連結したことである。
【0013】
請求項9に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の自動変速機において、前記減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤと小径サンギヤとを第7クラッチにより係脱可能に連結し、前記第2遊星歯車機構のサンギヤを前記第1要素とするとともに第5ブレーキに連結し、前記第1遊星歯車機構のリングギヤと前記第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して前記第2要素とし、前記第1遊星歯車機構のキャリヤと前記第2遊星歯車機構のリングギヤとを連結して前記第3要素とし、前記第1遊星歯車機構のサンギヤを前記第4要素としたことである。
【0014】
【発明の作用・効果】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、小径及び大径サンギヤと、小径及び大径サンギヤに夫々噛合する大径及び小径ピニオンからなる段付ピニオンを支承する共通キャリヤと、大径ピニオンに噛合する共通リングギヤとにより減速用複式遊星歯車装置を構成し、共通リングギヤを入力軸に連結し、小径及び大径サンギヤの回転を第1、第2ブレーキにより選択的に規制して共通キャリヤに入力軸の回転より回転数が小さい第1回転、該第1回転より回転数が小さい第2回転を生成し、第1、第2回転を変速用複式遊星歯車装置の第1要素に伝達し、入力軸の回転を第2クラッチにより第2要素に選択的に伝達するようにしたので、サンギヤにロングピニオンを噛合し、ロングピニオンと該ロングピニオンに噛合する中間ピニオンとをキャリヤに支承し、第1、第2リングギヤをロングピニオンと中間ピニオンとに夫々噛合した従来の自動変速機の減速用複式遊星歯車装置に比して、簡単な構成の他のタイプで減速用複式遊星歯車装置を構成することができる。
【0015】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤと大径サンギヤとを第1クラッチにより係脱可能に連結し、変速用複式遊星歯車装置の第2遊星歯車機構のリングギヤに減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤに生成される第1、第2回転を伝達し、第1遊星歯車機構のリングギヤと第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して入力軸の回転を第2クラッチにより選択的に伝達し、第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチにより選択的に連結し、第1遊星歯車機構のサンギヤを第4ブレーキにより選択的に回転規制し、第1遊星歯車機構のキャリヤを出力軸に連結したので、簡単な構成で、入力軸の回転を適切に離間した前進7段、後退3段のギヤ比で変速して出力軸に伝達することができる。
【0016】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、第2遊星歯車機構のリングギヤを第5ブレーキにより回転規制して前進第8変速段を得るようにしたので、請求項1に記載の発明の効果に加え、1個のブレーキを加えるだけで、入力軸の回転を適切に離間した前進8段のギヤ比で変速して出力軸に伝達することができる。また、高速段側のギヤ比を更に密にすることができるので、車速の高速度域でエンジン性能を最適に引き出すことができ、且つギヤチェンジ時のギヤ比の変化延いては出力トルクの変化が小さくなり、良好なフィーリングを得ることができる。
【0017】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、第5クラッチを切って減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤと入力軸とを切離し、第2ブレーキ等の作動により第2遊星歯車機構のリングギヤを回転規制して前進第8変速段を得るようにしたので、請求項1に記載の発明の効果に加え、1個のクラッチを加えるだけで、入力軸の回転を適切に離間した前進8段のギヤ比で変速して出力軸に伝達することができ、請求項3に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0018】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、変速用複式遊星歯車装置の第1要素を減速用複式遊星歯車装置の大径サンギヤに連結された第2ブレーキと、共通キャリヤとに第1、第4クラッチにより選択的に連結し、第2遊星歯車機構のリングギヤに減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤに生成される第1、第2回転を伝達し、第1遊星歯車機構のリングギヤと第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結した第2要素に入力軸の回転を第2クラッチにより選択的に伝達し、第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチにより選択的に連結し、第1遊星歯車機構のサンギヤを第4ブレーキにより選択的に回転規制し、第1遊星歯車機構のキャリヤを出力軸に連結したので、請求項1に記載の発明の効果に加え、1個のクラッチを加えるだけで、入力軸の回転を適切に離間した前進8段のギヤ比で変速して出力軸に伝達することができる。また、高速段側のギヤ比を更に密にすることができるので、車速の高速度域でエンジン性能を最適に引き出すことができ、且つギヤチェンジ時のギヤ比の変化延いては出力トルクの変化が小さくなり、良好なフィーリングを得ることができる。
【0019】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、第2遊星歯車機構のリングギヤに減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤに生成される第1、第2回転を伝達し、第1遊星歯車機構のリングギヤと第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結した第2要素に入力軸の回転を第2クラッチにより選択的に伝達し、第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチにより選択的に連結し、第1遊星歯車機構のサンギヤを第4ブレーキにより選択的に回転規制し、第2遊星歯車機構のサンギヤと第2要素とを第6クラッチにより選択的に連結し、第1遊星歯車機構のキャリヤを出力軸に連結したので、簡単な構成で、入力軸の回転を適切に離間した前進7段、後退2段のギヤ比で変速して出力軸に伝達することができる。
【0020】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、第2遊星歯車機構のリングギヤを第5ブレーキにより回転規制して前進第8変速段を得るようにしたので、請求項1に記載の発明の効果に加え、入力軸の回転を適切に離間した前進8段のギヤ比で変速して出力軸に伝達することができる。また、高速段側のギヤ比を更に密にすることができるので、車速の高速度域でエンジン性能を最適に引き出すことができ、且つギヤチェンジ時のギヤ比の変化延いては出力トルクの変化が小さくなり、良好なフィーリングを得ることができる。
【0021】
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、第5クラッチを切って減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤと入力軸とを切離し、第1、第2ブレーキの作動により第2遊星歯車機構のリングギヤを回転規制して前進第8変速段を得るようにしたので、請求項1に記載の発明の効果に加え、入力軸の回転を適切に離間した前進8段のギヤ比で変速して出力軸に伝達することができ、請求項7に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0022】
上記のように構成した請求項9に係る発明においては、減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤと小径サンギヤとを第7クラッチにより係脱可能に連結し、第2遊星歯車機構のサンギヤに減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤに生成される第1、第2回転を伝達するとともに、第5ブレーキにより回転を選択的に規制し、第1遊星歯車機構のリングギヤと第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して構成した第2要素に入力軸の回転を第2クラッチにより選択的に伝達するとともに第3ブレーキにより回転を選択的に規制し、第1遊星歯車機構のサンギヤを第4ブレーキにより選択的に回転規制し、第1遊星歯車機構のキャリヤと第2遊星歯車装置のリングギヤとを連結して出力軸に連結したので、請求項1に記載の発明の効果に加え、入力軸の回転を適切に離間した前進8段のギヤ比で変速して出力軸に伝達することができる。また、高速段側のギヤ比を更に密にすることができるので、車速の高速度域でエンジン性能を最適に引き出すことができ、且つギヤチェンジ時のギヤ比の変化延いては出力トルクの変化が小さくなり、良好なフィーリングを得ることができる。
【0023】
【実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明に係る自動変速機の第1の実施形態について説明する。図1において、10は本発明に係る自動変速機で、例えば自動車のエンジンにより回転駆動される流体トルクコンバータ11の出力回転を変速して駆動輪に伝達するために使用される。自動変速機10は、車体に取り付けられたトランスミッションケース12内に共通軸線13上に順次支承された入力軸15、減速用複式遊星歯車装置16、変速用複式遊星歯車装置17及び出力軸18で構成されている。減速用複式遊星歯車装置16は、2個のシングルピニオン型の遊星歯車機構20,21のキャリヤC1,C2及びリングギヤR1,R2を連結、共通化して構成されている。即ち、減速用複式遊星歯車装置16は、共通軸線13上に回転可能に支承された大径及び小径サンギヤS1,S2、大径及び小径サンギヤS1,S2と夫々噛合し、互いに一体的に連結された小径及び大径ピニオン22,23からなる段付ピニオン24、この段付きピニオン24を回転可能に支承し共通軸線13上に回転可能に支承された共通キャリヤC1,C2、及び大径ピニオン23と噛合し共通軸線13上に回転可能に支承された共通リングギヤR1,R2から構成されている。共通リングギヤR1,R2は入力軸15に連結されて入力回転で回転されるようになっている。
【0024】
小径及び大径サンギヤS2,S1をトランスミッションケース12に夫々接続して選択的に回転を規制する第1、第2ブレーキB−1,B−2が小径及び大径サンギヤS2,S1に夫々連結されている。これにより、減速用複式遊星歯車装置16は、第1ブレーキB−1により小径サンギヤS2の回転が規制されると、入力軸15の回転より回転数が小さい第1回転を共通キャリヤC1,C2に生成し、第2ブレーキB−2により大径サンギヤS1の回転が規制されると、第1回転より回転数が小さい第2回転を共通キャリヤC1,C2に生成する。また、共通キャリヤC1,C2と大径サンギヤS1とは第1クラッチC−1により係脱可能に連結され、第1クラッチC−1が接続されると減速用複式遊星歯車装置16は一体化されて共通キャリヤC1,C2を入力回転で回転する。
【0025】
変速用複式遊星歯車装置17は、共通軸線13上に回転可能に支承されたサンギヤ、リングギヤ、サンギヤとリングギヤとに噛合するピニオンを支承するキャリヤで構成されるシングルピニオン型の第1及び第2遊星歯車機構25,26で構成されている。第1遊星歯車機構25のリングギヤR3と第2遊星歯車機構26のキャリヤC4とは連結されて連結要素R3,C4を形成し、連結要素R3,C4は入力軸15に第2クラッチC−2により係脱可能に連結されるとともに、ミッションケース12に設けられた第3ブレーキB−3に連結されている。第2遊星歯車機構26のリングギヤR4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結されている。第1及び第2遊星歯車機構25,26の各サンギヤS3,S4は、第3クラッチC−3により相互に係脱可能に連結されている。第1遊星歯車機構25のサンギヤS3は、ミッションケース12に設けられた第4ブレーキB−4に連結されている。第1遊星歯車機構25のキャリヤC3は出力軸18に連結されている。
【0026】
なお、流体トルクコンバータ11のポンプインペラ30は図略のエンジンによって回転駆動されてオイルを送り出し、ステータ31がオイルの反力を受け止めてトルクをタービン32に発生するようになっている。入力軸15はタービン32に連結されている。33はポンプインペラ30とタービン32とを直結するロックアップクラッチである。
【0027】
以上のように構成された自動変速機10は、第1乃至第3クラッチC−1〜C−3を選択的に係脱し、第1乃至第4ブレーキB−1〜B−4を選択的に作動して減速用、変速用複式遊星歯車装置16,17の要素の回転を規制することにより、前進7段、後退3段のギヤ比を成立することができる。図2において、各変速段に対応する各クラッチ、ブレーキの欄に黒丸が付されている場合、クラッチであれば接続状態、ブレーキであれば回転規制状態にあることを示す。また、図2には、減速用複式遊星歯車装置16の大径サンギヤS1、段付ピニオン23、共通キャリヤC1,C2及び共通リングギヤR1,R2からなる第1遊星歯車機構20のギヤ比λ1が0.780、小径サンギヤS2、大径ピニオン22、共通キャリヤC1,C2及び共通リングギヤR1,R2からなる第2遊星歯車機構21のギヤ比λ2が0.463、変速用複式遊星歯車装置17の第1遊星歯車機構25のギヤ比λ3が0.432、第2遊星歯車機構26のギヤ比λ4が0.444である場合における各変速段におけるギヤ比(入力軸15の回転数/出力軸18の回転数)及び変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合(当変速段のギヤ比/前変速段のギヤ比)が示されている。
【0028】
シングルピニオン型の遊星歯車機構20,21,25,26においては、サンギヤの回転数Ns、キャリヤの回転数Nc、リングギヤの回転数Nrと遊星歯車機構のギヤ比λとの関係は、式(1)で示され、各変速段におけるギヤ比は、式(1)に基づいて算出される。大径、小径、第1、第2サンギヤS1,S2,S3,S4の歯数をZs1,Zs2,Zs3,Zs4、共通リングギヤR1,R2,リングギヤR3,R4の歯数をZr1,Zr3,Zr4とすると、減速用及び変速用複式遊星歯車装置16,17の第1、第2遊星歯車機構20,21,25,26のギヤ比はλ1=Zs1/Zr1,λ2=Zs2/Zr1,λ3=Zs3/Zr3,λ4=Zs4/Zr4である。
【0029】
Nr=(1+λ)Nc−λNs・・・(1)
第1乃至第4ブレーキB−1〜B−4を選択的に作動し、第1乃至第3クラッチC−1〜C−3を選択的に接続すると、減速用複式遊星歯車装置16及び変速用複式遊星歯車装置17の各要素の速度比は、図3に示す速度線図のようになる。速度線図は、遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、リングギヤからなる各要素を横軸方向にギヤ比に対応させた間隔で配置し、縦軸方向に各要素に対応してその速度比を取ったものである。図3には、減速用及び変速用複式遊星歯車装置16,17の速度線図が左右に並べて記載されている。減速用複式遊星歯車装置16を構成する第1、第2遊星歯車機構20,21では、キャリヤC1,C2、リングギヤR1,R2がそれぞれ共通するので、C1,C2及びR1,R2がそれぞれ付された各1本の縦線上に共通キャリヤC1,C2、共通リングギヤR1,R2の速度比を表し、それぞれS1、S2が付された各1本の縦線上にサンギヤS1,S2の速度比を表す。シングルピニオン型の第1遊星歯車機構20については、キャリヤC1の縦線とリングギヤR1の縦線との間隔aを第1遊星歯車機構51のギヤ比λ1とみなし、サンギヤS1の縦線をキャリヤC1の縦線からリングギヤR1の縦線の反対側に間隔a/λ1だけ離して配置する。シングルピニオン型の第2遊星歯車機構21についても同様に、キャリヤC2の縦線とリングギヤR2の縦線との間隔aを第2遊星歯車機構52のギヤ比λ2とみなし、サンギヤS2の縦線をキャリヤC2の縦線からリングギヤR2の縦線の反対側に間隔a/λ2だけ離して配置する。
【0030】
変速用複式遊星歯車装置17を構成する第1、第2遊星歯車機構25,26では、リングギヤR3とキャリヤC4が連結され、サンギヤS3,S4がクラッチC−3を介して連結されるので、R3,C4及びS3,S4がそれぞれ付された各1本の縦線上にリングギヤR3とキャリヤC4、及びサンギヤS3,S4の速度比を表し、R4及びC3がそれぞれ付された各1本の縦線上にリングギヤR4及びキャリヤC3の速度比を表す。第1遊星歯車機構25については、サンギヤS3の縦線とリングギヤR3の縦線との間隔bを1+λ3とみなし、キャリヤC3の縦線をサンギヤS3の縦線からリングギヤR3の縦線と同じ側に間隔b/(1+λ3)だけ離して配置する。第2遊星歯車機構26については、キャリヤC4の縦線とサンギヤS4の縦線との間隔bを1とみなし、リングギヤR4の縦線をキャリヤC4の縦線からサンギヤS4の縦線の反対側に間隔b×λ4だけ離して配置する。速度線図には、第1乃至第4ブレーキB−1〜B−4、第1、第2クラッチC−1,C−2が選択的に作動される点にB−1〜B−4、C−1,C−2が記入されている。
【0031】
このように作成された変速用複式遊星歯車装置17の速度線図において、4本の各縦線に対応する要素を縦線の並び順に第1、第2、第3、第4要素とする。第1実施形態の場合、第1要素としてのリングギヤR4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結され、第2要素としての連結されたリングギヤR3とキャリヤC4は第2クラッチC−2及び第3ブレーキB−3に連結され、第3要素としてのキャリヤC3は出力軸18に連結され、第4要素としてのサンギヤS3,S4は第3クラッチにより係脱可能に連結され、且つサンギヤS3は第4ブレーキに連結されている。
【0032】
以下、各変速段の作動について説明する。前進第1変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を入力軸18の入力回転より回転数が小さい第2回転で回転する。共通キャリヤC1,C2に生成された第2回転は、第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3、及びワンウエイクラッチF−1によりサンギヤS3に対して逆転を規制されたサンギヤS4に反力を支持されて、キャリヤC3延いては出力軸18を第1変速段のギヤ比3.684で正転駆動する。なお、第3クラッチC−3を接続してサンギヤS4の回転を規制してもよい。
【0033】
前進第2変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された回転は、第1ブレーキB−1の作動により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を入力回転より回転数が小さく、第2回転より回転数が大きい第1回転で回転する。共通キャリヤC1,C2に生成された第1回転は、第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3、及びワンウエイクラッチF−1によりサンギヤS3に対して逆転を規制されたサンギヤS4に反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第2変速段のギヤ比3.028で正転駆動する。なお、第3クラッチC−3を接続してサンギヤS4の回転を規制してもよい。
【0034】
前進第3変速段の場合、第1クラッチC−1の接続により一体化された減速用複式遊星歯車装置16は、共通リングギヤR1,R2に連結された入力軸15の入力回転で共通キャリヤC1,C2を回転する。入力回転は第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3、及びワンウエイクラッチF−1によりサンギヤS3に対して逆転を規制されたサンギヤS4に反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第3変速段のギヤ比2.069で正転駆動する。なお、第3クラッチC−3を接続してサンギヤS4の回転を規制してもよい。
【0035】
前進第4変速段の場合、入力軸15は、第2クラッチC−2の作動により第1遊星歯車機構25のリングギヤR3に接続され、第4ブレーキB−4の作動により回転規制されたサンギヤS3に反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第4変速段のギヤ比1.432で正転駆動する。このとき、第1クラッチC−1の接続により一体化された減速用複式遊星歯車装置16は、共通リングギヤR1,R2に連結された入力軸15の入力回転で共通キャリヤC1,C2を回転する。これにより、共通キャリヤC1,C2に連結されたリングギヤR4及びリングギヤR3に連結されたキャリヤC4が入力回転で回転されて第2遊星歯車機構26が一体化され、サンギヤS4はワンウエイクラッチF−1によりサンギヤS3に対して正転を許容されて入力回転で回転される。
【0036】
前進第5変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第1クラッチC−1の接続により一体化された減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2を介して第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達される。第1遊星歯車機構25のリングギヤR3は第2クラッチC−2の作動により入力軸15に接続され、サンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、変速用複式遊星歯車装置17は一体化され、キャリヤC3及び出力軸18は第5変速段のギヤ比1で正回転される。
【0037】
前進第6変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された回転は、第1ブレーキB−1の作動により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。変速用複式遊星歯車装置17は、サンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、リングギヤR4に伝達された共通キャリヤC1,C2の第1回転と、第2クラッチC−2が接続してリングギヤR3に伝達された入力軸15の入力回転との差に応じてキャリヤC3延いては出力軸18を第6変速段のギヤ比0.823で正転駆動する。
【0038】
前進第7変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第2回転で回転する。変速用複式遊星歯車装置17は、サンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、リングギヤR4に伝達された第2回転と、リングギヤR3に伝達された入力回転との差に応じてキャリヤC3及び出力軸18を第7変速段のギヤ比0.771で正転駆動する。
【0039】
後退第1変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第2回転で回転する。第2回転が第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、キャリヤC4が第3ブレーキB−3の作動により回転規制されるので、サンギヤS4が逆転されてワンウエイクラッチF−1を介してサンギヤS3が逆転され、第3ブレーキB−3の作動により回転規制されたリングギヤR3に反力を支持されてキャリヤC3が逆転され、出力軸18が後退第1変速段のギヤ比2.621で逆転される。なお、第3クラッチC−3を作動してサンギヤS3をサンギヤS4に接続してもよい。
【0040】
後退第2変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された回転は、第1ブレーキB−1の作動により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。第1回転は第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、キャリヤC4が第3ブレーキB−3の作動により回転規制されるので、サンギヤS4が逆転されてワンウエイクラッチF−1を介してサンギヤS3が逆転され、第3ブレーキB−3の作動により回転規制されたリングギヤR3に反力を支持されてキャリヤC3が逆転され、出力軸18が後退第2変速段のギヤ比2.154で逆転される。なお、第3クラッチC−3を作動してサンギヤS3をサンギヤS4に接続してもよい。
【0041】
後退第3変速段の場合、第1クラッチC−1の接続により一体化された減速用複式遊星歯車装置16は、共通リングギヤR1,R2に連結された入力軸15の入力回転で共通キャリヤC1,C2を回転する。入力回転は第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、キャリヤC4が第3ブレーキB−3の作動により回転規制されるので、サンギヤS4が逆転されてワンウエイクラッチF−1を介してサンギヤS3が逆転され、第3ブレーキB−3の作動により回転規制されたリングギヤR3に反力を支持されてキャリヤC3が逆転され、出力軸18が後退第3変速段のギヤ比1.472で逆転される。なお、第3クラッチC−3を作動してサンギヤS3をサンギヤS4に接続してもよい。
【0042】
入力軸15に連結された減速用複式遊星歯車装置16の共通リングギヤR1,R2の回転数を1とした場合の各変速段におけるサンギヤS1〜S4、キャリヤC1〜C4、及びリングギヤR1〜R4の回転比を示す図3の速度線図から明らかなように、各変速段における第3要素であるキャリヤC3の回転比すなわちギヤ比は、適当な間隔をもって配列し、本発明に係る自動変速機によれば適切に離間した前進7段、後退3段のギヤ比を得ることができる。さらに、変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合は、図2に示すように、第1、第2変速段の間は1.217、第2、第3変速段の間は1.463、第3、第4変速段の間は1.444、第4、第5変速段の間は1.432、第5、第6変速段の間は1.215、第6、第7変速段の間は1.068となり、高速段ほど概ね増加割合が小さくなり、車速の高速度域でエンジン性能を最適に引き出すことができ、且つギヤチェンジ時のギヤ比の変化割合延いては出力トルクの変化割合が小さくなり、良好なフィーリングを得ることができる。
【0043】
次に、第2の実施形態について、図4に基づいて説明する。第2の実施形態は、変速用複式遊星歯車装置17の第2遊星歯車機構17のリングギヤR4を第5ブレーキB−5に連結したこと以外は第1の実施形態と同一であるので、同一部分は図面に同一符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる点のみについて説明する。各変速段における各クラッチ、ブレーキの作動状態を図5に示す。第1実施形態との相違点は、第8変速段が追加されたことである。
【0044】
第2実施形態の速度線図は図6に示すようになる。第2実施形態においては、第1要素としてのリングギヤR4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結されるとともに第5ブレーキB−5に連結され、第2要素としての連結されたリングギヤR3とキャリヤC4は第2クラッチC−2及び第3ブレーキB−3に連結され、第3要素としてのキャリヤC3は出力軸18に連結され、第4要素としてのサンギヤS3とS4とは第3クラッチを介して係脱可能に連結され、サンギヤS3は第4ブレーキに連結されている。
【0045】
前進第8変速段の場合、変速用遊星歯車装置16のサンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、第2クラッチC−2の接続によりリングギヤR3に伝達された入力軸15の入力回転は、第5ブレーキB−5の作動により回転規制されたリングギヤR4により反力を支持されて、キャリヤC3延いては出力軸18を第8変速段のギヤ比0.596で正転駆動する。
【0046】
図6の速度線図から明らかなように、第2実施形態においても各変速段におけるギヤ比は、適当な間隔をもって配列し、適切に離間した前進8段、後退3段のギヤ比を得ることができる。さらに、変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合は、高速段ほど概ね増加割合が小さくなり、第1実施形態の場合と同様の効果を有する。第2実施形態におけるスプレッドは、3.684/0.596=6.186と更に大きくなる。
【0047】
次に、第3実施形態について、図7に基づいて説明する。第3実施形態は、入力軸15を第5クラッチC−5を介して減速用複式遊星歯車装置16の共通リングギヤR1,R2に連結したこと以外は第1実施形態と同一であるので、同一部分は図面に同一符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる点のみについて説明する。各変速段における各クラッチ、ブレーキの作動状態を図8に示す。第1実施形態との相違点は、第8変速段が追加されたことである。第8変速段以外においては、第5クラッチC−5が作動されて入力軸15が共通リングギヤR1,R2に接続されているが、第1実施形態では入力軸15と共通リングギヤR1,R2とは直結されているので実質的に同じである。第3実施形態の速度線図は図9に示すようになる。第3実施形態においては、第1要素としてのリングギヤR4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結され、第2要素としての連結されたリングギヤR3とキャリヤC4は第2クラッチC−2及び第3ブレーキB−3に連結され、第3要素としてのキャリヤC3は出力軸18に連結され、第4要素としてのサンギヤS3とS4とは第3クラッチC−3により係脱可能に連結され、サンギヤS3は第4ブレーキB−4に連結されている。
【0048】
前進第8変速段の場合、変速用複式遊星歯車装置17のサンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、第2クラッチC−2の接続によりリングギヤR3に伝達された入力軸15の入力回転は、第1、第2ブレーキB−1,B−2の作動により共通キャリヤC1,C2を介して回転規制されたリングギヤR4により反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第8変速段のギヤ比0.596で正転駆動する。この場合、第2ブレーキB−2及び第1クラッチC−1を作動して共通キャリヤC1,C2の回転を規制してリングギヤR4を回転規制するようにしてもよい。
【0049】
図9の速度線図から明らかなように、第3実施形態においても各変速段におけるギヤ比は、適当な間隔をもって配列し、適切に離間した前進8段、後退3段のギヤ比を得ることができる。さらに、変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合は、高速段ほど概ね増加割合が小さくなり、第1実施形態の場合と同様の効果を有する。第3実施形態におけるスプレッドは、3.684/0.596=6.186と十分に大きくなる。
【0050】
次に、第4実施形態について、図10に基づいて説明する。第4実施形態は、変速用複式遊星歯車装置17の第1要素であるリングギヤR4を第2ブレーキB−2と減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に第1、第4クラッチC−1,C−4により夫々係脱可能に連結したこと以外は第1実施形態と同一であるので、同一部分は図面に同一符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる点のみについて説明する。各変速段における各クラッチ、ブレーキの作動状態を図11に示す。第1実施形態との相違点は、第8変速段が追加されたことである。第8変速段以外においては、第4クラッチC−4が作動されて共通キャリヤC1,C2がリングギヤR4に接続されているが、第1実施形態では共通キャリヤC1,C2とリングギヤR4とは直結されているので実質的に同じである。
【0051】
第4実施形態の速度線図は図12に示すようになる。第4実施形態の場合、第1要素としてのリングギヤR4は第2ブレーキB−2と減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に第1、第4クラッチC−1,C−4により夫々係脱可能に連結され、第2要素としての互いに連結されたリングギヤR3とキャリヤC4は第2クラッテイC−2及び第3ブレーキB−3に連結され、第3要素としてのキャリヤC3は出力軸18に連結され、第4要素としてのサンギヤS3とS4とは第3クラッチC−3により係脱可能に連結され、サンギヤS3は第4ブレーキB−4に連結されている。
【0052】
前進第8変速段の場合、変速用複式遊星歯車装置17のサンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、第2クラッチC−2の接続によりリングギヤR3に伝達された入力軸15の入力回転は、第2ブレーキB−2及び第1クラッチC−1の作動により共通キャリヤC1,C2を介して回転規制されたリングギヤR4により反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第8変速段のギヤ比0.596で正転駆動する。この場合、第1、第2ブレーキB−1,B−2を作動して共通のキャリヤC1,C2の回転を規制してリングギヤR4を回転規制するようにしてもよい。
【0053】
図12の速度線図から明らかなように、第3実施形態においても各変速段におけるギヤ比は、適当な間隔をもって配列し、適切に離間した前進8段、後退3段のギヤ比を得ることができる。さらに、変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合は、高速段ほど概ね増加割合が小さくなり、第1実施形態の場合と同様の効果を有する。第4実施形態におけるスプレッドは、3.684/0.596=6.186と十分に大きい。
【0054】
次に、第5実施形態について、図13に基づいて説明する。第5実施形態は、減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2と大径サンギヤS1とを係脱可能に連結する第1クラッチC−1を取り除いたこと、及びリングギヤR3とキャリヤC4とが連結されて形成された変速用複式遊星歯車装置17の第2要素とサンギヤS4とを第6クラッチC−6で係脱可能に連結したこと、及び各変速段におけるギヤ比関係以外は、第1実施形態と同一であるので、同一部分は図面に同一符号を付けて詳細説明を省略する。各変速段における各クラッチ、ブレーキの作動状態を図14に示す。図14には、減速用複式遊星歯車装置16の第1遊星歯車機構20のギヤ比λ1が0.756、第2遊星歯車機構21のギヤ比λ2が0.341、変速用複式遊星歯車装置17の第1遊星歯車機構25のギヤ比λ3が0.622、第2遊星歯車機構26のギヤ比λ4が0.652である場合における各変速段におけるギヤ比(入力軸15の回転数/出力軸18の回転数)及び変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合(当変速段のギヤ比/前変速段のギヤ比)が示されている。
【0055】
第5実施形態の速度線図は図15、図16に示すようになる。第5実施形態の場合、第1要素としてのリングギヤR4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結され、第2要素としての互いに連結されたリングギヤR3とキャリヤC4は第2クラッチC−2及び第3ブレーキB−3に連結され、第3要素としてのキャリヤC3は出力軸18に連結され、第4要素としてのサンギヤS3とS4とは第3クラッチC−3により係脱可能に連結され、サンギヤS3は第4ブレーキB−4に連結され、サンギヤS4は第2要素に第6クラッチC−6により係脱可能に連結されている。
【0056】
以下、各変速段の作動について説明する。前進第1変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を入力軸18の入力回転より回転数が小さい第2回転で回転する。共通キャリヤC1,C2に生成された第2回転は、第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3、及びワンウエイクラッチF−1によりサンギヤS3に対して逆転を規制されたサンギヤS4に反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第1変速段のギヤ比4.707で正転駆動する。なお、第3クラッチC−3を接続してサンギヤS4の回転を規制してもよい。
【0057】
前進第2変速段の場合、共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を回転数が入力回転より小さい第2回転で回転する。共通キャリヤC1,C2に生成された第1回転は、リングギヤR4に伝達され、第6クラッチC−6によりキャリヤC4とサンギヤS4とが接続されて一体化した第2遊星歯車機構26を介してリングギヤR3に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3に反力を支持されてキャリヤC3延いては出力軸18を第2変速段のギヤ比2.849で正転駆動する。
【0058】
前進第2変速段は第1、第4ブレーキB−1,B−4を作動して生成することもできる。即ち、第1ブレーキB−1が作動されると、入力回転は回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。この第1回転は第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3、及びワンウエイクラッチF−1によりサンギヤS3に対して逆転を規制されたサンギヤS4に反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第2変速段で正転駆動する。なお、第3クラッチC−3を接続してサンギヤS4の回転を規制してもよい。
【0059】
前進第3変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第2回転で回転する。この第2回転はリングギヤR4に伝達され、第3、第6クラッチC−3,C−6の接続によりサンギヤS3とS4、キャリヤC4とサンギヤS4とが接続されて一体化された変速用複式遊星歯車機構17のキャリヤC3延いては出力軸18を第3変速段のギヤ比1.756で正転駆動する。
【0060】
前進第3変速段は第1、第4ブレーキB−1,B−4及び第6クラッチC−6を作動して生成することもできる。即ち、第1ブレーキB−1が作動されると、入力回転は回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。第1回転はリングギヤR4に伝達され、第6クラッチC−6によりキャリヤC4とサンギヤS4とが接続されて一体化された第2遊星歯車機構26を介してリングギヤR3を第1回転で回転し、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3に反力を支持されて、キャリヤC3延いては出力軸18を第3変速段で正転駆動する。
【0061】
前進第4変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第1ブレーキB−1の作動により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。この第1回転はリングギヤR4に伝達され、第3、第6クラッチC−3,C−6の接続によりサンギヤS3とS4、キャリヤC4とサンギヤS4とが接続されて一体化された変速用複式遊星歯車機構17のキャリヤC3延いては出力軸18は第4変速段のギヤ比1.341で正転駆動される。
【0062】
前進第4変速段は第2、第6クラッチC−2,C−6及び第4ブレーキB−4を作動して生成することもできる。即ち、第2クラッチC−2によりリングギヤR3が入力軸15に接続されて入力回転され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3に反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18は第4変速段で正転駆動される。このとき、第6クラッチC−6によりキャリヤC4とサンギヤS4とが接続されて一体化された第2遊星歯車機構26は、サンギヤS4がワンウエイクラッチF−1の作動によりサンギヤS3に対して正転可能であるので、リングギR3に連結されたキャリヤC4を介して入力回転で回転される。
【0063】
前進第5変速段の場合、第2クラッチC−2によりリングギヤR3が入力軸15に接続されて入力回転され、第3、第6クラッチC−3,C−6の接続によりサンギヤS3とS4、キャリヤC4とサンギヤS4とが接続されて一体化された変速用複式遊星歯車機構17のキャリヤC3延いては出力軸18は第5変速段のギヤ比1.000で正転駆動される。
【0064】
前進第6変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第1ブレーキB−1の作動により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。変速用複式遊星歯車装置17は、サンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、リングギヤR4に伝達された共通キャリヤC1,C2の第1回転と、第2クラッチC−2が接続してリングギヤR3に伝達された入力軸15の入力回転との差に応じてキャリヤC3延いては出力軸18を第6変速段のギヤ比0.870で正転駆動する。
【0065】
前進第7変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第2回転で回転する。変速用複式遊星歯車装置17は、サンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、リングギヤR4に伝達された共通キャリヤC1,C2の第2回転と、第2クラッチC−2が接続してリングギヤR3に伝達された入力軸15の入力回転との差に応じてキャリヤC3延いては出力軸18を第7変速段のギヤ比0.798で正転駆動する。
【0066】
後退第1変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第2回転で回転する。第2回転が第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、キャリヤC4が第3ブレーキB−3の作動により回転規制されるので、サンギヤS4が逆転されてワンウエイクラッチF−1を介してサンギヤS3が逆転され、第3ブレーキB−3の作動により回転規制されたリングギヤR3に反力を支持されてキャリヤC3が逆転され、出力軸18が後退第1変速段のギヤ比2.986で逆転される。なお、第3クラッチC−3を作動してサンギヤS3をサンギヤS4に接続してもよい。
【0067】
後退第2変速段の場合、共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第1ブレーキB−1の作動により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。第1回転は第2遊星歯車機構26のリングギヤR4に伝達され、キャリヤC4が第3ブレーキB−3の作動により回転規制されるので、サンギヤS4が逆転されてワンウエイクラッチF−1を介してサンギヤS3が逆転され、第3ブレーキB−3の作動により回転規制されたリングギヤR3に反力を支持されてキャリヤC3が逆転され、出力軸18が後退第2変速段のギヤ比2.281で逆転される。なお、第3クラッチC−3を作動してサンギヤS3をサンギヤS4に接続してもよい。
【0068】
図15、図16の速度線図から明らかなように、第5実施形態においても各変速段におけるギヤ比は、適当な間隔をもって配列し、適切に離間した前進7段、後退2段のギヤ比を得ることができる。さらに、変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合は、図14に示すように、第1、第2変速段の間は1.652、第2、第3変速段の間は1.622、第3、第4変速段の間は1.309、第4、第5変速段の間は1.341、第5、第6変速段の間は1.150、第6、第7変速段の間は1.090となり、高速段ほど概ね増加割合が小さくなり、車速の高速度域でエンジン性能を最適に引き出すことができ、且つギヤチェンジ時のギヤ比の変化割合延いては出力トルクの変化割合が小さくなり、良好なフィーリングを得ることができる。また、最低速度段のギヤ比を最高速度段のギヤ比で割ったスプレッドは、4.707/0.798=5.899と十分大きいので、低速度段において加速性能を高くし、高速度段において燃費をよくすることができる。
【0069】
次に、第6実施形態について、図17に基づいて説明する。第6実施形態は、変速用複式遊星歯車装置17の第2遊星歯車機構17のリングギヤR4を第5ブレーキB−5に連結したこと以外は第5実施形態と同一であるので、同一部分は図面に同一符号を付けて詳細説明を省略し、第5実施形態と異なる点のみについて説明する。各変速段における各クラッチ、ブレーキの作動状態を図18に示す。第5実施形態との相違点は、第8変速段が追加されたことである。
【0070】
第6実施形態の速度線図は図19、図20に示すようになる。第6実施形態においては、第1要素としてのリングギヤR4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結されるとともに第5ブレーキB−5に連結され、第2要素としての連結されたリングギヤR3とキャリヤC4は第2クラッチC−2及び第3ブレーキB−3に連結され、第3要素としてのキャリヤC3は出力軸18に連結され、第4要素としてのサンギヤS3とS4とは第3クラッチを介して互いに連結され、サンギヤS3は第4ブレーキに連結され、サンギヤS4は第6クラッチにより第2要素に係脱可能に連結されている。
【0071】
前進第8変速段の場合、変速用遊星歯車装置16のサンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、第2クラッチC−2の接続によりリングギヤR3に伝達された入力軸15の入力回転は、第5ブレーキB−5の作動により回転規制されたリングギヤR4により反力を支持されて、キャリヤC3延いては出力軸18を第8変速段のギヤ比0.630で正転駆動する。
【0072】
図19、図20の速度線図から明らかなように、第6実施形態においても各変速段におけるギヤ比は、適当な間隔をもって配列し、適切に離間した前進8段、後退2段のギヤ比を得ることができる。更に、ギヤ比の増加割合は高速段ほど概ね増加割合が小さくなり、第5実施形態と同様の効果を有する。第6実施形態におけるスプレッドは、4.707/0.630=7.48と更に大きくなる。
【0073】
次に、第7の実施形態について、図21に基づいて説明する。第7の実施形態は、入力軸15を第5クラッチC−5を介して減速用複式遊星歯車装置16の共通リングギヤR1,R2に連結したこと以外は第5の実施形態と同一であるので、同一部分は図面に同一符号を付けて詳細説明を省略し、第5実施形態と異なる点のみについて説明する。各変速段における各クラッチ、ブレーキの作動状態を図22に示す。第5実施形態との相違点は、第8変速段及び第5変速段の第2の生成状態5th'が追加されたことである。第8変速段及び第5変速段の第2の生成状態5th'以外においては、第5クラッチC−5が作動されて入力軸15が共通リングギヤR1,R2に接続されているが、第5実施形態では入力軸15と共通リングギヤR1,R2とが直結されているので実質的に同じである。第7実施形態の速度線図は図23、図24に示すようになる。第7実施形態においては、第1要素としてのリングギヤR4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結され、第2要素としての連結されたリングギヤR3とキャリヤC4は第2クラッチC−2及び第3ブレーキB−3に連結され、第3要素としてのキャリヤC3は出力軸18に連結され、第4要素としてのサンギヤS3とS4とは第3クラッチを介して係脱可能に連結され、サンギヤS3は第4ブレーキに連結され、サンギヤS4は第6クラッチC−6により第2要素に係脱可能に連結されている。
【0074】
前進第8変速段の場合、変速用複式遊星歯車装置17のサンギヤS3とS4とが第3クラッチC−3により接続されるので、第2クラッチC−2の接続によりリングギヤR3に伝達された入力軸15の入力回転は、第1、第2ブレーキB−1,B−2の作動により共通キャリヤC1,C2を介して回転規制されたリングギヤR4により反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第8変速段のギヤ比0.630で正転駆動する。
【0075】
なお、第5変速段は、第5実施形態と同様のクラッチ、ブレーキの作動状態の他に、第2、第3、第6クラッチC−2,C−3,C−6及び第1ブレーキB−1を作動して得ることができる。即ち、第2クラッチC−2によりリングギヤR3が入力軸15に接続されて入力回転され、第3、第6クラッチC−3,C−6の接続によりサンギヤS3とS4、キャリヤC4とサンギヤS4とが接続されて一体化された変速用複式遊星歯車機構17のキャリヤC3及び出力軸18が第5変速段のギヤ比1.000で正転駆動される。このとき、減速用複式遊星歯車装置16では、リングギヤR4に連結された共通キャリヤC1,C2が入力回転され、第1ブレーキB−1により小径サンギヤS2が回転規制されて共通リングギヤR1,R2が回転される。
【0076】
図23、図24の速度線図から明らかなように、第7実施形態においても各変速段におけるギヤ比は、適当な間隔をもって配列し、適切に離間した前進8段、後退2段のギヤ比を得ることができる。更に、ギヤ比の増加割合は高速段ほど概ね増加割合が小さくなり、第5実施形態と同様の効果を有する。第7実施形態におけるスプレッドは、4.707/0.630=7.48と十分に大きい。
【0077】
次に、減速用複式遊星歯車装置16は第1実施形態と同一構成にし、変速用複式遊星歯車装置の構成及び減速用及び変速用複式遊星歯車装置とブレーキ及びクラッチとの接続関係を変更した第8実施形態について説明する。図25において、変速用複式遊星歯車装置41は、共通軸線13上に回転可能に支承されたサンギヤ、リングギヤ、サンギヤとリングギヤとに噛合するピニオンを支承するキャリヤの3個の基本要素を備えたシングルピニオン型の第1及び第2遊星歯車機構42,43で構成されている。第1遊星歯車機構42のリングギヤR3と第2遊星歯車機構43のキャリヤC4とは連結されて第1連結要素R3,C4を形成し、第1遊星歯車機構42のキャリヤC3と第2遊星歯車機構43のリングギヤR4とは連結されて第2連結要素C3,R4を形成している。
【0078】
減速用複式遊星歯車装置16において、入力軸15に連結された共通リングギヤR1,R2と小径サンギヤとが第7クラッチC−7により係脱可能に連結されている。変速用複式遊星歯車装置17のサンギヤS4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結されるとともに第5ブレーキB−5に連結され、第1連結要素R3,C4は第2クラッチC−2により入力軸15に係脱可能に連結されるとともに第3ブレーキB−3に連結され、サンギヤS3は第4ブレーキB−4に連結されている。
【0079】
各変速段における各クラッチ、ブレーキの作動状態を図26に示す。図26には、減速用複式遊星歯車装置16の第1遊星歯車機構20のギヤ比λ1が0.756、第2遊星歯車機構21のギヤ比λ2が0.341、変速用複式遊星歯車装置41の第1遊星歯車機構42のギヤ比λ3が0.556、第2遊星歯車機構43のギヤ比λ4が0.444である場合における各変速段におけるギヤ比(入力軸15の回転数/出力軸18の回転数)及び変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合(当変速段のギヤ比/前変速段のギヤ比)が示されている。
【0080】
第8実施形態の速度線図は図28に示すようになる。第8実施形態の場合、第1要素としてのサンギヤS4は減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2に連結されるとともに第5ブレーキに連結され、第2要素としての連結要素R3,C4は第2クラッチにより入力軸15に係脱可能に連結されるとともに第3ブレーキB−3に連結され、第3要素としての第2連結要素C3,R4は出力軸18に連結され、第4要素としてのサンギヤS3は第4ブレーキB−4に連結されている。
【0081】
以下、各変速段の作動について説明する。前進第1変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第2ブレーキB−2の作動により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を回転数が入力回転より回転数が小さい第2回転で回転する。この第2回転は、第2遊星歯車機構43のサンギヤS4に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3に反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第1変速段のギヤ比3.941で正転駆動する。
【0082】
前進第2変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第1ブレーキB−1の作動により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を回転数が入力回転より小さく、第2回転より大きい第1回転で回転する。この第1回転はサンギヤS4に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3に反力を支持されて、キャリヤC3及び出力軸18を第2変速段のギヤ比3.011で正転駆動する。
【0083】
前進第3変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第7クラッチC−7により共通リングギヤR1,R2と小径サンギヤS2とが接続されて一体化された減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2からサンギヤS4に伝達され、第4ブレーキB−4により回転規制されたサンギヤS3に反力を支持されて、第2連結要素C3,R4延いては出力軸18を第3変速段のギヤ比2.244で正転駆動する。
【0084】
前進第4変速段の場合、第2クラッチC−2の接続により第1連結要素R3,C4に伝達された入力軸15の入力回転は、第4ブレーキB−4により回転を規制されたサンギヤS3に反力を支持されて第2連結要素C3,R4延いては出力軸18を第4変速段のギヤ比1.444で正転駆動する。
【0085】
前進第5変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第7クラッチC−7により共通リングギヤR1,R2と小径サンギヤS2とが接続されて一体化された減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2からサンギヤS4に伝達され、且つ第2クラッチC−2の接続により入力回転は第1連結要素R3,C4にも伝達されるので、変速用複式遊星歯車装置17は一体化されて入力回転で回転され、第2連結要素R3,C4延いては出力軸18は第5変速段のギヤ比1.000で正転駆動される。
【0086】
前進第6変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第1ブレーキB−1により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。第1連結要素R3,C4は第2クラッチC−2により入力軸15に接続されて入力回転される。変速用複式遊星歯車装置17は、共通キャリヤC1,C2と一体回転するサンギヤS4の第1回転と、第1連結要素R3,C4の入力回転との差に応じて第2連結要素C3,R4延いては出力軸18を第6変速段のギヤ比0.876で正転駆動する。
【0087】
前進第7変速段の場合、入力軸15と一体回転する共通リングギヤR1,R2の入力回転は、第2ブレーキB−2により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第2回転で回転する。第1連結要素R3,C4は第2クラッチC−2により入力軸15に接続されて入力回転される。変速用複式遊星歯車装置17は、共通キャリヤC1,C2と一体回転するサンギヤS4の第2回転と、第1連結要素R3,C4の入力回転との差に応じて第2連結要素C3,R4延いては出力軸18を第7変速段のギヤ比0.807で正転駆動する。
【0088】
前進第8変速段の場合、第2クラッチC−2の接続により第1連結要素R3,C4に伝達された入力軸15の入力回転は、第5ブレーキB−5により回転規制されたサンギヤS4に反力を支持されて第2連結要素C3,R4延いては出力軸18を第8変速段のギヤ比0.643で正転駆動する。
【0089】
後退第1変速段の場合、入力軸15と一体回転する共通リングギヤR1,R2の入力回転は、第2ブレーキB−2により回転規制された大径サンギヤS1に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第2回転で回転する。この第2回転は変速用複式遊星歯車装置17のサンギヤS4に伝達され、第3ブレーキB−3の作動により第1連結要素R3,C4が回転規制されるので、第2連結要素C3,R4延いては出力軸18は後退第1変速段のギヤ比3.161で逆転駆動される。
【0090】
後退第2変速段の場合、入力軸15と一体回転する共通リングギヤR1,R2の入力回転は、第1ブレーキB−1により回転規制された小径サンギヤS2に反力を支持されて、共通キャリヤC1,C2を第1回転で回転する。この第1回転はサンギヤS4に伝達され、第3ブレーキB−3の作動により第1連結要素R3,C4が回転規制されるので、第2連結要素C3,R4延いては出力軸18は後退第2変速段のギヤ比2.415で逆転駆動される。
【0091】
後退第3変速段の場合、入力軸15から共通リングギヤR1,R2に伝達された入力回転は、第7クラッチC−7により共通リングギヤR1,R2と小径サンギヤS2とが接続されて一体化された減速用複式遊星歯車装置16の共通キャリヤC1,C2から変速用複式遊星歯車装置16のサンギヤS4に伝達され、第1連結要素R3,C4は第3ブレーキB−3の作動により回転規制されるので、第2連結要素C3,R4延いては出力軸18は後退第3変速段のギヤ比1.800で逆転駆動される。
【0092】
図27の速度線図から明らかなように、第8実施形態においても各変速段におけるギヤ比は、適当な間隔をもって配列し、適切に離間した前進8段、後退3段のギヤ比を得ることができる。さらに、変速段が1段アップしたときのギヤ比の増加割合は、図26に示すように、第1、第2変速段の間は1.309、第2、第3変速段の間は1.341、第3、第4変速段の間は1.554、第4、第5変速段の間は1.444、第5、第6変速段の間は1.141、第6、第7変速段の間は1.086、第7、第8変速段の間は1.255となり、高速段ほど概ね増加割合が小さくなり、車速の高速度域でエンジン性能を最適に引き出すことができ、且つギヤチェンジ時のギヤ比の変化割合延いては出力トルクの変化割合が小さくなり、良好なフィーリングを得ることができる。また、最低速度段のギヤ比を最高速度段のギヤ比で割ったスプレッドは、3.941/0.643=6.131と十分大きいので、低速度段において加速性能を高くし、高速度段において燃費をよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る自動変速装置の第1実施形態を示すスケルトン図である。
【図2】 第1実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【図3】 第1実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図である。
【図4】 第2実施形態を示すスケルトン図である。
【図5】 第2実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【図6】 第2実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図である。
【図7】 第3実施形態を示すスケルトン図である。
【図8】 第3実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【図9】 第3実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図である。
【図10】 第4実施形態を示すスケルトン図である。
【図11】 第4実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【図12】 第4実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図である。
【図13】 第5実施形態を示すスケルトン図である。
【図14】 第5実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【図15】 第5実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図である。
【図16】 第5実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図を補足する図である。
【図17】 第6実施形態を示すスケルトン図である。
【図18】 第6実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【図19】 第6実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図である。
【図20】 第6実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図を補足する図である。
【図21】 第7実施形態を示すスケルトン図である。
【図22】 第7実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【図23】 第7実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図である。
【図24】 第7実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図を補足する図である。
【図25】 第8実施形態を示すスケルトン図である。
【図26】 第8実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【図27】 第8実施形態の各変速段における遊星歯車装置の各要素の回転比を示す速度線図である。
【符号の説明】
10・・・自動変速機、11・・・流体トルクコンバータ、12・・・トランスミッションケース、13・・・共通軸線、15・・・入力軸、16・・・減速用複式遊星歯車装置、17,41・・・変速用複式遊星歯車装置、18・・・出力軸、22・・・小径ピニオン、23・・・大径ピニオン、24・・・段付ピニオン、20,21,25,26,42,43・・・遊星歯車機構、S1,S2,S3,S4・・・サンギヤ、C1,C2,C3,C4・・・キャリヤ、R1,R2,R3,R4・・・リングギヤ、R3,C4・・・第1連結要素、C3,R4・・・第2連結要素、C−1〜C−7・・・第1乃至第7クラッチ、B−1〜B−5・・・第1乃至第5ブレーキ。

Claims (9)

  1. 小径及び大径サンギヤ、該小径及び大径サンギヤと夫々噛合する大径及び小径ピニオンからなる段付ピニオンを支承する共通キャリヤ並びに入力軸に連結され前記大径ピニオンと噛合する共通リングギヤを有し、前記小径及び大径サンギヤの回転が第1、第2ブレーキにより選択的に規制されて前記共通キャリヤに前記入力軸の回転より回転数が小さい第1回転又は該第1回転より回転数が小さい第2回転を生成する減速用複式遊星歯車装置と、第1及び第2遊星歯車機構で構成され速度線図においてギヤ比に対応した間隔で順次並べられた4個の要素に並び順にそれぞれ対応する第1、第2、第3及び第4要素を有する変速用複式遊星歯車装置とを設け、前記減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤを前記変速用複式遊星歯車装置の前記第1要素に連結し、前記入力軸を前記第2要素に第2クラッチを介して連結し、前記第2、第4要素を第3、第4ブレーキに夫々連結し、前記第3要素を出力軸に連結し
    前記変速用複式遊星歯車装置は、
    前記減速用複式遊星歯車装置から前記第1回転及び前記第2回転の選択された方が前記第1要素に伝達された場合に、前記第4ブレーキにより前記第4要素が回転規制されることにより前記入力軸の回転数より前記出力軸の回転数が小さい減速段を形成し、
    前記減速用複式遊星歯車装置から前記第1回転及び前記第2回転の選択された方が前記第1要素に伝達された場合に、前記入力軸の回転が前記第2クラッチで前記第2要素に伝達されることにより前記入力軸の回転数より前記出力軸の回転数が大きい増速段を形成することを特徴とする自動変速機。
  2. 請求項1に記載の自動変速機において、前記減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤと大径サンギヤとを第1クラッチにより係脱可能に連結し、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを前記第1要素とし、前記第1遊星歯車機構のリングギヤと前記第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して前記第2要素とし、前記第1遊星歯車機構のキャリヤを前記第3要素とし、前記第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチを介して連結して前記第4要素とし、前記第1遊星歯車機構のサンギヤを前記第4ブレーキに連結したことを特徴とする自動変速機。
  3. 請求項2に記載の自動変速機において、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを第5ブレーキに連結したことを特徴とする自動変速機。
  4. 請求項2に記載の自動変速機において、前記入力軸を第5クラッチを介して前記減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤに連結したことを特徴とする自動変速機。
  5. 請求項1に記載の自動変速機において、前記変速用複式遊星歯車装置の前記第1要素を前記第2ブレーキと前記減速用複式遊星歯車装置の共通キャリヤに第1、第4クラッチにより夫々係脱可能に連結し、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを前記第1要素とし、前記第1遊星歯車機構のリングギヤと前記第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して前記第2要素とし、前記第1遊星歯車機構のキャリヤを前記第3要素とし、前記第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチを介して連結して前記第4要素とし、前記第1遊星歯車機構のサンギヤを前記第4ブレーキに連結したことを特徴とする自動変速機。
  6. 請求項1に記載の自動変速機において、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを前記第1要素とし、前記第1遊星歯車機構のリングギヤと前記第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して前記第2要素とし、前記第1遊星歯車機構のキャリヤを前記第3要素とし、前記第1及び第2遊星歯車機構の各サンギヤを第3クラッチを介して連結して前記第4要素とし、前記第1遊星歯車機構のサンギヤを前記第4ブレーキに連結し、前記第2遊星歯車機構のサンギヤと前記第2要素とを第6クラッチを介して連結したことを特徴とする自動変速機。
  7. 請求項6に記載の自動変速機において、前記第2遊星歯車機構のリングギヤを第5ブレーキに連結したことを特徴とする自動変速機。
  8. 請求項6に記載の自動変速機において、前記入力軸を第5クラッチを介して前記減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤに連結したことを特徴とする自動変速機。
  9. 請求項1に記載の自動変速機において、前記減速用複式遊星歯車装置の共通リングギヤと小径サンギヤとを第7クラッチにより係脱可能に連結し、前記第2遊星歯車機構のサンギヤを前記第1要素とするとともに第5ブレーキに連結し、前記第1遊星歯車機構のリングギヤと前記第2遊星歯車機構のキャリヤとを連結して前記第2要素とし、前記第1遊星歯車機構のキャリヤと前記第2遊星歯車機構のリングギヤとを連結して前記第3要素とし、前記第1遊星歯車機構のサンギヤを前記第4要素としたことを特徴とする自動変速機。
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