JP4590055B2 - 特定車両優先制御方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路交通において、公共性の高い例えば路線バス等の特定車両を、交通量の変化(状況)を加味しながら、他の車両に優先して走行させることができるようにするための特定車両優先制御方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、道路交通において、公共性の高い路線バス等の特定車両(以下、単に「路線バス」という)を他の車両に優先して走行させようとする方法があり、各種の方法が試みられている。例えば、特定の時間帯にバス優先レーンを設け、その時間帯には一般車両を排除し、路線バスだけが優先レーン内を走行できるようにして路線バスのスムースな走行を実現しようとするものである。また、他の方法としては、路線バスに車両ID情報を持たせておき、路線バスが車両感知器の近くを通過すると、それを感知して信号制御器に信号を送り、その信号制御器が路線バス進行方向の信号交差点への到着予測タイミングに合わせて信号機の青の現示時間が長くなるように制御し、路線バスのスムースな走行を実現するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の制御方法では、そのときの道路状況と信号の制御機能とが完全に分離した構造を取っている。その制御方法は、過去のデータを参考にして各交差点で測定した交通量から信号パラメータを決定している。このため、例えば展示会等のイベントによる交通量の一時的な増加のように交通量が増加して来ると、全体の交通の流れが適切でなくなり、交通渋滞の発生が避けられない問題があった。
【0004】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は交通渋滞の発生を予防し、かつ公共性の高い路線バス等の特定車両を他の車両に優先して走行させることができる特定車両優先制御方法及びその装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の特定車両優先制御方法は、特定の車両が車両感知器の近くを通過すると、前記車両感知器から得られる信号をもとに前記特定車両が進行して行く側の信号機の青または赤を現示している時間を制御し、前記特定車両の進行を優先して走行させる特定車両優先制御装置に、前記特定車両の走行を制御する信号パラメータとして、道路が空いているときの状況に適合した信号パラメータ、混雑した道路を通行する特定車両の間隔が一定以上開いているときの状況に適合した制御を行う信号パラメータ、混雑した道路を通行する特定車両の通行間隔が一定以下となって頻度が大きくなったときの状況に適合した制御を行う信号パラメータを複数用意しておくとともに、前記信号機を制御する時間帯を設定し、前記時間帯になると所定の時間間隔で前記車両感知器からの情報を解析して全体の道路の交通状況を把握し、解析された前記交通状況及び前記特定車両の到達時間間隔に基づいて、前記信号パラメータを切り換えるようにしたものである。前記信号パラメータを複数用意することとして、道路が空いているときの状況に適合した制御を行なう信号パラメータ、混雑した道路を通行する特定車両の間隔が一定以上開いているときの状況に適合した制御を行なう信号パラメータ、或いは混雑した道路を通行する特定車両の通行間隔が一定以下となって頻度が大きくなったときの状況に適合した制御を行なう信号パラメータなど、様々な状況に適合した信号パラメータを複数用意することを行う。この方法によれば、基本動作としては決められた時間帯になると信号のパラメータが切り換わり、特定車両の走行を優先した交通信号の制御が行われ、特定車両の走行をスムースに行わせることができる。しかも、決められた時間帯になると単に信号パラメータが切り換わるというだけではなく、信号パラメータが複数用意されていて、道路の通行状況が或る状態になると、前記信号パラメータが道路状況に合わせて切り換えられるようになっているので、より実効性のある制御を行うことができることとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態における特定車両優先制御システムについて図面を参照しながら説明する。図1は本実施の形態における特定車両優先制御システムの概略構成図である。なお、本実施の形態でいう「特定車両」とは、公共性の高い車両のことで、ここでは路線バスを一例としている。図1において、この特定車両優先制御システムでは、道路上の交差点に隣接して設置される信号機1と信号制御部2及び信号制御下位部3と、交差点の手前(上流)側に設置される光学式車両感知器(ビーコン)4及び情報提供下位装置5と、ホストコンピュータを持つ信号制御系中央装置(メインCPU)6及び交通情報系中央装置7と、特定車両に搭載される車載器8等で構成されている。なお、信号制御系中央装置6及び交通情報系中央装置7は交通監視センター等に設置され、他は路線上に配置されている。また、車載器8には路線バスID情報が組み込まれており、この車載器8を搭載した路線バス9(図2、参照)が光学式車両感知器4(以下、単に「車両感知器4」という)の近くを通過すると、この車載器8からの路線バスID情報を車両感知器4が無線で受けることができる構造になっている。
【0013】
さらに詳述すると、信号機1は、横または縦一列に並べて設置されている青(B)・黄(Y)・赤(R)の3つの信号灯器1a,1b,1cを有している。この各信号灯器1a〜1cの点灯切り換えは、信号制御部2を介して信号制御下位装置3の制御により行われる。車両感知器4は、信号機1の手前(上流)側に設置され、信号機1と信号機1との間に少なくとも1つ以上が配置される。なお、図4では2つの信号機1を設置している。
【0014】
図2は、上記信号機1が設置される交差点に近づいた路線バス(特定車両)を検出して制御する地点感応制御システムの概念図である。この地点感応制御システムでは、信号機1が設置された交差点に車載器8(図2中には図示していない。図1参照)を搭載した路線バス9が近づくと、車載器8の路線バスID情報が車両感知器4により無線で読み取られ、この時の路線バスID情報が路線バスID情報を持たない一般車両(特定車両以外の車両)の情報と共に情報提供下位装置5及び信号制御下位装置3にアップリング情報として送られるとともに、信号制御部2に検知信号として送られ、信号制御部2により信号機1の信号灯1a〜1cの点灯を切り換える制御が行われるようになっている。なお、情報提供下位装置5では、車両感知器4からID情報(アップリング情報)を受けると、その路線バスID情報と一般車両の情報とを区別して信号制御下位装置3にアップリング情報として送り、この各情報を受けた信号制御下位装置3では、この各情報をもとに、信号制御部2に対して信号制御パラメータを指示し、後述する車両優先制御を行う。
【0015】
図3は図1に示す本実施の形態における特定車両優先制御システムおけるに制御処理手順の概要を示す流れ図である。図3の流れ図に従って特定車両優先制御システムの動作を次に説明する。まず、この特定車両優先制御システムでは、一日を1時間程度の幅で区切り、その時間帯になると特定車両優先制御態様に切り換えられて、以下のステップS101〜S106に従って処理する。
【0016】
ステップS101では、本システムを実施する時間帯幅、例えば何時から何時までという時間帯幅Tを決め、その時間帯になると本システムのステップS102〜S106の処理を開始する。また、車両感知器4では常に路線バスID情報を含めた車両通過情報を収集していて、その車両感知器4で収集される車両の情報はアップリンク信号として情報提供装置5及び信号制御下位装置3に入力されているとともに、検知信号として信号制御部2に入力されている。
【0017】
そして、特定車両を優先する時間帯になると、特定車両優先制御が行われる。この特定車両優先制御では、バス路線の起点での過去走行履歴をもとに、単に路線バス9を優先とした制御を実施するミクロ制御の方式と、本発明で最も特徴とするバス優先政策制御を実施するマクロ制御の方式の何れか一方の方式で制御される。そのどちらの制御方式を取るかはステップS102において過去の走行履歴をもとに選択され、また実行される。
【0018】
まず、ステップS102で、一般的なミクロ制御が選択された場合の動作について説明する。このミクロ制御の方式では、車両感知器4からの路線バスID情報が情報提供下位装置5及び信号制御下位装置3と信号制御部2にそれぞれ入力されると、路線バス9の通過を認識する。すると、情報提供下位装置5及び信号制御下位装置3では、路線バス9が進行して行く方向である、下流の各信号交差点への路線バス到着予測夕イミングに合わせて、中央処理形の路線バス感応制御を各端末信号制御機1に対して行う。なお、ここでの制御は、例えば図4に示すように、路線バス9を単位(1−1,1−2,1−3)毎に分け、かつ前後(上流と下流)の車両感知器4の間に配置されている路線バス9を1系統制御グループとして制御する。
【0019】
そして、信号制御下位装置3にて求められる上記路線バス到着予測タイミングは、車両感知器4と信号交差点間の距離、及び路線バス走行基準速度(定数)から求められ、信号制御下位装置3ではその求めた路線バス到着予測夕イミングを信号制御部2へ情報伝送する。信号制御部2は、この情報を路線バス感知信号及び路線バス走行所要時間として入力し、単に路線バス9の走行だけを優先としたミクロ制御方式での路線バス感応動作を実行する。ここで信号制御部2の設定が、路線バス到着予測夕イミングをできるだけ長くなるように設定されている「延長現示中」の態様になっているならば、最大延長限度時間の範囲内で路線バス9が車両感知器4から交差点を通過するのに必要な時間だけ青時間を延長して、路線バス9が交差点で停止するのを抑止する。これに対して、路線バス到着予測タイミングができるだけ短くなるように「短縮現示中」の態様になっているならば、路線バス9の接近を検知すると、路線バス9に通行権を与える青現示に早く移行させる目的で赤の表示時間を短縮し、路線バス9の停止時間を極力低減する制御を行う。なお、「延長現示」を取るか「短縮現示」を取るか等の制御方式は、過去の走行履歴をもとに予め設定されるもので、これらは予め信号制御系中央装置6及び交通情報系中央装置7により設定される。また、この制御では、時間帯幅Tが経過するまでの間、時間tの周期でステップS102に戻され、繰り返し行われる。
【0020】
次に、ステップS102で、マクロ制御が選択された場合の動作を説明する。路線バス優先制御方式を取っていると、例えば展示会のイベントによる交通量の一時的な増加が起きると、全体の交通の流れが適切でなくなり、一般車両を含めた交通渋滞が発生する。このように一時的な交通渋滞の影響が予想されるような場合に、この影響を抑止することができるのが、ここでの路線バス優先政策制御である。すなわち、路線バス優先政策制御では、過去の各時間帯における対象バス路線に対する路線バス9の走行頻度が高くなり、感応制御が有効に働かないと判断される場合、予め設定しておいた路線バス9の進行方向を大幅に優先させるサイクル、スプリット及びオフセットを発動し、路線バス優先政策制御を実施する(ステップS104)。ただし、バス路線の全体的な交通状況において、交通量の値が高い場合は、路線バス優先政策制御を停止して、一般交通を重視した通常の制御を行う(ステップS105)。
【0021】
上記路線バス優先政策制御を発動するか否かの判定では、以下のパラメータ(制御)を用いて決定される。曜日、時間帯別(ある一定時間間隔t)に収集した路線バスID情報履歴や平均サイクル長から、該当時間帯の路線バス運転間隔を求めて、路線バス優先政策制御が有効と判断された場合に路線バス優先政策制御が発動される。このとき、系統感応は実施しない。以下に判定基準の一例を図5を用いて説明する。なお、図5中において、符号Bで示す領域は信号機1が青を現示している領域を示し、符号Yで示す領域は黄を現示している領域、符号Rで示す領域は赤を現示している領域をそれぞれ示している。
【0022】
その図5において、路線バス優先政策制御方式が有効であるか否かを解析して判定する基準としては、例えば対象バス路線の最上流の車両感知器4から収集される路線バスID情報履歴の前週分から、以下の基準に基づき感応制御を実施可能な回数を数え、その路線バス優先制御時に通過できる路線バス9の割合をM%とする(STEP1)。また、該当時間帯幅(判定期間)Tの平均サイクル長をC、直前の路線バスID情報履歴との時間間隔をDとし、次の(1)に該当している場合には感応制御実施可能と判断し、それ以外の場合は感応制御実施不可と判断する。
【0023】
D>αC (1.5≦α≦2.0) … (1)
【0024】
一方、この時間帯に対して以下のような政策制御実施時のスプリット分布を重ね合わせて路線バス進行方向スプリットに入る路線バス9の台数を数え、前の路線バス9とαC以上(1.5≦α≦2.0)間隔が空いている台数の割合をN%とする(STEP2)。そして、(M>N)ならば、路線バス優先政策制御発動をし、それ以外ならば感応制御(上記既存のバス優先制御)を行う(STEP3)。
【0025】
次に、路線バス優先政策制御発動中に、該当バス路及びこれと交差している道路上で一般交通に重大な影響が発生しているかどうかを確認する。一般交通における混雑状況を回避する方が優先すべきであると判断された場合は、該当時間帯は通常の制御に戻り、それ以後の該当時間帯内では路線バス優先政策制御の発動は行わない。この一般交通における混雑状況を回避する方が優先すべきであるか否かの判断は、例えば次のように解析して判断される。
【0026】
この制御では、バス路線上の上りの車両感知器4のうち最大の交通情報量をPIa、バス路線上の下りの車両感知器4のうち最大の交通情報量をPIbとするとともに、A,Bをそれぞれ交通情報量の判定値とすると、PIa>AまたはPIb>Bの場合は路線バス優先政策制御を中止し、それ以外は継続する。図6は、この一般交通状況確認手順を示している。
【0027】
そして、これらの判定は一定時間毎に行われる。すなわち、政策制御実施時間幅Tの範囲内で一定時間t毎に行われ、その都度、道路状況に応じて制御方式の見直しが行われることとなる。
【0028】
以上のように、本発明の実施の形態における特定車両優先制御システムによれば、次のような効果が期待できる。
・決められた時間帯になると信号のパラメータ(制御方式)が切り換わり、路線バス(特定車両)9の走行を優先した交通信号の制御が行われて、路線バス9の走行をスムースに行わせることができる。しかも、決められた時間帯になると単に信号パラメータが切り換わるのではなく、信号パラメータが複数用意されていて、その場の状況、例えば特定の車両が単位時間内に通過する台数等、道路状況に合わせて切り換えることができるので、より実効性のある制御を行うことができる。
・過去の走行履歴の実績を参考にして、信号パラメータの切り換えが行われるのこととなるので、より実効性のある制御を行うことができる。
・信号のパラメータの切り換えは、路線バス以外における一般車両の通行に、予想されている影響以上の悪い影響が出ていないか否かを一定の時間間隔tで確認し、悪い影響が出ている場合には所定の信号パラメータに切り換えるようにしているので、路線バス以外の車両の走行に対する悪影響を最小限に抑えることができる。
・信号機1が青色から黄色または赤色の点灯に切り換えられるとき、車両感知器4が感知した路線バス9の全てが信号機1の設置されている交差点を通過できるように青色点灯時間を最大限の範囲で延長するようにしているので、交差点を通過できる路線バス9の台数を増やすことができ、路線バス9の流れをよりスムースにすることができる。
・路線バス9が信号機1の直ぐ近くで停車したと想定される場合には、路線バス9が停止している信号機1における赤色点灯時間を最小限の範囲で短縮するようにしているので、交差点で停止する路線バス9の時間を減らし、路線バス9の流れをよりスムースにすることができる。
【0029】
なお、上記実施の形態では、公共性の高い特定車両として、路線バス9を一例として説明したが、路線バスに限ることなく他の車両を特定車両とした場合には、その特定車両についても同様の制御を行うことができるものである。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、上記実施の形態より明らかなように、決められた時間帯になると信号のパラメータ(制御方式)が切り換わり、特定車両の走行を優先した交通信号の制御が行われて、特定車両の走行をスムースに行わせることができる。しかも、決められた時間帯になると単に信号パラメータが切り換わるのではなく、信号パラメータが複数用意されていて、その場の状況、例えば特定の車両が単位時間内に通過する台数等、道路状況にあわせて切り換えることができるので、より実効性のある制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における特定車両優先制御システムの概略構成図
【図2】本実施の形態における地点感応制御システムの概念図
【図3】本実施の形態における制御処理手順における一例を示す流れ図
【図4】本実施の形態における系統感応概要図
【図5】本実施の形態における制御方式判定基準説明図
【図6】本実施の形態における制御方式判定基準説明図
【符号の説明】
1 信号機
1a〜1c 信号灯器
2 信号制御部
3 信号制御下位装置
4 光学式車両感知器
5 情報提供下位装置
6 信号制御系中央装置
7 交通情報系中央装置
8 車載器
9 路線バス
T 時間幅
t 制御見直し間隔

Claims (1)

  1. 特定の車両が車両感知器の近くを通過すると、前記車両感知器から得られる信号をもとに前記特定車両が進行して行く側の信号機の青または赤を現示している時間を制御し、前記特定車両の進行を優先して走行させる特定車両優先制御装置に、
    前記特定車両の走行を制御する信号パラメータとして、道路が空いているときの状況に適合した信号パラメータ、混雑した道路を通行する特定車両の間隔が一定以上開いているときの状況に適合した制御を行う信号パラメータ、混雑した道路を通行する特定車両の通行間隔が一定以下となって頻度が大きくなったときの状況に適合した制御を行う信号パラメータを複数用意しておくと共に、前記信号機を制御する時間帯を設定し、
    前記時間帯になると所定の時間間隔で前記車両感知器からの情報を解析して全体の道路の交通状況を把握し、解析された前記交通状況及び前記特定車両の到達時間間隔に基づいて、前記信号パラメータを切り換えるようにしたことを特徴とする特定車両優先制御方法。
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