JP4573941B2 - コリメータレンズおよびこれを用いた光走査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザビームを走査して画像の記録や表示を行うための複写機あるいはレーザプリンタ等の光走査装置に用いられるコリメータレンズに関し、詳しくは半導体レーザ等の光源から射出された発散光束を平行光束に変換するためのコリメータレンズおよびこれを用いた光走査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、レーザビームを走査して画像の記録や表示を行うための複写機あるいはレーザプリンタ等の光走査装置が種々知られている。
このような光走査装置は、半導体レーザから射出されたレーザビームを、コリメータレンズによって平行光束に変換し、回転多面鏡の回転に応じて偏向し、これをfθレンズによって結像面上に結像するように構成されたものである。
【0003】
ところで、一般に用いられるコリメータレンズは、主に軸上性能を満足させることが要求されるため、例えば特開昭61−173214号公報や特開昭61−147225号公報に記載されているように、2枚ないし3枚のレンズで構成されたものが多く知られている。
【0004】
また、マルチビーム走査用として像面湾曲量を小さく抑えたコリメータレンズとして、特開平11−271606号公報に開示された5枚構成のコリメータレンズが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特開昭61−173214号公報や特開昭61−147225号公報に記載されている2枚ないし3枚のレンズで構成されたコリメータレンズにおける軸外性能は、正弦条件が満足される極めて狭い範囲においてのみ適応しうるものであり、特に、走査速度の高速化、あるいは一度の走査で異なる複数情報の同時記録を目的としてなされるマルチビーム方式を採用する場合等においては、半画角ωが2度程度となる範囲で像面湾曲を十数ミクロン以内に収めなければならないことから、上記公報記載のコリメータレンズの適用は困難である。
【0006】
また、特開平11−271606号公報に開示されたコリメータレンズでは、コリメータレンズが光源(レーザダイオード等)の近くに配置されることとなるため、光源からの熱によりコリメータレンズの温度が上昇し、波面収差が大きくなる等の問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、マルチビーム走査を行う場合に、複数の光源からの各光ビームに対して諸収差、特に像面湾曲量を極めて小さくすることができ、かつ光源からの熱の影響を小さくするために十分なバックフォーカスの確保を可能とした、光走査装置に用いられるコリメータレンズを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るコリメータレンズは、上述した目的を達成するため、平行光束側から順に、正の屈折力を有する第1レンズと、いずれか一方が負の屈折力を有し、他方が正の屈折力を有するレンズからなり、合成で負の屈折力を有する第2レンズおよび第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズを配設するとともに、前記第2レンズおよび前記第3レンズを接合してなり、
前記第1レンズは、平行光束側に凸面を向けた正レンズであり、前記第5レンズは、光源側に凹面を向けた正のメニスカスレンズであり、かつ下記条件式(1)〜(4)を満足するように構成してなることを特徴とするものである。
Bf/f>0.6 ・・・ (1)
−0.54<f 1 /f 23 <−0.36 ・・・ (2)
0.9 <f 45 /f < 1.4 ・・・ (3)
0.9 <f 4 /f 5 < 1.4 ・・・ (4)
ここで、
Bf:レンズ全系のバックフォーカス
f :レンズ全系の焦点距離
f 1 :第1レンズの焦点距離
f 4 :第4レンズの焦点距離
f 5 :第5レンズの焦点距離
f 23 :第2レンズと第3レンズの合成焦点距離
f 45 :第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
【0010】
また、本発明に係る光走査装置は、上述したコリメータレンズを用いたことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るコリメータレンズおよび光走査装置を実施例1、2を用いて説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態(実施例1に対応させたものを代表的に示す)に係るコリメータレンズのレンズ基本構成図、図6は図1に示すコリメータレンズを用いた光走査装置の概略構成図である。
【0013】
本発明に係るコリメータレンズは、光源から射出されたレーザビームを走査して画像の記録や表示を行うためのレーザプリンタ、コピー機等の光走査装置の光学系に用いられるものである。
【0014】
この光走査装置は、図6に示すように、2光源搭載型のワンチップ半導体レーザ等からなる光源1から射出されたレーザビームを平行光束に変換するためのコリメータレンズ2と、内面に感材6を配置するとともにコリメータレンズ2の光軸を回転軸として回転する円筒5を備えており、円筒5内には、コリメータレンズ2により変換された光束を反射するためのミラー3と、ミラー3により反射された光束を円筒5の内面に向かって導くための集光レンズ4とを配設している。なお、図6において、円筒5は、コリメータレンズ2の光軸を含む面における切断面を示している。
【0015】
この光走査装置では、光源1から射出されたレーザビームは、コリメータレンズ2により平行光束に変換されて円筒5内に導かれ、ミラー3により反射された後、集光レンズ4により微少なビームスポットとなり、円筒5の内面に配置された感材6上を走査するようになっている。
【0016】
本実施形態に係るコリメータレンズ2は、図1に示すように、平行光束側から順に、両凸レンズからなる第1レンズL1(実施例2では、平行光束側に凸面を向けた平凸レンズ)、両凹レンズからなる第2レンズL2、両凸レンズからなる第3レンズL3、両凸レンズからなる第4レンズL4、光源側に凹面を向けた正のメニスカスレンズからなる第5レンズL5を配設してなる。また、上記第2レンズL2および上記第3レンズL3は接合レンズとして構成されている。さらに、第1レンズL1の平行光束側には、絞り7が配設されている。なお、図1中、1は光源、Xは光軸を示す。
また、これらのレンズは以下の条件式(1)〜(4)を満足する。
Bf/f>0.6 ・・・ (1)
−0.54<f1/f23<−0.36 ・・・ (2)
0.9 <f45/f < 1.4 ・・・ (3)
0.9 <f4/f5 < 1.4 ・・・ (4)
ここで、
Bf :レンズ全系のバックフォーカス
f :レンズ全系の焦点距離
f1 :第1レンズの焦点距離
f4 :第4レンズの焦点距離
f5 :第5レンズの焦点距離
f23 :第2レンズと第3レンズの合成焦点距離
f45 :第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
【0017】
また、これらのレンズは以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
νd+−νd− > 20.0 ・・・ (5)
ここで、
νd+:全正レンズのd線におけるアッベ数νdの平均値
νd−:全負レンズのd線におけるアッベ数νdの平均値
【0018】
次に、上記各条件式の意義について説明する。
上記条件式(1)は、レンズ全系の合成焦点距離fに対する全系のバックフォーカスBfの比Bf/fの値を規定したものである。この条件式(1)において、Bf/fの値が下限を超えると、光源1からの距離を十分確保することができなくなる。このため、光源1が発する熱の影響を受けて部品の線膨張および屈折率の変化により諸収差を良好に補正することができなくなるとともに、円筒5の内面上における結像位置が変化してしまう。
【0019】
上記条件式(2)は、第1レンズL1の焦点距離f1に対する第2レンズL2と第3レンズL3との合成焦点距離f23の比f1/f23を規定したものである。この条件式(2)において、f1/f23の値が上限を超えると、諸収差の補正には有利であるものの、バックフォーカスが小さくなり過ぎる。一方、f1/f23の値が下限を超えると、十分なバックフォーカスを得ることができるものの、像面湾曲が増大し、使用に耐えうる性能を満足することができなくなる。
したがって、条件式(2)を満足することにより、光源1からの熱の影響を受け難い所定のバックフォーカスを確保することができるとともに、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0020】
上記条件式(3)は、レンズ全系の合成焦点距離fに対する第4レンズL4と第5レンズL5の合成焦点距離f45の比f45/fの値を規定したものである。この条件式(3)において、f45/fの値が上限を超えると、第4レンズL4もしくは第5レンズL5における球面収差の発生量が大きくなり過ぎ、その補正が困難になる。一方、f45/fの値が下限を超えると、バックフォーカスが小さくなり過ぎる。したがって、条件式(3)を満足することにより、光源1からの熱の影響を受け難い所定のバックフォーカスを確保することができるとともに、球面収差を良好に補正することができる。
【0021】
上記条件式(4)は、第4レンズL4の焦点距離f4に対する第5レンズL5の焦点距離f5の比f4/f5を規定したもので、特に軸外コマ収差を良好にするための条件式である。この条件式(4)において、f4/f5の値が上限を超えると、軸外コマ収差が劣化して、像面湾曲が補正されても使用に耐えうる性能を満足できなくなる。一方、f4/f5の値が下限を超えると、像面湾曲の補正が不十分となり、画角の大きい半導体レーザには適用することが困難となる。
【0022】
上記条件式(5)は、d線におけるアッベ数νdに対する全正レンズの平均値と全負レンズの平均値との差νd+−νd−を規定したものである。この条件式(5)において、νd+−νd−の値が下限を超えると、色収差が大きくなる。
したがって、条件式(5)を満足することにより、光源1の波長がばらついても諸収差を良好に補正することができ、常に安定した画質を確保することができる
以下、実施例1、2の各々について具体的数値を用いて説明する。
【0023】
<実施例1>
図1は、実施例1に係るコリメータレンズのレンズ基本構成を示す概略図である。
実施例1における各レンズ面の曲率半径R(mm)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D(mm)、各レンズの波長830nmにおける屈折率Nおよびd線におけるアッベ数νdを下記表1に示す。
【0024】
ただし、この表1および後述する表2において、各記号R,D,N,νdに対応させた数字は平行光束側から順次増加するようになっている。
また、表1の下段に、この実施例1におけるレンズ系全体の合成焦点距離f、およびBf/f、f1/f23、f45/f、f4/f5、νd+−νd−の値を示す。
【0025】
【表1】
【0026】
上記表1から明らかなように、実施例1では条件式(1)〜(5)の全てが満足されている。
【0027】
<実施例2>
図7は、実施例2に係るコリメータレンズのレンズ基本構成を示す概略図である。
実施例2における各レンズ面の曲率半径R(mm)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D(mm)、各レンズの波長405nmにおける屈折率Nおよびd線におけるアッベ数νdを下記表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
また、表2の下段に、この実施例2におけるレンズ系全体の合成焦点距離f、およびBf/f、f1/f23、f45/f、f4/f5、νd+−νd−の値を示す。
上記表2から明らかなように、実施例2では条件式(1)〜(5)の全てが満足されている。
【0030】
また、実施例1、2における各収差図(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差の収差図)を各々図2、4に、実施例1、2におけるコマ収差の収差図を各々図3、5に示す。なお、これらの収差図においてωは半画角を示す。また、実施例1において、球面収差図には、波長815nm、830nm、845nmに対する収差が示されており、非点収差図には、サジタル像面およびタンジェンシャル像面に対する収差が示されており、倍率色収差図には、波長815nm、845nmに対する収差が示されている。また、実施例2において、球面収差図には、波長395nm、405nm、415nmに対する収差が示されており、非点収差図には、サジタル像面およびタンジェンシャル像面に対する収差が示されており、倍率色収差図には、波長395nm、415nmに対する収差が示されている。
これら図2〜5から明らかなように、上述した各実施例によれば、諸収差を全て良好なものとすることができる。
【0031】
なお、本発明に係るコリメータレンズとしては、上記実施例のものに限られず種々の態様の変更が可能であり、例えば各レンズの曲率半径Rおよびレンズ間隔(もしくはレンズ厚)Dあるいは絞りと第1面の距離を適宜変更することが可能である。
【0032】
また、本発明に係るコリメータレンズを用いた光走査装置としては、図6に示すものに限られるものではなく、例えば回転多面鏡の回転に応じて偏向し、これをfθレンズによって結像面上に結像するように構成されたもの等が考えられる。
【0033】
また、コリメータレンズの焦点位置近傍に絞りを配置し、光源側の光束を略テレセントリックとしている。これにより、光源またはコリメータレンズの偏芯や光軸方向のズレによる波面収差の劣化を小さくすることが可能となる。
【0034】
また、本発明に係るコリメータレンズは、平行光束側に配された物体の像を記録体上に結像せしめ、当該結像位置でレーザビームを集光しかつ走査する目的の対物レンズとしても使用することもできる。対物レンズとして使用する場合には、レンズと感材の間に所定の距離を必要とするため、十分なバックフォーカスを有することが条件となる。
【0035】
【発明の効果】
本発明に係るコリメータレンズは、平行光束側から順に、正の屈折力を有する第1レンズと、いずれか一方が負の屈折力を有し、他方が正の屈折力を有するレンズからなり、合成で負の屈折力を有する第2レンズおよび第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズを配設するとともに、第2レンズおよび第3レンズを接合してなり、かつ所定の条件式を満足するようにしている。
【0036】
したがって、本発明に係るコリメータレンズおよびこれを用いた光走査装置によれば、2光源搭載型のワンチップ半導体レーザ等を用いてマルチビーム走査を行う場合に、各光源からの光ビームに対して諸収差、特に像面湾曲量を極めて小さくすることが可能となり、マルチビーム方式を用いた場合において走査により形成された画像の画質を向上させることができる。
【0037】
また、第1レンズを平行光束側に凸面を向けた正のレンズとすることにより、像面湾曲を良好に補正することができ、第5レンズを光源側に凹面を向けた正のメニスカスレンズとすることにより、光源からの熱の影響を小さくするために十分なバックフォーカスを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1に係るコリメータレンズのレンズ基本構成を示す概略図
【図2】 実施例1に係るコリメータレンズの各収差図(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差の収差図)
【図3】 実施例1に係るコリメータレンズのコマ収差を示す収差図
【図4】 実施例2に係るコリメータレンズの各収差図(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差の収差図)
【図5】 実施例2に係るコリメータレンズのコマ収差を示す収差図
【図6】 本発明の実施例に係るコリメータレンズを用いた光走査装置の概略構成図
【図7】 本発明の実施例2に係るコリメータレンズのレンズ基本構成を示す概略図
【符号の説明】
L1〜L5 レンズ
R1〜R9 レンズ面の曲率半径
D1〜D8 レンズ面間隔(レンズ厚)
X 光軸
1 光源
2 コリメータレンズ
3 ミラー
4 集光レンズ
5 円筒
6 感材
7 絞り
Claims (2)
- 平行光束側から順に、正の屈折力を有する第1レンズと、いずれか一方が負の屈折力を有し、他方が正の屈折力を有するレンズからなり、合成で負の屈折力を有する第2レンズおよび第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズを配設するとともに、前記第2レンズおよび前記第3レンズを接合してなり、
前記第1レンズは、平行光束側に凸面を向けた正レンズであり、前記第5レンズは、光源側に凹面を向けた正のメニスカスレンズであり、かつ下記条件式(1)〜(4)を満足するように構成してなることを特徴とするコリメータレンズ。
Bf/f>0.6 ・・・ (1)
−0.54<f 1 /f 23 <−0.36 ・・・ (2)
0.9 <f 45 /f < 1.4 ・・・ (3)
0.9 <f 4 /f 5 < 1.4 ・・・ (4)
ここで、
Bf:レンズ全系のバックフォーカス
f :レンズ全系の焦点距離
f 1 :第1レンズの焦点距離
f 4 :第4レンズの焦点距離
f 5 :第5レンズの焦点距離
f 23 :第2レンズと第3レンズの合成焦点距離
f 45 :第4レンズと第5レンズの合成焦点距離 - 請求項1記載のコリメータレンズを用いたことを特徴とする光走査装置。
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