JP4574422B2 - 発光分光処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマなどからの発光を分光し、波長に対応した各分光をそれぞれ受光素子で電気信号に変換し、その後、前記信号に信号処理を施して所望の検出出力を得る発光分光処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
プラズマなどからの発光を分光し、波長に対応した各分光をそれぞれ受光素子で電気信号に変換し、さらにこの変換した信号に信号処理を施し、所望の出力を得る発光分光処理装置が知られている。例えば特開2001−60585には、次のような主成分解析を用いたプロセスモニタ装置が示されている。
すなわち、プラズマチャンバからの電磁放射を、光ファイバ等を介してスペクトロメータ及びプロセッサからなるプロセスモニタ装置に入力する。前記スペクトロメータはプラズマの電磁放射を波長に基づいて空間的に分離し(例えば、プリズムまたは回折格子を介して行い)、複数の空間的に分離した波長のスペクトルを例えば2048チャンネルのCCDアレーにより検出し、検出信号(即ち発光分光法(OES)信号)を発生する。発生したOES信号は(例えば、アナログ−デジタル変換器を介して)デジタル化し、次の処理のためプロセッサに出力する。このようにプラズマからの電磁放射はスペクトロメータにより測定され、2048チャンネルのOES信号の形態でプロセッサに供給される。
プロセッサで実行される主成分解析処理の特定のタイプは、遠隔コンピュータシステム、製造実行システム等により選択される。スペクトロメータの代わりに、回折格子、プリズム、光学フィルタやその他の波長選択デバイスを複数の検出器(例えばフォトダイオード、フォトマルチプライヤーその他)と共に用い、プロセッサに複数の電磁放射波長に関する情報を提供しても良い。なお、プロセッサは制御バスを介してプラズマエッチングコントローラに結合される。
分光された光を、簡便に各波長に対する光の振幅信号として得る手段として、CCDはよく用いられる。多数の受光素子を集積したCCDでは、感度を上げようとして小さい容量の受光素子を用いるとノイズが増加し、ノイズを下げようとして大きい容量の受光素子を用いると感度が下がる。たとえば、比較的高感度のCCD(例えばソニー製ILX511,2048画素CCDリニアセンサ)では、飽和光量を受光した場合の信号対ノイズ比(S/N比)は250程度であり、受光量が低下するとS/N比は受光量の1/2乗に比例して低下する。これはCCDのみに限らず、多数の受光素子を集積した光素子の共通の課題である。
通常のイメージセンサでは、入射光量の変動に対して、画面全体の受光量の平均値あるいはピーク値を測定し、この測定値をもとにCCDの出力信号に対する増幅度あるいはCCDの蓄積時間を変化させるゲイン調整が行われる(例えば特開2000−324297、USP2001/0016053A1参照)。
一方、プラズマ処理装置では、チャンバの経時的汚れなどにより入射光量が大幅(10倍程度以上)に変動する。この変動に対して蓄積時間を変化させて対応することはシステム全体のタイミングを大幅に変化させることになるため好ましくない。また、プラズマ処理装置におけるプラズマ発光などからの分光スペクトルは複数の鋭いピークの高輝度部分と波長に対し比較的なだらかに変化している低輝度部分とが混在している(例えば、USP6261470B1-Fig.17A,あるいは特開2001−60585−図3C参照)。CCDを用いてこのような分光スペクトルを受光する場合、鋭いピーク部分を飽和させないようにCCDの出力信号の増幅度を設定すると、低輝度部分のS/N比が大幅に低下する。
逆に低輝度部に合わせて増幅すると、ピーク部が飽和する。
半導体製造装置の処理室から出射する分光スペクトルの時間的変化は処理室における処理内容の変化を示しており、その微少変化から処理状況を推定することが近年行われるようになってきた。しかし、分光スペクトルの検出手段としてCCDなどを用いた場合は、上記のようにS/N比の低い信号しか得ることができない。このため、同一波長の信号を多数回加算してノイズ除去を行なっているのが現状である。この方法では、例えば信号対ノイズ比を一桁上げようとすると、100回以上のサンプリングデータの加算を行う必要が有る。この処理には通常のCCDでは数秒から数十秒を要し、1秒程度未満好ましくは0.5秒以下の速い微小変化(10%程度以下の変化)を検知することは比較的困難である。特にプラズマなどの分光スペクトルの波長に対し比較的なだらかに変化している低輝度部分において、1秒程度未満の速い微小変化を再現性よく検知することはかなり困難である。
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、分光スペクトルの速い微小変化を再現性よく検知することのできる発光分光処理装置及びそれを用いたプラズマ処理方法を提供する。
本発明の一例によれば、上記の課題を解決するために本願発明は次のような手段を採用した。
第1に、処理装置からの入力光を分光する分光器と、前記分光した入力光の光量を各波長毎に検出する一連の複数個の受光素子を備えた受光部と、前記受光部の前記複数個の受光素子の隣接する受光素子から順次得られた時系列の検出信号をそれぞれ第1の周期で順次保持するn(n≧2)個の信号保持部を有した第1の信号保持部と、該第1の信号保持部の出力と前記時系列の検出信号とを加算する加算部と、該加算部の加算出力のそれぞれを前記第1の周期よりも長い第2の周期で順次保持するm(m≧2)個の信号保持回路を有した第2の信号保持部と、該第2の信号保持部から出力される信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、前記第2の信号保持部から前記AD変換部を経由して供給されるデジタル信号の変化に基づいて前記処理装置の状態を判定する信号処理部とを備えた。
本発明によれば、分光スペクトルに現れる速い微小変化を再現性よく検知することのできる発光分光処理装置を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態を示す図である。図において、プラズマ処理装置1の処理室中で発生したプラズマ発光は、光ファイバ2及びスリットを経由して分光器3に入力される。分光器3は前記スリットを通った入力光を波長毎に異なる角度に分光する。分光された光は複数個(通常数百個ないしは数千個、以下の説明では2048個と仮定する)からなる一連の受光素子を内蔵したCCD(Charge Coupled Device)4に入力される。このようにして、CCD4中の特定位置の受光素子(検知器)は入射光中の特定波長成分のスペクトルの強さを検知することになる。
タイミング発生回路5は、CCDリセットタイミング信号及びCCD転送クロック信号を発生する。CCDリセットタイミング信号はCCD中に蓄積する電荷の蓄積時間を決め、CCD転送クロック信号はCCD4から時系列で出力される時系列信号の転送速度を決める。以下の説明では、これらの信号をまとめてCCD駆動信号6と呼ぶ。このCCD駆動信号6によりCCD4は駆動され、プラズマ発光中の光の波長分布が時系列信号として所定周期毎に出力される。次いでこの時系列信号は、オフセット調整や利得調整機能を有する増幅回路7に入力される。なお、従来のシステムでは、増幅回路7の出力は直接アナログ−デジタル変換器(以下AD変換器と略称する)8を経由してCPU等で構成される信号処理装置9に入力され、入力光の波長分布や所定波長毎の光強度の時間変化などが信号処理装置9中の表示器に表示される構成となっている。
これに対して本実施形態では、前記増幅回路7からの時系列の出力信号(隣接するCCDを順次繰り返し操作して得られる)は、異なるタイミングで複数個(n個、n≧2)の第1の信号保持回路10に蓄えられる。複数個の信号保持回路10の出力及び増幅回路7の出力は加算増幅回路11により加算され、所定タイミングにて第2の信号保持回路12に転送される。隣接する複数の異なるタイミング(隣接する複数の異なる波長)に対応した複数の信号は、このようにして加え合わされ、第2の信号保持回路12から出力され、AD変換器8でデジタル信号に変換した後、信号処理装置9に入力される。
このように第1の加算増幅回路11により、n+1個(nは第1の信号保持回路の数)の信号を加算することにより、CCD4の出力信号のS/N比を(n+1)の1/2乗倍に改善するとともに、AD変換器8に入力するデータ量を1/(n+1)に低減することができる。この加算処理を、隣接する各CCD4毎(隣接するn+1個のCCD毎)に順次行うことにより、信号処理装置9へ入力されるノイズの影響を大幅に減少することができる。
第1の信号保持回路10の数nが8、16、32、の場合のS/N比は、それぞれほぼ3、4倍、6倍に改善される。なお、8個の信号処理回路を標準の大きさの集積回路一個に集積した集積回路は既に市販さており、この部分の回路の大きさはあまり問題とはならない。
なお、上記加算増幅回路11によるアナログ加算の処理によりデータ量が低減するため、高分解能(波長分解能)の入射光の分析はこのままでは困難になる。
高分解能(波長分解能)をも必要とする場合には、増幅回路7からの出力と上記第2の信号保持回路12からの出力とをアナログ切替器13に入力し、高分解能(波長分解能)の分析を必要とするときは、アナログ切り替え回路13を信号処理装置9からの指令により増幅回路7側に切り替えて、増幅回路7からの出力をAD変換器8を通して直接信号処理装置9に入力するようにすれば良い。このように構成することにより、波長分解能は低いが、高S/N比(高分解能)のモードと、S/N比は低いが波長分解能が高いモードを、一つの装置で切り替えて使用することができる。
図2は、他の実施形態を示す図である。図1における第1の信号保持回路10に相当する部分を、n個(n≧2)の信号保持回路(10−11ないし10−1n)を備えた第1段の信号保持回路10Aと、m個(m≧2)の信号保持回路(10−21ないし10−2m)を備えた第2段の信号保持回路10Bを加算増幅回路11−1を介して縦続接続して構成している。このようにすることにより、(n+m)個の少ない信号保持回路で、S/N比を[(n+1)*(m+1)]の1/2乗倍に改善できる。たとえばn=8、m=8の場合、S/N比として9倍近くの改善が得られる。
図3は、さらに他の実施形態を示す図である。この分光処理装置は、プラズマ処理装置1内の二つ処理室からの発光を同時に分析することができる。二つの処理室からの発光を同時に分析するために、光ファイバ2−1、2−2、光量調整器14−1、14−2、分光器3−1、3−2、CCD4−1、4−2、増幅回路7−1、7−2、第1の信号保持回路10−1、10−2、加算増幅回路11−1、11−2及び第2の信号保持回路12−1、12−2はそれぞれ2組が必要となる。一方、CCD駆動信号6は同じ信号を2つのCCD4−1、4−2に共通に加えることにより回路を簡単とすることができる。このため、タイミング発生回路5、AD変換器8は一つよい。
なお、二つの信号を一つのAD変換器8でデジタル化するためには、第2の信号保持回路12−1、12−2の出力を時分割多重化回路21で時系列に多重化した後、アナログ切替器13を経由してAD変換器8に入力するようにする。第2の信号保持回路12−1、12−2の出力を直接アナログ切替器13に入力し、信号処理装置9の指令により交互に選択してAD変換することにより、時分割多重化回路21を省くことも可能である。例えばn=16の場合、信号の量は、1/9に低下するため、交互にAD変換を行っても、従来の単一光入力の場合に比較してAD変換のスピードは、1/8で済む。
また、プラズマ処理装置1内の4つの処理室からの発光を同時に分析することができる。この場合でも、単一光入力の場合に比較してAD変換のスピードを低下させられるため、低価格のAD変換器や低価格の信号処理装置を用いることができる。これが、加算増幅回路11あるいは11−1、11−2等を用いて複数の光入力の処理を同時に行う場合の大きな利点である。また、処理装置からの測定光と参照光とを用いこれらの光を異なるCCDで測定する場合、同一タイミングで前記CCDを駆動すると、二つのCCD間の対応波長におけるデータの採取時間の時間差を0とすることができ、各波長における測定光及び参照光を用いた演算を正確に行うことができる。特に、プラズマ光などのように頻繁に変動する光を測定光及び参照光とする場合には、前記複数のCCDを同一タイミングで駆動する利点は大きい。
上述のように、複数個のCCDを同じタイミングで動作させる場合には、各CCDの蓄積時間が同一となり、複数のCCD毎の感度調整が困難となる。特に複数のCCDに入力する光のレベルが大幅に異なる場合は、図3に示すようにプラズマ処理装置1と光ファイバ2間、光ファイバ2中、あるいは光ファイバ2と分光器3との間に光量調整器14を設置するとともに、信号処理装置9からの指令を光量設定用DA変換器22を介してアナログ量に変換した後、光量制御器23を経由して、前記光量調整器14を制御すれば良い。なお、前記光量調整器14としては、印加電圧により光の透過光量が変化する液晶素子あるいは印加電圧により光の開口の大きさが変化する絞り機構等を用いることができる。
以上、加算増幅回路11等を用いたアナログ加算によるS/N比の改善とデータ量の低減について説明した。
S/N比の改善は、信号処理装置9におけるデジタル処理による改善を併用すると、さらに効果が増大する。以下に2個の光入力を処理する図3の分光処理装置を例に説明する。
蓄積時間が25ミリ秒で、25ミリ秒毎に入力される同一チャンネル(同一波長)の信号128個に対し、隣接信号16個を加算増幅回路11で加算し、波長毎に128個のアナログ信号を得る。このアナログ信号をAD変換器8でデジタル信号に変換した後、信号処理装置9に入力する。信号処理装置9では、25ミリ秒ごとに入力された前記波長毎の信号を、隣接波長間とサンプリング毎とでそれぞれ16回加算する。これにより、波長毎に隣接16波長間平均処理を施した信号、及び16回サンプリング平均を施した信号を得ることができる。これらの信号をもとに所望の信号処理をおこない、0.5秒ごとにS/N比が大幅に向上した2つの処理室に対応した所望の信号を得る。さらに、この信号をもとに、プラズマ処理装置1の2つの処理室における処理の終点をそれぞれ独立に見出すことができる。
この場合のS/N比の改善は、アナログ加算で約4倍、信号処理装置9中の波長加算で約4倍、および信号処理装置中のサンプリング点毎の加算で約4倍、すなわち4*4*4=約64倍の改善を得ることができる。
CCD4のS/N比がフルスケールで250の場合、フルスケールの1/64の光信号のS/N比は、250/√64=約30に低下するが、上記の加算平均処理を行うことにより、30*64=1900程度にまで回復できる。フルスケールの1/64の暗い光の信号中の微小(例えば1%)な変動でも、その変動を20段階程度に分離することが可能になる。
以上はAD変換時の量子化ノイズを省いて説明したが、フルスケールの1/64程度の微小信号になるとノイズを無視することはできず、AD変換時のノイズ等により信号のS/N比は低下する。例えば、12ビットのAD変換器にてデジタル信号に変換する場合、量子化ノイズやその他の回路のノイズを含めるて、フルスケールの1/3000ないし1/2000程度ノイズが増加する。これを考慮すると、フルスケールの1/64の光信号のS/N比は上記値の半分以下に低下することになる。
図4は、さらに他の実施形態を示す図である。この分光処理装置はアナログ加算時の増幅度を波長毎に変化させるようにしたものである。これにより低輝度領域におけるAD変換時の量子化ノイズや回路系ノイズの影響を低減することができる。
信号処理装置9から加算増幅回路11の利得設定指令がタイミング発生回路5に入力されると、タイミング発生回路5は、CCDリセットタイミング信号の後、加算増幅回路11(1倍の利得に設定してある)の出力信号を第2の信号保持回路12に記憶させるタイミングで、利得設定用AD変換器15(サンプルホールド機能付が好ましい)の変換をスタートさせる(利得設定用AD変換器15は、8ビット以下(4ないしは5ビット程度)のデジタル信号に変換する低価格で小型のもので十分である)。タイミング発生回路5からの信号により波長に対応した番地がアドレス回路16に設定され、メモリ17中の対応する番地に利得設定用AD変換器15の出力(信号の大きさの情報)であるデジタル信号が記憶される。
この動作がCCDの1蓄積時間に対し実施されると、2048/(n+1)個の波長に対するに信号の大きさの情報がメモリ17に蓄積される。つぎに、信号処理装置9から利得付データ出力指令がタイミング発生回路5に入力されると、加算増幅回路11の増幅度はCCDリセットタイミング信号のあと、メモリ17中の信号の大きさの情報に対応して設定される。このとき、前記加算増幅回路11の利得は、2048/(n+1)個の波長毎に利得設定回路18を経由して設定されることになる。
前記信号の大きさ情報と加算増幅回路11の利得との関係は以下のように設定するとよい。
信号の大きさ情報(対フルスケール) 加算増幅回路11の利得
1)1/4から1・・・・・・・・・・・・・・・・・A倍
2)1/8から1/4未満・・・・・・・・・・・・・2A倍
3)1/16から1/8未満・・・・・・・・・・・・4A倍
4)1/32から1/16未満・・・・・・・・・・・8A倍
5)1/32未満・・・・・・・・・・・・・・・・・16A倍
なお、Aの値は通常1未満の値(例えば:1/(n+1)、但しnは第1の信号保持回路の数)とする。
プラズマ発光のスペクトル信号は、一回の試料処理中には通常大幅には変動しない。このため、試料処理の初期の段階の安定放電時に一回だけ前記加算増幅回路11の利得を設定すれば、通常問題にはならない。しかし、アナログ信号の微小な変動で、上位の量子化ビットが変化する領域も前記信号中に含まれる。このため加算増幅回路11の利得設定後、その波長における信号が一回の試料処理中に増加(一般には1.3倍程度以上)しても飽和しないように余裕をもたせて設定しておくとよい。
なお、加算増幅回路11の利得設定データは、利得出力回路19及び第3の信号保持回路20でアナログ信号に変換し、第2の信号保持回路12の出力と同じタイミングで時系列でアナログ切換器13に出力されている。このため、前記利得設定データは、前記信号処理装置9の指令によりAD変換器8を介して読み取ることができる。前述のように、加算増幅回路11の利得の設定は、試料処理の初期の段階の安定放電時に一回だけ行えば良い。従って、前記利得データの読み取りも、試料処理の初期の段階の安定放電時に一回だけ行えば良い。
信号処理装置9は、このようにして設定した一回の時系列利得設定データについて第3の信号保持回路20の出力と、一回の処理中の蓄積時間毎に時系列で出力される第2の信号保持回路12の出力データとを用いて同一波長間の演算を行うことにより、各波長毎の真の値をプラズマ処理中にわたり、継続して算出することができる。
なお、一回の処理中の発光スペクトルの微小な時間的変化のみを検出対象とする場合には、信号処理装置9中での、利得設定データを用いた上記演算は必ずしも必須ではない。また、この例では、試料処理の初期の段階の安定放電時に一回だけ加算増幅回路11の利得を設定する場合を述べたが、試料処理の途中である波長のスペクトル強度が大幅に変化する場合には、試料処理の途中で、加算増幅回路11の利得の再設定を行うこともできる。
図5は、さらに他の実施形態を示す図である。この分光処理装置は、前記の例とは異なり、異なる波長の信号を加算することなく増幅のみを施してAD変換する。なお、利得設定回路18により異なる波長毎に増幅回路7の利得を設定することにより、明るさの低い成分のS/N比を向上させられることはもちろんである。ただし、図4の場合に比べアナログ信号自身のS/Nが低いため、その効果は図4の場合に比べ少なくなる。
以上、発光分光処理装置について述べてきた。この処理装置を用いると、プラズマ処理中の発光の微小且つ速い変化を早期に検知可能となる。たとえば、ゲート長0.1μm以下の半導体のゲートエッチング加工に用いるプラズマ処理装置においては、処理対象となる下地絶縁膜の厚さは数nmないし1nmと極めて薄い。このため、エッチング対象膜を全部エッチングしてしまう前の、前記膜を数nmないし数十nm残した状態でプラズマ処理ステップを終了させ、次いで下地との選択比が高い別の条件で次のプラズマ処理ステップをスタートさせる必要がある。
前記エッチング対象膜の残膜量を処理中に計測するには、ウエハからの干渉光を観察する必要があるが、この方法では各波長毎の光の変化は0.1%ないし数%程度と少ない。これに対して、前記分光処理装置を用いる場合には信号のS/N比を大幅に改善することができ、かつ1秒以下の早い応答に対応してプラズマ処理ステップを停止することができるため、0.1μm以下のゲート長におけるエッチング加工が可能となる。
一方、数千枚のウエハを連続してエッチング処理する場合、その処理室の変化をみるには、波長の分解能を高くした状態で光量の変化をみる必要があるが、高速の応答性は必ずしも必要としない。このような用途の場合には、図3に示す増幅回路7の出力信号をアナログ切り替え器13で選択し、AD変換器8を経由して信号処理装置9に入力させる。すなわち、このような用途の場合は、波長の分解能が必要となるため、波長間の平均化は行わず、複数サンプリングデータ間の平均化を施す。これにより、信号の処理中におけるS/N比を改善することができる。
例えば、エッチング中に、0.5秒毎且つ各波長毎に1回のデータを採取する操作を1分間行うと、各波長毎に120点のデ−タが採取できる。この採取データを波長ごとに平均化することにより、√120=10.9倍のS/N比の改善が可能となる。このように、波長分解能は必要としないが1秒以下の応答が必要な微小変化の検知と、波長分解能は必要となるが、数十秒の応答でよい微小変化の検知とを、図3に示す1台の装置でともに実施することができる。
また、1秒以下の高速応答が必要な発光成分の微小変化の検知、あるいは発光の各波長成分の微小な変化のモニタリングに対しても本発明は適用可能である。また、前記変化の変化量が所定値を越えた場合に、異常信号を発報し、注意表示を行い、あるいは次の処理を停止させることにより、プラズマ処理の異状を未然に防止することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、プラズマ処理中の発光中の構成波長の微少な変化(10%未満)を1秒以下(好ましくは、0.5秒以下)のタイミングで高速かつ安定に処理することができる。また、プラズマ処理中の発光中の各波長毎のスペクトルの微少な変化を高速かつ安定に処理するモードと、プラズマ処理中の発光中の各波長毎のスペクトルの変化を隣接する各波長に対して高分解能で判定するモードとを、用途に応じてひとつの装置で切り替えて使用することができる。
次に、CCDから得られる光信号のデジタル処理について説明する。まず、始めにプラズマエッチング処理時のプラズマ発光の特徴について説明すると、真空処理室でのプラズマエッチング処理では、処理ガス(反応性ガス)としてCl2、HBr、CF4、C58 ガスが用いられ、更にプラズマのイオン性を増すためAr ガスが用いられる。これらのガスはプラズマにより反応性の高いCl、Br、F原子(ラジカル)に分解される。これらのラジカルガスが被エッチング材であるシリコン(Si)、ポリシリコン(Si)、酸化膜(SiO2)、窒化膜(Si34)、BARC(Back Anti-Reflection Coating)、Pt、Fe、SBT(SrBi2Ta29)等と反応して反応生成物であるSiCl、SiCl2、SiF、SiBr、C2、Co、CN、PtCl、FeCl、TaCl 等を生成し、エッチングが進行する。被エッチング材がなくなると、すなわち、ッチングが終了すると、反応生成物は生成されなくなり、減少すると共に、ラジカルガスは増加する。
従って、プラズマエッチング処理中の発光スペクトル強度は、次の(1)、(2)、(3)の3種類に分類される。
(1) 被エッチング材料のエッチング終了時点で減少する反応生成物によるスペクトル。
(2) エッチング終了時点で増加するラジカルによるスペクトル。
(3) エッチング反応に無関係なためエッチング終了前後で変化しない物質のスペクトル。
従来のプラズマ発光による終点判定では、前記発光スペクトルの内、特定のスペクトル波長の発光強度(例えば、反応生成物によるスペクトル)の時間変化を用いていた。しかしながら、前記したように、CCDからの発光スペクトル信号にはその信号強度に応じてノイズ成分が存在するため、発光スペクトル信号の微分波形を利用したエッチング終点検出においては、このノイズ成分が終点検出を困難にしていた。
以下に、このノイズ成分を除去することができるようにした本発明の実施形態について、図6と図7を用いて説明する。まず、時刻tにおけるCCDからの波長λの発光スペクトル信号をAD変換器8によりデジタイズした信号が光信号成分i(λ、t)とノイズ成分δi(λ、t)とにより表わせるとする。ここでノイズ成分δi(λ、t)はCCDの電気的雑音や光の揺らぎ雑音である。
この発光スペクトル信号i(λ、t)+δi(λ、t)を上記した信号処理装置9内のデジタイズデータ保持回路910に1時保存し、予め設定回路911に設定されている発光スペクトル分類用のマスク関数M(λ)を用い、これら発光スペクトル信号i(λ、t)+δi(λ、t)とマスク関数M(λ)を、演算回路912により、測定されたすべての波長λにわたり加算する。
この波長λについての積算ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]値は加算値保持回路913に蓄えられ、微分処理回路914により発光強度の時間微分値が求まる。この発光強度の時間微分値を用いて微分値判定回路915によりエッチング終点判定が行われる。
このときの処理フローは図7に示す通りになる。
まず、処理800で被エッチング材や処理ガスなどのエッチング条件が入力され、処理801ではCCD波長に対するマスク関数M(λ)の設定が行われる。次に、処理802で、エッチングが開始されると共にCCDからの光信号のサンプリングが開始され、処理803で、CCDの各波長λに関する光信号i(λ、t)+δi(λ、t)が取得される。
次いで、処理804で、この光信号とマスク関数M(λ)のすべての波長λにおける加算値ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]を算出し、処理805では、この加算値ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]を元に時刻tでの発光強度の時間微分値を求める。
そして、処理806で、この時間微分値と予め設定されている微分判定値が比較され、再び光信号i(λ、t)+δi(λ、t)の取得処理803に戻るか、処理807で、エッチング処理終了及び光信号のサンプリング終了を設定するかが判定される。
ここで、この波長λについての積算ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]において、Σ[δi(λ、t)]はランダムノイズであり、このため、多くの波長λによる加算により積算値はゼロに近くなり、従って、この積算によりノイズが除去できることになる。
次に、発光スペクトルの分類法について説明すると、CCDの波長λからの発光スペクトルがプラズマエッチング処理のエッチング終了前後で減少する光信号か、増加する光信号か、または変化しない光信号かを分類するには、以下の方法により決定することができる。
(a) 予め反応性ガスや被エッチング材の反応生成物をスペクトルライブラリによりデータベースを作成しておき、そのデータベースより反応性ガスに属する波長はエッチング終了前後で増加する波長、また反応生成物に属する波長はエッチング終了前後で減少する波長、そして、他の波長は反応に無関係な時間変化のない波長と分類する。
このときのスペクトルライブラリについては、次の文献に記載されている。
CRC Handbook of Chemistry and Physics,David R. Lide、 CRC Press,
R. W. B. Pearse and A. G. Gaydon,
“The Identification of Molecular Spectra"
John Wiley & Sons, Inc. 1976
(b) サンプルウェハ処理(同種の被エッチング材を含むウェハのエッチング処理)を行う。その処理時の発光スペクトルの時間変化に対して、全波長について微分処理を行いエッチング終了前後での1次微分値の値により分類する。微分処理法としては特開2000−228397記載の方法を用いることができる。すなわち、次の3種に分類する。
i.
1次微分値が負の波長はエッチング終了前後で減少する波長(反応生成物によるもの)。
ii.
1次微分値が正の波長はエッチング終了前後で増加する波長(ラジカルによるもの)。
iii.
1次微分値がゼロの波長はエッチング終了前後で変化しない波長(反応に無関係なもの)。
(c) サンプルウェハ処理(同種の被エッチング材を含むウェハのエッチング処理)を行う。その処理時の全波長に関する発光スペクトルの時間変化に対して主成分分析を行い、各成分のスペクトルを求め、その各成分のスペクトルの値により分類する。
主成分分析については、次の文献に記載されており、その方法を用いることができる。
南 茂夫著
“科学計測のための波形データ処理"
CQ出版、 p220-226、 1986
K. Sasaki, S. Kawata,and S. Minami,
“Estimation of Component Spectral Curves
from Unknown Mixture Spectra"
Appl. Opt. Vol. 23, p1955-1959, 1984
この場合、主成分分析により求められた或る成分のスペクトルの値により分類する。例えば、この或る成分のスペクトルの値が負の波長は、エッチング終了前後で減少する波長(反応生成物によるもの)とし、スペクトルの値が正の波長は、エッチング終了前後で増加する波長(ラジカルによるもの)で、スペクトルの値がゼロの波長は、エッチング終了前後で変化しない波長(反応に無関係なもの)であると分類する。
ただし、この方法では、或る成分のスペクトル値の正負の値に関しては、必ずしも正が反応生成物で負がラジカルとは限らない。
上記の方法により3種に分類したグループに対して、グループを明記するため演算子M(λ)を導入する。例えば、エッチング前後で発光強度が増加する波長λはM(λ)=1、エッチング前後で発光強度が減少する波長λはM(λ)=−1、エッチング前後で発光強度が変化しない波長λはM(λ)=1とする。
本実施形態を適用してたBARC(Back Anti-Reflection Coating)エッチング処理した結果を図8と図9に示す。このときのエッチング処理ガスはHBr とCF4、O2、Ar の混合ガスである。
まず、図8はBARCエッチング終了前とエッチング終了後の発光スペクトルの1例で、このエッチングではBARC材の反応生成物であるCN、Co、C2 など多くの発光スペクトルがエッチング終了前後で減少し、OHやOの発光スペクトルが増加していることがわかる。この発光スペクトルの時間変化を微分処理することにより、発光スペクトルの時間変動の分類を行い、図に示すマスク関数M(λ)を決定した。
次に、図9は、マスク関数M(λ)を用い波長λについて求めた積算ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]を示したもので、図において、標準状態とは発光スペクトル強度の平均値が約1220カウントのものであり、発光量1/100減少とは発光スペクトル強度を絞り平均値が約12.2カウントのものである。この図から、発光量が1/100に減少した場合でも、本発明によればノイズ成分が十分に除去でき、発光強度の時間変化が正確に求められることが判る。
次に、CCDからのノイズ成分δi(λ、t)が光信号成分i(λ)の強度に反比例する性質を考慮した場合の本発明の実施形態について説明すると、この実施形態で用いたCCD(ソニー製ILX511)のS/N比は、上述したように、約250√(i(λ)/4000)と表現でき、ノイズ成分は、δi(λ、t)=1/250*√(4000*i(λ、t))と表すことができる。例えば、ノイズはi(λ)=4000のときδi(λ、t)=16(S/N=250)であるが、i(λ)=10のときはδi(λ、t)=0.8(S/N=12.5)となる。
ここで、単純にλについての積算を行った場合、発光量のS/N比に対する寄与は無視できる。
これは、上記したλについての積算ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]に関して、ノイズ成分δi(λ、t)により規格化することにより可能になる。つまり図8のλについての積算処理804をΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]/[1/250*√(4000*i(λ、t))]とすれば良い。
従って、この実施形態による処理フローは図10に示すようになり、ここで、処理814が上記した規格化処理であり、他の処理は図8の実施形態の場合と同じである。
次に、プラズマ発光に異常放電などの変動があった場合に、そのプラズマ発光変動を相殺することができるようにした本発明の実施形態について説明する。
まず、上記したマスク関数M(λ)値を、例えば、エッチング前後で発光強度が増加する波長λはマスク関数M(λ)=2、エッチング前後で発光強度が減少する波長λはマスク関数M(λ)=−2、エッチング前後で発光強度が変化しない波長λはマスク関数M(λ)=1と設定し、これにより、エッチング前後で発光強度が変化しない波長λを区別し、このエッチング前後で発光強度が変化しない波長λの光信号により、波長λについての積算ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]を規格化する。
すなわち、図11の処理フローに示すように、図8の処理フローにおける処理804に代えて処理824を設け、まず、A*ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]/ΣM(λ')[i(λ'、t)+δi(λ'、t)]を算出する。
ここで、ΣM(λ')[i(λ'、t)+δi(λ'、t)]は、エッチング前後で発光強度が変化しない波長λ'での積算値であり、係数Aは、プラズマエッチング処理開始後の適当な時刻t0 におけるA=ΣM(λ')[i(λ'、t)+δi(λ'、t)]/ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]の値である。
この規格化処理824によれば、プラズマ発光に異常放電などの変動があった場合の発光変動がキャンセルされ、従って、この実施形態によれば、正確で信頼性の高い終点判定を行うことができる。
ここで、発光強度がエッチング前後で変化しない波長λが見つからなかった場合は、エッチング前後で発光強度が増加する波長λに関する積算値を規格化値として用いるようにしてもよく、これによっても同様の効果を得ることことができる。
この場合、A*ΣM(λ)[i(λ、t)+δi(λ、t)]/ΣM(λ')[i(λ'、t)+δi(λ'、t)]の積算における波長λ'の加算を、エッチング前後で発光強度が増加する波長λ'について行えば良い。
本発明にかかる発光分光処理装置の一実施形態を示す図である。 本発明にかかる発光分光処理装置の他の一実施形態を示す図である。 本発明にかかる発光分光処理装置の更に他の一実施形態を示す図である。 本発明にかかる発光分光処理装置の更に別の一実施形態を示す図である。 本発明にかかる発光分光処理装置の更に他の一実施形態を示す図である。 本発明の一実施形態における信号処理装置部のブロック図である。 本発明の一実施形態におけるデジタル信号処理を説明するフローチャートである。 本発明の一実施形態における発光スペクトル波形とマスク関数の一例を示す図である。 本発明の一実施形態における発光強度の変化波形の一例を示す図である。 本発明の他の一実施形態におけるデジタル信号処理を説明するフローチャートである。 本発明の更に他の一実施形態におけるデジタル信号処理を説明するフローチャートである。
符号の説明
1 プラズマ処理装置
2 光ファイバ
3 分光器
4 CCD
5 タイミング発生回路
6 CCD駆動信号
7 増幅回路
8 AD変換器
9 信号処理装置
10 第1の信号保持回路
11 加算増幅回路
12 第2の信号保持回路
13 アナログ切換器
14 光量調整器
15 利得設定用AD変換器
16 アドレス回路
17 メモリ
18 利得設定回路
19 利得出力回路
20 出力保持回路
21 時分割多重化回路
22 光量設定用AD変換器
23 光量制御回路

Claims (3)

  1. 処理装置からの入力光を分光する分光器と、
    前記分光した入力光の光量を各波長毎に検出する一連の複数個の受光素子を備えた受光部と、
    前記受光部の前記複数個の受光素子の隣接する受光素子から順次得られた時系列の検出信号をそれぞれ第1の周期で順次保持するn(n≧2)個の信号保持部を有した第1の信号保持部と、
    該第1の信号保持部の出力と前記時系列の検出信号とを加算する加算部と、
    該加算部の加算出力のそれぞれを前記第1の周期よりも長い第2の周期で順次保持するm(m≧2)個の信号保持回路を有した第2の信号保持部と、
    該第2の信号保持部から出力される信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、
    前記第2の信号保持部から前記AD変換部を経由して供給されるデジタル信号の変化に基づいて前記処理装置の状態を判定する信号処理部とを備えたことを特徴とする発光分光処理装置。
  2. 請求項1に記載の発光分光処理装置において、
    前記信号処理部は、前記加算部の出力及び前記受光部の隣接する複数の受光素子毎の検出信号の何れか一方を入力する選択手段を備えていることを特徴とする発光分光処理装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の発光分光処理装置において、
    前記第1の信号保持部は、前記受光部の隣接する複数の受光素子毎に異なる比率で増幅した前記入力光の検出信号を保持することを特徴とする発光分光処理装置。
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