スイッチング電源装置は、近年制御系の電子化が進み、軽量、小型化され、電子・電気機器の電源として広く用いられている。これらのスイッチング電源装置では、異常が発生した場合に、回路素子が破壊されたり、出火を防止するために回路を保護する保護回路が接続されている。例えば、過負荷やその他の要因により電源装置の温度が上昇し、異常温度に至った場合は、電源装置の動作を停止するように構成されている(特許文献1)。
図2は、従来のスイッチング電源装置の一例であるスイッチング電源装置100を示すブロック図である。スイッチング電源装置100は、入力電源回路9と、起動回路2と、発振回路3と、駆動回路4と、スイッチング素子Q2,Q3と、スイッチングトランスT1と、定電圧回路5と、温度保護回路6とにより構成されている。
入力電源回路9は、商用交流電源に接続するプラグP1と、ヒューズF1と、電源スイッチSW1と、電源から入力される100Vの交流を整流するダイオードD1と、整流後の電圧を平滑する電解コンデンサC1、C2により構成されている。電源スイッチSW1は、スイッチング電源装置100をオンオフするスイッチであり、ヒューズF1は、交流電源に異常な電流が流れた場合に切断されるものである。
ダイオードD1は、入力される商用交流(例えば、電圧100V)を直接整流するもので、整流後の電圧は電解コンデンサC1,C2により平滑される。電源電圧が交流100Vの場合には、C1,C2の電圧は、それぞれ約140Vになる。なお、電解コンデンサC2の電圧をVC2とする。
起動回路2は、抵抗R1,R2とツェナーダイオードZD1とトランジスタQ1とダイオードD2とにより構成されている。抵抗R1とツェナーダイオードZD1とは直列に接続され、抵抗R1の一端は、電解コンデンサC2のプラス電極に接続され、ツェナーダイオードZD1の一端は、電解コンデンサC2のマイナス電極に接続されている。抵抗R1とツェナーダイオードZD1とが接続されている接続点には、トランジスタQ1のベースが接続され、トランジスタQ1のコレクタと電解コンデンサC2のプラス電極との間に抵抗R2が接続され、トランジスタQ1のエミッタには、ダイオードD2が接続されている。
電源スイッチSW1が投入されると、直列に接続されている抵抗R1とツェナーダイオードZD1とに電圧VC2が印加されて電流が流れ、ツェナーダイオードZD1の両端に電圧VZD1が発生する。これにより、トランジスタQ1がシリーズレギュレータとして作動し、抵抗R2に電流IR2が流れ、トランジスタQ1のエミッタに、(VZD1−VBE(約0.6V))の電圧が発生する。なお、VBEは、ベース−エミッタ間電圧である。この電流IR2がダイオードD2を通じて発振回路3に供給される。このときトランジスタQ1のコレクタに接続された抵抗R2の両端には、電圧VR2が発生する。
発振回路3は、所定の周波数で発振するように構成されたもので、起動回路2のダイオードD2または、定電圧回路5のダイオードD3から供給される電力を直流(DC)電源として発振する。また、温度保護回路6からダイオードD6が接続され、このダイオードD6がトランジスタQ6を介して接地されることにより発振を停止するように構成されている。
発振回路3の発振出力は、駆動回路4に供給される。この駆動回路4は、発振回路3と同様にダイオードD2またはダイオードD3を通して供給される電力をDC電源とし、発振回路3より供給される発振信号に応じて、スイッチング素子Q2,Q3をそれぞれ駆動する位相が異なる2つの駆動信号を発生する。
スイッチング素子Q2,Q3は、パワーMOS−FET(MOS型電界効果トランジスタ)により構成され、スイッチング素子Q2のゲート電極が、駆動回路4に接続され、ソース電極が入力電源回路9の電解コンデンサC2のマイナス電極に、ドレイン電極がスイッチング素子Q3のソース電極とスイッチングトランスT1の一次コイルP1の一端に接続されている。
スイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q2と同様にゲート電極が、駆動回路4の他方の出力に接続され、ソース電極は、スイッチング素子Q2のドレイン電極およびスイッチングトランスT1の一次コイルP1の一端に接続され、ドレイン電極は、入力電源回路9の電解コンデンサC1のプラス電極に接続されている。
スイッチングトランスT1には、一次コイルP1と二次コイルS1と三次コイルP2とが形成されている。一次コイルP1の一端は、スイッチング素子Q2のドレイン電極とスイッチング素子Q3のソースとに接続され、他端は、入力電源回路9の電解コンデンサC1のマイナス電極に接続されている。二次コイルS1は、このスイッチング電源100の電源出力であり、整流されて機器に送電される。三次コイルP2は、発振回路3および駆動回路4の電源を形成するためのコイルである。
定電圧回路5は、ダイオードD3,D4とシリーズレギュレータIC1と電解コンデンサC3,C4,C5とにより構成されている。ダイオードD4のアノードは、三次コイルP2の一端に接続され、カソードは、シリーズレギュレータIC1の入力端子に接続されている。シリーズレギュレータIC1は、いわゆる3端子レギュレータとも呼ばれるもので、その入力端子が、ダイオードD4のカソードに、出力端子がダイオードD3のアノードに、グランド端子が三次コイルの他端にそれぞれ接続されている。ダイオードD3のカソードは、起動回路2のダイオードD2のカソードと接続され、発振回路3および駆動回路4の電源に接続されている。
電解コンデンサC3のプラス電極は、ダイオードD3のカソードと、電解コンデンサC4のプラス電極は、シリーズレギュレータIC1の出力端子に、電解コンデンサC5のプラス電極は、シリーズレギュレータIC1の入力端子とそれぞれ接続され、これらのマイナス電極はシリーズレギュレータIC1のグランド端子と接続されている。したがって、三次コイルP2の出力は整流されて定電圧化される。
ダイオードD3のカソードは、起動回路2の出力であるダイオードD2のカソードと接続され、オア回路を形成している。定電圧回路5により定電圧化された電圧は、起動回路2から供給される電圧より高く設定されているので、定電圧回路5からの電圧の供給が開始されると、起動回路2からの電圧の供給は、停止される。一方、起動時や、何らかの異常により、定電圧回路5から供給される電力の電圧が、起動回路2から供給される電圧より低くなると、起動回路2から電力が供給されることになる。
以上のようにして、発振回路3が起動されると、以後異常がなければ安定して発振回路3により発振が行われ、駆動回路4がスイッチング素子Q2,Q3をスイッチングしてスイッチングトランスT1により二次コイルS2により電源供給が行われる。
しかしながら、スイッチング電源装置100は、内部にスイッチング素子Q2,Q3などの発熱部品を多く有しており、過負荷やその他の要因により温度が異常に上昇する場合がある。このような異常な場合には、電源装置の動作を停止するように温度保護回路6が備えられている。
温度保護回路6は、抵抗R20,R21,R11と、サーミスタTH20と、トランジスタQ6と、ダイオードD5,D6とにより構成されている。スイッチング素子Q2,Q3は、図示しない放熱器に取り付けられ、その放熱器にサーミスタTH20が取り付けられている。したがって、スイッチング素子Q2,Q3の温度が高くなると、サーミスタTH20の温度も高くなる。
このサーミスタTH20は、抵抗R20と直列に電解コンデンサC2のプラス電極とマイナス電極との間に接続され、サーミスタTH20の両端は、抵抗R21とR11が直列に接続され、抵抗R21とR11の接続点には、トランジスタQ6のベースが接続されている。トランジスタQ6のエミッタは、電解コンデンサC2のマイナス電極に接続され、コレクタは、ダイオードD5,D6のカソードが接続されている。ダイオードD5のアノードは、起動回路2のトランジスタQ1のベースに接続され、ダイオードD6のアノードは、発振回路3に接続されている。
サーミスタTH20は、温度の上昇に伴って、抵抗値が高くなる正特性サーミスタであって、スイッチング素子Q2,Q3がなんらかの原因で温度が上昇し、異常な温度になると、サーミスタTH20の抵抗値が高くなる。サーミスタTH20の抵抗値が上昇すると、トランジスタQ6のベースの電位が上昇してトランジスタQ6は、オフ状態からオン状態に変化する。
したがって、ダイオードD5を介して起動回路2のトランジスタQ1のベース電位が下がり起動回路2から発振回路3および駆動回路4への電力供給が行われなくなる。同時にダイオードD6を介して、発振回路3が強制的に停止され、スイッチングが行われなくなり電源の供給が停止される。
特開2003−88100号公報。
上記したスイッチング電源装置では、装置内の温度が上昇するという異常の場合には、温度保護回路が動作し回路を保護するが、その他の異常の場合には保護されず、起動回路を構成する素子やその他の回路の素子が破壊されたり発火または発煙するという問題点があった。なお、その他の異常や故障には、例えば、スイッチング素子Q2,Q3の故障、シリーズレギュレータIC1の故障、スイッチングトランスT1のコイルP1またはP2の断線、発振回路3または駆動回路4の故障などがある。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、異常が発生した場合に、起動回路を構成する素子やその他の回路の素子が破壊されたり発火または発煙することを防ぐことができるスイッチング電源装置を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1記載のスイッチング電源装置は、整流された入力電圧をスイッチングするスイッチイング素子と、所定の周波数で発振する発振回路と、その発振回路の出力により前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記スイッチング素子によりスイッチングされた出力を一次コイルに入力し、二次コイルから電源出力を得ると共に、三次コイルを有するトランスと、そのトランスの三次コイルから出力される電圧を整流し前記発振回路の電源として電力を供給する定電圧回路と、その定電圧回路により所定電圧より低い電圧で前記発振回路に電力が供給された場合には、前記発振回路への電力の供給を開始し、前記定電圧回路により前記所定電圧以上の電圧で前記発振回路に電力が供給された場合には、前記発振回路への電力の供給を停止する起動回路とを備えたものであって、前記定電圧回路は、前記起動回路による前記発振回路への電力の供給開始から第一の所定時間以内に前記所定電圧に達するよう設定され、前記起動回路による前記発振回路への電力の供給開始から前記第一の所定時間より長い時間に設定された第二の所定時間を経過した場合には、前記起動回路による前記発振回路への電力の供給を停止するように制御する保護回路を備えている。
請求項2記載のスイッチング電源装置は、請求項1記載のスイッチング電源装置において、前記保護回路は、前記起動回路が前記発振回路へ供給する電力に応じて電圧が徐々に変化する時定数回路を有し、その時定数回路の電圧が所定の電圧に至った場合に、前記起動回路の前記発振回路への電力の供給を停止するスイッチ回路を備えている。
請求項3記載のスイッチング電源装置は、請求項2記載のスイッチング電源装置において、前記保護回路は、前記起動回路が前記発振回路へ供給する電力に応じて電圧が徐々に変化する時定数回路を有し、その時定数回路の電圧が所定の電圧に至った場合に、前記起動回路の前記発振回路への電力の供給を停止するスイッチ回路と前記発振回路の発振を停止する発振停止回路とを備えている。
請求項4記載のスイッチング電源装置は、請求項2または3記載のスイッチング電源装置において、前記保護回路は、前記時定数回路の電圧が所定の電圧に至った場合は、その所定の電圧を保持するラッチ回路を備えている。
請求項5記載のスイッチング電源装置は、請求項1から4のいずれかに記載のスイッチング電源装置において、前記起動回路は、入力電圧をコレクタ側に接続し、エミッタ側から前記発振回路の電源として電力を供給する起動用スイッチ素子を有し、前記保護回路は、前記起動回路が前記発振回路に電力を供給する時間が所定時間より長い場合に、前記起動用スイッチ素子のベース電圧を低下させることにより前記発振回路への電力の供給を停止するものであって、前記保護回路は、前記起動用スイッチ素子のエミッタから供給される電流により前記起動回路が前記発振回路に電力を供給する時間が所定時間より長いか否かを検出するものである。
請求項6記載のスイッチング電源装置は、請求項1から5のいずれかに記載のスイッチング電源装置において、整流された入力電圧を、その入力電圧より低い一定の電圧に変換し、その変換された電圧を前記保護回路に供給する保護回路用定電圧回路を備えている。
請求項1記載のスイッチング電源装置によれば、整流された入力電圧をスイッチングするスイッチング素子と、所定の周波数で発振する発振回路と、その発振回路の出力により前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、スイッチング素子によりスイッチングされた出力を一次コイルに入力し、二次コイルから電源出力を得ると共に、三次コイルを有するトランスと、そのトランスの三次コイルから出力される電圧を整流し発振回路の電源として電力を供給する定電圧回路と、定電圧回路により所定電圧より低い電圧で発振回路に電力が供給された場合には、発振回路への電力の供給を開始し、定電圧回路により所定電圧以上の電圧で発振回路に電力が供給された場合には、発振回路への電力の供給を停止する起動回路と、定電圧回路は、起動回路による発振回路への電力の供給開始から第一の所定時間以内に所定電圧に達するよう設定され、起動回路による発振回路への電力の供給開始から第一の所定時間より長い時間に設定された第二の所定時間を経過した場合には、起動回路による発振回路への電力の供給を停止するように制御する保護回路を備えているので、異常が発生した場合に、起動回路を構成する素子やその他の回路の素子が破壊されたり発火または発煙することを防ぐことができるという効果がある。ここで、異常とは、スイッチング素子の故障、定電圧回路の故障、スイッチングトランスの一次コイルまたは三次コイルの断線、発振回路または駆動回路の故障などが原因で、定電圧回路から電源の供給が正常に行われなくなった場合である。
請求項2記載のスイッチング電源装置によれば、請求項1記載のスイッチング電源装置の奏する効果に加え、保護回路は、起動回路が発振回路へ供給する電力に応じて電圧が徐々に変化する時定数回路を有し、その時定数回路の電圧が所定の電圧に至った場合に、起動回路の発振回路への電圧の供給を停止するスイッチ回路を備えているので、簡単な回路構成で、異常を検出することができるとともに、起動回路の動作を停止させることができ、起動回路を構成する素子の破損や発火を防止することができるという効果がある。
請求項3記載のスイッチング電源装置によれば、請求項2記載のスイッチング電源装置の奏する効果に加え、保護回路は、起動回路が発振回路へ供給する電力に応じて電圧が徐々に変化する時定数回路を有し、その時定数回路の電圧が所定の電圧に至った場合に、起動回路の前記発振回路への電力の供給を停止するスイッチ回路と発振回路の発振を停止する発振停止回路とを備えているので、異常が検出された場合に、起動回路の動作を停止させることができるとともに、発振回路の発振を停止させることができる。よって、スイッチング素子などの破損や発火を防止することができる。
請求項4記載のスイッチング電源装置によれば、請求項2または3記載のスイッチング電源装置の奏する効果に加え、保護回路は、時定数回路の電圧が所定の電圧に至った場合は、その所定の電圧を保持するラッチ回路を備えているので、起動回路の動作および発振回路の発振動作を継続的に停止することができるという効果がある。したがって、スイッチング電源装置に異常が発生した場合に、完全に機能を停止し、安全を確保することができる。
請求項5記載のスイッチング電源装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載のスイッチング電源装置の奏する効果に加え、起動回路は、入力電圧をコレクタ側に接続し、エミッタ側から発振回路の電源として電力を供給する起動用スイッチ素子を有し、保護回路は、起動回路が発振回路に電力を供給する時間が所定時間より長い場合に、起動用スイッチ素子のベース電圧を低下させるものであって、保護回路は、起動用スイッチ素子のエミッタから供給される電流により起動回路が発振回路に電力を供給する時間が所定時間より長いか否かを検出するものであるので、起動回路が発振回路に電力を供給する時間が所定時間より長いか否かを検出する回路を構成するトランジスタなどの素子の耐圧を低くすることができるとともに、回路を形成するプリント基板の配線の間隔を狭くする等の低電圧仕様にすることができる。よって、高耐圧のトランジスタを使用したり、高電圧でも問題がないようにプリント基板の配線間の距離を大きくする場合等に比べ、スイッチング電源装置を小型かつ安価に作製することができるという効果がある。
請求項6記載のスイッチング電源装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載のスイッチング電源装置の奏する効果に加え、整流された入力電圧を、その入力電圧より低い一定の電圧に変換し、その変換された電圧を保護回路に供給する保護回路用定電圧回路を備えているので、保護回路を構成するトランジスタなどの素子の耐圧を低くすることができるとともに、回路を形成するプリント基板の配線を低電圧のものとすることができる。よって、高耐圧のトランジスタを使用したり、高電圧でも問題が発生しないようにプリント基板の配線間の距離を大きくする場合等に比べ、スイッチング電源装置を小型かつ安価に作製することができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい第1の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態であるスイッチング電源装置1の電気的構成を示したブロック図である。なお、図2を参照して説明した従来のスイッチング電源装置100と同一の部分には、同一の符号を付してその説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第1の実施形態のスイッチング電源装置1は、保護回路7を備えている。この保護回路7は、トランジスタQ4および抵抗R3,R4,R5,R6、電解コンデンサC6と、トランジスタQ6、ダイオードD20、抵抗R20およびダイオードD5,D6により形成されるスイッチ回路と、トランジスタQ5および抵抗R7,R8,R9により形成されるラッチ回路とにより構成されている。
スイッチ回路は、起動回路2の抵抗R2と並列に抵抗R5とR6とが接続され、抵抗R5とR6の接続点に電解コンデンサのマイナス電極が、抵抗R5の抵抗R6との接続点とは反対側に電解コンデンサC6のプラス電極が接続されている。さらに電解コンデンサC6のプラス電極とマイナス電極との間には、抵抗R3と抵抗R4が直列に接続され、抵抗R3と抵抗R4との接続点には、トランジスタQ4のベースが接続されている。トランジスタQ4のエミッタは、入力電源の電解コンデンサC2のプラス電極に接続されると共に、抵抗R3の抵抗R4との接続点とは反対側に接続されている。
トランジスタQ4のコレクタは、抵抗R7とR8を介して、電解コンデンサC2のマイナス電極に接続されるとともに、ダイオードD20のアノードに接続されている。ダイオードD20のカソードは、抵抗R20を介してトランジスタQ6に接続されている。トランジスタQ6のベースには、温度保護回路6の抵抗R21が接続され、抵抗R20とでオア回路を形成している。
次に、このスイッチ回路の動作について説明する。上述のとおり、電源スイッチSW1が投入された時は、Q1がレギュレータとして動作し、抵抗R2を介して、発振回路3および駆動回路4へ電力を供給する。発振回路3が発振を開始し、駆動回路4がスイッチング素子Q2,Q3を駆動すると、トランスT1の一次コイルにスイッチングされた信号が入力され、二次コイル、三次コイルに電圧が発生する。三次コイルは、定電圧回路5に接続され、定電圧化された電力は、発振回路3および駆動回路4へ供給される。定電圧化された電圧は、起動回路2により供給される電圧より高く設定されているので、起動回路2からの電力の供給は停止される。起動回路2による発振回路3および駆動回路4への電力の供給から停止までは100msec以内になるように設定されている。
このスイッチ回路は、起動回路2による発振回路3および駆動回路4への電力の供給から約1秒以上経過した場合に、起動回路2による発振回路3および駆動回路4への電力の供給を停止するとともに発振回路3の発振動作を停止するように設定されている。
起動回路2による発振回路3および駆動回路4への電力の供給が行われると、抵抗R2の両端に電圧VR2が発生する。この電圧VR2は、抵抗R5とR6とにより分圧され、抵抗R5に電圧が発生し、抵抗R5に並列に接続された電解コンデンサC6にチャージが開始される。電解コンデンサC6の両端の電圧は、抵抗R3とR4とにより分圧され、抵抗R3の両端の電圧VR3がトランジスタQ4のベース電圧として供給される。
抵抗R6と電解コンデンサC6とにより時定数回路8が形成され、電解コンデンサC6にチャージが開始されてから、トランジスタQ4がオンするまでの時間が約1秒に設定されている。
トランジスタQ4がオンすると、コレクタに接続された抵抗R7,R8に電流が流れ、コレクタに接続されたダイオードD20と抵抗R20を介してトランジスタQ6のベース電圧が上昇し、トランジスタQ6がオンになり、温度保護回路6の場合と同様にトランジスタQ1がオフされ、起動回路2の起動動作が停止されるとともに、発振回路3の発振動作が強制的に停止される。
次に、ラッチ回路について説明する。スイッチ回路のトランジスタQ4のコレクタと入力電源回路9の電解コンデンサC2のマイナス電極との間に抵抗R7と抵抗R8が直列に接続され、抵抗R7と抵抗R8の接続点には、トランジスタQ5のベースが接続されている。トランジスタQ5のエミッタは、電解コンデンサC2のマイナス電極に接続され、コレクタは、抵抗R9を介して、トランジスタQ4のベースと抵抗R3に接続され、抵抗R3の他端は、電解コンデンサC2のプラス電極に接続されている。
次に、このラッチ回路の動作について説明する。異常時にスイッチ回路が動作すると、トランジスタQ1がオフされ、抵抗R2に電流が流れなくなり、電圧VR2が低下し、やがて電圧VR3が約0.6ボルト以下になる。このことによりトランジスタQ4,Q6がオフになり、再度起動回路2が起動することになる。これを防止するために、トランジスタQ5により、保護動作をラッチするように構成している。
トランジスタQ4がオンすると、抵抗R7,R8に電流が流れ、トランジスタQ6がオンするとともに、抵抗R8の両端にも電圧が発生するので、トランジスタQ6がオンするのに少し遅れてトランジスタQ5がオンする。トランジスタQ5がオンすると、抵抗R9,R3に電流が流れ、抵抗R3による電圧降下によりトランジスタQ4は、オン状態が維持されることになる。したがって、トランジスタQ1がトランジスタQ6によりオフとなっても、電源装置1の電源が遮断されるまで起動回路2は、停止されることになる。
なお、温度保護回路6のサーミスタTH20に発生した電圧は、ダイオードD21および抵抗R21を介してトランジスタQ6のベースに接続され、保護回路7のトランジスタQ4のコレクタに接続された抵抗R7,R8により発生した電圧は、ダイオードD20および抵抗R20を介してトランジスタQ6のベースに接続され、保護回路7が動作した場合または、温度保護回路6が動作した場合のいずれにおいても、トランジスタQ6がオンするように構成されている。
以上、第1の実施形態に基づいて説明したように、本発明によるスイッチング電源装置1は、電源投入時に、起動回路2が、発振回路3へ電力を供給し、発振回路3が発振を開始してスイッチング素子Q2,Q3がスイッチングを行い、そのスイッチングによりトランスに発生された電圧を定電圧回路5により整流して発振回路3に電源として供給する。
この定電圧回路5により発振回路3への電力の供給が開始されると、起動回路2からの電力の供給は、停止されるが、何らかの異常により、定電圧回路5から供給される電圧が降下すると、起動回路2が発振回路3への電力の供給を開始する。
保護回路7は、起動回路2が発振回路3へ所定時間以上電力の供給を行ったことを検出した場合に、起動回路2の発振回路3への電力の供給と発振回路3の発振とを停止する。したがって、起動回路2を構成するトランジスタQ1等の回路素子の破損を防止するとともに、異常状態のまま放置されることにより、他の部分へ影響が及ぶことを防止することができる。
次に、本発明の好ましい第2の実施形態について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の第2の実施形態であるスイッチング電源装置20の電気的構成を示したブロック図である。なお、図1を参照して説明した第1のスイッチング電源装置1と同一の部分には、同一の符号を付してその説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第1の実施形態においては、 入力される商用交流を100Vとしたが、日本国外では、200Vを超える交流電源が供給され、このような高圧の交流を入力とする場合は、トランジスタに高耐圧のものを使用しなければならないとともに、プリント基板の配線の線間距離を大きくしなければならず、大型化するとともに高価になるという欠点がある。
そこで、第2の実施形態では、保護回路などにおいて高電圧がかかる部分を抵抗で受けるようにし、低電圧で動作するようにしたものである。入力電源回路9においては、商用交流電源に接続するプラグP1と、ヒューズF1と、電源スイッチSW1と、電源から入力される100V〜240Vの交流を整流するダイオードD1と、整流後の電圧を平滑する電解コンデンサC1、C2とにより構成されている。電源電圧が交流240Vの場合には、電解コンデンサC1のプラス電極と電解コンデンサC2のマイナス電極との電圧は、約340Vにもなる。この電圧が、スイッチング素子Q2、Q3によりスイッチングされる。
電解コンデンサC1のマイナス電極と電解コンデンサC2のプラス電極との接続点は、スイッチングトランスT1の一次側コイルP1の一端に、コンデンサ8を介して接続されている。このコンデンサ8は、電流共振コンデンサと称されるもので、EMIノイズの発生を低減させるものであり、第1の実施形態では省略している。
起動回路2は、抵抗R1,R2とツェナーダイオードZD1とトランジスタQ1と直列に接続されたダイオードD2、D7とにより構成されている。抵抗R1とツェナーダイオードZD1とは直列に接続され、抵抗R1の一端は、電解コンデンサC1のプラス電極に接続され、ツェナーダイオードZD1の一端は、電解コンデンサC2のマイナス電極に接続されている。抵抗R1とツェナーダイオードZD1とが接続されている接続点には、トランジスタQ1のベースが接続され、トランジスタQ1のコレクタと電解コンデンサC1のプラス電極との間に抵抗R2が接続され、トランジスタQ1のエミッタには、ダイオードD2、D7が直列接続され、ダイオードD7のカソードが発振回路3の電源に接続されている。この起動回路2の動作は、第1の実施例と同様であるので、その説明は、省略する。
保護回路7は、トランジスタQ4および抵抗R3,R4,R6と電解コンデンサC6、抵抗R17,R18,R20,R11,ダイオードD20、電解コンデンサC7、トランジスタQ6およびダイオードD5,D6とにより形成されるスイッチ回路と、トランジスタQ5および抵抗R11,R12,R13,R14により形成されるラッチ回路と、抵抗R15およびツェナーダイオードZD2とにより構成されている。
次に、スイッチ回路の構成について説明する。スイッチ回路は、起動回路2のダイオードD2、D7と並列に抵抗R6と電解コンデンサC6とが接続され、抵抗R6と電解コンデンサC6のマイナス電極との接続点に抵抗R4の一端が接続され、抵抗R4の他端は、抵抗R3の一端に、電解コンデンサC6のプラス電極と抵抗R3の他端とがそれぞれ接続されている。また、抵抗R3の一端は、トランジスタQ4のベースに、抵抗R3の他端は、トランジスタQ4のエミッタにそれぞれ接続され、トランジスタQ4のコレクタには、抵抗R17の一端が接続されている。
トランジスタQ4のコレクタに接続された抵抗R17は、抵抗R18の一端が接続され、抵抗R18の他端は、電解コンデンサC2のマイナス電極に接続される。抵抗R18の一端には、電解コンデンサC7のプラス電極およびダイオードD20のアノードが接続されている。電解コンデンサC7のマイナス電極は、電解コンデンサC2のマイナス電極と接続され、ダイオードD20のカソードは、抵抗R20の一端に接続され抵抗R20の他端は、トランジスタQ6のベースおよび抵抗R11の一端に接続されている。抵抗R11の他端およびトランジスタQ6のエミッタは、電解コンデンサC2のマイナス電極に接続され、トランジスタQ6のコレクタは、ダイオードD5およびD6のカソードに接続されるとともに、抵抗R12の一端に接続される。
ダイオードD5のアノードは、起動回路2のトランジスタQ1のベースに、ダイオードD6のアノードは、発振回路3の発振を制御する端子にそれぞれ接続されている。
次に、このスイッチ回路の動作について説明する。このスイッチ回路も、第1の実施形態におけるスイッチ回路と同様に起動回路2による発振回路3および駆動回路4への電力の供給の開始から約1秒以上経過した場合に、起動回路2による発振回路3および駆動回路4への電力の供給を停止するように設定されている。
起動回路2による発振回路3および駆動回路4への電力の供給が行われると、ダイオードD2、D7の両端に電圧VD(約1.2V)が発生する。この電圧VDは、抵抗R6と電解コンデンサC6とにより形成される時定数回路8に供給され、電解コンデンサC6にチャージが開始されてその両端の電圧が徐々に高くなる。電解コンデンサC6の両端の電圧は、抵抗R3とR4により分圧され、抵抗R3の両端の電圧がトランジスタQ4のベース−エミッタ間に供給され、ベース−エミッタ間の電圧が所定の電圧を超えると、トランジスタQ4がオンになる。
トランジスタQ4がオンになると、抵抗R17,R18に電流が流れ、抵抗R17と電解コンデンサC7により形成されるローパスフィルタ(時定数回路)10により所定時間遅延され、ダイオードD20を介して抵抗R20と抵抗R11により分圧された電圧がトランジスタQ6のベースに印加され、トランジスタQ6がオンになる。トランジスタQ6がオンになると、ダイオードD5を介してトランジスタQ1のベース電圧を0として起動回路2の起動動作を停止するとともに、発振回路3の発振制御端子の電圧を0とし、発振回路3の発振が停止される。
次に、ラッチ回路の構成について説明する。抵抗R12の一端は、トランジスタQ6のコレクタとダイオードD5,D6のカソードと接続され、抵抗R12の他端は、トランジスタQ5のベースおよび抵抗R13の一端に接続されている。抵抗R13の他端は、トランジスタQ5のエミッタ、抵抗R15の一端およびツェナーダイオードZD2のカソードに接続され、抵抗R15の他端は、電解コンデンサC1のプラス電極に、ツェナーダイオードZD2のアノードは、電解コンデンサC2のマイナス電極にそれぞれ接続されている。したがって、トランジスタQ5のエミッタには、ツェナーダイオードZD2により設定される低い定電圧が供給される。
温度保護回路6のサーミスタTH20の一端は、ダイオードD21のアノードに接続され、ダイオードD21のカソードは、抵抗R21の一端に接続されている。抵抗R21の他端はトランジスタQ6のベースに接続され、トランジスタQ6のベースと抵抗R21との接続点は、抵抗R14を介してトランジスタQ5のコレクタに接続されている。
次に、ラッチ回路の動作について説明する。このラッチ回路も第1の実施形態と同様に異常時にスイッチ回路が動作すると、そのスイッチ回路の状態を保持するものである。
異常時に、トランジスタQ6がオンになると、そのコレクタには、抵抗R12とR13を介してツェナーダイオードZD2により設定される電圧が印加されているので、抵抗R13の両端に電圧が発生、この電圧によりトランジスタQ5がオンになる。トランジスタQ5がオンになると、トランジスタQ5のエミッタには、ツェナーダイオードZD2により設定される電圧が供給されているので、トランジスタQ5のコレクタに接続された抵抗R14と抵抗R14に接続された抵抗R11とで分圧された電圧がトランジスタQ6のベースに供給され、トランジスタQ6がオンに保持される。従って、一度トランジスタQ6がオンされると、スイッチング電源10の電源が遮断されるまでトランジスタQ6はオンに保持される。
なお、第2の実施形態では、2つの時定数回路8および10を設けることにより、起動回路2が約1秒以上起動動作を行った場合に、保護回路7が起動動作を停止するように作用するものとしている。ここで、例えば、コンデンサC6を大容量のコンデンサとすれば、時定数回路を一つにすることができる。
以上、第2の実施形態に基づいて説明したように、起動回路2は、入力電圧をコレクタ側に接続し、エミッタ側から発振回路3の電源として電力を供給するトランジスタQ1を有し、保護回路7は、起動回路2が発振回路3に電力を供給する時間が所定時間より長い場合に、トランジスタQ1のベース電圧を低下させる。保護回路7は、トランジスタQ1のエミッタから供給される電流により起動回路2が発振回路3に電力を供給する時間が所定時間より長いか否かを検出する。よって、起動回路2が発振回路3に電力を供給する時間が所定時間より長いか否かを検出する回路を構成するトランジスタなどの素子の耐圧を低くすることができるとともに、回路を形成するプリント基板の配線の間隔を狭くする等の低電圧仕様にすることができる。
また、整流された入力電圧を、その入力電圧より低い一定の電圧に変換し、その変換された電圧を保護回路7に供給するツェナーダイオードZD2を備えているので、保護回路7を構成するトランジスタQ4,Q5、Q6に耐圧が低いタイプのものを使用することができるとともに、回路を形成するプリント基板の配線の線間の距離が狭い低電圧のものとすることができる。よって、スイッチング電源装置が大型化し、高価になることを避けることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施形態では、起動回路2が発振回路3へ電力を供給する時間が所定の時間より長い場合に、トランジスタQ1をオフにして、発振回路3への電力の供給を停止したが、トランジスタQ1のエミッタとダイオードD2との間にリレーを接続し、起動回路2が発振回路3へ電力を供給する時間が所定の時間より長い場合に、リレーを切断するようにしてもよい。