JP4581416B2 - 熱可塑性有機無機複合ポリマー及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性有機無機複合ポリマー及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、2以上の環状オレフィンポリマーが、分子鎖末端で無機オキシ化合物を介して結合された構造を有する熱可塑性有機無機複合材料及びその製造方法に関する。
従来、環状オレフィン開環重合体及びその水素化物、特にノルボルネン系開環重合体及びその水素化物は、透明性、耐熱性、低吸水性、電気特性、成形性等に優れるため、光学材料用途や電気絶縁材料用途として広く使われている。しかしながら、用途によっては耐熱性が不十分であったり、表面硬度が不十分である場合があるため、これらの改良が研究されている。
かかる改良の方法として、無機フィラーを配合する方法が考えられるが、無機フィラーは一般に環状オレフィン開環重合体との相溶性が悪く、経時的に相分離を起こして透明性が損なわれる場合があった。
また、特許文献1には、5−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン等の特定のシリル基を有するノルボルネン系単量体と、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等のその他のノルボルネン系単量体とを開環重合して得られる、数平均分子量が5,000〜1,000,000である反応性シリル基を有する水素化された環状オレフィン開環共重合体がシロキサン結合で架橋され、25℃のトルエンまたはシクロヘキサンで測定される膨潤度が500%以下の架橋体が記載されている。しかしながら、この架橋体は熱硬化して得られるものであるため、加熱成形することが困難であった。
特開2003−82071号公報
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、環状オレフィン開環重合体及びその水素化物が本来有する透明性や成形性等の優れた特性が維持されたまま、耐熱性や表面硬度が改良された熱可塑性有機無機複合ポリマー及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、分子鎖末端に特定のシリル基を有する環状オレフィンポリマーを合成し、このものを、所望により無機アルコキシドの存在下に加水分解・縮重合させることで、無機オキシ化合物を核とするラジアル型の熱可塑性有機無機複合ポリマーが効率よく得られること、及び得られた熱可塑性有機無機複合ポリマーは、透明性や成形性等に加えて、耐熱性や表面硬度にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明の第1によれば、2以上の環状オレフィンポリマーが分子鎖末端で無機オキシ化合物由来の構造単位を介して結合された構造を有し、該無機オキシ化合物由来の構造単位の含有量が0.1〜50重量%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が2,000〜1,000,000である熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法であって、
環状オレフィン単量体を、メタセシス重合触媒、および連鎖移動剤である、式(A):−Si(r1) (r2) 3−d (式中、r1は、アルコキシル基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、r2は水素原子または炭化水素基を表し、dは1〜3の整数を表す。)で表される基を有するオレフィン化合物の存在下で開環重合して得られる開環重合体、またはこの開環重合体に存在する主鎖中の炭素−炭素二重結合を水素化して得られる開環重合体水素化物である環状オレフィンポリマーを、加水分解および縮重合させることを特徴とする
熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法が提供される。
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法においては、縮重合を無機アルコキシド又は無機アリーロキシドの存在下に行うのが好ましい。
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法においては、少なくとも一方の分子鎖末端に、前記式(A)で表される基を有する環状オレフィンポリマーを加水分解および縮重合させ、次いで、無機アルコキシドまたは無機アリーロキシドを添加して反応をさらに行うのが好ましい。
また、本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法においては、前記式(A)で表される基を有するオレフィン化合物が、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリ(イソプロポキシ)シラン、ビニルトリ(イソプロポキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、またはアリルジメチルクロロシランであるのが好ましい。
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは、透明性や成形性等に加えて、耐熱性や表面硬度にも優れている。
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法によれば、無機オキシ化合物を核とするラジアル型の熱可塑性有機無機複合ポリマーを効率よく得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1)熱可塑性有機無機複合ポリマー
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは、2以上の環状オレフィンポリマーが分子鎖末端で無機オキシ化合物由来の構造単位を介して結合された構造を有し、前記無機オキシ化合物由来の構造単位の含有量が0.1〜50重量%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が2,000〜1,000,000であることを特徴とする。
(1)環状オレフィンポリマー
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーを構成する環状オレフィンポリマーは、環状オレフィン系単量体を開環メタセシス重合して得られる環状オレフィン開環重合体又はこの開環重合体に存在する主鎖中の炭素−炭素二重結合を水素化した環状オレフィン開環重合体水素化物であり、分子鎖の末端に、式(A):−Si(r1)(r2)3−d(式中、r1、r2およびdは前記と同じ意味を表す。)で表される基またはシラノール基を有するものである。
具体的には、下記に示す式[1]〜[4]で表される繰り返し単位を有する重合体が挙げられる。本発明に用いる環状オレフィンポリマーは、下記に示す式[1]〜[4]で表される繰り返し単位の一種からなるホモポリマーであっても、二種以上の組み合わせからなる共重合体であってもよい。また、共重合体である場合には、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
(a)式[1]:
Figure 0004581416
(b)式[2]:
Figure 0004581416
(c)式[3]:
Figure 0004581416
(d)式[4]:
Figure 0004581416
上記式[1]〜[4]において、pは0、1又は2であり、qは2〜10の整数を表す。R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、又はハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む基を表す。
前記R〜Rの炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、クロチル基等の炭素数2〜20のアルケニル基:エチニル基、プロパギル基等の炭素数2〜20のアルキニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;等が挙げられる。
ハロゲン原子を含む基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等のハロアルキル基;等が挙げられる。
ケイ素原子を含む基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニル基等のシリル基;トリメチルシリルメチル基、2−トリメチルシリルエチル基等のシリル基が置換したアルキル基;等が挙げられる。
酸素原子を含む基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。
窒素原子を含む基としては、アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;アミド基;N−メチルアミド基等のモノ置換アミド基;N,N−ジメチルアミド基等のジ置換アミド基;等が挙げられる。
前記RとR、RとR、RとRは一緒になって結合して、3〜8員環を形成してもよく、複数個のRが結合して3〜8員環を形成してもよい。かかる環としては、炭素原子のみからなるものであっても、酸素原子及び/又は窒素原子を含む環であってもよい。
また、分子鎖末端とは、環状オレフィン系単量体を開環重合して得られた分子鎖の末端のことをいう。具体的には、上記式[1]〜[4]中のX、Y、及びZのことである。具体的には、X及びY、Y及びZの少なくとも一方が、前記式(A)で表される基またはシラノール基であり、残りは、水素原子;又はメチル基、エチル基等のアルキル基;プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;の炭化水素基である。
なかでも、副反応や重合阻害が起こりにくいことから、X及びY、Y及びZの一方が、前記式(A)で表される基であり、他方が水素原子又は炭化水素基であるのが好ましい。
前記式(A)で表される基において、r1は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシル基;フェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などのアリールオキシ基;または、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;を表す。
r2は、水素原子または炭化水素基を表す。r2の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;プロパルギル基等のアルキニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;等が挙げられる。これらの中でも、効率よく本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーが得られることから、アルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
dは1、2または3を表す。
前記式(A)で表される基の具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;トリフェノキシシリル基等のトリアリールオキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、メチルジプロポキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基;フェニルジメトキシシリル基;フェニルジエトキシシリル基等のアリールジアルコキシシリル基;トリクロロシリル基、ジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基等が挙げられる。
また、シラノール基としては、トリヒドロキシシリル基、メチルジヒドロキシシリル基等が挙げられる。
本発明においては、環状オレフィンポリマーとして、前記式[1]〜[4]の中でも、耐熱性に優れることから、前記式[2]で示されるノルボルネン系開環重合体水素化物由来の繰り返し単位を好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上有するものが好適である。
前記式(A)で表される基またはシラノール基を環状オレフィンポリマーの末端に導入する方法としては、環状オレフィン系単量体をメタセシス反応触媒で重合する際に、前記式(A)で表される基またはシラノール基を有するオレフィン化合物を添加する方法が挙げられる。前記式(A)で表される基またはシラノール基を有するオレフィン化合物は、連鎖移動剤としての役割を果たす。
前記式(A)で表される基を有するオレフィン化合物としては、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシランアリルトリ(イソプロポキシ)シランビニルトリ(イソプロポキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン等が挙げられる。
前記シラノール基を有するオレフィン化合物としては、アリルトリヒドロキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン等が挙げられる。
また、環状オレフィンをメタセシス反応触媒で重合する際に、シリル基以外の官能基を有するオレフィン化合物を添加して、官能基を片末端に有する環状オレフィンポリマーを合成した後、該官能基を上述のシリル基に変換することもできる。例えば、カルボキシル基を片末端に有する環状オレフィンポリマーを合成した後、このポリマーと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物とを反応させて、片末端にシリル基有する環状オレフィンポリマーを得ることもできる。
重合に使用する環状オレフィン系単量体としては、ノルボルネン系単量体、又はモノ環状オレフィン系単量体を挙げることができる。
ノルボルネン系単量体は、下記に示す式[5]で表される化合物に代表されるものである。例えば、ノルボルネン類、ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体、テトラシクロドデセン類やヘキサシクロヘプタデセン類等のノルボルネン環を有する多環の環状オレフィン類が挙げられる。また、これらの単量体は、アルキル基やアルケニル基、アルキリデン基等の炭化水素基;窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、又は硫黄原子を含む基;ノルボルネン環の二重結合以外の二重結合;をさらに有してもよい。
式[5]:
Figure 0004581416
(式中、R〜R及びpは前記と同じ意味を表す。)
ノルボルネン類は、前記式[5]のpが0であるノルボルネン系単量体である。その具体例としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネン等の無置換又はアルキル基を有するノルボルネン類;
5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネン等のアルケニル基を有するノルボルネン類;
5−フェニルノルボルネン等の芳香環を有するノルボルネン類;
5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシ−イソプロピルノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン等の酸素原子を含む基を有するノルボルネン類;
5−シアノノルボルネン、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む基を有するノルボルネン類;等が挙げられる。
ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体としては、前記式[5]のpが0で、RとRが結合してノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン系単量体が挙げられる。具体的には、環構造が5員環であるジシクロペンタジエン類、芳香環を有するノルボルネン誘導体を例示することができる。
ジシクロペンタジエン類の具体例としては、ジシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンの5員環部分の二重結合を飽和させたトリシクロ[4.3.12,5.0]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.12,5.0]ウンデカ−3−エン等が挙げられる。
芳香環を有するノルボルネン誘導体としては、テトラシクロ[6.5.12,5.01,6.08,13]トリデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[6.6.12,5.01,6.08,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)等が挙げられる。
テトラシクロドデセン類は、前記式[5]のpが1であるノルボルネン系単量体である。その具体例としては、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン等の無置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;
8−フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;
8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;
8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;
8−クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;等が挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類は、前記式[5]のpが2であるノルボルネン系単量体である。その具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の無置換又はアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン等の環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−クロロヘキサシクロヘプタデセン等のハロゲン原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;等が挙げられる。
モノ環状オレフィン系単量体は、炭素数が4〜20、好ましくは4〜10の環状モノオレフィン又は環状ジオレフィンである。具体的には下記に示す式[6]で示される化合物である。
式[6]:
Figure 0004581416
(式中、R、R及びqは前記と同じ意味を表す。また、式:C(R)(R)で表される基は同一であっても、相異なっていてもよい。)
環状モノオレフィンとしては、例えば、特開昭64−66216号公報等に記載されているものが挙げられる。具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等を用いることができる。
環状ジオレフィンとしては、例えば、特開平7−258318号公報等に記載されているものが挙げられる。具体的には、シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等を用いることができる。
これらの環状オレフィン系単量体はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、耐熱性に優れた樹脂を得るためには、ジシクロペンタジエン類やテトラシクロドデセン類等の3環以上のノルボルネン系単量体を用いるのが好ましい。また、低吸湿性、低誘電性や耐薬品性に優れた樹脂を得るためには、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子等を含まない単量体、すなわち炭化水素系単量体を用いるのが好ましい。
前記環状オレフィンポリマーを得るために用いるメタセシス重合触媒としては、目的の重合体が得られるものであれば、特に制限されない。なかでも、重合活性に優れること、及び片方の分子鎖末端に選択的に官能基を導入することが容易であること等から有機ルテニウム化合物の使用が好ましい。
有機ルテニウム化合物は、有機化合物を配位子として有するルテニウム化合物であり、例えば、下記式[7]又は[8]で表すことができる。
式[7]:
Figure 0004581416
(式中、Xは任意のアニオン性配位子を示し、Lは任意の中性の電子供与性化合物を示す。X及びLの複数がお互いに結合して多座キレート配位子を形成してもよい。aは0〜4の整数、b及びcは1〜4の整数である。a、b、cが2以上のとき、X、L、[(X(L(Ru)]はそれぞれ同一でも相異なっていてもよい。)
式[8]:
Figure 0004581416
(式中、R及びRは互いに独立に、水素原子、C〜C20の炭化水素基、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、もしくはケイ素原子を含むC〜C20の炭化水素基を示し、X及びXは互いに独立に任意のアニオン性配位子を示す。L及びLは互いに独立に、任意の中性の電子供与性化合物を示す。R、R、X、X、L、又はLの複数が互いに結合して多座キレート配位子を形成してもよい。)
ここで、アニオン性配位子は中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であれば特に限定されない。中性の電子供与性化合物は中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子、すなわちルイス塩基であれば特に限定されない。
前記式[7]、[8]におけるX、X及びXの具体例としては、ハロゲン原子、水素原子、アセチルアセトン、ジケトネート基、シクロペンタジエニル基、アリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボキシル基、カルボキシル基、アルキル又はアリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、シクロペンタジエニル基、アリル基、アルキル基、アリール基が重合活性の点で優れているので好ましい。
前記式[7]、[8]におけるL、L及びLの具体例としては、酸素、水、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エ−テル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スチビン類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族類、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネ−ト類、複素環式カルベン化合物等が挙げられる。なかでも、ピリジン類、ホスフィン類、芳香族類、環状ジオレフィン類、複素環式カルベン化合物が、重合活性が高いので好ましく、複素環式カルベン化合物が特に好ましい。
前記式[8]におけるR、Rの具体例としては、水素、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基を挙げることができる。中でも、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が、重合活性が高いので好ましい。
上記重合触媒のうち、前記式[7]で表される化合物の具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム・二水和物、ジクロロビス〔(p−シメン)クロロルテニウム)〕、ジクロロ(2,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエン−1,8−ジイル)ルテニウム等が挙げられる。
前記式[8]で表される化合物の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)−3,3−ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジ(1’−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド等が挙げられる。
また、重合触媒の重合活性を高める目的で、ピリジン類、ホスフィン類、複素環式カルベン化合物等の中性の電子供与性化合物をルテニウム金属に対して、重量比で1〜100倍の割合で併用することができる。
さらに、前記式[7]で表される重合触媒を使用する場合には、重合活性を高める目的で、ジアゾ化合物、アセチレン化合物又はシリル化合物を、ルテニウム金属に対して、重量比で1〜100倍の割合で併用することができる。
これらの中でも、上記の添加物を添加しなくても高い重合活性を示すことから、前記式[8]で表される重合触媒を使用するのがより好ましい。
前記有機ルテニウム化合物を用いた重合反応は無溶媒下で行うこともできるが、重合後に水素化反応を溶媒中で行う上では、溶媒中で行うのが好ましい。
用いる溶媒としては、重合体及び重合体水素化物が所定の条件で溶解し、重合及び水素化に影響しないものであれば、特に限定されない。
このような溶媒としては、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル系溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒の使用が好ましい。
重合反応は、環状オレフィン系単量体及び前記式(A)で表される基またはシラノール基を有するオレフィン化合物の混合物と、有機ルテニウム化合物とを接触させることで開始する。
環状オレフィン系単量体に対する有機ルテニウム化合物の使用割合は、(化合物中の金属ルテニウム:環状オレフィン系単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1:1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000である。有機ルテニウム化合物が多すぎると触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られないことがある。
環状オレフィン系単量体に対する前記式(A)で表される基またはシラノール基を有するオレフィン化合物の使用割合は、通常、(前記式(A)で表される基またはシラノール基を有するオレフィン化合物:環状オレフィン系単量体)のモル比で1:2〜1:10,000である。前記使用割合をこの範囲とすることにより、得られる開環重合体分子鎖の少なくとも一方の末端に前記式(A)で表される基またはシラノール基を導入することができる。
重合を溶媒中で行う場合には、環状オレフィン系単量体の濃度は、1〜60重量%が好ましく、2〜50重量%がより好ましく、5〜45重量%が特に好ましい。単量体の濃度が1重量%未満の場合は生産性が悪く、60重量%を超える場合は重合後の溶液粘度が高くなり、その後の水素化反応が困難となる。
重合温度は特に制限されないが、通常−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、特に制限されないが、通常1分間から100時間である。
本発明に用いる環状オレフィン開環重合体水素化物は、上記の方法で得られた環状オレフィン開環重合体の主鎖中の炭素−炭素二重結合を、周期律表第8〜10族遷移金属化合物を主成分とする均一系水素化触媒、周期律表第8〜10族遷移金属を担体に担持した担持型水素化触媒等の公知の水素化触媒を用いて水素化して得ることができる。
水素化反応は不活性溶媒中で行う。溶媒としては任意に選択することができ、前述の重合反応で使用するものと同様のものを用いることができる。なかでも、芳香族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒及びエーテル系溶媒が、重合体水素化物の溶解性に優れるので好ましい。
水素化反応の条件は、使用する水素化触媒の種類によって異なる。水素化温度は通常−20℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+220℃、より好ましくは0℃〜200℃である。水素圧力は通常0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜8MPa、より好ましくは0.1〜5MPaである。水素化温度が低すぎると反応速度が遅く、高すぎると副反応が起こる。また、水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる。
用いた水素化触媒を分離除去する方法としては、以下の方法を挙げることができる。
均一系触媒を用いた場合には、重合後の反応液に酸化剤又は塩基性化合物と該反応液の貧溶媒である水やメタノール等添加して、均一系触媒を金属酸化物や金属塩にし、該金属酸化物や金属塩を貧溶媒中に抽出した後に濾過や遠心分離により分離除去する方法、吸着剤に吸着させて分離除去する方法、均一系触媒を塩酸等の酸性水溶液中に抽出することにより分離除去する方法、等を用いることができる。
担持型水素化触媒を用いた場合には、遠心分離、濾過により容易に分離除去する方法を用いることができる。
本発明に用いる環状オレフィンポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算で、通常1,000〜100,000である。
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは、2以上の環状オレフィンポリマー鎖が分子鎖末端で無機オキシ化合物由来の構造単位を介して結合された構造を有する。本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーとしては、無機オキシ化合物由来の構造単位を介して2個の環状オレフィンポリマー鎖が結合してなる直鎖型ポリマーや、無機オキシ化合物由来の構造単位を核として放射状に環状オレフィンポリマーが結合したラジアル型のポリマー等が挙げられる。
無機オキシ化合物は、金属原子と酸素原子が交互に結合した化合物である。金属原子の具体例として、Ti、Zr、Al、Si、Nb、Ta、Na、Ba、Cu、Ge、V、W、Fe等を挙げることができる。中でもTi、Zr、Al、Siは取り扱いが容易で好ましく、Ti、Siが特に好ましい。金属原子は酸素原子以外に任意の有機基と結合していても良い。本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは、該有機基の一部が環状オレフィンポリマーであるものである。
無機オキシ化合物由来の構造単位の含有量は、全重量に対して0.1〜50重量%であり、好ましくは1〜45重量%、より好ましくは2〜40重量%、さらに好ましくは3〜30重量%である。無機オキシ化合物が少なすぎると耐熱性等の効果が少なく、多すぎると透明性が損なわれるおそれがある。
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量は、2,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜200,000、より好ましくは5,000〜100,000である。
また、ガラス転移温度(Tg)は、通常50〜300℃、好ましくは100〜250℃である。
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは熱可塑性であるので、必要に応じて架橋剤、架橋助剤、その他の配合剤、溶媒等を配合し、周知の成形方法で所望の形状に成形して成形体を製造することができる。成形体を得る場合には、本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーを単独で用いてもよいし、相溶する他の熱可塑性樹脂、好ましくは熱可塑性ノルボルネン系樹脂と併用してもよい。
成形方法としては、例えば、射出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、回転成形法、真空成形法、押出成形法、カレンダー成形法、溶液流延法、熱プレス成形法、インフレーション法等があるが、成形が可能な限り特定の成形方法に限定されない。
成形体は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、繊維状、フィルム又はシート形状等種々の形態で使用することができる。
また、本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは、該有機無機複合ポリマーの層を1層以上有する積層体にすることができる。積層体は、上記の板状成形体やフィルム又はシート状成形体同士を2枚以上貼り合わせる方法、上記の板状成形体やフィルム又はシート状成形体と、金属、樹脂、紙等の他の材料の層とを積層する方法、前記有機無機複合ポリマーと他の熱可塑性樹脂とを同時に加熱溶融成形する方法(共押し出し法)等により得ることができる。
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーを用いた成形品又は積層体は、吸水率、比誘電率、及び誘電正接が低く、さらに密着性に優れているので種々の用途に好適である。
また、本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは、芳香族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒等の有機溶媒に溶解するので、取り扱いが容易でキャスト成形も容易に行うことができる。しかも、本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは環状オレフィンの特長である透明性、低吸湿性、電気特性を維持したまま、耐熱性、表面硬度、機械強度、耐ソルベントクラック性に優れる。
2)熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法
本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法は、少なくとも一方の分子鎖末端に、前記式(A)で表される基を有する環状オレフィンポリマー(以下、「シリル基含有環状オレフィンポリマー」ということがある。)を、加水分解および縮重合させることを特徴とする。
本発明の製造方法は、(1)前記シリル基含有環状オレフィンポリマーを加水分解することにより、前記式(A)で表される基において、r1が全部または部分的にOH基に変換された環状オレフィンポリマーの水酸化物ゾルを得、(2)次いで、この水酸化物ゾルの縮重合反応を行うことにより、無機オキシ化合物を介して結合された構造の熱可塑性有機無機複合ポリマーを形成させるものである。
本発明の製造方法においては、用いるシリル基含有環状オレフィンポリマーとして複数種のポリマーの混合物を使用することもできる。この場合には、構造の異なる環状オレフィンポリマー鎖や分子量の違う環状オレフィンポリマー鎖を有するラジアル型ポリマーを製造することができる。
前記シリル基含有環状オレフィンポリマーの加水分解/縮重合反応は、通常、シリル基含有環状オレフィンポリマーの有機溶剤溶液に所定量の水を添加して、内容物を攪拌することにより行うことができる。
水の添加量は、特に制限されないが、前記シリル基含有環状オレフィンポリマー中の式(A):−Si(r1)(r2)3−dで表される基におけるr1に対して、当モル以上添加するのが望ましい。
水の添加方法については有機溶媒中に適量添加する方法でもよく、及び空気雰囲気中の水分により徐々に吸湿させる方法で行ってもよい。
また、その際に酸又は塩基触媒を用いて加水分解、縮重合反応速度を制御することが好ましい。用いる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、蓚酸等の有機酸等が挙げられる。また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基;等が挙げられる。
加水分解/縮重合の反応温度は0℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃である。また、加水分解/縮重合の反応時間は、通常1分間から100時間である。
加水分解/縮重合反応は一般に有機溶剤中で行うことができる。用いる有機溶剤としては、環状オレフィンポリマーが溶解するものであれば、特に制限されない。
用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;アセト二トリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素系溶剤;及びこれらの2種以上からなる混合溶剤;等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
本発明の製造方法においては、前記加水分解/縮重合反応の際に、無機アルコキシド又は無機アリーロキシドを反応系に添加して、前記加水分解/縮重合反応に参加させることによって、核となる無機オキシ化合物の含有量を調整することができる。この方法によれば、任意の組成比で無機オキシ化合物が導入された熱可塑性有機無機複合ポリマーを製造することができる。
無機アルコキシドまたは無機アリーロキシドを添加する時期としては、前記シリル基含有環状オレフィンポリマーの加水分解/縮重合反応を行う際であれば特に制約されない。
例えば、
(i)前記シリル基含有環状オレフィンポリマーの溶液に、水および無機アルコキシドまたは無機アリーロキシドを添加して、前記シリル基含有環状オレフィンポリマーを加水分解/縮重合させる方法、
(ii)前記シリル基含有環状オレフィンポリマーを加水分解および縮重合させ、次いで、無機アルコキシドまたは無機アリーロキシドを添加して反応をさらに行う方法、
(ii)前記シリル基含有環状オレフィンポリマーを加水分解して、少なくとも一方の分子鎖末端にシラノール基を有する環状オレフィンポリマーを得た後、このものを、無機アルコキシドまたは無機アリーロキシドの存在下に縮重合させる方法、などが挙げられる。
添加する無機アルコキシド又は無機アリーロキシドは、金属原子のアルコキシド又はアリーロキシドである。金属原子としては、Ti、Zr、Al、Si、Nb、Ta、Na、Ba、Cu、Ge、V、W、Fe等が挙げられる。これらの中でも、取扱い性の観点からTi、Zr、Al、Siが好ましく、Ti、Siが特に好ましい。
好ましい無機アルコキシド又は無機アリーロキシドの具体例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタン等のTi化合物;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ(イソプロポキシ)ジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラフェノキシジルコニウム等のZr化合物;テトラメトキシアルミニウム、テトラエトキシアルミニウム、テトラ(イソプロポキシ)アルミニウム、テトラブトキシアルミニウム、テトラフェノキシアルミニウム等のAl化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(イソプロポキシ)シラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等のSi化合物;等が挙げられる。
このようにして得られる熱可塑性有機無機複合ポリマーは、前記無機オキシ化合物由来の構造単位の含有量が、全重量に対して0.1〜50重量%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量は、2,000〜1,000,000である。
以下に、実施例と比較例とを挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例においては、特に断りのない限り、部および%は重量基準である。
(1)分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
(2)重合体中の単量体組成比は、H−NMRスペクトルにより測定した。
(3)水素化率は、H−NMRスペクトルにより測定した。
(4)無機オキシ化合物由来の構造単位の含有量(以下、単に「無機含有量」という。)は、示差熱熱重量測定(TG/DTA)により、加熱減量を測定し、残渣重量の元のポリマー重量に対する割合(SiOまたはTiO換算)として決定した。
(5)ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により決定した。
[参考例1]
攪拌機付きガラス反応器に、窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン240部、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン100部、及び連鎖移動剤としてアリルトリメトキシシラン9.43部を仕込んだ。テトラヒドロフラン20部に溶解した(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.005部を添加して、70℃で重合を行った。2時間後、得られたポリマー溶液を室温まで冷却し、重合停止剤及び触媒改質剤として0.005部のエチルビニルエーテルを添加した。重合反応液を多量のアセトン/メタノール混合液(2:1)に注いで固形分を析出させ、濾別洗浄後、40℃で18時間減圧乾燥して、末端にトリメトキシシリル基を有する開環メタセシス重合体を得た。
得られた重合体の収量は98部(収率=98%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=2,800、重量平均分子量(Mw)=5,900であった。
上記重合体98部をテトラヒドロフラン400部に溶解した後、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、次いでビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジクロリド0.05部及びエチルビニルエーテル0.39部をテトラヒドロフラン20部に溶解した水素化触媒溶液を添加し、更に水素化活性化剤としてN,N−ジメチルアセトアミドを添加して、水素圧4.5MPa、150℃で6時間水素化反応を行った。反応終了後、反応液を多量のアセトン/メタノール混合液(2:1)に注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で18時間減圧乾燥した。
得られた水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=4,500、重量平均分子量(Mw)=7,600、ガラス転移温度(Tg)は74℃であった。トリメトキシシリル基が完全に保存され、主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることをH−NMRにより確認した。
[参考例2]
参考例1において、アリルトリメトキシシランの添加量を4.72部に代えたこと以外は、参考例1と同様に重合反応を行った。得られた重合体の収量は98部(収率=98%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=5,200、重量平均分子量(Mw)=11,700であった。
上記重合体は参考例1と同様に水素化反応を行った。得られた水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=7,300、重量平均分子量(Mw)=12,800、ガラス転移温度(Tg)は80℃であった。トリメトキシシリル基が完全に保存され、主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることをH-NMRにより確認した。
[参考例3]
攪拌機付きガラス反応器に、窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン240部、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(エチルテトラシクロドデセン)60部、ノルボルネン-N-フェニルマレイミド55.6部、及び連鎖移動剤としてアリルトリメトキシシラン11.33部を仕込んだ。テトラヒドロフラン20部に溶解した(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.01部を添加して、70℃で重合を行った。2時間後、得られたポリマー溶液を室温まで冷却し、重合停止剤及び触媒改質剤として0.08部のエチルビニルエーテルを添加した。重合反応液を多量のn-ヘキサンに注いで固形分を析出させ、濾別洗浄後、40℃で18時間減圧乾燥して、末端にトリメトキシシリル基を有する開環メタセシス重合体を得た。
得られた重合体の収量は95部(収率=95%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=2,600、重量平均分子量(Mw)=4,300であった。
上記重合体95部をテトラヒドロフラン400部に溶解した後、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、次いでビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジクロリド0.1部及びエチルビニルエーテル0.8部をテトラヒドロフラン20部に溶解した水素化触媒溶液を添加し、更に水素化活性化剤としてN,N−ジメチルアセトアミドを添加して、水素圧4.5MPa、150℃で6時間水素化反応を行った。
反応終了後、反応液を多量のn−ヘキサンに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で18時間減圧乾燥した。
得られた水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=3,100、重量平均分子量(Mw)=5,100であった。トリメトキシシリル基が完全に保存され、主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることをH-NMRにより確認した。無機含有量(SiO換算)は、TG/DTAより2.7%であることを確認した。ガラス転移温度(Tg)は114℃であった。重合体中の単量体組成比はエチルテトラシクロドデセン/ノルボルネン−N−フェニルマレイミド=60/40(モル/モル)であった。
[実施例1]
参考例1で得られた末端メトキシシリル基含有環状オレフィンポリマー30部をテトラヒドロフラン150部に溶解させ、2.5部の1規定塩酸水溶液を添加して80℃にて2時間攪拌し、加水分解・縮重合反応を行なった。反応終了後、反応液を多量のアセトンに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、100℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリマーはテトラヒドロフラン等の有機溶剤に可溶で,分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=11,400、重量平均分子量(Mw)=19,700となり、加水分解・縮重合前に比べ、分子量が約2.5倍に増加した。H−NMR測定により、トリメトキシシリル基のメチル基由来のピークがほぼ消失し、末端メトキシシリル基は99%以上加水分解されていることを確認した。無機含有量(SiO換算)は2.0%であった。ガラス転移温度(Tg)は111℃であった。
[実施例2]
参考例1で得られた末端メトキシシリル基含有環状オレフィンポリマー30部をテトラヒドロフラン150部に溶解させ、5部の0.5規定水酸化ナトリウム水溶液を添加して80℃にて4時間攪拌し、加水分解・縮重合反応を行なった。反応終了後、反応液を多量のアセトンに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、100℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリマーはテトラヒドロフラン等の有機溶剤に可溶で,分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=64,000、重量平均分子量(Mw)=224,100となり、加水分解・縮重合前に比べ、分子量が約30倍に増加した。H−NMRにより、トリメトキシシリル基のメチル基由来のピークがほぼ消失し、末端メトキシシリル基は99%以上加水分解されていることを確認した。無機含有量(SiO換算)は1.2%であった。ガラス転移温度(Tg)は126℃であった。
[実施例3]
参考例3で得られた末端メトキシシリル基含有環状オレフィンポリマー40部をテトラヒドロフラン240部に溶解させ、6.4部の1規定塩酸水溶液を添加して70℃にて16時間攪拌し、加水分解・縮重合反応を行なった。反応終了後、反応液を多量のアセトンに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、100℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリマーはテトラヒドロフラン等の有機溶剤に可溶で,分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=7,000、重量平均分子量(Mw)=23,200となり、加水分解・縮重合前に比べ、分子量は約2倍に増加した。H−NMRの測定により、トリメトキシシリル基のメチル基由来のピークがほぼ消失し、末端メトキシシリル基は99%以上加水分解されていることを確認した。無機含有量(SiO換算)は、TG/DTAより2.8%であった。ガラス転移温度(Tg)は114℃であった。
[実施例4]
実施例1で得られたポリマー5部、テトラエトキシチタン0.05部のそれぞれをテトラヒドロフラン40部に溶解し、70℃にて16時間攪拌した。反応終了後、反応液を多量のアセトンに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、100℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリマーについて、GPCによる重量平均分子量、および加水分解・縮重合前のポリマーとのMwの比、示差熱熱重量分析(TG/DTA)による無機含有量(TiO及びSiO換算)、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(Tg)を第1表に示した。
[実施例5〜9]
テトラエトキシチタンの添加量を第1表に示した量とした以外は、実施例4と同様に操作を行い、実施例5〜9のポリマーをそれぞれ得た。
得られたポリマーのそれぞれについて、テトラエトキシチタン添加量(部)、GPCによる重量平均分子量(Mw)、および加水分解・縮重合前のポリマーとのMwの比(倍)、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(Tg)、示差熱熱重量分析(TG/DTA)による無機含有量(TiO及びSiO換算)を第1表に示した。
Figure 0004581416
[実施例10]
参考例2で得られた末端メトキシシリル基含有環状オレフィンポリマー30部をテトラヒドロフラン150部に溶解させ、2.5部の1規定塩酸水溶液を添加して80℃にて4時間攪拌し、加水分解・縮重合反応を行なった。反応終了後、反応液を多量のアセトンに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、100℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリマーはテトラヒドロフラン等の有機溶剤に可溶で,分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=8,100、重量平均分子量(Mw)=12,400となり、加水分解・縮重合前に比べ、分子量はほとんど変化しなかった。H−NMRの測定により、トリメトキシシリル基のメチル基由来のピークがほぼ消失し、末端メトキシシリル基は99%以上加水分解され、シラノール基になっていることを確認した。ガラス転移温度(Tg)は108℃であった。
上記で得られたポリマーを5部、テトラエトキシチタンを0.05部のそれぞれをテトラヒドロフラン40部に溶解し、70℃にて16時間攪拌した。反応終了後、反応液を多量のアセトンに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、100℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリマーについて、GPCによる重量平均分子量(Mw)、および加水分解・縮重合前のポリマーとのMwの比(倍)、示差熱熱重量分析(TG/DTA)による無機含有量(TiO及びSiO換算)、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(Tg)を第2表に示した。
[実施例11〜14]
テトラエトキシチタンの添加量を第2表に示した量とした以外は、実施例10と同様に操作を行い、実施例11〜14のポリマーをそれぞれ得た。
得られたポリマーのそれぞれについて、テトラエトキシシラン添加量(部)、GPCによる重量平均分子量(Mw)、および加水分解・縮重合前のポリマーとのMwの比(倍)、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(Tg)、示差熱熱重量分析(TG/DTA)による無機含有量(TiO及びSiO換算)を第2表に示した。
Figure 0004581416
[実施例15]
実施例3で得られたポリマー5部、テトラt−ブトキシチタン0.5部のそれぞれをテトラヒドロフラン40部に溶解し、70℃にて16時間攪拌した。反応終了後、反応液を多量のアセトンに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、100℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリマーについて、GPCによる重量平均分子量(Mw)、、および加水分解・縮重合前のポリマーとのMwの比(倍)、示差熱熱重量分析(TG/DTA)による無機含有量(TiO及びSiO換算)、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(Tg)を第3表に示した。
[実施例16]
実施例15において、テトラt−ブトキシチタン0.5部を1部とする以外は実施例15と同様にして実施例16のポリマーを得た。
得られたポリマーについて、GPCによる重量平均分子量(Mw)、および加水分解・縮重合前のポリマーとのMwの比(倍)、示差熱熱重量分析(TG/DTA)による無機含有量(TiO及びSiO換算)、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(Tg)を第3表に示した。
[実施例17]
実施例3で得られたポリマー5部とテトラt−ブトキシチタン1部を、テトラヒドロフラン40部に溶解し、更に水0.25部を添加し、70℃にて16時間攪拌した。反応終了後、反応液を多量のアセトンに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、100℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリマーについて、GPCによる重量平均分子量(Mw)、および加水分解・縮重合前のポリマーとのMwの比(倍)、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(Tg)、示差熱熱重量分析(TG/DTA)による無機含有量(TiO及びSiO換算)を第3表に示した。
Figure 0004581416
以上のように、本実施例によれば、2以上の環状オレフィンポリマーが分子鎖末端で無機オキシ化合物を介して結合された熱可塑性有機無機複合ポリマーを得ることができる。得られたポリマーは熱可塑性を有し、また、ガラス転移温度が高くなっており、高い耐熱性を示す。
以上説明したように、本発明の熱可塑性有機無機複合ポリマーは、透明性や成形性等に加えて、耐熱性や表面硬度にも優れている。したがって、プラスチックレンズ、球形レンズ、非球形レンズ、複写機レンズ、ビデオカメラコンバータレンズ、光ディスク用ピックアップレンズ、車両部品用レンズ等の耐熱性光学部品材料;半導体封止用材料、半導体アンダーフィルム用材料、半導体保護膜用材料、液晶封止用材料、回路基材材料、回路保護用材料、平坦化膜材料電気絶縁膜材料等の電子部品用材料;等の用途に好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 2以上の環状オレフィンポリマーが分子鎖末端で無機オキシ化合物由来の構造単位を介して結合された構造を有し、該無機オキシ化合物由来の構造単位の含有量が0.1〜50重量%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が2,000〜1,000,000である熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法であって、
    環状オレフィン単量体を、メタセシス重合触媒、および連鎖移動剤である、式(A):−Si(r1) (r2) 3−d (式中、r1は、アルコキシル基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、r2は水素原子または炭化水素基を表し、dは1〜3の整数を表す。)で表される基を有するオレフィン化合物の存在下で開環重合して得られる開環重合体、またはこの開環重合体に存在する主鎖中の炭素−炭素二重結合を水素化して得られる開環重合体水素化物であって、少なくとも一方の分子鎖末端に、式(A):−Si(r1) (r2) 3−d (式中、r1、r2およびdは前記と同じ意味を表す。)で表される基を有する環状オレフィンポリマーを、加水分解および縮重合させることを特徴とする
    熱可塑性有機無機複合ポリマーの製造方法。
  2. 縮重合を無機アルコキシドまたは無機アリーロキシドの存在下に行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 少なくとも一方の分子鎖末端に、式(A):−Si(r1)(r2)3−d(式中、r1は、アルコキシル基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、r2は水素原子または炭化水素基を表し、dは1〜3の整数を表す。)で表される基を有する環状オレフィンポリマーを加水分解および縮重合させ、次いで、無機アルコキシドまたは無機アリーロキシドを添加して反応をさらに行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記式(A)で表される基を有するオレフィン化合物が、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリ(イソプロポキシ)シラン、ビニルトリ(イソプロポキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、またはアリルジメチルクロロシランである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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