JP4590682B2 - リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム二次電池用正極材料に関し、更にはそれを使用した正極及びリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池の正極活物質として、LiCoO2やLiNiO2、LiMn2O4などのリチウム遷移金属複合酸化物が実用段階に入った。しかし一方で、高温環境下になると、サイクル特性や保存特性といった実用に際して重要な特性が、支障をきたすレベルに低下してしまうという問題点がある。特に、LiMn2O4などのリチウムマンガン酸化物からなるマンガン系正極活物質は、成分となるマンガンがコバルトやニッケルに比較して埋蔵量が多く、安価であり、加えて過充電での安全性も高いというメリットを有している一方で、LiCoO2等のリチウムコバルト酸化物やLiNiO2等のリチウムニッケル酸化物の場合よりも、高温環境下におけるサイクル特性の低下が顕著であり、一層問題である。
【0003】
上記問題を克服するため、高温環境下での特性改良を目的とした検討が精力的に行われ、報告されている。例えば、J.Electrochem.soc.,Vol.145,No.8(1998)2726-2732ではリチウムマンガン酸化物のMnの一部をGaやCrのような他元素で置換したものが開示され、Electrochemical Society Proceedings Volume97-18.494 ではMnの一部をCoで置換したり、酸素の一部をFで置換して結晶構造の安定性向上を図ったものが開示されている。しかし、これらは負極として金属リチウムを使用した時の結果であって、炭素材料のような実用的な負極材料との組み合わせにおいては、さらなる性能の向上が求められているのが実情である。
【0004】
また、マンガン系リチウム二次電池においては高温環境下でマンガンが溶出しやすいことが高温保存劣化や高温サイクル劣化の問題点として指摘されており、例えば正極活物質表面を処理したり、正極材中にMn溶出抑制効果のある物質を添加するといった検討も鋭意行われている。しかしながら、近年のリチウム二次電池の高性能化の要求レベルは高く、高温環境下でのサイクル特性は更なる性能向上が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
リチウム遷移金属酸化物を正極活物質として使用したリチウム二次電池は、高温環境下において該活物質が活性な状態となり、それ自体の変質のみならず、電解液の分解、負極表面に形成された被膜の破壊等々、様々な悪影響を及ぼすものと考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、その目的は、高温環境下での活性化状態の緩和・低減を図り、以て高温サイクル特性をはじめとする高温特性の改善されたリチウム二次電池用正極材料を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる課題を解決するためには、高温環境下、電池内部で安定に存在できるような添加剤を用いて触媒活性の低減を図ることが重要と考え、そのような添加剤を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、ある種の有機化合物を存在させることによって、高温での特性が改善されることを見出し、本発明に至った。前述のある種の有機化合物とは、環形成原子として炭素原子以外に少なくとも硫黄原子を含む複素環式化合物である。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、下記(1)〜(15)に存する。
(1)リチウム遷移金属酸化物及び、環の構成原子として硫黄原子を含む複素環式化合物を含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極材料。
(2)前記複素環式化合物が、サッカリン、サッカリン誘導体、チオサッカリン、チオサッカリン誘導体及び/又は擬サッカリン誘導体であることを特徴とする(1)に記載のリチウム二次電池用正極材料。
【0009】
(3)前記複素環式化合物が、チアントレン及び/又はチアントレン誘導体であることを特徴とする(1)に記載のリチウム二次電池用正極材料。
(4)前記複素環式化合物が、下記一般式(I)
【0010】
【化4】
【0011】
(上記一般式(I)中、R1は酸素原子又は硫黄原子を表し、R2は水素原子、炭素数1〜3の低級アルキル基、フェニル基、アシル基、ビニル基、ニトロ基、アミノ基、アルカリ金属元素、ヒドロキシル基又はメルカプト基を表す。)で表される化合物、又は下記一般式(II)
【0012】
【化5】
【0013】
(上記一般式(II)中、Zはアルコキシ基、アリルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を表す。)で表される化合物である請求項1に記載のリチウム二次電池用正極材料。
【0014】
(5)前記複素環式化合物が、下記一般式(III)
【0015】
【化6】
【0016】
(上記一般式(III)中、a1及びa2はそれぞれ独立して0〜4の整数を表す。R3及びR4はそれぞれ独立して、またa1が2〜4の整数を表す場合は複数のR3もそれぞれ独立して、a2が2〜4の整数を表す場合は複数のR4もそれぞれ独立してアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ホルミル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミノ基、スルホンアミド基、オキシカルボニルアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、ウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、スルファモイル基、カルボン酸基若しくはその塩、スルホン酸基若しくはその塩、ホスホン酸基若しくはその塩、又は複素環基を表す。)で表される化合物である(1)に記載のリチウム二次電池用正極材料。
【0017】
(6)リチウム遷移金属酸化物と前記複素環式化合物とが、物理混合してなる(1)乃至(5)のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用正極材料。
(7)前記複素環式化合物のリチウム遷移金属酸化物に対する割合が、0.0001〜20モル%である(1)乃至(6)のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用正極材料。
【0018】
(8)リチウム遷移金属酸化物が、遷移金属サイトの一部が他元素で置換されたリチウム遷移金属酸化物である(1)乃至(7)のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用正極材料。
(9)遷移金属サイトを置換する他元素が、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga及びZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素である(8)に記載のリチウム二次電池用正極材料。
【0019】
(10)リチウム遷移金属酸化物が、リチウムマンガン酸化物である(1)乃至(9)のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用正極材料。
(11)(1)乃至(10)のいずれか1つのリチウム二次電池用正極材料とバインダーとを含有するリチウム二次電池用正極。
(12)リチウム遷移金属酸化物と前記複素環式化合物とが、分散して存在してなる(11)に記載のリチウム二次電池用正極。
【0020】
(13)(11)又は(12)に記載のリチウム二次電池用正極材料を含有する正極、負極及び電解質を有することを特徴とするリチウム二次電池。
(14)リチウム遷移金属酸化物を含有する正極と、負極と、電解質層とを有するリチウム二次電池において、正極及び負極の少なくとも1つに、(1)乃至(5)のいずれかに記載の複素環式化合物が含まれていることを特徴とするリチウム二次電池。
【0021】
(15)負極が炭素材料からなる(13)又は(14)に記載のリチウム二次電池。
環の構成原子として硫黄原子を含む複素環式化合物が改善効果を発揮した理由についての詳細は明らかではなく現在解明中であるが、前記化合物によって高温環境下で主として正極活物質の活性化状態が緩和・低減されたものと考えられ、更に副次的に電解液や負極表面に対しても、安定化剤として作用しているものと考えられる。
【0022】
【発明の実施の形態】
従来、電解液にある種の有機系添加剤を加えることにより電池の特性を改良する試みが種々行われており、同様に本発明で用いる複素環式化合物を電解液に加えることにより高温サイクル特性の改善を行うことが考えられなくはない。しかし、正極活物質と電解液界面で起こる劣化反応の進行を効果的に抑制できない可能性が高い。加えてこれら本発明で用いる複素環式化合物は電解液に難溶なものもあり、添加量を制御するのが困難と思われる。例え可能だとしても、電解液の種類に拘束されてしまう恐れがある。本発明は、本発明で用いる複素環式化合物をリチウム二次電池用正極材料中に含有させることにより、効果的かつ電解液の種類に無関係に高温サイクル特性の改善を可能にしたものである。
【0023】
本発明において用いられる環の構成原子として硫黄原子を含む複素環式化合物は、単環式、多環式(縮合多環式を含む)のいずれでもよく、好ましくは縮合多環式である。また、芳香族、非芳香族のいずれでも構わない。さらに異性体が存在する場合、特定の異性体に限定されない。本発明において用いられる複素環式化合物が多環式の場合、環数は好ましくは2〜5個、特に好ましくは2〜3個である。発明において用いられる複素環式化合物の環の構成原子である硫黄原子の数は1以上であればよく、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個である。なお、 本発明において用いられる複素環式化合物の分子量としては、好ましくは58以上、より好ましくは100以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下である。
【0024】
具体的な化合物としては、例えば、チアジアジン、チアジアゾリジン、チアジアゾール、チアジン、チアゾリジン、チアゾリン、チアゾール、イソブチルチアゾール、チアザフルロン、チアゾスルフォン、チエチルペラジン、ベンゾチアゾール、アミノチアゾール、アミノチオフェン、ベンゾチアゾリン、ベンゾチアゾロン、チオフェン、ベンゾチオフェン、チアン、ジチアゾリジン、ジチアン、ジチイン、ジチオラン、ジチオール、チアントレン、2,7−ジメチル−チアントレン、チイラン、チイレン、チエタン、チエニル、チオフテン、チエピン、チオキサン、チオキサンテン、チオクト酸アミド、チオシクラム、チオキサントン、チオクロマノン、チオクロム、チオニン、チオピラン、チオモルホリン、チオラン、チオチキセン、チオプロペラジン、チオリダジン、チジアズロン、トリチアン、ベンゾイソチアゾール、サッカリン、サッカリンナトリウム、チオサッカリン、アセタゾラミド、アゾセミド、アリメマジン、ウロチオン、エチジムロン、エチゾラム、エチレントリチオ炭酸、オキシカルボキシン、ンーオキシジエチレンー2ーベンゾチアゾールスルフェンアミド、3−カルボキシメチル−5−[2−(3−エチル−2−チアゾリジニリデン)エチリデン]ローダニンカルボキシン、N−N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ンーシクロヘキシル−N−(イソプロピルチオ)−2−ベンゾチアゾールスルホンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンスルフォン、2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、スルチアム、スルファメチゾール、スルホラン、3−スルホレン、セファゾリンナトリウム、セファトリアキソン、セファトリジンプロピレングリコール、セファドロキシル、セファピリンナトリウム、セファマンドールナトリウム、セファレキシン、セファログリシン、セファロスポロンC、セファロチンナトリウム、セファロリジン、セフォキシチンナトリウム、セフォキシムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフズロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシムナトリウム、セフテゾールナトリウム、セフトリアクソンナトリウム、セフメタゾールナトリウム、セフラジン、セフロキサジン、セフロキシムナトリウム、セホニシド、ゾテピン、ダゾメット、テトラチアフルバレン、テトラヒドロチオフェン、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、テトラメチレンスルホキシド、テノキシカム、テモシリン、トリシクラゾール、トリフルプロマジン、トリフロペラジン、ネライストキシン、2,8−ジフェニルアントラ[2,1−d:6,5−d’]ビスチアゾール−6,12−ジオン、チオインジゴ、ピランテル、ファモチジン、フェノキサチイン、フェノチアジン、フェノールスルホンフタレイン、1,4−ブタンスルトン、ブチダゾール、4ーブチロチオラクトン、フルフェナジン、プロチジン酸、プロフェナミン、プロベナゾール、プロメタジン、ペラジン、ペルフェナジン、ペンタメチレンスルフィド、ホスホラン、ホタルルシフェリン、メタベンズチアズロン、メチアジン酸、メチクラン、3−メチル−チアゾリンチオン、メトジラジン、2−(4−モルホリニルジチオ)ベンゾチアゾール等を挙げることができる。
【0025】
これら化合物のうち、サッカリン、サッカリン誘導体、チオサッカリン、チオサッカリン誘導体、擬サッカリン誘導体、チアントレン及びチアントレン誘導体が好ましく、サッカリン、サッカリン誘導体としては下記一般式(I)で表される化合物が挙げられ、チオサッカリン、チオサッカリン誘導体、擬サッカリン誘導体としては下記一般式(II)で表される化合物が挙げられ、チアントレン及びチアントレン誘導体としては下記一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【化7】
【0027】
(上記一般式(I)中、R1は酸素原子又は硫黄原子を表し、R2は水素原子、炭素数1〜3の低級アルキル基、フェニル基、アシル基、ビニル基、ニトロ基、アミノ基、アルカリ金属元素、ヒドロキシル基又はメルカプト基を表す。)
【0028】
【化8】
【0029】
(上記一般式(II)中、Zはアルコキシ基、アリルオキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を表す。)
【0030】
【化9】
【0031】
(上記一般式(III)中、a1及びa2はそれぞれ独立して0〜4の整数を表す。R3及びR4はそれぞれ独立して、またa1が2〜4の整数を表す場合は複数のR3もそれぞれ独立して、a2が2〜4の整数を表す場合は複数のR4もそれぞれ独立してアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ホルミル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミノ基、スルホンアミド基、オキシカルボニルアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、ウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、スルファモイル基、カルボン酸基若しくはその塩、スルホン酸基若しくはその塩、ホスホン酸基若しくはその塩、又は複素環基を表す。)
これらの化合物のうち、安全性、汎用性、コストの点でサッカリン、及びサッカリンナトリウムといったサッカリン誘導体が特に好ましい。なお、本発明でもちいる複素環式化合物は、無論複数種を併用してよい。
【0032】
本発明で用いる複素環式化合物の好ましい構造としては、該化合物中の硫黄原子の作用のし易さを勘案すると、硫黄原子の周囲に立体障害性の高い官能基を持たないものが望ましい。
前記複素環式化合物の使用量は、リチウム遷移金属酸化物に対して、通常0.0001モル%以上、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.01モル%以上、最も好ましくは0.1モル%以上であり、また、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下、最も好ましくは2モル%以下である。使用量が多くなると放電容量や高温サイクル特性が低下する可能性があり、逆に少なくなると高温サイクル向上効果を得難くなる可能性がある。
【0033】
リチウム遷移金属酸化物を含む正極材料中に本発明で使用する複素環式化合物を存在させるには、例えば物理混合の外、表面処理により活物質粒子表面に該複素環式化合物の被膜を形成させる方法を採用することができる。ただし、熱処理等による被覆は複素環式化合物が損失したり、変質する可能性が高く、目的とする効果を失ってしまう恐れがある。一方、物理混合は、簡便な添加法であり、かつ変質の影響がなく、本来の効果を十分に発揮しうる点で好ましい。なお、本発明における物理混合とは、複数の物質を単に混ぜ合わせることを意味し、混合物が化学変化してしまう程の高温での熱処理などを伴わない混合を意味する。複数の物質をかき混ぜて正極材料中に本発明で使用する複素環式化合物を分散させたものが好ましく、均一に分散されていることが好ましい。物理混合は、乾式混合でも湿式混合でもよい。物理混合には、乳鉢、ボールミル、ジェットミル、レディゲミキサー等を使用することができる。また正極材料中に有効に留まらせるために、電解液に溶解しにくいものが好ましい。
【0034】
本発明において、リチウム遷移金属酸化物は活物質として用いられている。なお、本発明において活物質とは該電池の起電反応のもとになる主要物質であり、Liイオンを吸蔵・放出できる物質を意味する。リチウム遷移金属酸化物は、活物質としてLiを可逆的に吸蔵・放出できるものであればよく、リチウム遷移金属酸化物中に使用される遷移金属としては、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、バナジウム、チタン、銅等を挙げることができる。好ましくは、マンガン、ニッケル、コバルトであり、特に好ましくはマンガン、ニッケルである。無論、これらを複数使用することもできる。好ましいリチウム遷移金属としては、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウム鉄酸化物、リチウムクロム酸化物、リチウムバナジウム酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウム銅酸化物等を挙げることができる。具体的な組成式としては、例えば一般式LiMn2O4、LiMnO2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiCrO2、Li1+xV3O8、LiV2O4、LiTi2O4、Li2CuO2、LiCuO2で表されるような化合物等を挙げることができる。本発明の効果が顕著である点で、好ましくはリチウムマンガン酸化物、特に一般式LiMn2O4で表されるようなスピネル構造を有するリチウムマンガン酸化物である。なお、上記の組成において、少量の酸素欠損、不定比性を持っていてもよい。また、酸素サイトの一部が硫黄やハロゲン元素で置換されていてもよい。更に、リチウム遷移金属酸化物の遷移金属が占めるサイトの一部を遷移金属以外の元素で置換してもよい。
【0035】
本発明で使用するリチウム遷移金属酸化物としては、特定の遷移金属をベースとして、該遷移金属サイトの一部が他の元素で置換されているのが好ましい。その結果、結晶構造の安定性を向上させることができ、これと前記複素環式化合物とを組み合わせることで相乗的に高温特性の向上を図ることができる。この効果は、特にリチウムマンガン複合酸化物を使用した際に顕著である。
【0036】
この際の置換する他元素(以下、置換元素と表記する)としては、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr等が挙げられ、好ましくはAl、Cr、Fe、Co、Li、Ni、Mg、Ga、更に好ましくはAlである。なお、遷移金属サイトは2種以上の他元素で置換されていてもよい。
【0037】
置換元素による置換割合は通常ベースとなる遷移金属元素の2.5モル%以上、好ましくはベースとなる遷移金属元素の5モル%以上であり、通常ベースとなる遷移金属元素の30モル%以下、好ましくはベースとなる遷移金属元素の20モル%以下である。置換割合が少なすぎるとその高温サイクルの改善効果が充分ではない場合があり、多すぎると電池にした場合の容量が低下してしまう場合がある。
【0038】
本発明で用いるリチウム遷移金属酸化物の比表面積は、通常0.01m2/g以上、好ましくは0.3m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上であり、また通常10m2/g以下、好ましくは1.5m2/g以下、より好ましくは1.0m2/g以下である。比表面積が小さすぎるとレート特性の低下、容量の低下を招き、大きすぎると電解液等と好ましくない反応を引き起こし、サイクル特性を低下させることがある。比表面積の測定はBET法に従う。
【0039】
本願発明で用いるリチウム遷移金属酸化物の平均粒径は、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上、最も好ましくは0.5μm以上であり、通常300μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、最も好ましくは20μm以下である。平均粒径が小さすぎると電池のサイクル劣化が大きくなったり、安全性に問題が生じたりする場合があり、大きすぎると電池の内部抵抗が大きくなり、出力が出にくくなる場合がある。
【0040】
本発明の正極材料は、リチウム二次電池の正極に使用することができる。
本発明の正極は、上記正極材料とバインダーとを有する。好ましくは、正極は、正極集電体と、正極材料とバインダーとを含有する正極層とからなる。正極層中のリチウム遷移金属酸化物と前記複素環式化合物とは、相互に分散して存在させるのが、本発明の効果を十分に発揮しうる点で好ましい。このような正極層は、リチウム遷移金属酸化物、前記複素環式化合物、後述の結着剤( バインダー) 及び必要に応じて導電剤を溶媒でスラリー化したものを正極集電体に塗布し、乾燥することにより製造することができる。スラリー調製前に、事前にリチウム遷移金属酸化物と前記複素環式化合物とを物理混合しておくこともできる。
【0041】
正極中には、LiFePO4等のように、リチウム遷移金属酸化物以外のリチウムイオンを吸蔵・放出しうる活物質をさらに含有していてもよい。
正極中の活物質の割合は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。多すぎると電極の機械的強度が劣る傾向にあり、少なすぎると容量等電池性能が劣る傾向にある。
【0042】
また、正極に使用されるバインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等が挙げられる。正極層中のバインダーの割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。バインダーの割合が低すぎると、活物質を十分に保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させることがあり、一方高すぎると電池容量や導電性を下げることがある。
【0043】
正極層は、通常導電性を高めるため導電剤を含有する。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛や、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料を挙げることができる。正極中の導電剤の割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。導電剤の割合が低すぎると導電性が不十分になることがあり、逆に高すぎると電池容量が低下することがある。
【0044】
また、スラリー溶媒としては、通常はバインダーを溶解あるいは分散する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加えてSBR等のラテックスで活物質をスラリー化することもできる。
【0045】
正極層の厚さは、通常1〜1000μm、好ましくは10〜200μm程度である。厚すぎると導電性が低下する傾向にあり、薄すぎると容量が低下する傾向にある。
正極に使用する集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が用いられ、好ましくはアルミニウムである。集電体の厚さは、通常1〜1000μm、好ましくは5〜500μm程度である。厚すぎるとリチウム二次電池全体としての容量が低下し、薄すぎると機械的強度が不足することがある。
【0046】
なお、塗布・乾燥によって得られた正極層は、活物質の充填密度を上げるためローラープレス等により圧密されるのが好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、リチウム遷移金属酸化物を活物質として用いた正極と、負極と、電解質層とを有する。そして、正極、負極及び電解質層の少なくとも1つに前記複素環式化合物が含まれてなる。その結果、高温環境下でも優れた特性を有するリチウム二次電池とすることができる。使用する複素環式化合物や正極活物質、正極については、前記同様である。
【0047】
前記複素環式化合物は、正極活物質の活性化状態の緩和・低減と共に、負極表面に対する安定化剤としても作用すると考えられるため、正極及び負極のどこに存在していてもよいが、正極に含まれるのが本発明の効果を十分に発揮する上で好ましい。この好ましい態様は、前記本発明の正極材料を含む正極を使用したリチウム二次電池と捉えることができる。従って、該好ましい態様における前記複素環式化合物とリチウム遷移金属との量比は前記同様である。
【0048】
本発明の二次電池の負極に使用される負極の活物質としては、リチウムやリチウムアルミニウム合金合金などのリチウム合金であっても良いが、より安全性の高いリチウムを吸蔵、放出できる炭素材料が好ましい。
前記炭素材料は特に限定されないが、黒鉛及び、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、あるいはこれらピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0049】
さらに、SnO、SnO2、Sn1-xMxO(M=Hg、P、B、Si、GeまたはSb、ただし0≦x<1)、Sn3O2(OH)2 、Sn3-xMxO2(OH)2(M=Mg、P、B、Si、Ge、Sb又はMn、ただし0≦x<3)、LiSiO2、SiO2又はLiSnO2等を挙げることができる。
なお、これらの中から選ばれる2種以上の混合物として用いてもよい。
【0050】
負極は通常、正極の場合と同様、負極層を集電体上に形成されてなる。この際使用するバインダーや、必要に応じて使用される導電剤やスラリー溶媒としては、正極で使用するものと同様のものを使用することができる。また、負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用され、好ましくは銅が用いられる。
【0051】
正極と負極との間にセパレーターを使用する場合は、微多孔性の高分子フィルムが用いられ、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン高分子よりなるものが用いられる。セパレータの化学的及び電気化学的安定性は重要な因子である。この点からポリオレフィン系高分子が好ましく、電池セパレータの目的の一つである自己閉塞温度の点からポリエチレン製であることが望ましい。
【0052】
ポリエチレンセパレーターの場合、高温形状維持性の点から超高分子量ポリエチレンであることが好ましく、その分子量の下限は好ましくは50万、さらに好ましくは100万、最も好ましくは150万である。他方分子量の上限は、好ましくは500万、更に好ましくは400万、最も好ましくは300万である。分子量が大きすぎると、流動性が低すぎて加熱された時セパレーターの孔が閉塞しない場合があるからである。
【0053】
また、本発明のリチウム二次電池における電解質層を構成する電解質には、例えば公知の有機電解液、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質等を用いることができるが、中でも有機電解液が好ましい。有機電解液は、有機溶媒と溶質から構成される。
有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等を使用することができる。これらの代表的なものを列挙すると、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等の単独もしくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。
【0054】
上述の有機溶媒には、電解質を解離させるために高誘電率溶媒が含まれることが好ましい。ここで、高誘電率溶媒とは、25℃における比誘電率が20以上の化合物を意味する。高誘電率溶媒の中で、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びそれらの水素原子をハロゲン等の他の元素又はアルキル基等で置換した化合物が電解液中に含まれることが好ましい。高誘電率化合物の、電解液に占める割合は、好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは40重量%以上である。該化合物の含有量が少ないと、所望の電池特性が得られない場合があるからである。
【0055】
またこの溶媒に溶解させる溶質として特に限定されるものではないが、従来公知のいずれもが使用でき、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4 、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3、LiN(SO3CF3)2等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種以上のものを用いることができる。また、CO2 、 N2O、CO、SO2 等のガスやポリサルファイドSx 2-など負極表面にリチウムイオンの効率よい充放電を可能にする良好な皮膜を生成する添加剤を任意の割合で上記単独又は混合溶媒に添加してもよい。
【0056】
高分子固体電解質を使用する場合にも、この高分子に公知のものを用いることができ、特にリチウムイオンに対するイオン導電性の高い高分子を使用することが好ましく、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン等が好ましく使用され、またこの高分子に対して上記の溶質と共に、上記の溶媒を加えてゲル状電解質として使用することも可能である。
【0057】
無機固体電解質を使用する場合にも、この無機物に公知の結晶質、非晶質固体電解質を用いることができる。結晶質の固体電解質としては例えば、LiI、Li3N、Li1+xMxTi2-x(PO4)3(M=Al,Sc,Y,La)、Li0.5-3xRE0.5+xTiO3(RE=La,Pr,Nd,Sm)等が挙げられ、非晶質の固体電解質としては例えば、4.9 LiI−34.1Li2O−61B2O5,33.3Li2O−66.7SiO2 等の酸化物ガラスや0.45LiI−0.37Li2S−0.26B2S3,0.30LiI−0.42Li2S−0.28SiS2等の硫化物ガラス等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種以上のものを用いることができる。
【0058】
【実施例】
以下実施例によって本発明の方法をさらに具体的に説明する。
実施例1
リチウム遷移金属酸化物としてLi1.04Mn1.85Al0.11O4なる、Mnサイトの一部がLiとAlで置換された立方晶スピネル構造を有するリチウムマンガン酸化物を使用し、これにサッカリンを、リチウムマンガン酸化物に対して1モル%の割合で添加混合したものを正極材料として用いた。なお、ここで用いたリチウムマンガン酸化物のBET比表面積は0.9m2/g、5分間の超音波分散後のSEM写真による粒度分布から求めたメジアン径は7.4μmであった。
【0059】
実施例2
実施例1と同様のリチウムマンガン酸化物を使用し、これにチアントレンをリチウムマンガン酸化物に対して1モル%の割合で添加混合したものを正極材料として用いた。
実施例3
実施例1と同様のリチウムマンガン酸化物を使用し、これに1,3,5−トリチアンをリチウムマンガン酸化物に対して1モル%の割合で添加混合したものを正極材料として用いた。
【0060】
比較例1
実施例1と同様のリチウムマンガン酸化物を、そのまま正極材料としたこと、即ち、複素環式化合物を使用しなかったこと以外実施例1と同様にして正極材料を得た。
試験例(電池評価)
以下の方法で本発明の実施例、比較例の電池評価を行った。
【0061】
1. 正極の作成と容量確認
正極材料を75重量% 、アセチレンブラックを20重量%、ポリテトラフロロエチレンパウダーを5重量%の割合で秤量したものを乳鉢で十分混合し、薄くシート状にし、9mmφ、12mmφのポンチで打ち抜いた。この際全体重量は各々約8mmg、約18mgになるように調整した。これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。
【0062】
次に、正極の容量を確認した。
即ち、9mmφに打ち抜いた前記正極を試験極、Li金属を対極として電池セルを組んだ。この電池セルに0.5mA/cm2の定電流充電すなわち、正極からリチウムイオンを放出させる反応を上限4.35Vで行い、ついで0.5mA/cm2の定電流放電すなわち正極にリチウムイオンを吸蔵させる試験を下限3.2Vで行った。この際の正極活物質単位重量当たりの初期充電容量をQs(C)(mAh/g) 、初期放電容量をQs(D)(mAh/g)とした。
【0063】
2. 負極の作成と容量確認
負極活物質としての平均粒径約8〜10μm の黒鉛粉末(d002=3.35Å)と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを重量比で92.5:7.5の割合で秤量し、これをN−メチルピロリドン溶液中で混合し、負極合剤スラリーとした。このスラリーを20μm厚さの銅箔の片面に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mmφに打ち抜き、0.5ton/cm2でプレス処理をしたものを負極とした。
【0064】
なお、この負極を試験極、Li金属を対極として電池セルを組み、0.2mA/cm2の定電流で負極にLiイオンを吸蔵させる試験を下限0Vで行った際の負極活物質単位重量当たりの初期吸蔵容量をQf(mAh/g)とした。
3. 電池セルの組立
コイン型セルを使用して、電池性能を評価した。即ち、正極缶の上に12mmφに打ち抜いた前記正極を置き、その上にセパレータとして25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケットで押さえた後、前記負極を置き、厚み調整用のスペーサーを置いた後、非水電解液溶液として、1モル/リットルの六フッ化リン酸リチウム( LiPF6)を溶解させたエチレンカーボネート( EC) とジエチルカーボネート( DEC) との体積分率3:7の混合溶媒を用い、これを電池内に加えて充分しみ込ませた後、負極缶を載せ電池を封口した。
【0065】
なお、この時、正極活物質の重量と負極活物質重量のバランスは、ほぼ
【0066】
【数1】
正極活物質量〔g〕/負極活物質量〔g〕=(Qf/1.2)/Qs(C)
となるよう設定した。
4. 試験方法
この様に得られた電池の高温特性を比較するため、電池の1時間率電流値、即ち1Cを
【0067】
【数2】
1C[mA]=Qs(D)×正極活物質量〔g〕
と設定し、以下の試験を行った。
まず室温で定電流0.2C充放電2サイクルおよび定電流1C充放電1サイクルを行い、次に50℃の高温で定電流0.2C充放電1サイクル、ついで定電流1C充放電100サイクルの試験を行った。なお充電上限は4.2V下限電圧は3.0Vとした。
【0068】
この時50℃での1C充放電100サイクル試験における1サイクル目放電容量Qh(1)に対する、100サイクル目の放電容量Qh(100)の割合を高温サイクル容量維持率P、即ち、
【0069】
【数3】
P〔%〕={Qh(100)/Qh(1)}×100
とし、この値で電池の高温特性を比較した。
実施例及び比較例における、50℃での1C充放電100サイクル試験での初期放電容量、及び高温サイクル容量維持率Pを表−1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
また、実施例1〜3、及び比較例1における、50℃サイクル試験でのサイクル−放電容量相関図を図1に示す。
実施例と比較例とを比較すると、本発明の規定するS含有複素環式化合物を添加することによって高温でのサイクル特性が向上することが分かる。
【0072】
【発明の効果】
本発明により、高温サイクル特性をはじめとする高温特性の改善されたリチウム二次電池用正極材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】50℃サイクル試験でのサイクル−放電容量相関図である。
Claims (10)
- 正極と、活物質が炭素材料である負極と、電解質とを有するリチウム二次電池に用いるリチウム二次電池用正極材料であって、リチウムマンガン酸化物及び、該リチウムマンガン酸化物に対して0.1〜20モル%のサッカリン、サッカリン誘導体、チオサッカリン、チオサッカリン誘導体及び/又は擬サッカリン誘導体を含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極材料。
- サッカリン、サッカリン誘導体、チオサッカリン、チオサッカリン誘導体及び/又は擬サッカリン誘導体が、チアントレン及び/又はチアントレン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極材料。
- 前記サッカリン、サッカリン誘導体、チオサッカリン、チオサッカリン誘導体及び/又は擬サッカリン誘導体が、下記一般式(III)
ぞれ独立して、またa1が2〜4の整数を表す場合は複数のR3もそれぞれ独立して、a2が2〜4の整数を表す場合は複数のR4もそれぞれ独立してアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ホルミル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミノ基、スルホンアミド基、オキシカルボニルアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、ウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、スルファモイル基、カルボン酸基若しくはその塩、スルホン酸基若しくはその塩、ホスホン酸基若しくはその塩、又は複素環基を表す。)で表される化合物である請求項1に記載のリチウム二次電池用正極材料。 - リチウムマンガン酸化物と前記サッカリン、サッカリン誘導体、チオサッカリン、チオサッカリン誘導体及び/又は擬サッカリン誘導体とが、物理混合してなる請求項1乃至4のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用正極材料。
- リチウムマンガン酸化物が、遷移金属サイトの一部が他元素で置換されたリチウム遷移金属酸化物である請求項1乃至5のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用正極材料。
- 遷移金属サイトを置換する他元素が、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga及びZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素である請求項6に記載のリチウム二次電池用正極材料。
- 請求項1乃至7のいずれか1つのリチウム二次電池用正極材料とバインダーとを含有するリチウム二次電池用正極。
- リチウム遷移金属酸化物と前記サッカリン、サッカリン誘導体、チオサッカリン、チオサッカリン誘導体及び/又は擬サッカリン誘導体とが、分散して存在してなる請求項8に記載のリチウム二次電池用正極。
- 請求項8又は9に記載のリチウム二次電池用正極材料を含有する正極、負極及び電解質を有することを特徴とするリチウム二次電池。
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