JP4585108B2 - 被覆ステンレス鋼線とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼の芯材に黒系色の色彩を有するニッケル被覆を形成することを基本として、意匠性、表面潤滑性を高めるとともに、それを用いて生産される最終成型品の識別を容易としうる被覆ステンレス鋼線、並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にステンレス鋼は難加工材であることから、例えば、ばね用線などとして高弾性を持つ線材を得るための細径化、コイリング成形、あるいはねじ加工等のように強度の成形加工行う場合、被加工線材には、それら加工に耐え得るよう予めその表面に潤滑皮膜を形成しておくことが広く行なわれている。
【0003】
特にニッケルはステンレス鋼と同様に高い機械的特性と耐食性、潤滑性を備え,また成形後の熱処理でのテンパーカラーを抑制する機能があることが見出されてから、ニッケルはステンレス鋼、とりわけばね用ステンレス鋼線の被覆材料として多用されてきた。
【0004】
例えば、特開平8−181626号公報は、ばね用ステンレス鋼線におけるニッケルメッキ層の皮膜厚さと、芯材ステンレス鋼線との硬さ比、潤滑剤の付着量を各々所定範囲にすることによって、ばね成形でのコイリング性を高めることを開示し、めっき方法としてはスルファミン酸ニッケルによるものを提案している。
【0005】
ところで、コイルばねの成形は、前記提案において記載されているように、予め所定位置にセットされたガイドピンに対し、供給線材を押し付けながら繰り出すことで行なわれることから、均一性に優れたばね製品を安定的に得るには、線材と前記ピンとの間の滑り抵抗を小さくすることが必要であり、前記提案では表面に潤滑皮膜を形成しておくことも開示している。
【0006】
さらに、これらステンレス鋼線により得られるばね製品は、比較的小型であって、ばね個々には個別表示などを行うことができないため、多くの場合、トレーなど所定容器に収容してロット単位での管理を行っているが、不注意などによる他種ばねの混在は、特にばね製品が作動部分などの重要な機能部品として用いられている場合には機器本来の性能に致命的な欠陥を及ぼす。
【0007】
従って、かかる混在のおそれのあるロットは、ロットアウト、若しくは全数選別などの措置を講ずることが必要となり、損害、工数損失が多大となる。
【0008】
このため、特開昭61−250179号公報、特開昭60−21370号公報では、線表面に予め色付けしておくことを提案しており、前者提案では線表面にカラー樹脂を塗布すること、また後者提案ではばね成形後のテンパー熱処理での発色によって所定の色彩を付与することとしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前に記載の提案(特開平8−181626号号公報)が開示するばね用ステンレス鋼線は、コイリング性との関係から、そのめっき層の硬度について母材であるステンレス鋼の硬度の0.2〜0.83とするものとし、スルファミン酸ニッケルめっきを提示している。
【0010】
しかしながら、このようなめっき層ではその後になされる伸線やコイリング加工での工具とのすべりによって、その表面は必要以上の平滑面となり、その結果、表面潤滑剤の表面での担持性能が損なわれて、強加工、高速加工に適さないものとなることが確認された。
【0011】
すなわち、表面潤滑剤はその被覆時点ではめっき層全面を覆っているものの、その後の加工によって減少することは周知であるが、その表面が例えば鏡面のような超平滑面になり易い特性を有する場合には、潤滑剤はダイスや工具との接触によって容易に剥離して取り除かれ、その部分は無皮膜の状態となる。
【0012】
したがって、それ以降の加工において潤滑不良を起こすとともに、剥離した潤滑剤は、飛散して周囲環境を汚損し、或いはコイリングノズル、ガイドロールなどに付着して目詰まりを起こすなど、製品品質、作業性などに大きな影響を及ぼす。
【0013】
したがって、強加工に際して十分な潤滑剤を保持させる為には、その表面をある程度の非平滑とすることにより形成される微小凹部を利用することが有効であることが判明したが、前記提案のめっき方法ではその達成が望めない。
【0014】
さらに、また、線表面に意匠性や識別機能について、前記特開昭61−250179号公報が開示するカラー樹脂によるものの場合は、ニッケルめっきの潤滑性を活用できないばかりか、樹脂には、多かれ少なかれ熱処理等によってステンレス鋼母材に悪影響を及ぼすことが懸念され、また伸線加工やコイリング時での強摩擦によって剥離やクラックなどを起こしやすいなどの理由から、現在では実施されていない。
【0015】
特開昭60−21370号公報のテンパーカラーで得られる色彩は、一般的に熱処理条件(温度)によって左右され、それに伴ってばね特性も影響を受けることとなり、一方、識別性の観点でも、ばね製品が比較的細い線材でなるものの場合には濃い色を付与しなければその判別しにくく、結局、識別しうる色彩を熱処理条件によってうることが困難であり汎用性に欠ける。
【0016】
すなわち、公報が開示するカラー樹脂によるものの場合は、折角のニッケルめっきの潤滑性を活用できないばかりか、樹脂には、多かれ少なかれ熱処理等によってステンレス鋼母材に悪影響を及ぼすことが懸念され、また伸線加工やコイリング時での強摩擦によって剥離やクラックなどの問題を起こしやすいなどの理由から、現在では実施されていない。
【0017】
またテンパーカラーで得られる色彩は、一般的に熱処理条件(温度)によって左右され、それに伴ってばね特性も影響を受けることとなり、一方、識別性の観点で見ると、ばね製品が比較的細い線材でなるものの場合には濃い色を付与しなければその判別がつきにくいという状況もあり、結局、希望する色彩とその為の熱処理条件との間で調整しにくく、汎用性に欠けるものである。
【0018】
このような課題は、ねじなどの他の加工成形品においても同様であるが、とりわけ前記ばね製品としての用途で早急な解決が求められている。
【0019】
そこで本発明は、ニッケルめっきによる潤滑性を利用しながらも、それ自体が黒系色を有するニッケル合金の被覆層を形成することにより、識別を容易とし前記課題を解決しうる被覆ステンレス鋼線の提供を目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ステンレス鋼の芯材とその表面に形成したニッケル被覆層を有し、かつ該ニッケル被覆層は、ニッケル、及び少なくともイオウと亜鉛とを含むニッケル合金で形成されすることによって、実質的に黒系色を呈する付色層を有することを特徴とする被覆ステンレス鋼線である。
【0021】
請求項2の発明は、前記ニッケル被覆層が、前記付色層、及びこの付色層と前記芯材との間にあってかつ前記付色層とは異なる組成のニッケル下地層からなる積層構造体であることを特徴としている。
【0022】
請求項3の発明は、引張り強さを1500MPa以上とするとともに、平均表面粗さを0.1〜1.0μm(Ra)とし、特にばねとして用いられることを特徴とする。
【0023】
請求項4の発明は、ステンレス鋼の芯材表面、又はその表面にニッケル下地層を形成してなるニッケル被覆線表面を、ニッケル、及び少なくともイオウと亜鉛とを含むニッケル合金めっきとなる液中に浸漬するとともに、電気めっきによって連続的にその表面に黒系色を呈する付色層を形成したのち、少なくとも1回以上の冷間加工を付与したことを特徴とする被覆ステンレス鋼線の製造方法である。
【0024】
請求項5の発明は、前記冷間加工は、加工率60%以上で行われる冷間伸線又は冷間圧延加工であることを特徴としている。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1において、本発明の被覆ステンレス鋼線1は、ステンレス鋼の芯材2とその表面に形成したニッケル被覆層3を有し、かつ該ニッケル被覆層3は、ニッケル、及び少なくともイオウと亜鉛とを含むニッケル合金で形成されすることによって、実質的に黒系色を呈する付色層4を有するとともに、本実施の形態では、前記ニッケル被覆層3が、前記付色層4と、その下層にあってかつ前記付色層4とは異なる組成のニッケル下地層5との積層構造体により形成している。
【0026】
前記芯材2は用途によって材質、特性を適宜選定でき、例えばばね用である場合には、JIS−G4314などが規定するSUS302,SUS304,SUS304N,SUS316,SUS631J1などの他、SUS201,SUS301,SUS310などのオーステナイト系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系,フェライト系などのステンレス鋼を用いることもでき、必要な機械的、化学的特性を併有するように調整される。
【0027】
また、芯材2はその形状を、丸線の他、例えば帯線、断面非円形の異形線などの自在形状とすることができ、また線径は、表面の前記付色層3を黒系色としていることから、線径0.5mm程度以下の細線とする場合においてより顕著な識別機能を発揮しうる。なお4mm程度以下、0.05mm以上とすることもできる。
【0028】
前記付色層4として、ニッケルを基本組成とし、これにイオウ及び亜鉛を少なくとも添加したニッケル合金とすることによって実質的に黒色を基調とする黒系色の色彩を付与する前記合金としている。
【0029】
このように、少なくともイオウや亜鉛を含むニッケル合金は、それら各元素の配合比率によって通常の金属色とは異なる色彩を付与することができ、例えばイオウ3〜6wt%、亜鉛10〜20wt%程度含むニッケル合金ではグレー色を呈し、また1〜3wt%のイオウ及び7〜10wt%の亜鉛を含むニッケル合金では黒色あるいは濃黒色を有するものとすることができる。
【0030】
さらに、表面の付色層4をこのような添加元素を含むニッケル合金のめっきによって形成した場合には、その層の硬度は純ニッケルのみの場合より高く、しかもその組織も柱状組織で起伏に富んだものとなることから、該付色層4の表面には微視的な微小凹凸を有する非平滑な状態にすることができ、この微小凹部内に必要となるより多くの潤滑剤を保持させることもできる。
【0031】
かかるめっき後の非平滑な表面状態は、その後の伸線加工によってもあまり大きく変わることはなく、図2が、例えばめっき後に60%加工率で伸線加工した線の表面状態を示しているように、平坦部の少ない非平滑な表面状態であることが理解できる。
【0032】
このように微小凹凸を有する表面状態とすることによって、例えば、ばね加工のように多段階の工程を経るものの場合には、潤滑剤の線表面での担持機能を高めることによって、それに伴い余剰潤滑剤がもたらしていた潤滑剤の剥落に伴うノズル目詰まりなどの課題をも解決でき、合わせて、成形加工時の工具界面との摩擦抵抗を減じる上で好ましいものと言える。
【0033】
被覆ステンレス鋼線1をばねの用途に用いる場合の必要強度として、例えば1500MPa以上の引張強さを備えることとし、またこのような高強度材をコイリング加工する場合には、線表面のJIS平均表面粗さ(Ra)として、0.1〜1μm(Ra)(より好ましくは0.5μm(Ra)以下とするのがよい。なお必要に応じて従来から多用されてきた種々添加剤を必要に応じて添加することもできる。
【0034】
前記めっきのためのめっき液の代表的な液組成として、例えば硫酸ニッケル60〜80g/L、硫酸ニッケルアンモニウム35〜50g/L,硫酸亜鉛20〜35g/L、チオシアン酸ナトリウム15〜25g/Lを含む硫酸ニッケル系の液組成に、さらに必要となる前記添加剤を加えることによって容易に形成することができる。
【0035】
このニッケル合金のめっき層は、前記するように一般的なニッケル(例えばスルファミン酸ニッケル)めっきに比べて靭性に劣り、柱状組織を持つものでもあることからやや柔軟性に劣る傾向があり、したがって、極端に厚く形成した場合にはめっき層の亀裂や剥離などという問題が起こりやすい。
【0036】
こうしたことを防ぐためには、該付色層のめっき厚さを例えば0.8μm以下にするのが好ましいが、あまり薄しすぎた場合には、ニッケル自体の絶対量が不足して潤滑性を損ね、また本来の目的である色彩が薄れて識別機能を低下させる原因となることから、例えば0.05〜0.5μm程度で形成するのがよい。
【0037】
本発明では、このようなめっき層を前記芯材2の表面に直接形成してもよいが、図1に示すように芯材2と前記付色層4との間にニッケル下地層5を介在させることによって、被覆ステンレス鋼線として必要となるニッケル絶対量の確保、ならびに識別機能を高め、同時に隣接する前記付色層4とニッケル下地層5との結合密着性を向上することが可能となる。
【0038】
その場合、ニッケル下地層5としては、これまでにも実施されてきた例えばワット浴や前記スルファミン酸ニッケルによるめっき方法が採用でき、これら方法により得られるめっき層は、前記ニッケル合金のようなイオウや亜鉛などを含まない異なる組成のものである。したがって、この場合のニッケル下地層5は、ステンレス鋼芯材との密着が強固で比較的厚く形成させることもでき、また前記付色層4との密着においても、両者は共に多くのニッケルを含むもの同士であることから、層剥離などの問題を防ぎ、全体として強固に一体化したものとすることができる。
【0039】
なお、このような積層構造における各被覆層厚さについては特に限定まではしないが、強加工用として用いる線の場合は、例えば0.2〜2μm程度の合計厚さとし、かつ下地層が前記付色層の厚さの2〜6倍程度となるようにするのがよい。
【0040】
したがって、このようなニッケル下地層5を併用することにより、伸線やコイリングなどの強加工の為に必要となるめっき厚さにできるなど、このニッケル下地層5の調整によって鋼線全体としての付色機能と潤滑機能の両方を備えたものとでき、しかも表面の付色層4はニッケルめっき自体に直接付色したものであることから、剥離や付色むらなどの欠陥が改善できる。
【0041】
なお、前記付色層4の色彩について、本発明では基本的に黒を基調とする色彩を有するものとしているが、その濃淡までは特に限定しない。すなわち、このような濃淡調整は、例えばめっき組成やその形成膜の厚さ、伸線加工の程度など種々要因によっても変化させることもでき、例えばチオ硫酸塩を多くすると黒褐色に、また亜鉛を増すと灰色になる。さらに必要ならば、最終熱処理においてテンパーカラーを同時に形成させることも可能であり、それらの相乗効果によって新たな色彩にすることもできる。
【0042】
さらに本発明では、このような構成の被覆ステンレス鋼線の表面に従来から行われてきた樹脂や各種水溶性無機塩などを主成分とする伸線前処理皮膜、あるいは補助潤滑剤としてのコーシン(商品名)や金属石鹸(ステアリン酸カルシウム)などによる潤滑層を形成させることも可能である。
【0043】
伸線前処理皮膜としては、例えば硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどナトリウムを主成分とする水溶液や、硫酸カリウムなどのカリウム塩を主成分とする水溶性、あるいはそれらの混合水溶性を用いるのがよいが、一方、これら皮膜を多量生成させることはコストアップになるばかりでなく、剥離目詰まりなどの原因となることから、好ましくは0.1〜1.5g/m2 とする。
【0044】
このような被覆ステンレス鋼線1は、種々な用途において採用できるものであり、例えば前記ばね用以外にも、ロープ用やその他成形用とし、あるいはねじなどの冷間圧造用などとしても応用できるものである。
【0045】
次に、ステンレス鋼の芯材2上に前記ニッケル被覆層3を形成する被覆ステンレス鋼線1の製造方法を説明する。
【0046】
芯材2としては、前記したように最終的に所定の特性となり得るステンレス鋼線を選択するとともに、予めその表面を洗浄活性化処理した上で、ニッケル下地層5を下地めっきする。
【0047】
ニッケル下地層5は、前記したようにスルファミン酸ニッケルなど従来から行われてきた方法を採用でき、所定厚さのニッケルめっきが形成される。
【0048】
つぎに、このめっき被覆線の表面に、ニッケル,及び少なくもイオウと亜鉛とを含むニッケル合金とすることで黒系色を呈する付色層4を形成し、さらに冷間加工によって処理するものとしている。
【0049】
付色層4については、前記ニッケル合金層を形成できるめっき液の液中に浸漬し、電気めっきによって行う。好ましいめっき条件としては、例えば0.5〜5A/dm2 程度の低い電流密度で行うのがよい。電流密度を5A/dm2 を越える高い電流で処理した場合は、得られるめっきの結晶が粗大化し剥離などの問題が起こりやすくなる。また、0.5A/dm2 未満では、非効率であり作業性に劣る。
【0050】
また冷間加工については、本発明では少なくとも1回以上行うこととしているが、その目的とするところは鋼線としての所定の特性を付与するとともに、めっき被覆層3自体の密着性や靭性を高めて剥離を予防する為に行うものである。例えば前記ばね用などのような引張強さを1500Mpaを達成するような場合は、加工率60%以上での伸線加工や圧延など冷間加工を施し、一方冷間圧造用とするものの場合にあっては、軽度のスキンパス加工を施し、密着性を高めるようにする。
【0051】
この場合の各めっき処理や冷間加工については、ニッケル下地層5のめっきと付色層4のめっきとを各々個別ラインで行っても、あるいは連続ストランドラインで同時処理してもよく、また下地層めっきの後にスキンパス程度の軽加工を行って密着性を高めた上で付色層を形成させてもよい。
【0052】
【実施例】
芯材として、2.4mmのSUS304ステンレス鋼線を用意し、これを一旦1080℃で光輝熱処理した軟質線を用いることとした。
【0053】
そしてこの軟質線は、下地めっきとして次の組成を有するめっき液(液温:室温)中に浸漬し、電流密度12A/dm2 の条件で電気めっきを行って、厚さ2.2μmの下地ニッケルめっき層を形成した。
【0054】
【表1】
Figure 0004585108
【0055】
つぎにこのメッキ線を原材料として、さらにその表面に黒色ニッケルめっきを行うこととし、そのめっき組成はつぎの表2によるものとした。
【0056】
【表2】
Figure 0004585108
【0057】
(伸線加工)
こうして得られた複合被覆の実施ワイヤーについて、水溶性無機塩を主成分とする硫酸ナトリウム(Na2SO4)水溶液(濃度0.5%,液温70℃)中に浸漬して潤滑皮膜を形成した後、乾燥を経て連続伸線機にセットした。
【0058】
伸線は連続冷間伸線により、使用ダイス8枚を用いて最終仕上げ寸法1.00mmまで行ったものであり、また補助潤滑剤として各ダイスにはステアリン酸カルシウム金属石鹸を調合している。
【0059】
この伸線工程において、伸線速度を100〜400m/min.に変化させ試験を行ったが、いずれのワイヤーも良好な伸線性を有するものであることが確認され、焼き付きやダイスマークなどのトラブルは発生なく、従来のニッケルめっきと大差ないものであった。
【0060】
また、得られた線材について残留潤滑剤の量と表面粗さを測定し、表3の結果が得られた。またその被覆線についての表面分析の結果を図3に示しており、この結果から見ると、芯材であるステンレス鋼線の成分とともに、多量のNi(83.62重量濃度%)、イオウ(3.19重量濃度%)及び亜鉛(9.31重量濃度%)が検出されており、このことから表面層は少なくともNiとイオウ及び亜鉛を含むニッケル合金であることが分かる。
【0061】
【表3】
Figure 0004585108
【0062】
(密着性の試験)
つぎに得られた線材の表面めっき層の密着性を確認する為、採取試験片について繰り返し曲げ疲労試験にセットし、繰り返し曲げに伴うめっき層剥離の有無を確認した。
試験は、(株)東京衡機製造所製の曲げ試験器による180゜曲げで行うこととし、曲げ角度90゜を1回としてその都度線の外観を拡大鏡で観察したものである。いずれの実施品とも、5回の曲げ回数に耐え、よく密着していることが確認された。
【0063】
(コイリング性)
つぎに、ばね成形性を評価する為、ばね外径10mm,総巻数8.5、自由長40mmのコイルばねにコイリングし、自由長のばらつきを測定した。
なお、この試験では比較材として、従来品であるスルファミン酸ニッケル単層(めっき厚さ0.93μm)のものと比較することとした。
【0064】
コイリング試験は、40個/minの条件により、各線材について200個のばねを製作し、その自由長の平均及び標準偏差を求め、その結果を次に示す。
【0065】
【表4】
Figure 0004585108
【0066】
上表の結果から、本発明によるばね用線はバラツキの少ない特性であり、しかもその実施品にはいずれも原材料状態で得られていた黒系色の色彩が確認できた。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の被覆ステンレス鋼線は、ステンレス鋼の芯線表面に黒色の色彩を有する黒色ニッケルめっきを形成したものであって、ニッケルめっきが有する優れた潤滑性と、それ自体に色彩を付与したことにより、剥離や欠落を防止し、同時に識別機能を備えたものとしたことから、利便性にすぐれたものである。
【0068】
またその場合、下地めっきとして同様にニッケルを主成分とするめっき層を介在させることによって、その後の加工に必要となる所定のめっき厚さを得るとともに、芯材と表面黒色めっき層との結合をより高めてめっき層剥離などの問題を解消する。
【0069】
一方、製造方法については、従来の樹脂コーティングのような別ラインにする必要がなく、通常のニッケルめっきと同様に処理できることから工程短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被覆ステンレス鋼線の一実施の形態を例示する断面図である。
【図2】被覆ステンレス鋼線の表面状態を示す図である。
【図3】被覆ステンレス鋼線の表面分析結果の一形態を例示する線図である。
【符号の説明】
1 被覆ステンレス鋼
2 芯材
3 ニッケル被覆層
4 付色層
5 ニッケル下地層

Claims (5)

  1. ステンレス鋼の芯材とその表面に形成したニッケル被覆層を有し、かつ該ニッケル被覆層は、ニッケル、及び少なくともイオウと亜鉛とを含むニッケル合金で形成されすることによって、実質的に黒系色を呈する付色層を有することを特徴とする被覆ステンレス鋼線。
  2. 前記ニッケル被覆層は、前記付色層、及びこの付色層と前記芯材との間にあってかつ前記付色層とは異なる組成のニッケル下地層からなる積層構造体であることを特徴とする請求項1記載の被覆ステンレス鋼線。
  3. 引張り強さを1500MPa以上とするとともに、平均表面粗さを0.1〜1.0μm(Ra)とし、特にばねとして用いられることを特徴とする請求項1、又は2に記載の被覆ステンレス鋼線。
  4. ステンレス鋼の芯材表面、又はその表面にニッケル下地層を形成してなるニッケル被覆線表面を、ニッケル、及び少なくともイオウと亜鉛とを含むニッケル合金めっきとなる液中に浸漬するとともに、電気めっきによって連続的にその表面に黒系色を呈する付色層を形成したのち、少なくとも1回以上の冷間加工を付与したことを特徴とする被覆ステンレス鋼線の製造方法。
  5. 前記冷間加工は、加工率60%以上で行われる冷間伸線又は冷間圧延加工である請求項4に記載の被覆ステンレス鋼線の製造方法。
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