JP4589527B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、超音波により物体を非破壊検査する装置あるいは医療診断に用いる超音波診断装置等において、被検者および撮像部位によらずに高画質の断層像を得るための信号処理のディジタル化に適用して有効な技術に関するものである。
背景技術
配列する超音波振動子からの受波信号を用いて超音波断層像を形成する信号処理法の一つに周波数移動整相法と呼ばれるものが知られている。この方法は、各超音波振動子からの信号に参照信号を混合し、各混合信号の低周波成分を抽出し、つまり低周波数側に移動させてから、それぞれを遅延回路で遅延することにより整相し加算して、所望の位置にフォーカスされた超音波応答信号を得るものである。関連する文献としては米国特許4140022号、特開昭52−20857号、米国特許4983970号がある。
特開平6−313764号公報には上記周波数移動整相法を基本とし、その信号処理の大部分をディジタル化した技術が示される。特に、高速サンプリングしてディジタル化した各超音波信号に参照波を混合した後にそれぞれ累加処理を行うというオーバーサンプリングの技法を取り入れることにより、アナログディジタル変換の実効精度を高めている。
一方、特開平9−206298にはディジタル直交検波を採用した超音波装置が示される。この公知例においては、ディジタル化した各超音波振動子からの信号はまず遅延回路によりそれぞれ遅延され、次に遅延されたそれぞれの信号が直交検波回路に入力されてその同相成分と直交成分とが生成される。その直交検波回路では、参照波の周波数を変更したのと等価な補間演算がなされ、これにより超音波エコーの中心周波数がエコー時間とともに低域へシフトするスペクトラムシフトに対処している。
発明の開示
補間演算により実効的な参照波の周波数変更を行う方式では参照波の大幅な周波数変更が困難である。また上記公知例のディジタル直交検波方式では、周波数の低域への移動の前に、各素子からの超音波信号をディジタル化した高周波信号を遅延手段により遅延して整相しているため、各信号チャネルの遅延時間の制御に高い精度が要求される。
本発明はオーバーサンプリングの効果を生かした周波数移動整相法を前提とする。すなわち各素子から超音波信号は、その信号帯域の上限のナイキスト周波数よりも高い周波数でサンプリングされ、後段にて累加処理される。また、サンプリングされたディジタル信号は参照信号と混合され、上記累加処理がなされた後に遅延回路により整相されて加算される。
このような周波数移動整相法に従うディジタル化された超音波診断装置において、さらに参照信号の周波数を自在に変化させ、種々の高画質もしくは高速な撮像を可能にするのが本発明の一つの目的である。
本発明のより具体的な目的の一つはディジタル回路を主体とする超音波診断装置において、高調波イメージングを行うことが可能な技術を提供することにある。
本発明のその他の目的は、ディジタル回路を主体とする超音波診断装置において、周波数の異なる複数ビーム同時形成を行うことが可能な技術を提供することにある。
本発明のその他の目的は、ディジタル回路を主体とする超音波診断装置において横方向分解能を高めて超音波画像の画質を向上することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかになるであろう。
本発明に従う超音波診断装置の代表的なものの構成は、配列する超音波振動子群を繰り返し駆動して超音波を発生させる送波手段と、前記超音波振動子で得る受信信号をその信号帯域の上限のナイキスト周波数より高いサンプリング周波数でサンプリングしてそれぞれディジタル信号に変換するディジタル変換手段と、それぞれの上記ディジタル信号に参照信号を乗算するミキシング手段と、乗算されたそれぞれのディジタル信号を複数サンプル分だけ累加する累加手段と、累加された各ディジタル信号に各超音波振動子毎の位相差を揃える遅延を与えて加算する受波フォーカシング手段とを有し、さらに上記参照信号を順次上記ミキシング手段に供給するミキシングデータ発生手段を有する。より詳しくは、ミキシングデータ発生手段は、受信信号のサンプル点数に対応する参照信号列を予め計算するデータ演算手段と、その計算された参照信号列を格納し、受信信号のサンプル番号に対応した読み出しアドレス制御により格納された参照信号を順次出力する記憶手段とを含む。
一般的な超音波断層像の撮像を行う場合では、ミキシングデータ発生手段は、周波数が送波の中心周波数付近からの時間経過にとともに逓減する信号を離散化したデータを順次参照信号列としてミキシング手段に供給する。これによって、エコー深度が深くなるに従い受波超音波の周波数帯域が低域側にシフトするスペクトラムシフトに対応したミキシング処理を行うことができ、超音波画像の画質が向上する。
また、送波超音波の中心周波数の整数倍の周波数の信号を離散化したデータを参照信号列として準備し、順次ミキシングに用いることにより容易に高調波イメージングを行うことができる。この場合も、周波数逓減の手法を適用することにより画質を向上することができる。
さらに各超音波振動子からの信号がオーバーサンプリングされていることを利用した特有の構成も可能である。すなわち、上記構成に対し送波手段を2重に設け、互いに異なる中心周波数ω1とω2をそれぞれ持ち、しかも焦点方位の異なる二つのビームを合成して同時に送波する構成とする。一方、ミキシングデータ発生手段では周波数がω1近傍の信号から得る参照信号と、周波数がω2近傍の信号から得る参照信号を交互に発生し、ミキシング手段はその交互に変化する参照信号を用いて乗算を行う。さらに累加手段と受波フォーカシング手段も2重に設け、ミキシング手段の出力をマルチプレクサにより振り分けて供給する。その2重の受波フォーカシング手段の一方はω1のビームの方位に、また他方はω2のビームの方位に位相合わせを行う。この構成では、送波では複数の超音波ビームが合成されて同時に送波されるのに対し、受信信号処理では、参照信号の交互切り替えによってそれぞれのビームに適切な整相処理を施すためのビームの選択が実質的に行われる。これにより、高速の撮像が可能となる。
上記した、複数の超音波ビームを合成して送波する送波手段を活用して、別の構成も可能である。すなわち、送波手段はω1を中心周波数とし、近距離の第1の焦点を持つ超音波ビームと、ω1より低いω2を中心周波数とし上記第1の焦点と同一方向で遠距離の第2の焦点を持つ超音波ビームを合成して送波する。受信信号処理の部分は上記した一般的な撮像の場合と全く同様で、周波数の逓減する信号から得る参照信号列によりミキシングを行う。これによると送波多段フォーカスが同時送波により行われるため、広い深度域で横方向解像度を向上させたさた撮像が高速に行われる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明について、発明の実施の形態(実施例)とともに図面を参照して詳細に説明する。全図において、同一機能を有するものは同一符号を付している。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の超音波診断装置の,概略構成を説明するための図である。超音波探触子101は1次元配列するN個の超音波振動子を持つ。各超音波振動子は駆動源85で発する駆動信号に送波フォーカス回路で遅延分布をかけた送波信号により繰り返し駆動される。ディジタル変換手段102はN個のA/D変換器で構成される。各振動子の超音波エコーの受信信号は全チャネル共通の周期Tのサンプリングクロックでサンプリングされ、ディジタル化される。サンプリング周期Tは受波信号の帯域上限のナイキスト周期より短く設定される。ここでチャネルとはN個の受信信号が並列に同様な処理を受けていく過程での一信号分のことをいう。ディジタル化された受信信号はそれぞれミキシング手段103でディジタル化された参照信号と乗算される。乗算される参照信号については後に詳述するが、受信信号の中心周波数ωSとほぼ等しい周波数ωmの信号の複素成分R、Iの離散値であるので、乗算結果はそれぞ複素信号になり、かつその周波数帯域は元の受信信号の帯域とωSとの差周波数帯域(ベースバンド)と、和周波数(ωS+ωm)を中心とする帯域とにシフトする。その各乗算結果は累加手段104で時間経過方向に複数サンプル分累加される。その結果は累加によるローパスフィルタ効果により上記のベースバンドの部分のみとなる。なお、累加手段104は単なる累加でなく、重み係数をかけた累加、つまり積和演算を行って所望のローパスフィルタ特性を実現するものでも良い。
ディジタル遅延手段105は各振動子へのエコー到達時間の差を相殺する遅延をそれぞれの累加信号にかける。このNチャネル分の遅延結果を加算手段106で加算することにより、目的焦点位置からの反射エコーのみ強調するよく知られた電子フォーカシングが達成される。加算手段106の出力は、複素信号の実数部(同相成分)と虚数部(直交成分)のそれぞれについて得られるので、包絡線変換回路92にて絶対値に変換し、その結果をデジタルスキャンコンバータ94に書き込む。
以上の動作は、よく知られた電子セクタスキャン法にしたがって繰り返し実行される。送波フォーカス回路86で実現する送波超音波の焦点の方位は送波の繰り返し毎に変更され、ディジタル遅延手段105で実現する受波ビームの焦点の方位もそれに合わせて制御される。このビームスキャンの結果は順次ディジタルスキャンコンバータ94に蓄積され、もって表示装置96で超音波断層像が表示される。
なお受波ビームの焦点は、一回の送波に続く受波期間中も受信信号のエコー深度か時間経過とともに深くなるのに合わせて深度方向に移動される。この技術も、受波ダイナミックフォーカシングとしてよく知られている。第1図で制御回路90からディジタル遅延手段105に与える制御信号dはこの焦点移動に伴う遅延分布の変更を制御する信号を示す。一方、送波フォーカス回路86に与える制御信号bは、上記の送波超音波の焦点の方位変更を制御する信号を示す。
以上の超音波診断装置において、周波数帯域移動のためにミキシング手段103で乗算されるディジタル化された参照信号は、一定周波数の信号を離散化、ディジタル化したものでない。すなわち受信信号の高周波数成分は、送波からの時間経過にしたがい、つまり反射音源の深度が深くなるにしたがって激しく減衰し、受信信号の中心周波数ωSは低周波方向にシフトする。よって、深くなるに従い、低周波側にシフトする受波信号の中心周波数と同一の参照信号により、ベースバンドを検出する場合には、深い深度域での超音波エコーの検出効率が低下してしまう。そこでミキシングデータ発生手段107からミキシング手段103に供給する参照信号も、このようなスペクトラムシフトに対応して周波数を変更する。
ミキシングデータ発生手段107は第2図に示すとおりミキシングデータ演算手段109とミキシングデータ記憶手段110で構成される。ミキシングデータ演算手段109は、たとえば、周知の情報処理装置上で動作するプログラムで実現する。本実施態様ではディジタル変換手段のサンプリング周期Tは40nsecであり、一回の送波後の受波期間でのサンプル数は4096である。そこでミキシングデータ演算手段109は0≦k<4096の自然数kにわたって次式で示す参照信号の複素成分を算出する。
h(kT)=exp(jωm(kT)kT) (1)
なお、正確には位相項は積分で表現すべきだが(1)式では簡略に周波数と時間の積で示している。式(1)の示す関数を図示すると第3図のようになり、その周波数ωm(kT)は送波の中心周波数付近から時間経過とともに、つまりkが大きくなるにしたがい単調に低下する。その低下の度合いは超音波の受信信号の中心周波数のシフトに概ね追従させれば良い。たとえば、送信信号の中心周波数が3.5MHzの場合には、(1)式のωm(kT)として、次式が採用できる。
この(2)式では、k=0の時、ωm(kT)は3.5MHzであり、その後、周波数が線形で減りk=4095の時、ωm(kT)は2.5MHzである。
このように周波数が変化する信号の40nsec毎の離散値の複素成分が0≦k<4096のすべてのkにわたってディジタル化参照信号列として予めミキシングデータ演算手段109で算出され、ミキシングデータ記憶手段110に格納される。ミキシングデータ記憶手段110は周知の半導体メモリにより構成される。第1図にcで示すアドレス制御信号によりミキシングデータ記憶手段110の読み出しアドレスが順次指定され、格納されたディジタル化参照信号がディジタル化受信信号のサンプル番号k対応して順次読み出されて、ミキシング手段に供給される。なおこのディジタル化参照信号は各チャネルに共通である。また、一般に受信信号周波数のスペクトラムシフトは超音波ビームの方位にさほど影響されないので、参照信号の周波数変化はビーム方向によらず同じ変化法を採用すれば良い。つまり、上記のアドレス順次指定による読み出し制御は送波の繰り返しごとに全く同様に繰り返される。
以上のように、受信信号のスペクトラムシフトに追従する周波数の参照信号をミキシングに採用すると、ミキシングにより発生するベースバンド成分の中心周波数は常にゼロ付近であるので、累加によるベースバンド抽出が高効率で行なわれ、もって超音波断層像の向上することが可能となる。
上記の例では最も浅い深度からの受信信号(k=0)に対応する参照信号の周波数を送波の中心周波数3.5MHzに等しくしたが、画像化する受波の中心周波数をより高く設定する、つまりk=0に対応する参照信号周波数をより高くすることも考えられる。たとえばωm(kT)は次式にしたがう。
この(3)式では、k=0でωm(kT)=4.5MHz、k=4095でωm(kT)=2.5MHzとなる。またωm(kT)をkの2次関数で減少させる例として次の(4)式または(5)式も可能である。
次に、本実施の形態1の超音波診断装置において、高調波イメージングに対応する場合について述べる。
送波の中心周波数ωsで、その包絡線形状がA(t)あるとき、配列のn番目の振動子の受信信号を離散化したものは、その振幅の最も大きい成分に着目すると次式で表せる。
fn(kT)=u(kT−τn)
=A(kT−τn)[exp{j(ωs(kT)kT−φn)}
+exp{−j(ωs(kT)kT−φn)}] (6)
ただし、τnはそのn番目の振動子までの音波の伝搬時間でありφn=ωs(t)・τnである。ωs(kT)は受信振幅の最大となる周波数がサンプル番号kにより上記したスペクトラムシフトで次第に変化することを示す。一方、受信信号には高調波も含まれ、特に2倍高調波に着目すると離散化した受信信号は次式で表せる。
fn(kT)=u(kT−τn)
=A(kT−τn)[exp{j(2ωs(kT)kT−2φn)}
+exp{−j(2ωs(kT)kT−2φn)}] (7)
この2倍高調波に着目した高調波イメージングを行うにはミキシング手段103に供給する参照信号として周波数がωm(kT)≒2ωs(kT)となる参照信号を供給すれば良い。つまり離散化されたディジタル参照信号hn(kT)は、次式とする。
hn(kT)=exp(j2ωs(kT)kT) (8)
すると、ミキシング手段103によるよう乗算結果は上記(7)式については、
gn(kT)=fn(kT)・hn(kT)
=A(kT−τn)[exp{j(4ωs(kT)kT−2φn)}
+exp(j2φn)] (9)
また上記(6)式については、
gn(kT)=fn(kT)・hn(kT)
=A(kT−τn)[exp{j(3ωs(kT)kT−φn)}
+exp{j(ωs(kT)kT+φn)}] (10)
と表せる。つまりωm(kT)≒2ωs(kT)の周波数の参照信号を乗算すると、受信信号の2倍高調波成分は4ωs(kT)を中心とする帯域と低周波のベースバンドに移動する。したがって、第1図の装置構成で、累加によるフィルタ効果により、このベースバンドのみ抽出して映像化することができる。このとき、受信信号の基本波成分は(10)式のとおり周波数3ωs(kT)とωs(kT)に移動するので、累加によるフィルタ効果で減衰する。つまり第1図、第2図で説明した装置構成で、ミキシングデータ記憶手段110に格納して順次読み出すディジタル化参照信号を式(8)に従うものとするだけで高調波イメージングが可能である。
この高調波イメージングの場合にも、前述した送波後の時間経過にともなう受信信号の高域減衰の影響をうけるので、参照信号の周波数を時間経過とともに低減させる制御を併用することによる画質の向上の効果が得られる。なお、累加手段104による減衰効果が不十分な場合には、ディジタル変換手段102の前にアナログフィルタを挿入し、受信信号の周波数ωs近傍の基本波成分を予め減衰させてもよい。
(実施の形態2)
上記のように、超音波受信信号に乗算するディジタル化参照の周波数を選ぶことにより、受信信号の帯域を選択し映像化できる。そこで、第4図に示す本発明の実施の形態2ではこの原理を応用し、周波数の異なる複数の超音波ビームを同時に送波し、参照信号の切り替えにともなってミキシング手段の出力を振り分けることにより周波数の異なる複数ビームの映像を並行して得る。
第4図において、駆動源81は中心周数ω1の送波信号を発生し、駆動源82は中心周波数ω2の送波信号を発生する。これらの送波信号を別々の送波フォーカス回路86および87に入力して、遅延分布が与えられたそれぞれN個の送波信号を得る。加算手段88は各チャネル毎にこれらを相互に加算し探触子101の各振動子を駆動する。ここで、送波フォーカス回路86で実現するフォーカス位置F1と送波フォーカ手段87で実現するフォーカス位置F2とは、第5図に示すように方位が異なり、これにより中心周数と方位が異なる2本の超音波ビームが同時に送波される。具体的には、ω1が3.5MHz、ω2が5.0MHzなどである。
一方、ミキシング手段103がディジタル化された各振動子の受信信号に参照信号を乗算するのは実施の態様1の装置と全く同じであるが、用いる参照信号が偶数番目サンプルと奇数番目サンプルとで交互に切り替えられている点が実施の態様1と異なる。すなわち、ミキシングデータ発生手段107の内部の記憶手段に、受信信号のサンプル番号k(0≦k<4096)に対応して次のようなディジタル化参照信号h(kT)が格納されている。
kが偶数のとき、
h(kT)=exp(jωm1(kT)kT) (11−1)
kが奇数のとき、
h(kT)=exp(jωm2(kT)kT) (11−2)
ここでωm1(kT)は駆動源81の送波中心周波数ω1にほぼ等しく、ωm2(kT)は駆動源82の送波中心周波数ω2にほぼ等しい。なおこれら参照信号周波数ωm1(kT)、ωm2(kT)はそれぞれ一定値でも良いが、前述した送波からの時間経過ともなう受信信号のスペクトラムシフトに対応してkの増加とともに逓減させても良い。このように周波数がそれぞれ逓減する信号をもとにした参照信号を採用する場合のkとωm1(kT)、ωm2(kT)の関係を図示すると第6図のようになる。
以上のような交互に切り替わるディジタル化参照信号が順次供給されて得る乗算結果は、第4図のマルチプレクサ112で奇数番目と偶数番目とに振り分けられ、2重に設けられた累加手段103−aと104−bとでそれぞれ累加される。累加結果は2重に設けられた受波フォーカス回路105−a、105−bでそれぞれ整相加算される。受波フォーカス回路は、第1図のディジタル遅延手段105と加算手段106とを纏めて示したものでる。また、受渡フォーカス回路105−aは周波数ωm1(kT)の参照信号の乗算結果が乗算された奇数番目のサンプルに対し送波焦点F1の方向に受波ビームの焦点を結ぶよう制御される。つまりF1の方位の音源から各振動子への超音波伝達時間の差を補償する遅延分布を与える。受波フォーカス回路105−bは周波数ωm2(kT)の参照信号の乗算結果が乗算された偶数番目のサンプルに対し送波焦点F2の方向に受波ビームの焦点を結ぶよう制御される。つまりF2の方位の音源から各振動子への超音波伝達時間の差を補償する遅延分布をあたえる。なお、これらの受波焦点をそれぞれF1の方位、F2の方位にそって近距離から遠距離に送波からの時間経過とともに移動する、つまりそれぞれ受波ダイナミックフォーカスを実施するのが好ましいのは実施の態様1と同様である。これらの整相加算結果はそれぞれ包絡線変換回路92で絶対値に変換され、断層像の別々のスキャンラインデータとしてスキャンコンバータ94に書き込まれる。
理解の容易のため、順次得られる受信信号サンプルが振り分けられ、多重に整相される様子を第7図に示した。なお第4図ではマルチプレクサ112と2重の累加手段104−a、104−bで装置構成を示したが、ミキシング手段103の次段はミキシングの結果を交互に振り分けてそれぞれを累加する機能をもつ処理手段であれば良い。このような振り分け・多重整相が可能なのは、そもそもディジタル変換手段102の段階で受信信号のナイキスト周波数以上のサンプリングが行われ、さらに乗算による周波数移動の結果、ミキシング手段103の出力は必要なサンプル周期よりも遙かに細かい周期で得られるからである。
以上の動作により、周波数の異なる2本の超音波ビームによる2本のスキャンラインが一回の送波で並行して得られるので高速撮像が可能となる。従来の受波ビームのみを同時に複数形成する方式に比べて、送波ビームもそれぞれ独立の焦点をもつため、横方向解像度の点で勝る。
以上の実施の態様2における2つの周波数ω1、ω2による同時送波を応用した種々の変形が可能である。その一つがスペックル除去である。スペックルとは、生体内での超音波信号同士の干渉模様であり、実際には反射体の存在しない個所に強い応答が出現し、診断上好ましくない場合がある。ここで、スペックルは干渉模様であるため、送信信号の周波数が変化すると出現個所も変化する。一方、実際の反射体からの信号は送信信号の周波数が変化しても同じ場所に出現する。よって、この性質を利用する。すなわち、周波数の異なる2つの送信信号による同一個所からの反射信号同士を加算することによって、実際の反射体からの信号は強め合い、スペックル信号は弱め合うので、画面上のスペックルを低減できることが知られている。
そこで、第4図に示す超音波診断装置において、送波フォーカス回路86で実現する焦点F1と送波フォーカス回路86で実現する焦点F2とを同一位置とする。ミキシング手段103は、上記した複数スキャンライン形成のときと全く同様に、周波数がω1近傍の信号から得る参照信号と、周波数がω2近傍の信号から得る参照信号とを交互に用いて乗算を行う。2重の受波フォーカス手段105−aと105−bとは、どちらも上記同一位置の焦点の方位からの超音波に位相がそろうような同一の整相をおこなう。これら二つの整相結果は互いに加算された後に包絡線変換回路92にて絶対値に変換され、画像データとする。これにより、1つの受信信号列から同時に形成される周波数ω1と周波数ω2との2つの超音波ビームが加算され、リアルタイムでスペックルを低減できる。なお、相互加算されるのは厳密には同時刻のデータ同士でなく、1サンプル周期Tだけずれたデータ同士となるが、スペックル除去に関し全く問題はない。
次に実施の態様2を送波同時多段フォーカスに応用する例を説明する。この場合、第4図の2つの送波フォーカス回路86、87で実現する焦点F1と焦点F2とは、第8図に示す通り方位が同じで、焦点F1が近距離に、焦点F2が遠距離にある。合成送波される2本の送波ビームの中心周波数は、例えばω1が3.5MHzであれば、ω2は遠距離エコーのスペクトルシフトに対応して、例えば2.7MHz程度に設定する。ミキシング手段以降の構成および動作、並びに用いられるディジタル化参照信号は、第1図から第3図で説明した実施の態様1と全く同一である。ディジタル化参照信号の周波数は、反射エコーのスペクトラムシフトに対処するため、送波からの時間経過とともに逓減させる。上記の送波周波数の場合、参照信号の周波数は例えば3.5MHzから2.5MHzに向かう。
この様な送波および受信信号処理によれば、浅い深度からの受信信号の処理では、用いる参照信号の周波数がω1に近いため、近距離に収束するω1の送波ビームを強く反映した反射応答が得られると。逆に深い深度からの受信信号の処理では、用いる参照信号がω2に近いため、遠距離に収束するω2の送波ビームを強く反映した反射応答となる。つまり得られる超音波断層像は、広い深度域に渡り横方向解像度か高いものとなる。しかも、異なる収束距離の超音波ビームを合成して同時送波するため、スキャンタイムは増加せず、高速な撮像が可能となる。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
産業上の利用可能性
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)周波数移動整相法にしたがうディジタル化した超音波診断装置に
おいて、参照信号の周波数を自在に制御することができ、それにより種々の高画質もしくは高速の撮像が可能となる。
(2)高調波イメージングを行うことができる。
(3)周波数の異なる複数ビーム同時形成により高速に撮像を行うことができる。
(4)横方向分解能を広い深度範囲で高め、超音波画像の画質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施の形態1の超音波診断装置の概略構成を示すブロック図説明である。
第2図は上記実施の形態1の詳細構成を示すブロック図である。
第3図は上記実施の形態1におけるミキシングデータの基となる時間経過とともに周波数が低下する信号を波形図である。
第4図は本発明の実施の形態2の超音波診断装置の概略構成を示すブロック図説明である。
第5図は上記実施の形態2における2方向の同時送波を示す概念図である。
第6図は上記実施の形態2におけるディジタル化参照信号の列を示す概念図である。
第7図は上記実施の形態2におけるサンプル列の処理と振り分けの動作を示す概念図である。
第8図は上記実施の形態2における焦点距離のことなる複数ビームの同時送波を示す概念図である。
Claims (2)
- 配列する超音波振動子群を繰り返し駆動して超音波を発生させる送波手段と、
前記超音振動子群で反射エコーを検出することにより得る受信信号をその信号帯域の上限のナイキスト周波数より高いサンプリング周波数でサンプリングしてそれぞれディジタル信号に変換するディジタル変換手段と、
それぞれの上記ディジタル信号に、前記ディジタル信号と乗算することにより前記ディジタル信号を低周波成分と和周波成分にシフトする参照信号を乗算するミキシング手段と、
乗算されたそれぞれのディジタル信号を複数サンプル分累加して、ベースバンドディジタル信号を生成する累加手段と、
前記ベースバンドディジタル信号に各超音波振動子毎の位相差を揃える遅延を与えて加算する受波フォーカシング手段とを備えた超音波診断装置において、
周波数が送波からの時間経過にともない低周波数方向に変化する信号を、離散化したデータとして予め設定し、一つの画像データを作成するために、前記離散化したデータを、前記参照信号として、前記送波の繰り返し毎に、繰り返し前記参照信号を、前記ミキシング手段に順次供給するミキシングデータ発生手段を有し、
前記ミキシングデータ発生手段は、画像データに使う受信信号の中心周波数に対応する参照信号算出式を予め複数設定し、前記複数の参照信号算出式から、一つの参照信号算出式を採用して、採用された前記参照信号算出式に基づいて、前記離散化したデータを算出するデータ演算手段と、算出された前記離散化したデータを格納し、読み出しアドレスの制御により格納された前記離散化したデータを前記参照信号として順次出力する記憶手段とを含む
ことを特徴とする超音波診断装置。 - 前記複数の参照信号計算式として、ωm(kT)=2π×深度ゼロの周波数×(1−k/深さ方向のサンプリング点数×(1−「視野内の最も深い場所での周波数」/「深度0での周波数」))を少なくとも含むことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
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