JP4585060B2 - 流量制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体、主として液体の供給流量を切換可能な流量制御装置に関する。詳しくは、簡単な構造で流量制御が正確に行える流量制御装置に関する。
【0002】
【背景技術】
たとえば、人体に薬液を持続的に微量ずつ注入する薬液注入装置では、微細な内径で、かつ、導管機能と流量調節機能とを有する微細径チューブを用い、このチューブ内を薬液を通すことによって薬液を持続的に微量ずつ人体に注入する構造のものが知られている。
従来、導管機能と流量調節機能とを有する微細径チューブを用いた薬液注入装置では、流量を変更する場合、チューブの交換によって行っていたが、これでは流量変更を迅速に行えないという不具合があった。
【0003】
一方、薬液などの微量持続注入に適し、多段階の流量調整が可能な流量制御装置として、特開平5−84310号公報が知られている。
このものは、1個所の流入口および少なくとも3個所の流出口で外部と連通する円筒状空洞の弁室を有する本体と、前記弁室内に回転自在に収納される円柱状の弁部を有する栓体とを備え、弁部には、扇状に開口したスリットと、そのスリットの基部から半径方向反対側に延びる直管状の細孔とが形成され、その細孔をいずれかの流出口に接続させたときに扇状のスリットが流入口に接続するように構成したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の構造では、細孔をいずれかの流出口に一致させて流量切換を行う構造であるため、細孔と流出口との間にクリアランスがあると、そこから流体が漏れる虞がある。従って、弁室内径と弁部外径とを厳密に仕上げなければならないから、加工精度が厳しく、コストがかかるという課題がある。
これを軽減するために、細孔と流出口との間にシール部材を介在することが考えられるが、このようにすると、弁部の回転抵抗が増し、弁部の回転が困難になり、流量制御が容易にかつ正確に行えない虞がある。
【0005】
本発明の目的は、このような従来の欠点を解消し、加工や構造が簡単で、しかも、流量制御も容易にかつ正確に行える流量制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の流量制御装置は、本体と、この本体に並設された弾性を有する複数本の流量制御チューブと、これらの流量制御チューブと連通する1本の流体流路と、前記本体に対して摺動可能に設けられた1つの摺動部材と、この摺動部材の摺動位置に応じて前記流量制御チューブを選択的に押圧閉塞する弁機構とを備え、前記弁機構は、前記本体に前記各流量制御チューブに対応してかつ前記流量制御チューブを押圧する方向へ変位可能に設けられ前記流量制御チューブを押圧する可動側突起を有する複数の押圧片と、前記摺動部材に前記各押圧片に対応して設けられその摺動部材の摺動位置に応じて前記複数の押圧片を選択的に変位させて対応する流量制御チューブを押圧閉塞するカムとを含んで構成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、摺動部材を摺動させると、その摺動部材の摺動位置に応じて複数の流量制御チューブが選択的に押圧閉塞される。その結果、流体は、押圧閉塞されていない流量制御チューブを通って供給されるから、押圧閉塞する流量制御チューブを選択することにより流量制御ができる。
この場合、流量制御にあたっては、複数の流量制御チューブを選択的に押圧して閉塞するだけでよいから、加工や構造も簡単なうえ、流量制御も容易にかつ正確に行うことがる。
【0010】
本発明の流量制御装置において、前記本体には、前記各流量制御チューブを受ける固定側突起が設けられ、前記固定側突起は、前記流量制御チューブの長手方向に間隔を隔てて2個所設けられ、前記可動側突起は、前記2個所の固定側突起と対応する位置の外側に2個所設けられていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、押圧片は流量制御チューブの長手方向に間隔を隔てた2個所の可動側突起で流量制御チューブを押圧するから、押圧片を傾くことなく平行な姿勢のまま変位させることができる。しかも、その2個所で流量制御チューブを押圧閉塞するから、つまり、流量制御チューブの長手方向に間隔を隔てた2個所の固定側突起と可動側突起とで流量制御チューブを押圧閉塞するため、流量制御チューブの選択的な押圧閉塞をより確実に行うことができる。
【0012】
本発明の流量制御装置において、前記本体と摺動部材との間には、摺動部材が流量制御チューブを選択的に押圧閉塞する位置で、摺動部材を位置決めする位置決め機構が設けられていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、流量制御チューブを選択的に押圧閉塞する位置で、摺動部材を位置決めすることができるから、つまり、摺動部材を調整した位置に保持させることができるから、調整した流量を安定して継続させることができる。
【0014】
本発明の流量制御装置において、前記摺動部材には流量表示用指標が設けられ、前記本体には、前記摺動部材が位置決め機構によって位置決めされる各位置おいて、前記流量表示用指標に対応した位置に流量を表示する流量表示部が設けられていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、摺動部材が位置決め機構によって位置決めされる各位置おいて、摺動部材に設けられた流量表示用指標と一致する流量表示部の流量を読み取れば、現状の流量を把握することができるから、調整を簡単にかつ容易にできる。
【0016】
本発明の流量制御装置において、前記本体に対して抜差可能に設けられたロックキーを含み、このロックキーが本体から引き抜かれた状態では前記摺動部材の摺動をロックするとともに、ロックキーが本体に差し込まれた状態では前記摺動部材の摺動を許容するロック機構が設けられていることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、ロックキーを差し込み、この状態において、摺動部材を摺動させて流量制御を行ったのち、ロックキーを引き抜くと、摺動部材の摺動がロックされる。
従って、たとえば、人体に薬液を持続的に微量ずつ注入する薬液注入装置に適用した場合、医者や看護婦がロックキーを差し込み、この状態において、摺動部材を摺動させて流量制御を行ったのち、ロックキーを引き抜くと、患者自らは流量制御できないので、安全性を確保できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態は人体に薬液を注入する薬液注入装置に適用した例である。図1は斜視図、図2は断面図である。これらの図において、1は保護ケースで、プラスチックやガラスなどの透明な材料によって有底筒状に形成された筒体2と、ポリプロピレンなどの材料によって形成され前記筒体2の開口端に嵌合された蓋体5とから構成されている。
【0019】
前記筒体2は、内周部が円形を除く異形断面を有する形状、ここでは、断面形状が楕円形状(図3参照)の有底筒状に形成されているとともに、開口端側内周壁に突起3が、外周壁に目盛4がそれぞれ設けられている。目盛4としては、筒体2の上下方向中間位置から底部に向かって薬液収納量(後述するゴム様弾性膜11内の薬液収納量)をcc単位で表す「0」「20」「40」「60」の偶数目盛4Aと、これらの間の「10」「30」「50」を表す奇数目盛4Bとが設けられている。
【0020】
前記蓋体5には、その外周壁面に前記筒体2の突起3に係合する係合凹部6が形成されているとともに、上壁略中央位置に前記筒体2内に向かって延びる細長円筒状の液体導入管としての薬液導入管7および通気孔9がそれぞれ設けられている。薬液導入管7は、両端が開口され、かつ、周面に内外を連通させる複数条のスリット8を有する。通気孔9には、図4に示すように、保護ケース1の内外の気体(空気)を流通させることができ、かつ、薬液の流通を阻止する撥水通気フィルタ9Aが取り付けられている。撥水通気フィルタ9Aとしては、たとえば、合成繊維束を撥水処理した耐薬品性のものが好ましい。
【0021】
前記薬液導入管7には、有底チューブ状ゴム様弾性膜11が密着する状態で被嵌され、かつ、その開口端縁がピンチ12により保持されている。ここに、薬液導入管7の外径および長さは、ゴム様弾性膜11の収縮時の内径および長さに略等しい寸法に形成されている。ゴム様弾性膜11内には、最大60ccの薬液が収納できるようになっている。ちなみに、癌疼痛用の薬液の場合、通常1日に20cc程度の注入であるから、略3日分の薬液が収納できるようになっている。薬液の注入、収納に伴って、ゴム様弾性膜11は膨張されるが、その外周にはゴム様弾性膜11の膨張に伴って伸長するスプリング10が配置されている。スプリング10は、たとえば、線径0.6〜0.8mm程度の線材によって構成され、かつ、上端が前記蓋体5に係止されているとともに、直径が下方へ向かうに従って次第につぼまった螺旋状に巻かれ、さらに最下端がゴム様弾性膜11を介して薬液導入管7の先端に当接されている。
【0022】
前記ゴム様弾性膜11は、高靭性で伸縮性に富み、薬液などの作用によっても容易に損傷しない耐薬品性の材料から作られることが好ましく、特に、透明あるいは半透明の材料が好ましい。たとえば、市販のシリコンゴムやラテックスゴムなどが好適である。また、厚みは0.4mm程度である。ゴム様弾性膜11に薬液を収納したときの収縮力は、1000〜7000mm水柱の圧力が好ましい。通常、人体静脈は60mm水柱先後であるから、これ以上の圧力があれば患者に注入できる。ゴム様弾性膜11の収縮力が1000mm水柱以下では、コントロールが困難となり、7000mm水柱以上では、ゴム様弾性膜11内にシリンジから薬液を注入するのが人の力では困難になるからである。しかし、これに限定されるものではない。
【0023】
また、前記薬液導入管7の上部位置(蓋体5)には、前記ゴム様弾性膜11内に薬液を注入する液体流入孔としての流入孔19と、前記ゴム様弾性膜11内に収納された薬液を流出する液体流出孔としての流出孔18とが近接してV字状に設けられている。つまり、蓋体5には、流入孔19と、流出孔18と、薬液導入管7とが略Y字状にかつ互いに連通して設けられている。前記流入孔19内には、外部から薬液導入管7への流入を許容しかつ薬液導入管7から外部への流出を阻止する逆止弁13が設けられている。逆止弁13は、流入孔19内に埋設されかつ途中に弁座14を有する弁筒15と、この弁筒15内に進退自在に収納され弁座14を開閉するシリコンゴムなどからなる耐薬品性の弁棒16とを備える。なお、弁筒15の外端部には、キャップ17が着脱自在に装着できるようになっている。また、前記流出孔18の周囲には、三方弁20を着脱自在に係合させる螺旋溝18Aが形成されている。三方弁20は、3つの切換口21A,21B,21Cを有する弁体22と、流路を切り換えるコック23とを含んで構成されている。
【0024】
前記三方弁20の切換口21Cには、導管機構および流量調節機能を有する液体供給チューブ30の一端に設けられたコネクタ25が着脱可能に接続されている。コネクタ25の内部には、薬液内の塵埃などを除去するフィルタ26が収納されている。チューブ30の他端には流量制御装置40が接続され、その流量制御装置40には単一の流路を内部に有するチューブ27を介してコネクタ25と同様なコネクタ28が固着されている。コネクタ28の先端には人体装着器具としての注射針29が着脱可能に取り付けられている。従って、液体供給チューブ30、流量制御装置40およびチューブ27を介して、ゴム様弾性膜11内と人体装着器具としての注射針29とが連結されている。
【0025】
液体供給チューブ30に用いられるチューブは、所定長さ寸法に形成され、かつ、その長手方向に沿って互いに平行な複数の流路を内部に有する。すなわち、図5に示すように、所定長さ寸法に形成され、かつ、通液量の異なる流路31A,32A,33A,34Aを有する熱可塑性樹脂製の複数本(ここでは、4本)のチューブ素子31,32,33,34を束ね、その外周を被覆材35で一体的に被覆した構造である。
【0026】
ここで、各チューブ素子31〜34は、単層チューブでもよく、補強、取扱いを考慮して被覆したチューブでもよい。また、チューブ素子31〜34の材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ABS、ポリアミド樹脂、ポリスチレン(PS)などが使用できるが、透明のものが好ましい。また、被覆するときの被覆材は、柔軟性のあるものが好ましく、熱可塑性樹脂エラストマーを用いることができ、ポリオレフィン(LDPE,LLDPE)系エラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、軟質塩化ビニル樹脂、EVAなどが使用できる。
【0027】
また、チューブ素子31〜34の断面開孔形状は、従来の流量制御手段のように円形の開孔ではなく、異形開孔とされ、そのいくつかの例が図6に示されている。
図6において、(A)に示されるチューブ素子31〜34の開孔36Aは、円形の基礎孔の内壁からその中心に向かって異なる2種の樹枝状の突起が交互に3つづつ突出した形状とされている。
(B)に示されるチューブ素子31〜34の開孔36Bは、チューブ素子31〜34の中心から半径方向に120度等配位置で略矩形の溝が延長され、全体として略Y字状とされ、かつ、その内壁に凹凸が形成された形状とされている。
(C)に示されるチューブ素子31〜34の開孔36Cは、(B)の内壁から凹凸を除き、かつ、各矩形の半径方向の長さが短くなった形状とされている。
(D)に示されるチューブ素子31〜34の開孔36Dは、円形の基礎孔の内壁からその中心に向かって細長い三角形状及び円形の突起が交互に3つづつ突出された形状とされている。
(E)に示されるチューブ素子31〜34の開孔36Eの形状は、(A)の形状における樹枝状突起の形状を少し変形させるとともに、基礎孔の内壁に内歯歯車状の凹凸を設けた形状である。
このようなチューブ素子31〜34の異形開孔は、その開孔内周縁寸法/断面開孔面積の平方根で示される異形度の値が7以上で異形効果も顕著になり、上記各開孔36A〜36Eはいずれも異形度が7以上と大きくされている。
【0028】
ちなみに、以上のような微細な異形開孔形状のチューブ素子31〜34の製造方法は、たとえば、特開昭51-21927号に記載のようなダイスを用いて成形できる。すなわち、チューブ素子31〜34の外径に略等しい範囲内に多数の樹脂導入孔を有するとともに、開孔36A〜36Eに相当する部分には孔を形成しないモノフィラメント用ダイスを用い、この導入孔から溶融樹脂モノフィラメントを押し出し、この多数の接近したモノフィラメントを融着させ、微細な異形開孔形状のチューブ素子31〜34を得るものであるが、チューブ素子31〜34の製法は、これに特定されるものではない。
【0029】
前記流量制御装置40は、図7に示すように、互いに係合する下ケース42および上ケース43からなる長方形箱状の本体41と、この本体41に並設されかつ前記各チューブ素子31〜34と接続された弾性を有する複数本の流量制御チューブ51〜54と、これらの流量制御チューブ51〜54の先端に連通部44を介して接続されかつ前記チューブ27と接続された1本の流体流路としての単一チューブ55と、前記本体41に対して摺動可能に設けられた摺動部材としてのスライダ56と、このスライダ56を一定ピッチ間隔で位置決めする位置決め機構61と、この位置決め機構61によって位置決めされたスライダ56の摺動位置に応じて前記流量制御チューブ51〜54を選択的に押圧閉塞する弁機構71と、前記スライダ56の摺動をロックするロック機構91とから構成されている。
【0030】
前記スライダ56は、スライド板57と、このスライド板57の両側に一体的に設けられ前記本体41の両側を摺動可能に挟持する枠状の挟持片58とを備える。
前記位置決め機構61は、前記本体41(上ケース43)の両側に一定ピッチ間隔で形成された半弧状の複数の凹溝62と、前記スライダ56の両側の挟持片58に一体的に設けられた板ばね63と、この板ばね63の先端に設けられ前記凹溝62に弾性的に係合する係合凸部64とから構成されている。
【0031】
前記弁機構71は、前記本体41に設けられ前記各流量制御チューブ51〜54を受ける固定側突起72と、前記本体41に前記各流量制御チューブ51〜54に対応してかつ前記流量制御チューブ51〜54を前記固定側突起72へ向かって押圧する方向へ変位可能に設けられた複数の押圧片73〜76と、前記スライダ56の裏面に設けられそのスライダ56の摺動位置に応じて前記複数の押圧片73〜76を選択的に変位させて対応する流量制御チューブ51〜54を押圧閉塞するカム81とを含んで構成されている。
【0032】
前記固定側突起72は、前記流量制御チューブ51〜54の長手方向に間隔を隔てて2個所設けられている。、
前記各押圧片73〜76は、図8にも示すように、片部材77と、この片部材77の下面(前記流量制御チューブ51〜54を挟んで前記固定側突起72とは反対側)でかつ固定側突起72とは流量制御チューブ51〜54の長手方向へずれた位置(外側へずれた2個所)に設けられた可動側突起78と、片部材77の上面に突設されたピン79とを有する。ピン79は、本体41(上ケース43)に開けられた孔45を通って本体41の上面から突出されている。
【0033】
前記カム81は、前記スライダ56の裏面でかつ前記各押圧片73〜76のピン79と対応する位置にスライダ56のスライド方向に沿って設けられた4本のカム溝82〜85を備える。各カム溝82〜85は、図9に示すように、スライダ56が位置決め機構61によって位置決めされる各位置決め位置1〜13において、前記各押圧片73〜76のピン79を本体41の上面から突出した状態に保つ溝86を選択的に備える。
たとえば、スライダ56が位置決め位置1で位置決めされたときには、カム溝82にのみピン79に対応して溝86が形成されている。このとき、流量制御チューブ51〜54のの通液量を、0.5ml/hr、1.0ml/hr、2.0ml/hr、3.0ml/hrとすると、流量は0.5ml/hrである。また、スライダ56が位置決め位置2で位置決めされたときには、カム溝83にのみピン79に対応して溝86が形成されている。この場合、流量は1.0ml/hrである。さらに、スライダ56が位置決め位置3で位置決めされたときには、カム溝82およびカム溝83にピン79に対応して溝86がそれぞれ形成されている。この場合、流量は1.5ml/hrである。
このようにして、スライダ56を位置決め位置3〜位置13に変えていくと、流量が2.0ml/hr、2.5l/hr、3.0ml/hr、3.5ml/hr、4.0ml/hr、4.5ml/hr、5.0ml/hr、5.5ml/hr、6.0ml/hr、6.5ml/hrのように、0.5ml/hr間隔で変化されるようになっている。
【0034】
前記ロック機構91は、図10に詳細を示すように、前記本体41のキー挿入孔46に対して抜差可能に設けられたロックキー92と、本体41内に収納されたロック片93と、このロック片93を常時上方へ付勢する板状の付勢手段94とを備える。ロック片93には、その上部に本体41(上ケース43)に開けられた孔45を通って本体41の上面から突出しスライダ56の裏面に一定ピッチ間隔で形成されたロック溝97に係合するピン95が形成されているとともに、下部に前記ロックキー92が本体41内に挿入された際、そのロックキー92の先端によって下方へ押圧されかつ係合する押圧係合部96が形成されている。従って、ロックキー92が本体41から引き抜かれた状態では前記スライダ56の摺動をロックするとともに、ロックキー92が本体41に差し込まれた状態では前記スライダ56の摺動を許容することができるようになっている。
【0035】
なお、キー挿入孔46に対してロックキー92が上下逆に差し込まれたとき、キー挿入孔46に対してロックキー92が差込できないように、キー挿入孔46とロックキー92との断面形状が上下非対称に形成されている。たとえば、図11に示すように、キー挿入孔46とロックキー92との断面形状が、長方形の下辺が凸円弧状に形成されている。
また、スライダ56の摺動位置によって、流量が目視で識別できるようになっている。具体的には、スライダ56には流量表示用指標としての窓101が設けられ、本体41(上ケース43)には、スライダ56が位置決め機構61によって位置決めされる各位置決め位置おいて、前記窓101に対応した位置に流量を表示する流量表示部102が設けられている。
【0036】
次に、本実施形態の使用法につき説明する。
ゴム様弾性膜11内に薬液を収納するにあたり、図12に示されるように、キャップ17を逆止弁13の弁筒15から外し、薬液を収容したシリンジ200の先端を逆止弁13の弁筒15内に挿入する。この状態でシリンジ200内の薬液を押し出すと、薬液は逆止弁13を通ってゴム様弾性膜11を膨らませながらゴム様弾性膜11内に収納される。このとき、ゴム様弾性膜11の膨張に伴ってスプリング10も伸長するから、そのスプリング10の先端位置と対応する目盛4の値からゴム様弾性膜11内に収納された薬液の量を把握できる。
【0037】
やがて、ゴム様弾性膜11は保護ケース1の筒体2の内周壁に接する。このとき、図13に示すように、保護ケース1の断面形状は楕円形状に形成されているから、ゴム様弾性膜11の保護ケース1との接触面積を円形のものと比べ少なくできる。また、保護ケース1内での空気の流れを確保できるから、筒体2内の空気はゴム様弾性膜11の膨張に伴い、撥水通気フィルタ9Aを通って外部へ放出される。従って、薬液を持続的に微量ずつ正確に供給できるとともに、通気孔9の取付位置も制限されることがない。薬液の収納後、シリンジ200の先端を逆止弁13から引き抜くと、逆止弁13の弁座14は閉じられる。従って、ゴム様弾性膜11内の薬液が外部に漏出することがない。
【0038】
次に、チューブ27の先端のコネクタ28に注射針29を取付け、この注射針29を人体に装着した後、三方弁20のコック23を開放すれば、液体供給チューブ30、流量制御装置40およびチューブ27を通って微少流量づつ順次薬液が人体内に注入される。ちなみに、本発明の微少流量とは、0.8ml/hr程度の使用が多いが、異形開孔形状、長さおよび薬液粘度により任意に特定でき、この流量に限定するものではない。
【0039】
ここで、流量を変更するには、流量制御装置40のスライダ56を摺動(スライド)させて行う。
たとえば、スライダ56を位置決め位置1にスライドさせると、流量が0.5ml/hrに切り換えられる。また、スライダ56を位置決め位置2にスライドさせると、流量が1.0ml/hrに切り換えられる。さらに、スライダ56を位置決め位置3にスライドさせると、流量が1.5ml/hrに切り換えられる。
【0040】
このようにして、必要に応じて流量を変更しながら、ゴム様弾性膜11内の薬液が全て人体内に注入されたら、前述と同様にしてゴム様弾性膜11内に薬液を収納し、前述の動作を繰り返す。なお、注射針29を人体に装着する前にゴム様弾性膜11内のエア抜きを行うには、保護ケース1を蓋体5側を上にして垂直に立て、コック23を開放し、針先から薬液が流出するまで放置すればよい。
【0041】
上述した実施形態によれば、スライダ56をスライドさせると、そのスライダ56の摺動位置に応じて複数の流量制御チューブ51〜54が選択的に押圧閉塞される結果、流体は押圧閉塞されていない流量制御チューブ51〜54を通って供給されるから、押圧閉塞する流量制御チューブ51〜54を選択することにより流量制御ができる。従って、流量制御にあたっては、複数の流量制御チューブ51〜54を選択的に押圧して閉塞するだけでよいから、加工や構造が簡単なうえ、流量制御も容易にかつ正確に行うことができる。
【0042】
また、弁機構71は、本体41に設けられ固定側突起72と、本体41に流量制御チューブ51〜54に対応してかつ流量制御チューブ51〜54を固定側突起72へ向かって押圧する方向へ変位可能に設けられ固定側突起72に対して流量制御チューブ51〜54の長手方向へずれた位置に可動側突起78を有する複数の押圧片73〜76と、スライダ56の摺動位置に応じて複数の押圧片73〜76を選択的に変位させて対応する流量制御チューブ51〜54を押圧閉塞するカム81とを含んで構成されているから、つまり、固定側突起72と可動側突起78とが流量制御チューブ51〜54の長手方向へずれて配置されているから、カム81によって押圧片73〜76が流量制御チューブ51〜54を押圧する方向へ変位すると、固定側突起72と可動側突起78とで流量制御チューブ51〜54を剪断するように挟み込んで流量制御チューブ51〜54を閉塞することになるから、固定側突起72と可動側突起78とが対応した位置でこれらの間に流量制御チューブを挟み込む構造に比べ、軽い力で流量制御チューブ51〜54を確実に押圧閉塞させることができる。
【0043】
しかも、押圧片73〜76は流量制御チューブ51〜54の長手方向に間隔を隔てた2個所の可動側突起78で流量制御チューブ51〜54を押圧するから、押圧片73〜76を傾くことなく平行な姿勢のまま変位させることができるとともに、その2個所で流量制御チューブ51〜54を押圧閉塞するから、つまり、流量制御チューブ51〜54の長手方向に間隔を隔てた2個所の固定側突起72と可動側突起78とで流量制御チューブ51〜54を押圧閉塞するため、流量制御チューブ51〜54の選択的な押圧閉塞をより確実に行うことができる。
【0044】
また、スライダ56が流量制御チューブ51〜54を選択的に押圧閉塞する位置で、スライダ56を位置決めする位置決め機構61が設けられているから、つまり、スライダ56を調整した位置に保持させることができるから、調整した流量を安定して継続させることができる。
【0045】
また、スライダ56には流量表示用の窓101が設けられ、本体41には、スライダ56が位置決め機構61によって位置決めされる各位置決め位置おいて、流量表示用の窓101に対応した位置に流量を表示する流量表示部102が設けられているから、スライダ56が位置決め機構61によって位置決めされる各位置おいて、流量表示用の窓101と一致する流量表示部102の流量を読み取れば、現状の流量を把握することができるから、調整を簡単にかつ容易にできる。
【0046】
また、本体41に対してロックキー92を差し込み、この状態において、スライダ56を摺動させて流量制御を行ったのち、ロックキー92を引き抜くと、スライダ56の摺動がロックされる。従って、たとえば、人体に薬液を持続的に微量ずつ注入する薬液注入装置に適用した場合、医者や看護婦がロックキー92を差し込み、この状態において、スライダ56を摺動させて流量制御を行ったのち、ロックキー92を引き抜くと、患者自らは流量制御できないので、安全性を確保できる。
【0047】
また、流量制御手段として、従来の円形開孔を有する短寸のチューブと異なり、異形開孔36A〜36Eを有する長尺の熱可塑性樹脂製のチューブ素子31〜34を内部に有するチューブ30としたから、開孔形状、チューブ長さを任意に設定することで精密な流量制御ができる。導管として従来の円形開孔チューブを用いるときは、その内径寸法よりも大きなゴミが浮遊した薬液または凝固しやすい薬液では、それらが入口を塞ぎ薬液は全く流れなくなるのに対し、本実施形態では、特定された異形開孔形状のチューブ素子31〜34を有するチューブ30を用いているので、異形開孔36A〜36Eの長辺を全てゴミで塞ぐことがない。従って、薬液にゴミなどの異物、凝固物があっても、従来の円形開孔チューブよりも開孔36A〜36Eの閉塞を有効に防止できる。
【0048】
さらに、導管が従来の円形開孔チューブでは横になった患者の体重によりチューブが折れ曲がり、塞がったりしたが、本実施形態の異形開孔チューブ素子31〜34を用いると曲げにも強く、体重がかかっても閉塞することがなく、安全である。安全を重視する医療分野では、このような塞がらない薬液注入装置が重要である。
しかも、本実施形態ではチューブ素子31〜34により導管機能と流量調整機能と兼ねた構造であるから、従来の導管チューブと流量制御手段を組み合わせたものと較べ構造が簡単である。
【0049】
また、従来のステンレス細管、ガラス細管を導管機能と流量調整機能とを兼ねて使用すると、割れたり、折れたり、細すぎて取扱いにくいなど問題が多かったが、本実施形態では熱可塑性樹脂からなるチューブ30に限定したので、特定形状の異形の開孔36A〜36Eに生産するのも容易で、取扱いやすく、微量流量調節機能と導管機能とを兼ねることもできた。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良、変形などは、本発明に含まれる。
単一の液体供給チューブ30の内部に形成する流路の本数については、上記実施形態で述べた4本に限らす、少なくとも2本以上であればよい。
たとえば、2本の場合、図14(A)のように、内部に流路31A,32Aを有する2本のチューブ素子31,32を束ねて、その外側を被覆材35で断面円形に被覆してもよく、あるいは、図14(B)に示すように、内部に流路31A,32Aを有する2本のチューブ素子31,32を束ねて、その外側を被覆材35で断面長円形に被覆してもよい。この際、各流路31A,32Aの通液量は、互いに同じでもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、複数本のチューブ素子31〜34を束ね、その外側を被覆材35で一体的に被覆して単一のチューブとしたが、チューブの成形時に細径の芯材を所定位置にセットして、その外側に樹脂を充填し、硬化後に心材を抜き取って、内部に複数の流路のみを有するチューブを一体的に構成してもよい。
【0052】
また、弁機構71については、上述した実施形態の構造に限らず、他の構造でもよい。たとえば、図15に示すように、本体41内に各流量制御チューブ51〜54に対応して複数の押圧レバー111を回動可能に設け、この各押圧レバー111の一端が流量制御チューブ51〜54を押圧する方向へ押圧レバー111を付勢するばね112を設け、スライダ56の下面に溝113を選択的に設け、スライダ56の溝113が押圧レバー111の他端に位置したとき、押圧レバー111の一端が流量制御チューブ51〜54を押圧する構造である。このような構造でも、上記実施形態と略同様な効果が期待できる。
【0053】
また、前記実施形態の流量制御装置40では、本体41に対してスライダ56が直線的に往復スライドする構造であったが、本体に対してスライダ56が回転する構造とし、そのスライダ56の所定角度位置に応じて流量制御チューブ51〜54を選択的に押圧するように弁機構を構成してもよい。つまり、本体41に流量制御チューブ51〜54を同心円状に並設するとともに、それらの流量制御チューブ51〜54を挟んで弁機構71を設けるようにすればよい。
【0054】
また、前記実施形態では、流量制御装置40の上流側にチューブ素子31〜34を有する液体供給チューブ30を接続し、下流側に1本のチューブ27を接続したが、これとは逆に接続してもよい。つまり、流量制御装置40の上流側に1本のチューブ27を接続し、下流側にチューブ素子31〜34を有する液体供給チューブ30を接続してもよい。このようにしても、前記実施形態を同様に流量制御が可能である。
【0055】
また、本発明は、静脈用、泌尿用、産婦人科用など広く医療用薬液注入装置として利用できるほか、動物、魚などの生体への薬液、栄養剤の注入などにも利用できる。
このほか、植物に水、栄養剤(液)、薬液(防虫液)などを微量ずつ供給するためにも利用できる。たとえば、野菜や花木の栽培にあたって、水や栄養剤(液)などを微量ずつ供給するには、それらの周囲の地中にチューブ30の先端、あるいは、チューブ30の先端に取り付けた針を埋設しておくだけでよい。この場合、チューブ30が踏まれて曲がってもチューブ30の開孔が塞がれることがないから、液の供給が停止されることがない。また、樹木に対して薬液を注入する場合には、保護ケース1を適宜な手段により樹木に吊り下げるとともに、チューブ30の先端の針を樹木に差し込めばよい。この場合、吊り下げた保護ケース1から下向きに液を流出させる場合に限らず、保護ケース1よりも上方位置に薬液を注入することもできる。
さらに、魚用水槽に抗生物質などの薬液、餌(液体)や水草用栄養剤(液)などを微量ずつ供給するためなどにも利用できる。この場合には、チューブ30の先端に針などを付けず、その先端を水槽内に位置させるだけでよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明の流量制御装置によれば、加工や構造が簡単で、しかも、流量制御も容易にかつ正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る流量制御装置を適用した液体供給装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】同上実施形態の断面図である。
【図3】同上実施形態の保護ケースの断面図である。
【図4】同上実施形態の撥水通気フィルタの断面図である。
【図5】同上実施形態の装置に用いられるチューブの断面を示す断面図である。
【図6】同上実施形態の装置に用いられるチューブ素子の異なる断面形状を示す断面図である。
【図7】同上実施形態の装置に用いられる流量制御装置を示す分解斜視図である。
【図8】同上実施形態の装置に用いられる流量制御装置を示す断面図である。
【図9】同上実施形態の装置に用いられる流量制御装置のカム溝を説明するための図である。
【図10】同上実施形態の装置に用いられる流量制御装置のロック機構を示す断面図である。
【図11】同上実施形態の装置に用いられる流量制御装置のキー挿入孔およびロックキーの断面を示す図である。
【図12】同上実施形態の装置に薬液を注入するときの状態を示す図である。
【図13】同上実施形態の装置に薬液を注入したときの保護ケースとゴム様弾性膜との関係を示す断面図である。
【図14】同上実施形態の装置に用いられるチューブの他の例を示す断面図である。
【図15】同上実施形態の装置に用いられる流量制御装置の弁機構の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
40 流量制御装置
41 本体
51〜54 流量制御チューブ
55 単一チューブ(流体流路)
56 スライダ
61 位置決め機構
71 弁機構
72 固定側突起
73〜76 押圧片
78 可動側突起
81 カム
91 ロック機構
92 ロックキー
101 流量表示用窓(流量表示用指標)
102 流量表示部
Claims (5)
- 本体と、この本体に並設された弾性を有する複数本の流量制御チューブと、これらの流量制御チューブと連通する1本の流体流路と、前記本体に対して摺動可能に設けられた1つの摺動部材と、この摺動部材の摺動位置に応じて前記流量制御チューブを選択的に押圧閉塞する弁機構とを備え、
前記弁機構は、前記本体に前記各流量制御チューブに対応してかつ前記流量制御チューブを押圧する方向へ変位可能に設けられ前記流量制御チューブを押圧する可動側突起を有する複数の押圧片と、前記摺動部材に前記各押圧片に対応して設けられその摺動部材の摺動位置に応じて前記複数の押圧片を選択的に変位させて対応する流量制御チューブを押圧閉塞するカムとを含んで構成されていることを特徴とする流量制御装置。 - 請求項1に記載の流量制御装置において、
前記本体には、前記各流量制御チューブを受ける固定側突起が設けられ、
前記固定側突起は、前記流量制御チューブの長手方向に間隔を隔てて2個所設けられ、
前記可動側突起は、前記2個所の固定側突起と対応する位置の外側に2個所設けられていることを特徴とする流量制御装置。 - 請求項1または請求項2に記載の流量制御装置において、
前記本体と摺動部材との間には、摺動部材が流量制御チューブを選択的に押圧閉塞する位置で、摺動部材を位置決めする位置決め機構が設けられていることを特徴とする流量制御装置。 - 請求項3に記載の流量制御装置において、
前記摺動部材には流量表示用指標が設けられ、
前記本体には、前記摺動部材が位置決め機構によって位置決めされる各位置おいて、前記流量表示用指標に対応した位置に流量を表示する流量表示部が設けられていることを特徴とする流量制御装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の流量制御装置において、
前記本体に対して抜差可能に設けられたロックキーを含み、このロックキーが本体から引き抜かれた状態では前記摺動部材の摺動をロックするとともに、ロックキーが本体に差し込まれた状態では前記摺動部材の摺動を許容するロック機構が設けられていることを特徴とする流量制御装置。
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