<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、適宜、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される製造装置による電子回路基板製造のモデルを例示した図である。図1において、製造装置1は、電子回路基板製造装置であり、加工部11および複数の部材品貯留部12により構成され、また、製造装置1には、製造管理用パソコン2が接続されている。
この場合の製造装置1は、すでにスルーホールが形成され、プリント配線された加工前電子回路基板4に電子回路部品を搭載し、リフロー半田やフロー半田により半田付けをして、加工済電子回路基板5を製造するものである。図1において、加工部11は、一つだけしか図示していないが、実際には、チップ搭載装置、半田付け装置等からなる複数の加工部により構成される。ここでは、説明を分かりやすくするために、加工部11は、一つのチップ搭載装置により構成されるものとする。
部材品貯留部12は、加工前電子回路基板4に搭載する電子回路部品を一時的に保管する容器である。電子回路部品としては、LSI(Large Scale Integrated Circuits)、IC(Integrated Circuits)、ダイオード、抵抗、コンデンサ等がある。これらの電子回路部品は、通常、キャリヤテープやフィーダーカート(マガジンと呼ぶこともある。)に収納された形態で電子部品メーカから納入される。そのため、実際の部材品貯留部12は、これらのキャリヤテープやフィーダーカートを直接セットできるようにされていることが多い。従って、電子部品の製造ロット識別番号は、通常、キャリヤテープやフィーダーカートに付されており、本実施形態では、キャリヤテープやフィーダーカート等の部材品収納ケースに製造ロット識別番号のバーコードが付されているものとする。ここで、バーコードは、2次元バーコードでもよい。
加工部11のチップ搭載装置は、部材品貯留部12に収納されている電子部品を一つずつ取り出して加工前電子回路基板4の所定の位置に搭載していく。なお、チップ搭載装置にも複数タイプがあり、通常の電子回路基板を製造する場合にも、通常、2種のチップ搭載装置を利用することが多い。ここでは、使用するチップ搭載装置が複数あっても、それらをすべて含めて一つのチップ搭載装置とみなす。
図1において、製造管理用パソコン2は、図示しない線により、加工部11および各部材品貯留部12に接続され、その各々の動作状況を監視する。また、バーコードリーダ3を備えており、加工前電子回路基板4や加工済電子回路基板5に印刷されている製造品識別番号のバーコードを読み取る。また、部材品貯留部12にセットされるキャリヤテープやフィーダーカートに付されている製造ロット識別番号のバーコードを読み取る。
なお、ここでは、バーコードリーダ3の代わりにモニタカメラと文字認識装置を用いてもよい。この場合、電子回路基板等にはバーコードの代わりに文字による製造品識別番号等が印刷されていてもよい。また、バーコードリーダ3の代わりにICタグリーダを用いてもよい。この場合には、電子回路基板や電子部品の収納ケースにはICタグが貼付されているものとする。
図2は、第1の実施形態における部材品トレーサビリティ管理装置の構成の例を示した図である。図2において、部材品トレーサビリティ管理装置7は、演算処理部71と、メモリ部72と、入出力インタフェース部73と、液晶ディスプレイ74と、キーボード75と、製造実績情報記憶部76と、部材品供給実績情報記憶部77と、製造ロットトレース情報記憶部78と、購入ロットトレース情報記憶部79と、製造品構成情報記憶部80とを含んで構成されたコンピュータである。
ここで、メモリ部72は、半導体メモリおよびハード磁気ディスク装置によって構成され、部材品トレーサビリティ管理装置7の機能を実現するためのプログラムやオペレーティングシステムのプログラムが格納される。そして、メモリ部72は、演算処理部71がそのプログラムを実行する際の作業領域としても用いられる。
入出力インタフェース部73は、液晶ディスプレイ74やキーボード75とのインタフェース、ネットワーク8とのインタフェース等、外部周辺装置を接続するインタフェースを含んで構成される。また、液晶ディスプレイ74およびキーボード75は、利用者が部材品トレーサビリティ管理装置7へ情報を入力したり、情報を閲覧したりするのに用いられる。なお、ここで、液晶ディスプレイ74の代わりに、CRT(Cathode Ray Tube)等他のディスプレイ装置を用いてもよい。
製造実績情報記憶部76と、部材品供給実績情報記憶部77と、製造ロットトレース情報記憶部78と、購入ロットトレース情報記憶部79と、製造品構成情報記憶部80とは、ハード磁気ディスク装置等の大容量記憶装置上に構成され、部材品トレーサビリティ管理装置7の機能を実現するための情報を記憶する。これらの各記憶部76〜80が記憶する情報の内容については、別途、図を用いて詳しく説明する。
図2において、部材品トレーサビリティ管理装置7は、入出力インタフェース部73を介してLAN(Local Area Network)等のネットワーク8に接続され、さらに、そのネットワーク8を介して、製造装置1の製造管理用パソコン2に接続されている。図2には、製造管理用パソコン2が一台しか記載されていないが、複数の製造管理用パソコン2が接続される構成であっても構わない。また、その製造管理用パソコン2が複数の製造装置1の製造情報を管理しても構わない。
図3は、第1の実施形態における製造装置による製造品の製造手順のタイムチャートおよび部材品貯留部への部材品供給手順のタイムチャートを例示した図である。以下、図3を用いて図1で示した電子回路基板製造装置における製造手順について説明する。
図3において、最上段のタイムチャートは、製造品名称がPB00Aという電子回路基板の製造手順を示したタイムチャートである。このタイムチャートによれば、製造品識別番号A0001の電子回路基板は、製造装置1の加工部11において8時55分に製造終了し、加工部11から取り外される。次に、製造品識別番号A0002の電子回路基板が加工部11にセットされ、9時00分に製造開始される。そして、製造品識別番号A0002の電子回路基板は、9時55分に製造終了し、加工部11から取り外される。次に、製造品識別番号A0003の電子回路基板が加工部11にセットされ、10時00分に製造開始される。
加工前電子回路基板4の表面の所定の位置には、製造品識別番号(例えば、A0001)がバーコードで印刷されている。そこで、製造管理用パソコン2は、その加工前電子回路基板4が加工部11へセットされるときに、バーコードリーダ3によりそのバーコードを読み取るとともに、そのときの時刻を製造開始時刻として記憶する。また、電子回路基板の製造が終了し、その加工済電子回路基板5が加工部11から取り外されるときに、再度、バーコードリーダ3によりそのバーコードを読み取るとともに、そのときの時刻を製造終了時刻として記憶する。
図3において2段目以下のタイムチャートは、識別番号がそれぞれ123A、123B、123Cである部材品貯留部12へ、部材品名称がそれぞれIC001、DI003、CA789である部材品を供給する手順を示したタイムチャートである。
図3によれば、識別番号が123Aの部材品貯留部12には、当初、部材品名称がIC001で、製造ロット識別番号がLOT012A1である部材品(例えば、ICチップ)が、キャリヤテープやフィーダーカートに収納された状態で貯留されており、9時30分にその部材品が使い尽くされてその部材品貯留部12からの供給が停止される。そして、部材品名称がIC001で、製造ロット識別番号LOT012A2である部材品が、キャリヤテープやフィーダーカートに収納された状態で識別番号123Aの部材品貯留部12に新たにセットされ、9時40分にその供給が開始される。
同様に、識別番号123Bの部材品貯留部12には、当初、部材品名称がDI003で、製造ロット識別番号がLOT123B1である部材品(例えば、ダイオードチップ)が貯留されており、8時55分にその供給が停止される。そして、部材品名称がDI003で、製造ロット識別番号がLOT123B1またはLOT123B2である部材品が、キャリヤテープやフィーダーカートに収納された状態で識別番号が123Bの部材品貯留部12にセットされ、9時00分にその供給が開始され、また、10時15分にその供給が停止される。さらに、同様にして、10時20分に部材品名称がDI003で、製造ロット識別番号がLOT123B3である部材品の供給が開始される。
また、識別番号が123Cの部材品貯留部12においても、同様の手順によって、部材品名称がCA789の部材品(例えば、コンデンサチップ)の供給開始と供給停止が行われる。ただし、このタイムチャートの例では、部材品の供給停止から供給開始までの時間がゼロとなっている点が、他と異なっている。
本実施形態では、部材品収納ケースであるキャリヤテープやフィーダーカートにその部材品の製造ロット識別番号がバーコードで付されている。そこで、製造管理用パソコン2は、部材品収納ケースが部材品貯留部12へセットされるときに、その部材品収納ケースに付されているバーコードをバーコードリーダ3で読み取るとともに、そのときの時刻を部材品供給開始時刻として記憶する。製造管理用パソコン2は、また、部材品貯留部12内の部材品がなくなったことを感知すると、そのときの時刻を部材品供給停止時刻として記憶し、オペレータまたは図示しない収納ケースの自動ローダに対し、空の部材品収納ケースを外し、新たな部材品収納ケースをセットすることを求める。
また、図3において、識別番号が123Bの部材品貯留部12には、9時00分から10時15分までの間、相異なる製造ロット識別番号(LOT123B1、LOT123B2)の部材品が混在していることを表している。
このような場合、本実施形態の製造管理用パソコン2は、部材品貯留部12のなかに混在する製造ロット識別番号のLOT123B1とLOT123B2との部材品を弁別することをしない。そのほうが、製造装置1の構成が簡単となるため、製造装置1のコストが低くてすむ。もし、ここで、製造ロット識別番号を弁別できるようにすると、部材品貯留部12における部材品の供給機構や供給手順に種々の負担や制約が加わるため、その装置構成が複雑となり、その装置コストが大きくなる。
そこで、本実施形態では、このような場合には、一つの部材品に対して複数の製造ロット識別番号を対応させる。すなわち、製造管理用パソコン2は、製造品識別番号がA0002の電子回路基板に使用されている部材品名称がDI003の部材品は、製造ロット識別番号がLOT123B1またはLOT123B2であるとして、両者の製造ロット識別番号をともに記憶する。
以上のように、一つの部材品貯留部12に相異なる製造ロット識別番号の部材品が混在する状況は、次のような場合に生じる。
(1)複数の製造ロット識別番号の部材品が混在してキャリヤテープ、フィーダーカート、その他の部材品の収納ケースに収納されていた場合。
(2)キャリヤテープやフィーダーカートには同一の製造ロット識別番号の部材品が収納されていても、部材品貯留部12に複数のキャリヤテープやフィーダーカートをセットすることができ、加工部11がそのキャリヤテープやフィーダーカートを弁別可能な構成になっていない場合。
(3)部材品貯留部12に部材品が残っているのに、その部材品とは異なる製造ロット識別情報の部材品を補充する場合。
なお、この(3)の場合は、加工部11での製造開始時点で部材品を補充するような場合であり、現実にもよく起こり得ると考えてよい。
さらには、図3の識別番号が123Aの部材品貯留部12においては、加工部11が製造品識別番号A0002の電子回路基板を製造している途中で、部材品名称がIC001の部材品の製造ロット識別番号がLOT012A1からLOT012A2へと変わっている。このような場合、製造品識別番号A0002の電子回路基板には、製造ロット識別番号がLOT012A1の部材品だけではなく、製造ロット識別番号LOT012A2の部材品が使用されている可能性がある。本実施形態では、このような場合にも、部材品の製造ロット識別番号を弁別することをせず、製造管理用パソコン2は、製造品識別番号がA0002の電子回路基板に使用されている部材品名称がIC001の部材品の製造ロット識別番号として、LOT012A1およびLOT012A2の二つの製造ロット識別番号をともに記憶する。
以上、図3で説明したように、製造管理用パソコン2は、製造装置1によって製造される製造品がその加工部11に入れられるとき、および、その加工部11から取り出されるときに、その製造品に付されている製造品識別番号を読み取り、読み取った製造品識別番号をそのときの時刻(製造開始時刻および製造終了時刻)とともに記憶する。また、製造管理用パソコン2は、部材品が部材品貯留部12に供給されるとき、および、その部材品貯留部12が空になったときまたは新たな部材品を補充することが必要となったときに、その部材品またはその部材品の収納ケースに付されている部材品の製造ロット識別番号を読み取り、読み取った製造ロット識別番号をそのときの時刻(部材品供給開始時刻および部材品供給停止時刻)とともに記憶する。
さらに、製造管理用パソコン2は、記憶している製造品識別番号と製造開始時刻と製造終了時刻とに、その製造装置1の製造装置識別番号と製造される製造品の名称とを加えた情報を、ネットワーク8を介して部材品トレーサビリティ管理装置7へ送信する。また、同様に、記憶している部材品製造ロット識別番号と部材品供給開始時刻と部材品供給停止時刻とに、その製造装置1の製造装置識別番号と部材品貯留部12の部材品貯留部識別番号と部材品名称とを加えた情報を、ネットワーク8を介して部材品トレーサビリティ管理装置7へ送信する。
図4は、第1の実施形態において製造実績情報記憶部に記憶されるレコードの構成の例を示した図である。ここで、レコードとは、相互に関連する情報として1セットにまとめられた複数の情報をいい、ハード磁気ディスク装置等の記憶装置に記憶されるときには、記憶される一まとまりの情報として取り扱われる。また、1レコードは、複数のフィールドによって構成され、その1フィールドに通常一つの有意の情報が記憶される。
図4において、製造実績情報記憶部76のレコードは、製造装置識別番号761と、製造品名称762と、製造品識別番号763と、製造開始時刻764と、製造終了時刻765とを含んだ各フィールドによって構成される。
部材品トレーサビリティ管理装置7は、製造管理用パソコン2から送信される情報のうち、製造装置1によって製造される製造品に関する製造品識別番号と製造開始時刻と製造終了時刻と製造装置識別番号と製造品の名称との情報を受信して、それらの情報を1レコードとして製造実績情報記憶部76へ記憶する。すなわち、製造装置識別番号761のフィールドには、製造装置1の製造装置識別番号が記憶され、製造品名称762のフィールドには、製造装置1によって製造される製造品の名称が記憶され、製造品識別番号763のフィールドには、製造装置1によって製造される製造品の製造品識別番号が記憶される。また、製造開始時刻764および製造終了時刻765のフィールドには、製造品識別番号763のフィールドによって指定される製造品識別番号の製造品の製造開始時刻と製造終了時刻とがそれぞれ記憶される。
例えば、図4の製造実績情報の第2レコードは、製造品名称がPB00Aであり、製造品識別番号がA0002という電子回路基板が、製造装置識別番号がM0123の製造装置1によって、04年6月10日9時00分に製造開始され、同日9時55分に製造終了したことを表している。
図5は、第1の実施形態において部材品供給実績情報記憶部に記憶されるレコードの構成の例を示した図である。図5において、部材品供給実績情報記憶部77のレコードは、製造装置識別番号771と、部材品貯留部識別番号772と、部材品名称773と、製造ロット識別番号774と、部材品供給開始時刻775と、部材品供給停止時刻776とを含んだ各フィールドによって構成される。
部材品トレーサビリティ管理装置7は、製造管理用パソコン2から送信される情報のうち、部材品貯留部12に供給される部材品に関する製造ロット識別番号と部材品供給開始時刻と部材品供給停止時刻と製造装置識別番号と部材品貯留部識別番号と部材品名称との情報を受信して、それらの情報を1レコードとして部材品供給実績情報記憶部77へ記憶する。すなわち、製造装置識別番号771のフィールドには、製造装置1の製造装置識別番号が記憶され、部材品貯留部識別番号772のフィールドには、当該部材品が供給された部材品貯留部12の識別番号が記憶され、部材品名称773のフィールドには、当該部材品の名称が記憶される。また、製造ロット識別番号774のフィールドには、部材品貯留部12へ実際に供給された当該部材品の製造ロット識別番号が記憶され、部材品供給開始時刻775および部材品供給停止時刻776のフィールドには、それぞれ部材品貯留部12に部材品またはその収納ケースがセットされた時刻および部材品がなくなったまたはその収納ケースが取り外された時刻が記憶される。
例えば、図5の部材品供給実績情報の第2レコードは、製造装置識別番号がM0123の製造装置1の部材品貯留部識別番号が123Aの部材品貯留部において、部材品名称がIC001で、その製造ロット識別番号がLOT012A2である部材品が、04年6月10日9時40分に供給開始され、同日11時20分に供給停止されたことを表している。また、第4レコードおよび第5レコードには、同一製造装置識別番号(M0123)の製造装置1の、同一部材品貯留部識別番号(123B)において、同一の時間帯(04年6月10日9時00分から10時15分まで)に、同一部材品名称(DI003)であって、異なる二つの製造ロット識別番号(LOT123B1、LOT123B2)の部材品が供給されていることを表している。
部材品トレーサビリティ管理装置7は、以上のようにして、製造管理用パソコン2から送信される情報を、製造実績情報記憶部76および部材品供給実績情報記憶部77へ記憶すると、その記憶された情報に基づき、製造ロットトレース情報を求め、その結果を、製造ロットトレース情報記憶部78へ記憶する。
図6は、第1の実施形態において製造ロットトレース情報記憶部に記憶されるレコードの構成の例を示した図であり、図7は、第1の実施形態において製造品構成情報記憶部に記憶されるレコードの構成の例を示した図である。また、図8は、製造ロットトレース情報記憶部に記憶される部材品トレーサビリティ情報を求める手順を示したフローチャートの例である。
図6において、製造ロットトレース情報記憶部78のレコードは、製造品名称781と、製造品識別番号782と、部材品名称783と、製造ロット識別番号784とを含んだ各フィールドによって構成される。そして、そのレコードは、例えば、第4レコードの場合、「製造品名称がPB00Aであり、その製造識別番号がA0002である製造品(電子回路基板)を構成するIC001という名称の部材品の製造ロット識別番号は、LOT012A1またはLOT012A2である」ことを意味している。従って、製造ロットトレース情報記憶部78の情報があれば、製造品に使用されている部材品の製造ロット識別情報を、その製造品識別番号によりすぐに知ることができ、また、逆に、部材品の名称とその製造ロット識別番号により、その部材品が使用されている製造品名称とその製造品識別番号を知ることができる。すなわち、製造ロットトレース情報記憶部78の情報は、製造品を構成する部材品のトレーサビリティ情報であるといえる。
なお、製造ロット識別番号784のフィールドは、複数の製造ロット識別番号が記憶可能な領域が確保されているものとし、必要に応じて複数の製造ロット識別番号が記憶される。製造ロット識別番号784のフィールドに複数の製造ロット識別番号が記憶されることは、場合によっては、部材品トレーサビリティ情報の分解能を低下させることを意味する。しかしながら、特に、「ねじ・くぎ」のような小さな部材品を用いて製造品を構成する場合には、部材品トレーサビリティ情報取得のためのコストを低減させる効果のほうが大きい。
図7において、製造品構成情報記憶部80のレコードは、製造品名称801と部材品名称802とを含んだ各フィールドによって構成される。製造品構成情報記憶部80に記憶される製造品構成情報は、いわゆる部品表であり、製造品名称によって指定される製造品を構成する部材品の一覧表である。部品表は、しばしば階層的な構造記述で表現されるが、ここでは、説明を簡単にするために、製造品構成情報は、フラットな(1階層の)構造であるとする。なお、製造品構成情報記憶部80に記憶される部品表の情報は、通常、製造品設計時に作成されるので、ここでは、その作成されたものをそのまま(場合によっては、階層構造をフラット構造に変換する)利用するものとする。
次に、図8のフローチャートによって、図7の製造品構成情報記憶部80と、図4の製造実績情報記憶部76と、図5の部材品供給実績情報記憶部77に記憶されている情報に基づき、図6の製造ロットトレース情報記憶部78へ記憶する情報を求める。なお、ここで示す手順は、コンピュータプログラムの実行手順であり、通常、このようなプログラムは、メモリ部72(図2参照)に格納されており、演算処理部71は、必要に応じて、メモリ部72からそのプログラムを読み出して実行する。また、プログラムは、CD−ROM(Compact Disk - Read Only Memory)のようなコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され、必要に応じて、図2に図示しないCD−ROMドライブ装置等を介してメモリ部72へ読み込まれる。
図8において、最初に、製造品名称の入力を受け付けて、その製造品名称を#aとする(ステップS11)。なお、その入力は、キーボード75を介してオペレータが行ってもよいし、他のプログラムが引数としてデータ#aを入力してもよい。そして、製造品構成情報記憶部80を参照して、製造品名称が#aの製造品を構成する部材品名称#bを抽出する(ステップS12)。ここでは、通常、部材品名称#bとしては、複数の部材品名称が抽出される。次に、製造実績情報記憶部76を参照して、製造品名称が#aであるレコードを抽出し、製造品識別番号順にソートする(ステップS13)。
次に、ステップS13において抽出、ソートされた製造実績情報のレコードの中から、製造品識別番号の1つをとり出し、それを#cとし、#cを含むレコードによって#cに対応付けられている製造装置識別番号と製造開始時刻と製造終了時刻とをとり出し、それらを#d、#e、#fとする(ステップS14)。次に、ステップ12において抽出された部材品名称#bのうち1つをとり出し、それを#gとする(ステップS15)。
次に、部材品供給実績情報記憶部77を参照して、製造装置識別番号が#dであり、部材品名称が#gであるレコードを抽出し、それをレコード#hとする(ステップS16)。ここで、レコード#hは、通常、複数レコードが抽出される。そこで、ステップS16で抽出されたレコード#hのうち、その部材品供給開始時刻〜供給停止時刻が、#eと#fでと指定される製造開始時刻〜製造終了時刻と重複する場合のレコードをとり出し、それをレコード#iとする(ステップS17)。ここで、レコード#iは、複数レコードがとり出されることもある。次に、レコード#iにおいて製造ロット識別番号をとり出し、#jとし、#a、#c、#g、#jを製造ロットトレース情報記憶部78へ記憶する(ステップS18)。なお、レコード#iが複数レコードであった場合には、#jも複数となるが、その場合には、製造ロットトレース情報記憶部78においては、#a、#c、#gに対して複数の#iを記憶する。
次に、ステップ12において部材品名称#bとして抽出された部材品名称が、ステップ15においてすべてとり出されて#gにされたか否かを判定する(ステップS19)。その判定において、まだすべての部材品名称がとり出されて#gとされていなかった場合には(ステップS19でNo)、ステップS15へ戻って、ステップS15以下の処理を再度実行する。また、ステップS19の判定において、すべての部材品名称がとり出されて#gとされていた場合には(ステップS19でYes)、ステップS13において抽出、ソートされたレコードの中から製造品識別番号がすべてとり出されて、#cとされたか否かを判定する(ステップS20)。そして、その判定で、まだ#cとされていない製造品識別番号があった場合には(ステップS20でNo)、ステップS14へ戻って、ステップS14以下の処理を再度実行する。また、ステップS20の判定において、製造品識別番号がすべてとり出されて、#cとされていた場合には(ステップS20でYes)、処理を終了する。
以上によって、最初に指定された製造品名称#aについての製造ロットトレース情報が製造ロットトレース情報記憶部78に作成されたことになる。同様に、製造品名称として他の名称を指定すれば、それらの名称をもつ製造品について製造ロットトレース情報を作成することができる。そして、この製造ロットトレース情報記憶部78に記憶されている情報により、製造された製造品一つ一つについて、使用されている部材品の製造ロット番号を管理することができる。
(第1の実施形態の変形例)
以上に説明した第1の実施形態においては、購入ロットトレース情報記憶部79(図2参照)を使用していない。購入ロットトレース情報記憶部79は、以下に説明する第1の実施形態の変形例において使用する。
図9は、第1の実施形態の変形例において購入ロットトレース情報記憶部に記憶されるレコードの構成の例を示した図である。図9において、購入ロットトレース情報記憶部79のレコードは、購入ロット識別番号791と、部材品名称792と、製造ロット識別番号793とを含んだ各フィールドによって構成される。ここで、購入ロットとは、部材品メーカから部材品を購入する単位での一まとまりの部材品をいう。従って、購入ロット識別番号として、発注伝票番号や購入伝票番号を使用することも多い。
購入ロット識別番号と製造ロット識別番号とは、必ずしも1対1に対応しているわけではない。そこで、購入ロットトレース情報記憶部79において、購入ロット識別番号を製造ロット識別番号に対応付ける。例えば、図9の第2レコードにおいては、部材品名称がIC001である部材品の購入ロット識別番号PO1002は、製造ロット識別番号LOT012A2に対応する。なお、ここでは、図9の第4レコードのように、一つの購入ロット識別番号に対して複数の製造ロット識別番号を対応させることもできるものとする。これは、一つの購入ロットの部材品に、複数の製造ロット識別番号の部材品が混在してもよいことを意味する。
一般に、部材品を購入したときには、その部材品の梱包または収納ケースに製造ロット識別番号のバーコード等が付されているとは限らない。部材品の梱包または収納ケースには、製造ロット識別番号の代わりに発注伝票番号または購入伝票番号のバーコードが付され、その伝票の付属データとして製造ロット識別番号が提供される。このような場合には、伝票の付属データに基づき、あらかじめ、購入ロットトレース情報記憶部79を作成しておく。そうすれば、前記図1〜図8で説明した実施形態において、製造ロット識別番号の代わりに購入ロット識別番号を使用することができる。そうした場合には、製造品を構成する部材品のトレーサビリティ情報として得られる情報は、購入ロット識別番号になるが、購入ロット識別番号は、購入ロットトレース情報記憶部79を用いることにより、容易に製造ロット識別番号へ変換することができる。
(部材品が不定形である場合への適用)
以上の第1の実施形態における部材品トレーサビリティ管理装置7は、部材品が半田のような不定形の部材品である場合にも適用することができる。フロー半田付け工程においては、部品を搭載した電子回路基板の裏側を半田溶融槽に浸して、スルーホール他の半田付けを行う。この場合、加工部11は、半田溶融槽であり、また、半田溶融槽は、部材品貯留部12を兼ねる。半田溶融槽においては、溶融半田の量をほぼ一定量に保つために、溶融半田の量が所定量減じるごとに、新たな部材品としての半田棒材が投入される。
図10は、本発明をフロー半田付け工程に適用した場合の電子回路基板の製造手順のタイムチャートを例示した図である。図10において、上段のタイムチャートは、図3の場合と同様に、製造品名称がPB00Aである電子回路基板の製造、つまり、フロー半田付けが行われるタイムチャートを示したものである。例えば、製造品識別番号がA0002である電子回路基板のフロー半田付けは、9時00分に開始され、9時55分に終了している(実際には、これほど時間が掛かることはない。)。
一方、下段のタイムチャートに示すように、部材品貯留部12、すなわち、識別番号が456Aの半田溶融槽においては、それまで製造ロット識別番号がLOTHA01の半田棒材が投入されていたのに代えて、9時00分以降は、製造ロット識別番号がLOTHA02の半田棒材が投入されるようになった。このような場合、9時00分以降しばらくの間は、半田溶融槽では、製造ロット識別番号がLOTHA01の半田と製造ロット識別番号がLOTHA02の半田とが混在した状態が続くことになる。すなわち、製造品識別番号がA0002である電子回路基板は、その部材品として、製造ロット識別番号がLOTHA01の半田棒材と、LOTHA02の半田棒材とを含むことになる。
本発明においては、製造品一つ一つに対して部材品の複数の製造ロット識別番号を対応付けるので、以上のような場合にも、容易に、図1〜図8で説明した第1の実施形態を適用することが可能である。ただし、図8で示した部材品トレーサビリティ情報を求める手順をそのまま適用するには、部材品トレーサビリティ管理装置7は、部材品供給実績情報記憶部77の部材品供給停止時刻776のフィールドに記憶すべき情報としては、製造管理用パソコン2が部材品貯留部12における部材品供給停止時刻として送信する時刻をそのまま記憶するのではなく、その時刻に異なる製造ロット識別番号の部材品の混在が継続する時間を加算した時刻を記憶する必要がある。
図10の場合、製造ロット識別番号がLOTHA01の半田と製造ロット識別番号がLOTHA02の半田とが混在した状態が、例えば、9時50分に解消されたとすれば、製造ロット識別番号がLOTHA01の半田棒材の供給停止時刻は、9時00分でなく、9時50分であると、部材品供給実績情報記憶部77の部材品供給停止時刻776のフィールドに記憶する。なお、半田溶融槽内の半田に限らず、製造ロット識別番号が異なる部材品の混在が実際に解消する時刻を特定するのは、困難な場合が多い。そこで、そのような場合には、混在が解消する時刻を、あらかじめ数値計算やシミュレーション等で求めた予測値で代用する。
以上のようして、部材品が不定形である場合についても、図8で示した手順により、製造ロットトレース情報記憶部78の情報、つまり、製造品一つ一つについてその部材品のトレーサビリティ情報を作成することができる。なお、この第1の実施形態は、製造品の部材品として残らない材料、例えば、製造の過程で使用された洗浄液のトレーサビリティ情報の管理にも応用することができる。
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について、適宜、図11〜図20を参照しながら詳細に説明する。
図11は、第2の実施形態における部材品トレーサビリティ管理装置の構成の例を示した図である。図11に示すように、部材品トレーサビリティ管理装置7aは、演算処理部71、メモリ部72、入出力インタフェース部73、液晶ディスプレイ74、キーボード75、製造実績情報記憶部76、部材品供給実績情報記憶部77、購入ロットトレース情報記憶部79、および、製造品構成情報記憶部80を含んで構成されたコンピュータと、そのコンピュータにネットワーク8を介して接続された利用者端末81とによって構成される。なお、第2の実施形態においては、第1の実施形態で説明した構成要素には同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態における部材品トレーサビリティ管理装置7aの構成を第1の実施形態における部材品トレーサビリティ管理装置7(図2参照)の構成とを比較すると、第2の実施形態の部材品トレーサビリティ管理装置7aは、(1)製造ロットトレース情報記憶部78を含まない、(2)利用者端末81を含む、の2点において第1の実施形態の部材品トレーサビリティ管理装置7と異なる。
すなわち、第1の実施形態においては、部材品トレーサビリティ管理装置7は、製造ロットトレース情報記憶部78を備え、例えば、加工済電子回路基板5などの製造品が製造された後、適宜、製造ロットトレース情報記憶部78に製造品1つ1つに対してその製造品(製造品名称781と製造品識別番号782とで識別)を構成する部材品の部材品名称783および製造ロット識別番号784を記憶記憶する(図6参照)。一方、第2の実施形態においては、製造ロットトレース情報記憶部78を設けず、利用者端末81を設け、利用者端末81から入力される製造品識別番号763の製造品について、その製造品に含まれる部材品の製造ロット識別番号774(784に対応)を、その都度求めるようにした。さらに、第2の実施形態においては、利用者端末81から入力される製造ロット識別番号774の部材品を含んだ製造品の製造品識別番号763を、その都度求めるようにした。
部材品トレーサビリティ管理装置7aをこのような構成にすることによって、製造ロットトレース情報記憶部78が不要となるので、それを記憶するハード磁気ディスク装置など大容量記憶装置の記憶容量の面での負担が軽減される。また、製造ロットトレース情報記憶部78に記憶すべき部材品のトレーサビリティ情報を計算する処理(図8参照)も不要となるので、部材品トレーサビリティ管理装置7aの情報処理負担量が軽減される。もちろん、部材品トレーサビリティ管理装置7aにおいても製造ロットトレース情報記憶部78に記憶される部材品トレーサビリティ情報と同等の情報を求める必要があるが、それは、利用者端末81から指示されたときに、指示された製造品識別番号763の製造品を構成する部材品についてだけ求めればよい。従って、その情報処理負担量が大幅に軽減される。
以下、部材品トレーサビリティ管理装置7aが実行するプログラムの処理内容について、主として、第1の実施形態における部材品トレーサビリティ管理装置7が処理する内容と異なる部分について詳しく説明する。なお、それらのプログラムは、メモリ部72に格納され、演算処理部71によって実行されることによって、部材品トレーサビリティ管理装置7aの機能として実現される。また、それらのプログラムは、CD−ROMのようなコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され、必要に応じて、図11に図示しないCD−ROMドライブ装置等を介してメモリ部72へ読み込まれる。
まず、部材品トレーサビリティ管理装置7aは、第1の実施形態の場合と同様にして製造装置1(図1参照)によって製造される製造品について部材品トレーサビリティ情報を取得し、それらの情報を製造実績情報記憶部76、部材品供給実績情報記憶部77、購入ロットトレース情報記憶部79および製造品構成情報記憶部80へ記憶する。
図12は、第2の実施形態における(a)製造品の部材品構成を示した図、(b)製造品構成情報記憶部のレコード構成の例を示した図である。また、図13は、第2の実施形態において製造された製造品の部材品に係る情報を記憶する製造実績情報記憶部、部材品供給実績情報記憶部および購入ロットトレース情報記憶部のレコード構成の例を示した図である。
図12(a)の部品表情報は、DKC−F51という名称の製造品の部品表情報を示したものである。ただし、ここでは、DKC−F51は使用する部材品によってR1およびR2のレビジョン番号で区別され、実質上、DKC−F51−R1およびDKC−F51−R2という名称の2つの製造品として取り扱われる。すなわち、DKC−F51−R1は、名称がそれぞれP216−DおよびP326−001という部材品から構成され、DKC−F51−R2は、名称がそれぞれP550−001およびP326−003という部材品から構成される。このような部品表情報は、図12(b)に示すように、製造品構成情報記憶部80において部材品名称802を製造品名称801に関連付ける情報として記憶される。
図13において、製造実績情報記憶部76は、製造装置1によって製造品を製造した実績情報を記憶する。例えば、その第1レコード(第1行に相当)は、製造品名称がDKC−F51−R1でその製造品識別番号がDKC−F51−001の製造品が、2004年4月8日から4月9日までの間に、製造装置識別番号PROC1の製造装置1によって製造されたことを示している。なお、ここでは、製造開始時刻764および製造終了時刻765の各フィールドの情報は、説明を簡単にするために時分以下の情報を省略している。
部材品供給実績情報記憶部77は、製造装置1の部材品貯留部12に貯留され製造品の製造に供給された部材品の情報を記憶する。例えば、その第1レコードは、部材品名称がP216−Dで、製造ロット識別番号がLT001−1である部材品が、製造装置識別番号がPROC1の製造装置1の部材品貯留部識別番号がS−001の部材品貯留部12に2004年4月7日から4月8日まで貯留され製造に使用されていたことを示す。なお、ここでは、部材品供給開始時刻775および部材品供給停止時刻776の各フィールドの情報は、説明を簡単にするために時分以下の情報を省略している。
購入ロットトレース情報記憶部79は、購入した部材品の購入ロット識別番号を製造ロット識別番号に対応付ける表である。例えば、その第1レコードは、名称がP216−Dの部材品の購入ロット識別番号はOD001であり、その製造ロット識別番号はLT001−1であることを示している。この場合、購入ロット識別番号OD001は、その部材品を購入したときの発注伝票や購入伝票の発注番号や購入番号であってもよい。また、製造ロット識別番号は、通常、その部材品を製造したメーカによって付される識別番号である。なお、第1の実施形態の場合と同様に、購入ロットトレース情報記憶部79はなくて済ますこともできる。
以上のような情報が部材品トレーサビリティ管理装置7aの各記憶部に記憶されている場合には、部材品トレーサビリティ管理装置7aは、製造品の製造品識別番号を入力することにより、その製造品を構成する部材品のトレーサビリティ情報、つまり、入力された製造品識別番号を有する製造品を構成する部材品の製造ロット識別情報を求めることができる。
図14は、第2の実施形態における部材品トレーサビリティ検索処理の流れの例を示したフローチャートである。ここで、部材品トレーサビリティ検索処理とは、入力される製造品識別番号を有する製造品について、その製造品を構成する部材品の製造ロット識別番号を検索する(抽出する)処理をいう。また、図15は、部材品トレーサビリティ検索処理によって得られた部材品の製造ロット識別番号を記憶した検索結果テーブルの例を示した図である。
図14に示すように、部材品トレーサビリティ管理装置7aは、まず、例えば、利用者端末81において設定され、その利用者端末81から送信された検索すべき製造品の製造品識別番号(#A)を入力する(ステップS31)。次に、製造実績情報記憶部76を参照して、製造品識別番号が(#A)であるレコードを抽出し、さらに、そのレコードから製造品名称(#B)、製造装置識別番号(#C)、製造開始時刻(#D)および製造終了時刻(#E)を取得する(ステップS32)。このようにして得られた情報は、指定された製造品識別番号(#A)を有する製造品の製造品名称は(#B)であり、その製造品を製造した製造装置の製造装置識別番号は(#C)であり、その製造期間は(#D〜#E)であることを示している。
次に、製造品構成情報記憶部80を参照して、製造品名称が(#B)であるレコードを抽出し、そのレコードから部材品名称(#F)を取得する(ステップS33)。通常、1つの製造品名称(#B)に対して、複数の部材品名称(#F)が存在するので、ここでは、通常、複数の部材品名称(#F)が抽出される。
次に、部材品供給実績情報記憶部77を参照して、製造識別番号が(#C)であり、かつ、部材品名称が(#F)であるレコードを抽出し、そのレコードから製造ロット識別番号(#G)、部材品供給開始時刻(#H)および部材品供給停止時刻(#I)を取得する(ステップS34)。このようにして得られた情報は、部材品名称(#F)、製造ロット識別番号(#G)の部材品が、部材品供給期間(#H〜#I)にわたって、製造識別番号(#C)の製造装置に供給されていたことを示している。なお、この情報は、複数の部材品名称(#F)がある場合には、その部材品名称(#F)ごとに求められる。
次に、ステップS32およびステップS34で求めた製造装置識別番号(#A)の製造品の製造期間(#D〜#E)と部材品名称(#F)の部材品供給期間(#H〜#I)とを比較して、部材品供給期間(#H〜#I)が製造期間(#D〜#E)に一部でもかかる場合には、製造装置識別番号(#A)、製造ロット識別番号(#G)および部材品名称(#F)を対応付けて検索結果テーブル82(図15参照)に記憶する(ステップS35)。
次に、製造品構成情報記憶部80を参照して、その製造品名称801のフィールドが部材品名称(#F)と一致するレコードが存在するか否かを判定する(ステップS36)。その判定の結果、製造品名称801のフィールドが部材品名称(#F)と一致するレコードが存在する場合には(ステップS36でYes)、部材品名称(#F)の部材品が、さらに下位構造の部材品から構成されることを意味する。そこで、この場合には、検索結果テーブル82に記憶された部材品名称(#F)に対応する製造ロット識別番号(#G)を新たな製造品識別番号(#A)として(ステップS37)、ステップS32以下の処理を繰り返えして実行する。
また、ステップS36の判定において、製造品名称801のフィールドが部材品名称(#F)と一致するレコードが存在しない場合には(ステップS36でNo)、部材品名称(#F)の部材品は、下位構造の部材品を持たないので、図14の部材品トレーサビリティ検索処理を終了する。
以上に示した図14の部材品トレーサビリティ検索処理を、図12(b)の製造品構成情報記憶部80、図13の製造実績情報記憶部76および部材品供給実績情報記憶部77に記憶されている情報の例に対して実行すると、図15に示すような検索結果テーブル82が得られる。図15の例では、製造品識別番号821に示す情報により、部材品トレーサビリティ検索処理への入力情報として2つの製造品識別番号DKC−F51−001およびDKC−F51−002が入力されたことが分かる。また、製造ロット識別番号822に示す情報により、製造品識別番号DKC−F51−001の製造品は、LT001−1,LT006−1,LT002−1という製造ロット識別番号の部材品から構成されることが分かり、製造品識別番号DKC−F51−002の製造品は、LT003−1,LT002−1という製造ロット識別番号の部材品から構成されることが分かる。さらに、部材品名称823が示す情報により、それぞれの製造ロット識別番号に対する部材品名称が分かる。
なお、図15において、部材品名称P210−Dの部材品に対しては、2つの製造ロット識別番号LT001−1,LT006−1が対応しているが、これは、部材品名称P210−Dの部材品を1つに絞りきれない場合を示している。すなわち、部材品名称P210−Dの部材品の製造ロット識別番号は、LT001−1、または、LT006−1である。
図16は、第2の実施形態において部材品トレーサビリティ検索処理を実行する場合の利用者端末の表示画面の例を示した図である。ここで、利用者端末81(図11参照)は、演算処理部、メモリ部、液晶ディスプレイなどの表示部、キーボードなどの入力部(いずれも図示せず)などを備えたパーソナルコンピュータであり、ネットワーク8を介して部材品トレーサビリティ管理装置7aの本体に接続されている。
図16に示すように、利用者端末81の表示部の表示画面90には、例えば、その左側にコマンドメニューなどのボタン類が表示され、右側の検索結果表示領域906には部材品トレーサビリティ検索処理の検索結果の情報が表示される。ここで、コマンドメニューとして、例えば、部材品トレーサビリティ検索処理を実行させる検索ボタン901、部材品トレーサビリティ検索処理の結果を帳票に印刷する帳票ボタン907、部材品トレーサビリティ検索処理の結果をファイルとして保存するファイルボタン908などのボタンが設けられており、利用者は、これらのボタンを押す(クリックする)ことによって、部材品トレーサビリティ管理装置7aに対してそのボタンに定められた処理を実行させることができる。
検索ボタン901には、例えば、プルダウンメニュー方式などで表示される下位のコマンド指示ボタンが割り付けられており、ここでは、検索ボタン901を押すと、さらに、階層付き部材品検索ボタン902、フラット部材品検索ボタン903、製造品検索ボタン904が示される。
ここで、階層付き部材品検索とは、部材品の製造ロット識別番号を検索対象の製造品の部品表情報に対応するように検索する処理であり、検索対象の製造品の部品表が階層的な構造である場合には、その階層構造を保存した状態で部材品の製造ロット識別番号を検索する。また、フラット部材品検索とは、検索対象の製造品の部品表における階層構造の有無に関わらず、検索対象の製造品を構成している部材品の製造ロット識別番号を1階層に展開した形で検索する処理をいう。このフラット部材品検索においては、中間層の部材品の製造ロット識別番号などの情報は含まれない。また、製造品検索コマンドとは、部材品の製造ロット識別番号からその製造ロット識別番号をもつ部材品を含んだ製造品の製造識別番号を検索する処理をいう。これら検索処理の結果の表示例については、別途、図18〜図20を用いて説明する。
入力欄905は、階層付き部材品検索、フラット部材品検索または製造品検索を行うにあたって必要となる入力情報を入力するときに使用する表示領域である。ここでは、入力欄905には、階層付き部材品検索を行うときの入力情報として製造品の製造識別番号DKC−F51−001とDKC−F51−002が入力されている。
検索結果表示領域906は、階層付き部材品検索、フラット部材品検索または製造品検索を行った結果を表示する領域であり、図16の例では、階層付き部材品検索の結果、製造品識別番号がDKC−F51−001の製造品は、LT001−1,LT006−1,LT002−1という製造ロット識別番号の部材品から構成され、製造品識別番号がDKC−F51−002の製造品は、LT003−1,LT002−1という製造ロット識別番号の部材品から構成されていることを示している。
なお、利用者は、帳票ボタン907を押すことによって、この検索結果表示領域906に表示される情報と同等の情報を、所定の書式に従って帳票に出力することができる。また、ファイルボタン908を押すことによって、この検索結果表示領域906に表示される情報と同等の情報をハード磁気ディスク装置などに記憶するファイルとして出力することができる。
図17は、第2の実施形態において部材品トレーサビリティ検索処理を行った結果に基づきフラット部材品検索を行う処理の流れの例を示したフローチャートである。
ところで、図14に示した部材品トレーサビリティ情報の検索処理によって、図15の検索結果テーブル82のような階層付きの部材品検索情報が求められる。そこで、フラットな部材品検索情報を求めるには、この検索結果テーブル82を利用することができる。図17に示した処理の流れは、図15の検索結果テーブル82がすでに求められていることを前提とした処理の流れである。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、図15の製造品識別番号821を親個体番号821と呼び、製造ロット識別番号822を子個体番号822と呼ぶ。
図17において、部材品トレーサビリティ管理装置7aは、検索条件の親個体番号をメモリ部72(図11参照)の記憶領域(#J)に記憶する(ステップS41)。ここで、検索条件の親個体番号とは、図14の処理において最初に利用者端末81から入力された製造品識別番号(#A)である。
次に、検索結果テーブル82を参照して、検索結果テーブル82の親個体番号821が(#J)である行を抽出し、抽出した行の子個体番号822を記憶領域(#K)に記憶する(ステップS42)。このとき、通常は、複数の子個体番号の情報が記憶領域(#K)に記憶される。そして、再度、検索結果テーブル82を参照して、検索結果テーブル82の親個体番号821が(#K)である行が存在するか否かを判定する(ステップS43)。このとき、記憶領域(#K)に複数の子個体番号の情報が記憶されている場合には、その1つの子個体番号の情報ごとに判定する。
ステップS43の判定において、検索結果テーブル82に親個体番号821が(#K)である行が存在する場合には(ステップS43でYes)、検索結果テーブル82から親個体番号821が(#K)である行を抽出し、抽出した行の子個体番号を記憶領域(#J)に記憶する(ステップS44)。そして、ステップS42へ戻り、ステップS42以下の処理を繰り返して実行する。
また、ステップS43の判定において、検索結果テーブル82に親個体番号821が(#K)である行が存在しない場合には(ステップS43でNo)、その子個体番号(#K)を記憶領域(#L)に記憶する(ステップS45)。そして、記憶領域(#K)に記憶されているすべての子個体番号(#K)についてステップS43の判定を行ったかをチェックする(ステップS46)。そのチェックの結果、ステップS43の判定を行っていない子個体番号(#K)がある場合には(ステップS46でNo)、ステップS43へ戻って、再度、ステップS43以下の処理を実行する。また、すべての子個体番号(#K)についてステップS43の判定を行った場合には(ステップS46でYes)、処理を終了する。そして、以上の処理において、記憶領域(#L)に記憶された子個体番号の情報がフラット部材品検索処理の検索結果となる。
図18は、第2の実施形態において階層付き部材品検索処理の検索結果を利用者端末に表示した表示画面の例を示した図である。図18に示すように、利用者端末81の表示部の表示画面90aには、入力欄905において検索対象の製造品識別番号としてAAが入力され、階層付き部材品検索ボタン902が押されていることが示され、さらに、検索結果表示領域906にはその検索結果が表示されている。その表示例では、製造品識別番号AAの製造品が、製造ロット識別番号A1,A2,A3の部材品で構成され、製造ロット識別番号A2およびA3部材品が、それぞれ、製造ロット識別番号A21,A22およびA31,A32の部材品で構成され、さらに、製造ロット識別番号A21の部材品が、製造ロット識別番号A211,A212の部材品で構成されていることが示されている。
ここで、入力欄905から検索対象の製造品識別番号AAが入力され、階層付き部材品検索ボタン902が押されると、利用者端末81は、入力された製造品識別番号AAの情報を付して階層付き部材品検索処理を要求する情報を、ネットワーク8を介して部材品トレーサビリティ管理装置7aの演算処理部71へ送信する。演算処理部71は、その情報を受けて図14に示した部材品トレーサビリティ検索処理(階層付き部材品検索処理に相当)を実行し、その実行結果の検索結果テーブル82の情報を利用者端末81へ返送する。利用者端末81は、検索結果テーブル82の情報を受信し、その情報に基づき、階層構造などの表示情報を生成し、生成した表示情報を検索結果表示領域906に表示する。
なお、検索結果テーブル82は、前記したように、製造品構成情報記憶部80の情報、つまり部品表の情報に基づき作成される。従って、ここで表示される部材品の階層構造は、検索対象の製造品が有する部品表の構造に対応したものとなっている。
以上のように部材品の製造ロット識別番号を階層的に表示したことにより、利用者は、例えば、何らかの不具合が生じた製造品などについて、その製造品識別番号を入力すれば、その製造品がどのような製造ロット識別番号のどのような部材品によって構成されているかを一目で知ることができるようになる。なお、図18の例においては、部材品の表示として製造ロット識別番号しか表示していないが、部材品名称を同時に表示するようにしてもよい。検索結果テーブル82には、製造ロット識別番号822に対応するように部材品名称823が記憶されているので、その同時表示は容易にできる。
図19は、第2の実施形態においてフラット部材品検索処理の検索結果を利用者端末に表示した表示画面の例を示した図である。図19に示すように、利用者端末81の表示部の表示画面90bには、入力欄905において検索対象の製造品識別番号としてAAが入力され、フラット部材品検索ボタン903が押されていることが示され、さらに、検索結果表示領域906にはその検索結果が表示されている。その表示例には、製造品識別番号AAの製造品が製造ロット識別番号A1,A211,A212,A22,A31,A32の部材品から構成されていることが示されている。なお、ここでは下位構造を有する中間層の部材品A2,A21,A3について抽出も表示も行われていないが、中間層の部材品の抽出および表示を行わないのがフラット部材品検索処理の特徴となっている。
ここで、入力欄905から検索対象の製造品識別番号AAが入力され、フラット部材品検索ボタン903が押されると、利用者端末81は、入力された製造品識別番号AAの情報を付してフラット部材品検索処理を要求する情報を、ネットワーク8を介して部材品トレーサビリティ管理装置7aの演算処理部71へ送信する。演算処理部71は、その情報を受けて図14に示した部材品トレーサビリティ検索処理(階層付き部材品検索処理に相当)を実行し、さらに、図17に示したフラット部材品検索処理を続けて実行する。そしてその結果得られた記憶領域(#L)の情報を利用者端末81へ返送する。利用者端末81は、記憶領域(#L)の情報を受信し、受信した記憶領域(#L)の情報を検索結果表示領域906に表示する。
このようなフラット部材品検索は、製造品を実質的に構成する部材品を抽出するのに有用である。近年、製造品にはその製造品に含まれる特定の化学物質(特に、有害化学物質)の総量を表示することが求められるようになってきたが、このような場合に、フラット部材品検索を利用すると便利である。フラット部材品検索では、製造品を構成する部材品が、いわゆる部品表の階層構成に関わることなく抽出される。従って、ある化学物質の総量を計算するには、フラット部材品検索によって抽出された部材品について、それぞれに含まれる当該化学物質の量をあらかじめ求めておき、その総和をとればよい。
図20は、第2の実施形態において製造品検索処理の検索結果を利用者端末に表示した表示画面の例を示した図である。図20に示すように、利用者端末81の表示部の表示画面90cには、入力欄905において検索対象の部材品の製造ロット識別番号としてA212とA31が入力され、製造品検索ボタン904が押されていることが示され、さらに、検索結果表示領域906にはその検索結果が表示されている。その表示例には、製造ロット識別番号A212の部材品を含む製造品として製造品識別番号がAA,AB,AN,AXの製造品があり、製造ロット識別番号A31の部材品を含む製造品として製造品識別番号がAA,AC,AXの製造品があることが示されている。
ここで、入力欄905から検索対象の部材品の製造ロット識別番号A212,A31が入力され、製造品検索ボタン904が押されると、利用者端末81は、入力された製造ロット識別番号A212,A31の情報を付して製造品検索処理を要求する情報を、ネットワーク8を介して部材品トレーサビリティ管理装置7aの演算処理部71へ送信する。演算処理部71は、その情報を受けて製造品検索処理を実行することにより、入力された製造ロット識別番号を有する部材品を含んだ製造品の製造品識別番号を求め、求めた製造品の製造品識別番号を利用者端末81へ送信する。このようにして、利用者端末81は、入力された製造ロット識別番号の部材品に対して、その製造ロット識別番号を有する部材品を含んだ製造品の製造品識別番号を取得し、取得したこれらの情報を検索結果表示領域906に表示する。
なお、製造品検索処理は、部材品の製造ロット識別番号を入力し、その製造ロット識別番号の部材品を含む製造品の製造識別番号を検索する処理である。この製造品検索処理の主体部は、入力された情報を検索キーとして、製造品構成情報記憶部80、製造実績情報記憶部76および部材品供給実績情報記憶部77を検索するものであり、その処理手順は、図14に示した部材品トレーサビリティ処理に類似するものである。そこで、本明細書では、その詳細な説明を省略する。
以上のような製造品検索は、例えば、ある製造ロット識別番号の部材品に不具合が見つかった場合に、それと同じ製造ロット識別番号の部材品を含む製造品の製造品識別番号を検索するために使用する。例えば、製造ロット識別番号がA212,A31の部材品に不具合があった場合には、製造品検索処理を実行し、図20に示すような表示を行う。その表示により、製造ロット識別番号がA212の部材品は、製造品識別番号がAA,AB,AN,AXの製造品に含まれ、製造ロット識別番号がA31の部材品は、製造品識別番号がAA,AC,AXの製造品に含まれていることが分かる。このようにして検索された製造品識別番号がAA,AB,AC,AN,AXの製造品は、不具合を含む可能性があるので、出荷停止や市場からの回収などの措置をとる。このようにして、迅速に不具合に対する対応を行うことができる。
なお、以上に説明した第2の実施形態においては、部材品を個別的に識別する情報として製造ロット識別番号を使用したが、第1の実施形態の場合と同様に、購入ロット識別番号を使用することもできる。ただし、この場合には、購入ロットトレース情報記憶部79によって購入ロット識別番号を製造ロット識別番号に対応付ける。また、第2の実施形態は、第1の実施形態の場合と同様に、半田棒材や洗浄液などの不定形の部材品を使用する場合にも適用できる。