JP4587421B2 - プローブ担体の製造用の液体吐出装置、該液体吐出装置を用いたプローブ担体製造装置及びプローブ担体の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、担体上へのプローブ担体の製造に用いる液体吐出装置及び該装置を用いたプローブ担体製造装置、更には、これらの装置を用いたプローブ担体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子DNAの塩基配列の解析、あるいは、同時に多項目に関し、高信頼性で遺伝子診断などを行う際、目的とする塩基配列を有するDNAを複数種のプローブを用いて選別することが必要となる。この選別作業に利用されるプローブ複数種を提供する手段として、DNAマイクロチップが注目を浴びている。また、薬剤等のハイスループット・スクリーニングやコンビナトリアル・ケミストリーにおいても、対象となるタンパク質や、薬物の溶液を多数(例えば、96種、384種、1536種)を並べ、秩序立ったスクリーニングを行うことが必要となる。その目的で多数種の薬剤を配列するための手法、その状態での自動化されたスクリーニング技術、専用の装置、一連のスクリーニング操作を制御し、また結果を統計的に処理するためのソフトウェア等も開発されてきている。
【0003】
これら並列的なスクリーニング作業は、基本的に、評価すべき物質に対して、選別する手段となる既知のプローブを多数並べてなる、いわゆるプローブ・アレイを利用することで、同じ条件の下、プローブに対する作用、反応などの有無を検出するものである。一般的に、どのようなプローブに対する作用、反応を利用するかは予め決定されており、従って、ひとつのプローブ・アレイに搭載されるプローブ種は、例えば、塩基配列の異なる一群のDNAプローブなど、大きく区分すると一種類の物質である。すなわち、一群のプローブに利用される物質は、例えば、DNA、タンパク質、合成された化学物質(薬剤)などである。多くの場合、一群をなすプローブ複数種からなるプローブ・アレイを用いることが多いが、スクリーニング作業性質によっては、プローブとして、同一の塩基配列を有するDNA、同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、同一の化学物質を多数点並べ、アレイ状とした形態を利用することもあり得る。これらは主として薬剤スクリーニング等に用いられる。
【0004】
一群をなすプローブ複数種からなるプローブ・アレイでは、具体的には、異なる塩基配列を有する一群のDNA、異なるアミノ酸配列を有する一群のタンパク質、あるいは異なる化学物質の一群について、その一群を構成する複数種を、所定の配列順序に従って、アレイ状に基板上などに配置する形態をとることが多い。なかでも、DNAプローブ・アレイは、遺伝子DNAの塩基配列の解析や、同時に、多項目について、信頼性の高い遺伝子診断を行う際などに用いられる。
【0005】
この一群をなすプローブ複数種からなるプローブ・アレイにおける課題のひとつは、できるだけ多種類のプローブ、例えば、多種類の塩基配列を有するDNAプローブを一つの基板上に載せることである。換言するならば、如何に高密度にプローブをアレイ状に並べることができるかである。
【0006】
基板上にプローブ複数種をアレイ状に固定する一つの方法として、米国特許(USP)5,424,186号公報に記載される、光分解性の保護基とフォトリソグラフイーを用いた担体上でのDNAの逐次伸長反応により、互いに異なる塩基配列を有するDNAプローブをアレイ状に作製する手法を挙げることができる。この手法を利用すると、例えば、1cm2当たり10000種類以上の配列が異なるDNAを搭載したDNAプローブ・アレイの製造も可能でなる。なお、この手法では、逐次伸長反応によりDNAを合成する際、4種の塩基(A,T,C,G)毎に、それぞれ専用のフォトマスクを用いてフォトリソグラフイー工程をおこない、アレイの所定箇所に何れかの塩基を選択的に伸長させることで、所望の塩基配列を有する複数種のDNAを所定の配列で基板上に合成する。従って、DNAの鎖長が長くなると、製造に要するコストは高くなり、また、長時間を要する。加えて、各伸長段階における、ヌクレオチド合成の効率は100%ではないため、設計した塩基配列に欠損を生じたDNAの比率も小さくない。さらに、合成の際、光分解性の保護基を用いる場合、通常の酸分解性の保護基を用いる場合と比べて合成効率が落ちるため、最終的に得られるアレイにおいて、設計した塩基配列通りのDNAの占める割合が小さくなるという問題もある。
【0007】
また、担体上で直接合成した生成物をそのまま使用するものであるため、設計した塩基配列通りのDNAから欠損のある塩基配列を有するDNAを精製分別により取り除くことは勿論不可能である。その他に、最終的に得られるアレイにおいて、基板上に合成されているDNAの塩基配列を確認することができないという問題を秘めている。これは仮に、工程上のミスなどにより、ある伸長段階で所定の塩基の伸長がほとんどなされてなく、全くの不良品であった場合、この不良品プローブ・アレイを用いたスクリーニングは、誤った結果を与えるが、それを未然に防止する術が全くないことを意味している。この塩基配列を確認することができないということが、この手法における最大かつ本質的な問題である。
【0008】
前記の手法とは別な方法として、プローブ用のDNAを予め合成、精製し、場合によってはその塩基長を確認した上で、各DNAをマイクロディスペンサーのようなデバイスにより基板上に供給し、プローブ・アレイを製造する手法も提案されている。PCT公開公報WO95/355O5号には、キャピラリーを用いて、DNAをメンブラン上へ供給する手法が記載されている。この手法を適用すると、原理的には、1cm2当たり1000個程度のDNAアレイの製造が可能である。基本的には、各プローブ毎に一本のキヤピラリー状ディスペンス・デバイスでプローブ溶液を基板上の所定位置へ供給し、その作業を繰り返すことで、プローブ・アレイを製造する手法である。各プローブ毎に専用のキヤピラリーを用意すれば、問題はないが、仮に、少数のキヤピラリーを用いて、同じ作業を行おうとすれば、相互汚染を防止するため、プローブ種を入れ替える際、キャピラリーを十分に洗浄する必要がある。また、供給する位置もその度毎に制御する必要がある。従って、多種類のプローブを高密度に配列するアレイの製造に適している手法とはいえない。加えて、プローブ溶液の基板への供給は、キヤピラリー先端を基板にタッピングして行うため、再現性・信頼性も完全とはいえない。
【0009】
また、特に薬剤のハイスループット・スクリーニングに利用される96ウェル、あるいは、384ウェルのマイクロプレートに対して、個々のウェル毎に、異なる薬剤溶液を供給するためマイクロ・ディスペンサー・デバイスも、例えば、Robbins Scientific 社からHYDRATMの商品名で市販されている。これは、基本的には、マイクロシリンジを2次元状に配列したものであり、最少吐出量は100nlである。仮に、これをアレイ形成に適用すると、この最少吐出量によりその密度は制限され、高密度化には限界がある。
【0010】
その他の手法として、基板上においてDNAの固相合成を行う際、各伸長段階毎に、インクジェット法により合成に必要な物質の溶液を基板上に供給する手法も提案されている。例えば、欧州特許公告公報EP 0 703 825B1号には、DNAの固相合成において利用される、ヌクレオチドモノマー、ならびに、アクティベ−ターをそれぞれ別のピエゾ・ジェット・ノズルより供給することにより、それぞれ所定の塩基配列を有するDNA複数種を固相合成する方法が記載されている。このインクジェット法による供給(付与)は、上記キャピラリーを用いた溶液の供給(付与)に比べ、供給量の再現性など信頼性も高く、また、ノズルの構造も微細化が可能なものであり、プローブ・アレイの高密度化には適した特徴を有している。しかしながら、この手法も、基本的には、基板上でのDNAの逐次伸長反応を応用するものなので、先に述べた米国特許(USP) 5,424,186号公報に記載される手法における最大の課題である、基板上に合成されているDNAの塩基配列を確認することができないなどの問題点は依然として残っている。各伸長段階毎に、専用のマスクを用いるフォトリソグラフィーの工程を行うという煩雑さは解消されるものの、プローブ・アレイに不可欠な要件である、各ポイントに所定のプローブが固定されているという点に、若干の問題を含むものである。なお、前記EP 0,703,825B1号公報には、単独に形成されたピエゾ・ジェット・ノズルを複数個使用する方法しか記載されておらず、この少数のノズルを用いる際には、前述のキャピラリーを用いる手法と同様に、高密度のプローブ・アレイ製造には必ずしも適しているとはいえない。
【0011】
また、特開平11-187900号公報には、プローブを含む液体をバブルジェットヘッドにより液滴として固相に付着させて、プローブを含むスポットを固相上に形成する方法が開示されているが、使用されているインクジェットヘッドが、一般のプリンタ用のヘッドであるため、プローブ・アレイを製造するにあたり最適な構造とは言いがたい。以下にこの点に関して詳しく説明する。
【0012】
従来のインクジェットヘッドは、文字や画像の印刷のために開発された手法である。従って、使われる溶液はモノクロ(一般的には黒)印刷の場合には一色(黒)のインク、カラー印刷の場合には、一般的に、色の三原色、すなわち、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)の3色のインクとなる。カラー印刷の場合には必要により、黒、または、Y、M、C、の濃淡インクを使用する場合があるが、多くても10種類以上のインクを使用することはない。
【0013】
また、紙面への印刷には多量のインクを用いるため、従来のインクジェット・プリンティング用のヘッドには、十分な容量を有するインクを充填するためのタンク(リザーバー)と、インクをノズルへ導く流路と、インクを吐出するためのノズルが具備されている。
【0014】
これに対し、プローブ・アレイ製造用の液体吐出装置は、これまで説明したように、出来るだけ多くの種類の液体を吐出させることが望まれる。そこで、プローブ溶液を収納する収納部(リザーバー)をプローブ・アレイの製造に必要とされる多数種のプローブに対応する個数備え、各収納部に対応する吐出口を配置した液体吐出装置が望ましい。
【0015】
また、プローブ・アレイ製造用の液体吐出装置では、紙面に印字する場合ほど液体を消費するわけではないので、リザーバーの容積も比較的小さなもので十分である。
【0016】
さらに、従来の一般的なインクジェット・プリンティング用のヘッドでは、文字や画像の形成のために、紙面上の所望の位置に所望のインクを吐出する必要がある。そのため各ノズルを独立に任意のタイミングで選択出来るヘッド構成をとっている。所望のノズルからインク(液体)を吐出させるために必要なパワートランジスタや、論理回路は、ヘッドの外部に設けても、ヘッドの内部に設けても良い。
【0017】
インクジェットの方式としては、ヒータから発生する熱エネルギーにより液体の吐出を行うバブルジェット方式と、ピエゾ素子に電圧を印可して生じる素子の変形により液体の吐出を行うピエゾインクジェット方式がある。これらのうち、バブルジェット方式はピエゾインクジェットと比較して構造が簡単であり、ヘッドの小型化や多ノズル化に向いている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
以上に紹介したように、液体吐出装置を用いてプローブ・アレイを製造する方法は、微少なプローブ液滴量を高密度に基板上に配列する、という点において優れている。
【0019】
このような多数の微細なドット状のプローブスポットの高密度配列を達成したプローブ・アレイでは、得られたプローブアレイの良品率、すなわち製造歩留りを更に向上させるためには、必要なプローブのスポットが基板上に形成されているかどうかを検定する必要がある。
【0020】
しかしながら、多数のプローブスポットを形成する場合、特に、溶液種が1000〜10000にわたる場合に、所望のプローブのスポットの全てが基板上に形成されているかを検定するには、多大な労力を要したり、特別な装置を用いる必要がある場合が多い。
【0021】
すなわち、ゴミ詰まり、断線、気泡の混入等による液体吐出装置の各ノズルからの不整な吐出もしくは不吐出によってプローブのスポットが基板上に形成されない可能性がある。また、このように非常に多いノズルを基板上に一体成形した液体吐出装置の場合に、一つのノズルが不良であっても装置全体が不良となってしまうことから、製造装置自体の歩留まりが悪く生産性が低いくなる、という課題がある。更に、装置自体に欠陥が生じていない場合でも、なんらかの理由で不吐出が生じている場合には、その装置で製造されたプローブ・アレイは品質不良部分を有するものとなり、このような不良品の発生は、プローブ・アレイ自体の製造歩留りの低下を招く。
【0022】
本発明は、プローブのスポットを基板上に形成したプローブ・アレイ等のプローブ担体の製造における上述の課題を解決するもので、その目的は、多種類のプローブ溶液種のそれぞれから形成されたスポットを確実に担体上に形成可能なプローブアレイの製造方法およびそれに用いる装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題の解決を図るべく、鋭意研究を進めた結果、一つの液体収納部に対して同一プローブ溶液を吐出する複数の吐出口を設け、担体上のプローブの1つのスポットを、それぞれの吐出口から順次吐出された同一のプローブを含む複数のプローブ溶液を重ねあわせることによって形成することで、たとえ一つの吐出口からの吐出が不整であってもスポットは形成され、かつプローブ量も許容範囲内にできることを見出した。これによって、液体吐出装置の製造過程で例え1つの吐出口からの吐出のための機構が不良であっても基板全体を不良とする必要が無く、液体吐出装置の製造歩留まりが著しく向上することが確認された。更に、このような構成の液体吐出装置を用いることで、プローブ・アレイ等のプローブ担体自体の製造歩留まりを向上させることが可能であることを見出した。
【0024】
また、本発明者らは、好ましくは、プローブ溶液を加熱して沸騰させ、その圧力で液体を吐出する液体吐出方式を使用することにより、吐出口の配列密度を容易に向上させることができ、液体吐出装置およびプローブ担体製造装置を巨大化せずに上記の課題が解決できることを見出した。さらに、溶液を加熱して発生せしめた気泡が外気と連通することを特徴とした液体吐出方式を用いることにより、0.1pl〜50plの範囲で1度に吐出される液体量を精度良く再現することが可能であり、上記の目的に適していることを見出した。
【0025】
本発明は上記の本発明者らによる知見に基づいて成されたものである。
【0026】
本発明にかかる液体吐出装置の一態様は、担体上に複数種のプローブを配置したプローブ担体の製造に用いる液体吐出装置であって、
前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、これらの吐出口が形成されている吐出口形成面と、該液体収納部とこれらの複数の吐出口を共通に連通させる流路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を複数備え、
前記複数の液体吐出部毎に設けられた液体収納部が、同一基板に間隔を持って2次元に配列して形成されており、
各液体吐出部における液体収納部と連通する流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に該液体収納部から直線状に伸びた部分を有しており、各吐出口が該流路の該直線状に伸びた部分の中心軸と前記吐出口形成面との交点を中心に等距離に配置されており、
同一種のプローブ溶液が前記担体の同一位置に付与されるようにした
ことを特徴とする液体吐出装置である。
本発明にかかる液体吐出装置の他の態様は、担体に対して相対的に移動させながら該担体上に複数種のプローブを配置したプローブ担体の製造に用いる液体吐出装置であって、
前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、これらの吐出口が前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直列に形成されている吐出口形成面と、該液体収納部とこれらの複数の吐出口を共通に連通させる流路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を複数備え、
前記複数の液体吐出部毎に設けられた液体収納部が、同一基板に間隔を持って2次元に配列して形成されており、
各液体吐出部における液体収納部と連通する流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に該液体収納部から直線状に伸び、かつ前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直線状に伸びた部分を有しており、各吐出口が該流路の前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直線状に伸びた部分の中心軸に対して等距離に配置されており、
同一種のプローブ溶液が前記担体の同一位置に付与されるようにした
ことを特徴とする液体吐出装置である。
【0027】
また、本発明のプローブ担体の製造装置は、上記構成の液体吐出装置と、担体を保持し、該液体吐出装置に対して該担体を相対的に移動させるための担体の保持手段とを有することを特徴とするものである。
【0028】
更に、本発明のプローブ担体の製造方法の一態様は、複数種のプローブのスポットを担体上に配置したプローブ担体の製造方法において、
液体吐出装置を担体に対して相対的に移動させながら、前記プローブの配置位置に関する情報に応じて前記複数種のプローブの溶液を該担体に吐出させて固定する工程を有し、
前記液体吐出装置が、前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、これらの吐出口が形成されている吐出口形成面と、該液体収納部とこれらの複数の吐出口を共通に連通させる流路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を複数備え、
前記複数の液体吐出部毎に設けられた液体収納部が、同一基板に間隔を持って2次元に配列して形成されており、
各液体吐出部における液体収納部と連通する流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に該液体収納部から直線状に伸びた部分を有しており、各吐出口が該流路の該直線状に伸びた部分の中心軸と前記吐出口形成面との交点を中心に等距離に配置されており、
かつ前記プローブの溶液を担体に固定する工程が、前記液体収納部に対して共通して設けられた吐出口群を前記担体に対して相対的に移動させ、該吐出口群を構成する複数の吐出口から同一種のプローブ溶液が前記担体の同一スポット形成位置に付着するようにこれらの吐出口に対応する吐出エネルギー発生手段を駆動させる工程を含む
ことを特徴とするプローブ担体の製造方法である。
本発明のプローブ担体の製造方法の他の態様は、複数種のプローブのスポットを担体上に配置したプローブ担体の製造方法において、
液体吐出装置を担体に対して相対的に移動させながら、前記プローブの配置位置に関する情報に応じて前記複数種のプローブの溶液を該担体に吐出させて固定する工程を有し、
前記液体吐出装置が、前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、これらの吐出口が前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直列に形成されている吐出口形成面と、該液体収納部とこれらの複数の吐出口を共通に連通させる流路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を複数備え、
前記複数の液体吐出部毎に設けられた液体収納部が、同一基板に間隔を持って2次元に配列して形成されており、
各液体吐出部における液体収納部と連通する流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に該液体収納部から直線状に伸び、かつ前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直線状に伸びた部分を有しており、各吐出口が該流路の前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直線状に伸びた部分の中心軸に対して等距離に配置されており、
かつ前記プローブの溶液を担体に固定する工程が、前記液体収納部に対して共通して設けられた吐出口群を前記担体に対して相対的に移動させ、該吐出口群を構成する複数の吐出口から同一種のプローブ溶液が前記担体の同一スポット形成位置に付着するようにこれらの吐出口に対応する吐出エネルギー発生手段を駆動させる工程を含む
ことを特徴とするプローブ担体の製造方法である。
【0029】
本発明に用いる液体吐出装置における1つの吐出口群を形成する吐出口の数が10以上であることが好ましい。
【0030】
また、前記複数個の吐出口の各々から1度に吐出されるプローブ溶液の体積は、0.1pl〜50plの範囲内にあることが好ましい。
【0031】
更に、前記吐出口の全てが、基板上の吐出口形成面に1次元または2次元状に配列された吐出口群を形成していることが好ましい。
【0032】
また、前記流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に直線状に伸びており、かつ前記1つの液体収納部に共通して連通する複数個の吐出口が該流路の中心軸と該吐出口形成面との交点を中心に等距離に円弧上に配列されているものであることが好ましい。
【0033】
更に、前記液体吐出エネルギー発生素子が、熱エネルギーを発生し、前記プローブ溶液を加熱して沸騰させ、その圧力で前記吐出口から吐出させるヒーター素子であることが好ましく。
【0034】
また、前記液体吐出部の各々が、基板の表側の面に設けられたヒータ素子と、該ヒータ素子に対応する位置に設けられたプローブ溶液の流路と、該流路と連通し該流路から供給されたプローブ溶液を該ヒータ素子の発熱により吐出するための吐出口と、該基板の裏面側に設けられ、該流路と連通した液体収納部と、を有し、これらの吐出口、流路及び液体収納部が前記基板を貫通する経路を形成したチップ中に構成され、該ヒータ素子は互いに絶縁された第一と第二の配線にその両端が接続され、これらの第一と第二の配線を介して印可された電気信号により駆動されるものであることが好ましい。
【0035】
更に、前記液体吐出部は、前記ヒータ素子の駆動により前記吐出口からプローブ溶液を吐出させる際に前記流路中のプローブ溶液に気泡が発生し、該気泡が該吐出口を介して外気と連通する構造を有するものであることが好ましい。
【0036】
本発明によれば、液体吐出装置の製造過程で例え一つの吐出口に不良が生じていても、装置全体を不良とする必要が無く、液体吐出装置の歩留まりが著しく向上することが確認された。
【0037】
更に、液体吐出装置を液体吐出手段として用いたプローブ担体製造用の装置を用いた本発明にかかるプローブ・アレイの製造方法によれば、所定のプローブのスポットが確実に担体上に形成されているので、プローブ担体製造後の品質のチェックを省略、あるいは大幅に簡易化でき、プローブ担体の製造歩留まりの向上と、製造工程の簡易化を図ることができる。
【0038】
【発明の実施の態様】
本発明にかかる液体吐出装置は、プローブ溶液を収納する液体収納部と、液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、液体収納部に対してこれらの複数の吐出口を共通して連通させる液路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を備えた構成を有する。
【0039】
すなわち、本発明にかかる液体吐出装置は、複数種のプローブのスポットを担体上に形成したプローブ担体の製造に際し、一つの吐出口群を形成する複数の吐出口から同一のプローブ溶液を、吐出口の数に対応する回数で順次担体の同位置に吐出させるための制御が可能な構成を有するものである。
【0040】
このような構成を有する液体吐出装置を用いることで、二次元プローブ・アレイ等のプローブ担体の製造に際し、予め別途に作製した各プローブ溶液を所望の液量ずつ担体に吐出、付与することで、プローブの多種高密度化を達成することができる。
【0041】
更に、1つの液体収納部に対応して複数の吐出口を設けた構成によれば、これら複数の吐出口の1つからの液体の吐出に吐出不良が生じた場合でも、その他の吐出口からの吐出によってプローブ溶液の担体への付与が保証され、より確実なプローブスポットの形成を達成することができる。
【0042】
以下に、本発明のプローブ担体の製造方法、ならびに製造装置に関して、より詳しく説明する。特に、熱エネルギーを吐出エネルギーとして用いる液体吐出方式を利用した場合を代表例として、各プローブを所望の液量ずつ吐出、付与する工程、およびそれに用いる液体吐出装置を中心に説明する。
【0043】
一度に一個の吐出口から吐出されるプローブ溶液の量は、プローブ溶液の粘度、プローブ溶液と担体の親和性、プローブと担体との反応性などの様々の要素を考慮の上で、形成されるプローブ担体を構成する各ドット状スポットのサイズや形状に応じて、適宜選択されるものである。プローブ溶液は水性溶媒を用いることが一般的であり、本発明の方法においては、各吐出口から一度に吐出されるプローブ溶液は、一般的に、その液量を0.1ピコリットルから100ピコリットルの範囲に選択し、その液量に合わせて吐出口径などを設計・調整することが好ましい。
【0044】
このプローブ溶液が付与されるアレイ単位(一つのスポットが形成される単位領域)の占める面積は、0.01(例えば0.1μm×0.1μ)μm2から40000(例えば200μm×200μm)μm2が一般的であるが、これは、アレイ自体の大きさ、アレイ・マトリクスの密度により決まる。
【0045】
液体収納部を用いる場合のそのサイズや容量も、吐出口から一度に吐出するプローブ溶液の量、また、作製を予定するアレイ枚数によって適宜選択されるものである。なお、吐出口径の設定により、それから一度に吐出するプローブ溶液の量は自ずから一定の範囲となるので、液体吐出装置の複数の液体吐出部をシリコン等の半導体やガラスなどからなる基板を加工して一体型のチップ状に形成する際には、後述するように吐出口に対向する基板の裏面に液体収納部を一体成形できるサイズで十分な場合もある(図4及び5参照)。
【0046】
一方、一度に吐出口から吐出するプローブ溶液の量が比較的多く、また、製造する必要なアレイ枚数が多い場合には、プローブ溶液を基板に一体成形した液体収納部にその都度追加することにより、全アレイ枚数を製造する際に必要となる溶液量を賄う方法を用いることができる。それとは別に、基板の裏側に配置する液体収納部に、さらに増量用の液体収納部を接続可能な構成としてもよい。その際、プローブ溶液の追加は、増量用の液体収納部を介して行われ、必要に応じて基板側の液体収納部の形状自体は、プローブ溶液の供給が容易に行えるものにしておくことができる。
【0047】
このプローブ担体の製造に用いられるプローブ毎に、対をなす液体収納部と複数の吐出口を対応させて液体吐出部を形成し、複数の液体吐出部に配置された吐出口を、好ましくは一次元または二次元アレイ状に配置して吐出口面を形成する。従って、対をなす液体収納部と複数の吐出口とを備えた液体吐出部の数は、特に限定されるものではなく、必要とされるアレイ等におけるプローブ種に応じて選択されるものである。なお、ドット状スポットの径、スポット数、その付与密度、あるいは、アレイ等のおける全体としての配列パターン形状、更には液体吐出部の総数は、基本的には必要とされるプローブ種の数により決定される。本発明においては、1つの吐出口形成面に設けられる吐出口の総数は、吐出口総数=(液体吐出部の数)×(液体吐出部の有する吐出口の数)となる。
【0048】
本発明の方法において、一般に、担体上に二次元アレイ状などのパターンで配置するプローブは、大きな意味における種類は同じ種類とする。すなわち、本発明の方法においては、各プローブは溶液として、液体吐出装置から吐出できる限り、そのプローブ自体の種類は特に限定されない。一方、担体上に溶液として、吐出し、付与した後、基板上に固定できるものに本発明の方法は適用される。
【0049】
担体に固定されるプローブは、特定のターゲット(標的)によって特異的に認識され得るもので、しばしばリガンドと呼ばれるものである。更に、このプローブには、特定の標的によって認識され得るオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチド、あるいはその他のポリマーなどが含まれる。用語「プローブ」は、個々のポリヌクレオチド分子などのプローブ機能を有するプローブ分子そのものを意味する場合と、分散した状態等で担体表面に固定された同じ配列のポリヌクレオチドなどの同じプローブ機能を有するプローブ分子の集団を意味する場合がある。また、プローブは、リガンド−抗リガンド対の一部として標的と結合し得るか、または結合するようになり得るものである。本発明におけるプローブ及び標的は、天然において見出されるような塩基、またはそのアナログを含み得る。
【0050】
なお、本発明の方法により製造されるプローブ担体に採用されるプローブは、その使用目的に応じて、適宜選択されるものであるが、本発明の方法を好適に実施する上では、プローブとしては、DNA、RNA、cDNA(コンプリメンタリーDNA)、PNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、その他の核酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素、酵素に対する基質、抗体、抗体に対するエピトープ、抗原、ホルモン、ホルモンレセプター、リガンド、リガンドレセプター、オリゴ糖、ポリ糖のいずれかであることが好ましく、必要に応じてこれらの2種以上を組合せて用いることができる。
【0051】
本発明においては、これらのプローブの複数種を、それぞれ独立した領域、例えばドット状スポットとして担体表面に固定したものをプローブ担体といい、プローブのスポットの多数が平面状に配列された、すなわち二次元アレイ状に配列されたものをプローブ・アレイという。このプローブ担体には、DNAマクロアレイ、DNAチップ、プローブ・アレイと一般的に呼ばれている検査用のプレートやチップが含まれる。
【0052】
一方、本発明においては、プローブは担体表面に結合可能な構造を有しており、担体上へのプローブの固定がこの結合可能な構造を介して行われていることが望ましい。その際、プローブが有する担体表面に結合可能な構造は、アミノ基、スルフィドリル基、カルボキシル基、水酸基、酸ハライド化物(ハロホルミル基;−COX)、ハライド化物(−X)、アジリジン、マレイミド基、スクシイミド、イソチオシアネート、スルフォニルクロリド(−SO2Cl)、アルデヒド(ホルミル基;−CHO)、ヒドラジン、ヨウ化アセトアミドなどの有機官能基を導入する処理により形成されたものであることが好ましい。
【0053】
本発明にかかるプローブ担体の製造方法は、プローブ担体の製造に際し、予め別途に作製した複数種のプローブを溶液とし、担体上の各ウエルに、液体吐出装置を用いて吐出させて供給することで、プローブ担体における多種高密度化を達成するものである。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、ここに示す実施例は、本発明における好ましい実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0055】
先ず、プローブ溶液の吐出、付与する工程に用いる吐出口が二次元アレイ状に配列され、液体の吐出に熱エネルギーを用いる液体吐出装置を用いたプローブ・アレイの製造装置について説明する。
【0056】
(プローブ溶液吐出用液体吐出装置の構造)
(実施例1)
図1は、液体吐出装置の一例の吐出口形成面の構造を示すための模式的平面図である。この液体吐出装置は、シリコンからなる基板に多数の液体吐出部を配列したチップからなる構造を有する。後に詳しく説明するが、本実施例ではこのチップを複数個用いて1つの液体吐出装置とし、これをプローブ・アレイの製造装置の液体吐出手段(液体吐出ユニット)として用いる。なお、この液体吐出装置の機能の大部分はチップの構成に依存する。
【0057】
図1は、本発明に用いる液体吐出装置の基本的な構成を説明するためのもので、便宜上各液体吐出部が1つの吐出口(ノズル)を有する構成を示している。本発明に用いる液体吐出装置では、図2のノズル近傍部の拡大図(図1中の丸印で囲んだ部分に相当する)に示すような、1つの液体収納部(リザーバー)に対して、1つのヒータ素子と1つのノズルからなる組を2組以上(本実施例では10組)配置した構成が好適に利用される。
【0058】
図1、図2において、1はシリコン基板、2はTaN、TaSiN、TaAl等から成るヒータ、3はアルミニウム等からなる第一の配線、4はアルミニウム等からなる第二の配線、5はヘッドと外部との電気的接触をとるためのパッド、6はノズル、7は流路、8は基板裏面から基板表面に液体を供給する供給口である。供給口は後述するが、シリコンの異方性エッチングにより作成するが、その際基板1の裏面では、その縁部が9(点線部)で示した部分まで広がった四角錐状の開口部を有している。また、該供給口は液体のリザーバーを兼ねている。この構成では、供給口、流路(後述する図3、4参照)、ヒータ素子及びノズルが個々に独立した液体吐出部を形成している。
【0059】
図1で白抜き矢印で示した方向は、後に詳しく説明するが、液体吐出装置を液体吐出ユニットとしてプローブ・アレイ製造装置に装着した際にこのユニットが移動する方向であり、以後、主走査方向と記述する。
【0060】
図2に示す様に、本実施例では一つの供給口に対して10個のノズルおよびヒーターが対応している。同一液体吐出部内で隣り合う一組のノズルおよびヒーターからなる部分は隔壁(図示せず)で分離されており42.5μm(600dpi)の間隔で並んでいる。それぞれのヒーターは互いに異なる一組の第一の配線および第二の配線と結合しており、計10組の配線が基板端の10組のパッド(省略)を介して外部と接続している。この配線によって同一液体吐出部内に設けられた複数のノズルがそれぞれ独立して液体を吐出することが可能となる。
【0061】
チップは、図1において、横方向に、隣接ノズル群間隔が1.27mm(20dpi相当)に配列された8個のノズル例を、縦方向に5列、100dpiのオフセット(横方向におけるズレ)で配列された構成を有している。また、隣接するノズル列の間隔も100dpiに設定されている。
【0062】
図2に示す構成における各ノズル間隔、各ノズル列間隔も、図1の態様に準じて設定されている。なお、図2の構成をとる場合における図1の上下方向で隣接するノズル列間の間隔は、例えば同一液体吐出部内で上下方向に近接して設けられた10個のノズルの中心位置を基準として設定することができる。
【0063】
図2の構成では、横方向のノズル列に含まれる80個のヒータは、10組の、第一の配線および第二の配線によって接続されている。チップの長辺方向の長さは約12mm、短辺方向の長さは約9mmである。1つのチップでのノズル数は400個である。図3は、図1のA―A’線での断面図を示す。図4は、図1のB―B’線での断面図を示す。図5は、半導体チップの裏面の模式図を示す(図1に示された半導体チップの裏面に相当)。
【0064】
図3、図4において図1、図2で用いたものと同一番号のものは同一の物を示す。また、10は絶縁膜、11は保護膜、12はノズル材、13はTa等から成る耐キャビテーション膜である。絶縁膜10は、シリコン基板を熱酸化して作成される熱酸化膜、CVDにより作成される、酸化膜、窒化膜、等いずれの膜でもよい。保護膜11は、CVDにより作成される、酸化膜、窒化膜、等いずれの膜でもよい。ノズル6、流路7、を形成しているノズル材12の形成は、あらかじめノズルおよび流路を有したノズル材を半導体基板に貼り付けても、フォトリソグラフィー技術を用い半導体プロセスの延長で形成しても良い。
【0065】
特に、チップがより大きな面積で作製される必要がある場合、ノズルおよび流路を有したノズル材を基板に貼り付ける方法では、ノズル材が大面積になるため貼り付け時のしわ、そり、位置ズレなどの問題があり、チップの作製が困難となるため、フォトリソグラフィー技術を用いて基板上にノズル材料を積層する製法が望まれる。フォトリソグラフィーを用いてノズルを形成する方法としては、例えば、特開昭62-264957号に記載される方法がある。
【0066】
供給口7はTMAH溶液を用いたシリコンの異方性エッチングにより作製され、図3に示したように、基板表面に対して、54.7°の角度で開口する。」
該供給口の形状は図6に示したように四角錐台の形状になる。今回の試作では、基板表面での供給口の幅を図3に示したように100μmと設定し、またシリコン基板の1の厚さは625μmであるため、供給口の裏面での幅は約1mmとなる。また、図2から解るように供給口の長辺は42μm×10=420μmである。
【0067】
従来のプリンティング用のインクジェットヘッドでは基板裏面に接続されたインクタンクとの接続部からヒータ部へインクを導くことが供給口の主目的であるが、前記したようにプローブ・アレイ製造用の装置では、液体の吐出量の総量が少ないため供給口を液体のリザーバーとして用いることが可能である。
【0068】
前記寸法の供給口では、体積は約0.23μlであり、本実施例では10個のノズルからの吐出量の合計は24plであるので、この体積は約9600枚のプローブ・アレイを作製できる量に相当する。
【0069】
チップを裏面から見た場合、供給口は図5に示した形状になる。液体は基板裏面から図4に示したように、供給口8から基板表面に導かれ、流路7を通ってノズル6まで導かれる。すなわち、供給口(液体リザーバー)、流路及びノズルによって基板を貫通する経路が形成されている。
【0070】
ヒータの両端に電圧が印可されると、ヒータ近傍の液体が過熱され膜発泡を起こし,液体は図7に示したように吐出する。ノズルから吐出される液体の量は2.4plとした。この液滴量を得るためヒーターは24μm×24μm、ノズルは11μmφとした。
【0071】
安定に液体を吐出させるためには、安定に膜発泡を起こすことが必須である。安定な膜発泡を起こすためには、ヒータに0.1ないし5μsの電圧パルスが印可されることが望ましい。また、プローブ・アレイに含まれる各プローブの量を精密にコントロールするためには、ノズルから吐出される液滴量が安定である、特開平4-10940号や特開平4-10941号、特開平4-10942号に記載されているような、ヒーターにより過熱されることで発生した気泡が外気と連通する方式が好ましい。
【0072】
更に、図8にチップを複数並列した液体吐出装置の模式図を示す。図8において、21はチップを25枚並列配置した部分を有する液体吐出装置であり、22は図1ないし図7で説明したチップ、23はノズルである。図8中チップ22は、論点を明確にするためノズル23のみを示している。この液体吐出装置では、チップ22は5行5列に配置され、1チップで80個のノズルを有しているため、1つのユニットが合計2000個のノズルを有する。図8に示すチップとして、図2に示す構成のものを用いることで本発明にかかる液体吐出装置を構成することができる。
【0073】
図9に、複数のチップを並列配置する場合の構成の一例について示す。図9に示すように、アルミナ、樹脂等からなり、開口部25が形成された窓枠状の固定用の枠体24を用い、各開口部にチップ22を勘合挿入して固定することで多数のチップを並列した液体吐出装置を得ることができる。各チップのパッドは、枠体24に配置されたフレキシブル配線基板(不図示)により電気的にヘッド外部と接続されている。溶液は、供給口8に注入される。
【0074】
(プローブ・アレイ製造装置の構造)
図10に、液体吐出装置を液体吐出ユニットとして用いたプローブ・アレイ製造装置の一例の主要部の構造の模式図を示す。図10中、22は、液体吐出ユニット31はその移動を略平行に案内するシャフト、32はプローブ・アレイ製造用の担体が固定されるステージ、33はプローブ・アレイが形成される担体(本例ではガラス基板を使用)である。
【0075】
ユニットは図10中X方向を移動し、ステージはY方向を移動し、これらの動作によってユニットはステージに対して相対的に2次元状に移動できる。図10では複数のプローブ・アレイとなるガラス基板を固定し、プローブを付与する場合の構造を示したが、1枚の大きなプローブ・アレイとなるガラス基板上にプローブ・アレイを製造し、その後、該ガラス基板を切断してプローブ・アレイを得ても良い。
【0076】
(液体吐出ユニットを用いたプローブ溶液の付与法)
次にプローブ・アレイ製造法に関して説明する。図11にプローブ・アレイ製造装置を用いたプローブ溶液の付与法を説明するための模式図を示す。図11中41ないし42はチップ、33はプローブ・アレイ製造用のガラスなどからなる担体である。図11では、プローブ・アレイが形成される表面を表向きとして描いているので、チップのノズルの配置及び、主走査方向は、実際には図8で示した物とは左右が逆になる。
【0077】
図11中41は、図8中「1」で示したチップであり、42は図8中「2」で示したチップである。各チップは、図1に示したように、横方向に配列された8つの液体吐出部からのノズル列が、縦方向に6列並列にオフセットされて(所定のズレを持って)配置された構成を有する。1つのノズル例内の各ヒータは図2に示したように、1対の第一及び第二のアルミ配線に独立して接続されているため、これらの配線に接続されている1組のパッド間に電圧パルスを印可することにより、各ノズルからプローブ溶液を吐出させることができる。なお、図2の構成では、各液体吐出部内に設けられた第1の吐出口が同時に駆動し、第2ノズル〜第10ノズルが同時に順次駆動するようになっている。
【0078】
図8ないし図11で、チップに隣接して表示されている1、2、3、4、5の数字およびA、B、C、D、E,F、G、Hはノズル列の区別を示すために表示された物である。図2では同一液体吐出部に10個のノズルが設けられているが、図11では同一液体吐出部内に配置されたノズルの個数を簡略化して三つにして図示している。
【0079】
ます初めに、第一のチップのノズル列1の先頭のノズルによって、図11中、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hで示された8つのスポットが形成される。次に、ヘッドが主走査方向に0.04mm(600dpi相当)移動したタイミングで第一のノズル列1の第二のノズルから吐出を行い、先に形成した1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hで示された8つのスポットの上に重ねて同一のプローブ溶液によるスポットを形成する。第一のノズルと第二のノズルの吐出間隔は、ヘッドの移動速度を例えば毎秒25インチとすると、1/25/600秒(67μs)とすることにより、第一のノズルより吐出された液滴によるスポットと第二の液滴によるスポットが完全に一致する。このように次々に第三から第十番目のノズルの吐出を繰り返すことにより、前記の8つのスポットが完成する。次に、ヘッドが主走査方向に1.27mm(20dpi相当)移動したタイミングで第1のチップの第二のノズル列2の10個のノズルから順次、吐出を行い、図11中、2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2Hで示された8つのスポットを、プローブ・アレイ上で1列に並ぶように配列する。引き続き同様な操作で、第3ないし第5のノズル列3〜5から順次吐出を行い、プローブ・アレイ33の、第1列のプローブ群、40個が(図11中黒丸で示す)が配置される。
【0080】
この時、隣接したプローブの中心―中心間の距離は254μm(100dpi相当)である。つまり、第一のチップから吐出される40種類の液体は、プローブ・アレイ中の第一列のプローブ群を形成する。この様子を図11中43で模式的に示した。(40スポット中、1Aないし5Aの5スポットのみ示してある。)
次に、同様な操作で第二のチップから液体の吐出を行い、プローブ・アレイの第二列(図11中白丸で示した)のプローブを配置した。この際、第一のチップから作製される、第一列のプローブ群と、第二のチップから作製される、第二列のプローブ群と、の中心―中心間の距離は254μm(100dpi相当)となるように、駆動タイミングを調節した。
【0081】
更に、同様な操作により第3ないし第25のチップから液滴の吐出を行い、プローブ・アレイを作製した。(図11中、点線で囲まれたスポット)
以上説明したように、図8に示したヘッドから、100dpiの40行、25列のプローブ・アレイを作製できる。
【0082】
さらに、一つのスポットを10個の液滴で形成しているため、例え1個のノズルがゴミつまりやヒーター断線等により故障しても、スポットを形成するプローブ量は10%減少するだけでプローブ・アレイの品質としては問題を生じない。また、同様な構成により、より多くのプローブ数を必要とするプローブ・アレイの作製も可能であることが上記説明により容易に理解できる。
【0083】
ヘッドを構成するチップとして、シリコンを用いる場合に関してこれまで説明してきたが、上記したように、本発明ではヒータとヒータに接続された配線からなる簡便な構造であるため、シリコン基板を用いる必要はなく、ガラス基板等、より安価な基板を用いてヘッドの作製ができる
実施例では、400個のノズルを有す半導体チップを5行5列に配置してヘッドを作成する場合について述べたが、ノズル数や、配置の配列は実施例に示した構成に限られることは、自由に選ぶことができる。
【0084】
実施例で説明した、半導体チップを用い、1行25列のような一次元配列のヘッドを作製した場合、主走査のみでプローブ・アレイが作成できるため、プローブ・アレイ製造装置の構造は、図11で示した構造より、より簡便な構造をとることができる。
【0085】
(実施例2)
図12に本発明による液体吐出装置を構成するチップの他の例の模式図を示す。図12はノズル近傍の拡大図であり、図2に対応するものであり、同じ番号は同じ部品を示す。
【0086】
図12に示す様に、本実施例では一つの供給口に対して10個のノズルおよびヒーターが、供給口8を挟んで両側に各5個ずつ対応している。隣り合うノズルおよびヒーターは隔壁(図示せず)で分離されており42.5μm(600dpi)の間隔で並んでいる。流路の中心軸を挟んで配置された2列のノズル列の間隔は254μm(6/600dpi)である。それぞれのヒーターは互いに異なる一組の第一の配線および第二の配線と結合しており、計10組の配線が基板端の10組のパッド(省略)を介して外部と接続している。各液体吐出部の配列は、図1の構成に準じて行われる。すなわち、同一液体吐出部内に設けられた10個のノズル群は、これらの中心位置を基準として、図1における横方向に、隣接するノズル群間隔が1.27mm(20dpi相当)に配列された8個のノズル群からなる列を形成している。また、図1において縦方向に並列される5列のノズル群列は、100dpiオフセット(横方向のズレで)されて配列されている。また、上下で隣接するノズル群列の間隔も、各ノズル群の中心を基準として100dpiに設定されている。
【0087】
供給口の形状は図6に示したように四角錐台の形状になる。今回の試作では、基板表面での供給口の幅を図3に示したように100μmと設定し、またシリコン基板の1の厚さは625μmであるため、供給口の裏面での幅は約1mmとなる。また、図2から解るように供給口の長辺は42μm×5=210μmとなり、第一の実施例に比べ短くなる。結果として、チップの長辺方向の長さは約12mm、短辺方向の長さは約8mmと小型化できる。
【0088】
(液体吐出装置を用いたプローブ溶液の付与法)
このヘッドおよび装置を用いた場合、まず、同一液体吐出部内の2列のノズル列の片側を用いて、実施例1のように1000個のスポットを形成した後、ヘッドおよび基板を原点に戻した後、副走査方向に254μmオフセットし、残りの列を使用して既に形成されているスポットの上にさらにプローブ溶液を吐出し、所望のプローブ量を得る。この方法によれば、最初の列の吐出から、残りの列の吐出までの時間間隔が、主走査速度を毎秒25インチとしても2.5インチ×5往復で1秒となり、先の吐出による溶液は基板に吸収されているため、後の吐出によるあふれがおきず、比較的多い吐出量を用いても形成されるスポットの径は小さく維持できる。
【0089】
(実施例3)
図13に本発明による液体噴射装置を構成する半導体チップの他の例の模式図を示す。図13はノズル近傍の拡大図であり、図2に対応するものであり、同じ番号は同じ部品を示す。
【0090】
図13に示す様に、本実施例では一つの供給口に対して10個のノズルおよびヒーターが、供給口の中心とする円周上に配置されている。すなわち、供給口から基板に対して垂直に伸びる流路の中心軸を中心とする円周上に配置されている。隣り合う一対のノズルおよびヒーターを含む部分は隔壁(図示せず)で分離されており、85μm(300dpi)の間隔で並んでいる。吐出口の配列軌道をなす円の直径は85μm×9/π=0.24mmである。それぞれのヒーターは互いに異なる一組の第一の配線および第二の配線と結合しており、計10組の配線が基板端の10組のパッド(省略)を介して外部と接続している。チップは図1に示したように、図1において横方向に、隣接ノズル群間隔が1.27mm(20dpi相当)に配列された8個のノズル群からなる列を形成し、この列が5列縦方向に、100dpiオフセット(横方向のズレ)で並列されている。また、上下方向で隣接するノズル群列間隔も各ノズル群の中心を基準として100dpiに設定されている。
【0091】
供給口の形状は図6に示したように四角錐台の形状になる。今回の試作では、基板表面での供給口の幅を図3に示したように100μmと設定し、またシリコン基板の1の厚さは625μmであるため、供給口の裏面での幅は約1mmとなる。また、図13から解るように供給口は100μm×100μmとなり、第二の実施例に比べさらに短くなる。結果として、チップの長辺方向の長さは約12mm、短辺方向の長さは約7mmと小型化できる。
【0092】
また、この配列においてはノズル間隔が85μmと大きいため、より大きいヒーターおよび吐出口を配置することが可能であり、比較的大きい吐出量を得ることが可能である。さらに、円周の径を大きくすれば、さらに多くのノズルを円周上に配置可能であり、プローブ量の安定性をさらに向上させることができる。円周を大きくした場合、供給口と吐出口の距離が遠くなるため、ノズルの流抵抗が増加し、応答周波数が低下するが、前述のように、一枚のプローブ・アレイに対して1ノズルあたり1度しか吐出しないため、問題にならない。
【0093】
(液体吐出装置を用いたプローブ溶液の付与法)
このヘッドおよび装置を用いた場合、まず、主走査および副走査を同時に行い、基板とヘッド間の相対運動において、ノズル配置と同じ円運動を行わせることにより、円周上のノズルから順次吐出されるプローブ溶液が基板上の同一地点に着弾するように駆動する。この後、主走査方向に1.27mm移動して円運動を繰り返すことにより、プローブ・アレイが完成する。
【0094】
実施例4
(液体吐出装置を用いたDNAアレイの製造)
25.4mm×25.4mm×0.5mmtの溶融石英基板を1%の超音波洗剤GP−III(ブランソン)中で20分間超音波洗浄した後、水道水で超音波洗浄、流水洗浄を適宜行った。次に、80℃の1N NaCl中に20分間浸漬し、流水(水道水)洗浄、超純水超音波洗浄、流水(超純水)洗浄した。
【0095】
次いで、減圧蒸留して精製した、下記式(I):
【0096】
【化1】
のアミノシランカップリング剤(KBM−603:化合物I 信越化学工業株式会社製)を1%の濃度で含む水溶液を室温下、1時間攪拌し、メトキシ基部分を加水分解させた。次に、上記基板を洗浄後速やかに前記シランカップリング剤水溶液に浸し、室温下、1時間浸漬した。その後、流水(超純水)洗浄し、窒素ガスを吹きつけて乾燥させ、次いで、120℃のオーブン中で1時間加熱定着させた。
【0097】
冷却後、下記式(II):
【0098】
【化2】
のN−(6−マレイミドカプロキシ)スクシイミド(EMCS;化合物II)の0.3%溶液(エタノール:ジメチルスルホキシド=1:1)に基板を室温下、2時間浸漬し、 EMCSをアミノシランカップリング剤のアミノ基に反応させた。反応終了後、エタノール:ジメチルスルホキシド=1:1で1回、エタノールで3回洗浄し、窒素ガスを吹きつけて乾燥させた。
5’−ATGAACCGGAGGCCCATC−3’▲1▼(配列番号:1)
3’−TACTTGGCCTCCGGGTAG−5’▲2▼(配列番号:2)
上記する▲1▼の塩基配列に相補的な塩基配列である▲2▼の塩基配列を有し、かつ、5’末端にリンカーを介して上記基板表面に最終的に精製したマレイミド基と反応結合可能なメルカプト基(SH基:スルフィドリル基ともいう)を有するオリゴヌクレオチド(化合物III ベックス株式会社)を本実施例の検証に用いるプローブに利用した。式(III):
【0099】
【化3】
のメルカプト基を導入したオリゴヌクレオチド(化合物III)を、ZJBヘッドで吐出するための溶媒、すなわち、グリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、一般式(IV):
【0100】
【化4】
で示されるアセチレンアルコール(例えば、商品名:アセチレノールEH 川研ファインケミカル株式会社)1wt%を含む水溶液に、吸光度が1.0になるように溶解させた。このオリゴヌクレオチド溶液を、実施例1で作製した液体噴射装置の溶液リザーバーにマイクロディスペンサーを用いて供給した。なお、最終的なDNA溶液の充填を行う前に、作製したヘッドに対して、溶媒と馴染ませる目的で、各溶液リザーバー、ノズルは予め上記組成の溶媒による洗浄、ならびに必要に応じてオリゴヌクレオチド溶液で洗浄を行い、真空吸引による液体の除去を適宜繰り返した。
【0101】
その後、上記のマレイミド基を導入する処理を施した基板上にオリゴヌクレオチド溶液を10個のリザーバーからこれらにつながる各10個のノズルから基板上の10個の位置にそれぞれ2.4plの液滴が10滴ずつ供給されるべく吐出した。
【0102】
また、上記組成の溶媒は保湿性が高く、溶液リザーバー内における乾燥、濃縮、ならびに、基板上に付与したオリゴヌクレオチド溶液の液滴が、次工程において、基板表面との反応による固定をなす前に、乾燥・固化を起こすことを防ぐことができる。
【0103】
この式(III)のオリゴヌクレオチド(化合物III)溶液を付与した基板を、湿度100%の保湿チヤンバー内に室温下で1時間保持し、オリゴヌクレオチドのメルカプト基と基板上のマレイミド基との反応を行わせた。取り出した後、未反応のオリゴヌクレオチドを除去するため、基板を流水(超純水)中で約30秒洗浄した。
【0104】
次いで、上記オリゴヌクレオチドを固定したドットを形成した基板について、ドット以外の表面にブロッキング処理を施すため、50mMリン酸緩衝液(pH=7.0、1MNaClを含む)にBSA(牛血清アルブミン シグマアルドリッチジャパン)を2%の濃度で溶解したブロッキング用溶液に1時間浸漬した後、前記50mMリン酸緩衝液で適宜洗浄し、この50mMリン酸緩衝液中で保存した。
【0105】
(ハイブリダイゼーション反応によるDNAプローブの評価)
モデル標的DNAとして、式(V):
【0106】
【化5】
のDNA分子、すなわち、上記▲1▼の配列を有し、蛍光標識としてテトラメチルローダミンを5’末端に結合した化合物V(べックス株式会社より購入)を用いて調製された基板上のプローブとのハイブリダイゼーション反応を行った。
【0107】
このハイブリダイゼーション反応は、化合物Vを5nMの濃度で含むリン酸緩衝液(10mMリン酸緩衝液pH=7.0、50mMのNaClを含む)2mlとを用い、ハイブリパック中で行った。基板をモデル標的DNA溶液とともにハイブリパック中に封じ、恒温槽内で70℃まで加熱し、その後、50℃まで冷却し、その状態で10時間放置した。
【0108】
次に、基板をハイブリパックから取り出し、未反応の標的DNAを除去する目的で、ハイブリダイゼーション用の緩衝液で洗浄した。洗浄後、緩衝液で覆われた状態でスライドグラス上に基板を置き、カバーガラスで覆って、蛍光標識からの蛍光を観察した。この観察に使用した蛍光顕微鏡は、ECLIPSE E800(株式会社ニコン)に20倍対物レンズ(プランアポクロマート)と蛍光フイルタ(Y−2E/C)をセットしたものである。また、蛍光顕微鏡で観測される画像は、イメージインテンシファイヤー付きCCDカメラ(C2400−87 浜松ホトニクス株式会社)と画像処理装置(Argus50 浜松ホトニクス株式会社)を用いて、採り込みを行った。
【0109】
収録された画像に基づき、基板上に二次元アレイ状に形成した、化合物IIIを固定したドット全てについて、蛍光が観察された。それらの蛍光強度はプラスマイナス10%以内であった。
【0110】
【発明の効果】
以上説明したように、プローブ・アレイの製造において、ノズル群を二次元に配置した液体噴射装置を用い、さらに1種のプローブ溶液を複数のノズルから吐出して基板上に一つのスポットを形成することにより、液滴噴射ノズルの不整な吐出による影響を少なくできる。さらに、ノズルの配置方法により、基板を大きくせずにより多くのノズルを配置することもできる。また、液滴噴射方式としてバブルジェット方式を用いることにより、高密度多ノズルのノズル配置が可能である。さらに、気泡が外気と連通する吐出方式により、より安定な液滴量を得ることができる。
【0111】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液体噴射装置を構成する半導体チップの模式図である。
【図2】図1においてのノズル近傍部の拡大図である。
【図3】図1のA―A' 線での断面図である。
【図4】図1のB―B' 線での断面図である。
【図5】液体噴射装置を構成する半導体チップの裏面の模式図(図1に示された半導体チップの裏面に相当)である。
【図6】液体噴射装置を構成する半導体チップの液体供給口(リザーバー)の形状を説明するための模式図である。
【図7】液体噴射装置での液体の吐出を説明するための模式図である。
【図8】液体噴射装置の模式図である。
【図9】サーマル液体噴射装置の模式図である。
【図10】プローブ・アレイ製造装置の構造の模式図である。
【図11】プローブ・アレイ製造方法の模式図である。
【図12】液体噴射装置の第2の実施例の模式図である。
【図13】液体噴射装置の第3の実施例の模式図である。
Claims (22)
- 担体上に複数種のプローブを配置したプローブ担体の製造に用いる液体吐出装置であって、
前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、これらの吐出口が形成されている吐出口形成面と、該液体収納部とこれらの複数の吐出口を共通に連通させる流路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を複数備え、
前記複数の液体吐出部毎に設けられた液体収納部が、同一基板に間隔を持って2次元に配列して形成されており、
各液体吐出部における液体収納部と連通する流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に該液体収納部から直線状に伸びた部分を有しており、各吐出口が該流路の該直線状に伸びた部分の中心軸と前記吐出口形成面との交点を中心に等距離に配置されており、
同一種のプローブ溶液が前記担体の同一位置に付与されるようにした
ことを特徴とする液体吐出装置。 - 担体に対して相対的に移動させながら該担体上に複数種のプローブを配置したプローブ担体の製造に用いる液体吐出装置であって、
前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、これらの吐出口が前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直列に配置されている吐出口形成面と、該液体収納部とこれらの複数の吐出口を共通に連通させる流路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を複数備え、
前記複数の液体吐出部毎に設けられた液体収納部が、同一基板に間隔を持って2次元に配列して形成されており、
各液体吐出部における液体収納部と連通する流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に該液体収納部から直線状に伸び、かつ前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直線状に伸びた部分を有しており、各吐出口が該流路の前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直線状に伸びた部分の中心軸に対して等距離に配置されており、
同一種のプローブ溶液が前記担体の同一位置に付与されるようにした
ことを特徴とする液体吐出装置。 - 前記吐出口群を形成する吐出口の数が10以上である請求項1または2に記載の液体吐出装置。
- 前記複数の液体吐出部毎に設けられた複数個の吐出口の各々から1度に吐出されるプローブ溶液の体積は、0.1pl〜50plの範囲内にある請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
- 前記複数の液体吐出部毎に設けられた複数個の吐出口の全てが、前記吐出口形成面に2次元状に配列された吐出口群を形成している請求項1から4のいずれかに記載の液体吐出装置。
- 各吐出口が前記流路の直線状の部分の中心軸と前記吐出口形成面との交点を中心に等距離に円弧上に配列されている請求項1に記載の液体吐出装置。
- 前記液体吐出エネルギー発生素子が、熱エネルギーを発生し、前記プローブ溶液を加熱して沸騰させ、その圧力で前記吐出口から吐出させるヒータ素子である請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
- 前記液体吐出部の各々が、基板の表側の面に設けられたヒータ素子と、該ヒータ素子に対応する位置に設けられたプローブ溶液の流路と、該流路と連通し該流路から供給されたプローブ溶液を該ヒータ素子の発熱により吐出するための吐出口と、該基板の裏面側に設けられ、該流路と連通した液体収納部と、を有し、これらの吐出口、流路及び液体収納部が前記基板を貫通する経路を形成したチップ中に構成され、
該ヒータ素子は互いに絶縁された第一と第二の配線にその両端が接続され、これらの第一と第二の配線を介して印可された電気信号により駆動される請求項7に記載の液体吐出装置。 - 前記液体吐出部は、前記ヒータ素子の駆動により前記吐出口からプローブ溶液を吐出させる際に前記流路中のプローブ溶液に気泡が発生し、該気泡が該吐出口を介して外気と連通する構造を有する請求項8に記載の液体吐出装置。
- 請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出装置と、担体を保持し、該液体吐出装置に対して該担体を相対的に移動させるための担体の保持手段と有することを特徴とするプローブ担体の製造装置。
- 複数種のプローブのスポットを担体上に配置したプローブ担体の製造方法において、
液体吐出装置を担体に対して相対的に移動させながら、前記プローブの配置位置に関する情報に応じて前記複数種のプローブの溶液を該担体に吐出させて固定する工程を有し、
前記液体吐出装置が、前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、これらの吐出口が形成されている吐出口形成面と、該液体収納部とこれらの複数の吐出口を共通に連通させる流路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を複数備え、
前記複数の液体吐出部毎に設けられた液体収納部が、同一基板に間隔を持って2次元に配列して形成されており、
各液体吐出部における液体収納部と連通する流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に該液体収納部から直線状に伸びた部分を有しており、各吐出口が該流路の該直線状に伸びた部分の中心軸と前記吐出口形成面との交点を中心に等距離に配置されており、
かつ前記プローブの溶液を担体に固定する工程が、前記液体収納部に対して共通して設けられた吐出口群を前記担体に対して相対的に移動させ、該吐出口群を構成する複数の吐出口から同一種のプローブ溶液が前記担体の同一スポット形成位置に付着するようにこれらの吐出口に対応する吐出エネルギー発生手段を駆動させる工程を含む
ことを特徴とするプローブ担体の製造方法。 - 複数種のプローブのスポットを担体上に配置したプローブ担体の製造方法において、
液体吐出装置を担体に対して相対的に移動させながら、前記プローブの配置位置に関する情報に応じて前記複数種のプローブの溶液を該担体に吐出させて固定する工程を有し、
前記液体吐出装置が、前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための複数の吐出口と、これらの吐出口が前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直列に配置されている吐出口形成面と、該液体収納部とこれらの複数の吐出口を共通に連通させる流路と、これらの複数の吐出口の各々に対応して設けられ、これら複数の吐出口の各々による独立したプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を複数備え、
前記複数の液体吐出部毎に設けられた液体収納部が、同一基板に間隔を持って2次元に配列して形成されており、
各液体吐出部における液体収納部と連通する流路が、前記吐出口形成面に対して垂直方向に該液体収納部から直線状に伸び、かつ前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直線状に伸びた部分を有しており、各吐出口が該流路の前記担体に対する相対的な移動方向に沿って直線状に伸びた部分の中心軸に対して等距離に配置されており、
かつ前記プローブの溶液を担体に固定する工程が、前記液体収納部に対して共通して設けられた吐出口群を前記担体に対して相対的に移動させ、該吐出口群を構成する複数の吐出口から同一種のプローブ溶液が前記担体の同一スポット形成位置に付着するようにこれらの吐出口に対応する吐出エネルギー発生手段を駆動させる工程を含む
ことを特徴とするプローブ担体の製造方法。 - 前記吐出口群を形成する吐出口の数が10以上である請求項11または12に記載の製造方法。
- 前記複数の液体吐出部毎に設けられた複数個の吐出口の各々から1度に吐出されるプローブ溶液の体積は、0.1pl〜50plの範囲内にある請求項11から13のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記複数の液体吐出部毎に設けられた複数個の吐出口の全てが、前記吐出口形成面に2次元状に配列された吐出口群を形成している請求項11から14のいずれか1項に記載の製造方法。
- 各吐出口が前記流路の直線状の部分の中心軸と前記吐出口形成面との交点を中心に等距離に円弧上に配列されている請求項11に記載の製造方法。
- 前記液体吐出エネルギー発生素子が、熱エネルギーを発生し、前記プローブ溶液を加熱して沸騰させ、その圧力で前記吐出口から吐出させるヒータ素子である請求項11から16のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記液体吐出部の各々が、基板の表側の面に設けられたヒータ素子と、該ヒータ素子に対応する位置に設けられたプローブ溶液の流路と、該流路と連通し該流路から供給されたプローブ溶液を該ヒータ素子の発熱により吐出するための吐出口と、該基板の裏面側に設けられ、該流路と連通した液体収納部と、を有し、これらの吐出口、流路及び液体収納部が前記基板を貫通する経路を形成したチップ中に構成され、
該ヒータ素子は互いに絶縁された第一と第二の配線にその両端が接続され、これらの第一と第二の配線を介して印可された電気信号により駆動される請求項17に記載の製造方法。 - 前記液体吐出部は、前記ヒータ素子の駆動により前記吐出口からプローブ溶液を吐出させる際に前記流路中のプローブ溶液に気泡が発生し、該気泡が該吐出口を介して外気と連通する構造を有する請求項18に記載の製造方法。
- 前記プローブが標的物質を特異的に認識する物質である請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
- 前記プローブが標的物質を特異的に認識する物質である請求項10に記載のプローブ担体の製造装置。
- 前記プローブが標的物質を特異的に認識する物質である請求項11から19のいずれか1項に記載の製造方法。
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