JP4577356B2 - 内燃機関の運転制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は内燃機関の運転制御装置に関する。
入力速度を予め定められた変速比でもって変速して出力するための変速機であって、変速比を比較的大きく異なる変速比の間で時間的に略連続して変えることができる変速機が公知である。このような変速機としては遊星歯車を利用した自動変速機がある。この自動変速機により変速比が或る変速比からこれとは比較的大きく異なる別の小さな変速比に変えられるときにはこの自動変速機から出力されるトルク(以下、出力トルク)が不連続的に急激に増大するいわゆるトルクショックが発生する。このトルクショックの発生を抑制するための技術が特許文献1に開示されている。特許文献1の内燃機関は吸気弁の開閉弁タイミングを早めたり遅らせたりすることができる開閉弁タイミング変更機構を具備し、自動変速機の変速比が小さな変速比に変えられるときに一時的に当該開閉弁タイミング変更機構により吸気弁の開閉弁タイミングを遅らせ、これにより内燃機関から出力される機関負荷(以下、出力機関負荷)を低下させ、斯くしてトルクショックの発生を抑制するようにしている。
ところで特許文献1において開閉弁タイミング変更機構は油圧を利用した機構により吸気弁の開閉弁タイミングを変更する。ところが内燃機関の温度が比較的低いときにおいては油圧油の粘性が大きい。このように油圧油の粘性が大きいときに吸気弁の開閉弁タイミングを変更するために命令信号を発し、油圧油を流動させようとしても油圧油は所望のようには流動せず、開閉弁タイミングは即座には変更されない。このため実際に吸気弁の開閉弁タイミングが変更されるまでに時間がかかる。すなわち自動変速機の変速比が変えられるときに出力機関負荷を低下させるために吸気弁の開閉弁タイミングを遅らせるべく命令信号を開閉弁タイミング変更手段に発しても即座には開閉弁タイミングは遅くならず、したがってトルクショックの発生を抑制することができない。
こうした問題は一般的に出力トルクに影響する或る特定の物質量(特に吸気量や排気量)を制御するための制御機構を備え、変速比変更時において該制御機構の制御値を設定して上記物質量を制御し、出力トルクを所期の量だけ低下させ、或いは増大させ、斯くしてトルクショックの発生を抑制するようにした運転制御装置に等しく生じる問題である。
そこで本発明の目的は吸気弁または排気弁の開閉弁タイミングおよび開弁量を変更するための制御機構を備えた運転制御装置において確実にトルクショックの発生を抑制することにある。
一番目の発明では上記課題を解決するために、変速比を制御するための変速機と、吸気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを制御するための吸気弁制御機構とを具備すると共に、燃焼室内への吸気量を制御するための吸気量制御機構を前記吸気弁制御機構とは別に具備する内燃機関の運転制御装置において、上記吸気弁制御機構による吸気弁の開弁量があらかじめ定められた設定値よりも小さい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気弁制御機構によって吸気弁の開閉弁タイミングまたは開弁量を変更する第1のトルクショック抑制処理を実行し、上記吸気弁制御機構による吸気弁の開弁量が上記設定値よりも大きい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気量制御機構によって燃焼室内への吸気量を変更する第2のトルクショック抑制処理を実行する。
二番目の発明では上記課題を解決するために、変速比を制御するための変速機と、排気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを制御するための排気弁制御機構とを具備すると共に、燃焼室内への吸気量を制御するための吸気量制御機構を前記排気弁制御機構とは別に具備する内燃機関の運転制御装置において、上記排気弁制御機構による排気弁の開弁量があらかじめ定められた設定値よりも小さい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記排気弁制御機構によって排気弁の開閉弁タイミングまたは開弁量を変更する第1のトルクショック抑制処理を実行し、上記排気弁制御機構による排気弁の開弁量が上記設定値よりも大きい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気量制御機構によって燃焼室内への吸気量を変更する第2のトルクショック抑制処理を実行する。
三番目の発明では上記課題を解決するために、変速比を制御するための変速機と、吸気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを制御するための吸気弁制御機構と、排気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを制御するための排気弁制御機構とを具備すると共に、燃焼室内への吸気量を制御するための吸気量制御機構を上記吸気弁制御機構および排気弁制御機構とは別に具備する内燃機関の運転制御装置において、上記吸気弁制御機構による吸気弁の開弁量があらかじめ定められた第1の設定値よりも小さい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気弁制御機構によって吸気弁の開閉弁タイミングまたは開弁量を変更し、上記排気弁制御機構による排気弁の開弁量があらかじめ定められた第2の設定値よりも小さい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記排気弁制御機構によって排気弁の開閉弁タイミングまたは開弁量を変更する第1のトルクショック抑制処理を実行し、上記吸気弁制御機構による吸気弁の開弁量が上記第1の設定値よりも大きく且つ上記排気弁制御機構による排気弁の開弁量が上記第2の設定値よりも大きい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気量制御機構によって燃焼室内への吸気量を変更する第2のトルクショック抑制処理を実行する。
四番目の発明では一〜三番目の発明のいずれか一つにおいて、上記変速機が予め定められた値以上に異なる変速比の間で変速比を変更する。
本発明によれば、変速機の変速比変更時に確実にトルクショックを抑制することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。以下で説明する実施例は制御機構として吸気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを変更することができる吸気弁制御機構を採用し、これとは別の制御機構として吸気量を制御することができる吸気絞り弁を採用し、変速比変更時に吸気弁制御機構の制御値を補正することにより出力トルクを低減させ、トルクショックの発生を抑制するようにした運転制御装置において、変速比変更時において吸気弁制御機構の動作特性に関与する因子の影響が極めて大きいときに吸気絞り弁の制御値を補正するようにした例を採用したものである。
図1に本実施例の運転制御装置を備えた内燃機関を示した。図1に示した内燃機関はいわゆる4サイクルガソリンエンジンである。図1において1は機関本体、2は吸気ポート、3は吸気弁、4は排気ポート、5は排気弁、6は燃焼室、7は点火栓である。燃焼室6内にはピストン8が配置される。吸気弁3は吸気弁動作特性変更機構により開閉駆動せしめられる。吸気弁動作特性変更機構については後に詳細に説明する。また機関本体1には機関本体1を冷却するための冷却水の温度を検出するための水温センサ61が取り付けられる。本実施例においてはこの水温センサ61により検出される冷却水の温度から内燃機関の温度が推定される。
吸気ポート2は吸気マニホルド9に接続される。吸気マニホルド9はサージタンク10を介して吸気通路11に接続される。吸気通路11には機関本体1へ吸入せしめられる空気の質量流量(以下、吸気量)を検出するための質量流量検出器12が配置される。質量流量検出器12の上流側の吸気通路5にはエアクリーナ13が接続される。一方、質量流量検出器12の下流側の吸気通路5には通常は全開とされている吸気絞り弁(スロットル弁)15が配置される。吸気絞り弁15はステップモータ(図示せず)等を介して電子的に動作せしめられる動作要素である。吸気絞り弁15の下流側であって吸気ポート2近傍の吸気マニホルド9には燃料噴射弁16が取り付けられる。燃料噴射弁16は燃料供給通路17を介して燃料タンク18に接続される。燃料供給通路17には吐出量可変の燃料ポンプ19が配置される。排気ポート4は排気マニホルド20に接続される。排気マニホルド20は排気通路21に接続される。
機関本体1には点火デストリビュータ25が取り付けられる。点火デストリビュータ25には二つのクランク角センサ26および27が取り付けられる。本実施例においてはこれらクランク角センサ26および27から出力されるパルス信号に基づいて機関回転数が算出される。
内燃機関は電子制御装置50を具備する。電子制御装置50はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス51により互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)52、RAM(ランダムアクセスメモリ)53、CPU(マイクロプロセッサ)54、入力ポート55、および出力ポート56を具備する。質量流量検出器12は対応するAD変換器57を介して入力ポート55に接続される。クランク角センサ26および27は入力ポート55に直接接続される。点火栓7、燃料噴射弁16、燃料ポンプ19、および水温センサ61は対応する駆動回路58を介して出力ポート56に接続される。アクセルペダル14には負荷センサ28が接続される。負荷センサ28は内燃機関に要求される機関負荷(以下、要求機関負荷)を検出する。負荷センサ28は対応するAD変換器57を介して入力ポート55に接続される。
次に図2〜図4を参照して吸気弁動作特性変更機構を簡単に説明する。図2は吸気弁動作特性変更機構の全体図である。吸気弁動作特性変更機構は主に吸気弁3の閉弁タイミングを変更するための機構(以下、閉弁タイミング変更機構)と、吸気弁3の開弁量を変更するための機構(以下、開弁量変更機構)とを具備する。閉弁タイミング変更機構を図3に詳細に示し、開弁量変更機構を図4に詳細に示した。なお閉弁タイミング変更機構の代わりに吸気弁3の開弁タイミングを変更するための開弁タイミング変更機構を採用してもよい。
閉弁タイミング変更機構は図2に示したようにロータ43とハウジング44とを有する。ロータ43は一定範囲内において回動可能にハウジング44内に収容される。またロータ43はカムシャフト34に回転不能に取り付けられる。さらにロータ43は図3に示したようにその外周壁面から径方向外方へと延びる四つの羽根45を有する。一方、ハウジング44はその内周壁面から径方向内方へと延びる四つの隔壁46を有する。ロータ43がハウジング44内に収容されたときにこれら羽根45と隔壁46との間に八つの隔室47a、47bが形成される。これら隔室には切換弁48を介して油圧ポンプ49が接続される。油圧油タンク41内の油圧油が隔室47aに供給されると閉弁タイミングが早められる。一方、油圧油が隔室47bに供給されると閉弁タイミングが遅らされる。このように油圧油が供給される隔室を変えることにより吸気弁3の閉弁タイミングを変更することができる。なおハウジング44は歯車であり、図2に示したように内燃機関の出力により回転せしめられる歯車60に係合する。
一方、開弁量変更機構は図2に示したように三つのカム32a、32b、32cと、これらカムに対応する三つのリフトアーム33a、33b、33cとを有する。各カムが吸気弁3をリフトする量、すなわち開弁量はそれぞれ異なる。図3に示したように中央のリフトアーム33aの端部に一つの貫通孔36が形成される。残りの二つのリフトアーム33b、33cの端部にはそれぞれ油圧室37b、37cが形成される。各油圧室37b、37c内にはそれぞれ対応してピン38b、38cが摺動可能に収容される。これら油圧室37b、37cは切換弁40を介して油圧ポンプ49に接続される。油圧油タンク41内の油圧油がいずれの油圧室37b、37cにも供給されないときにはカム33aにより吸気弁3が開弁駆動せしめられる。このときの吸気弁3の開弁量は最も小さい量である。また油圧油が油圧室37bに供給されたときにはカム33bにより吸気弁3が開弁駆動せしめられる。このときの吸気弁3の開弁量は中程度の量である。さらに油圧油が油圧室37cに供給されたときにはカム33cにより吸気弁3が開弁駆動せしめられる。このときの吸気弁3の開弁量は最も大きい量である。このように油圧油が供給される油圧室を変えることにより吸気弁3の開弁量を変更し、燃焼室6内に供給せしめられる吸気量を制御することができる。
このように本実施例の閉弁タイミング変更機構と開弁量変更機構とは共に油圧を利用して駆動せしめられる。
さて本実施例の内燃機関は入力速度を予め定められた変速比でもって変速して出力するための変速機60を具備する。変速機60は機関回転数や要求機関負荷に応じて最適な変速比を設定し、現在の変速比をこの新しく設定された変速比に自動的に変更する。このように機関回転数や要求機関負荷に応じて設定される複数の変速比は互いに比較的大きな値以上に異なる変速比である。また変速機60は変速比を時間的に略連続して変更する。例えば変速機60は遊星歯車を利用した自動変速機である。なお変速機60は駆動回路58を介して出力ポート56に接続される。また本発明を適用することができる変速機としては有段式自動変速機、無段変速機、手動変速可能な無段変速機を挙げることができる。さらに変速機は内燃機関の動力を車両の駆動輪に伝達することができるように内燃機関と車両の駆動輪との間に配置される。また内燃機関と電動機とを備え、これら内燃機関と電動機とからの動力を組み合わせて車両駆動させるようにしたいわゆるパラレルハイブリッド車に本発明を適用することもできる。
次に本実施例の内燃機関の運転制御について説明する。本実施例の機関運転制御は機関運転状態に応じて三つの制御、すなわち内燃機関の温度が比較的高い状態において変速機60の変速比が変更されるとき、特に変速機60の変速比がそれよりも小さな変速比に変更されるときに実行される暖機後機関運転制御と、内燃機関の温度が比較的低い状態において変速比60の変速比が変更されるとき、特に変速機60の変速比がそれよりも小さな変速比に変更されるときに実行される冷間時機関運転制御と、これら暖機後機関運転制御および冷間時機関運転制御以外の機関運転状態において実行される通常機関運転制御とに分けられる。
まず説明の都合上、通常機関運転制御について説明する。通常機関運転制御においては図5に示したように要求機関負荷Lに略比例して変化する要求吸気量Gaに応じて本実施例においては三つの動作要素の動作パラメータ、すなわち吸気弁3の閉弁タイミングITと吸気弁3の開弁量IAと吸気絞り弁15の開弁量TAとを決定し、その動作を制御する。なお本実施例においては直接的には要求吸気量Gaに基づいて各動作要素の動作パラメータを制御しているが結果的には要求機関負荷Lに基づいて各動作要素の動作パラメータを制御していることにもなる。
詳細に説明すると吸気弁3のベース閉弁タイミングBITは要求吸気量Gaが多くなるほど早めに決定される。吸気弁3のベース開弁量BIAは要求吸気量Gaが第一の閾値Ga1よりも小さいときには低位量aに決定され、第一の閾値Ga1よりも大きく且つ第二の閾値Ga2よりも小さいときには中位量bに決定され、第二の閾値Ga2よりも大きいときには高位量cに決定される。ここで低位量aはカム33aにより吸気弁3を開閉するためのパラメータであり、実際に吸入される吸気量は最も少なく、中位量bはカム33bにより吸気弁3を開閉するためのパラメータであり、実際に吸入される吸気量は中程度であり、高位量cはカム33cにより吸気弁3を開閉するためのパラメータであり、実際に吸入される吸気量は最も多い。さらに吸気絞り弁15のベース開弁量TAは要求吸気量Gaが零であるときには零に決定され、要求吸気量Gaが略零に非常に近い領域にあるときには要求吸気量Gaが増大するほど大きく決定され、それ以外の領域にあるときには全開に決定される。
通常機関運転制御においては上述したように要求吸気量Gaに応じて決定された吸気弁3のベース閉弁タイミングBIT、吸気弁3のベース開弁量BIA、および吸気絞り弁15のベース開弁量BTAがそのまま吸気弁3の設定閉弁タイミングSIT、吸気弁3の設定開弁量SIA、および吸気絞り弁15の設定開弁量STAとして設定される。斯くして設定された各制御パラメータに従って各動作要素、すなわち閉弁タイミング変更機構、開弁量変更機構、および吸気絞り弁15が制御される。
暖機後機関運転制御においては変速比が変更されるときのトルクショックの発生を抑制するために上記決定された吸気弁3のベース閉弁タイミングに補正係数K1を加算する補正を実行し、吸気量が上記決定された閉弁タイミングで吸気弁3を閉弁したときの吸気量に比べて少なくなる閉弁タイミングにまで閉弁タイミングを遅らせ、これを吸気弁3の設定閉弁タイミングSITとして設定する。これによれば変速比が変更されるときに出力機関負荷が低下する。このため変速機60の変速比が変更されるときにおいて変速機60から出力される出力トルクが急激に増大するいわゆるトルクショックの発生を抑制することができる。なお本実施例の暖機後機関運転制御においては吸気弁3の閉弁タイミング以外の制御パラメータについては何ら補正を加えないが出力機関負荷を低下させる目的以外の目的により吸気弁3の閉弁タイミング以外の制御パラメータを変更するようにしてもよい。
冷間時機関運転制御においては変速比が変更されるときのトルクショックの発生を抑制するために上記決定された吸気絞り弁15のベース開弁量BTAに補正係数K2を減算する補正を実行し、これを吸気絞り弁15の設定開弁量STAとして設定する。これによれば吸気絞り弁15の開弁量が小さくされるので変速比が変更されるときに出力機関負荷が低下する。このため変速機60の変速比が変更されるときにおけるトルクショックの発生を抑制することができる。また内燃機関の温度が低いときには油圧油の温度も低く、その粘性が高い。このため内燃機関の温度が低いときに暖機後機関運転制御に従って吸気弁3の閉弁タイミングを遅らせようとして指令信号を発し、油圧油を流動させようとしても油圧油は所望のようには流動しない。このため即座に吸気弁3の閉弁タイミングが遅くならず、したがってトルクショックの発生を抑制することができない。一方、吸気絞り弁15は電子的にその動作を制御せしめられるのでたとえ内燃機関の温度が低くても指令信号に即座に応答する。このため本実施例によれば内燃機関の温度が低いときであっても変速比が変更されるときに即座に出力機関負荷を低下させることができるのでトルクショックの発生を良好に抑制することができる。なお本実施例の冷間時機関運転制御においては吸気絞り弁15の開弁量以外の制御パラメータについては何ら補正を加えないが出力機関負荷を低下させる目的以外の目的により吸気弁3の閉弁タイミング以外の制御パラメータを変更するようにしてもよい。
上述した三つの制御を含む機関運転制御を実行するためのフローチャートを図6に示した。初めにステップ10において要求機関負荷Lが読み込まれ、この要求機関負荷Lに基づいて要求吸気量Gaが推定される。次いでステップ11において要求吸気量Gaに基づいて吸気弁3のベース閉弁タイミングBIT、吸気弁3のベース開弁量BIA、および吸気絞り弁15のベース開弁量BTAが決定される。
次いでステップ12において変速比が変更されている最中であるか否かが判別される。ステップ12において変速比が変更されている最中ではないと判別されたときには通常機関運転が実行される。すなわちステップ16に進んで吸気弁3のベース閉弁タイミングBITが設定閉弁タイミングSITとして設定され、吸気弁3のベース開弁量BIAが設定開弁量SIAとして設定され、吸気絞り弁15のベース開弁量BTAが設定開弁量STAとして設定される。次にステップ15に進んで各動作要素(閉弁タイミング変更機構、開弁量変更機構、および吸気絞り弁)がステップ16にて設定された各動作パラメータに従って制御せしめられる。
一方、ステップ12において変速比が変更されている最中であると判別されたときにはステップ13に進んで水温センサ61により検出された冷却水の温度Tが予め定められた温度Tth以上(T≧Tth)であるか否かが判別される。ステップ13においてT≧Tthであると判別されたときには暖機後機関運転制御が実行される。すなわちステップ14に進んで吸気弁3のベース閉弁タイミングBITに補正係数K1を加えた値が設定閉弁タイミングSITとして設定され、吸気弁3のベース開弁量BITが設定開弁量SIAとして設定され、吸気絞り弁15のベース開弁量BTAが設定開弁量STAとして設定される。次にステップ15に進んで各動作要素がステップ14にて設定された各動作パラメータに従って制御せしめられる。
一方、ステップ13においてT<Tthであると判別されたときには冷間時機関運転制御が実行される。すなわちステップ17に進んで吸気弁3のベース閉弁タイミングBITが設定閉弁タイミングSITとして設定され、吸気弁3のベース開弁量BITが設定開弁量SIAとして設定され、吸気絞り弁15のベース開弁量BTAから補正係数K2を減算した値が設定開弁量STAとして設定される。次にステップ15に進んで各動作要素がステップ17にて設定された各動作パラメータに従って制御せしめられる。
なお上述した実施例においては冷間時機関運転制御において補正する動作パラメータとして吸気絞り弁の開弁量を選択しているが出力機関負荷に関与する動作要素であってその動作が機械的に、或いは電気的に、或いは電子的に制御せしめられる動作要素の動作パラメータを選択してもよい。すなわちその動作が少なくとも油圧により制御せしめられる動作要素以外の動作要素に関する動作パラメータを補正するようにすれば変速比の変更中におけるトルクショックの発生を抑制することができる。
また上述した実施例においては暖機後機関運転制御においては吸気弁の閉弁タイミングのみを補正し、冷間時機関運転制御においては吸気絞り弁の開弁量のみを補正しているが以下のように補正を実行してもよい。すなわち暖機後機関運転制御において吸気弁の閉弁タイミングと吸気絞り弁の開弁量とを補正することにより出力機関負荷を低下させるが主には吸気弁の閉弁タイミングの補正により出力機関負荷を略目標補正機関負荷に低下させ、補助的に吸気絞り弁の開弁量の補正により出力機関負荷を目標補正機関負荷に近づけるようにし、一方、冷間時機関運転制御においても吸気弁の閉弁タイミングと吸気絞り弁の開弁量とを補正することにより出力機関負荷を低下させるが主には吸気絞り弁の開弁量の補正により出力機関負荷を略目標補正機関負荷に低下させ、補助的に吸気弁の閉弁タイミングの補正により出力機関負荷を目標補正機関負荷に近づけるようにしてもよい。
もちろん変速比が変更されるときに補正すべき対象としては吸気弁の閉弁タイミングと吸気絞り弁の開弁量との組合せ以外にも考えられる。如何なる対象を補正すべき対象とするかは暖機後機関運転制御においては主に吸気弁の閉弁タイミングの補正により出力機関負荷を低下させ、その他の制御パラメータの補正を出力機関負荷の調整のために補助的に利用し、逆に冷間時機関運転制御においては主に吸気弁の閉弁タイミング以外の制御パラメータの補正により出力機関負荷を低下させ、吸気弁の閉弁タイミングの補正を出力機関負荷の調整のために補助的に利用するという観点から決めればよい。
なお本発明の技術思想は出力トルクに影響する或る特定の物質量を制御するための制御機構を備え、変速比変更時において該制御機構の制御値を設定して上記物質量を制御し、出力トルクを所期の量だけ低下させ、或いは増大させ、斯くして変速比変更時のトルクショックの発生を抑制するようにした運転制御装置に等しく適用可能である。そして本発明の技術思想の特徴はこうした運転制御装置において、制御機構の動作特性に関与する因子に応じて変速比変更時における制御機構の制御値を補正し、変速比変更時において出力トルクを確実に所期の量だけ低下させ、或いは増大させ、斯くして変速比変更時のトルクショックの発生を抑制することにある。
また本発明の別の技術思想の特徴は上記運転制御装置において、制御機構の動作特性に関与する因子に応じて変速比変更時の制御機構の制御値を補正し、それと共に或る特定の物質量を制御するための当該制御機構とは別の制御機構の制御値をも合わせて補正し、出力トルクを所期の量だけ低下させ、或いは増大させ、斯くして変速比変更時のトルクショックの発生を抑制することにある。これは制御機構の動作特性に関与する因子の影響が極めて大きく、したがってこうした因子に応じて制御機構の制御値のみを補正したのでは出力トルクを所期の量だけ低下させ、或いは増大させることができない場合に特に有効である。しかしながら制御機構の動作特性に関与する因子の影響がさほど大きくない場合においても必要に応じて別の制御機構の制御値をも合わせて補正するようにしてもよい。
もちろん上記運転制御装置において、制御機構の動作特性に関与する因子が制御機構の動作特性に与える影響が極めて大きいときに当該制御機構の設定値を補正せずにこれとは別の制御機構の設定値のみを補正するようにしてもよい。
なお制御機構の動作特性に関与する因子とは例えば上記制御機構が吸気弁の開閉弁タイミングおよび開弁量を変更することができる吸気弁制御機構である場合には内燃機関の温度、吸気弁制御用の油圧油温度、吸気弁制御用の油圧、内燃機関の潤滑油温度、内燃機関の潤滑油圧、内燃機関の冷却水温度、内燃機関の冷却水圧、吸気弁のリフト量(およびその変更速度)、吸気弁の開閉弁タイミング(およびその変更速度)、吸気弁が電磁力を用いて駆動せしめられるタイプである場合には電磁力発生用のコイルの温度、コイルに関する電気的な特性値(例えばコイル抵抗、コイルに供給される電圧、電流)である。
また上記制御機構が排気弁の開閉弁タイミングおよび開弁量を変更することができる排気弁制御機構である場合には上記様々な原因とは例えば内燃機関の温度、排気弁制御用の油圧油温度、排気弁制御用の油圧、内燃機関の潤滑油温度、内燃機関の潤滑油圧、内燃機関の冷却水温度、内燃機関の冷却水圧、排気弁のリフト量(およびその変更速度)、排気弁の開閉弁タイミング(およびその変更速度)、排気弁が電磁力を用いて駆動せしめられるタイプである場合には電磁力発生用のコイルの温度、コイルに関する電気的な特性値(例えばコイル抵抗、コイルに供給される電圧、電流)である。
また上記制御機構とは別の制御機構とは例えば吸気絞り弁(すなわち電子吸気スロットル弁)、燃料噴射弁、点火栓、排気ガスを機関排気通路から機関吸気通路に循環させるようにした内燃機関では循環させる排気ガスの量を制御するための排気ガス循環量制御弁であり、吸気絞り弁を採用した場合の制御値はその開度、燃料噴射弁を採用した場合の制御値は燃料噴射量および燃料噴射タイミング、点火栓を採用した場合の制御値は点火タイミング、排気ガス循環制御弁を採用した場合の制御値はその開度である。これら制御値を如何に補正するかは出力トルクを低減する場合、或いは出力トルクを増大する場合にそれぞれ応じて適宜、決定することができ、このことは当業者には明らかであるので例示は省略する。
1 機関本体
3 吸気弁
15 吸気絞り弁
3 吸気弁
15 吸気絞り弁
Claims (4)
- 変速比を制御するための変速機と、吸気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを制御するための吸気弁制御機構とを具備すると共に、燃焼室内への吸気量を制御するための吸気量制御機構を前記吸気弁制御機構とは別に具備する内燃機関の運転制御装置において、上記吸気弁制御機構による吸気弁の開弁量があらかじめ定められた設定値よりも小さい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気弁制御機構によって吸気弁の開閉弁タイミングまたは開弁量を変更する第1のトルクショック抑制処理を実行し、上記吸気弁制御機構による吸気弁の開弁量が上記設定値よりも大きい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気量制御機構によって燃焼室内への吸気量を変更する第2のトルクショック抑制処理を実行することを特徴とする内燃機関の運転制御装置。
- 変速比を制御するための変速機と、排気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを制御するための排気弁制御機構とを具備すると共に、燃焼室内への吸気量を制御するための吸気量制御機構を前記排気弁制御機構とは別に具備する内燃機関の運転制御装置において、上記排気弁制御機構による排気弁の開弁量があらかじめ定められた設定値よりも小さい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記排気弁制御機構によって排気弁の開閉弁タイミングまたは開弁量を変更する第1のトルクショック抑制処理を実行し、上記排気弁制御機構による排気弁の開弁量が上記設定値よりも大きい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気量制御機構によって燃焼室内への吸気量を変更する第2のトルクショック抑制処理を実行することを特徴とする内燃機関の運転制御装置。
- 変速比を制御するための変速機と、吸気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを制御するための吸気弁制御機構と、排気弁の開閉弁タイミングと開弁量とを制御するための排気弁制御機構とを具備すると共に、燃焼室内への吸気量を制御するための吸気量制御機構を上記吸気弁制御機構および排気弁制御機構とは別に具備する内燃機関の運転制御装置において、上記吸気弁制御機構による吸気弁の開弁量があらかじめ定められた第1の設定値よりも小さい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気弁制御機構によって吸気弁の開閉弁タイミングまたは開弁量を変更し、上記排気弁制御機構による排気弁の開弁量があらかじめ定められた第2の設定値よりも小さい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記排気弁制御機構によって排気弁の開閉弁タイミングまたは開弁量を変更する第1のトルクショック抑制処理を実行し、上記吸気弁制御機構による吸気弁の開弁量が上記第1の設定値よりも大きく且つ上記排気弁制御機構による排気弁の開弁量が上記第2の設定値よりも大きい場合には、上記変速機により変速比を変更するときに該変速比の変更により発生するトルクショックを抑制するように上記吸気量制御機構によって燃焼室内への吸気量を変更する第2のトルクショック抑制処理を実行することを特徴とする内燃機関の運転制御装置。
- 上記変速機が予め定められた値以上に異なる変速比の間で変速比を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の運転制御装置。
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