JP4590311B2 - プラスチックレンズの製造方法、プラスチックレンズ成形用ガスケット、プラスチックレンズ成形用成形型、プラスチックレンズ原料液注入治具、プラスチックレンズ成形型保持具、およびプラスチックレンズ製造装置 - Google Patents

プラスチックレンズの製造方法、プラスチックレンズ成形用ガスケット、プラスチックレンズ成形用成形型、プラスチックレンズ原料液注入治具、プラスチックレンズ成形型保持具、およびプラスチックレンズ製造装置 Download PDF

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本発明は、高粘度で初期重合速度の速いプラスチックレンズ原料液を注型重合するために適したプラスチックレンズの製造方法に関する。更に、本発明は、プラスチックレンズ成形用ガスケット、前記ガスケットを利用したプラスチックレンズ成形用成形型、前記成形型へ原料液を注入するためのプラスチックレンズ原料液注入治具、および、前記成形型を保持するために使用され得るプラスチックレンズ成形型保持具に関する。
プラスチックレンズを成形する方法として、注型重合方法が知られている。例えば、「眼鏡」、1986年5月22日発行、メディカル葵出版(非特許文献1)には、ジエチレングリコールビスアリルカーボネイト製レンズ(CR−39レンズ)の製造工程が開示されている。このレンズの製造工程では、ガラス母型の上型モールドおよび下型モールドを、円筒形状のガスケットに間隔をおいて保持してキャビティを形成した鋳型が示されている。そしてこのキャビティにレンズ原料液を注入し、注入後電気炉に入れ加熱重合し、重合が完了したレンズを型からはずすという製造工程が示されている。
キャビティへの原料液の注入方法としては、ガスケットに注入口を設けてそこから原料液を注入する方法がある。例えば、実公平6−39951号公報(特許文献1)にそのようなガスケットが開示されている。このガスケットを使用した鋳型へ原料液を注入するには、注入口部の注入口が上に向くようにガスケットを傾斜させて配置した状態で、原料液を注入口部から自重による流動作用によって注入する。このガスケットのように、上から原料液を注入するような場合は、注入条件や材料によって注入時に泡を巻き込みやすい場合がある。原料液の粘度が低い場合には泡は比較的容易に取り除けるため問題は少ないが、粘度が高い原料液や初期重合速度が速い原料液を使用する場合、泡を取り除くことは困難であり、そのような原料を使う場合にはこのような構造のガスケットは利用できなかった。
また、特許文献1に示されたガスケットを使用した成形方法においては、原料を充填した成形型から、重合後ガスケットを除去するが、その際、原料液注入口内で重合した部分を注入孔付近で分断し成形体から取り除く必要がある。特許文献1に記載されているようなガスケットを使用する場合、通常注入口を折り曲げることにより注入孔付近で重合部分を破壊して、ガスケットを除去する。しかしながら、高強度の成形体を製造する場合、重合が完全に進行した後に注入孔付近で重合部分を破壊することは容易ではない。しかも、使用する原料液の粘度が高い場合、注入を容易にするために注入孔を広くすると、注入孔付近の重合部分の破壊は更に困難になる。このため、ガスケットの除去が容易にできる成形方法が求められていた。
また、高粘度で初期重合速度の速いレンズ原料液から注型成型でプラスチックレンズを製造する方法として、例えば、国際公開WO 03/084728号パンフレット(特許文献2)には、混合すると急速に反応が進む、分子中に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートと300〜2500の平均分子量を有するジオールとの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマー成分(A)と芳香族ジアミン成分(B)を用いてプラスチックレンズを注型重合により成形する方法が開示されている。特許文献2に開示された方法により成型された成形体は、ポリカーボネートに匹敵する高い強度を有する。特許文献2に記載のレンズ製造工程では、注入孔および排出孔を有するガスケットと上型モールドと下型モールドとで形成したキャビティ内に原料液を注入し、所定の時間経過後にキャビティ内外の重合部分を分断する。その後、電気炉に投入し熱重合を行い、重合が完了したレンズを型からはずすことにより、プラスチックレンズを製造する。
特許文献2に記載の成分(A)および成分(B)を使ってレンズを成形するには、短時間で急速に混合し、混合後直ちに鋳型に注入することが好ましい。特に、成分(A)は粘度が高いため、キャビティ内に気泡が生じてしまうと気泡を取り除くことが難しく、しかも、発生した泡が上方へ浮上しにくく、気泡がそのまま成形体中に残りやすい。しかも成分(A)と成分(B)は、混合後直ちに重合を開始し重合速度も速いため、注入以後さらに粘度が高くなることから、気泡を取り除くことが一層困難になる。
特許文献2に記載の方法では、ガスケットの排出口を頂上にして傾斜させた状態で注入口密閉部が設けられたノズルを用いて原料液を注入する。このとき、原料液はキャビティ下方から上方に向かって満たされる。このように下から注入する場合、上から注入する場合に比べ泡の混入を低減できるという効果を有する。
「眼鏡」、1986年5月22日発行、メディカル葵出版 実公平6−39951号公報 国際公開WO 03/084728号パンフレット
上記したように高粘度で初期重合速度の速いプラスチックレンズ原料液を用いて注型成型する場合、キャビティに混入した泡を取り除くことは困難である。このため、このような原料を使用する場合でも、キャビティに気泡が残りにくい製造方法が求められている。
また、特許文献2に開示されているように、注入口密閉部を有するノズルを用いて原料液を注入した場合は、ノズル周辺部に付着した原料液の重合により、所定時間経過後にノズル周辺に塊ができ、結果として、ノズルとガスケットのフィッティングに影響を及ぼすおそれがある。また、成分(A)と成分(B)は、混合後直ちに重合が開始し、重合速度も速いことから、混合液注入用ノズル周辺部に付着した混合液においても、重合反応が急速に進行する。このように、既に重合が進んでいる混合液が新たに注入される混合液とともにキャビティ内へ流入すると、流れのような痕や重合ムラから生じる痕などが発生し、成形されたレンズに光学的欠損が生じる場合がある。
また、特許文献2に記載の方法のように、原料液を下方から注入する場合には、注入終了後に成形型内の原料液が注入孔から外部に流れ出ないように工夫する必要がある。そこで、特許文献2に記載の方法では、レンズ原料注入後、成形型の傾斜角度を小さくするか、または成形型を水平にして、注入口の開口部を上向きでかつキャビティより上に位置するようにすることにより、注入された原料液が外部へ流れ出ないようにしている。
しかしながら、このように原料液注入後に成形型の向きを変えると、原料液注入中に混入した泡が成形型の上端の排出孔に達する前に成形型の角度が変わるため、泡がキャビティ内に残存してしまう場合があった。また、成形型の角度を変える際に衝撃が加わったり、急激に向きを変えた場合に、重合途中のレンズ原料がキャビティ内で流動してその跡が残り、光学欠損となる場合があった。また、成形型を水平または水平近くに傾斜した状態で注入ノズルを注入口から外すため、注入ノズルから流れ出る原料液や排出口からあふれるレンズ原料液が成形型にかかって付着してしまう場合があった。このような場合は、例えばモールドなどを再利用する場合に付着した原料を取り除く必要が生じたり、または、付着した原料液が製造工程に悪影響を与えるおそれがあった。また注入ノズルの取り付け、取り外しの際に成形型の角度が変わるため、注入工程を自動化しようとした場合には機構が複雑になってしまうことが予想される。
そこで、本発明は、高粘度で初期重合速度の速いプラスチックレンズ原料液から、気泡や光学的欠損が低減されたプラスチックレンズを成形することができる、プラスチックレンズの製造方法を提供することを目的とする。
特に、本発明の目的は、プラスチックレンズ原料液の成形型への注入方法を改善することにより、気泡や光学的欠損が低減された重合成形体を製造する方法を提供することである。また、本発明は、成形方法を改善することにより、成形後、ガスケットを容易に除去することができるプラスチックレンズの製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、前記方法への使用に適したプラスチックレンズ成形用ガスケット、成形型、プラスチックレンズ原料液注入治具、成形型保持具、およびプラスチックレンズ製造装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する手段は、以下の通りである
[1] 注入治具開口から流出するプラスチックレンズ原料液を成形型に注入して、前記原料液を硬化させて成形体を得る、プラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型は、内部にキャビティを有し、前記原料液を前記キャビティ内に注入するための注入孔と、前記キャビティ内の気体または前記混合液を成形型外部に排出するための排出孔とを、直径方向に対向する位置に有しており、
前記注入孔は、前記混合液を注入するための開口(以下、「注入口開口」という)を有し、
前記原料液は、前記成形型を水平面に対して傾斜または垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにして、前記注入孔を通して前記成形型へ注入され、
前記注入口開口と前記注入治具開口との連通開始から該連通が完了するまでの間に、前記注入治具開口から流出する原料液の一部が前記注入孔へ流入し、残りの一部が前記注入孔へ流入せずに流下する期間を含み、
前記期間中、前記注入治具開口と前記注入口開口との間に隙間が生じており、該隙間から、前記注入治具開口から流出する原料液の一部が流下していることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
[2] 少なくとも前記原料液のキャビティ内への流入が開始するまでの間は、前記隙間が生じていることを特徴とする、[]に記載のプラスチックレンズの製造方法。
[] 前記隙間を徐々に狭めながら前記原料液の注入を行うことを特徴とする、[]または[]に記載のプラスチックレンズの製造方法。
[4] プラスチックレンズ原料液を保持具に保持された成形型に注入して、前記原料液を硬化させて成形体を得ることを含む、プラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型は、内部にキャビティを有し、前記原料液を前記キャビティ内に注入するための注入孔を含む注入口部と、前記キャビティ内の気体または前記混合液を成形型外部に排出するための排出孔を含む排出口部とを、直径方向に対向する位置に有しており、
前記保持具は、前記注入口部を保持するための注入口部保持部と、前記注入口部を挟持することにより、前記注入孔を封止するための注入孔封止部とを有し、
前記保持具による成形型の保持は、前記注入口部保持部によって前記注入口部を保持しつつ、前記成形型を水平面に対してほぼ垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにした状態で行われ、かつ、
前記原料液の注入は、前記原料液を前記注入孔から注入することによって行われ、かつ、前記注入孔封止部によって前記注入孔を封止することによって終了することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法
[5] 前記原料液は、下記成分(A)と成分(B)を含むことを特徴とする、[]〜[]のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。
成分(A):分子中に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートと300〜2500の平均分子量を有するジオールとの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマー
成分(B):一般式(I)で表される1種または2種以上の芳香族ジアミン(一般式(I)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、チオメチル基の何れかである)
Figure 0004590311
本発明によれば、高粘度で初期重合速度が速いプラスチックレンズ原料液、特にイソシアネート末端プレポリマー成分(A)と芳香族ジアミン成分(B)とから、光学的欠損および泡不良が低減されたプラスチックレンズを製造することができる。更に、本発明の製造方法によれば、成形後にガスケットを容易に除去することができる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[第一の態様(参考態様)]
本発明の第一の態様のプラスチックレンズの製造方法は、複数の重合性成分を混合し、混合後直ちに混合液を成形型に注入し、重合して成形体を得る、プラスチックレンズの製造方法である。本発明の第一の態様のプラスチックレンズの製造方法は、高粘度で初期重合速度の速い原料液、例えば、混合後直ちに重合を開始し、10分以内に硬化するような原料液から、プラスチックレンズを製造するために好適に用いることができる。本発明において、重合性成分とは、重合性基を有する成分をいい、例えばモノマーまたはプレポリマーであることができる
前記複数の重合性成分は、好ましくは、下記成分(A)と下記成分(B)を含むものであることができ、より好ましくは、下記成分(A)と下記成分(B)とからなるものであることができる。
成分(A): 分子中に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートと300〜2500の平均分子量を有するジオールとの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマー
成分(B): 一般式(I)で表される1種または2種以上の芳香族ジアミン(一般式(I)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、チオメチル基の何れかである)
Figure 0004590311
以下、成分(A)、成分(B)について説明する。
イソシアネート末端プレポリマー成分(A)
成分(A)は、分子中に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートと300〜2500の平均分子量を有するジオールとの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマーである。上記イソシアネート末端プレポリマーの一方の原料であるジイソシアネートが、分子中に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートであることで、プレポリマー製造時、または重合時の反応コントロールが容易になり、かつ最終的に得られる成形体に適度な弾性を付与することができる。さらに、得られる成形体に高耐熱性と良好な機械特性を与えることもできる。
分子中に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートとは、主鎖または側鎖に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートであり、環状構造は、脂環、芳香環、または複素環のいずれであっても良い。但し、分子中に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートは、黄変を防止すると共に十分弾性や硬度を保持するという観点から、脂環式ジイソシアネートであることが好ましい。脂環式ジイソシアネートに比べ、芳香環を有するイソシアネートでは得られた成形体の黄変が進みやすく、脂肪族鎖状のイソシアネートでは得られた成形体が柔らかくなり、形状保持性が低下する傾向がある。
さらに、脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナートシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナートシクロヘキサン等を挙げることができる。また、芳香環を有するジイソシアネートとしては、例えば、m−キシリレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。特に、前記脂環式ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートおよび1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
上記成分(A)のイソシアネート末端プレポリマーのもう一方の原料であるジオールの平均分子量は300〜2500である。本発明において、平均分子量とは、数平均分子量をいうものとする。
ジオールの平均分子量が300より小さいと得られる成形体に靭性を付与することができず、2500より大きいと得られた成形体が柔らかくなり形状を保持できなくなる。上記平均分子量は、好ましくは、400〜1000である。
300〜2500の平均分子量を有するジオールは、例えば、ポリエーテル系ジオールまたはポリエステル系ジオールであることができる。これらのジオールは、他成分との相溶性が良いことから好ましい。他成分との相溶性が良くないジオールの場合、得られる成形体の透明性を維持するために相溶化剤などの別成分を添加する必要が出てきたり、透明性が損なわれる可能性がある。
このようなジオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、プロピレングリコールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、ジエチレングリコールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、1,4−ブタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、ネオペンチルグリコールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、1,10−デカンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、1,4−ブタンジオールとセバシン酸からなるポリエステルジオール、エチレングリコールとε−カプロラクトンからなるポリカプロラクトンジオール、プロピレングリコールとε−カプロラクトンからなるポリカプロラクトンジオール、ジエチレングリコールとε−カプロラクトンからなるポリカプロラクトンジオール、1,4−ブタンジオールとε−カプロラクトンからなるポリカプロラクトンジオール、ネオペンチルグリールとε−カプロラクトンからなるポリカプロラクトンジオール、1,6−ヘキサンジオールとε−カプロラクトンからなるポリカプロラクトンジオール、1,10−デカンジオールとε−カプロラクトンからなるポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられ、好ましくはポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、1,4−ブタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、ネオペンチルグリコールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール、1,10−デカンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール等が挙げられる。
本発明では、成分(A)のイソシアネート末端プレポリマーの原料として、分子中に硫黄原子を含みかつ300〜2500の平均分子量を有するジオールを用いることができる。ジオールの分子中に硫黄原子を導入すると、アッベ数の低下を抑制しながら屈折率を向上させることが可能となる。また、分子中での硫黄の存在状態は特に限定されるものではないが、スルフィド結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合、ジチオエステル結合、チオカーボネート結合、ジチオカーボネート結合のうちの少なくとも1種の結合様式により分子中に取り込まれていることが望ましい。上記の結合様式で硫黄原子が分子中に取り込まれていれば、成分(A)と他成分との相溶性が良好であり、さらに、着色もなく、透明性に優れた成形体を得ることができる。一方、上記以外の結合様式で硫黄原子が分子中に取り込まれている場合は、例えば、成分(A)と他成分との相溶性が悪くなる傾向があり、得られる成形体の透明性を維持するために相溶化剤などの別成分を添加する必要が出てきたり、顕著な着色を示す可能性がある。以上の点からも、本発明では、成分(A)のイソシアネート末端プレポリマーのもう一方の原料であるジオールは、スルフィド結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合、ジチオエステル結合、チオカーボネート結合、又はジチオカーボネート結合のうちの少なくとも1種の結合様式により分子中に硫黄を含むことが好ましい。
成分(A)であるイソシアネート末端プレポリマーのイソシアネート基含有率は、10〜20質量%の範囲であることが好ましい。上記イソシアネート基含有率が10質量%以上であれば、高硬度の成形体を得ることができ、20質量%以下であれば、高い靭性(十分な強度)を有する成形体を得ることができる。上記イソシアネート基含有率は、より好ましくは11〜15質量%の範囲である。
芳香族ジアミン成分(B)
成分(B)は、前記一般式(I)で表される1種または2種以上の芳香族ジアミンである。一般式(I)中のR1、R2およびR3はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、チオメチル基の何れかである。R1、R2およびR3が上記置換基であることで、結晶性を抑制しかつ他成分との相溶性を高めることができる。また、これらの置換基がないか、あるいは数が少ないと結晶性が高く取り扱いにくくなり、他の置換基の場合には、他の成分との相溶性が悪くなり得られる材料の透明性が低下する恐れがある。
前記芳香族ジアミンは、より具体的には、例えば、以下の化合物である。1,3,5−トリメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリチオメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリチオメチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジチオメチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジチオメチル−2,6−ジアミノトルエン、1−エチル−3,5−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−エチル−3,5−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1−エチル−3,5−ジチオメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−エチル−3,5−ジチオメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1−チオメチル−3,5−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−チオメチル−3,5−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1−チオメチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−チオメチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3−エチル−5−チオメチル−2,4−ジアミノトルエン、3−エチル−5−チオメチル−2,6−ジアミノトルエン、3−チオメチル−5−エチル−2,4−ジアミノトルエン等。
上記芳香族ジアミンは、R1がメチル基であり、R2およびR3がそれぞれエチル基またはチオメチル基の何れかであることが、得られる成形体が白濁しにくく、かつ得られる成形体に十分な靭性を付与できるという観点から好ましい。前記芳香族ジアミンとしては、より具体的には、例えば、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジチオメチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジチオメチル−2,6−ジアミノトルエン等を挙げることができる。
成分(A)と成分(B)との混合割合は、成分(B)のアミノ基に対する、成分(A)のイソシアネート基のモル比が1.00〜1.15の範囲であることが、十分な靭性(強度)が得られるという観点から好ましい。上記モル比は、より好ましくは1.02〜1.12の範囲である。
第一の態様の製造方法では、複数の重合性成分、例えば、前記成分(A)および成分(B)を混合し、混合後直ちに混合液を成形型に注入し、重合して成形体を得る。複数の重合性成分の混合は、高速で回転する回転軸を用いるか、またはスタティックミキサーを用いて二液の均一な混合液が得られるように行うことができる。特に、前述の成分(A)と成分(B)との混合には、反応射出成形機(以下、RIM(Reaction Injection Molding)成形機)を使用することが好ましい。
次にRIM成形機の構造および動作を図8に基づいて、成分(A)、成分(B)を混合する場合を例にとり説明する。RIM成形機は、成分(A)を保管する材料タンク11Aと、成分(B)を保管する材料タンク11Bと、成分(A)と成分(B)混合し吐出する混合吐出部15と、前記材料タンク11Aと前記混合吐出部15をつなぐ材料流路13Aと、前記材料タンク11Bと前記混合吐出部15をつなぐ材料流路13Bとからなる。材料流路13A、13Bのそれぞれの途中には、成分中の異物をろ過するためのフィルター14A、14Bが設けられている。混合吐出部15には材料流路13A、13Bを通って送られてきた成分(A)、(B)を混合するための高速で回転する回転軸もしくはスタティックミキサーが設けられている。
成分(A)および成分(B)は前記それぞれの材料タンク中で減圧下におかれ十分に脱気されるとともに所定の温度で保管される。脱気が不十分であると成形品中に泡が混入し、製品としての性能や外観を損ねる場合や、成形品の機械的強度の低下を招く場合がある。十分に脱気され温度も均一化された各成分はポンプ12A、12Bにより材料タンク11A、11Bから材料流路13A、13B中に押し出されフィルター14A、14Bを通過し混合吐出部15へ送られる。混合吐出部15で短時間に均一に混合された混合液は吐出口16より吐出される。
前記成分(A)と成分(B)とを混合する場合、成分(A)を加温して粘度を低下させた後に行うことが、泡不良を回避するという観点から好ましい。成分(A)は一般に粘度が高いため、成分(B)との混合前に加温して、ある程度の流動性を付与することにより、成分(B)との混合を容易にするという観点から、8000CPS以下になるように加温しておくことが好ましい。またこの粘度以下であれば、後述するRIM成形機を用いた時に混合前の脱泡を容易に行うこともできる。成分(A)の加熱温度は、好ましくは6000CPS以下になる温度であり、さらに好ましくは4000CPS以下である。
得られた混合液は、直ちに成形型に注入される。ここで、「直ちに」とは、複数の重合性成分の重合が進みきらない間という意味であり、使用する重合性成分の種類により変化するが、例えば、0.5〜5秒間程度の間に成形型への注入を開始することができる。重合反応の条件等は、例えば、米国特許6127505号公報第5欄に記載の条件等を適宜参照することができ、また、後述の実施例でも詳述する。また、本発明の製造方法によって得られる成形体には、必要により、離型剤、抗酸化剤、紫外線安定化剤、着色防止剤等の添加成分を、成形体の透明性と強度を損なわない程度に添加することはできる。添加成分の例は、例えば、米国特許6127505号公報第6〜7欄の記載のものを挙げることかできるが、それらに限られない。
成形型
次に、第一の態様において使用される成形型について説明する。
第一の態様では、内部にキャビティを有し、前記混合液を前記キャビティ内に注入するための注入孔と、前記キャビティ内の気体または前記混合液を成形型外部に排出するための排出孔とを、直径方向に対向する位置に有する成形型を使用する。そのような成形型の具体例を、図面に基づいて説明する。但し、本発明は以下に示す態様に限定されるものではない。
第一の態様において使用される成形型は、レンズの一方の面を形成するためのモールドと他方の面を形成するためのモールドとが所定の間隔で対向して配置され、かつ前記2つのモールドの周囲に環状のガスケットが配置されて、前記モールドおよびガスケットによってキャビティが形成されているものであることができる。
前記ガスケットとしては、
プラスチックレンズの光学機能面を形成するための成形面をもつ第1モールドと第2モールドとをそれぞれ嵌挿するための開口を有する円筒体からなるプラスチックレンズ成形用ガスケットであって、
前記円筒体は、外壁面に、注入口部および排出口部を有し、
前記注入口部は、内部に貫通孔(注入孔)を有する注入管部と該注入管部の端部に設けられた注入口先端部とを有し、かつ、前記注入孔により、前記円筒体内部と外部とが連通され、
前記排出口部は、前記円筒体内部と外部とを連通する排出孔を有し、
前記ガスケットは、前記注入孔と排出孔とを、直径方向に対向する位置に有し、
前記注入口先端部は、前記注入孔の開口を有し、その開口周囲に傾斜した面を有することを特徴とするプラスチックレンズ成形用ガスケット
を挙げることができる。本発明において使用されるプラスチックレンズ成形型は、前記ガスケットの前記開口に、第1モールドの成形面および第2モールドの成形面が所定の間隔をおいて対向し、前記筒状体内部にレンズ形状に相当するキャビティが形成されるように、第1モールドおよび第2モールドがそれぞれ脱着可能に保持されてなるものであることができる。そのような成形型について、図面に基づいて説明する。
図1はプラスチックレンズ成形用ガスケットを示す平面図、図2は図1に示すガスケットにレンズ母型を装着したときの状態を示す断面図である。ガスケット1は、図2に示すように、第1モールド2Aと第2モールド2Bとからなるレンズ母型2を装着することにより、内部にキャビティ4が形成される。
ガスケット1は、第1モールド2Aと第2モールド2Bとをそれぞれ嵌挿するための開口を有する円筒状の筒状体5と、この筒状体5の内壁面に少なくとも前記第1モールド2Aの周縁部に当接して前記第1モールド2Aを位置決め保持するために突設された保持部6と、前記筒状体5の外壁面に設けられ、前記キャビティ4に原料液を注入するための注入口部7と、同じく前記筒状体5の外壁面に設けられ注入中のキャビティの気体の排気と余剰の原料液を排出するための排出口部8とからなる。ガスケット1の材料は、弾性を有する樹脂であることができ、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリエチルアクリレート、シリコンゴム等を挙げることができる。また、ポリプロピレンとエチレンプロピレンゴムの混合品(例えば、アドバンスト・エラストマー・システムズ社製 商品名サントプレーン)も挙げることができる。この材料は耐熱性が高いという点で好ましい。
筒状体5、保持部6、注入口部7、および排出口部8は、射出成形により一体的に成形することができる。レンズ母型2を構成する第1モールド2Aおよび第2モールド2Bはガラス等からなり、正面視形状が円形である。この第1モールドおよび第2モールドの周縁は、ガスケット1の筒状体5の内壁面に隙間なく接触した状態を保持できる形状を有することが好ましい。
第1モールド2Aおよび第2モールド2Bは、プラスチックレンズの光学機能面を形成するための成形面を持つ。第1モールド2Aは、例えば、プラスチックレンズの後面(凹面)を形成すべく凸面側に成形面を有する凸面型(以下、下型とも記す)であることができ、第2モールド2Bは、プラスチックレンズの前面(凸面)を形成すべく凹面側に成形面を有する凹面型(以下、上型とも記す)であることができるが、これらに限定されない。ガスケット1の筒状体5の内径は、前記第1モールド2Aおよび第2モールド2Bの外径と実質的に同一かまたは若干小さくすることができる。但し、前述のように、筒状体5の内壁面に隙間なく接触した状態を保持できる形状とすることが適当である。尚、ガスケットに装着されたモールドは、必要により、その両側から筒状体5の内部に押し込む方向にバネ等で挟持して、ガスケットに固定してもよい。なお、後述の図19に示す態様では、成形型保持具に備えられたバネ機構により両側から挟持して、モールドをガスケットに固定している。
筒状体5は、成形しようとするレンズの周縁部の厚み(キャビティ4の周縁部の厚み)と第1モールド2Aおよび第2モールド2Bの周縁部の保持に必要な厚みとを確保できる高さを有すればよい。また、第2モールド2Bが筒状体5の開口に向かって凸面状である場合、成形型を真横から観察した際に、第2モールド2Bの凸面の頂点が筒状体の外壁面より外側に飛び出ないように、筒状体5の高さを設定することが好ましい。
保持部は、少なくとも、第1モールド2Aを位置決め保持するためのものであることができ、第2モールド2Bを保持するための保持部を設けないこともできる。この場合、第2モールド2Bはガスケットの所定位置まで押し込まれ、ガスケットの弾力により保持される。また、保持部として、第1モールド2Aを保持するための突起と、第2モールド2Bを保持するための突起とを別々に設けることもできる。また、保持部は、第1モールド2Aの周縁部に当接して第1モールドを位置決め保持するものであり、同時に、第2モールド2Bの周縁部に当接して第2モールド2Bを位置決め保持するためのものであることもできる。そのような保持部としては、図1に示すような帯状の保持部を挙げることができる。
図1および図2に示す態様では、ガスケット1の保持部6は、筒状体5の内壁面に、円周方向に形成された帯状の突起帯である。この保持部6の上面および下面は、第1モールド2Aの成形面周縁部および第2モールド2Bの成形面周縁部と当接する部分であり、この当接部の高さ位置は、モールド成形面周縁部の形状に合わせて適宜設定することができる。図2では、図1に示すガスケットに、球面の成形面を有する第1モールド2Aおよび第2モールド2Bを装着している。帯状の保持部6の円周方向の上面の位置(高さ)および下面の位置(高さ)はそれぞれ同じであることができ、また、第1モールド2Aの形状により、帯状の保持部6の円周方向の上面の位置(高さ)と下面の位置(高さ)は同じでない場合もある。なお、ガスケットの保持部が帯状である場合、第1モールド2Aを保持するための帯状突起と、第2モールド2Bを保持するための帯状突起とが一体に形成されていてもよく、独立に形成されていてもよい。
なお、この保持部6の構造は、上記の態様に限定されず、モールド成形面周縁部と当接させることができる部分を持った突起であれば良い。例えば、図11に示すように、突起状のピンを複数備えた形状にすることもできる。この突起状のピンの位置、本数は任意に変更することができる。また、上部と下部の当接部を別々の突起に設けてもよい。また、例えば、図12に示すように、注入孔のキャビティ側の開口付近において、保持部6が切り欠き構造になっていてもよく、図13に示すように、排出孔と注入孔に向かってテーパー状に、保持部6の肉厚が変化するような形状でもよい。
ガスケット1の注入口部7は、注入口先端部25と、この注入口先端部25とガスケット壁面とをつなぐ注入管部24と、これら注入口先端部25と注入管部24の内部を通り前記円筒体内部と外部とを連通する注入孔(貫通孔)20とからなる(図2参照)。注入口先端部25は、後述する注入ノズル30のノズル先端面部31との接触面である注入口先端面部21を有し、そのほぼ中心部に、前記注入孔20の開口である注入口開口22が設けられている。
注入口開口22からキャビティ4へとつながる原料液流路(注入孔20)の軸方向に垂直な断面形状は、特定の形状に限定されるものではなく、例えば、円形であることができ、楕円形、三角形、四角形などの多角形状でもよい。但し、角部分があると、そこに原料液が滞留しやすくなるため、円形や楕円形がより好ましい。注入孔20とキャビティ4との連結部は、図14に示すように、テーパー状に開口した形状でもよい。また、図14では、注入孔20の内径は、注入口開口22からキャビティ4に向かって一定の形状を有しているが、これに限らず、例えば徐々に大きくなる形状でもよく、徐々に小さくなる形状でもよい。また、注入管部24の中央部において内径が最小になり、注入口開口22およびキャビティ4に向かって、それぞれ内径が徐々に大きくなる形状でもよい。流速が一定になり、泡の巻き込みや原料液の滞留が生じにくいという点では、注入孔20の断面形状は、内部に凹凸がなく、注入孔20の全体にわたって一定形状であることが好ましい。また、キャビティ側の開口部付近の断面積を徐々に広げ、原料液がキャビティ内に滑らかに入るようにしてもよい。また、注入孔20の内径が、注入口開口22からキャビティ4に向かって徐々に小さくなる形状の場合は、成形するレンズの外周面の幅が狭い場合にも対応できるという点で好ましい。
また、注入口開口22の大きさは、後述の注入治具開口の大きさとほぼ同じか、または注入治具開口の大きさよりも小さいことが好ましい。なお、「開口の大きさ」とは、注入治具、注入口の外部へ向かって開口した部分の面積をいう。本発明において、注入口開口の形は特に限定されるものではなく、例えば円形や楕円形、三角形や四角形などの多角形でもよいが、角部がない円形や楕円形が、原料液の滞留が生じにくいという点でより好ましい。また、後述する注入ノズル30から原料液が滑らかに注入孔20に流れ、滞留が生じにくいという点では、ノズル先端開口32と注入口開口22との接続の際に生じる段差を小さくできるように、両者がほぼ同形状であるか、注入口開口22の方がノズル先端開口32よりわずかに小さい形状であることが好ましい。
前記注入口開口22の全周囲には、面(以下、「注入口先端面部」という)が形成されていることが好ましい。図2に示す態様では、注入孔20は断面形状が円形で、全流路に渡って一定の形状にしており、注入口先端面部21が注入孔20の軸に対して傾斜しているため、注入口開口22は楕円形に形成されている。また、後述する注入ノズル30のノズル孔33は、例えば、断面形状が円形で、前記注入孔20よりわずかに大きい内径を有する。
注入口先端面部を水平にすると、成形型の下方から原料液の注入を行うためには、注入治具を成形型の真下から徐々に近づけなければならず、注入治具開口から原料液を流出させた状態では、オーバーフローする原料液によって、注入口開口周囲が著しく汚れてしまう。また、注入口先端面部が水平である場合には、成形型下方から原料液の注入を行うためには、注入孔を屈曲させるべきであるが、この場合には、泡の巻き込みが懸念される。そのため、本発明では、注入口部の先端(注入口先端面部)は、傾斜平面からなることが好ましい。後述する図7に示す注入ノズル30のノズル先端面部31は、ノズル孔33の軸に対して傾斜した平面からなっているため、注入ノズル30のノズル先端開口32も楕円形をしている。そして、前記注入口先端面部21とノズル先端面部31の傾斜角度は、それぞれの孔の軸方向に対してほぼ同じ角度(図2および後述の図7では、いずれも約45度)であり、注入口開口22の形状はノズル先端開口32よりわずかに小さい相似した楕円形状であることができる。
注入口先端面部21は、図2に示す態様では、外形状が略正方形の平面を有しており、そのほぼ中央に注入口開口22が位置している。なお、この注入口先端面部21の形状はこれに限定されず、注入口先端面部21とノズル先端面部31とを、注入口開口22またはノズル先端開口32の全周囲で密着させて注入孔20とノズル孔33とを連結できる形状であればよく、例えば、円形や楕円形、四角形や三角形などの多角形であることもできる。
注入管部24は、内部に注入孔20を有し、一方の端部がガスケットの側壁に接続され、他方の端部が注入口先端部25に連結されている。図15は、図1に示すガスケットのI−I線断面図(注入孔側)である。注入孔20のキャビティ4側の開口は、例えば、図15(a)に示すように、帯状保持部6の中心に設けることもでき、また、図15(b)に示すように、一方のモールド側に寄った位置に設けることもできる。
注入管部24の側面には、後述する注入孔封止部により、注入管部24を外側から挟み込んで注入孔20を封止することが容易にできるように、肉厚を薄くした薄肉部23を設け、変形を容易にすることもできる。また、本発明では、後述する製造工程において注入孔内で重合した樹脂を分断破壊するために、注入管部24を折り曲げ可能なように形成することもできる。
注入口部7には、位置決めのための構造を設けることができる。この位置決めのための構造により成形型上下方向および左右方向の位置決め、特に注入口部の上下方向および左右方向の位置決めをして、ガスケットを保持具に固定することができる。図2に示す態様では、注入口部7の注入管部24に、その軸方向に対して垂直方向に突出した鍔状の部分である上下位置決め部26が形成され、その下方に前記上下位置決め部26より内側に凹んでいる左右位置決め部27が形成されている。保持具201(図19参照)にはこの上下位置決め部26および左右位置決め部27と嵌り合う二股部分を有する注入口部保持プレート2023が設けられており、この注入口部保持プレート2023の二股の間に、前記左右位置決め部27が挟まり左右の位置を決めるとともに、この二股部分の上面に前記上下位置決め部26の下面が接するようにして保持されることにより上下の位置を決めている。そして、前述の薄肉部23は、左右位置決め部27の中間に、この左右位置決め部27よりさらに内側に凹ませて形成されている。但し、上下位置決め部26および左右位置決め部27の形状はこの態様に限定されない。例えば注入管部24上に凹凸からなる位置決め部を形成し、保持具にこの凹凸と嵌合する突条や溝を有する位置決め支持部を形成し、上下左右を位置決めするようにしてもよい。また、上下位置決め部の上下に左右位置決め部を設けてもよい。なお、図2に示したような構成の上下位置決め部と左右位置決め部は、左右位置決め部を含む注入管部の管壁の厚さを薄く形成でき、上下位置決め部の注入管部軸方向における厚さも薄くできるため、注入孔内で硬化したレンズ原料を注入管部ごと折り曲げやすいという点でより好ましい。
排出口部8は、キャビティ4と外部とを連結する排出孔(貫通孔)40と、前記排出孔40を介して前記キャビティと連通する凹部を有する液溜め部42と、前記液留め部42とガスケット壁面を連結するくびれ部43とからなり、液溜め部42の上端部に、排出口開口41が設けられている。排出孔40は、前述の注入孔20と直径方向に対向する位置に設けられている。排出孔40を設ける位置を、注入孔20と直径方向上に相対する位置にすることで、注入口部7を下側にして原料液を注入した時に、最後まで排気が妨げられることなく行われるという利点がある。
排出孔40の軸方向に垂直な断面形状は、長方形であることができるが、この形状に限定されるものではない。また、前記くびれ部43は、前記液溜め部42より細くなっているので、この部分を折り曲げることにより、排出孔40内で重合した樹脂を分断破壊しやすいようにすることもできる。くびれ部43の形状は、特に限定されない。但し、くびれ部43の断面形状が過度に大きいと、重合後の樹脂の分断作業が困難となるため、くびれ部43の形状は、この点を考慮して決定することが好ましい。
第一の態様の製造方法では、成形型を水平面に対してほぼ垂直にした状態で、かつ、排出孔が頂上になるようにした状態で、原料液を下から(注入孔から)注入するため、ガスケット1において、排出孔40は、凸面型側に寄った位置(図2では第一モールド2Aに寄った位置)に設けられていることが好ましい。以下の説明において、凸面型を、下型という。
注入時にキャビティ4内に混入した泡は、上端へ移動し、排出孔40を通って、キャビティ4から出て行く。しかし、キャビティ4内ではほぼ水平状態にて液面が上昇していくため、通常、排出孔40のキャビティ側開口周辺のガスケットの内壁部分、特に、この内壁部分とモールド成形面周縁部とからなる角部分に泡が残ることが多い。特に強度のマイナスレンズを製造する場合や下型のカーブがきついレンズを成形する場合、ガスケット内壁と下型モールド成形面とのなす角度が鋭角になるため、下型側の角部分にたまった泡は上型側に比べより泡が取り除きにくい。そのため、泡が取り除きにくい下型側の泡を取り除きやすくするため、下型寄りに排出孔を形成することが好ましい。また、キャビティ内上端に気泡が発生した場合、発生した泡が小さいと、特に、高粘度の原料液では気泡が動きにくく、結果的に気泡の除去が困難となる。それに対し、一方の成形型側に排出孔を寄せることにより、一方に大きな泡が生じやすく、もう一方に泡が生じにくい(あるいは小さな泡が生じる)ようになる。これにより、大きな泡の方は動きやすく傾けることにより容易に取り除くことができる。特にセミフィニッシュレンズブランク(一方の面だけが光学的に仕上げられたレンズブランク)を成型する場合は、通常、下型で成形される面が研削、研磨して仕上げる面となるため、排出孔を下型寄りに設けることにより、上型側に大きな気泡が生じやすく、下型側には泡が生じにくい(あるいは小さな泡が生じる)ようになる。上型側に生じた大きな気泡は、高粘度の混合液中でも動きやすいため、容易に除去することができる。また、下型で成形される面は研削、研磨する際に取り除かれるため、小さな気泡が残っていても問題はない。また、後述するように、気泡は二酸化炭素からなっているため、小さな気泡であれば原料液に吸収されやすい。
なお、排出孔40のキャビティ側開口がコバ面上端の厚さ方向全てに設けられていることが、泡が残りにくいという点でより好ましいが、そのようなガスケットを成型するには、それぞれの排出孔の大きさに合わせて多数の治具が必要になる。また、治具の交換により製造能力が低下することを考慮すると、上記方法は、コストをかけずに泡に対処できるという点でも好ましい。
注入治具
次に、本発明において使用され得る注入治具について説明する。
本発明では、前述のプラスチックレンズ成形用成形型に、プラスチックレンズ原料液を注入するためのノズルを備えた注入治具を用いることができる。ノズルの材質は特に限定されず、例えば金属や樹脂などであることができる。そのようなノズルの具体例を、図16に示す。図16(a)はノズルの側面図、図16(b)はノズルの正面図、図16(c)はノズルを上部から見た平面図、図16(d)は、そのII−II線断面図である。図16に示すノズルは、プラスチックレンズ原料液の混合が行われる混合室に設けられた吐出口に脱着可能に取り付けられたチューブの先端に取り付けて使用することができる。
図16に示すように、注入ノズル30は、一方の先端部に筒状部34を有し、他方の先端部にチューブ接続部36を有し、中央部に注入治具固定部35を有する。また、注入ノズル30には、プラスチックレンズ原料液が通るための貫通孔であるノズル孔33が設けられている。
ノズル孔33の軸方向に垂直な断面形状は、特定の形状に限定されるものではなく、例えば、円形であることができ、楕円形、三角形、四角形などの多角形状でもよい。但し、角部分があると、そこに原料液が滞留しやすくなるため、円形や楕円形がより好ましい。ノズル孔33の内径は、ノズル孔全体にわたって一定であることができ、または、一端から他端に向かって段階的に大きくなってもよい。流速が一定になり、泡の巻き込みや原料液の滞留が生じにくいという点では、ノズル孔33の断面形状は、内部に凹凸がなく、ノズル孔33の全体にわたって一定形状であることが好ましい。
注入ノズル30は、その先端部に、前述の注入口先端面部21との接触面であるノズル先端面部31を有し、そのほぼ中心部に、前記ノズル孔33の開口であるノズル先端開口32が設けられている。
先に説明したように、成形型の注入口開口22(図2参照)の大きさは、注入治具開口、即ち、ノズル先端開口32の大きさとほぼ同じ大きさか、またはノズル先端開口32の大きさよりも小さいことが好ましい。本発明において、ノズル孔先端開口32の形は特に限定されるものではなく、例えば円形や楕円形、三角形や四角形などの多角形でもよいが、角部がない円形や楕円形が、原料液の滞留が生じにくいという点でより好ましい。また、前述のように、原料液が、注入ノズル30から注入孔20に滑らかに流れ、滞留が生じにくいという点では、ノズル先端開口32と注入口開口22との接続の際に生じる段差を小さくできるように、両者がほぼ同形状であるか、注入口開口22の方がノズル先端開口32よりわずかに小さい形状であることが好ましい。
ノズル先端面部31の形状は、注入口先端面部21とノズル先端面部31とを、注入口開口22またはノズル先端開口32の全周囲で密着させて注入孔20とノズル孔33とを連結できる形状であればよく、例えば、楕円形、四角形や三角形などの多角形であることもできる。なお、注入ノズル30の先端に付着した混合液が注入中にキャビティに入り込み光学的欠損の原因になる場合があるので、注入ノズルの先端付近、特に、ノズル先端面部31への混合液の付着を低減するために、注入ノズル30の先端の肉厚を薄くし、ノズル先端面部31の面積を極力小さくすることが好ましい。以上の観点から、注入ノズル30の先端部は筒状であることが好ましい。但し、このように、注入ノズル30の先端部を肉薄にした場合は、注入ノズル30の先端部と注入口先端部25とを密着させるときに位置がずれて、ノズル先端面部31が、注入口開口22にかかったり、注入口先端面部21からはみ出したりすると、ノズル開口の全周囲で密着できない場合が生じる可能性がある。このため、注入口先端面部21の外形は、ノズル先端面部31の外形より大きくし、ノズル先端開口32と注入口開口22とを合わせた状態でノズル先端開口32の全周囲においてノズル先端面部31と注入口先端面部21とが密着できるようにするとより好ましい。また、図1、2に示す態様では、注入ノズル30を注入口先端部25に押し当てたときに注入管部24が押された方向に曲がりやすいため、注入口先端部25の裏側に押さえ具をあてておくことができる。このような押さえ具に原料液が付着しないようにするために注入口先端部の裏側に原料液が回りこみにくくするという点でも、ノズル先端面部31の外形は、注入口先端面部21の外形よりも小さくすることが好ましい。
注入ノズル30において、筒状部34の長さは、1cm以上であることが好ましい。筒状部34の長さが過度に短いと、注入時に原料液がオーバーフローして筒状部34をつたい注入治具固定部35まで達して、注入治具が汚れて交換時に不具合が生じるおそれがある。
チューブ接続部36は、使用するチューブの孔の径よりも少し大きい外径を有することが好ましい。このチューブ接続部36をチューブの先端の孔から挿入し、チューブの孔とノズル孔33をつなげた状態で、チューブの弾力を利用してチューブと注入ノズル30とを接続することができる。チューブ接続部36の構造は、接続部から原料液がもれないように接続できる構造であればよく、特に限定されない。
注入ノズル30と接続するチューブの材質は、特に限定されないが、チューブと注入ノズルとを、チューブの弾力を利用して固定でき、また注入ノズルを自由に動かすことができるという点から、柔軟性および弾力性を有する樹脂性であることが好ましく、また、耐熱性が高い材料を用いることが好ましい。また、原料液によってはチューブ内で固まる場合もあるので、チューブは交換可能なものが好ましい。
成形型保持具、搬送用パレット
次に、第一の態様の製造方法において使用可能な成形型固定用保持具とそれを装着したパレットの一例を、図面に基づいて説明する。図19(a)は保持具201の正面図、図19(b)はその平面図、図19(c)はその下面図、図19(d)はその右側面図、図19(e)はその左側面図、図19(f)は、その背面図である。図3は図19に示す保持具を備えたパレットを示す図である。この図3のパレットを、以下、搬送用パレットという。図4は図3に示す搬送用パレットに成形型を装着した状態を示す。
図19に示す保持具201は、成形型を保持する機能と、中心肉厚を制御するため、例えばバネを用いて上型および下型を両外側から内側へ挟み込んで固定する機能を有する。成形型は、後述するように、バネ機構によって両側から挟持することによって保持することができる(図19(b)参照)。但し、中心肉厚の制御、成形型の保持方法は、上記の構造に限定されることはなく、例えば一方のみにバネ機構を用いてもよい。
第一の態様の製造方法では、注入終了後に注入孔20を封止して、混合液の注入孔からの流出を防止する。そのために、保持具201には、注入孔20を封止するための注入孔封止部(注入孔封止プレート2021)が設けられている(図21参照)。注入孔封止プレート2021は、細長い溝を有した、例えば、スライド式の押さえ具であることができ、注入終了後に保持具201の外部から加えられる力により注入孔封止プレート2021をスライドさせて注入管部24の一部を前記溝の間に挟み込むことにより、注入孔を封止することができる。なお、図2に示すガスケットを使用する場合は、注入管部24に設けられた薄肉部23を、前記溝で挟むようにすることにより、注入孔を容易に封止することができる。また、前述のように、保持具201は、成形型を位置決め保持するための注入口部保持プレート2023を有する。
保持具201は、図3に示すように搬送用パレット60に取り付けられている。搬送用パレット60は、保持具201を一つまたは複数固定する部分を有し、また、後述する自動注入システムの搬送手段に接続する部分(搬送手段接続部61)も有する。そして、搬送用パレット60は、図4に示すように成形型を保持具に装着した後に(搬送用パレット70)、前記自動注入システムの搬送手段により、各製造工程を行う装置に搬送される。
第一の態様においても、後述の第三の態様の製造方法において使用され得る保持具を使用することができる。
[製造工程]
本発明の第一の態様の製造方法は、
前記成形型に前記混合液を注入する前に、前記成形型を加温する工程、および、前記キャビティに二酸化炭素を充填する工程を含み、かつ、
前記二酸化炭素が充填された成形型を水平面に対してほぼ垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにした状態で、前記混合液を前記注入孔から注入する工程と、
前記成形型への混合液の注入終了後、前記注入孔を封止する工程と、
前記成形型を放置する工程とを有する。
上記の製造工程を図9および図10を参照して説明する。
図10は、第一の態様の製造方法の全体の流れ図であり、図9は本発明の製造方法におけるレンズ原料注入工程の流れの説明図である。図9(a)は、注入開始前の状態、図9(b)は、混合液を注入するために注入ノズルと成形型の注入口先端面部21とを接触させる途中の状態、図9(c)、(d)は、注入ノズルと成形型の注入口先端面部21との隙間が徐々に狭くなり、混合液の注入が開始された状態、図9(e)は、注入ノズルと成形型の注入口先端面部21とが完全に接合して、混合液の注入が行われている状態、図9(f)は、センサーが液面上昇を検知して、センサーと連動した注入孔封止部により注入孔が封止された状態、図9(g)は、成形型を排出孔を頂上にした状態で傾斜させて泡抜きを行っている状態、図9(h)は、泡抜き終了後に成形型を放置している状態を示す。
まず、図10を参照しながら、第一の態様の製造方法の全体の流れを説明する。
はじめにガスケット1に第1のモールド2Aと第2のモールド2Bを取り付け成形型3を組み立てる(図10のS1)。
第一の態様の製造方法において、成形型3は、混合液の注入前に予め加温される(図19のS2)。成分(A)および成分(B)の混合液を成形型3の注入口部7より注入する時、混合液の温度より成形型の温度がある一定の温度以上低いと、混合液がモールド表面を移動する際に、モールド表面に薄い空気膜が形成され、これが原因で泡不良となることがある。それに対し、混合液の注入前に成形型を加温すると、濡れ性が高くなり上記のような問題は改善される。混合液注入直前の成形型の温度は、混合液の注入時の温度と近い温度かそれ以上であることが、濡れ性の改善という点で好ましい。具体的には、成形型を電気炉や遠赤炉に入れ所定の温度に加温し、炉から取り出した成形型に混合液を注入することが適当である。
第一の態様の製造方法では、成形型に混合液が注入される前に、成形型のキャビティに二酸化炭素を充填する(図10のS3)。成分(A)および成分(B)への二酸化炭素の溶解度は空気に比べて非常に高い。そのため、キャビティ内が二酸化炭素で充填されていれば、混合液の注入時に、混合液の流入速度が速く、キャビティ内に泡が発生した場合でも、その泡は二酸化炭素からなるものであるため、混合液への二酸化炭素の溶解により、泡を消滅させることができる。
成形型3のキャビティ4への二酸化炭素の充填は、加温された二酸化炭素を充填することにより行うことができる。加温された二酸化炭素を充填すれば、加温された成形型を二酸化炭素注入時に冷やしてしまうことがないため好ましい。加温された二酸化炭素を充填する方法としては、例えば二酸化炭素の流路の途中にヒータを設けて加熱してもよいし、成形型を加温する炉内を二酸化炭素で置換しておいてもよい。また、二酸化炭素を充填した後に注入口部7と排出口部8を封止して成形型を加温してもよい。
成形型のキャビティに二酸化炭素を充填した後、混合液の注入を行う(図10のS4)。混合液の注入は、成形型を水平面に対してほぼ垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにした状態で、前記混合液を前記注入孔から注入することにより行われる。先に説明した図19に示すような保持具に成形型を装着して、成形型を水平面に対して垂直に、かつ、排出孔が頂上になるような状態に保つことができる。第一の態様の製造方法では、成形型の下側から混合液の注入を行うため、混合液は、既に注ぎ込まれた混合液の液面の下側から注入される。そのため、注入中に成形型内の空気を巻き込みにくく、気泡が発生しにくい。
また、第一の態様の製造方法で使用する混合液のように、高粘度の混合液を成形型へ注入する場合、キャビティ4内において混合液の液面の上昇速度が位置により異なると、上昇速度が遅い液面付近の空気がキャビティ4内部に取り残されるという問題が生じる場合がある。それに対し、第一の態様の製造方法では、成形型を水平面に対してほぼ垂直にした状態で注入を行うため、位置による液面の上昇速度の差が小さくなるので、そのような問題が生じにくい。特に近視矯正用レンズを成形する場合、その成形型のキャビティ4は、中央付近の隙間が狭く、周縁側の隙間が広いため、中央付近より周縁側の方に混合液が流れ込みやすい。このため、傾斜角度が低い場合、両側の周辺部の液面が、中央付近の液面より速く上昇し中央付近の空気の周囲を取り囲むようにして排出孔40に到達してしまい、中央付近の空気がキャビティ4内に取り残されるという問題が生じる場合がある。それに対し、第一の態様の製造方法のように成形型を水平面に対してほぼ垂直にすれば、周辺側と中央付近の液面上昇速度の差が小さくなるため、中央付近の空気が取り残されるという問題が生じにくくなり好ましい。
混合液の注入初期、特に混合液の液面が注入孔20を上昇している間は、空気を巻き込みやすいため、混合液の液面の上昇スピードを抑えるように注入量を少なくすることが好ましい。しかしながら、初期重合速度が速い樹脂の場合、注入ノズルから流出するレンズ原料の流速を変えるとノズルから出たときの混合液の重合の度合いも変化してしまうため、光学的欠損の原因となってしまう場合がある。また、RIM機を利用して成分(A)と成分(B)を混合する場合は、途中で流出速度を変更することは、困難な場合がある。そこで、注入ノズルから出る混合液の流速は変えることなく、ノズル先端部と注入口先端部25との隙間を調整することで注入流量を調整することが好ましい。注入初期はノズル先端面部31と注入口先端面部21とを徐々に接触させながら、両者が完全に密着しない状態で注入を行い(図10のS41)、最終的にノズル先端面部31と注入口先端面部21とを密着させて注入を行う(図10のS42)ことが好ましい。具体的には、注入は、図9(a)〜(e)に示すように行うことができる。まず、図9(a)に示すように、注入ノズル30から混合液を流出させる。第一の態様において使用する成分(A)と成分(B)との混合液は重合速度が速いため、一度流出を停止すると、重合が急速に進行してチューブや注入ノズルが詰まったり、チューブや注入ノズル内で既に重合した成分が成形型へ混入するおそれがある。そのため、第一の態様の製造方法では、製造工程中、注入ノズルから混合液を流出させ続けることが好ましい。複数の成形型を使用してレンズを連続的に製造する場合、混合液の注入に使用されるチューブは、所定時間経過後に交換することもできる。
図9(a)に示すように混合液を注入ノズルから流出させながら、成形型の前方下部から、注入ノズル30をゆっくり近づけ、図9(b)に示すように、最初に注入ノズル30のノズル先端面部31の上端が、成形型の注入口先端面部21の上端に接するように注入ノズルを動かす。その後、注入ノズルのノズル先端面部31を上部から徐々に注入口先端面部21に接合させる(図9(c)〜(d))。最終的に、図9(e)に示すように、注入口先端面部21とノズル先端面部31とを完全に接合させ、注入を行うことができる。
注入ノズル30から吐出される混合液は、注入孔20を通してキャビティ4へと流入する。その後、キャビティ4が満たされて排出孔40を経て液溜め部42に達する。排出口部8内の所定の高さまで混合液の液面が達すると、図9(f)に示すように、排出口部8の上方に設置されているセンサー100が作動し、注入口部7の注入管部24が注入孔封止部の溝に挟み込まれ、注入孔20が封止され、注入が完了する(図10のS5)。なお、注入ノズル30からの混合液の流出が止まらないように、注入孔20が封止されると同時に注入ノズル30も注入口部7から離すことが好ましい。
上記のとおり、センサー100で排出口部8内の液面高さを検知することにより、排出口開口41に液面が達する前の所定の高さで液面上昇が終了し、注入が完了するため、排出口開口41から混合液がこぼれることがない。なお、後の工程で、成形型を傾けて泡抜きを行うため、傾けたときに混合液がこぼれないようにセンサーで検知する高さを調整することが、より好ましい。
また、注入孔20が封止されるため、注入ノズル30を注入口部7から離しても、成形型の外部に混合液がこぼれることはない。また、前述のように、注入管部24の一部に薄肉部を設け、その薄肉部を注入孔封止部により封止することもできる。本発明において使用される液面感知センサーとしては、接触式や非接触式のものが使用できる。但し、センサーに原料液が付着する問題がないため、非接触式センサーを用いることが好ましい。非接触式センサーとしては、例えば、超音波センサー、光センサー、差圧センサー、熱センサー、静電容量センサー、画像センサーを挙げることができる。
注入中にキャビティ4内に気泡が発生した場合には、キャビティ4内に生じた気泡を、排出孔40を通して除去することが好ましい。泡抜きは、成形型を排出孔40が頂上になるようにした状態で、所定の角度に傾斜させて所定時間保持することにより行うことができる(図10のS6)。この角度、時間はアイテムに応じて適宜設定される。但し、製造するプラスチックレンズの種類によっては泡抜き工程を必要としない場合もある。
成形型の傾斜は片側だけ行ってもよいし、片側ずつ交互に行ってもよい。排出孔40のキャビティ側開口の位置に応じて、傾斜の方法は適宜設定するとよい。例えば、排出孔40のキャビティ側開口を上型または下型のどちら側かに寄せている場合は、その寄せている側が最も高くなるように傾斜させるとよい。具体的には、上型側に寄せている場合は、上型が上になるように傾斜させることが好ましい。下型側に寄せている場合は、下型側が上になるように傾斜させることが好ましい。また、排出孔40のキャビティ側開口が中間に位置している場合は、両側に傾斜させるとよい。なお、混合液は傾斜させている間も重合が進行し、粘度もしだいに高くなり、また、重合途中に成形型を動かすことにより、重合中の樹脂が流動することで光学的欠損を生じさせる可能性もあることから、片側だけに傾斜させて所定時間保持することが好ましい。
図2に示すガスケットでは、前述の理由から下型側に排出孔のキャビティ側開口を寄せているので、下型側が上になるように傾斜させ、例えば、10〜15秒程度保持することにより、泡抜きを行うことができる。
必要に応じて泡抜き工程を行った後、成形型を排出孔が頂上になるようにした状態で放置して、さらに混合液を重合させる。成形型を放置する工程では、排出孔40を頂上にして混合液がこぼれないように成形型を保ち、低温雰囲気中に所定時間静かに放置し重合させ(図10のS7)、その後、重合が完全に進まない状態の内に、注入孔20内の重合部分および排出孔40内の重合部分を破壊し、キャビティ4内で重合したレンズ成形体部分と、注入孔20内および排出孔40内で重合した部分とを分断し(図10のS8)、次いで成形型を高温雰囲気中に放置して、さらに重合を進める(図10のS9)ことが好ましい。高温雰囲気中に放置する前に、注入孔内の重合部分と排出孔内の重合部分を破壊しておくことで、高温雰囲気中で放置した後に、ガスケットの除去を容易に行うことができる。
前記低温雰囲気は、主に自己発熱により重合反応が進むような比較的低温の雰囲気であり、例えば −10〜50℃であることができる。低温雰囲気中で放置している間は、混合液は重合反応による反応熱により自己発熱しさらに重合が促進されるが、ある程度重合が進行してしまうと発熱量が少なくなり、徐々に重合反応が収まっていく。そのまま放置し続けると、重合反応が進むにつれ重合収縮が大きくなるため、内部歪が大きくなりレンズ成形体が割れたり、モールドから分離したりするおそれがある。このため、低温雰囲気中での放置時間は、注入孔20内および排出孔40内で重合した部分をキャビティ内で重合した部分から分断できる程度に重合が進むまでの時間以上で、重合収縮による内部歪が大きくなり成形に支障が生じてしまう時間未満に設定することが適当である。例えば、この放置時間は、5〜20分間の範囲内にすることが好ましい。
この低温雰囲気中での放置の間、特に分断作業を行う前は、ガスケットをあまり揺らさないようにすることが好ましい。こうすることにより重合途中の混合液がキャビティ内を流動するのを防ぐことができるため、レンズ成形体の光学的欠損を低減できる。
低温雰囲気中での自己発熱による重合では、重合は完全には行われず未反応の官能基が残った状態で固まっているため、完成した成形体はさほど強度が高くない。このため低温雰囲気放置中であれば、注入孔20内および排出孔40内の重合部分の破壊を容易に行うことができる。この注入孔20内および排出孔40内の重合部分の破壊は、注入管部24およびくびれ部43を折り曲げることにより容易に行うことができる。なおガスケットを、弾性を有する樹脂から構成することにより、注入口部7および排出口部8ごと折り曲げることができるので、破壊作業を容易に行うことができる。
高温雰囲気中に放置する工程は、前述の分断作業を行った後、成形型を、あらかじめ所定の温度まで上昇させ高温雰囲気にしてある炉内に入れることにより行うことができる。高温雰囲気中に放置することにより、成形体の内部歪みを緩和させながら、前記低温雰囲気中での重合で反応しなかった官能基の反応を進行させることができる。そして、重合完了後、温度を徐々に下げた後に、成形型を炉から取り出す。この高温雰囲気中の加熱は、例えば110〜150℃で15〜24時間程度行うことができる。炉から取り出した成形型から、まずガスケットを取り除き、続いて第1および第2のモールドを取り除いて(図10のS10)、プラスチックレンズ成形体が完成する(図10のS11)。
以上説明した第一の態様の製造方法を実施するためには、
複数の重合性成分を混合し、混合後直ちに混合液を成形型に注入するプラスチックレンズ製造装置であって、
前記成形型は、内部にキャビティを有し、
前記成形型のキャビティに二酸化炭素を供給する二酸化炭素注入部と、
前記二酸化炭素が供給された成形型に前記原料液を注入する原料液注入部と、
前記原料液が注入された成形型を傾斜させて前記キャビティ内の泡抜きを行う泡抜き部と、
前記成形型を保持し、前記各部に成形型を搬送する搬送手段とを備えることを特徴とするプラスチックレンズ製造装置
を用いることができる。以下に、そのような装置の一例を、図面に基づいて説明する。但し、本発明はこの態様に限定されるものではない。
図5は自動注入機の全体図面、図6は図5に示す自動注入機の充填部82の詳細図面、図7は成形型への混合液の注入時におけるノズルの動作状態を示す図面である。
図5に示される自動注入機において、まず、図5に示される成形型取り付け部81において、所定の温度まで加温された成形型を、搬送用パレットの保持具に装着する。ここで、成形型は、図4に示す搬送用パレット70(成形型が装着された搬送用パレット)の状態となる。成形型の取り付けは、手動で行うこともでき、自動化することもできる。
次いで、搬送用パレットは、搬送手段であるフリーフローコンベアーによって充填部82に移送される。充填部82は、3つの工程を有する。これらの工程を、図6に基づいて説明する。
図6の充填部82では、図7に示すように、第一に、二酸化炭素注入工程91、第二に、一端が反応射出成形機の混合室に設けられた吐出口と繋がれ、他端に注入ノズル30を装着した注入治具を用いて混合液を注入する混合液注入工程92、第三に、成形型を所定の角度に傾斜して所定時間保持することにより、泡の浮力で泡をキャビティ内から除去する泡抜き工程93が行われる。
二酸化炭素注入工程91では、搬送用パレット70が到着すると、二酸化炭素注入盤94がシリンダー101により下降し成形型の排出口開口41を覆う。次いで、二酸化炭素導入部95より二酸化炭素を成形型に導入する。二酸化炭素の導入量は成形型のキャビティの容量に合わせて調整を行う。また、二酸化炭素の導入は、次工程である注入工程92にて行われている成形型への注入が完了するまで行うことが好ましい。
注入工程92では、搬送用パレット70の到着後、保持具の位置決めを行い、反応射出成形機の混合室に設けられた吐出口とチューブを通して繋がれた注入ノズル30のノズル先端面部31を、図7に示すような動作軌道により、ガスケットの注入口先端面部21と、その中心付近にある注入口開口22(図2参照)の周りで密着させて、注入孔20とノズル孔33を連結させる。
注入工程92では、まず、注入ノズル30を、図7(a)に示すように、成形型の前方下部からゆっくり近づける。次に、図7(b)に示すように、最初に注入ノズル30のノズル先端面部31の上端が、ガスケットの注入口先端面部21に接するように注入ノズル30を動かす。その後、注入ノズル30のノズル先端面部31を上部から徐々に注入口先端面部21に接合させ、最終的に、図7(c)に示すように、完全に接合させる。注入ノズルのノズル先端面部31を上部から徐々に注入口先端面部21近づけることにより、隙間から漏れていた混合液が徐々に注入孔に注入され、隙間から漏れていた混合液が徐々に減り、完全に接合された状態では、混合液は漏れることなく、注入孔20からキャビティ4へ注入される。成形型3のキャビティ4が混合液で満たされ、混合液が排出口部8の所定の高さまで達すると、液溜め部42の上部に設置されている、排出口部8内で液面が所定の高さになったことを検知するセンサー100が作動し、前述の注入孔封止部(注入孔封止プレート2021;図22参照)がカム96によって移動し、注入孔20が封止され、注入ノズル30が元の位置に戻り、注入が完了する。
次に、搬送用パレット70は泡抜き工程93に移動する。泡抜き工程93では、パレットの位置決めが終了すると同時に、エアーシリンダーにより搬送用パレット70と共に、成形型を、排出孔が頂上になるようにした状態で、所定角度で所定時間傾斜させたまま保持し、泡抜きを行う。この角度、時間はアイテムに応じて適宜設定される。但し、製造するプラスチックレンズの種類によっては必要としない場合もある。
泡抜き工程終了後、エアーシリンダーを下げて搬送用パレット70を元の位置に戻し、図5に示すユータン搬送エリア83〜85へ移動させる。ユータン搬送エリア83〜85において、搬送用パレット70の進行方向を変えた後、搬送用パレット70を排出待機エリア86へ移送する。その後、搬送用パレット70を排出待機エリア86において、所定時間、低温雰囲気で放置する。所定時間経過後、搬送用パレット70を、ユータン排出エリア87へ移送し、ユータン排出エリア87〜89において、搬送用パレット70の進行方向を変える。排出待機エリア86では、例えばフリーフローコンベアーの所定の地点にエスケーパーを設けることにより、所定時間経過後、ユータン排出エリア87へ搬送用パレットが到達する時間をコントロールすることもできる。例えば、ユータン排出エリア88において、搬送用パレット70から成形型を取り外す。成形型の取り外しは、手動で行うこともでき、自動化することもできる。
その後、搬送用パレットはユータン排出エリア89を経て、成形型取り付け部81へ移送され、新たな成形型が取り付けられ、混合液の注入が行われる。以上説明した工程では、混合液を充填した成形型は、混合液の流動を防ぐために静かに搬送することが好ましい。
その後、搬送用パレット70から取り外された成形型において、ガスケットのくびれ部43と注入管部24を折り曲げることにより、排出孔と注入孔に充填されて硬化した樹脂が分断、破壊される。その後、成形型を高温雰囲気内に運び所定時間放置する。この放置工程については、先に説明した通りである。
なお、第一の態様の製造方法では、第二の態様の製造方法および/または第三の態様の製造方法を用いることもできる。その詳細については、後述する。
[第二の態様]
本発明の第二の態様の製造方法は、
注入治具開口から流出するプラスチックレンズ原料液を成形型に注入して、前記原料液を硬化させて成形体を得る、プラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型は、内部にキャビティを有し、前記原料液を前記キャビティ内に注入するための注入孔と、前記キャビティ内の気体または前記混合液を成形型外部に排出するための排出孔とを、直径方向に対向する位置に有しており、
前記注入孔は、前記混合液を注入するための開口(以下、「注入口開口」という)を有し、
前記原料液は、前記成形型を水平面に対して傾斜または垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにして、前記注入孔を通して前記成形型へ注入され、
前記注入口開口と前記注入治具開口との連通開始から該連通が完了するまでの間に、前記注入治具開口から流出する原料液の一部が前記注入孔へ流入し、残りの一部が前記注入孔へ流入せずに流下する期間を含み、
前記期間中、前記注入治具開口と前記注入口開口との間に隙間が生じており、該隙間から、前記注入治具開口から流出する原料液の一部が流下していることを特徴とする。第二の態様の製造方法において使用され得る成形型、ガスケット、および注入治具等の詳細は、先に第一の態様について述べた通りである。
第二の態様の製造方法は、注入治具開口から流出するプラスチックレンズ原料液を成形型に注入して、前記原料液を硬化させて成形体を得る、プラスチックレンズの製造方法である。第二の態様のプラスチックレンズの製造方法は、高粘度で初期重合速度の速いプラスチックレンズ原料液からプラスチックレンズを製造するために好適である。そのようなプラスチックレンズ原料液としては、複数の重合性成分を含み、該複数の重合性成分が、混合後直ちに重合を開始し10分以内に硬化するものを挙げることができる。
具体的には、第二の態様の製造方法において使用される、高粘度で初期重合速度の速いプラスチックレンズ原料液としては、前述の成分(A)と成分(B)を含むもの、好ましくは、前述の成分(A)と成分(B)とからなるものを挙げることができる。
第二の態様の製造方法では、成形型を水平面に対して傾斜または垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにして、前記注入孔を通して、プラスチックレンズ原料液を成形型へ注入する。このように、成形型の下側から原料液の注入を行うと、原料液は、すでに注ぎ込まれた原料液の液面の下側から注入されるため、注入中に成形型内の空気を巻き込みにくく、気泡が発生しにくいという利点がある。
成形型の傾斜角度は、例えば70〜110°とすることができる。特に、第二の態様では、成形型を水平面に対して略垂直にした状態で、原料液の注入を行うことが好ましい。高粘度の原料液を成形型へ注入する場合、成形型のキャビティ内において原料液の液面の上昇速度が位置により異なると、上昇速度が遅い液面付近の空気がキャビティ内部に取り残されるという問題が生じる場合がある。それに対し、成形型を水平面に対して略垂直にした状態で注入を行うと、位置による液面の上昇速度の差が小さくなるので、そのような問題が生じにくい。特に近視矯正用レンズを成形する場合、その成形型のキャビティは、中央付近の隙間が狭く、周縁側の隙間が広いため、中央付近より周縁側の方に混合液が流れ込みやすい。このため、傾斜角度が低い場合、両側の周辺部の液面が、中央付近の液面より速く上昇し中央付近の空気の周囲を取り囲むようにして排出孔に到達してしまい、中央付近の空気がキャビティ内に取り残されるという問題が生じる場合がある。それに対し、成形型を水平面に対して略垂直にすれば、周辺側と中央付近の液面上昇速度の差が小さくなるため、中央付近の空気が取り残されるという問題が生じにくくなり好ましい。
混合液の注入初期、特に混合液の液面が注入孔を上昇している間は、空気を巻き込みやすいため、混合液の液面の上昇スピードを抑えるように注入量を少なくすることが好ましい。しかしながら、初期重合速度が速い樹脂の場合、注入ノズルから流出するレンズ原料の流速を変えるとノズルから出たときの混合液の重合の度合いも変化してしまうため、光学的欠損の原因となってしまう場合がある。また、RIM機を利用して重合性成分を混合する場合は、途中で流出速度を変更することは、困難な場合がある。そこで、第二の態様では、注入口開口と前記注入治具開口との連通開始から該連通が完了するまでの間に、前記注入治具開口から流出する原料液の一部が前記注入孔へ流入し、残りの一部が前記注入孔へ流入せずに流下する期間を設ける。本発明において、「注入口開口と前記注入治具開口との連通」とは、注入治具開口から流出する原料液の少なくとも一部が、前記注入口開口へ流入している状態をいう。本発明の製造方法では、注入開始時には、注入治具開口から流出する原料液すべてを注入孔へ注入せず、その一部を注入孔へ流入させ、残りの一部は流入孔へ流入させずに下方へ流下させ、その後、注入孔へ流入する原料液の量を段階的に増加させることにより、注入ノズルから流出する原料液の流速を変えることなく、成形型への原料液の注入流量を調整することができる。これにより、泡を巻き込みやすい注入初期に、注入流量を少なくすることができ、気泡の発生を低減することができる。
また、注入治具開口から流出する原料液の一部を注入孔へ流入させ、残りの一部を流下させることにより、注入口開口周囲の面に原料液がかかり、この面上の空気を押しのけて、面を原料液で濡らすことができる。これにより、面上に残った空気が注入孔に入り込むことを低減でき、泡の巻き込みを減らすことができる。また、原料液が注入孔開口周囲の面に当たり跳ね返って注入治具開口端付近に当たるため、注入治具の開口端付近に付着していた泡や固化しはじめていた原料液が洗い流され、これら泡や固化し始めた原料がキャビティへ流入することを防ぐことができる。これにより、泡の巻き込みや脈利を低減できる。
第二の態様では、前記期間中に、注入治具開口と注入口開口との間に隙間を生じさせ、その隙間から、注入治具開口から流出する原料液の一部を流下させる。この点を、図面に基づいて説明する。
図9は、レンズ原料液注入工程の流れの一例である。図9(a)は、注入開始前の状態、図9(b)は、原料液を注入するために注入ノズルと成形型の注入口先端面部21とを接触させる途中の状態、図9(c)、(d)は、ノズル先端開口32と成形型の注入口開口22との隙間が徐々に狭くなり、原料液の注入が開始された状態、図9(e)は、注入ノズル30のノズル先端面部31を成形型の注入口先端面部21に密着させ、前記隙間を無くして原料液の注入が行われている状態、図9(f)は、センサーが液面上昇を検知して、センサーと連動した注入孔封止部により注入孔が封止された状態、図9(g)は、成形型を排出孔を頂上にした状態で傾斜させて泡抜きを行っている状態、図9(h)は、泡抜き終了後に成形型を放置している状態を示す。
まず、図9(a)に示すように、注入ノズル30のノズル先端開口32からプラスチックレンズ原料液を流出させる。特に、重合速度が速い原料液を用いる場合には、一度流出を停止すると、重合が急速に進行してチューブや注入ノズルが詰まったり、チューブや注入ノズル内で既に重合した成分が成形型へ混入するおそれがある。そのため、本発明では、製造工程中、注入ノズルから原料液を流出させ続けることが好ましい。複数の成形型を使用してレンズを連続的に製造する場合、原料液の注入に使用されるチューブは、所定時間経過後に交換することもできる。
図9(a)に示すように原料液を注入ノズル30のノズル先端開口32から流出させながら、成形型の前方下部から、注入ノズル30を注入口開口22へゆっくり近づけ、図9(b)に示すように、最初に注入ノズル30のノズル先端面部31の上端が、成形型の注入口先端面部21の上端に接するように注入ノズルを動かす。その後、ノズル先端面部31の上端を、注入口先端面部21と当接させた状態で、注入ノズル30を回転させてノズル先端面部31の下端側を注入口先端面部に近づけ、ノズル先端面部31と注入口先端面部21との間の隙間を徐々に狭める。このとき、その隙間から注入治具開口から流出する原料液が流下するとともに、一部の原料液が注入孔へ流入を開始し、やがて原料液がキャビティに達する(図9(c)から(d))。そして最終的に図9(e)に示すようにノズル先端面部31が注入口先端面部21と密着し、前記隙間をなくした状態で注入が行われる。
少なくとも、原料液のキャビティ内への流入が開始するまでの間は、注入治具開口と注入口開口との間に隙間が生じていることが好ましい。原料液は注入口開口22から注入管部24(図2参照)を経てキャビティへ流入する。この注入管部24を原料液が通過するとき、上昇速度が著しく速い場合、その上昇速度に注入管部24の内壁面の濡れがついて行けず、この経路内にて泡を生じるおそれがある。また、RIM機と原料液の特性上、注入ノズルからの流出量をコントロールすることは難しいが、前述のように隙間を生じさせて原料液の一部を流下させれば、隙間の間隔を調節することにより、注入ノズルからの流出量を一定に保ちつつ、注入管部に流入する液量を調節できる。また、隙間を生じさせて原料液を流下させることにより、原料液が注入口先端面部21に付着するときに生じる泡を流下させることができ、また、その隙間を狭めることにより、原料液が注入口先端面部21から跳ね返り、ノズル先端面部31に付着していた泡や固化しはじめた原料液を洗い流すことができるなどの効果を得ることもできる。
前記隙間は、注入治具の先端部を、注入口先端部と密着させることによって無くすことができる。本発明では、例えば、先端部が筒状に形成された注入治具の先端部端面を、成形型の注入口開口全周囲に形成された面(注入口先端面部)に密着させることにより、前記隙間を無くすことができる。この場合、前述のように、注入治具先端部端面の外形の大きさは、注入口先端面部の外形よりも小さいことが好ましい。
前記注入口先端面部21は、注入孔の軸に対して傾斜した平面であることが好ましい。注入ノズル30のノズル先端面部31(注入治具先端部端面)も、ノズル孔の軸に対して傾斜していることが好ましく、注入口先端面部に密着させたときに、成形型の注入孔の軸方向と注入治具の軸方向とが交わるように形成されていることが好ましい。特に、図17に示すように、注入孔の軸方向と注入治具の軸方向とが略垂直に交わるように、ノズル先端面部31が形成されていることが好ましい。これにより、原料液の成形型への注入を円滑に行うことができる。
注入治具開口と注入口開口との間に設けられた隙間の間隔は、注入治具先端部端面の上端を、注入口先端面部と当接させた状態で、該当接した部分を軸として注入治具を回転させて調整することが好ましい。このように、当接部分を軸として注入治具を移動させれば、隙間の間隔の調整を安定に行うことができる。
注入ノズル30から流出される原料液は、注入孔20を通してキャビティ4へと流入する。その後、キャビティ4が満たされて排出孔40を経て液溜め部42に達する。排出口部8内の所定の高さまで混合液の液面が達すると、図9(f)に示すように、排出口部8の上方に設置されているセンサー100が作動し、注入口部7の注入管部24が注入孔封止部の溝に挟み込まれ、注入孔20が封止され、注入が完了する。なお、注入ノズル30からの原料液の流出が止まらないように、注入孔20が封止された直後に、注入治具開口を、注入口開口から離すことが好ましい。上記のとおり、センサー100で排出口部8内の液面高さを検知することにより、排出口開口41に液面が達する前の所定の高さで液面上昇が終了し、注入が完了するため、排出口開口41から混合液がこぼれることがない。なお、好ましくは、後の工程で、成形型を傾けて泡抜きを行うため、傾けたときに混合液がこぼれないようにセンサーで検知する高さを調整することが、より好ましい。また、注入孔20を封止すれば、注入ノズル30を注入口部7から離しても、成形型の外部に混合液がこぼれることはない。また、前述のように、注入管部24の一部に薄肉部を設け、その薄肉部を注入孔封止部により封止することもできる。本発明において使用される液面感知センサーについては、前述の通りである。
図18は、レンズ原料液注入工程の流れの他の例である。図9には、ノズル先端面部31と注入口先端面部21との隙間の間隔を、ノズル先端面部31の上端を、注入口先端面部21の上端に当接させた後に注入ノズルを回転させることによって調整する例を示したが、図18の例は、注入ノズル先端面部31と注入口先端面部21との間において、ノズル先端開口32および注入口開口22の全周囲に隙間を有した状態で、前記隙間の間隔を調整する例、即ち、全周囲において隙間を保ちながら、注入ノズル30を成形型の注入口先端面部21に近づけることにより、隙間の間隔を調整する例である。図18(a)は、注入開始前の状態、図18(b)は、原料液を注入するために注入ノズル30を成形型の注入口先端面部21に近づける途中の状態、図18(c)、(d)は、ノズル先端開口32と成形型の注入口開口22との隙間が徐々に狭くなり、原料液の注入が開始された状態、図18(e)は、注入ノズル30のノズル先端面部31を成形型の注入口先端面部21に密着させ、前記隙間を無くして原料液の注入が行われている状態、図18(f)は、センサーが液面上昇を検知して、センサーと連動した注入孔封止部により注入孔が封止された状態、図18(g)は、成形型を排出孔を頂上にした状態で傾斜させて泡抜きを行っている状態、図18(h)は、泡抜き終了後に成形型を放置している状態を示す。なお以下の説明では、図9に示したレンズ原料液注入工程と相違する点を中心に説明し、図9と同様の部分については説明を省略する。
まず、図18(a)は、注入ノズル30のノズル先端開口32からプラスチックレンズ原料液を流出させている状態であり、図9(a)と同じである。図18(a)に示すように原料液を注入ノズル30のノズル先端開口32から流出させながら、図18(b)に示すように、注入ノズル30のノズル先端面部31が注入口先端面部21と平行な状態になるようにし、その平行な状態を維持しながらノズル先端面部31を注入口先端面部21へ近づける。このとき、ノズル先端面部31と注入口先端面部21との間には、ノズル先端開口32および注入口開口22の全周囲において隙間が生じており、この隙間から、ノズル先端開口32から流出する原料液が流下している(図18(b))。隙間を徐々に狭めると原料液が注入口先端面部21に当たるようになる。このとき、注入口先端面部21は原料液で濡れるとともに、注入口先端面部21に付着した泡は流し落とされる。さらに、ノズル先端開口32および注入口開口22の全周囲に隙間を有した状態で、隙間を徐々に狭めると、注入ノズル30のノズル先端面部31と注入口先端面部21との間に原料液が介在し、原料液の一部が注入孔に流入を開始し(図18(c))、やがて原料液がキャビティ4に達する(図18(d))。このとき、原料液は注入口先端面部21に当たるとともに、跳ね返った原料液が注入ノズル30のノズル先端面部31に当たり、付着していた泡や固化しはじめていた原料液を流し落としながら流下していく。そして最終的に、図18(e)に示すように、ノズル先端面部31が注入口先端面部21と密着し、前記隙間を無くした状態で注入が行われる。
このようにノズル先端面部31と注入口先端面部21との間において、ノズル先端開口32および注入口開口22の全周囲において隙間を確保しながらその隙間を狭めると、原料液は前記隙間から全方向へ流れ出ることが可能である。これにより、注入口先端面部21やノズル先端面部31の広範な範囲に原料液が当たり、付着した泡や固化しはじめていた原料液を、図9に示す例よりも効率的に流し落とすことができる。この点から、図18に示す例は、図9に示す例よりも好ましい。
ノズル先端面部31と注入口先端面部21との間に設けられた隙間の間隔は、ノズル先端面部31と注入口先端面部21とを略平行に保ちながら、一方または両方を平行移動させて調整することが好ましい。このようにすると全周囲にわたって隙間の間隔が一定になるとともに、全周囲に隙間を確保した状態で隙間を狭めることができる。この隙間の間隔は、モータ等で駆動制御して調整することが好ましい。
キャビティがレンズ原料で満たされた後の工程(図18(f)〜(h))は、図9の場合(図9(f)〜(h))と同じなので説明は省略する。
第二の態様の製造方法において、第一の態様の製造方法を用いることもできる。その詳細は、先に説明した通りである。更に、第二の態様の製造方法において、第三の態様の製造方法を用いることもできる。その詳細は後述する。
[第三の態様]
本発明の第三の態様のプラスチックレンズの製造方法は、
プラスチックレンズ原料液を保持具に保持された成形型に注入して、前記原料液を硬化させて成形体を得ることを含む、プラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型は、内部にキャビティを有し、前記原料液を前記キャビティ内に注入するための注入孔を含む注入口部と、前記キャビティ内の気体または前記混合液を成形型外部に排出するための排出孔を含む排出口部とを、直径方向に対向する位置に有しており、
前記保持具は、前記注入口部を保持するための注入口部保持部と、前記注入口部を挟持することにより、前記注入孔を封止するための注入孔封止部とを有し、
前記保持具による成形型の保持は、前記注入口部保持部によって前記注入口部を保持しつつ、前記成形型を水平面に対してほぼ垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにした状態で行われ、かつ、
前記原料液の注入は、前記原料液を前記注入孔から注入することによって行われ、かつ、前記注入孔封止部によって前記注入孔を封止することによって終了することを特徴とする。
第三の態様のプラスチックレンズの製造方法では、水平面に対してほぼ垂直にした状態で、かつ排出孔が頂上になるようにした状態で保持具によって保持された成形型へ、注入孔から、つまり、成形型下方から、プラスチックレンズ原料液を注入する。このように、成形型下方から原料液の注入を行うと、原料液は、既に注ぎ込まれた原料液の液面の下側から注入される。そのため、注入中に成形型内の空気を巻き込みにくく、気泡が発生しにくい。
また、高粘度の原料液を成形型へ注入する場合には、キャビティ内において混合液の液面の上昇速度が位置により異なると、上昇速度が遅い液面付近の空気がキャビティ内部に取り残されるという問題が生じる場合がある。それに対し、第三の態様の製造方法では、成形型を水平面に対してほぼ垂直にした状態で注入を行うため、位置による液面の上昇速度の差が小さくなるので、そのような問題が生じにくい。特に近視矯正用レンズを成形する場合、その成形型のキャビティは、中央付近の隙間が狭く、周縁側の隙間が広いため、中央付近より周縁側の方に混合液が流れ込みやすい。このため、傾斜角度が低い場合、両側の周辺部の液面が、中央付近の液面より速く上昇し中央付近の空気の周囲を取り囲むようにして排出孔に到達してしまい、中央付近の空気がキャビティ内に取り残されるという問題が生じる場合がある。それに対し、本発明のように成形型を水平面に対してほぼ垂直にすれば、周辺側と中央付近の液面上昇速度の差が小さくなるため、中央付近の空気が取り残されるという問題が生じにくくなる。
一方、注入孔を通して成形型の下方から原料液の注入を行うと、注入終了後に、注入した原料液が注入孔から流下して外部へこぼれてしまう。そこで、本発明では、注入終了後に注入孔を封止することにより、原料液の流下を防ぐ。これにより、注入終了後に成形型の向きを変えずに、レンズ原料液の流出を防止することができる。こうして、本発明によれば、泡の混入や光学的欠損の低減されたプラスチックレンズを製造することが可能となる。特に、第三の態様の製造方法では、注入口部を保持するための注入口部保持部と、注入口部を挟持することにより注入孔を封止するための注入孔封止部を有する保持具により、成形型を保持しつつ原料液の注入を行うことにより、以下のような効果を得ることができる。
前述のように、プラスチックレンズ原料液を成形型の下方から注入し、注入孔を封止してその注入を終了することにより、注入終了後、注入された原料液を成形型外部へ流下することなく、気泡の発生を抑えて光学欠損の低減されたプラスチックレンズを製造することができる。このような封止動作を機械的手段で行う場合には、封止手段と注入口部とを正確に位置合わせすることが求められる。また、注入ノズルからの原料液の注入を円滑に行うために、注入口部と注入ノズルを正確に位置あわせすることも求められる。特に、多くのガスケットを注入装置に搬送して、順次原料液を注入する場合などは、注入する成形型ごとに注入口部等の位置を正確に判断し、位置決めすることが求められる。
また、注入口部が樹脂等の変形しやすい材質からなる場合には、封止手段と注入口部とが接触したときや、注入口部先端に注入ノズルを押し当てたときに、注入口部が変形して原料液の注入や注入孔の封止に支障が出ることが懸念される。
そこで、第三の態様の製造方法では、保持具の注入口部保持部によって注入口部を保持しつつ、原料液の注入および注入孔の封止を行う。これにより、注入口部と注入孔封止部との位置合わせ、注入口部先端と注入ノズルとの位置合わせを容易かつ正確に行いつつ、成形型内へ原料液を円滑に導入し、かつ、注入孔の封止を確実に行うことができ、気泡の発生や光学的欠損の低減されたプラスチックレンズを製造することができる。
第三の態様の製造方法において使用される成形型は、レンズの一方の面を形成するためのモールド(第1モールド)と他方の面を形成するためのモールド(第2モールド)とが所定の間隔で対向して配置され、かつ前記2つのモールドの周囲に環状のガスケットが配置されて、前記モールドおよびガスケットによってキャビティが形成され、前記ガスケットは、前記注入孔と前記排出孔とを備えているものであることができる。その詳細は、先に記載した通りである。
第三の態様の製造方法で使用される保持具は、成形型を、第1モールドと第2モールドの両外側から挟むことによって保持する肉厚保持機構を有することが好ましい。この肉厚保持機構によって第1モールドと第2モールドの両外側を挟んで成形型を保持することにより、2つのモールドの間隔を一定に保つことができ、得られるプラスチックレンズの肉厚を正確に制御することができる。
保持具に設けられた注入口部保持部は、成形型の注入口部の任意の位置に当接した状態で成形型を保持することができる。特に、注入口部が変形しやすい材質からなるものである場合には、注入口部保持部は、注入口部の2箇所以上に当接して成形型を保持することが好ましい。
上記のように、注入口部保持部が注入口部の上下2箇所以上に当接して成形型を保持する場合、注入孔封止部は、注入口部の注入口部保持部が当接した箇所の間を挟持することにより、注入孔を封止することが好ましい。これにより、注入口部が変形しやすい材質からなる場合に、封止動作中に注入口部が変形して封止に支障を生じることを回避することができる。
前記注入口部保持部は、溝(保持部溝)を有する部材を含み、この溝に注入口部の少なくとも一部を当接させた状態で成形型を保持することができる。この場合、例えば、注入口部に鍔状部を設ければ、成形型の保持を容易に行うことができる。
注入孔封止部は、溝(封止部溝)を有する部材を含み、この部材を移動させることによって封止部溝に注入口部を押し込み、注入孔の封止を行うことができる。この場合、封止部溝が保持部溝と同一方向に開口した状態で、封止部溝に注入口部を押し込むと、注入口部が保持部から外れたり変形して封止操作に支障をきたすおそれがある。よって、封止部溝は、保持部溝と異なる方向に開口した状態で、注入口部を挟持して注入孔を封止することが好ましい。
以下に、第三の態様の製造方法で使用される保持具の具体的態様について、図面を参照しながら説明する。なお、第一、第二の製造方法においても、第三の態様の製造方法において使用される保持具を使用することができる。但し、本発明はこの態様に限定されるものではない。
図19(a)は保持具201の正面図、図19(b)はその平面図、図19(c)はその下面図、図19(d)はその右側面図、図19(e)はその左側面図、図19(f)は、その背面図である。図20(a)は図19(e)に示した注入口部固定部にある注入口部保持プレートの拡大図、図20(b)は図20(a)に成形型を装着した図、図21は図19(e)に示した注入口部固定部にある注入孔封止プレートの拡大図、図22(a)、(b)、(c)は注入孔封止プレートの動きを示す図、図23(a)は図19(b)に示した第2モールド側肉厚保持部の詳細図、図23(b)はそのV-V線断面図、図24は図19(b)に示した第1モールド側肉厚保持部の詳細図、 図25は成形型の脱着方法を示す図、図26(1)および図26(2)は、注入装置に設置されているガスケット位置決め治具の図、図3は図19の保持具を搬送用パレットに装着した図、図5は、自動注入機の全体図である。
図19に示した保持具201は、保持具201を位置決めし、図3に示す搬送用パレット60と接続するための搬送用パレット接続部204と、成形型注入口部を保持するための注入口部保持部と成形型の注入孔を封止して注入を終了させる注入孔封止プレートを含む図19(e)に示す注入口部固定部202と、第1モールドと第2モールドとを所定の間隔で対向して配置し、得られる成形体の肉厚を制御するための機構を有する図19(b)に示す成形型肉厚保持部205と、搬送用パレット接続部204と注入口部固定部202と成形型肉厚保持部205とを一体にするための図19(f)に示す保持具プレート203からなる。
注入口部固定部202は、図19(e)に示すように、前述の図1(a)に示す成形型注入口部7の上下、左右位置決め機能を有する注入口部保持プレート2023と成形型注入孔の前後位置決め機能と注入終了後の注入孔封止機能を有する注入孔封止プレート2021と、注入孔封止プレート2021の直線前後動作を行うためのプレート用直動案内2022と、注入孔封止プレートの位置調整をするためのボールフランジャー2024からなる。
注入口部保持プレート2023は、成形型3の鍔状の左右位置決め部27(図2参照)と係合して成形型注入口部7(図1参照)を固定するための、図20(a)に示した注入口部上部固定部2025と、注入口部下部固定部2026と、前記注入口部上部固定部2025および前記注入口部下部固定部2026に連結されているとともに注入装置に設けられた機構によって保持されることにより保持具201の位置決めを行う保持具固定用ブリッヂ部2028とからなる。
注入口部保持プレート2023は、前記保持具固定用ブリッヂ部2028に成形型注入口部の導入部である注入口部固定部開口2027を有しており、前記注入口部上部固定部2025および前記注入口部下部固定部2026には、前記注入口部固定部開口2027より導入された注入口部を挟持するための溝部2041、2042がそれぞれ形成されている。
図20(b)に示す態様では、ガスケット1の鍔状の上下位置決め部26(図2参照)が注入口部上部固定部2025の上方から接し、注入口先端面部21(図2参照)の上部が注入口部下部固定部2026と下方から接する。注入口部上部固定部2025および注入口部下部固定部2026は、前記溝部2041、2042にガスケット1の左右位置決め部27を挿入することにより、図20(b)のように、注入口先端部25を含む注入口部7(図1参照)を、左右方向に動かないように固定する。こうして、左右の位置決めを行うと同時に上下の位置決めを行うことができる。本発明では、例えば、弾性を有する樹脂からなるガスケット1の左右位置決め部27の外径を、前記溝部2041、2042の幅と同等もしくは若干大きく設定することにより、樹脂の弾力を利用して、ガスケットの注入口部7を、前述のように位置決め保持することができる。
注入口部固定部開口2027と、注入口部上部固定部2025の溝部2041と、注入口部下部固定部2026の溝部2042の幅や形状、および、注入口部上部固定部2025と注入口部下部固定部2026間の距離は、装着するガスケットの左右位置決め部27の外形と注入口部の長さに依存するものであり、これらに応じて適宜設定することができる。
次に、図19(e)に示した注入口部固定部202にある注入孔封止プレート2021について、図21に基づいて説明する。図21に示すように、注入孔封止プレート2021は、位置決め穴(開放位置)2031と、位置決め穴(前後固定位置)2032と、位置決め穴(封止位置)2033と、ガスケット前後固定部2030と、注入孔封止部2029と、ローラー案内2034を含む。なお、注入孔封止プレート2021の位置決め穴の数は上記の数に限定されるわけではなく任意であり、また、位置決め穴は一列のみではなく2列以上設けることもできる。
注入孔封止プレート2021の先端には、ガスケット前後固定部2030が設けられており、その奥側に注入孔封止部2029が設けられている。ガスケット前後固定部2030は、これに挿入される成形型注入口部の外径(後述するように注入口部に薄肉部を設ける場合には薄肉部の外径)と同程度のサイズの溝からなり、前記ガスケット注入孔封止部2029は前記ガスケット前後固定部2030の溝よりさらに狭い溝からなっている。そして前記ガスケット前後固定部2030および前記ガスケット注入孔封止部2029のそれぞれの溝はつながっており、それら溝の接続部は、ガスケット注入口部7(図1参照)の封止位置が前記ガスケット注入孔封止部2029の溝に入りやすいように、徐々に溝の間隔が狭まるように形成されている。前記ガスケット注入孔封止部2029の溝の幅は、成形型注入口部がこの溝の中に入ったときに、この溝に挟まれて内部の注入孔が封止されるような寸法に設定することができる。図21に示す態様においては、封止位置の管壁の厚さ(薄肉部23(図2参照)を形成している場合はその管壁の厚さ)の2倍以下の厚さにすると良い。
次に、封止プレート2021の動作を、図22に基づいて説明する。
注入孔封止プレート2021は、プレート用直動案内2022に沿って摺動させることにより直線前後運動させることができ、この直線前後運動の際に、ボールフランジャー2024(図19(e)参照)が位置決め穴2031、2032、2033に嵌ることにより停止位置が制御されている。但し、プレートの位置制御ができる機構であれば、前記機構でなくてもよく、これに限定されるわけではない。
注入孔封止プレート2021は、ボールフランジャー2024に入る位置決め穴の位置により3つの位置をとることができる。図19(e)に示すボールフランジャー2024が位置決め穴2031に入っているときが成形型開放状態である図22(a)、位置決め穴2032に入っているときが成形型固定状態である図22(b)、位置決め穴2033に入っているときが成形型注入孔封止状態である図22(c)である。
位置決め穴2031がボールフランジャー2024に入っている状態(図22(a))に注入孔封止プレート2021が保持された状態で成形型を取り付けた後、前記注入口部保持プレート2021を移動させる。位置決め穴2032がボールフランジャー2024に入っている状態(図22(b))に注入孔封止プレート2021が保持されたとき、成形型3は、前記注入口部保持プレート2023により位置決めされているため、左右、上下方向に加えて、前後位置決めがなされ全方向の位置が決定される。
ボールフランジャー2024と注入孔封止プレート2021との距離は、ボールフランジャー2024に注入孔封止プレート2021の位置決め穴2031〜2033への出し入れが容易で且つ位置決め穴に入った時は固定保持されるように設定することができる。例えば、両者間が極端に離れると、ボールフランジャー2024と位置決め穴2031〜2033がほとんど接せず位置決めが困難となる。また極端に近いと、ボールフランジャー2024と注入孔封止プレート2021との摩擦が大きく、位置決め穴にボールフランジャー2024が入ったとき、注入孔封止プレート2021が動きにくく作業に支障をきたすおそれがある。
注入孔封止プレート2021の先端部であるガスケット前後固定部2030と注入孔封止部2029は、図20に示す注入口部上部固定部2025と注入口部下部固定部2026の間に挿入することができ、ガスケット前後固定部2030により、ガスケット1の注入口部(薄肉部が設けられている場合には薄肉部)を固定することができる。このように、注入口部の上下を位置決め固定し、その間を注入孔封止部によって挟持することにより、封止動作中に注入口部が変形して封止に支障を生じることを回避することができる。
ローラー案内2034は、注入装置に配備された押し出しローラー2035を受ける部位である。図22(c)に示すように、ローラー案内2034を押し出しローラー2035で押し出すことにより、位置決め穴2032の状態に位置した注入孔封止プレート2021を、位置決め穴2033の状態に移動させることができ、自動的に注入孔の封止を行うことができる。
なお、図22に示す態様では、位置決め穴2031の状態から位置決め穴2032の状態へは手動により行っているが、上記同様駆動手段により駆動させてもよい。
また、注入口部保持プレート2023および注入孔封止プレート2021は、上記の機能を有するものであれば、全体形状および制御方法が違っても構わない。このように、注入孔封止部の駆動手段を保持具外に設け、外部から力を加えることにより注入孔封止部を移動させる構成とすることにより、保持具の構造を簡易にできるという利点がある。
図19(b)に示す成形型肉厚保持部205は、第1モールドと第2モールドとを所定の間隔で対向させるときに必要な力をモールドの両外側から加えるための機構を有した部位であり、第1モールド側から固定を補助するための第1モールド側肉厚保持部2051と、第2モールド側から固定を補助する第2モールド側肉厚保持部2052からなる。
以下に、第1モールドが、プラスチックレンズの後面(凹面)を形成すべく凸面側に成形面を有する凸面型(以下、下型とも記す)であり、第2モールドが、プラスチックレンズの前面(凸面)を形成すべく凹面側に成形面を有する凹面型(以下、上型とも記す)である場合を例に取り、保持具が有する肉厚保持機構による成形型の肉厚保持について説明する。但し、本発明はこの態様に限定されるものではない。
以下に、図23に基づいて、第2モールド側(上型側)肉厚保持部2051について説明する。
第2モールド側肉厚保持部2051は、2つのモールドを所定の間隔で対向して配置して得られる成形体の肉厚制御のために、例えばバネ機構を持たせて、図2に示す成形型3に組み込まれた第2モールド2Bを、その外側から内側へ押圧することを目的に設けられた部位である。図23(a)に示すように、第2モールド側肉厚保持部2051は、第2モールド保持パッド支持シャフト2059と、この第2モールド保持パッド支持シャフト2059に設けられた保持具案内キー2060と、前記第2モールド保持パッド支持シャフト2059および前記保持具案内キーに沿って可動するパッド支持具2061と、これに内蔵された保持具リターンスプリング2058と、モールドの外面と接触して押圧する部分を有する第2モールド保持パッド2053と、前記パッド支持具2061と前記第2モールド保持パッド2053とを連結する第2モールド保持パッド用プレート2054と、前記パッド支持具2061の前記第2モールド保持パッド支持シャフト2059上の位置を固定するブレーキ部2070と、前記第2モールド保持パッド支持シャフト2059の端部に設けられ前記パッド支持具2061の可動範囲を制限するストッパー2055とからなる。
第2モールド保持パッド2053はポリアセタール製であることができる。この材質は、例えばポリプロピレンのような他の樹脂であってもよい。また、例えば金属製であってもよい。柔軟性を有する樹脂を用いた場合、モールドが傷つきにくい、位置がずれにくい、均等に力が加わりやすいなどの点で有利なため好ましい。また、第2モールド保持パッド2053の形状は、第2モールドに均等な力で接するもので、且つ第2モールドを固定できるものであれば、特に限定されない。例えば、第2モールド保持パッド2053の先端側を管状に形成するなどして、中央にくぼみを形成すると、モールドが曲面形状であっても円状に接しやすく均等に力が加わりやすいため好ましい。
保持具案内キー2060は、上型モールド保持パッド支持シャフト2059にその軸方向に沿って取り付けられている。図23(b)に、図23(a)のV−V断面図を示す。図23(b)に示す態様では、円柱状の第2モールド保持パッド支持シャフト2059の根元側が軸方向に沿って切り欠かかれており、その切り欠かれた部分に直方体形状の保持具案内キー2060が埋め込まれている。この場合、第2モールド保持パッド支持シャフト2059の根元側の、軸に対して垂直方向の断面は、図23(b)に示すような非円形形状とすることができる。
パッド支持具2061は、一面が開口している箱形状に形成されており、一対の対向する面には第2モールド保持パッド支持シャフト2059が挿通可能な孔がそれぞれ設けられている。そして、この2つの孔に第2モールド保持パッド支持シャフト2059が挿入されている。第2モールド保持パッド支持シャフト2059の先端側に位置する前記孔は、第2モールド保持パッド支持シャフト2059の断面形状より若干大きい円形をしており、第2モールド保持パッド支持シャフト2059の根元側に位置する前記孔は、図23(b)に示すように、第2モールド保持パッド支持シャフト2059の前記保持具案内キー2060がある部分の断面形状より若干大きい鍵形状の孔(以下「鍵孔」と記す)を有している。このパッド支持具2061の内部には、保持具リターンスプリング2058が、第2モールド保持パッド支持シャフト2059に巻回している状態で保持されており、パッド支持具2061が押し込まれた状態では、保持具リターンスプリング2058の一端は保持具案内キー2060に接触し移動が制限され、他端はパッド支持具2061の内面に押されるため、保持具リターンスプリング2058が縮み、パッド支持具2061を押し上げる方向に力を加えることができる。
第2モールド保持パッド用プレート2054は、略長方形状をした板材からなり、一方の端部には第2モールド保持パッド2053が取り付けられており、他端は第2モールド保持パッド支持シャフト2059の断面形状より若干大きい孔を有し、そこに第2モールド保持パッド支持シャフト2059が挿入された状態で、パッド支持具2061の先端に接続されている。
ブレーキ部2070は、支持プレート2071と、ブレーキレバー2057と、ブレーキスプリング2056とからなる。支持プレート2071は、一端が第2モールド保持パッド用プレート2054に接続され、他端は第2モールド保持パッド支持シャフト2059の断面形状より若干大きい孔を有し、そこに第2モールド保持パッド支持シャフト2059が挿入されている。ブレーキレバー2057は、第2モールド保持パッド支持シャフト2059の断面形状より大きい孔を有しており、その孔に第2モールド保持パッド支持シャフト2059が挿入されており、一端が前記支持プレート2071に接触して、そこが支点となって可動するように保持されている。前記ブレーキスプリング2056は、第2モールド保持パッド支持シャフト2059に巻回された状態で前記支持プレート2071とブレーキレバー2057の間に保持されている。このように構成することにより、ブレーキレバー2057を引いた状態では、ブレーキ部2070は第2モールド保持パッド支持シャフト2059の軸方向に対して移動可能であり、ブレーキレバー2057を離した状態では、ブレーキレバー2057に設けられた孔の内面と第2モールド保持パッド支持シャフト2059とが接触し位置を固定することができる。
第2モールド保持パッド用プレート2054が押し込まれていない状態では保持具案内キー2060はパッド支持具2061に設けられた鍵孔まで達していないため、パッド支持具2061、第2モールド保持パッド用プレート2054、第2モールド保持パッド2053は、第2モールド保持パッド支持シャフト2059を回転軸にして360度回転させることができる。例えば図25(a)は90°回転させた状態である。上記のように、保持具案内キー2060がパッド支持具2061に達していない時は、回転が容易なため、図25(a)のように回転可能部位を90°回転させ、成形型3の脱着を容易にすることができる。なお、図23(b)の点線部は90°回転させた状態のパッド支持具2061を示している。
保持具案内キー2060がパッド支持具2061に存在する鍵孔に挿入されるようにパッド支持具2061の回転位置を合わせて、前記ブレーキレバーを引いた状態で上型モールド保持パッド用プレート2054を押し込むと、パッド支持具2061、ブレーキ部2070、第2モールド保持パッド用プレート2054、第2モールド保持パッド2053は回転ができなくなる。そのため、第2モールド保持パッド2053を、常に定位置である図25(b)の位置に配置された状態で所定の位置まで押しこむことができる。ここで、ブレーキ部2070を、引いていたブレーキレバー2057を離した位置で固定することができる。なお、図23の点線部分はパッド支持具2061を押し込んだときの状態を示している。
第2モールド保持パッド用プレート2054が押し込まれているとき、すなわち、保持具案内キー2060がパッド支持具2061の鍵孔に挿入されテンションがかけられている時、ブレーキレバー2057を摘むことにより保持具リターンスプリング2058のテンションが開放され、保持具案内キー2060がパッド保持具2061に存在する鍵孔から抜け、第2モールド保持パッド用プレート2054が成形型から離れる方向に向かう。このときストッパー2055が存在することにより、この開放されたテンションとハンドリングにより、パッド支持具2061、ブレーキ部2070、第2モールド保持パッド用プレート2054、第2モールド保持パッド2053が、第2モールド保持パッド支持シャフト2059から外れることを防ぐことができる。また、第2モールド保持パッド支持シャフト2059を、例えばねじによって保持具プレート203と固定することにより、第2モールド保持パッド支持シャフト2059が回転することを防ぐことができる。なお、第2モールド側肉厚保持部2051は上述のような機能を有していれば、特に上記構造に限定されない。例えば、より複雑な複数のバネを用いた構造でもよい。また、例えば、バネを用いず、空気圧などを利用した機構でもよい。
次に、図24に基づいて、第1モールド側(下型側)肉厚保持部2052について説明する。
図24に示す第1モールド側肉厚保持部2052は例えばバネ機能を持たせて、2つのモールドを所定の間隔で対向して配置して得られる成形体の肉厚制御のために、下型側から上型側へテンションをかけることを目的とした部位である。図5に示すように、第1モールド側肉厚保持部2052は、ガスケット基準プレート2062と、第1モールド保持具案内ブロック2063と、第1モールド保持用スプリング2064と、第1モールド保持パット2065とからなる。
ガスケット基準プレート2062は、平らな平面を有したプレートであり、図11に示すガスケット1の筒状体5の第2モールド2B側円周(端)が接するようになっている。この円周端から注入口部7までの距離は一定に設計されているため、ここで、注入口部7の保持具プレート203(図19(f)参照)からの距離が大まかに設定される。
第1モールド保持パット2065は、円柱形状をしており、一方の面が開口し、内部に円柱状の空洞部を有している。そして、前記開口にはフランジが形成されている。
第1モールド保持具案内ブロック2063は、円筒形状をしており、一方の開口は前記第1モールド保持パッドの外形より若干大きく、前記フランジ部分よりは小さい孔を有している。そしてこの第1モールド保持具案内ブロック2063の孔に前記第1モールド保持パッドを挿入し、内部に第1モールド保持用スプリングを入れた状態で前記下型モールド保持具案内ブロックをガスケット基準プレートに取り付ける。このように構成することにより、第1モールド保持パッドは第1モールド保持具案内ブロックに対してその軸方向に移動が可能であるとともに、内蔵された第1モールド保持用スプリング2064の力により、成形型3の上型側方向に常にテンションがかかった状態にすることができる。第1モールド保持パッド2065も、第1モールド保持パット2053と同様、ポリアセタール製であることができる。この材質は、例えばポリプロピレンのような他の樹脂であってもよい。また、例えば金属製であってもよい。柔軟性を有する樹脂を用いた場合、モールドが傷つきにくい、位置がずれにくい、均等に力が加わりやすいなどの点で有利なため好ましい。また、第1モールド保持パッド2053の形状は、下型側から上型側へテンションをかけ、かつ、第1モールドを固定できるものであれば、特に限定されない。
なお、この態様では、第1モールドを固定するため、第1モールド保持パッドの先端は平面に形成しているが、第2モールドを固定する場合には、前記第2モールド保持パッドのように、先端側を管状に形成するなどして、中央にくぼみを形成しても良い。
保持具201(図19参照)に成形型3が装着されると、第1モールド保持パット2065は第2モールド側肉厚保持部2051の押し込みテンションにより保持プレート3側に押され、第1モールド保持用スプリング2064はよりいっそう縮まり、さらにテンションがかかっている状態となる。但し、第1側肉厚保持部2052は、上述の機能を有していれば、これに特に限定されるものではない。例えば、空気圧を用いた構造でもよい。
上記態様では、第2モールド側保持部2051と第1モールド側保持部2052とに分けて、各機構を説明したが、例えば、機構自体が逆になってもよい。また、上記態様では、第2モールド側保持部2051にテンション保持機構、第1モールド側保持部2052にテンション付与機構を持たせたが、例えば両方にテンション付与機構を備えても良い。また、テンションの付与機構もバネに限定されるものではない。
また、上記態様では、第2モールド側肉厚保持部2051側に下型、第1モールド側肉厚保持部2052側に上型を設置したが、例えば第2モールド側肉厚保持部2051に上型、第1モールド側肉厚保持部2052に下型を設置しても構わない。
このように、保持具の肉厚保持機構により、第1モールドと第2モールドの両外側から挟んで成形型を保持することにより、モールドの間隔を一定に保ち、得られるプラスチックレンズの肉厚を正確に制御することができる。また、上記肉厚保持機構は、成形型の保持の機能をかねることもできる。
なお、ガスケットだけでモールドを十分に保持できるような場合には、この肉厚保持機構は省略しても良い。また、成形型保持具から肉厚保持機構を省略するかわりに別途従来からあるようなバネ部材で挟んでも良い。肉厚保持機構を省略する場合は、別途成形型を保持する機構を成形型保持具に設けても良い。
本発明では、前記保持具を搬送用パレットに装着した状態で、プラスチックレンズの製造工程を行うことができる。
保持具201は、図19(e)に示す搬送用パレット接続部204を、図27に示すパレット60'の保持具接続部62に接続させて、図3に示すように搬送用パレット60に取り付けることができる。また、接続時には、例えば搬送用パレット接続部204(図19参照)によって、保持具の搬送用パレットに対する前後、左右、上下の位置を調整できるように構成しても良い。パレット60'は、保持具201を一つまたは複数固定する部分を有し、また、後述する自動注入システムの搬送手段に接続する部分(搬送手段接続部61)も有する。そして、搬送用パレット60は、図4に示すように成形型を保持具に装着した後に(搬送用パレット70)、前記自動注入システムの搬送手段により、各製造工程を行う装置に搬送される。図5の成形型取り付け待機エリア80では、上型側肉厚保持部2051が図25(a)、注入孔封止プレート2021が図22(a)のような状態で待機している。
搬送パレット60が成形型取り付け部81まで運ばれ、搬送用パレット60に成形型3が取り付けられ、図4に示す搬送用パレット70の状態となる。成形型3の装着は、例えば以下のように行うことができる。
まず、第2モールド側肉厚保持部2051を、−90°回転させ図25(a)の状態とした後、成形型3の注入口部7の左右位置決め部27と上下位置決め部26を、保持具201の注入口部保持プレート2023のガスケット固定部開口2027から挿入し、図20(b)の状態になるように固定する。続いて、第2モールド側肉厚保持部2051を、−90°回転させ図25(b)の状態とした後、第2モールド側肉厚保持部2051の第1モールド保持パッド2053を押し込み、成形型3に配置された下型と上型それぞれにテンションがかかった状態にする。
次に、前後の位置決めを行うため、注入孔封止プレート2021を、プレート用直動案内2022を用いて動かし、位置決め穴2032の位置に固定する。すなわち図22(a)の状態から図22(b)の状態にする。以上の操作により、保持具201に成形型3を装着することができる。
次に、搬送用パレット70を充填部82に移動させ、充填部82にて、注入装置に配備されている、図26(1)に示す注入孔固定用サポート治具921と保持具固定用ストッパー922により、図1に示す注入口部7の位置を完全に決定する。
以下に、図26(1)に基づき、注入孔固定用サポート治具921および保持具固定用ストッパー922の構造について説明する。
図26(1)(a)は、注入孔固定用サポート治具921の平面図であり、図26(1)(b)は、注入孔固定用サポート治具921の先端部を示す図であり、図26(1)(c)は、保持具固定用ストッパー922を装着した注入孔固定用サポート治具921の平面図であり、図26(1)(d)は、注入孔固定用サポート治具921によって固定された成形型の部分拡大図である。なお、図26(1)(d)において、注入孔固定用サポート治具921(斜線部)は、図26(1)(c)のVI−VI線断面図として示してある。
注入孔固定用サポート治具921は、その先端が、ガスケット注入口部と嵌まり合う略半円状の溝を有するとともに、注入口先端面部21(図2参照)を背面から支えることができるように下向きの斜面が形成されている。また、図26(1)(b)に示す保持具固定用サポート治具921の先端部上端は、図20(a)に示す注入口部下部固定部2026の溝部2042と当接することにより、注入口部保持プレート2023を位置決め固定することができる。
また、保持具固定用ストッパー922は、注入口部保持プレート2023の保持具固定用ブリッヂ部2028(図20(a)参照)を左右から挟んで保持、位置決めするための一対の部材からなり、それぞれの先端には保持具固定用ブリッヂ部2028と係りあう溝を有している。
保持具固定用ストッパー922は、エアチャック923に接続され、左右の間隔を変えることができる。このエアチャック923はエアシリンダー924に接続され、前後方向に移動可能である。注入孔固定用サポート治具921は、前記エアチャック923に接続されている。
以上のように構成することにより、保持具固定用ストッパー922と注入孔固定用サポート治具921が前後方向に移動するとともに保持具固定用ストッパー922は左右の間隔を換えることができる。
次に、注入孔固定用サポート治具921と保持具固定用ストッパー922の動作を、図26(2)を参照しながら説明する。
まず、搬送用パレット70(図4参照)によって成形型が充填部82に運ばれてくると、注入孔固定用サポート治具921と保持具固定用ストッパー922は、前記エアシリンダー924により注入孔固定用サポート治具921の先端が、注入口先端面部21の背面を支持するための所定位置に来るまで前方に移動する。このとき、保持具固定用ストッパー922は、注入口部保持プレート2023に接触しないように、前記エアチャック923により左右の間隔を拡げた状態になっている(図26(2)(a)、(b))。その後、保持具固定用ストッパー922はエアチャック923により、左右の間隔を狭めて保持具固定用ブリッヂ部2028(図20(a)参照)を、前記溝部2041、2042で左右から挟んで保持する。図20(a)に示すように、これら溝部にはテーパーが形成されているため、保持具固定用ストッパー922の間隔を狭めるにしたがって、保持具固定用ブリッヂ部2028を所定の位置に移動させるため、注入口部保持プレート2023は所定の位置に位置決め固定される(図26(2)(c))。この状態では、注入孔固定用サポート治具921の前記下向き斜面は注入口先端面部21の背面に接触した状態になる。このように注入口部保持プレート2023が固定された状態で、後述するように注入ノズルを注入口に近づけ注入を行うことができる。
このように、注入孔固定用サポート治具921が、例えば弾性樹脂からなる注入口先端面部21を背面から支えることにより、注入時の注入治具の接触圧により注入口先端面部21が変形することを防止することができる。
また、保持具固定用ストッパー922で、注入口部保持プレート2023を挟持することにより、注入口部を位置決めして保持することができる。また、図21に示す注入孔封止プレート2021により注入孔を封止する際に、注入口部にかかる力により注入口部の位置がずれることを防止することができる。
成形型3の注入口部7が完全に位置決めされると、注入治具の先端部が注入口開口22(図2参照)に接触し、注入が開始される。所定量の原料液が注入されたことは、排出口部上方に設けた液面感知センサーによって感知することができる。このセンサーの信号を検知すると、注入装置に配置されているローラーが突き出し、ローラー案内2034を介して、注入孔封止プレート2021を位置決め穴2033に移動させる。これにより、成形型3の注入孔20が注入孔封止部2029によって封止され、注入治具が注入口開口22から離れても液漏れすることがない。前記液面感知センサーについては、前述の通りである。
注入終了後は、成形型3は、保持具に装着された状態で、ユータン搬送エリア83〜85、排出待機エリア86、ユータン排出エリア87を経た後に、例えばユータン排出エリア88において、保持具から取り外される。成形型3の取り外しは、以下のように行うことができる。
注入孔封止プレート2021の位置を、図22(c)の状態から図22(a)の状態に戻して、成形型3の注入口部7を開放する。続いて、上型側肉厚保持部2051のブレーキレバー2057を押し上げ、テンションを開放し、図25(b)から図25(a)の状態にして、成形型3を保持具201から取り外す。成形型の取り外しは、手動で行うこともでき、自動で行うこともできる。
その後、搬送用パレットは、ユータン排出エリア89を経て、成形型取り付け部81へ搬送され、新たな成形型が取り付けられ、混合液の注入が行われる。この一連の流れを繰り返すことにより、プラスチックレンズを連続的に製造することができる。なお、以上説明した工程では、混合液を充填した成形型は、混合液の流動を防ぐために静かに搬送することが好ましい。
次に、第三の態様の製造方法において使用されるプラスチックレンズ原料液について説明する。
第三の態様のプラスチックレンズの製造方法は、原料液注入時の泡の発生を抑えて光学欠損を低減することができるため、特に、注入時に生じた気泡を除去しにくい高粘度で初期重合速度の速いプラスチックレンズ原料液からプラスチックレンズを製造するために好適である。そのようなプラスチックレンズ原料液としては、複数の重合性成分を含み、該複数の重合性成分が、混合後直ちに重合を開始し10分以内に硬化するものを挙げることができる。
具体的には、第三の態様の製造方法において使用される、高粘度で初期重合速度の速いプラスチックレンズ原料液としては、前述の成分(A)と成分(B)を含むもの、好ましくは、前述の成分(A)と成分(B)とからなるものを挙げることができる。
第三の態様の製造方法は、前述の第一の製造方法および/または第二の製造方法を含むこともできる。また、第三の態様の製造方法において使用され得る成形型、ガスケット、注入治具、製造工程等は、先に第一、第二の製造方法について説明したものを用いることができる。
以上説明した本発明の製造方法により得られるプラスチックレンズは、例えば、眼鏡レンズや光学レンズ等のレンズに用いることができる。特に好ましくは、本発明の製造方法で得られるプラスチックレンズは、眼鏡レンズに用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例および比較例で得られたプラスチックレンズの評価は、下記の評価方法に従って行った。

[評価方法]
(1)成形型の温度
混合液を成形型に注入する直前のモールド中心部の温度を指す。
(2)混合時、充填完了時の液温
混合液の混合中の液温は、混合直前の成分(B)の温度が成分(A)に比べ低いため、混合すると一瞬温度が下がるが混合液の重合反応熱により温度が上昇する。本実施例の場合、室温(25℃)の成分Bと加温した成分AをRIM機で混合した直後吐出口から出てきた時の混合液の温度を測定したところ、混合直前の成分(A)の温度が約50℃の場合で約55℃であった。
吐出口から出て成形型に注入され充填される間の液温も、反応熱により上昇を続ける。吐出口を出てからの液温の推移を測定したところ、20秒後に約20℃上昇し、約2後に最大ピーク(約100℃)に達し、その後、徐々に温度は低下し、5分後に約70〜80℃であった。
(3)泡の発生状況
作製したプラスチックレンズの外観製品検査を行い、泡不良の発生数を確認する。良品が95%以上得られる状態をA、良品が90%以上得られる状態をB、良品が80%以上得られる場合をC、それ以下をDとする。ここで、良品とは、作製したプラスチックレンズに全く泡が見られない状態、または泡が見られるが目視レベルでは判断できない状態をいう。
(4)光学的欠損
作製したプラスチックレンズをジルコン投影にて面ダレ、脈理の有無を確認する。ジルコン投影製品検査により良品が98%以上得られる場合をA、良品が95%以上得られる場合をB、それ以下をCとする。ここで良品とは、レンズの幾何中心から半径30mm以内の面ダレ、脈理が発生していないものをいう。
(5)面ダレ
面ダレとは成形型に前記成分(A)および前記成分(B)の混合液を注入したときの流れ痕のような模様がレンズ表面に発生した状態を指す。
(6)脈理
脈理とは成形型に成分(A)および成分(B)の混合液を注入したときに温度ムラ、重合ムラ等から生じる痕のことを差す。脈理に関しては一般に注入時のみならず、重合時の熱履歴によっても起こることが知られている。
[評価サンプル作製条件]
RIM機吐出量:200〜400g/Min
成分(A)平均分子量:約600〜700
成分(A)と(B)の混合比:4:1
各成分の混合前の液温:成分(A) 約50℃、成分(B) 室温約25℃
キャビティを満たすまでの所要時間:約20秒
作製レンズ:中心肉厚=7mm程度、直径=76mm、作製レンズ質量=約40g
チューブ交換サイクル:8分
注入方法:自動注入機による注入
参考例1
平均分子量400のポリテトラメチレングリコールと4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)からなるイソシアネート基含有率が13%であるイソシアネート末端プレポリマー100質量部に、あらかじめモノブトキシエチルアシッドホスフェート0.024質量部およびジ(ブトキシエチル)アシッドホスフェート0.036質量部を添加し、均一に溶解させ、脱泡した[成分(A)]。3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミンと3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミンの混合物25.5質量部を成分(B)として用いた。
成分(A)と成分(B)の混合直後の液温を55℃、成形型の注入直前の温度を52℃、成形型の傾斜は垂直として、注入直前に約5秒、10L/min.の吐出量にて二酸化炭素を成形型に注入した。次に注入工程に移り、RIM機吐出口に治具付きチューブを接続し、成分(A)および成分(B)の混合液を、治具を介して自動注入機により注入した。注入終了後、排出口付近の泡の除去のため、成形型を約30度に排出口を頂上に約20秒傾斜させた。その後、成形型を、約5分、自動注入機のコンベアー上を搬送して排出エリアにて搬送用パレットから外した。次に、ガスケットの注入口部および排出口部ごと折り曲げ、キャビティ内の重合部分と注入孔内および排出孔内の重合部分を分断した。この分断作業を行った成形型を、注入終了後15分以内にあらかじめ120℃まで昇温してある電気炉に入れ15時間加熱重合させた。その後成形型を電気炉から取り出しガスケットを除去し、第1および第2のモールドを除去しプラスチックレンズ成形体を得た。次に、得られたプラスチックレンズの洗浄を行い、その後、泡の発生状況、光学欠損を上記評価方法により確認した。その結果を表1に示す。
参考例2
参考例1と同様の成分(A)と成分(B)を用い、成形型の注入直前の温度が65℃になるように加温した以外は参考例1と同様の操作を行った。これにより得られたプラスチックレンズの泡の発生状況、光学的欠損についての評価結果を表1に示す。
参考例3
参考例1と同様の成分(A)と成分(B)を用い、二酸化炭素の吐出量を15L/min.した以外は参考例1と同様の操作を行った。これにより得られたプラスチックレンズの泡の発生状況、光学的欠損についての評価結果を表1に示す。
参考例4
参考例1と同様の成分(A)と成分(B)を用い、二酸化炭素の吐出時間を10秒にした以外は参考例1と同様の操作を行った。これにより得られたプラスチックレンズの泡の発生状況、光学的欠損についての評価結果を表1に示す。
参考比較例1
参考例1と同様の成分(A)および成分(B)を用い、注入直前に二酸化炭素を注入しない以外は参考例1と同様の操作を行った。これにより得られたプラスチックレンズの泡の発生状況、光学的欠損の評価結果について表1に示す。
Figure 0004590311
表1に示すように、第一の態様にかかる製造方法によって製造されたプラスチックレンズは、泡の発生が少なく、光学的欠損も少なかった。それに対して、注入前に成形型に二酸化炭素を充填せずに製造された参考比較例1のプラスチックレンズは、気泡の発生が顕著であった。
実施例5
平均分子量400のポリテトラメチレングリコールと4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)からなるイソシアネート基含有率が13%であるイソシアネート末端プレポリマー100質量部に、あらかじめモノブトキシエチルアシッドホスフェート0.024質量部およびジ(ブトキシエチル)アシッドホスフェート0.036質量部を添加し、均一に溶解させ、脱泡した[成分(A)]。3,5-ジエチル-2,4-トルエンジアミンと3,5-ジエチル-2,6-トルエンジアミンの混合物25.5質量部を成分(B)として用いた。
成分(A)と成分(B)の混合直後の液温を55℃、成形型の注入直前の温度を52℃、成形型の傾斜は垂直として、注入直前に約10秒、20L/min.の吐出量にて二酸化炭素を成形型に注入した。次に注入工程に移り、RIM機吐出口に治具付きチューブを接続し、成分(A)及び成分(B)の混合液を治具を介して自動注入機により注入した。このとき、注入ノズルは、ノズル孔が内径5.0mm、外径6.0mmの円形のものを使用し、その先端部が45度に傾斜した形状のものを使用した。成形型としては、図2に示す成形型を用いた。成形型の注入口先端面部の外形は一辺15mmの正方形で、注入孔が内径4.0mmの円形であり、注入口先端面部は45度に傾斜した形状であった。また、ノズル先端面部の注入口先端面部への接地は、図18に示す方法(ノズル先端面部と注入口先端面部を平行にしながら徐々に隙間を狭める方法)により行った。ノズル先端面部と注入口先端面部は、初期動作でノズル先端面部と注入口先端面部との距離が4mmのところに位置した状態から、5秒を要して徐々に距離を縮め当接させた。注入終了後、排出口付近の泡の除去のため、成形型を約30度に排出口を頂上に約20秒傾斜させた。その後、成形型を、約5分、自動注入機のコンベアー上を搬送して排出エリアにて搬送用パレットから外した。次に、ガスケットの注入口部および排出口部ごと折り曲げ、キャビティ内の重合部分と注入孔内および排出孔内の重合部分を分断した。この分断作業を行った成形型を、注入終了後15分以内にあらかじめ120℃まで昇温してある電気炉に入れ15時間加熱重合させた。その後成形型を電気炉から取り出しガスケットを除去し、第1および第2のモールドを除去しプラスチックレンズ成形体を得た。次に、得られたプラスチックレンズの洗浄を行い、その後、泡の発生状況、光学欠損を上記評価方法により確認した。その結果、泡の発生状況、光学欠損とも評価結果はAであった。
本発明によれば、泡不良や光学的欠損が低減されたプラスチックレンズを製造することができる。本発明の製造方法は、特に眼鏡レンズの製造方法として好適である。
プラスチックレンズ成形用ガスケットを示す平面図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は側面図である。 図1に示すガスケットにレンズ母型を装着したときの状態を示す断面図である。 保持具を装着した搬送用パレットを示す図である。 図3に示す搬送用パレットに成形型を装着した状態を示す。 自動注入機の全体図である。 図5に示す自動注入機の充填部の詳細を示す図である。 成形型への混合液の注入時におけるノズルの動作状態を示す図である。 RIM成形機の構造を示す説明図である。 レンズ原料注入工程の流れの一例である。 レンズ製造工程の全体の流れ図である。 保持部を有するプラスチックレンズ成形用ガスケットの一例である。 保持部を有するプラスチックレンズ成形用ガスケットの一例である。 保持部を有するプラスチックレンズ成形用ガスケットの一例である。 注入孔とキャビティとの連結部がテーパー状に開口した、プラスチックレンズ成形用ガスケットの断面図である。 図1に示すガスケットのI−I線断面図(注入孔側)である。 本発明で使用されるノズルの一例であり、図16(a)はノズルの側面図、図16(b)はノズルの正面図、図16(c)はノズルを上部から見た平面図、図16(d)は、そのII−II線断面図である。 注入孔の軸方向と注入治具の軸方向とが略垂直に交わるように形成されたノズル先端面部の説明図である。 レンズ原料注入工程の流れの一例である。 保持具201の正面図である。 保持具201の平面図である。 保持具201の下面図である。 保持具201の右側面図である。 保持具201の左側面図である。 保持具201の背面図である。 図20(a)は、図19(e)に示した注入口部固定部にある注入口部保持プレートの拡大図、図20(b)は図20(a)に成形型を装着した図である。 図19(e)に示した注入口部固定部にある注入孔封止プレートの拡大図である。 注入孔封止プレートの動きを示す図である。 図23(a)は図19(b)に示した第2モールド側肉厚保持部の詳細図、図23(b)はそのV-V線断面図である。 図19(b)に示した第1モールド側肉厚保持部の詳細図である。 成形型の脱着方法を示す図である。 注入孔固定用サポート治具921と保持具固定用ストッパー922の構造を示す。 注入孔固定用サポート治具921と保持具固定用ストッパー922の動作を示す。 保持具接続前のパレットを示す。

Claims (5)

  1. 注入治具開口から流出するプラスチックレンズ原料液を成形型に注入して、前記原料液を硬化させて成形体を得る、プラスチックレンズの製造方法であって、
    前記成形型は、内部にキャビティを有し、前記原料液を前記キャビティ内に注入するための注入孔と、前記キャビティ内の気体または前記混合液を成形型外部に排出するための排出孔とを、直径方向に対向する位置に有しており、
    前記注入孔は、前記混合液を注入するための開口(以下、「注入口開口」という)を有し、
    前記原料液は、前記成形型を水平面に対して傾斜または垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにして、前記注入孔を通して前記成形型へ注入され、
    前記注入口開口と前記注入治具開口との連通開始から該連通が完了するまでの間に、前記注入治具開口から流出する原料液の一部が前記注入孔へ流入し、残りの一部が前記注入孔へ流入せずに流下する期間を含み、
    前記期間中、前記注入治具開口と前記注入口開口との間に隙間が生じており、該隙間から、前記注入治具開口から流出する原料液の一部が流下していることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  2. 少なくとも前記原料液のキャビティ内への流入が開始するまでの間は、前記隙間が生じていることを特徴とする、請求項に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  3. 前記隙間を徐々に狭めながら前記原料液の注入を行うことを特徴とする、請求項またはに記載のプラスチックレンズの製造方法。
  4. プラスチックレンズ原料液を保持具に保持された成形型に注入して、前記原料液を硬化させて成形体を得ることを含む、プラスチックレンズの製造方法であって、
    前記成形型は、内部にキャビティを有し、前記原料液を前記キャビティ内に注入するための注入孔を含む注入口部と、前記キャビティ内の気体または前記混合液を成形型外部に排出するための排出孔を含む排出口部とを、直径方向に対向する位置に有しており、
    前記保持具は、前記注入口部を保持するための注入口部保持部と、前記注入口部を挟持することにより、前記注入孔を封止するための注入孔封止部とを有し、
    前記保持具による成形型の保持は、前記注入口部保持部によって前記注入口部を保持しつつ、前記成形型を水平面に対してほぼ垂直にした状態で、かつ前記排出孔が頂上になるようにした状態で行われ、かつ、
    前記原料液の注入は、前記原料液を前記注入孔から注入することによって行われ、かつ、前記注入孔封止部によって前記注入孔を封止することによって終了することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  5. 前記原料液は、下記成分(A)と成分(B)とを含むことを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載のプラスチックレンズの製造方法。
    成分(A):分子中に環状構造を有する脂肪族ジイソシアネートと300〜2500の平均分子量を有するジオールとの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマー
    成分(B):一般式(I)で表される1種または2種以上の芳香族ジアミン(一般式(I)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、チオメチル基の何れかである)
    Figure 0004590311
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