JP4574791B2 - Mri装置およびmrイメージング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、被検体内の原子核スピンの磁気共鳴現象を利用したMRI(磁気共鳴イメージング)装置およびMRイメージング方法に係り、とくに、被検体に造影剤を投与することなく、パフュージョン(perfusion:組織血流)または血管の画像を提供することができるASL(Arterial SpinLabeling)法を実施するためのMRI装置およびMRイメージング方法に関する。
【0002】
とくに、本発明において、本発明者は、ASL法の1つとして知られているSTAR(Signal Targeting Alternating Radio frequency)法を基礎にした、ASTAR(modified STAR using Asymmetric Inversion slabs)法と呼ぶべきASL法を発明した。
【0003】
【従来の技術】
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するFID(自由誘導減衰)信号やエコー信号から画像を得る手法である。
【0004】
この磁気共鳴イメージングの一つのカテゴリーとして、ASL(Arterial Spin Labeling)法がある。このイメージング法は、被検体に造影剤を投与することなく、つまり非侵襲で、被検体の血管像やmicro circulationを反映させたパフュージョン(組織血流)像を提供する手法であり、近年、これに関する研究が盛んに行われている。また、頭部を中心に臨床応用も始まっている。
【0005】
このASL法には、「continuous ASL (CASL)法」と、「dynamic ASL (DASL)」法とがある。CASL法は大きな連続的なadiabatic RFを印加する手法であるのに対し、DASL法はパルス状のadiabatic RFを印加する手法であって、臨床用のMRI装置でも比較的簡単に実施できる。
【0006】
DASL法は、大別して、STAR(Signal Targeting with Alternating Radio frequency)法およびFAIR(Flow sensitive alternating Inversion Recovery)の2つの手法がある。さらに、この2つの手法は以下のように種々の形態に変形されている。
【0007】
STAR法は、“Nishimura et al., MRM 7:472−484 (1988)”および “Edelman et al., MRM31:233−238 (1994)”で提案されているように、撮像面に対して空間的にオフセットしたタグ用RFパルスを用いて、一方向(通常、動脈流入方向)からのフローを画像化しようとする手法である。しかし、タグ用RFパルスの印加によるMT(magnetization transfer)効果の差に起因してフローの寄与以上の誤差が入ってしまう。とくに、組織血流は、原信号の2%以下のオーダーの微小な信号差からなるフロー成分を元に画像化されるので、このMT効果の差は大きく影響する。
【0008】
このMT効果の差を解消する手法が“Edelman et al., Radiology, 192, 513−520(1994)”により提案されているEPISTAR(echo−planar imaging and signal targeting with alternating radio frequency)法と呼ばれるイメージング法である。これによると、MT効果の差を無くするために、撮像面に対する血流(動脈流)の上流および下流に厚さおよびオフセット量共に対称なRFパルスを印加している。これにより、撮像面におけるMT効果の差は解消または低減するものの、一方で、FAIR法と同様に撮像面に流入する両方向の血流が画像化されてしまい、静脈流の画像化を抑える、いわゆる静脈抑制が効かない。
【0009】
一方、例えば“Kwong et al., MRM 34, 878−887 (1995)”で提案されているFAIR(flow−sensitivealternation inversion recovery)はSTAR法に比べて、コントロール/タグ用RFパルスにオン・レゾナンス(on−resonance)のIRパルスを用いているので、MT効果の差は殆ど生じることなく、transit delay timeを小さくできる手法である。
しかし、撮像面に対する血流の流入方向を分離することができないので、この手法単独では静脈抑制ができないという問題がある。さらに、関心組織に対する支配血管の流入方向を特定したい場合でも、これができないという問題もある。
【0010】
ASL法では、したがって、MT効果のキャンセルと一方向のフローのみのイメージングという相反する問題を解決することが重要である。この2つの問題を解決または改善しようとする手法は、例えば「New EPI−STAR法」および「ASI−STAR法」として提案されている。
【0011】
この内、New EPI−STAR法は例えば“Mai et al., ISMRM 1998, p1205”に示されている。adiabatic パルスの性質を利用して、タグ側で360°のIRパルスを印加し、コントロール側にはタグ側と同じ位置に180°のIRパルスを2発印加することで、MT効果をキャンセルさせる手法である。これはEPISTAR法の改良にあたる手法で、タグ側からのフローのみを画像化するともとに、マルチスライス可能な方法である。
【0012】
さらにASI−STAR法は、FAIR法の改良として位置付けられる。非選択IRパルスに厚さを与え、かつタグ用RFパルスのオフセットをフロー流入側が大きくなるように与える手法である。これにより、静脈側はほぼ選択IRパルスと重なるようにしたものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したNew EPI−STAR法およびASI−STAR法ともに、以下のような不都合がある。New EPI−STAR法を用いてシングルスライスを撮像する場合、180°パルスを連続して2回掛けても、コントロール側で縦磁化Mzが完全に回復せず、このパルス無しの場合に比べて、MT効果のキャンセル不完全さの影響が無視できない値として残ること、RFパワーも大きくなって、SARが増加する。また、マルチスライスに実施する場合は、基本的にtransit delay timeが増加するので、定量化には不向きである。
【0014】
また、ASI−STAR法を用いて撮像する場合、一方の側のみに周波数オフセットを与えるため、このオフセット値が小さいにせよ、コントロール/タグ間のMT効果は小さい値であるが、完全に無視できない値として、キャンセルされないで残る。この値は、低フローの血流を検出するときの大きな誤差要因となる。また、静脈側のタグとコントロールのスラブプロファイルについても、その傾斜部分の一致が完全または完全とみなせる程ではないので、低速である静脈流が励起されてしまい、差分を完全には消すことができないという状況にある。
【0015】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、ASL法に基づく撮像において、RF波のパワーを格別に増大させたり、SAR(RF被曝)を必要以上に大きくさせることなく、撮像領域におけるMT効果を互いに確実にキャンセルさせて静止組織からの信号に因る差分誤差を低減させるとともに、一方向の血流からの信号にのみ感度を持たせて、例えば、静脈流の影響を著しく低減させることで、殆どが動脈流成分のみに拠る、定量性を向上させたパフュージョン像または血流像(MRA)を提供することを、その目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ASL法に基づきパフュージョン(組織血流)像または血管(MRA)像を得る手法を提供するものであり、造影剤を用いないで、非侵襲的にそれらの画像を得ることができる。
【0017】
本発明では、上記目的を達成するために、ともにASL法に属する2つのイメージング法に基づくアプローチを採用している。その1つは、本発明者がASTAR(Signal Targeting with Alternated Radio frequency using Asymmetric Inversion Slab)と呼ぶ、新規なASL法に拠るアプローチであり、もう1つは、前述したEPISTAR法における新規な信号処理に拠るアプローチである。
【0018】
1.ASTAR法によるアプローチ
最初に、ASTAR法を説明する。
【0019】
本発明に係るASTAR法は、パルス状のadiabaticRF波を用いるPASL法及び大きな連続的なadiabatic RF波を用いるCASL法の何れにも適用できる。最初に、PASL法に基づくASTAR法、次にCASL法に基づくASTAR法の順に説明する。
【0020】
1.1.PASL法に基づくASTAR法
(ASTAR法の概要)
図1に、PASL法に基づくASTAR法により空間的に設定されるスラブ(又はスライス)の位置関係を示す。同図において、横軸を被検体の体軸方向zにとり、縦軸をイメージングスラブ(Imaging slab)のz軸方向の中心からの変調周波数オフセット量にとる。斜めの2本の破線はIR(反転回復)傾斜磁場強度を示す。
【0021】
このASTAR法(PASL法に拠る)では、図1に示す如く、撮像領域として選択的に設定されるイメージングスラブに対し、タグ用IR(インバージョン)パルスの印加によるタグスラブ(Tagging slab または Tag−IR slab)とコントロール用IRパルスの印加によるコントロールスラブ(Controlling slab またはControl−IR slab)とが選択的に設定される。
【0022】
そして、タグスラブに選択的に印加するタグ用IRパルスを含んだパルス列とイメージングスラブに選択的に印加するイメージング用パルス列とから成る第1のパルスシーケンスを用いたスキャン(以下、「タグ(ラベル)スキャン」と呼ぶ)と、コントロールスラブに選択的に印加するコントロール用IRパルスを含んだパルス列とイメージングスラブに選択的に印加するイメージング用パルス列とから成る第2のパルスシーケンスを用いたスキャン(以下、「コントロールスキャン」と呼ぶ)が適宜な順番で時系列的に実施される。タグスキャンを行う撮像モードをタグモードと呼び、コントロールスキャンを行う撮像モードをコントロールモードと呼ぶことにする。
【0023】
このタグスキャンおよびコントロールスキャンを実行するに際し、タグ用IRパルスとコントロール用IRパルスのイメージングスラブの中心からのオフセット周波数は同じ値にした状態で、各イメージングパルスによるスラブの厚さと位置オフセットを同じ倍率で変えることを特徴の1つとする。これにより、タグスラブおよびコントロールスラブとイメージングスラブとの間の距離を調整でき、これにより、両IRパルスの印加に伴ってイメージングスラブに生じるMT効果を同一にまたは殆ど同一にし、かつ、一方向からの血流のみをイメージングする手法である。
【0024】
このASTAR法を実施して例えば被検体の頭部を撮像する場合、動脈は下肢側から頭頂部側に流れているので、タグ用IRスラブはイメージングスラブよりも下肢側(下側)に設定され、一方、コントロール用IRスラブはイメージングスラブよりも頭頂部側(上部)側に設定される。本発明では、コントロール用IRスラブを、静脈を含む頭頂部に掛からないように設定することを必須の特徴とする。つまり、頭頂部から外れた位置にコントロール用IRスラブが設定される。
【0025】
ASL法において、通常、除外したいのは、静脈系から検出される信号である。「除外」と言っても、結局のところ、反転(TI)時間内に静脈からの信号がイメージングスラブに入りこまなければよい。静脈は動脈に比べて、比較的低速であるため、コントロール用IRスラブを頭部から位置的に完全に外して設定する必要は無く、静脈の流速、ギャップ(空隙)の距離、および反転時間などの条件に応じて、適度なマージンだけイメージングスラブから離して設定してもよい。
【0026】
なお、以降の説明において、イメージングスラブに対して、コントロールスラブを設定する側の被検体領域または空間領域を必要に応じて、単に「コントロール側」と呼び、その反対に、タグスラブを設定する側の被検体領域または空間領域を必要に応じて、単に「タグ側」と呼ぶことにする。また、必要に応じて、コントロールスキャンにより収集されるエコーデータに基づく画像を「コントロール画像」と呼び、タグスキャンによるそれを「タグ画像」と呼ぶことにする。
【0027】
(ASTAR法を満足させる必要十分条件)
いま、コントロール側およびタグ側それぞれに対し、参照符号を図1に示す如く、
【外1】
とすると、
【数1】
の関係が成立する。
【0028】
ここで、コントロールスキャンおよびタグスキャンによるMT効果を互いに同じ値にするには、コントロール用IRスラブおよびタグ用IRスラブを設定するときのIRパルスの帯域幅BWおよびオフセット周波数が同じであること、すなわち、
【数2】
が成立すれば必要十分である。
【0029】
よって、上式(a)〜(f)から、
【数3】
が得られる。
【0030】
ところで、このASTAR法にあっては、コントロールスキャンおよびタグスキャンに使用するIRパルス(コントロール用IRパルスおよびタグ用IRパルス)は、イメージングスラブに対して、互いに正負逆極性で印加する必要がある。例えば、体軸方向をz軸方向にとり、イメージングスラブの中心位置を原点として、抑制したい血流(例えば静脈流)の上流方向を正に、その反対方向を負にとると、
【数4】
になる必要がある。これは、MT効果がIRパルスのオフセット励起周波数(deltaF)の正負に対して対称であるならば、絶対値が等しく且つ符号が反対であればよい。しかし、それが非対称のときは、オフセット励起周波数(deltaF)は符号も含めて同じでなければならない。
【0031】
また、このASTAR法にあっては、上述の如く、コントロール側において静脈を含む実質組織にコントロールスラブが重ならない(掛からない)ことを条件の1つにする。そこで、イメージングスラブのz軸方向中心位置からコントロールスラブまでの制限距離をDlimitとすると、
【数5】
が成立すれば、かかる条件を満足させることができる。
【0032】
そこで、以上の諸条件を、傾斜磁場G、厚さThick、およびオフセットOffsetの関係を含めてまとめると、コントロールスキャン時およびタグスキャン時にイメージングスラブに発生するMT効果の量を同じにし、且つ、タグ側から流入する血流の信号成分のみを検出するための必要十分な条件は、コントロール側を正極性にとったときには、
【数6】
および、
【数7】
である。
【0033】
なお、上記式(l)の条件について、コントロールスラブは画像化の対象化外である静脈には全く重ならない状態が理想である。しかしながら、この条件はある程度、フレキシブルである。つまり、抑制したい血流の速度が遅ければ、それほど厳密に成立しなくてもよく、コントロール用IRパルスによってタグ付けされた血液が反転時間(TI)内にイメージングスラブに到達しなけばよい。したがって、制限距離Dlimitは対象臓器と反転時間との兼ね合いで決めれば十位である。具体的には、抑制したい血流の最大流速をvとするときの制限距離Dlimitは、
【数8】
Dlimit=v・TI …… (o)
で表される。一般に、静脈の流速は動脈に比べて遅いので、コントロールスラブを必要値以上にオフセットさせる必要はない。
【0034】
(ASTAR法で採用しているデータ収集および処理)
このASTAR法では、(i)ミスレジストレーションを低減するために、コントロールスキャンおよびタグスキャンを1ショット毎に時間的交互に実行してコントロール画像およびタグ画像のデータ収集を行う、いわゆるインターリーブの手法が採用されている。
【0035】
また、(ii)イメージングスラブの画像を得るために、コントロール画像のデータとタグ画像のデータとで差分処理が行われる。この差分処理について本発明では、通常のMRI装置に標準装備されているエコーデータ(再構成前のいわゆる生データ)での加算機能を用いて、生データの段階で複素数差分(実数部、虚数部それぞれの差分)を行う手法を採用している。すなわち、コントロール画像用の生データをScont,タグ画像用の生データをStagとすると、かかる複素数差分処理による生データdeltaSは、
【数9】
と表される。または、絶対値を計算した後、差分する
【数10】
手法であってもよい。なお、この(p)式及び(q)式での絶対値化の処理は実際には、生データを再構成してから行うことを意味している。
【0036】
またなお、上述の差分処理は、生データを再構成した画像データの段階で行うようにしてもよい。
【0037】
さらに、(iii)とくにパフュージョン画像のSNRを向上させるために、コントロールスキャンおよびタグスキャンそれぞれを複数回、実行して、平均処理に付すアベレージング法を採用している。
【0038】
なお、このアベレージング法を実施する場合、上記式(p)に基づく差分処理(差分の後で絶対値を演算)を行う場合、生データ間で減算(複素数差分)をとり、それを加算(アベレージング法)しながら1アベレージングずつ連続的にデータ収集可能となり、撮像からデータ処理までのトータルの必要時間が短縮される。これに対し、上記式(q)に基づく差分処理を行う場合、そのような生データでの加算機能を用いることはできず、コントロール画像およびタグ画像それぞれでアベレージングしてから、絶対値を演算し、差分処理に付す必要がある。
【0039】
(パフュージョン撮像における大血管からの信号の抑制)
動脈や静脈など、大血管から検出される信号は、当然のことながら、血管を観察するためのMRA撮像のときには不可欠な信号である。しかし、毛細血管や組織血流を観察するパフュージョン撮像のときには、これらの大血管からの信号は通常、臨床上、邪魔な信号とみなされている。
【0040】
そこで、本発明にかかるASTAR法では、パフュージョン撮像を行うときに、この大血管からの信号を抑制する手法を採用している。具体的には、上記(p)、(q)式で求められる生データの再構成画像データdeltaVには、タグ側からイメージングスラブに流入する大血管(例えば動脈)からの信号も含まれるので、これを抑制する手法である。抑制したい大血管からの信号の下限値をdeltaVhighとすると、
【数11】
を満たす信号成分のみを抽出する。これにより、大血管からの信号の影響を低減させたパフュージョン像を得ることができる。
【0041】
1.2.CASL法に拠るASTAR法
一方、本発明に係るASLイメージングでは、上述のASTAR法をCASL(continuous ASL:CASL)法に基づいて実施することもできる。
【0042】
CASL法の場合、一定のadiabatic条件を満たす単一周波数を有する連続波(CW)を、一定時間以上、流入側の動脈部分に印加し続けることになる。これにより、血液のスピンが反転された状態で下流のイメージングスラブに流入することになる。
【0043】
このCASL法を実施するには、(1)イメージングスラブに感度を有しない小さな送信用RFコイルを用い、傾斜磁場を印加しないで、RFコイルの感度領域に頚動脈などの流入動脈が含まれるように励起する方法(例えば、「MRM 33,209−214(1995)」参照)と、(2)通常の頭部用RFコイルを用いて傾斜磁場と共に連続波を印加する方法(例えば、「Radiology1998;208:410−416」参照)とがある。後者の場合、例えば頭尾方向(Z軸方向)の傾斜磁場と共に連続波を印加すれば、図18に示す如く、動脈等の血流にほぼ垂直な薄いタグスライス(理論的には平面:便宜的にスラブと呼ぶ)のスピンが励起され、そのスライスを通過した血液は反転されてイメージングスラブに流入することになる。
【0044】
PASL法の場合、一定のスラブ厚でスピン反転を行う必要があるが、PASL法に拠ると、図18に示す如く、スピン反転を行わせるスラブ(タグスラブ及びコントロールスラブ)は非常に薄くなる。このため、PASL法の場合、タグスラブにおける流入側のイメージングスラブに遠い部分の血液は、イメージングスラブに流入するまでの時間がそれだけ多く掛かるため、その間のT1緩和が進み具合も大きくなり、結果的に、血流画像のSNRが低下するという状況にある。しかし、CASL法を用いることで、この流入遅延に因る問題が緩和される。
【0045】
CASL法は、上述の(1)、(2)の何れのRFコイルを用いる場合でも、PASL法と同様に、血流のみのイメージングを行うには、目的とする血流をタギング(インバージョン)しない状態(コントロールモード)とタギングした状態(タグモード)の2つの画像を差分する処理を行う。これにより、静止組織の信号がキャンセルされる。このとき、上記(1)に示した小さいRFコイルを用いる場合、感度領域がイメージングスラブに掛からなければ、MT効果に因る信号差は殆ど無視できる。これに対し、上記(2)の頭部用RFコイルを用いるケースで、タグスラブへのRF印加時の送信感度がイメージングスラブを含む領域に掛かる場合、イメージングスラブに及ぼすMT効果をキャンセルさせる必要がある。つまり、コントロールモードにおけるMT効果をタグモードと同じになるように設定する必要がある。なお、この場合でも、PASL法のときと同様に、一方の血流、例えば静脈が描出されないように抑制することが重要である。
【0046】
上記(2)項の頭部用RFコイルを用いるCASL法に基づきASTAR法を実施する場合、PASL法における励起スラブ(タグスラブ及びコントロールスラブ)が薄い平面になったことと等価と考えればよい(図1,18参照)。
【0047】
CASL法を後述するEPISTARに適用する場合には、Offsettag=Offsetcontとすることが必須であるので、コントロール側からの静脈流の描出を抑制することはできない。このため、Offsettag<Offsetcontの状態に設定できるASTAR法をCASL法に基づき実施することは、その両者の長所を活かすことができ、有効である。
【0048】
2. EPISTAR法によるアプローチ
次いで、EPISTAR法によるアプローチを説明する。このアプローチはEPISTAR法に拠るスキャンで収集した信号の後処理により、本発明の目的を達成するものである。
【0049】
2.1. 信号処理による一方向からの血流抽出
図2に、EPISTAR法により空間的に設定されるスラブを、図1と同様のディメンジョンの採り方で模式的に示す。
【0050】
EPISTAR法は、前述したように、MT効果の差をキャンセルさせるため、イメージングスラブに対して、タグスラブと対称な位置に、スラブ厚さおよび距離オフセット量ともに同じ(対称な)コントロールスラブを設定している。このまま通常のASL法に基づくコントロール画像とタグ画像との差分処理を行うと、イメージングスラブに流入する両方向の血流が画像化される。
【0051】
そこで、本発明では、EPISTAR法の特徴である、スラブ厚さおよび距離オフセット量の対称性はそのまま維持した撮像を行って、コントロール画像とタグ画像のデータを収集する。そして、このデータを処理して画像化する段階において、所望の血流からの信号成分のみを抽出する処理を行うことを特徴とする。
【0052】
いま、タグスキャンおよびコントロールスキャンで収集される生データ(複素数データ)のScontおよびStagの再構成画像データをVcontおよびVtagとする。この画像データの信号処理として、差分演算してから絶対値を演算する、すなわち
【数12】
を演算したのでは、イメージングスラブに流入する両方向からの血流の信号が同スラブの画像に混入してしまう。そこで、再構成画像データVcont、Vtagの絶対値を演算してから差分を求める処理、すなわち
【数13】
を行う。これにより、コントロール側から流入する血流の信号成分については、
【数14】
deltaV<0 …… (u)
となり、タグ側から流入する血流の信号成分については、
【数15】
deltaV>0 …… (v)
となるので、この(v)式を満たすデータ成分deltaVを求めることで、タグ側から流入する血流(通常、動脈流に設定する)を分離抽出できる。
【0053】
(パフュージョン画像)
ところで、前述したように、毛細血管や組織血流レベルの流れから収集される信号値は、動脈や静脈などの大血管からのそれに比べて、相当に小さい。また、その流れの方向は必ずしも一方向に限ったものではなく、イメージングスラブを形成する各ボクセルに対してあらゆる方向から流入すると想定される。このため、上記(t)式で演算されたデータdeltaVの内、単純に、deltaV>0となる成分のみを抽出してしまうと、コントロール側から流入する血流に拠るパフュージョン成分が抑制されてパフュージョン像に反映され難くなる。
【0054】
パフュージョン撮像において臨床的に抑制したい信号成分は大血管(動脈、静脈)からの信号であるので、イメージングスラブに両方向から流入する血流に拠るパフュージョン成分は残し、大血管からの信号のみを抑制する信号処理を行うようにする。本発明では、これをしきい値処理により実行する。つまり、上記(t)式で定める、
【数16】
deltaV=|Vtag|−|Vcont|
に対して、
【数17】
の式を満たす信号成分のみを抽出する。
【0055】
前述した目的を達成するため、本発明は、以上の原理に基づき、以下の構成を採用している。
【0056】
まず、ASTAR法によるアプローチに従って、静磁場中に置かれた被検体のイメージングスラブの一方及び他方にタグスラブ及びコントロールスラブを夫々設定して当該イメージングスラブのASL(Arterial Spin Labeling)像を得るMRI装置において、前記タグスラブを選択励起するための第1のRF波及び第1の傾斜磁場と前記コントロールスラブを選択励起するための第2のRF波及び第2の傾斜磁場を、前記第1及び第2のRF波の励起中心周波数の前記イメージングスラブの中心位置に対するオフセット量が同一で、且つ、そのタグスラブ及びコントロールスラブの前記イメージングスラブに対するオフセット位置が互いに異なるように設定する設定手段と、前記第1のRF波及び第1の傾斜磁場を含むパルスシーケンスを実行して前記イメージングスラブから第1のMR信号を収集する第1のスキャン手段と、前記第2のRF波及び第2の傾斜磁場を含むパルスシーケンスを実行して前記イメージングスラブから第2のMR信号を収集する第1のスキャン手段と、前記第1および第2のMR信号の相互差分に基づく画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データをASL像として可視化する可視化手段とを備えたことを特徴とする構成が提供される。
【0057】
好適な一例によれば、第1及び第2のRF波の夫々は、所望スラブ位置を励起するために前記第1及び第2の傾斜磁場に各別に対応する単一周波数のRF連続波である。
【0058】
また別の好適な一例では、前記設定手段は、前記タグスラブ及びコントロールスラブのスラブ厚と当該両スラブの前記イメージングスラブに対する位置オフセットとが同じ比率になるように前記第1及び第2のRF波並びに前記第1及び第2の傾斜磁場の条件を設定する手段である。この場合、例えば、第1及び第2のRF波は、一定の周波数帯域を有するパルス波である。
【0059】
また上述した各構成において、第1および第2のRF波のそれぞれはスピンを反転させるIR波であり、第1および第2のスキャン手段は、前記IR波を前記イメージングスラブに関して互いに逆極性で印加する手段であってもよい。この場合、好適には、イメージングスラブを設定する部位は被検体の頭部であって、前記設定手段はその頭部の位置を外して前記コントロールスラブを設定する手段を有することである。
【0060】
さらに、上述した各構成において、画像データ生成手段は、被検体の抑制したい血管の最小と推定される信号値をしきい値としたときに、このしきい値以下の信号成分を前記MR信号の差分値から抽出する手段を備えていてもよい。これにより、パフュージョン像が得られる。
【0061】
さらには、上述した各構成の第1及び第2のスキャン手段は、夫々、第1及び第2のRF波を含みかつ前記被検体のスピンの縦緩和を強調した同一タイプのパルスシーケンスを実行する手段を含むことが望ましい。例えば、前記第1および第2のRF波のそれぞれは、スライス選択的に印加されるスピン反転用のIR波である。前記パルスシーケンスは、前記被検体のスピンを事前飽和させるプリサチュレーションパルスを含むことも好適な例である。
【0062】
さらに、上述した各構成に係る第1および第2のスキャン手段は、前記パルスシーケンスをRF波印加毎にインターリーブ方式で実行するようにしてもよい。
【0063】
また、上述した各構成に係る第1及び第2のスキャン手段のそれぞれは、イメージングスラブから前記MR信号の収集を複数回実行する手段であり、画像データ生成手段は、前記複数回の収集による前記MR信号を加算平均する手段を含んでいてもよい。これにより、SNRを上げることができる。
【0064】
上述したPASL法に係る構成において、設定手段は、前記イメージングスラブのスラブ厚、前記タグスラブのスラブ厚、前記イメージングスラブと前記タグスラブとの間の距離、および前記イメージングスラブと前記コントロールスラブとの間の距離を既知量として与える手段と、この既知量に基づいて前記コントロールスラブのスラブ厚および位置オフセット量を演算する演算手段とを備えることもできる。
【0065】
さらに、好適な例によれば、前記第1及び第2のスキャン手段により実行される前記パルスシーケンスは、前記各第1及び第2のRF波の印加とイメージング用パルス列の印加との間に、前記被検体の前記イメージングスラブ、タグスラブ、及びコントロールスラブを含む領域に印加する非スライス選第1及び第2のスキャン手段により実行される前記パルスシーケン択IR波を設定したパルスシーケンスである。この場合、好適には、前記パルスシーケンスにおける前記非スライス選択IR波の印加と前記イメージング用パルス列の印加までの時間は、前記イメージングスラブに含まれる静止組織の縦緩和時間が当該イメージング用パルスの印加時刻において平均でほぼ零と見なすことが可能な値に設定することである。これにより、静止組織由来の差分誤差が確実に低減され、殆どが血流のみのASL像が得られる。例えば、非スライス選択IR波は複数個の印加される。勿論、このIR波は、IRパルスとして1個印加するようにしてもよい。
【0066】
一方、EPISTAR法によるアプローチでは、被検体のイメージングスラブの一方の側に設定したタグスラブに第1のRF波を印加して当該イメージングスラブから第1のMR信号の収集を行う第1のスキャン手段と、前記イメージングスラブの他方の側に前記タグスラブと対称な位置に設定したコントロールスラブに第2のRF波を印加して当該イメージングスラブから第2のMR信号の収集を行う第2のスキャン手段と、前記第1および第2のMR信号に基づく画像データを生成する画像データ生成手段とを備え、前記画像データ生成手段は、前記第1および第2のMR信号それぞれの再構成後の絶対値を演算する第1、第2の絶対値演算手段と、前記第1及び第2のMR信号の絶対値同士を相互に差分する差分手段と、この差分手段による差分結果から所望の信号成分の画像データを抽出する抽出手段とを備えたことを特徴とするMRI装置が提供される。
【0067】
この構成において、前記抽出手段は、例えば、前記タグスラブ側から流入する血流成分を選択的に抽出するためのしきい値を用いることで、前記差分手段による差分結果をしきい値処理する手段である。また、この抽出手段は、前記イメージングスラブに流入する血流に拠るパフュージョン成分を選択的に抽出するためのしきい値を用いることで、前記差分手段による差分結果をしきい値処理する手段であってもよい。
【0068】
さらに、本発明のASTAR法に従うMRイメージング方法は、磁場中に置かれた被検体のイメージングスラブの一方及び他方にタグスラブ及びコントロールスラブを夫々設定して当該イメージングスラブのASL(Arterial Spin Labeling)像を得るMRイメージング方法であり、前記タグスラブを選択励起するための第1のRF波及び第1の傾斜磁場と前記コントロールスラブを選択励起するための第2のRF波及び第2の傾斜磁場を、前記第1及び第2のRF波の励起中心周波数の前記イメージングスラブの中心位置に対するオフセット量が同一で、且つ、そのタグスラブ及びコントロールスラブの前記イメージングスラブに対するオフセット位置が互いに異なるように設定し、前記第1のRF波及び第1の傾斜磁場を含むパルスシーケンスを実行して前記イメージングスラブから第1のMR信号を収集するとともに、前記第2のRF波及び第2の傾斜磁場を含むパルスシーケンスを実行して前記イメージングスラブから第2のMR信号を収集し、前記第1および第2のMR信号の相互差分に基づく画像データを生成し、前記画像データをASL像として可視化する、ことを特徴とする。
【0069】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0070】
(第1の実施の形態)
第1の実施形態を図3〜図8を参照して説明する。この実施形態に係るMRI(磁気共鳴イメージング)装置は、前述した本発明の第1のアプローチに基づいて、すなわちASTAR法に基づいて血管像(MRA像)またはパフュージョン像(組織血流像)を提供することを特徴とする。
【0071】
このMRI装置の概略構成を図3に示す。このMRI装置は、被検体Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部とを備えている。
【0072】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石1と、この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場H0を発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、後述するコントローラの制御下で、シムコイル電源15から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石1の開口部に退避可能に挿入できる。
【0073】
傾斜磁場発生部は、磁石1に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット3を備える。この傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX、Y、Z軸方向の傾斜磁場を発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル3x〜3zを備える。傾斜磁場部はさらに、x,y,zコイル3x〜3zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサ5の制御のもと、x,y,zコイル3x〜3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0074】
傾斜磁場電源4からx,y,zコイル3x〜3zに供給されるパルス電流を制御することにより、物理軸としての3軸であるX,Y,Z方向の傾斜磁場を合成して、論理軸としてのスライス方向傾斜磁場Gs、位相エンコード方向傾斜磁場Ge、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Grの各方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、位相エンコード方向、および読出し方向の各傾斜磁場は静磁場H0に重畳される。
【0075】
送受信部は、磁石1内の撮影空間にて被検体Pの近傍に配設されるRFコイル7と、このコイル7に接続された送信器8T及び受信器8Rとを備える。この送信器8T及び受信器8Rは、後述するシーケンサ5の制御のもとで、磁気共鳴(MR)現象を起こさせるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する一方、RFコイル7が受信した高周波のMR信号を受信し、各種の信号処理を施して、対応するデジタル信号を形成するようになっている。
【0076】
さらに、制御・演算部は、シーケンサ(シーケンスコントローラとも呼ばれる)5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、および入力器13を備える。この内、ホスト計算機6は、記憶したソフトウエア手順により、オペレータが指令した情報を受け付け、この情報に基づくスキャンシーケンス情報をシーケンサ5に指令するとともに、シーケンサ5をはじめとして、演算ユニット10、記憶ユニット11、および表示器12を含む装置全体の動作を統括する機能を有する。
【0077】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えており、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源4、送信器8T、受信器8Rの一連の動作を制御する。また、シーケンサ5は、受信器8RからのMR信号のデジタルデータを一旦入力して、再構成処理を行う演算ユニット10にそのデータを転送する。
【0078】
ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Rおよび受信器8Tを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル3x〜3zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0079】
本実施形態で採用されるパルスシーケンスは、T1(縦緩和)時間を強調した高速イメージング用であればどのようなパルスシーケンスであってもよい。例えば、高速FE法、高速SE法、EPI(Echo Planar Imaging)法、FASE(高速AsymmetricSE)法、ハイブリッドEPI法などである。
【0080】
演算ユニット10は、入力する生データの読込み、画像のフーリエ空間(k空間または周波数空間とも呼ばれる)への生データの配置、データのアベレージング処理、タグモードおよびコントロールモードのデータ相互間の差分、データのしきい値処理、複素数データの絶対値化処理、生データを実空間データに再構成する再構成処理(例えば2次元または3次元のフーリエ変換処理)を適宜な順番で行うようになっている。この演算ユニット10における処理の例を、図7、図10〜12に示す。なお、3次元撮像が行われた場合、演算ユニット10は、3次元画像データから2次元画像データを生成するためにMIP(最大値投影)処理なども実施できるようになっている。
【0081】
記憶ユニット11は、生データおよび再構成画像データのみならず、演算処理が施された画像データを保管することができる。表示器12は画像を表示する。
また、術者は入力器13を介して所望のスキャン条件、スキャンシーケンス、画像処理法などの必要情報をホスト計算機6に入力できるようになっている。
【0082】
また制御・演算部の要素として、音声発生器16、および、ECGセンサ17、ECGユニット18が設けられている。音声発生器16は、シーケンサ5またはホスト計算機6からの指示に応答して、患者(被検体)に息止めのための音声メッセージを発生する。また、ECGセンサ17およびECGユニット18は患者の心電図信号を検出してシーケンサ5に出力するようになっており、これにより心電同期スキャンを行うことができる。
【0083】
次に、この実施形態の動作を説明する。
【0084】
いま、本発明に係るASTAR法を用いて頭部動脈の血管像を得るMR撮像を行うものとする。使用するパルスシーケンスは、IRパルスを用いた高速FE法のシーケンスであるとする。
【0085】
位置決めスキャンなどの準備作業を終了した後、ホスト計算機6は、オペレータからの指令に応答して、図4に示すイメージング処理の実行を開始する。
【0086】
最初に、入力器13を介して与えられる操作情報に基づきスキャン条件を入力する(ステップ31)。このスキャン条件には、撮像位置(イメージングスラブの中心位置)、パルスシーケンスの種類とそのパラメータ(反転時間TI,繰り返し時間TR,エコー時間TE,回復時間Trecovery,フリップパルスのフリップ角FA(=α))などに加えて、ASTAR法独自のパラメータとして、イメージングスラブの厚さThickimage、タグスラブの厚さThicktag、イメージングスラブとタグスラブとの間の距離Gaptag、およびイメージングスラブとコントロールスラブとの間の距離Gapcontが含まれる(図1参照)。この内、コントロール側の距離Gapcontは、前述したように、静脈の流速などを考慮したコントロールスラブが頭部の静脈に掛からないように設定される。
【0087】
これら4つのパラメータは、オペレータが入力器13を介してその都度、所望の値として設定してもよいし、所望の数値の組み合わせをテーブルとして予め記憶ユニット11に記憶させておいて、このテーブルの中から撮像時の選択するようにしてもよい。
【0088】
このスキャン条件の入力が完了すると、ホスト計算機6は次いで、ASTAR法の必要十分条件を満たす残りのパラメータを演算する(ステップ32)。すなわち、コントロールスラブの厚さThickcontと、イメージングスラブの中心位置からのコントロールスラブのオフセット距離Offsetcontのパラメータである(図1参照)。前記(m)式から、
【数18】
の両式が得られるので、この(d’)式および(e’)式からコントロールスラブの厚さThickcontと、コントロールスラブのオフセット距離Offsetcontとが求められる。
【0089】
次いで、ホスト計算機6はスキャン条件の1つして指定される、タグスキャンとコントロールスキャンとによるデータ収集順が判断される(ステップ33)。
本実施形態では、図5(a)または(b)に示す2通りの収集順が予め用意されており、このいずれの順番であるかが判断される。
【0090】
同図(a)の収集順によれば、ダミーショットに続いて、タグモードおよびコントロールモードのスキャンがそのショット毎に交互に所定の回復時間Trecoveryを置いて行われる、いわゆる「インターリーブ方式」になっている。
また、同図(b)の収集順によれば、ダミーショットの後に、タグモードのスキャンがその各ショット毎に所定の回復時間Trecoveryを置いて実行され、その後に、今度はコントロールモードのスキャンがその各ショット毎に所定の回復時間Trecoveryを置いて実行される、いわゆる「シーケンス方式」になっている。
【0091】
このステップ33により「インターリーブ方式」の収集順が指定されていると判断されたときは、図5(a)に示すインターリーブ方式の収集順に基づくスキャンが指令される(ステップ34)。一方、「シーケンス方式」の収集順が指定されていると判断されたときには、同図(b)に示すシーケンス方式の収集順に基づくスキャンが指令される(ステップ35)。この指令は、ホスト計算機6が上述の如く受け付け且つ演算したASTAR法のパラメータを反映させたパルスシーケンス情報をシーケンサ5に渡すことにより実行される。
【0092】
シーケンサ5は、この指令に応答し駆動を開始し、指令されたパルスシーケンス情報に沿って逐一、傾斜磁場電源4、送信器8T、および受信器8Rを駆動させる。これにより、何れの方式の収集順であっても、一例として、図6に示すように、IRパルスを用いた高速FE法のパルスシーケンス基づいて各ショットの2次元スキャンが実行される。
【0093】
この図6のシーケンスを説明する。いま、インターリーブ方式の収集順が指令されているとする。最初の例えばタグモードの第1回ショットでは、シーケンサ5の指令により、プリサチュレーション(事前飽和)パルスPre―Satが、イメージングスラブに対するスライス傾斜磁場Gsよりも低い所定強度のスライス傾斜磁場Gsと共に印加される。これにより、イメージングスラブよりも広い範囲にわたってスピンはスライス選択的に事前励起される。
【0094】
次いで、シーケンサ5の指令により、スライス傾斜磁場Gs=GstagおよびタグIRパルス(180°RFパルス:その変調周波数のオフセット値=−deltaFtag,帯域幅=BWtag)が印加される。これにより、図1に示す如く、イメージングスラブのタグ側(イメージングスラブの下肢側;動脈流の流入側)に所望厚さのタグスラブが選択的に設定される。
【0095】
このスライス傾斜磁場Gstag、オフセット値deltaFtag、および帯域幅BWtagは前述したように、ASTAR法の必要十分条件を満たすように設定された値である。ただし、本実施形態では、オフセット値deltaFの極性を変えずに、スライス傾斜磁場Gsの印加極性を変えるように設定している。なお、スライス傾斜磁場Gsの極性は変えないで、イメージングスラブに対する変調周波数のオフセット値deltaFtagの極性を変える(オフセット値自体は変わらない)ことで、そのオフセット位置を後述するコントロールスラブとは反対方向の位置に設定するようにしてもよい。
【0096】
このタグIRパルスの印加に応答してタグスラブの撮像部位の原子核スピンは一度反転し(すなわち、タグ付けされ)、その後、T1緩和(縦緩和)過程に入る。このタグスラブでタグ付けされた動脈流は、そのT1緩和を起こしながらイメージングスラブに流入していく。このとき、イメージングスラブはタグIRパルスによってオフ・レゾナンスで励起されるため、MT効果を受ける。
【0097】
このタグIRパルスが印加された後、所望の反転時間TIが経過すると、最適値に設定されている低フリップ角度αの最初のフリップパルスP1がスライス方向傾斜磁場Gsと共に印加される。これにより、イメージングスラブの原子核スピンがフリップされる。このスライス方向傾斜磁場Gsはその後、スピンリフェーズのために極性反転されて印加される一方で、これに並行して読出し方向傾斜磁場Grが所定方向に印加される。この読出し方向傾斜磁場Grはその後、エコー信号読出しのために極性反転され、所定期間の間、周波数エンコード用として印加される。最初のフリップパルス印加のときには、ここでは、位相エンコード方向傾斜磁場Ge=0に設定されている。
【0098】
最初のフリップパルスP1から最適値のエコー時間TEに近付くにつれて、イメージングスラブから最初のエコー信号が発生してくる。このエコー信号はRFコイル7で検出され後、受信器8Rに送られる。受信器8Rにて、エコー信号は増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅などの所定の受信処理に付された後、A/D変換される。このデジタル量のエコーデータはシーケンサ5を通して演算ユニット10に転送され、画像のk空間の、その位相エンコード量に対応した列位置に沿って配置される。なお、この配置の好適な一例は、零エンコードを境に低周波のエンコードからデータを収集・配置する“centric phase encoding”法に基づいて行われる。
【0099】
この最初のエコー信号の収集が終わる時刻になると、読出し方向傾斜磁場Grの印加も終わる。
【0100】
最初のフリップパルスP1の印加から、最適値に設定されて繰返し時間TRが経過すると、2番目のフリップパルスP2がスライス方向傾斜磁場Gsと共に印加される。このフリップパルスP2の印加についても、上述と同様にしてエコー信号が収集される。この一連のフリップパルスの印加およびエコーデータ収集は、位相エンコード回数分(例えば128回)繰り返して実行される。この2回目以降のフリップパルス印加時には、エコー信号収集前に、各回毎に変えた波形面積の位相エンコード方向傾斜磁場Geのパルスを印加する。また、エコー信号の収集後には、その位相エンコードパルスのスピンに対する位相の影響を打ち消すために、逆向き極性の傾斜磁場Geのパルスが印加される。
【0101】
なお、このような巻き戻し用の傾斜磁場を必要に応じて読出し方向、および/または、スライス方向に印加するように構成してもよい。
【0102】
この結果、かかるタグスキャンの第1回目の1ショットにより、2次元k空間全部にエコーデータ(生データ)が配置される。
【0103】
この後、スピン状態に対する適宜な回復時間Trecoveryだけ待って、今度はコントロールモードに対する第1回目の1ショットのスキャンが実行される。
【0104】
このスキャンでは最初に、プリサチュレーションパルスが前述と同様に印加される。次いで、スライス傾斜磁場Gs=GscontおよびコントロールIRパルス(180°RFパルス:その変調周波数のオフセット値=deltaFcont,帯域幅=BWcont)が印加される。このスライス傾斜磁場Gscont(<Gstag)、オフセット値deltaFcont(=deltaFtag:オフセット値の絶対値が等しい)、および帯域幅BWcont(=BWtag)は前述したように、ASTAR法の必要十分条件を満たすように設定された値である。
【0105】
これにより、図1に示す如く、イメージングスラブのコントロール側(イメージングスラブの頭頂部側;静脈流の流入側)に、前述したタグスラブとは非対称な位置に、タグスラブより厚いコントロールスラブが選択的に設定される。すなわち、コントロールスラブの位置オフセット量Offsetcontが頭頂部の位置を外すために大きく設定された分、コントロールスラブ厚Thickcontも比例して大きく設定される(図1参照)。
【0106】
このため、コントロールスラブ内の原子核スピンは一度反転した後、T1緩和過程に入る。しかし、このスラブは頭頂部からは殆どずれた位置にあるため、頭頂部の静脈の原子核スピンは励起されない(タグ付けされない)が、イメージングスラブにはオフ・レゾナンスな励起であるため、MT効果を発生させる。このコントロールスキャンに拠るMT効果の量は、前述したタグスキャンに拠るそれと同じまたはほぼ同じである。
【0107】
その理由は、タグIRパルスおよびコントロールIRパルスがASTAR法に基づいているからである。つまり、両IRパルスのイメージングスラブからのオフセット周波数を互いに同じに保持した状態で、タグスラブとコントロールスラブとの間の厚さの倍率(比)と、タグスラブとコントロールスラブとの間の位置オフセットの倍率(比)とが同じ値になるように変更しながら、イメージングスラブとタグスラブ、および、イメージングスラブとコントロールスラブとの間の距離をコントロールする方式を採用しているからである。つまり、コントロールスラブ厚をその位置オフセットに比例して大きく設定しているためである。この距離コントロールを適宜に行うことで、頭部静脈にコントロールスラブが掛からない、または、実質的に掛からないようにすることができる。したがって、両方のIRパルスから受けるイメージングスラブのMT効果を同一または略同一に設定でき、かつ、一方向から血流のみにタグ付けして検出することができる。
【0108】
このコントロールIRパルスを印加した後、反転時間TI後には前述と同様にフリップパルスをn個使った、イメージングスラブからのFE法による前述と同様のエコー収集が行われる。
【0109】
このようにインターリーブ方式に基づいて、1回目のコントロールスキャンが終わると、所定の回復時間Trecovery後には再び、2回目のタグスキャンが前述と同様に実行される。このタグスキャンの後、再び、所定の回復時間Trecoveryを待って、2回目のコントロールスキャンが前述と同様に実行される。
【0110】
以下、同様に、タグスキャンおよびコントロールスキャンがインターリーブ方式に基づいてアベレージングために所定回数繰り返して実行される。
【0111】
再び、図4に戻って説明する。ホスト計算機6によってステップ34または35においてスキャンが指令されると、その後のスキャンの詳細な指令はシーケンサ5に任される。したがって、ホスト計算機6は、スキャン指令後、直ちに演算ユニット10に各種の演算の指令を出す(ステップ36)。この指令に応答して、演算ユニット10は、収集される生データの読込み、アベレージング処理、再構成処理、絶対値化処理、差分処理(ASL像データ作成)などを適宜な順番で且つ適宜なタイミングで行う。
【0112】
この演算ユニット10の処理の一例を図7および図8に示す。図7は、かかる処理の流れを概念的に表し、図8は、この処理の進行に伴うデータ生成を模式的に表す。なお、図7に示す処理フローは一例を示すものであって、上述した各種の演算および処理は種々の順番で実施できる。それらの変形例を後述するように、図10〜図13に示す。
【0113】
図7の処理フローによれば、最初、演算ユニット10は、シーケンサ5を介して送られてくる受信器8Rの送出データ、すなわちタグスキャンに伴って収集された生データStagまたはコントロールスキャンに伴って収集された生データScontが読み込まれる(ステップ36aまたは36a’)。生データStag、Scontはそれぞれ複素数の量として収集される。
【0114】
生データStagまたはScontは次いでS/N比向上のための、例えば移動平均方式によるアベレージング処理に付される(ステップ36bまたは36b’)。この生データの読込み及びアベレージング処理は、スキャンと並行して行われ、各モード毎に全ショットによるスキャンが完了するまで継続される(ステップ36cまたは36c’)。
【0115】
このようにアベレージング処理が全て終わると、演算ユニット10は、タグスキャンによる生データStagの平均値およびコントロールスキャンによる生データScontの平均値を各別に保有できる。そこで、演算ユニット10はさらにこの両方の生データStagおよびScontをそれぞれ画像再構成した後(ステップS36dまたは36d’)、絶対値化する演算を行う(ステップ36eおよび36e’)。すなわち、再構成された画像データ|Vtag|および|Vcont|が演算される。
【0116】
さらに、演算ユニット10は、この画像データ|Vtag|および|Vcon t|の相互の差分を演算する(ステップ36f)。すなわち、
【数19】
deltaV=|Vcont|−|Vtag|
による差分が画素毎に演算され、この差分値deltaVが実空間上のASL像データASLimageとなる。
【0117】
このようにして最終的なASL像データが得られると、ホスト計算機6はこのデータを表示し、かつ格納保管する指令を演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12に送る(ステップ37)。このため、表示器12にはASL像ASLimageが表示される。
【0118】
このようにASTAR法によれば、コントロールIRパルスとタグIRパルスとに拠るMT効果が同じまたは殆ど同じである。すなわち、図8に模式的に示すように、画像データ|Vtag|および|Vcont|の組織部分からの信号値は殆ど同レベル(=|V1|)である。しかも、タグスラブによってタグ側から流入する動脈流ARがタグ付けされ、その血流部分の信号値|Vtag|が上がる(図8(d)参照)。一方、コントロールスラブは頭頂部の位置を外して設定されているので、コントロール側からイメージングスラブに流入する静脈VEは全くまたは殆どタグ付けされることはなく、静脈部分の信号値|Vcont|は組織部分と殆ど変わらない(図8(c)参照)。
【0119】
したがって、両方の画像データ|Vtag|および|Vcont|の相互差分によって組織部分の信号値は完全にまたは殆ど完全に相殺され、且つ、タグIRパルスによってタグ付けされている動脈ARの画素の信号値が良好に残る(図8(e)参照)。
【0120】
これにより、SARやRFパワーを格別増大させなくても、タグIRパルスおよびコントロールIRパルスに拠るMT効果を確実にキャンセルさせ、ASL像生成時の組織血流由来の差分誤差を低減させる。同時に、タグ側からの血流(例えば動脈)のみを画像化し、コントロール側からの血流(例えば静脈)のデータ収集が抑制でされる。したがって、タグ側を動脈流入側に採ることにより、動脈血流成分のみに拠る、簡便で(操作は従来と殆ど変わらない)、高精度・高品質(目的とする血流のみをS/N良く撮像)のMRA像を非侵襲の状態で提供できる。
【0121】
なお、演算ユニット10による処理において、パフュージョン像を得る場合、抑制したい大血管、例えば動脈ARの下限値deltaVhighを設定する。
そして、求めた差分値deltaVに関して、前述した(r)式に基づき、
【数20】
のしきい値処理を行う。この処理の一例を図9に示す。同図に示すように、かかるしきい値処理(ステップ36g’)は、ステップ36fの差分処理の後で実行される。
【0122】
これにより、大血管(動脈など)からの信号を抑制したパフュージョン像が得られる。この結果、上述したMRA象の撮像時の利点に加え、通常、不要とされている大血管の入らない組織血流のみのパフュージョン像を確実に提供することができ、画像の臨床的価値を向上させることができる。
【0123】
また、本実施形態では、タグスキャンおよびコントロールスキャンの両方でプリサチュレーションパルスを印加するようにしているので、静止組織のスピンを事前飽和させて、組織由来の信号をASL差分するときの差分精度をより向上させ、より高品質なASL像を提供することができる。なお、場合によっては、このプリサチュレーションパルスの印加過程を省略してもよい。
【0124】
さらに、タグスキャンとコントロールスキャンのスキャン順に関してインターリーブ方式を採用しているので、タグスラブおよびコントロールスラブのスピンを回復・安定させる時間を短縮させることができる。
【0125】
本発明者は、ファントム実験および人体の頭部の撮像(MRA像およびパフュージョン像)を行い、いずれの実験においても、ASTAR法は有効であることを確認した。
【0126】
図10〜図13に、演算ユニット10が実行する処理の順番の別の例を示す。
図10の処理順の場合、生データ|Scont|および|Stag|の段階で差分し、加算(アベレージング)する処理を連続して、スキャンと並行して行う(371a,371a’,371b〜371d)。この後、差分・加算平均後の生データを再構成し、絶対値化する(371e,371f)。この処理順によれば、処理が簡単で演算量を抑制できる。
【0127】
図11に示す処理順は、生データScontおよびStagそれぞれの段階で、アベレージング、再構成、絶対値化までをこの順に行う(ステップ38a〜38e,38a’〜38e’)。そして、再構成後の画像データに対して差分演算を行い(ステップ38f)、ASL画像ASLimageを得る。この処理順の場合、絶対値化に次いで差分が演算されるので、特にノイズ成分を減らし、また、処理途中での絶対値画像を記憶しておけるので、生成されたASL像の背景(組織)が残っている場合でも、後補正を行って背景を消去できる。
【0128】
また、図12に示す処理順は、再構成までは図11のものと同一であり、再構成後に、先に差分演算を行う(ステップ39a〜39d,39a’〜39d’,39e)。この後で、絶対値化してASL画像ASLimageを得る(ステップ39f)。これによっても、比較的簡単な処理でASL像を提供できる。
【0129】
さらに、図13に示す処理順は、生データの段階でアベレージングした後(ステップ40a〜40c,40a’〜40c’)、直ぐに、差分演算を行ってASL像化した後、実数部データ、虚数部データそれぞれで再構成し、さらに絶対値化して最終的なASL像データを得る(ステップ40d〜40f)。これによっても、比較的簡単な処理でASL像を提供できる。
【0130】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図14〜図17に基づき説明する。この実施形態において、上述した第1の実施形態の構成要素と同一または同等の要素には同一符号を用いて、その説明を省略または簡略化する。
【0131】
この実施形態のMRI装置は、本発明のもう1つのアプローチであるEPISTAR法に基づくMRA撮像またはパフュージョン撮像を行うようになっている。EPISTAR法そのものは、図2を用いて前述した通りである。
【0132】
第1の実施形態のときと同様に、ホスト計算機6は、シーケンサ5に対して、図14に示すように、T1緩和を強調できるパルスシーケンスとして、IRパルスを用いた高速FE法のパルスシーケンスを例えばインターリーブ方式で行うように指令する。このパルスシーケンスで用いるタグIRパルスとコントロールIRパルスについては、その帯域幅BWは共に等しく(BWtag=BWcont)、且つ、そのオフセット周波数deltaFも極性は反対だが、値は共に等しく(deltaFtag=−deltaFcont)、この状態で同一強度の傾斜磁場Gs(Gstag=Gscont)と共に印加される。
【0133】
シーケンサ5の管理の元で行われるデータ収集は、第1の実施形態のときと同一または同等である。これにより収集されたタグモードおよびコントロールモードの複素数データである生データStagおよびScontは演算ユニット10に送られ、一例として、図15に示す画像生成処理に付される。この一連の処理において特徴的な事項は、しきい値処理である。生データStagおよびScontそれぞれを読み込み、アベレージング処理し、画像に再構成処理し、そして絶対値化した後、それらのデータ間で差分処理してASL像データdeltaV=|Vtag|−|Vcont|を求める(ステップ41a〜41e,41a’〜41e’,41f)。この後、前述した式(v)式を満たすように、すなわち
【数21】
deltaV>0
のしきい値処理を行う(ステップ41fおよび図16(e)〜(f)参照)。このdeltaV>0を満たすASL像データから成る血管のASL像を得る。
【0134】
このASL像は、しきい値処理されているので、静脈VEを消して、動脈ARのみを表した血管像を提供できる。この一連の処理を図16に模式化して示す。
【0135】
なお、このEPISTAR法を用いてパフュージョン像をイメージングする場合、図17に示すように、図15のステップ41gに相当するステップ41g’において、前述した(w)式に基づくしきい値処理を実行すればよい。
【0136】
またなお、この第1および第2の実施形態では、1つのインバージョンパルスで1画像分全てのエコーデータを収集するパルスシーケンスを採用する例を説明したが、これに代えて、複数のインバージョンパルスで1画像分のエコーデータを収集する、いわゆる、セグメンテッド高速FE法を採用することもできる。
【0137】
さらに、上述した第1および第2の実施形態では、IRパルスを用いた高速FE法を実施するMRI装置およびMRイメージング方法を説明したが、本発明で実施可能なパルスシーケンスはこれに限定されない。IRパルス(180°RFパルス)または飽和パルス(90°RFパルス)を用い、T1回復過程にてk空間を充足する生データを収集できるパルスシーケンスであれば同様に実施できる。例えば、IRパルスを用いた高速SE法の場合、1つのフリップパルスと複数のリフォーカスパルスの印加によりk空間充足用データを収集するが、フリップパルスとリフォーカスパルスのフリップ角度を適切に設定することで、T2減衰による信号減衰を抑制し、T1回復とT2減衰が均衡する条件が存在するので、このパルスシーケンスにも同様に適用できる。
【0138】
さらに、上述した第1、第2の実施形態にあっては、撮像部位が頭部である場合を例示したが、撮像部位は腎臓、肝臓、筋血流など、種々の部位に適用することもできる。
【0139】
さらに、上述した第1、第2の実施形態では、IRパルスに拠るタグスラブおよびコントロールスラブをイメージングスラブに対して平行に設定する例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、タグスラブ、イメージングスラブ、およびコントロールスラブの位置関係は互いに直交またはオブリークの位置関係であってもよい。
【0140】
さらに、上述した第1、第2の実施形態は2次元スキャンとして実施した場合を例示したが、3次元スキャンであっても勿論同様に構成できる。
【0141】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図18〜19に基づき説明する。
【0142】
本実施形態は、第1の実施形態で説明したASTAR法をCASL法に基づき実施するMRI装置に関する。装置のハードウェアの構成は前述した各実施形態のものと同等であり、一方、ASLイメージングの手順は第1の実施形態で説明したASTAR法(PASL法に基づく)と同様に実行される。
【0143】
図18には、本実施形態に拠るASTAR法(CASL法に基づく)を実施するときのスラブ(スライス)の空間位置と傾斜磁場との関係を示す。図19には、具体的なパルスシーケンスの一例を示す。
【0144】
図18に示す如く、タグモード及びコントロールモードで印加されるIRパルスには、ある強度のadiabatic条件を満たし且つ単一周波数の連続波が一定時間以上(例えば単一周波数の正弦波を1〜3sec程度)に渡って印加される。
【0145】
この連続波を印加するRFコイル7としては、通常に使用されている頭部用コイルが使用される。このため、タギング時のスライス傾斜磁場Gstagは、図18に示す如く、タグスラブ(スライス)がイメージングスラブへの例えば血液流入側に在る動脈部分に位置するように設定される。一方、コントロール時のスライス傾斜磁場Gscontは、同図に示す如く、コントロールスラブ(スライス)が体軸(Z軸)方向にて頭頂部を外して位置するように設定される。
【0146】
また、オフセット励起周波数deltaFは、
【数22】
を満たすように調整されている。これにより、イメージングスラブのスライス方向中心での励起周波数をF0とすると、タグスラブ(スライス)及びコントロールスラブ(スライス)のスライス方向中心では、
【数23】
単一周波数=F0+(deltaF)
で励起される。
【0147】
このため、タギングモードでは、図18に示す如く、イメージングスラブへの例えば血液流入側に在る動脈部分がタグスラブ(スライス)によりタギングされる。一方、コントロールモードでは、同図に示す如く、コントロールスラブ(スライス)により、体軸(Z軸)方向の頭頂部を外した空間位置が励起される。タグ用IRパルスに連続波を用いているので、タグスラブは非常に薄いスライス(理論的には平面)となり、かつ、例えば動脈にほぼ垂直になる。これにより、血液のスピンがインバージョンされた状態で下流に進み、イメージングスラブに流入する。コントロール用IRパルスに連続波を用いているので、コントロールスラブも非常に薄いスライス(理論的には平面)となる。
【0148】
図19に示すパルスシーケンスのイメージング用のパルス列、及び、エコーデータ収集後のASLイメージングに関わるデータ処理は第1の実施形態のものと同様に実行され、タグ画像とコントロール画像の差分に基づくASL像が得られる。
【0149】
したがって、励起周波数F0の位置、すなわちイメージングスラブのスライス方向中心位置におけるMT効果は、タグモードとコントロールモードで殆ど同じ量になるので、差分処理によりその殆どがキャンセルされ、MT効果の影響が殆ど無い高精細なASL像になる。
【0150】
さらに、CASL法の特徴に拠る効果も得られる。つまり、連続波から成るタグ用及びコントロール用IRパルスを用いるので、励起するスラブ(スライス)を平面並に薄くできる。このため、PASL法のときの、タグスラブ内のイメージングスラブから遠い部分で励起された血流スピンが大きな時間遅れでイメージングスラブに流入するという状況とは異なり、CASL法に拠るタグスラブ(スライス)で励起された血流スピンは、少ない時間遅れでイメージングスラブに流入できる。とくに、タグスラブ(スライス)をイメージングスラブに極力、接近させることで、かかる時間遅れをそれだけ少なくすることができる。これにより、イメージングスラブに流入した血流スピンのT1緩和はそれほど進んでいないので、PASL法のときよりもイメージングスラブからの血流信号のSNRが良くなるという利点がある。
【0151】
なお、この実施形態において、RFコイルとして、通常の頭部用RFコイルの代わりに、イメージングスラブに感度を持たない小さな送信用RFコイルを用いてもよい。この場合、傾斜磁場を印加せず、その送信用RFコイルの感度領域が、イメージングスラブへ流入する例えば動脈を含むように、位置関係を設定すればよい。これによって、イメージングスラブに流入する血流をタギングすることができる。
【0152】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を図20〜23に基づき説明する。
【0153】
本実施形態は、ASLイメージングにおける静止組織由来の差分誤差(差分値=0を理想状態としたときの差分結果)を低減する手法を提供するものである。
この差分誤差低減法は、ASTAR法、FAIR法、EPISTAR法など各種のASLイメージングに適用できる一方で、その基礎となるパルス種類がPASL法であるか、CASL法であるかに拘らず、広範囲に適用できる。
【0154】
以下、PASL法に基づくASTAR法に、かかる差分誤差抑制法を適用する場合について説明する。
【0155】
この差分誤差について簡単に説明する。今までの実施形態で説明した如く、タギングモードとコントロールモードを持つASLイメージングでは、イメージングスラブの静止組織に与えるMT効果が両モードにおいて同じになるように設定してタグ画像とコントロール画像とを得て、これらを相互に差分演算することで、血流信号の画像を得るようにしている。
【0156】
しかしながら、このASLイメージングでは、タギングした後、大血管の動脈血が組織に拡散する時間(TI時間)だけ待ってスキャンする必要があるため、通常、静止組織の信号は血流信号に比べて100〜1000倍程度、大きくなる。このため、RF系の不安定さや、患者の体動等がある場合、差分演算を行っても、無視できない程の静止組織信号(即ち差分誤差)が残ることがある。
【0157】
本実施形態では、このような差分誤差の発生をより確実に防止し、所望方向の血流をより精細に描出することができるASLイメージング法を提供することを、更なる目的とする。
【0158】
本実施形態に係る、PASL法に基づくASTAR法のパルスシーケンスを図20に示す。このパルスシーケンスを実行して、ASL像を得る手順及び処理は、第1の実施形態のものと同じである。
【0159】
同図に示す如く、タグ用/コントロール用IRパルスとイメージング用パルス列のk空間の中心位置相当時刻との間に、非スライス選択IRパルス(non−slice selective IR pulse:nssIRパルス)と呼ばれるパルスが、スライス傾斜磁場の印加無しの状態で、1回印加される。なお、このnssIRパルスはここでは非選択で印加されるが、実際には、図21に示す如く、タグスラブとイメージングスラブを含むスラブ厚さ以上の領域に印加されればよい。なお、図20では、nssIRパルスは1回、印加される構成を示したが、2回以上、印加するようにしてもよい。
【0160】
このnssIRパルスの印加が静止組織信号の差分誤差の発生を抑制する上での特徴を成す。
【0161】
対象となるイメージングスラブには、異なるT1値を有する静止組織、例えばT1値の短い方からfat,white matter(WM),gray matter(GM),CSFが存在する。中でも、脳実質内に多い静止組織成分はWM,GMであるので、nssIRパルスの印加時からk空間の中心に配置するデータの収集時刻までの時間TInss(図20参照)は、TI時間後に、GM,WMの縦磁化Mzがほぼ平均で零になる値付近に設定される。nssIRパルスの印加数を多くするほど、各種の静止組織間におけるTI時間に因る縦磁化Mzの差はそれだけ小さくなる。
【0162】
本発明者が行った実験によれば、TI=1000〜1500ms、TInss=300〜400msに設定したとき、GM,WMの信号が、nssIRパルスの印加無しの場合に比べて、1/10以下まで低減できることを確認した。
【0163】
TI時間に依存して、最適なTInss時間は多少変化するが(TIが長くなるほど、TInssも長くなる)、この変化はGM,WMについては100msec程度であるので、TInss時間は一定値としても構わない。
【0164】
血流信号のスピンは、nssIRパルスの印加前後にイメージングスラブに流入した両成分が共に、nssIRパルスにより区別無く反転する。また、タグ用IRパルス及びコントロール用IRパルスの双方によっても同様に反転する。このため、タグモードとコントロールモードとの差分結果は符号の反転のみであって、差分の大きさは、nssIRパルスの印加で十分にスピン反転すれば、nssIRパルスの印加無しのときと変わらない状態を確保できる。
【0165】
図22,23に、ASTAR法の場合の、血流(フロー)のみの縦磁化Mzの時間的変化を、水を例にとって、コントロールモード及びタグモード夫々における、nssIRパルスの印加有り/無しの各状態について説明する。同図から分かるように、nssIRパルスによりタグ領域及びイメージング領域の血流成分のスピン全部が確実に反転すれば、その差分ΔMz=ΔMzcont−ΔMztagは符号が反転するのみであって、その大きさは変化しない。画像の画素値は絶対値で演算するので、nssIRパルスの印加無しの場合と同じになることが分かる。
【0166】
このように、nssIRパルスを使用し、しかも、このnssIRパルスの印加時刻から、k空間の中心位置に配置するデータを収集する時刻までの時間TInssを、主要な静止組織成分の残存する縦磁化Mzが平均でほぼ零になるように設定している。このため、タグ画像とコントロール画像とを差分したときの静止組織の差分値(差分誤差)は殆ど零になる。したがって、装置のRF系に不安定さがあったり、スキャン中の患者に体動が生じる場合でも、静止組織からの信号を抑制し、所望方向の血流成分のみを、より確実に描出することができる。
【0167】
ASLイメージングでは、血流又はフローから信号値の静止組織からの信号値に対する割合は、通常のMRAのときよりも更に1〜2桁小さい。しかし、本実施形態のように、静止組織からの信号の大きさをできるだけ低減することで、コントロールモードとの差分演算を行う場合であっても、静止組織由来の差分誤差を低減させることができ、血流の描出能の一層の向上を図ることができる。
【0168】
なお、本発明は、代表的に例示した上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者であれば、特許請求の範囲の記載内容に基づき、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の態様に変形、変更することができ、それらも本発明の権利範囲に属するものである。
【0169】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るMRI装置およびMRイメージング方法によれば、PASL法やCASL法に基づきASLイメージングを行うときに、従来法(従来のNEW−EPISTAR法)に比べても、SARやRFパワーを格別増大させることがなく、タグスキャンおよびコントロールスキャンによりイメージングスラブに生じるMT効果を安定して且つ精度良く相殺させ、イメージングスラブの静止組織の信号値差を低減させる。その一方で、コントロールスラブ側から流入する血流成分を確実に抑圧し且つタグスラブ側から流入する血流成分のみを画像化することで、例えば動脈のフロー成分のみを画像化できる。これにより、ASLイメージングに求められている2つの相反する要求を同時に満たすことができる。
【0170】
とくに、非スライス選択IR波を用いることで、静止組織由来の差分誤差を更に低減でき、高精細なASL像を提供できる。
【0171】
このように、患者に負担の少ない非侵襲の状態で、高精度・高品質なパフュージョン像またはMRA像を比較的簡単な手法で確実に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの態様に係るASTAR法(PASL法に基づく)の原理を説明する図。
【図2】本発明の別の態様に係るEPISTAR法の原理を説明する図。
【図3】本発明の実施形態に係るMRI装置の一例を示すブロック図。
【図4】第1の実施形態におけるASTAR法(PASL法に基づく)を実施するホスト計算機の処理の概要を示すフローチャート。
【図5】タグスキャンとコントロールスキャンの各ショット毎のスキャン順番を説明するタイムチャート。
【図6】各ショット毎に実行されるパルスシーケンスのタイミングチャート(タグスキャンおよびコントロールスキャンの両方を兼ねて説明する)。
【図7】演算ユニットの処理手順の一例を示す概略フローチャート。
【図8】生データ収集後のデータ処理の流れを示す模式図。
【図9】演算ユニットにおけるパフュージョン像用の処理手順の一例を示す概略フローチャート。
【図10】演算ユニットの処理手順の別の一例を示す概略フローチャート。
【図11】演算ユニットの処理手順の更に別の一例を示す概略フローチャート。
【図12】演算ユニットの処理手順の更に別の一例を示す概略フローチャート。
【図13】演算ユニットの処理手順の更に別の一例を示す概略フローチャート。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るEPISTAR法により各ショット毎に実行されるパルスシーケンスのタイミングチャート(タグスキャンおよびコントロールスキャンの両方を兼ねて説明する)。
【図15】第2の実施形態におけるASL像のイメージングに関する演算ユニットの処理手順の一例を示す概略フローチャート。
【図16】第2の実施形態における生データ収集後のデータ処理の流れを示す模式図。
【図17】第2の実施形態におけるパフュージョン像のイメージングに関する演算ユニットの処理手順の一例を示す概略フローチャート。
【図18】本発明の別つの態様である、第3の実施形態に係るASTAR法(CASL法に基づく)の原理を説明する図。
【図19】第3の実施形態で使用可能なパルスシーケンスの一例を示す図。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る、非スライス選択IRパルスを用いたASTAR法(PASL法に基づく)の概略を示すパルスシーケンス。
【図21】第4の実施形態における非選択領域とスラブ位置との関係を説明する図。
【図22】非スライス選択IRパルスを用いないときの、フロー成分の縦磁化の変化を説明する図。
【図23】非スライス選択IRパルスを用いたときの、フロー成分の縦磁化の変化を説明する図。
【符号の説明】
1 磁石
2 静磁場電源
3 傾斜磁場コイルユニット
4 傾斜磁場電源
5 シーケンサ
6 ホスト計算機
7 RFコイル
8T 送信器
8R 受信器
10 演算ユニット
11 記憶ユニット
12 表示器
13 入力器
Claims (19)
- 静磁場中に置かれた被検体のイメージングスラブの一方及び他方にタグスラブ及びコントロールスラブをそれぞれ設定して前記イメージングスラブのASL(Arterial Spin Labeling)像を得るMRI装置において、
前記タグスラブを選択励起するための第1のRF波及び第1の傾斜磁場と、前記コントロールスラブを選択励起するための第2のRF波及び第2の傾斜磁場とを、前記第1及び第2のRF波の励起中心周波数の前記イメージングスラブの中心位置に対するオフセット量が同一で、且つ、そのタグスラブ及びコントロールスラブの前記イメージングスラブに対するオフセット位置が互いに異なるように設定する設定手段と、
前記第1のRF波及び第1の傾斜磁場を含むパルスシーケンスを実行して前記イメージングスラブから第1のMR信号を収集する第1のスキャン手段と、
前記第2のRF波及び第2の傾斜磁場を含むパルスシーケンスを実行して前記イメージングスラブから第2のMR信号を収集する第2のスキャン手段と、
前記第1及び第2のMR信号の相互差分に基づく画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記画像データをASL像として可視化する可視化手段とを備えたことを特徴とするMRI装置。 - 請求項1記載のMRI装置において、
前記第1及び第2のRF波のそれぞれは、所望スラブ位置を励起するために前記第1及び第2の傾斜磁場に各別に対応する単一周波数のRF連続波であることを特徴とするMRI装置。 - 請求項1記載のMRI装置において、
前記設定手段は、前記タグスラブ及びコントロールスラブのスラブ厚と、当該両スラブの前記イメージングスラブに対する位置オフセットとが同じ比率になるように、前記第1及び第2のRF波並びに前記第1及び第2の傾斜磁場の条件を設定する手段であることを特徴とするMRI装置。 - 請求項3記載のMRI装置において、
前記第1及び第2のRF波は、一定の周波数帯域を有するパルス波であることを特徴とするMRI装置。 - 請求項1乃至4の何れか一項に記載のMRI装置において、
前記第1及び第2のRF波のそれぞれは、スピンを反転させるIR波であり、
前記第1及び第2のスキャン手段は、前記IR波を前記イメージングスラブに関して互いに逆極性で印加する手段であることを特徴とするMRI装置。 - 請求項5記載のMRI装置において、
前記イメージングスラブを設定する部位は前記被検体の頭部であって、前記設定手段はその頭部の位置を外して前記コントロールスラブを設定する手段を有することを特徴とするMRI装置。 - 請求項1乃至6の何れか一項に記載のMRI装置において、
前記画像データ生成手段は、前記被検体における抑制したい血管の最小と推定される信号値をしきい値としたときに、前記しきい値以下の信号成分を前記MR信号の差分値から抽出する手段を備えたことを特徴とするMRI装置。 - 請求項1乃至7の何れか一項に記載のMRI装置において、
前記第1及び第2のスキャン手段は、それぞれ、第1及び第2のRF波を含むと共に前記被検体のスピンの縦緩和を強調した同一タイプのパルスシーケンスを実行する手段を有することを特徴とするMRI装置。 - 請求項8記載のMRI装置において、
前記第1及び第2のRF波のそれぞれは、スライス選択的に印加されるスピン反転用のIR波であることを特徴とするMRI装置。 - 請求項8記載のMRI装置において、
前記パルスシーケンスは、前記被検体のスピンを事前飽和させるプリサチュレーションパルスを含むことを特徴とするMRI装置。 - 請求項1乃至10の何れか一項に記載のMRI装置において、
前記第1及び第2のスキャン手段は、前記パルスシーケンスをRF波印加毎にインターリーブ方式で実行する手段を有することを特徴とするMRI装置。 - 請求項1乃至11の何れか一項に記載のMRI装置において、
前記第1及び第2のスキャン手段のそれぞれは、前記イメージングスラブから前記MR信号の収集を複数回実行する手段であり、
前記画像データ生成手段は、前記複数回の収集による前記MR信号を加算平均する手段を含むことを特徴とするMRI装置。 - 請求項3記載のMRI装置において、
前記設定手段は、前記イメージングスラブのスラブ厚、前記タグスラブのスラブ厚、前記イメージングスラブと前記タグスラブとの間の距離、及び、前記イメージングスラブと前記コントロールスラブとの間の距離を既知量として与える手段と、前記既知量に基づいて前記コントロールスラブのスラブ厚及び位置オフセット量を演算する演算手段とを備えたことを特徴とするMRI装置。 - 被検体のイメージングスラブの一方の側に設定したタグスラブに第1のRF波を印加して前記イメージングスラブから第1のMR信号の収集を行う第1のスキャン手段と、前記イメージングスラブの他方の側における前記タグスラブとは対称な位置に設定したコントロールスラブに第2のRF波を印加して前記イメージングスラブから第2のMR信号の収集を行う第2のスキャン手段と、前記第1及び第2のMR信号に基づく画像データを生成する画像データ生成手段とを備えたMRI装置であって、
前記画像データ生成手段は、
前記第1及び第2のMR信号それぞれの再構成後の絶対値を演算する第1、第2の絶対値演算手段と、
前記第1及び第2のMR信号の絶対値同士を相互に差分する差分手段と、
前記タグスラブ側から流入する血流成分を選択的に抽出するためのしきい値を用いることで、前記差分手段による差分結果をしきい値処理し、前記しきい値処理で抽出された信号成分に基づいて前記画像データを生成する手段と
を備えたことを特徴とするMRI装置。 - 被検体のイメージングスラブの一方の側に設定したタグスラブに第1のRF波を印加して前記イメージングスラブから第1のMR信号の収集を行う第1のスキャン手段と、前記イメージングスラブの他方の側における前記タグスラブとは対称な位置に設定したコントロールスラブに第2のRF波を印加して前記イメージングスラブから第2のMR信号の収集を行う第2のスキャン手段と、前記第1及び第2のMR信号に基づく画像データを生成する画像データ生成手段とを備えたMRI装置であって、
前記画像データ生成手段は、
前記第1及び第2のMR信号のそれぞれの再構成後の絶対値を演算する第1、第2の絶対値演算手段と、
前記第1及び第2のMR信号の絶対値同士を相互に差分する差分手段と、
前記イメージングスラブに流入する血流に拠るパフュージョン成分を選択的に抽出するためのしきい値を用いることで、前記差分手段による差分結果をしきい値処理し、前記しきい値処理で抽出された信号成分に基づいて前記画像データを生成する手段と
を備えたことを特徴とするMRI装置。 - 請求項1乃至4の何れか一項に記載のMRI装置において、
前記第1及び第2のスキャン手段により実行される前記パルスシーケンスは、前記各第1及び第2のRF波の印加と、イメージング用パルス列の印加との間に、前記被検体の前記イメージングスラブ、タグスラブ、及び、コントロールスラブを含む領域に印加する非スライス選択IR波を設定したパルスシーケンスであることを特徴とするMRI装置。 - 請求項16に記載のMRI装置において、
前記パルスシーケンスにおける前記非スライス選択IR波の印加から前記イメージング用パルス列の印加までの時間は、前記イメージングスラブに含まれる静止組織の縦緩和時間が当該イメージング用パルスの印加時刻において平均でほぼ零と見なすことが可能な値に設定されていることを特徴とするMRI装置。 - 請求項16又は17に記載のMRI装置において、
前記非スライス選択IR波は、複数回印加されることを特徴とするMRI装置。 - 磁場中に置かれた被検体のイメージングスラブの一方及び他方にタグスラブ及びコントロールスラブをそれぞれ設定して、前記イメージングスラブのASL(Arterial Spin Labeling)像を得るMRイメージング方法において、
前記タグスラブを選択励起するための第1のRF波及び第1の傾斜磁場と、前記コントロールスラブを選択励起するための第2のRF波及び第2の傾斜磁場とを、前記第1及び第2のRF波の励起中心周波数の前記イメージングスラブの中心位置に対するオフセット量が同一で、且つ、そのタグスラブ及びコントロールスラブの前記イメージングスラブに対するオフセット位置が互いに異なるように設定し、
前記第1のRF波及び第1の傾斜磁場を含むパルスシーケンスを実行して前記イメージングスラブから第1のMR信号を収集すると共に、前記第2のRF波及び第2の傾斜磁場を含むパルスシーケンスを実行して前記イメージングスラブから第2のMR信号を収集し、
前記第1及び第2のMR信号の相互差分に基づく画像データを生成し、
前記画像データをASL像として可視化することを特徴とするMRイメージング方法。
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