JP4581705B2 - インクジェット記録体の製造方法 - Google Patents
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Description
近年、プリンタの急速な普及や高精細・高速化、さらにはデジタルカメラの登場により、インクジェット記録方式において用いられる記録体にも高度な特性が要望されるようになっている。
すなわち、速いインク吸収性、高い記録濃度、優れた耐水性や保存性等の記録特性、特に、銀塩写真に匹敵する画質、表面光沢および保存性を兼ね備えたインクジェット記録体の実現が強く求められている。
しかし、カレンダー仕上げにより得られるインクジェット記録体は、光沢度が不十分であるうえに、塗工層の空隙が減少してしまうため、インク吸収性が低下し、結果として印字のにじみを生じやすくなるという問題を有している。
しかし、このようなインクジェット記録体は、ある程度の光沢度は得られるものの、インク吸収性は十分でなく、インクの乾燥も遅いために、ハンドリングが悪く、インクの吸収ムラが発生しやすく、耐水性やカールも劣るという問題がある。
特許文献1には、樹脂被覆紙上に、樹脂被覆紙上に近い方から一次粒子の平均粒径が50nm以下の気相法による合成シリカを含有する層及びコロイダルシリカを含有する層を少なくとも有するインクジェット記録用シートが提案されている。しかしながら、光沢性、耐擦傷性は向上するが、コロイダルシリカのような一次粒子体は空隙率が低くなるため、インク吸収性が低下しやすい。インク吸収性を持たせるために塗布量を低下させると、干渉縞を生じて光沢面の品質が低下したり、十分な光沢性が得られない。
特許文献2には、樹脂被覆紙上に、該樹脂被覆紙に近い側から、一次粒子の平均粒子径が30nm以下の気相法による合成シリカを含有する層とカチオン性コロイド粒子を含有する層とを少なくとも有するインクジェット記録用シートが提案されている。カチオン性コロイド粒子を用いることにより、印画後の画像の経時による滲み及び耐水性が改善されるものの、特許文献2と同様に、インク吸収性が低下する問題がある。
(1)顔料および接着剤を主成分とする顔料組成物を原紙上に塗工後、塗工層が湿潤状態にある間に、加熱した鏡面ロールに圧接、乾燥させて光沢仕上げするウェットキャスト法、
(2)湿潤状態の塗工層を酸や塩、熱によりゲル状態とし、これを加熱した鏡面ロールに圧接、乾燥させて光沢仕上げするゲル化キャスト法、
(3)湿潤状態の塗工層を一旦乾燥した後、これを再湿潤液で湿潤可塑化し、これを加熱した鏡面ロールに圧接、乾燥させて光沢仕上げするリウェットキャスト法等のキャスト塗工法が、一般に知られている。
このようなキャスト塗工法により得られるキャスト塗工紙は、カレンダー仕上げされた通常の記録体に比較して、高い表面光沢と優れた表面平滑性を有し、優れた印刷効果が得られることから高級印刷物等の用途に専ら利用されている。
特許文献5は、低透気性又は非透気性の支持体上に、顔料と接着剤を有するインク受容層を形成し、次いで、微細顔料と離型剤を有する光沢層を形成するインクジェット記録体において、微細顔料を有する光沢層用塗布液層を設ける工程、該塗布液層を鏡面ロールに接するようにプレスロールでプレスする工程、および該塗布液層を乾燥する工程を含む光沢化手段で光沢層を形成することにより高光沢のインクジェット記録体を提供するものである。
しかしながら、この製造方法では、塗工層が未乾燥の状態で鏡面ロールより剥がす必要があるので、連続運転中に、鏡面ロールに貼り付いたまま離型しなくなったり、プレス工程において鏡面ロールにインクジェット記録体が貼り付き、鏡面ロールが汚れたりするなど、製造効率が悪化する問題があった。
(1)第1発明
(1−1)支持体上にインク受容層を形成し、該インク受容層上に、微細顔料を含有する塗工層を形成し、該塗工層が湿潤状態である間に、鏡面ロールに圧接して光沢を付与した光沢層を形成するインクジェット記録体の製造方法において、前記光沢層に離型剤として下記一般式1〜一般式3で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。
(1−3)前記光沢層の微細顔料が、平均一次粒子径3〜100nmのコロイダルシリカ、平均一次粒子径3〜100nmのアルミナ、および平均一次粒子径3〜100nm、かつ平均二次粒子径が1μm以下の無定形シリカから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
(1−4)支持体が、フィルムまたは樹脂被覆紙であることが好ましい。
(1−5)前記インク受容層は、細孔直径分布曲線における極大値が100nm以下のみであり、且つ平均2次粒子径1.3μm以下の顔料を主成分として含有することが好ましい。
(2−1)支持体上に、顔料と接着剤を有するインク受容層を少なくとも一層を形成する工程、次いで、該インク受容層上に、微細顔料と下記一般式1〜一般式3で表される化合物の少なくとも1種を離型剤として含有する光沢層用塗布液層を設ける工程、該光沢層用塗布液層を鏡面ロールに接するようにプレスロールでプレスする工程、および該塗布液層を乾燥する工程を含む光沢化手段により光沢層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。
(2−3)光沢層の微細顔料が、平均一次粒子径3〜100nmのコロイダルシリカ、平均一次粒子径3〜100nmのアルミナ、および平均一次粒子径3〜100nm、かつ平均二次粒子径が1μm以下の無定形シリカから選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
(2−4)支持体が、フィルムまたは樹脂被覆紙であることが好ましい。
(2−5)前記インク受容層は、細孔直径分布曲線における極大値が100nm以下のみであり、且つ平均2次粒子径1.3μm以下の顔料を主成分として含有することが好ましい。
(3−1)支持体上に、塗工層を有するインクジェット記録体の製造方法において、該塗工層は、下記一般式1〜一般式3で表される化合物の少なくとも1種を離型剤として含有する鏡面仕上げ層用塗工液が塗布され、湿潤状態のうちに、鏡面ロールに圧接して得た層であることを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。
第2発明は、インク受容層上に、微細顔料と一般式1〜一般式3で表される化合物の少なくとも1種を離型剤として含有する光沢層用塗布液層を設ける工程と該光沢層用塗布液層を鏡面ロールに接するようにプレスロールでプレスする工程を有することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。
第3発明は、塗工層を有するインクジェット記録体の製造方法において、該塗工層は上記一般式1〜一般式3で表される化合物の少なくとも1種を離型剤として含有する鏡面仕上げ層用塗工液が塗布され、湿潤状態のうちに、鏡面ロールに圧接して得た層であることを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。
まず、本発明で使用する一般式1〜一般式3で表される化合物について説明する。
これらの化合物の中で、一般式1で表される化合物が特に離型性に優れるので好ましい。
また、ジココイルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる少なくとも一種を用いることが、インク吸収性と離型性が特に優れるので好ましい。
インクジェット記録体に用いる支持体は、その種類、形状、寸法などについては特に制限はないが、印字後のコックリング(浪打ち)や写真調の風合いの点から低透気性または非透気性支持体の方が好ましい。
また、後述するインク受容層との接着性を高めるため、樹脂層表面に、コロナ放電処理を施したり、アンカーコート層を設けることが好ましい。
インク受容層は、支持体上に少なくとも一層形成されている。インク受容層は、顔料と接着剤を含み、さらに、必要に応じて、カチオン性化合物を含むことができる。
中でも、塗膜強度が得られやすいことから、ポリビニルアルコールが好ましく使用される。さらに成膜性とインク吸収性のバランスから重合度2000以上、鹸化度95%以上が好ましく、さらに好ましくは重合度4000以上、鹸化度98%以上である。また、必要に応じて他のバインダーを併用することもできる。
具体的には、予め架橋剤を塗布・含浸させておき、その後塗液を塗工する方法、塗液に架橋剤を配合せしめておき塗工する方法、塗液を塗工後、架橋剤を塗布する方法などにより製造するとよいが、架橋剤を予め塗布しておくことが、増粘またはゲル化が均一な塗工層が得られるため、好ましい。
電子線の照射方式としては、例えばスキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが採用され、電子線を照射する際の加速電圧は50〜300kV程度が適当である。電子線の照射量は1〜200kGy程度の範囲で調節するのが好ましい。1kGy未満では塗工層をゲル化させるのに不十分であり、200kGyを越えるような照射は基材や塗工層の劣化や変色をもたらす恐れがあるため好ましくない。
測定方法としては、支持体の影響を避けるために、塗工層をカッター等で剥がし取り測定に用いた。細孔分布は、マイクロメトリックス・ポアサイザー9320(島津製作所製)を用い、水銀圧入法により求めた。水銀圧入法による細孔直径の測定は、細孔の断面を円形と仮定して導かれた下記の式を使って計算した。
R=−2γCOSθ/P
ただし、式中でそれぞれR:細孔半径(2R=細孔直径)、γ:水銀の表面張力、θ:接触角、P:圧力を示す。
水銀の表面張力は482.536dyn/cmとし、使用接触角は130°とし、水銀圧力の低圧部(0〜30psia、測定細孔半径:180〜3μm)と高圧部(0〜30000psia、測定細孔半径:3〜0.003μm)にて測定した。
細孔直径分布は、上記の原理を利用して、水銀に加える圧力を徐々に変化させ、その時に細孔内に進入した水銀の体積すなわち細孔容量Vを測定し、上記式に従って換算した細孔直径(2R)と細孔容積との関係を描き、この関係曲線の微分係数dV/d(2R)を求めて縦軸とし、細孔直径2Rを横軸にすることで求められる。塗工層の細孔直径分布曲線は通常1〜数個のピークが認められる。
支持体の影響を避けるために、インク受容層をフィルムに設けた後、カッター等でインク受容層を剥がし取って測定する。フィルム上で測定する場合、フィルム自体の細孔直径分布が無視できるフィルムを使用する。
インク受容層の塗工量の合計は、5〜70g/m2が好ましく、10〜50g/m2がより好ましく、15〜40g/m2が更に好ましい。また、塗工層の厚みの合計は、7〜105μmが好ましく、15〜75μmがより好ましく、22〜60μmがさらに好ましい。塗工量が5g/m2未満の場合、光沢層が十分に形成できない可能性があるのみならず、インク吸収性が低下し、記録適性が劣る場合があり、塗工量が70g/m2を超えると、塗工層の強度が低下し、記録用紙の断裁加工時や、プリンタでの記録体の搬送時に、トラブルを起こしやすくなるおそれがある。
塗工工程は1回でもよく、また、複数回行ってもよい。塗工工程を複数回行うと、インク受容層を多層とすることもできる。また、塗工液を複数回に分けて塗工することで、ひび割れの発生を抑制しながら多くの塗工液を塗工することができ、インク受容層のインク吸収容量を大きくすることができる。
塗膜の乾燥方法としては、特に限定はないが、従来から公知公用の熱風乾燥、ガスヒータ乾燥、高周波乾燥、電気ヒータ乾燥、赤外線ヒータ乾燥、レーザ乾燥、電子線乾燥等の各種加熱乾燥方式が適宜採用される。
光沢層には、微細顔料としては、コロイダルシリカ、無定形シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム等の透明または白色顔料が例示される。これらの内で特に好ましい顔料は、コロイダルシリカ、アルミナまたは無定形シリカである。
無定形シリカを使用する場合、好ましくは平均一次粒子径5〜100nm、より好ましくは5〜40nmのものを用いる。また、無定形シリカは、好ましくは平均二次粒子径1μm以下、より好ましくは10〜700nmのものを用いる。
また、インク吸収容量とインク吸収速度との兼ね合いから、光沢層の厚みは、インク受容層全体の厚みの1/10以下であることが好ましい。より好ましくは1/20以下、さらに好ましくは1/30以下である。
水性樹脂が水分散性樹脂の場合、前記樹脂の平均粒子径は20〜150nmの範囲が好ましく、20nm未満の場合は、インク吸収性が低下する場合があり、150nmを超える場合は、透明性が低下し、印字濃度が低下する場合がある。
水性樹脂のガラス転移温度は、50〜150℃の範囲が好ましい。ガラス転移温度が、50℃より低い場合は、乾燥時に光沢層の成膜が進みすぎ、光沢層の多孔性が低下し、インク吸収性が低下する場合がある。150℃より高い場合は、成膜が不足し、光沢や強度が不足する場合がある。
水性樹脂の配合量は、顔料100質量部に対し、水性樹脂が、好ましくは0〜50質量部、より好ましくは0〜30質量部の範囲内であることが好ましい。
第1発明は、支持体上にインク受容層を形成し、該インク受容層上に、微細顔料を含有する塗工層を形成し、該塗工層が湿潤状態である間に、鏡面ロールに圧接して光沢を付与した光沢層を形成するインクジェット記録体の製造方法において、前記光沢層に離型剤として特定の化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。特定の化合物を用いることにより、鏡面ロールから離型が安定するので、高光沢のインクジェット記録体が得られる。
即ち、光沢層を塗工後、塗工層が湿潤状態にある間に、加熱した鏡面ロールに圧接、乾燥させて光沢仕上げするウェットキャスト法、湿潤状態の塗工層を酸や塩、熱によりゲル状態とし、これを加熱した鏡面ロールに圧接、乾燥させて光沢仕上げするゲル化キャスト法、湿潤状態の塗工層を一旦乾燥した後、これを再湿潤液で湿潤可塑化し、これを加熱した鏡面ロールに圧接、乾燥させて光沢仕上げするリウェットキャスト法等である。
第2発明は、支持体上に、顔料と接着剤を有するインク受容層を少なくとも一層を形成する工程、次いで、該インク受容層上に、微細顔料と特定の化合物の少なくとも1種を離型剤として含有する光沢層用塗布液層を設ける工程、該光沢層用塗布液層を鏡面ロールに接するようにプレスロールでプレスする工程、および該塗布液層を乾燥する工程を含む光沢化手段により光沢層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。
本実施形態においては、まず、低透気性又は非透気性の支持体2上にインク受容層3を設ける(インク受容層形成工程)。そして、支持体2を、インク受容層3が鏡面ロール5に接するように、鏡面ロール5とプレスロール6との間に配置する。次いで、インク受容層3上に、光沢層を形成するための、特定の化合物を離型剤として含有する塗布液4を供給して、鏡面ロール5とプレスロール6との接線の上部に塗布液溜まりを形成する(塗布液供給工程)。そして、塗布液4が湿潤状態または半乾燥状態にあるうちに、支持体2を、塗布液4が供給された面が鏡面ロール5に接するように、鏡面ロール5とプレスロール6との間をプレスしながら通過させて塗布液層7を形成した後、直ちに鏡面ロール5から塗布液層7を剥離する(プレス工程)。その後、ドライヤー9を用いて乾燥(調湿)して、支持体2、インク受容層3、光沢層8からなるインクジェット記録体1を得る。
<塗工工程>
光沢層は、インク受容層3上に、上述のような成分を分散させて塗布液4を塗工する。調製するために用いられる分散媒としては、特に限定はないが、塗工適性などの理由で、水が好ましい。
塗布液中の総固形分濃度は、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
次いで、供給された塗布液4が湿潤状態または半乾燥状態にあるうちに、支持体2を、塗布液4が供給された面が鏡面ロール5に接するように、鏡面ロール5とプレスロール6との間をプレスしながら通過させて塗布液層7を形成した後、直ちに鏡面ロール5から塗布液層7を剥離するプレス工程を行う。
湿潤又は半乾燥状態にある塗布液4を、加熱した鏡面ロール5とプレスロール6との間を、塗布液4が供給された面が鏡面ロール5に接するようにプレスロール6でプレスすることにより、インク受容層3上に塗布液層7が形成される。この際、プレス圧と温度により塗布液層7はインク受容層3に密着され、ひび割れのない均一な膜が形成される。
プレス工程後、塗布液層7を、ドライヤー9などの乾燥ゾーンで別途乾燥させる乾燥工程を行うことも可能である。
また、鏡面ロールは、耐熱性がよく、優れた鏡面性が得られることから、金属ロールであることが好ましい。また、表面に微細な凹凸をつけて光沢性を低下させるいわゆる半光沢紙にする場合、金属ロールに微細な凹凸をつけてもよい。鏡面ロールの平均線中心粗さRaは、目標とする光沢によって変わるが、例えば、10μm以下である。
プレスロールによる加圧は、鏡面ロールとプレスロールの間の線圧が、好ましくは50〜3500N/cm、より好ましくは200〜3000N/cmになるように行うことが好ましい。鏡面ロールとプレスロールの間の線圧が、50N/cm未満の場合は、線圧が均一になり難く光沢性が低下したり、塗布液層7のインク受容層3に対する密着性が低下し、表面がひび割れたりするおそれがあり、3500N/cmを超える場合は、インクジェット記録体を過度に加圧するためにインク受容層および光沢層の空隙を破壊するためにインク吸収性が低下するおそれがある。
本発明において、鏡面ロール5から剥離した直後のインクジェット記録体1(支持体2、インク受容層3及び塗布液層7)中の水分は、湿潤状態又は半乾燥状態である。塗工層の水分率は、インク受容層や光沢層の塗布量により大きく影響されるが、例えば7〜100%である。
鏡面ロール5から剥離した後、ワインダーで巻き取るまでの間に平衡水分に達するような場合には、調湿・乾燥装置は不要であるが、塗布速度が速く、紙等の支持体2に含まれる水分が高い場合は、鏡面ロール5から剥離してワインダーで巻き取るまでの間に、調湿装置を有する調湿工程または乾燥装置を有する乾燥工程が必要である。調湿または乾燥装置の能力や仕様は、インクジェット記録体が鏡面ロール5から剥離された時点で持っている水分と平衡水分との差および塗布速度により、適宜設定される。
このようにして得られるインクジェット記録体は、銀塩写真並の高い表面光沢度とドット再現性を有し、特に、高い光沢度、高い平滑性等の外観やインク吸収性に優れ操業時の離型性が良好なインクジェット記録適性を有する。
第3発明は、支持体上に、鏡面仕上げした塗工層を有するインクジェット記録体の製造方法において、該塗工層に、特定の化合物の少なくとも1種を離型剤として含有する鏡面仕上げ層用塗工液を用いることが特徴である。このような塗工液を用いることにより、鏡面ロールに圧接された際に、離型をスムーズに行なうことができる。上記第1発明、第2発明の構成に限定されるものではなく、例えば、キャスト塗工法により形成される塗工層に使用する塗工液としても有用である。
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均一次粒子径10nm、比表面積300m2/g、トクヤマ社製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均二次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。該分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:ユニセンスCP−103、センカ社製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均二次粒子径300nmからなる8%分散液を調製しシリカゾルAを得た。
CSF(JIS P−8121)が250mlまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、CSFが250mlまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、質量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中に、パルプ絶乾質量に対し、カチオン化澱粉2.0%、アルキルケテンダイマー0.4%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7%を添加し、十分に攪拌して分散させた。
上記組成のパルプスラリーを長網マシンで抄紙し、ドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量180g/m2、密度1.0g/cm3の原紙を製造した。上記サイズプレス工程に用いたサイズプレス液は、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の質量比で混合し、これを水に加えて過熱溶解し、濃度5%に調製したもので、このサイズプレス液を紙の両面に、合計で25ml/m2塗布して、紙支持体(透気度:300秒)を得た。
上記紙支持体の両面に、コロナ放電処理した後、バンバリーミキサーで混合分散した下記のポリオレフィン樹脂組成物1を、紙支持体のフェルト面側に、塗工量25g/m2となるようにして、またポリオレフィン樹脂組成物2を、紙支持体のワイヤー側に、塗工量20g/m2となるように、T型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)で塗布し、フェルト面側を鏡面のクーリングロール、ワイヤー面側を粗面のクーリングロールで冷却固化して、平滑度(王研式、J.TAPPI No.5)が6000秒、不透明度(JIS P8138)が93%の樹脂被覆した支持体を得た。
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm3、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(商品名:A−220、石原産業社製)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(商品名:Irganox 1010、チバガイギー社製)0.03部、群青(商品名:青口群青NO.2000、第一化成社製)0.09部、蛍光増白剤(商品名:UVITEX OB、チバガイギー社製)0.3部を混合し、ポリオレフィン樹脂組成物1とした。
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm3、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)35部を溶融混合し、ポリオレフィン樹脂組成物2とした。
(インク受容層の形成)
シリカゾルA 100部に5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)24部を混合し、メイヤーバーで塗工量が25g/m2となるように樹脂被覆した支持体上に塗布乾燥してインク受容層を設けた。厚みは37μmであった。
次に、カチオン性コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK、日産化学工業社製)100部と、離型剤としてジココイルジメチルアンモニウムクロライド3部を混合し、10%に希釈し、図1の装置を用いて、インク受容層上に塗工し、同時に、表面温度100℃としたクロム鍍金仕上げした鏡面ロールに線圧2000N/cmで圧接し、直ちに鏡面ロールより離型し、ドライヤーで乾燥して光沢層を形成し、インクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてジデシルジメチルアンモニウムクロライド3部を用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてジステアリルジメチルアンモニウムクロライド3部を用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてジオレイルジメチルアンモニウムクロライド3部を用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてトリラウリルアンモニウムクロライド3部を用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてテトラデシルアンモニウムクロライド3部を用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、塗被液中にカチオン性化合物としてアリルアミン・ジアリルアミン共重合体ポリマー(PAA−D41、日東紡社製)5部を添加した以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてジココイルジメチルアンモニウムクロライド3部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてステアリルトリメチルアンモニウムクロライド3部を用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてステアリン酸カルシウム3部を用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
実施例1の光沢層の形成において、離型剤としてカチオン性ポリエチレンワックス(商品名:メイカテックスPEC−270、明成化学工業社製)3部を用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録体を得た。光沢層の厚みは1μmであった。
(内側インク受容層の形成)
サイロジェット703A(比表面積:280m2/g、平均二次粒子径300nm、グレースデビソン社製)に5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)24部を混合し、メイヤーバーで塗工量が20g/m2となるように樹脂被覆した支持体上に塗布乾燥して内側インク受容層を設けた。
前記内側インク受容層上に、シリカゾルA100部に5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)24部を混合し、メイヤーバーで塗工量が5g/m2となるように塗布乾燥して外側インク受容層を設けた。
次に、カチオン性コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK、日産化学工業社製)100部と、離型剤としてジステアリルジメチルアンモニウムクロライド3部を混合し、10%に希釈し、図1の装置を用いて、外側インク受容層上に塗工し、同時に、表面温度100℃としたクロム鍍金仕上げした鏡面ロールに線圧2000N/cmで圧接し、直ちに鏡面ロールより離型し、ドライヤーで乾燥して光沢層を形成し、インクジェット記録体を得た。インク受容層の厚みは合計39μmであり、光沢層の厚みは1μmであった。
実施例8のインク受容層の形成において、樹脂被覆した支持体の代りに、市販のポリプロピレン合成紙(商品名:ユポGWG−140、ユポコーポレーション社製)を用いた以外は、実施例8と同様にインクジェット記録体を得た。インク受容層の厚みは合計39μmであり、光沢層の厚みは1μmであった。
前記実施例および比較例で得たインクジェット記録体の75度表面光沢度、コックリング、インク吸収性、印字濃度、細孔直径分布曲線の極大値、離型性及び耐水性を評価し、その結果を表1に示した。各評価については、下記の方法で測定した。
JIS−P8142に記載の方法で、インクジェット記録体の75度光沢度を測定した。
コックリングは、インクジェットプリンターPIXUS iP8600(キヤノン社製)を用いて行った。インクカートリッジは、キヤノン社製BCI−7Bk、BCI−7C、BCI−7M、BCI−7Y、BCI−7PC、BCI−7PM、BCI−7RおよびBCI−7Gを使用した。評価は、シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部に発生したコックリングを目視にて評価した。
○:コックリングが全く認められず、良好な状態。
△:コックリングがあり、使用状況によっては問題となるレベル。
×:コックリングが著しく、実用にならないレベル。
インクジェットプリンターPIXUS iP4100(キヤノン社製)を用いて行った。インクカートリッジは、キヤノン社製BCI−7Bk、BCI−7C、BCI−7M、BCI−7YおよびBCI−3eBkを用い、評価はグリーンベタ印字を行い、前記ベタ印字部のインク吸収の様子を目視にて行った。
◎:ベタ部にムラが見られず、良好な状態。
○:ベタ部にムラが若干見られるが、殆ど問題にはならないレベル。
△:ベタ部にムラが多少見られ、使用状況によっては問題となるレベル。
印字濃度は、インクジェットプリンターPIXUS iP8600(キヤノン社製)を用いて行った。インクカートリッジは、キヤノン社製BCI−7Bk、BCI−7C、BCI−7M、BCI−7Y、BCI−7PC、BCI−7PM、BCI−7RおよびBCI−7Gを使用した。評価は、黒ベタ印字部をグレタグマクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製、RD−19I)を用いて測定した。表中に示した数字は5回測定の平均値である。
マイクロメトリックスポアサイザー9320(島津製作所社製)を用い、水銀圧入法により、全細孔分布曲線の極大値(nm)を求めた。
光沢層の形成時の離型性を官能評価で行った。
○:問題なく連続操業が可能である。
△:操業途中で鏡面ロール汚れが発生する頻度が比較的多く、実用上問題あり。
×:操業途中で鏡面ロール汚れが発生する頻度がかなり多く、問題あり。
ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの各色ベタ印字画像を作成し、25℃の水を滴下した後に自然乾燥させ、画像の変褪色の様子を目視観察し、耐水性のレベルを評価した。
◎:全く画像の変褪色、色移りがほとんどみられず良好である
○:若干の変褪色、色移りがみられたが、実用上全く問題ないレベルである
△:変褪色、色移りがみられ、実用上問題のあるレベルである
×:変褪色、色移りが著しい。
2:支持体
3:インク受容層
4:塗布液
5:鏡面ロール
6:プレスロール
7:塗布液層
8:光沢層
9:ドライヤー
Claims (8)
- 支持体上にインク受容層を形成し、該インク受容層上に、微細顔料を含有する塗工層を形成し、該塗工層が湿潤状態である間に、鏡面ロールに圧接して光沢を付与した光沢層を形成するインクジェット記録体の製造方法において、前記光沢層に離型剤として下記一般式1〜一般式3で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
- 光沢層に離型剤として含有する一般式1〜一般式3で表される化合物が、ジココイルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる少なくとも一種である請求項1記載のインクジェット記録体の製造方法。
- 前記光沢層の微細顔料が、平均一次粒子径3〜100nmのコロイダルシリカ、平均一次粒子径3〜100nmのアルミナ、および平均一次粒子径3〜100nm、かつ平均二次粒子径が1μm以下の無定形シリカから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載のインクジェット記録体の製造方法。
- 支持体上に、顔料と接着剤を有するインク受容層を少なくとも一層を形成する工程、次いで、該インク受容層上に、微細顔料と下記一般式1〜一般式3で表される化合物の少なくとも1種を離型剤として含有する光沢層用塗布液層を設ける工程、該光沢層用塗布液層を鏡面ロールに接するようにプレスロールでプレスする工程、および該塗布液層を乾燥する工程を含む光沢化手段により光沢層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
- 一般式1〜一般式3で表される離型剤が、ジココイルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる少なくとも一種である請求項4記載のインクジェット記録体の製造方法。
- 前記光沢層の微細顔料が、平均一次粒子径3〜100nmのコロイダルシリカ、平均一次粒子径3〜100nmのアルミナ、および平均一次粒子径3〜100nm、かつ平均二次粒子径が1μm以下の無定形シリカから選ばれる少なくとも一種である請求項4又は5に記載のインクジェット記録体の製造方法。
- 支持体上に、塗工層を有するインクジェット記録体の製造方法において、該塗工層は、下記一般式1〜一般式3で表される化合物の少なくとも1種を離型剤として含有する鏡面仕上げ層用塗工液が塗布され、湿潤状態のうちに、鏡面ロールに圧接して得た層であることを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
- 一般式1〜一般式3で表される離型剤が、ジココイルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる少なくとも一種である請求項7記載のインクジェット記録体の製造方法。
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