以下、本発明の実施の形態に係る表示デバイスのスタンド機構について、図1乃至図9を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
本発明の実施の形態に係る表示デバイスのスタンド機構は、狭い視野角の画面表示を行う表示部、及びこの表示部を駆動するドライバ回路を設けた回路基板を収容した本体部と、この本体部の背面側に配設したスタンド部材とからなり、このスタンド部材を本体部の背面側に開脚させて、この本体部を所望の角度で後方側に傾斜させた状態で支持するものである。
図1は表示デバイスの設置状態の一例を示す図である。図2(a)は表示デバイスの前方斜視図であり、図2(b)は表示デバイスの背面斜視図である。図3は開脚状態の表示デバイスの側面図である。表示デバイス1は水平面を有する台2の上に設置されている。この表示デバイス1は、液晶ディスプレイ等の表示部3と、図示しない回路基板と、表示部3の画面を露出させる開口部を有しこの表示部3の正面側に配置されるフロントケース4と、表示部3の背面側に配置されて外面の左右両端部に溝5が形成されたリアケース6と、それぞれ一端部がこのリアケース6の2つの溝5に嵌挿された2本の角度調整脚(脚部)7とを備えている。これらの表示部3や回路基板と、筐体であるフロントケース4及びリアケース6とによって本体部8が構成されている。
リアケース6の正面側の面とフロントケース4の背面側の面とにはそれぞれ図示しない位置決め用のリブや突起部が形成されている。また、リアケース6の正面側の面の複数箇所には弾性爪が形成されており、フロントケース4の背面側の面のこれらの弾性爪と向き合う箇所にはそれぞれ係止部が形成されている。これらの弾性爪及び係止部が係合することによって、表示部3や回路基板はフロントケース4及びリアケース6によって挟み込まれた状態で保持される。
2本の角度調整脚7の自由端側である他端部が台2の面に接地された場合、図3に示すように、角度調整脚7の長手方向がこの本体部8に対して所定の開脚角度θを成す状態で本体部8は傾斜する。本実施形態に係る表示デバイス1のスタンド機構は、この開脚角度θを大きく又は小さくすることによって、本体部8の水平面に対する傾斜角を小さく又は大きくする構造を有する。以下、利用者がこの表示デバイス1をより上方方向から覗き込みやすい様にするための角度調整機構について図4から図6を参照して説明する。
図4(a)は角度調整脚7が嵌込まれた状態の溝5の拡大斜視図である。図4(b)は角度調整脚7が無い状態の溝5の拡大斜視図である。図4(c)は角度調整脚7の斜視図である。図5は溝5の断面矢視図である。図6はリアケース6の正面側の部分拡大斜視図である。
溝5は、対向する2つの側壁部9、10、これらの側壁部9、10の間に架設された軸部11、及び溝底部12からなる。軸部11は、図6に示すように、一端に鐔部を有し、この軸部11の他端部の外周面には環状のくびれ部が形成されている。軸体を側壁部9、10に形成された軸穴13、14に挿通させた後に、このくびれ部に断面C形の留め輪15を取り付けることによって軸部11はリアケース6から抜け止めされる。
角度調整脚7の一端部には軸部11が摺動自在に挿通される長穴16が形成されている。角度調整脚7は、長穴16の一端部側の内壁が軸部11に当接する位置と、長穴16の他端部側の内壁が軸部11に当接する位置との間を長穴16の長径方向に沿って移動可能にされている。
溝底部12には、軸部11の軸芯周りに沿って3箇所にそれぞれ断面略円形の角度穴17、18、19が形成されている。これらの角度穴17〜19は角度調整脚7を差込むための位置決め用の穴であり、隣り合う角度穴と一体化されない程度に予め適切に決定された箇所に形成されている。角度穴17の中心軸線は、リアケース6の背面側端面に対して約90°傾斜しており、角度穴17に角度調整脚7の先端部が嵌込まれた状態でこの角度調整脚7が支持されることにより、角度調整脚7とリアケース6との間の開脚角度は90°にされる。同様に、角度穴18が角度調整脚7を受け入れることにより、角度調整脚7とリアケース6との間の開脚角度は約45°にされる。角度穴19に角度調整脚7が差込まれると、角度調整脚7はリアケース6の背面側端面と略平行にされる。
そして、これらの角度穴17、18、19のうちのいずれかに角度調整脚7の一端部の先端部が差込まれることにより表示部3が水平面に対して所望の起立角度で起立させられるとともに、この先端部が差込まれたいずれかの角度穴から引抜かれて他の角度穴に差込まれることによりこの起立角度が調整される。換言すれば、角度調整脚7を設置するための軸部11と、リアケース6の背面側の端面に対して中心軸線が傾斜している角度穴17〜19と、角度調整脚7と、この角度調整脚7に形成された長穴16とによって角度調整機構としての機能が実現される。
このような構成の本実施形態に係る表示デバイス1のスタンド機構が、角度調整脚7を、図7のAに示す状態からBに示す状態に変更する場合の手順について説明する。ここで、図7は本体部と脚部との成す角度の調整方法を説明するための図であり、図8は溝5の長手方向に沿う断面について本体部8の側面方向から見た矢視図である。図8(a)は図3の例と同じ角度となるように角度調整脚7が角度穴18に差込まれた状態を示している。この状態から利用者は角度調整脚7を角度穴18から矢印の方へ引っ張ってから、角度調整脚7を長穴16の長径分引抜く。図8(a)の状態から、利用者が図8(b)に示すように、角度調整脚7を、軸部11の軸芯を中心に所定角度回転させて、図8(c)に示す状態の位置になるまで角度調整脚7を回動させる。この図8(c)の位置において利用者は角度調整脚7を矢印方向に角度穴17に押し込む。これによって、図8(d)に示すように、角度変更が完了する。
この図8(d)に示す脚位置で表示デバイス1を台2上に置いたときの起立角度の一例を図9の右側に示す。開脚角度を調節することによって、本体部8は起立角度θ1と起立角度θ2との各位置をとる。図8(d)の状態から図8(a)の状態に角度調整脚7の開脚角度を変更する場合の手順も、これらの手順と同様の手順により行われる。
また、図7のAの状態から図7のCの状態に開脚角度を変更する場合の手順、及び図7のCの状態から図7のAの状態に開脚角度を変更する場合の手順も、図7のAの状態と図7のBの状態との間の開脚角度の変更手順と同様である。図7のBの状態と図7のCの状態との間の開脚角度の変更手順も、図7のAの状態と図7のBの状態との間の開脚角度の変更手順と同様である。
図7のCに示す脚位置では、角度調整脚7の一端部の先端部が角度穴19に差込まれたとき、この角度調整脚7の他端部は溝5の開口面から突出しないため、この角度調整脚7を本体部8内に収納することが可能になる。従って、表示デバイス1をフック用穴20により壁掛け設置した状態であっても角度調整脚7が設置の邪魔になることはない。このように、表示デバイス1の設置の自由度を確保することもできるようになる。角度調整脚7が本体部8に収納可能であるため、表示デバイス1を箱などに収納する場合、角度調整脚7がかさばる事が無くなり収納性の点でも優れる。
脚に相当する支持部材だけを筐体から着脱可能にした構造を有する表示機器のスタンドは、この支持部材を筐体から取り外すことにより、壁掛けされた態様でも使用可能となり、また、箱の中に収納することも可能である。ところが、このスタンドでは、支持部材を利用者が紛失するおそれがある。これに対して、本実施形態に係る表示デバイス1のスタンド機構によれば、角度調整脚7を本体部8から取り外さずに本体部8内に収納することができるため、角度調整脚7が本体部8から分離されることがなくなって、角度調整脚7を紛失する恐れも無くなる。
また、本実施形態に係る表示デバイス1のスタンド機構は、角度調整脚7を長穴16に沿って移動させることによって、この角度調整脚7が本体部8のいずれかの角度穴から引抜かれ、軸部11を中心に回転した後、別の角度穴に挿入される仕組みを有する。従って、このスタンド機構によれば、ヒンジ、チルト機構、あるいは画面の傾斜角を調節するための特別な機構を設けることなく、開脚角度を変えられるようになる。
このように、表示デバイス1は、台2など設置面に対する設置角度を調整することが必要な表示デバイス1において、本体部8に設けた角度穴17〜19、軸部11、及び角度調整脚7だけの単純な構造により角度調整機構を実現することができる。表示デバイス1を高いテーブルあるいは低いテーブルの上に設置した場合、同じ利用者にとって見やすくなる表示部3の視野角は異なる。テーブル上に設置された表示デバイス1を座高が異なる利用者が見る場合、これらの利用者にとって見やすくなる表示部3の視野角は異なる。本実施形態に係る表示デバイス1のスタンド機構によれば、テーブルの高さや利用者によって異なる視野角に応じて表示部3の設置面に対する傾斜角度を適切に変更調節することができるようになり、かつ、この角度の変更調節機能を少ない部品点数で実現することができる。これにより、表示デバイス1の製造単価を抑制することもできるようになる。
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、角度調整脚7の数は2本であったが、互いに平行な3つ以上の溝5をリアケース6の背面に形成し、これらの溝5にそれぞれ角度調整脚7を取り付けてもよい。他端部が例えば幅広に形成された角度調整脚7を用いることによって、本体部8を安定して支持することもできる。この場合、角度調整脚7の本数は1本でもよい。
上記の実施形態では、角度調整脚7が差込まれる穴は3箇所に設けられていたが、角度調整脚7の径を小さくすることによって、溝底部12に4箇所以上の穴を設けることもできる。この場合も、各穴は互いに重ならないように形成される。開脚角度は、溝5の深さ、軸部11と溝底部12との距離、角度調整脚7の長穴16の配置位置や長さ、及び溝底部12に設けられる各穴の場所や高さなどによって種々変更可能である。
また、上記の実施形態では、溝底部12は軸部11の周面に対して凹状の湾曲面を有し、溝底部12の一端側が溝5の開口部の長手方向端縁部に連続するようにこの溝底部12が形成されているが、本実施形態に係る表示デバイス1のスタンド機構では、溝底部が、水平な底面と、この底面の一端部から傾斜して上縁が溝の開口部の端縁部に連続する傾斜面とによって構成されてもよい。この場合においても、複数の穴がこれらの底面及び傾斜面に形成されて、角度調整脚7の一端部の先端部がこれらの穴に差込まれ、及び引抜かれることによって、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
1…表示デバイス、2…台、3…表示部、4…フロントケース(筐体)、5…溝、6…リアケース(筐体)、7…角度調整脚(脚部)、8…本体部、9,10…側壁部、11…軸部、12…溝底部、13,14…軸穴、15…留め輪、16…長穴、17〜19…角度穴、20…フック用穴。