JP4588777B2 - 押釦スイッチ用カバー部材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、携帯電話、小型携帯端末機、パソコンなどの入力装置として好適に用いられる押釦スイッチ用カバー部材の製造方法に関するものである。
従来より、キートップを照光するためのEL素子を有する押釦スイッチ用カバー部材としては、キートップに対応する固定接点が配設された板状のEL素子上に、この固定接点と対応する可動接点を有するゴム製のパッドを、スペーサを介して設けたものがあった(特許文献1参照)。
このような従来の押釦スイッチ用カバー部材においては、構造が単純であることから薄く成形でき、パッドがゴム製であるため押圧感触がよいといった利点があった。
特開平10−106754号公報
しかしながら、この従来の押釦スイッチ用カバー部材にあっては、EL素子の表面が硬質な材質で覆われているため、柔軟性に乏しく、使用を続けるうちに水分が浸入して、電極の腐食、イオン化が進行し部分的な不点灯、黒点が発生することがあった。
また、EL素子は硬質であるうえ、高電圧を印加して発光させるため、微細な振動が発生し振動音が耳障りであるという問題もあった。
また、EL素子とキートップの間には固定接点と可動接点が介在していたため、発光層とキートップとの距離が遠く、照光効率が悪いという問題もあった。
そこで、この発明では、防水性と振動吸収性に優れ、押圧感触が良好で、薄く形成でき、照光効率の良い押釦スイッチ用カバー部材の製造方法を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のキートップを取付け可能な上部弾性シートと、前記キートップと対応する押圧凸部を形成可能な下部弾性シートと、前記上部弾性シートと前記下部弾性シートの間に挟まれた板状のEL素子とからなる押釦スイッチ用カバー部材の製造方法であって、板状のEL素子の一方の面に前記上部弾性シート又は前記下部弾性シートのいずれか一方のシリコーンゴムを一体化させた中間体を形成する中間体形成工程と、次に、該中間体の前記キートップの平面視の形状に対応した箇所の一部を、次工程における前記EL素子の変形防止のためのEL素子変形防止部とし、該EL素子変形防止部と前記EL素子の対向電極層、透明電極層及びそれらの接続線を除いた部位を切り込んだ第1切り欠きを設ける第1切り欠き形成工程と、次に、該第1切り欠きが充填されるよう、前記EL素子の他方の面に、前記下部弾性シート又は前記上部弾性シートを一体化させた一体物を形成する一体物形成工程と、次に、該一体物の前記EL素子変形防止部を切り込んで第2切り欠きを設ける第2切り欠き形成工程とを含むことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記中間体形成工程において、前記EL素子の一方の面に前記シリコーンゴムを一体化させるときに、前記シリコーンゴムが前記EL素子の端子に接触しないように予めマスキング処理をすることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、EL素子の一方の面に上部弾性シート又は下部弾性シートのいずれか一方のシリコーンゴムを一体成形した後、EL素子に変形防止を考慮し第1切り欠きを設け、次にEL素子の他方の面に下部弾性シート又は上部弾性シートとしてのシリコーンゴムを設けることで第1切り欠きがシリコーンゴムで充填されるようにして、上部弾性シートとEL素子と下部弾性シートの一体物を形成し、この一体物に第2切り欠きを設けるようにしている。そのため、第1切り欠きを施した際に残っているシリコーンゴムにより対向電極、透明電極及びそれらの接続線との位置関係が保たれ、EL素子の他方の面に下部弾性シート又は上部弾性シートを形成する加熱加圧処理時の圧迫によって第1切り欠きが押し広げられて変形する虞がなく、耐水性、振動吸収性、押圧感触の優れた押釦スイッチ用カバー部材を製造できる。
請求項2に記載の発明によれば、シリコーンゴムがEL素子の端子に接触しないようにマスキング処理した状態で、EL素子にシリコーンゴムが一体化することから、端子のシリコーンゴムとの接触を防げるとともに、導通性を確保できる。
以下に、この発明の押釦スイッチ用カバー部材について図面を用いて具体的に説明する。
[実施の形態1]
図1又は図2は、この発明の実施の形態1を示す。
図1はこの実施の形態1の押釦スイッチ用カバー部材が組込まれた押釦スイッチの断面図である。
この実施の形態1の押釦スイッチ用カバー部材1は、可動接点20aを押圧するための押圧凸部2aを有するシリコーンゴムからなる下部弾性シート2と、押圧凸部2aと対応するキートップ20bを取り付け可能なキートップ用凸部3aを有するシリコーンゴムからなる上部弾性シート3と、下部弾性シート2と上部弾性シート3との間に挟まれた板状のEL素子4とからなる。下部弾性シート2と上部弾性シート3はEL素子4の端縁4xで一体となっている。
キートップ用凸部3a上にはキートップ20bが取り付けられ、下部弾性シート3の下側には、押圧凸部20aと対応する固定接点20dと可動接点20aが設けられた基板20eが配設されて押釦スイッチが形成される。
図2は実施の形態1に係るEL素子の要部断面図である。
EL素子4は、下から上方に向かって対向電極層4b、誘電層4c、発光層4d、透明電極層4e、ベースフィルム4fの順に構成されている。対向電極層4bと透明電極層4eの端部には、それぞれ端子が接続しており、それらの端子は下部弾性シート2から露出して外部から給電できるようになっている。
透明電極層4eとしては、ITO、導電性ポリマー、金属薄膜等が用いられる。
なお、上記EL素子4は一例であって、必要に応じて加飾層を設けたり、また、発光層4dや対向電極層4bをキートップ20bの平面視の形状に形成するなどしてもよい。また、必要に応じて透明電極層4eの給電性を確保するための補助電極層を設けてもよい。
上部弾性シート3と下部弾性シート2を構成するシリコーンゴム組成物としては、加熱硬化型オルガノポリシロキサン100質量部に対し、補強性シリカ微粉末1〜100質量部と、エポキシ当量が100〜5000g/1molで、分子中に芳香環族を少なくとも1個有する有機化合物又は有機珪素化合物0.1〜50質量部とを含有したものが好ましい。
また、上記シリコーンゴム組成物にエポキシ系シランカップリング剤を添加することにより、EL素子のベースフィルム4fとして一般的なポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、エポキシ系樹脂への接着性を向上することができるため、さらに材料の選択幅が広がることとなる。
上記のシリコーンゴム組成物は、例えば、シリコーンゴムコンパウンド100質量部に対し、エポキシ当量450g/molのX−93−3046(信越化学工業(株)製)を0.1〜50質量部を加えることによって得られる。さらに、上記の配合にエポキシ系シランカップリング剤を0.1〜20質量部添加することにより、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルファイド樹脂、エポキシ樹脂等との接着性を向上することできる。つまり、EL素子の表面の材料に応じて、エポキシ系シランカップリング剤の添加を検討すればよい。
なお、エポキシ系シランカップリング剤の好適な例としては、KBM−403(信越化学工業(株)製)があげられる。
実施の形態1の押釦スイッチ用カバー部材1は、下部弾性シート2に押圧凸部2a、上部弾性シート3にキートップ用凸部3aを設けてあるが、必ずしもこの形状に限定されるものではなく、EL素子4の端子4h以外が上部弾性シート3及び下部弾性シート4で覆われていればよいため、例えば、上部弾性シート3にキートップ20bを一体的に形成するなど、用途に応じて形成すればよい。
このような実施の形態1の押釦スイッチ用カバー部材1によれば、端子を除いてEL素子4の全面が、シリコーンゴム製の上部弾性シート3と下部弾性シート2に覆われているため、防水性と振動吸収性に優れる。
また、EL素子4とキートップ20bとの距離が近いため、照光効率がよい。
また、端子が下部弾性シート2から露出した構造とすることで、容易に電源に接続でき、実用性の高い押釦スイッチ用カバー部材1とすることができる。
また、上部弾性シート3及び下部弾性シート2を構成するシリコーンゴム組成物は、EL素子4のベースフィルム4fに用いられる樹脂との接着性がよいため、EL素子4表面へのプライマー処理や接着剤の塗布工程を省略することができる。
[実施の形態2]
図3乃至図11は、この発明の実施の形態2を示す。
図3は実施の形態2に係る押釦スイッチ用カバー部材の背面図である。図4は、図3のA−A拡大断面図である。図5は図3のB−B拡大断面図である。
実施の形態2の押釦スイッチ用カバー部材15において、上部弾性シート3と下部弾性シート2に挟まれたEL素子4は、ベースフィルム4f上に透明電極層4eとしてのITOが全面的に施され、さらに発光層4と誘電層4cと対向電極層4bがキートップ20bの平面視の形状と対応するように形成され、隣り合う対向電極層4b同士は接続線4jによって電気的に接続されている。また、透明電極層4eも必要に応じ接続線4l(補助電極)によって接続されている。
EL素子4の板厚方向にはキートップ20bの平面視の形状に対応させたキートップ対応部4kと接続線4jを除いて切り欠き9bが設けられている。
次に、この実施の形態2の押釦スイッチ用カバー部材15の製造方法を説明する。
図6は実施の形態2に係るEL素子の背面図である。図7は、実施の形態2に係るEL素子の要部断面図である。
ここで用いる板状のEL素子4は、発光層4dと対向電極層4bと誘電層4cがキートップ20bの平面視の形状と対応するように形成され、対向電極層4b同士は接続線4jによって電気的に接続されている。
図8は実施の形態2に係る中間体の製造工程を示す金型断面図である。図9は実施の形態2に係る中間体の背面図である。図10は図9のA‐A断面図である。図11は実施の形態2に係る端子の一例を示す要部断面図である。
押圧凸部2aを形成するための凹部7aを有する金型7に、EL素子4を配置し、実施の形態1で記載した未硬化のシリコーンゴム組成物を射出成形もしくは圧縮成形で一体化し、押圧凸部2aを有する下部弾性シート2とEL素子4とが一体となった中間体10を形成する。
なお、金型7にEL素子4を配置するときには、シリコーンゴムが端子4hに接触しないように予めマスキング処理をしておく。
具体的には、金型7のキャビティ底面7cのうち端子4hと対向する部分に、予めフッ素系ゴム、テフロン(登録商標)フィルムなどのクッション部材を配設しておき、型締めと同時に端子4hを覆うようにしておくとよい。また、金型7にEL素子4を配置し、端子4hに圧接コネクタ、異方導電膜等をセットし成形一体化させて端子4mとしてもよい。この場合、図11に示すように、端子4hは圧接コネクタもしくは異方導電膜等に埋没して一体化して端子4mとなることから、端子4hのシリコーンゴムとの接触を防げるとともに、導通性を確保できる。
こうすることで、下部弾性シート2から端子4hを露出させてEL素子4と下部弾性シート2とを一体化させることができる。
図12は実施の形態2に係る、中間体に第1切り欠きを設けた状態を示す背面図である。図13は図12の正面図である。図14は図12のA−A拡大断面図である。図15は図12のB−B拡大断面図である。
次に、この中間体10をキートップ対応部4kと接続線4jとその対応部を除いて切り込んで、第1切り欠き9aを設ける。ここで、第1切り欠き9aは、キートップ対応部4kと接続線4jとその対応部を除いた全ての部位を切り込むのではなく、一部をEL素子変形防止部8として切り込まずに残しておく。全てに切り込み9を設けないのは、次の上部弾性シート3を形成する工程で、EL素子4が変形するのを防止するためである。
図16は実施の形態2に係る、中間体に上部弾性シートを一体化する製造工程を示す金型の断面図である。図17は実施の形態2の製造工程で得られる一体物の断面図である。図18は実施の形態2に係る、一体物に第2切り欠きを設けた状態を示す背面図である。図19は図18のA−A拡大断面図である。
次に、この中間体10を下部弾性シート2側を、キートップ用凸部3aを形成するための複数の凹部11aを有し、キャビティ底面11cが下部弾性シート2の凸部2aに合致する凹部11dを形成された金型11のキャビティ11b内に配置し、EL素子4のベースフィルム4f側に、実施の形態1に記載した未硬化のシリコーンゴム組成物を充填して、射出成形もしくは圧縮成形により一体化して上部弾性シート3を形成する。
この時、溶融したシリコーンゴム組成物は第1切り欠き9aに充填されるとともに、EL素子4と一体となる。
こうして得られた下部弾性シート2とEL素子4と上部弾性シート3との一体物を、EL素子変形防止部8の部分で切り込んで第2切り欠き9bを設ける。
ここで、第2切り欠き9bを設けたことで第1切り欠き9aと合せて、EL素子4にはキートップ対応部4kと接続線4jを除くほとんどの部位に切り欠き9が設けられたことになる。
次に、不要な外周部を切り取って一体物の平面視の外形を整えれば、図3乃至図5に示す押釦スイッチ用カバー部材15を得られる。
なお、EL素子変形防止部8を設ける際は、製造工程でのEL素子4の変形を確実に防止し、かつ第2切り欠き9bを設けることで生じる第2切り欠き9bの端縁の露出を最小限に抑えるよう配慮する。
また、ここではEL素子4として、予め発光層4dと対向電極層4bと誘電層4cをキートップ20bの平面視の形状と対応する形状に形成したものを用いたが、意匠性と省電力性を考慮したものであって、必ずしもこの形状に限定するものではない。
さらに、ここではシリコーンゴム組成物として実施の形態1に記載のシリコーンゴム組成物を用いた場合の製造方法を説明したが、それ以外のシリコーンゴム組成物を用いる場合は、EL素子4の表面にプライマー処理を施してから接着剤を介して一体化すればよい。
このようにして得られた実施の形態2の押釦スイッチ用カバー部材15は、EL素子4にはキートップ対応部4kと接続線4j、4lを除いて切り欠き9が設けられ、切り欠き9には第2切り欠き9bを除いてシリコーンゴムが充填されているため、防水性と振動吸収性と押圧感触に優れる。
また、製造方法において、EL素子変形防止部8を残して中間体10に第1切り欠き9aを設け、第1切り欠き9aを設けた中間体10と上部弾性シート3を一体化した後にEL素子変形防止部8を切り込んで第2切り欠き9bとするため、EL素子4の変形を招くことなく、EL素子4の露出面を最小限に抑えかつ必要十分な切り欠き9を設けることが可能となる。
その他の構成及び製造方法は、実施の形態1と同様であり、同じ構成には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
この発明の実施の形態1に係る押釦スイッチ用カバー部材が組込まれた押釦スイッチの断面図である。 同実施の形態1に係るEL素子の要部断面図である。 同実施の形態2に係る押釦スイッチ用カバー部材の背面図である。 図3のA−A拡大断面図である。 図3のB−B拡大断面図である。 同実施の形態2に係るEL素子の背面図である。 同実施の形態2に係るEL素子の要部断面図である。 同実施の形態2に係る中間体の製造工程を示す金型断面図である。 同実施の形態2に係る中間体の背面図である。 図9のA−A断面図である。 同実施の形態2に係る端子の要部断面図である。 同実施の形態2に係る、中間体に第1切り欠きを設けた状態を示す背面図である。 図12の正面図である。 図12のA−A拡大断面図である。 図12のB−B拡大断面図である。 同実施の形態2に係る、中間体と上部弾性シートとの一体物の製造工程を示す金型断面図である。 同実施の形態2に係る一体物の断面図である。 同実施の形態2に係る一体物に第2切り欠きを設けた状態を示す背面図である。 図18のA−A拡大断面図である。
符号の説明
1、15……押釦スイッチ用カバー部材
2……下部弾性シート
3……上部弾性シート
4……EL素子
4b……対向電極層
4d……発光層
4h、4m……EL素子の端子
4j、4l……接続線
4k……キートップ対応部
8……EL素子変形防止部
9a……第1切り欠き
9b……第2切り欠き
9……切り欠き
10……中間体
11……一体物

Claims (2)

  1. 複数のキートップを取付け可能な上部弾性シートと、前記キートップと対応する押圧凸部を形成可能な下部弾性シートと、前記上部弾性シートと前記下部弾性シートの間に挟まれた板状のEL素子とからなる押釦スイッチ用カバー部材の製造方法であって、
    板状のEL素子の一方の面に前記上部弾性シート又は前記下部弾性シートのいずれか一方のシリコーンゴムを一体化させた中間体を形成する中間体形成工程と、
    次に、該中間体の前記キートップの平面視の形状に対応した箇所の一部を、次工程における前記EL素子の変形防止のためのEL素子変形防止部とし、該EL素子変形防止部と前記EL素子の対向電極層、透明電極層及びそれらの接続線を除いた部位を切り込んだ第1切り欠きを設ける第1切り欠き形成工程と、
    次に、該第1切り欠きが充填されるよう、前記EL素子の他方の面に、前記下部弾性シート又は前記上部弾性シートを一体化させた一体物を形成する一体物形成工程と、
    次に、該一体物の前記EL素子変形防止部を切り込んで第2切り欠きを設ける第2切り欠き形成工程と
    を含むことを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材の製造方法。
  2. 前記中間体形成工程において、
    前記EL素子の一方の面に前記シリコーンゴムを一体化させるときに、前記シリコーンゴムが前記EL素子の端子に接触しないように予めマスキング処理をすることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用カバー部材の製造方法。
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