JP4578037B2 - きのこの人工培養基およびそれを用いたきのこの人工栽培方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、きのこの人工培養基及びそれを用いたきのこの人工栽培方法に関する。
なお、本発明でいう部や%は特に規定のないかぎり質量基準である。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、きのこの栽培は、くぬぎ、ぶな、及びならなどの原木を利用したほだ木栽培がほとんどであり、そのため気象条件により収穫が左右されることが多いという課題があった。
また、最近では、ほだ木栽培用の原木の切り出しのための労働力が不足していることなどによって、原木の入手が困難になりつつあるという課題もあった。
さらに、ほだ木栽培では栽培期間が長いこと、即ち、種菌の接種からきのこの収穫までに1年半〜2年も要するので、生産コストが相当高くつくという課題もあった。
【0003】
近年、えのきたけ、ひらたけ、なめこ、及びしいたけなどは、鋸屑に米糠を配合した人工培養基を用い、瓶又は箱で培養を行う菌床人工栽培方法が確立され、一年を通じて、四季に関係なく安定してこれらのきのこが収穫できるようになっている。
即ち、農家での副業的性格が強く、小規模生産に頼っていた従来のきのこの栽培が、現在では大規模専業生産が可能で、かつ、原料が入手しやすい菌床人工栽培方法に移りつつある。
【0004】
しかしながら、菌床人工栽培においても、きのこを大量に連続栽培するには、いまだ収率も低く、かつ、栽培期間がかなり長いため、その生産コストは安価とは言えず、今後、これら生産性の改善が切望されている。
【0005】
生産性を改善する方法としては、例えば、特定組成を有するアルミノシリケート系化合物や特定組成を有するマグネシウムアルミニウムシリケート系化合物を鋸屑や米糠等を配合した人工培養基中に含有させる方法が提案されている(特開平03-210126号公報、特開平03-58716号公報)。
【0006】
しかしながら、これらの方法では充分な収率できのこを生産することができていないのが実状である。
【0007】
本発明者は、きのこの人工栽培における前記課題を解消するために、鋭意努力を重ねた結果、特定の人工培養基を用いることによって、きのこを高収率で栽培できることを知見して本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、カルシウムアルミネート水和物を含有してなるきのこの人工培養基であり、該人工培養基を用いてなるきのこの人工栽培方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用するカルシウムアルミネート水和物(以下、CAHという)としては、4CaO・Al2O3・13H2O(C4AH13)、3CaO・Al2O3・6H2O(C3AH6)、2CaO・Al2O3・8H2O(C2AH8)、及びCaO・Al2O3・10H2O(CAH10)などの化合物が挙げられる。
CAHの合成方法については特に限定されるものではないが、消石灰や生石灰などのCaO源、水酸化アルミニウムなどのAl2O3源を上記化合物が生成するモル比に配合し、温水中等で攪拌することにより合成することが可能である。
また、3CaO・Al2O3、12CaO・Al2O3、及びCaO・Al2O3などのカルシウムアルミネート化合物等の水和反応によって合成可能である。
CAHは、各水和物を単独で使用することも可能であり、二種以上の水和物を併用することも可能である。
CAHの粒度は特に限定されるものではないが、少量添加できのこの収率を向上させるためには、細かければ細かい程好ましい。具体的には、粒子直径で1,000μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。この範囲外では充分なきのこの収率の向上がみられない場合がある。
CAHの混合割合は、炭素源と窒素源からなる人工培養基100部に対して、0.01〜30部が好ましく、0.1〜10部がより好ましい。この範囲外ではきのこの収率向上が望めない場合がある。
【0010】
本発明で使用する人工培養基とは、通常、鋸屑、ふすま、及びもみがらなどの炭素源と、米糠や大豆粕等の窒素源との混合物、また、この混合物に水を適当量加え、これを瓶又は箱に圧詰めして調製したもの、さらに、これらに、CAHを添加したものである。
【0011】
炭素源量、窒素源量、及び水量は、その種類や含有水分量等により変化し、一義的に決定されるものではないが、例えば、炭素源として鋸屑を用いる場合、鋸屑は、乾燥状態で培地全乾物量の20〜90%程度の範囲で使用することができるが、この量は窒素源として用いる培地成分によって変動する。例えば、窒素源に米糠を使用する場合、鋸屑は乾物量として培地全乾物量の20〜90%の範囲で使用するが、鋸屑と米糠を重量比で1:1で混合した混合物に水を加えて、水分含水率を55〜70%に調整したものを、瓶又は箱に圧詰めして調製することが好ましい。
【0012】
また、鋸屑としては広葉樹鋸屑あるいは針葉樹鋸屑をそれぞれ単独あるいは混合して使用することも可能である。
【0013】
本発明に係るきのこは、人工栽培できるきのこであれば特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、えのきたけ、ひらたけ、なめこ、ぶなしめじ、及びしいたけなどが挙げられる。
【0014】
本発明では、CAH、鋸屑等の炭素源、米糠等の窒素源、及び水のほかに、従来より利用されている、きのこの収率を向上させる材料である、アルミノシリケート系化合物、マグネシウムアルミニウムシリケート系化合物、マグネシウムシリケート系化合物、カルシウムシリケート系化合物、マグネシウムアルミネート系化合物、カルシウムアルミネート系化合物、スラグ粉末、エトリンガイト、リン化合物、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び無機硫酸塩等を本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【実施例】
以下、実験例により本発明を詳細に説明する。
【0015】
実験例1
CaO源とAl2O3源を所定量配合し、水/粉体比100%で28日間水和させ、表1に示すCAHを合成し、粉末X線回折装置により生成した水和物を同定した。
その後、生成した水和物を粉砕し、平均粒子径10μmに調製して使用した。
広葉樹鋸屑500g、針葉樹鋸屑500g、及び米糠1,000gをビニール袋に入れ充分に混合して人工培養基を調製した。
調製した人工培養基200gに表1に示す各種CAH10gを添加し、水分含有率を65%に調整して混合物とし、この混合物200gをプラスチック製1リットル広口瓶に圧詰めした。それぞれの瓶の中央に直径1cm程度の穴を開け、打栓後、120℃で90分間殺菌した。
冷却後、ひらたけの鋸屑菌種を植菌し、暗所で温度25℃、相対湿度55%の条件下で30日間培養(菌まわし工程)し、さらに、30日間培養を続けて熟成させた。
次に、栓を外して培養基の上部から約1cm程度菌かきをして菌糸層を除いた後、水道水20mlを添加して充分に吸水させた。
4時間放置後、上部に残った水を取り除いて、温度15℃、相対湿度95%、及び照度20ルクスの条件下で、4日間培養して子実体原基を形成させ、さらに照度を200ルクスに上げて、10日間培養を続け、CAHが子実体収量におよぼす影響について検討した。結果を表1に併記する。
なお、比較のために、CaO源とAl2O3源をCaO:Al2O3モル比が各CAHと同じになるように混合して同様の実験を行い、水和物の効果を確認した。結果を表1に併記する。
【0016】
<使用材料>
広葉樹鋸屑:ぶな材の鋸屑
針葉樹鋸屑:すぎ材の鋸屑
米糠 :市販品
CaO源 :水酸化カルシウム、試薬1級
Al2O3源 :水酸化アルミニウム、試薬1級
CAHア :4CaO・Al2O3・13H2O
CAHイ :3CaO・Al2O3・6H2O
CAHウ :2CaO・Al2O3・8H2O
CAHエ :CaO・Al2O3・10H2O
【0017】
<測定方法>
コントロール対比:CAH添加の人工培養基の子実体収量(g)/CAH無添加の人工培養基の子実体収量(g)×100(%)
【0018】
【表1】
【0019】
実験例2
表2に示すCAHウを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0020】
【表2】
【0021】
実験例3
表3に示す粒度のCAHウを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0022】
【表3】
【0023】
【発明の効果】
本発明のきのこの人工培養基を用いることによって、きのこを高収率で栽培可能となる。
Claims (2)
- カルシウムアルミネート水和物を含有してなるきのこの人工培養基。
- 請求項1記載のきのこの人工培養基を用いてなるきのこの人工栽培方法。
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