JP4573880B2 - 半導体レーザ装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体レーザ装置およびその製造方法に関し、特に、基台に固定される半導体レーザ素子を備えた半導体レーザ装置およびその製造方法に関する。
従来、基台に固定される半導体レーザ素子を備えた半導体レーザ装置などが知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
上記特許文献1には、半導体レーザチップ(半導体レーザ素子)と、半導体レーザチップが固定されるサブマウント(基台)とを備えた半導体レーザ装置が開示されている。この半導体レーザ装置では、半導体レーザチップは、基板と、基板上に形成される半導体層とによって構成されている。
また、上記特許文献2には、反りを有する半導体発光素子チップ(半導体レーザ素子)と、半導体発光素子チップが固定されるマウント部材(基台)とを備えた半導体発光装置およびその製造方法が開示されている。この半導体発光装置では、半導体発光素子チップの反りの形状に対応するように表面形状が加工されたマウント部材を用いている。これにより、半導体発光素子チップは、所定の方向に反りが生じた状態でマウント部材に固定される。
特開2006−41085号公報 特開2003−31895号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された半導体レーザ装置では、半導体レーザチップは、基板と、基板上に形成される半導体層とによって構成されているので、基板と半導体層との熱膨張係数差および格子定数差に起因して、半導体レーザチップに反りが生じる場合があるという不都合がある。この場合、半導体レーザチップは、通常、共振器の延びる方向に沿った細長形状を有しているので、半導体レーザチップの共振器の延びる方向に沿って反り量が大きくなる。このため、半導体レーザチップの共振器の延びる方向に沿った反り量がばらつきやすくなるので、半導体レーザチップの反りの凸側をサブマウントに固定した場合、半導体レーザチップの共振器の光出射端における半導体レーザチップとサブマウントとの距離がばらつきやすくなる。したがって、半導体レーザチップの共振器の光出射端から出射されるレーザ光の出射位置がばらつきやすくなるという問題点がある。また、半導体レーザチップの反りの凸側をサブマウントに固定した場合、通常、半導体レーザチップから出射されるレーザ光の出射方向がサブマウントの表面に対して上側に傾斜した状態で、半導体レーザチップがサブマウントに配置されるので、半導体レーザチップの共振器の延びる方向に沿った反り量のばらつきに起因して、半導体レーザチップ(半導体レーザ素子)から出射されるレーザ光の出射方向がばらつくという問題点もある。
また、上記特許文献2に開示された半導体発光装置およびその製造方法では、半導体発光素子チップの反りの形状に対応するように曲面形状または所定の形状(凹形状)に加工されたマウント部材に半導体発光素子チップを固定するために、半導体発光素子チップの反り形状(反り量)のばらつきとマウント部材側の形状とが適切に対応しない場合があると考えられる。この場合、共振器の光出射端における半導体発光素子チップとマウント部材との距離がばらつきやすくなる。したがって、半導体発光素子チップの共振器の光出射端から出射されるレーザ光の出射位置がばらつきやすくなるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の出射位置および出射方向がばらつくのを抑制することが可能な半導体レーザ装置およびその製造方法を提供することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による半導体レーザ装置は、共振器の延びる第1方向または第1方向と交差する第2方向の少なくとも一方に沿って反りを有する半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子の反りの凸側が固定される基台とを備え、第1方向または第2方向のうちの反りの大きい第2方向における半導体レーザ素子の一方端部と基台との間の距離は、第2方向における半導体レーザ素子の他方端部と基台との間の距離よりも小さい。
この第1の局面による半導体レーザ装置では、上記のように、反りの大きい方向における半導体レーザ素子の一方端部と基台との間の距離を、反りの大きい方向における半導体レーザ素子の他方端部と基台との間の距離よりも小さくすることによって、半導体レーザ素子の一方端部における半導体レーザ素子と基台との間の距離が大きい場合に比べて、半導体レーザ素子の一方端部における半導体レーザ素子と基台との間の距離のばらつき量を小さくすることができる。また、半導体レーザ素子の反りの凸側を基台に固定するとともに、反りの大きい方向における半導体レーザ素子の一方端部における半導体レーザ素子と基台との間の距離を、反りの大きい方向における半導体レーザ素子の他方端部における半導体レーザ素子と基台との間の距離よりも小さくすることによって、半導体レーザ素子の一方端部を基台の表面に実質的に平行に近づけて配置することができる。また、第1方向または第2方向に沿って反りを有する半導体レーザ素子を基台に固定することによって、外力などを加えて反りを無くした状態で半導体レーザ素子を基台に固定する場合と異なり、半導体レーザ素子内の応力が増加するのを抑制することができるので、レーザ特性が劣化したり、半導体レーザ素子が破損するのを抑制することができる。
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、半導体レーザ素子は、基板と、基板の表面上に形成されるとともに、基板とは反対側の表面が凹状の半導体レーザ素子部とを含み、半導体レーザ素子は、基板側が基台に融着層を介して固定されている。このように構成すれば、半導体レーザ素子が、基板とは反対側の表面が凹状の半導体レーザ素子部を含む場合にも、容易に、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の出射位置および出射方向がばらつくのを抑制することができる。
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、半導体レーザ素子は、基板と、基板の表面上に形成されるとともに、基板とは反対側の表面が凸状の半導体レーザ素子部とを含み、半導体レーザ素子は、半導体レーザ素子部側が基台に融着層を介して固定されている。このように構成すれば、半導体レーザ素子が、基板とは反対側の表面が凸状の半導体レーザ素子部を含む場合にも、容易に、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の出射位置および出射方向がばらつくのを抑制することができる。
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、半導体レーザ素子は、窒化物系半導体層を有する半導体レーザ素子部を含む。このように構成すれば、窒化物系半導体層を有する半導体レーザ素子部を含む半導体レーザ素子において、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の出射位置および出射方向がばらつくのを抑制することができる。
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、他方端部の近傍は、基台に固定されずに、一方端部の近傍が、基台に融着層を介して固定されている。このように構成すれば、半導体レーザ素子の共振器の一方端部(光出射端)から他方端部(光反射端)までの全体を基台に固定する場合と異なり、融着層の硬化時の熱収縮により半導体レーザ素子内の応力が増加するのを抑制することができるので、レーザ特性が劣化したり、半導体レーザ素子が破損するのをより抑制することができる。
この発明の第2の局面による半導体レーザ装置の製造方法は、共振器の延びる第1方向または第1方向と交差する第2方向に沿って反りを有する半導体レーザ素子を形成する工程と、第1方向または第2方向のうちの反りの大きい第2方向における半導体レーザ素子の一方端部と基台との間の距離が、第2方向における半導体レーザ素子の他方端部と基台との間の距離よりも小さくなるように、半導体レーザ素子の反りの凸側を基台に固定する工程とを備えている。
この第2の局面による半導体レーザ装置の製造方法では、上記のように、反りの大きい方向における半導体レーザ素子の一方端部と基台との間の距離が、反りの大きい方向における半導体レーザ素子の他方端部と基台との間の距離よりも小さくなるように、半導体レーザ素子の反りの凸側を基台に固定する工程を設けることによって、半導体レーザ素子の一方端部における半導体レーザ素子と基台との間の距離が大きい場合に比べて、半導体レーザ素子の一方端部における半導体レーザ素子と基台との間の距離のばらつき量を小さくすることができる。また、第1方向または第2方向に沿って反りを有する半導体レーザ素子を基台に固定することによって、外力などを加えて反りを無くした状態で半導体レーザ素子を基台に固定する場合と異なり、半導体レーザ素子内の応力が増加するのを抑制することができるので、レーザ特性が劣化したり、半導体レーザ素子が破損するのを抑制することができる。
上記第2の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、半導体レーザ素子を基台に固定する工程は、第2方向における半導体レーザ素子の中央部よりも一方端部側を、押圧部材により基台に押圧しながら融着層を介して固定する工程を含む。このように構成すれば、半導体レーザ素子の一方端部近傍における半導体レーザ素子と基台との間の距離を、半導体レーザ素子の共振器の他方端部近傍における半導体レーザ素子と基台との間の距離よりも、容易に、小さくすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の半導体レーザ装置の概略的な構造を説明するための断面図である。図1を参照して、本発明の具体的な実施形態を説明する前に、本発明の半導体レーザ装置1の概略的な構造について説明する。
本発明の半導体レーザ装置1では、図1に示すように、半導体レーザ素子10が、金属層などからなる導電性接着層20を介して基台30に固定されている。なお、導電性接着層20は、本発明の「融着層」の一例である。
半導体レーザ素子10は、A方向に沿って反りを有する。ここで、半導体レーザ素子10は、反りの凸側が基台30の上面30aに固定されている。また、半導体レーザ素子10の一方端部10a近傍における半導体レーザ素子10と基台30との間の距離(導電性接着層20の厚み)H1は、半導体レーザ素子10の他方端部10b近傍における半導体レーザ素子10と基台30との間の距離(導電性接着層20の厚み)H2よりも小さい。
なお、半導体レーザ素子10は、A方向と交差する方向に沿って、A方向の反りよりも小さい反りをさらに有していてもよい。この場合、一方端部10a近傍における半導体レーザ素子10と基台30との間の距離の最小値をH1と定義するとともに、他方端部10b近傍における半導体レーザ素子10と基台30との間の距離の最小値をH2と定義する。図1に示した半導体レーザ素子10では、より具体的に、共振器の延びる方向がA方向であり、共振器の光出射面を一方端部10aとするとともに、共振器の光反射面を他方端部10bとする場合を示している。
また、半導体レーザ素子10は、窒化ガリウム基板、サファイア基板、シリコン基板およびシリコンカーバイト基板などの基板上に半導体層を形成することにより構成することが可能である。
また、半導体レーザ素子10の一方端部10aおよび他方端部10bにそれぞれ誘電体多層膜を形成してもよい。
本発明の半導体レーザ装置1では、上記のように、反りの大きいA方向における半導体レーザ素子10の一方端部10aと基台30との間の距離H1を、A方向における半導体レーザ素子10の他方端部10bと基台30との間の距離H2よりも小さくすることによって、半導体レーザ素子10の一方端部10aにおける半導体レーザ素子10と基台30との間の距離が大きい場合に比べて、半導体レーザ素子10の一方端部10aにおける半導体レーザ素子10と基台30との間の距離のばらつき量を小さくすることができる。これにより、たとえば、半導体レーザ素子10の一方端部10aを共振器の光出射端であるように構成した場合、光出射端から出射されるレーザ光の出射位置がばらつくのを抑制することができる。また、半導体レーザ素子10の反りの凸側を基台30に固定するとともに、A方向における半導体レーザ素子10の一方端部10aにおける半導体レーザ素子10と基台30との間の距離H1を、A方向における半導体レーザ素子10の他方端部10bにおける半導体レーザ素子10と基台30との間の距離H2よりも小さくすることによって、半導体レーザ素子10の一方端部10aを基台30の表面に実質的に平行に近づけて配置することができる。これにより、たとえば、半導体レーザ素子10の一方端部10aを共振器の光出射端であるように構成した場合、光出射端から出射されるレーザ光の出射方向が基台30の表面に対して上側に傾斜した状態で半導体レーザ素子10が配置されるのを抑制することができる。この結果、半導体レーザ素子10の共振器の光出射端から出射されるレーザ光の出射方向がばらつくのを抑制することができる。また、A方向に沿って反りを有する半導体レーザ素子10を基台30に固定することによって、外力などを加えて反りを無くした状態で半導体レーザ素子10を基台30に固定する場合と異なり、半導体レーザ素子10の内部の応力が増加するのを抑制することができるので、レーザ特性が劣化したり、半導体レーザ素子10が破損するのを抑制することができる。
なお、本発明において、光出射端は、光出射側および光反射側のそれぞれの共振器端面から出射されるレーザ光強度の大小関係により区別される。すなわち、相対的にレーザ光の出射強度の大きい側が光出射端であり、相対的にレーザ光の出射強度の小さい側が光反射端である。
(第1参考形態)
図2は、本発明の第1参考形態による半導体レーザ装置を備えた半導体レーザの構造を説明するための斜視図である。図3は、本発明の第1参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための断面図である。図4は、本発明の第1参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための平面図である。図5は、図3に示した本発明の第1参考形態による半導体レーザ装置の半導体レーザ素子の構造を説明するための斜視図である。まず、図2〜図5を参照して、第1参考形態による半導体レーザ装置およびそれを備えた半導体レーザの構造について説明する。
第1参考形態による半導体レーザ装置40を備えた半導体レーザでは、図2および図3に示すように、半導体レーザ素子50が、AuSnなどの導電性接着層60を介して、基台70に固定されている。なお、導電性接着層60は、本発明の「融着層」の一例である。また、基台70は、図2に示すように、AuSnなどの導電性接着層61を介して、金属製のステム80の本体部81に設けられた台座部82に固定されている。このステム80には、2つのリード端子83および84が設けられている。
また、半導体レーザ素子50の上面は、Auワイヤ90を用いて、ステム80のリード端子83にワイヤボンディングされている。また、基台70の上面70aは、Auワイヤ90を用いて、ステム80の台座部82にワイヤボンディングされている。また、ステム80の本体部81には、レーザ光が透過する窓付きの図示しないキャップが取り付けられている。
また、半導体レーザ素子50は、図4および図5に示すように、約200μmの幅(W1)と、約1000μmの長さ(L1)と、約100μmの厚み(t1)(図5参照)とを有する。
ここで、第1参考形態では、図3に示すように、半導体レーザ素子50は、基台70側に配置された基板100と、基台70とは反対側に配置された半導体レーザ素子部110とを含んでいる。なお、基板100は、本発明の「基板」の一例である。
具体的には、図5に示すように、窒化ガリウム、シリコンおよびシリコンカーバイトなどからなる基板100の上面上に、n型AlGaNクラッド層111、GaInNからなる活性層112およびp型AlGaNクラッド層113が形成されている。これらn型AlGaNクラッド層111、活性層112およびp型AlGaNクラッド層113によって、半導体レーザ素子部110が形成されている。なお、n型AlGaNクラッド層111、活性層112およびp型AlGaNクラッド層113は、本発明の「窒化物系半導体層」の一例である。また、p型AlGaNクラッド層113には、B方向に延びるリッジ部113aを形成することによって、導波路構造が形成されている。また、半導体レーザ素子部110のB方向の端部には、図3に示すように、光出射面(共振器面)110aおよび光反射面(共振器面)110bが形成されている。なお、光出射面110aは、本発明の「一方端部」および「光出射端」の一例であり、光反射面110bは、本発明の「他方端部」および「光反射端」の一例である。また、光出射面110a、光反射面110bおよび導波路構造によって、B方向に延びる共振器が構成されている。なお、光出射面110aおよび光反射面110b上には、図示しない誘電体多層膜が形成されている。また、図5に示すように、p型AlGaNクラッド層113のリッジ部113a以外の上面上には、SiOからなる絶縁膜114が形成されている。
また、基板100の下面上には、基板100の側から近い順にAl層、Pd層およびAu層が積層されたn側電極101が形成されている。なお、第1参考形態では、n側電極101の下面は、ダイボンド面である。また、p型AlGaNクラッド層113のリッジ部113aおよび絶縁膜114の上面上には、リッジ部113aおよび絶縁膜114から近い順にPt層、Pd層、Ti層、Pd層およびAu層が積層されたp側電極115が形成されている。
また、第1参考形態では、図3および図5に示すように、半導体レーザ素子50は、ヘテロ接合の添加元素の種類や量によって異なるが、共振器の延びる方向(B方向)に沿って約0.5μm〜約3μmの反りを有する。また、半導体レーザ素子部110は、基板100とは反対側の表面が凹状に形成されており、半導体レーザ素子50は、反りの凸側(基板100側)が基台70(図3参照)に固定されている。この半導体レーザ素子50の反りは、基板100と半導体レーザ素子部110との熱膨張係数差および格子定数差によって発生する。
具体的には、以下の表1に示すように、窒化ガリウムは、約5.59×10−6/Kのa軸方向の熱膨張係数を有するとともに、約3.189×10−10mのa軸方向の格子定数を有する。また、シリコンは、約2.6×10−6/Kのa軸方向の熱膨張係数を有するとともに、約5.43×10−10mのa軸方向の格子定数を有する。また、シリコンカーバイトは、約4.2×10−6/Kのa軸方向の熱膨張係数を有するとともに、約3.081×10−10mのa軸方向の格子定数を有する。また、AlGaNは、約4.15×10−6/K〜約5.59×10−6/Kのa軸方向の熱膨張係数を有するとともに、約3.112×10−10m〜約3.189×10−10mのa軸方向の格子定数を有する。また、GaInNは、約3.8×10−6/K〜約5.59×10−6/Kのa軸方向の熱膨張係数を有するとともに、約3.189×10−10m〜約3.533×10−10mのa軸方向の格子定数を有する。
Figure 0004573880
そして、基板100が窒化ガリウムからなる場合、半導体レーザ素子部110を構成するn型AlGaNクラッド層111およびp型AlGaNクラッド層113の格子定数が基板100の格子定数よりも小さいことに起因して、半導体レーザ素子50の基板100側が凸状になる(半導体レーザ素子部110側が凹状になる)ように反りが発生する。なお、活性層112は、基板100よりも大きい格子定数を有しているが、活性層112の厚みは、n型AlGaNクラッド層111およびp型AlGaNクラッド層113の厚みよりも小さいので、半導体レーザ素子50の基板100側が凸状になるように反りが発生する。その一方、基板100がシリコンまたはシリコンカーバイトからなる場合、半導体レーザ素子部110を構成するn型AlGaNクラッド層111、活性層112およびp型AlGaNクラッド層113の熱膨張係数が基板100の熱膨張係数よりも大きいことに起因して、半導体レーザ素子50の基板100側が凸状になる(半導体レーザ素子部110側が凹状になる)ように反りが発生する。なお、半導体レーザ素子50のB方向の反りは、半導体レーザ素子50のC方向(図5参照)に生じる反りよりも大きい。
また、第1参考形態では、図3に示すように、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離(導電性接着層60の厚み)H3は、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110b近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離(導電性接着層60の厚み)H4よりも小さい。第1参考形態では、半導体レーザ素子50が、光反射面110b近傍において導電性接着層60が約4μm〜約8μmの厚み(距離H4)を有する場合、光出射面110a近傍における導電性接着層60が約1μmの厚み(距離H3)を有するように基台70に固定されている。
また、半導体レーザ素子50の光出射面110a側は、基台70の上面70aと実質的に平行に配置されている。すなわち、半導体レーザ素子50は、光出射面110aから出射されるレーザ光の出射方向が、基台70の上面70aの延びる方向と実質的に平行になるように配置されている。
また、導電性接着層60は、半導体レーザ素子50と同じ幅(W1=約200μm)および長さ(L1=約1000μm)(図5参照)を有する。
また、基台70は、図4に示すように、約900μmの幅(W2)と、約1200μmの長さ(L2)と、約250μmの厚み(t2)(図3参照)とを有する。
また、基台70は、図3に示すように、SiCまたはAlNからなる基板70bを含んでいる。この基板70bの上面上および下面上の全面には、約100nmの厚みを有するTi層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約30nmの厚みを有するAu層からなる下地金属層70cが形成されている。この下地金属層70cは、導電性接着層60を基台70に接着するために設けられている。
次に、図2、図3および図5を参照して、第1参考形態による半導体レーザ装置およびそれを備えた半導体レーザの製造プロセスについて説明する。
まず、図5に示すように、基板100の上面上に、n型AlGaNクラッド層111、GaInNからなる活性層112およびp型AlGaNクラッド層113をエピタキシャル成長させることにより、半導体レーザ素子部110を形成する。そして、p型AlGaNクラッド層113に、B方向に延びるリッジ部113aを形成した後、p型AlGaNクラッド層113のリッジ部113a以外の上面上に、SiOからなる絶縁膜114を形成する。その後、基板100の下面上に、基板100の側から近い順にAl層、Pd層およびAu層を積層してn側電極101を形成するとともに、p型AlGaNクラッド層113のリッジ部113aおよび絶縁膜114の上面上に、リッジ部113aおよび絶縁膜114から近い順にPt層、Pd層、Ti層、Pd層およびAu層を積層してp側電極115を形成する。そして、半導体レーザ素子部110の共振器の光出射面110aおよび光反射面110b上に、図示しない誘電体多層膜を形成することによって、半導体レーザ素子50を形成する。このとき、第1参考形態では、基板100と半導体レーザ素子部110との熱膨張係数差および格子定数差に起因して、基板100側が凸状になる(半導体レーザ素子部110側が凹状になる)ように、半導体レーザ素子50に反りが発生する。
次に、第1参考形態では、図3に示すように、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離(導電性接着層60の厚み)H3(約1μm)が、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110b近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離(導電性接着層60の厚み)H4(約4μm〜約8μmの範囲)よりも小さくなるように、半導体レーザ素子50の反りの凸側(基板100側)を基台70にダイボンドする。このとき、同時に、基台70をステム80の台座部82(図2参照)に固定する。
具体的には、図2に示すように、窒素雰囲気中において、金属製のステム80の台座部82上に、導電性接着層61と、導電性接着層60が所定の領域に配置された基台70と、半導体レーザ素子50とを順に配置する。
そして、第1参考形態では、図3に示すように、ステム80(図2参照)を高温にするとともに、半導体レーザ素子50の光出射面110a近傍を、セラミック製のコレット120により導電性接着層60を介して基台70に押圧する。なお、コレット120は、本発明の「押圧部材」の一例である。このとき、半導体レーザ素子50の光出射面110a近傍をコレット120により押圧した状態では、コレット120により押圧された領域(半導体レーザ素子50の光出射面110a側)の液状の導電性接着層60は、コレット120により押圧されていない領域(半導体レーザ素子50の光反射面110b側)に移動して、光反射面110b側の半導体レーザ素子50と基台70との間に入り込む。なお、コレット120には、穴部120aが設けられており、穴部120aの内部を真空にすることにより半導体レーザ素子50を吸着することが可能である。
その後、図2に示すように、ステム80を冷却して導電性接着層60および61を固化することによって、半導体レーザ素子50が導電性接着層60を介して基台70に固定されるとともに、基台70が導電性接着層61を介してステム80の台座部82に固定される。
そして、半導体レーザ素子50の上面とステム80のリード端子83とを、Auワイヤ90を用いてワイヤボンディングすることにより接続するとともに、基台70の上面70aとステム80の台座部82とを、Auワイヤ90を用いてワイヤボンディングすることにより接続する。最後に、ステム80の本体部81に、レーザ光が透過する窓付きの図示しないキャップを取り付ける。
第1参考形態では、上記のように、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H3(約1μm)を、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110b近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H4(約4μm〜約8μmの範囲)よりも小さくすることによって、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H3が大きい場合に比べて、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H3のばらつき量を小さくすることができる。これにより、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110aから出射されるレーザ光の出射位置がばらつくのを抑制することができる。また、半導体レーザ素子50の反りの凸側(基板100側)を基台70に固定するとともに、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H3を、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110b近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H4よりも小さくすることによって、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a側を基台70の上面70aに実質的に平行に配置することができるので、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110aから出射されるレーザ光の出射方向が基台70の上面70aに対して上側に傾斜した状態で半導体レーザ素子50が配置されるのを抑制することができる。これにより、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110aから出射されるレーザ光の出射方向がばらつくのを抑制することができる。このように、半導体レーザ素子50から出射されるレーザ光の出射位置および出射方向がばらつくのを抑制することができるので、半導体レーザ装置40の組立歩留りを向上させることができる。また、共振器の延びる方向(B方向)に沿って反りを有する半導体レーザ素子50を基台70に固定することによって、反りを無くした状態で半導体レーザ素子50を基台70に固定する場合と異なり、半導体レーザ素子50内の応力が増加するのを抑制することができるので、レーザ特性が劣化したり、半導体レーザ素子50が破損するのを抑制することができる。
また、第1参考形態では、半導体レーザ素子50のB方向の反りが、半導体レーザ素子50のC方向の反りよりも大きいので、半導体レーザ素子50を基台70に接合した後の導電性接着層60の厚みなどを測定して、半導体レーザ素子50のレーザ光の出射方向(光出射面110aの位置)を容易に識別することができる。
また、第1参考形態では、半導体レーザ素子50の基板100側を、基台70に導電性接着層60を介して固定することによって、半導体レーザ素子50が、基板100とは反対側の表面が凹状の半導体レーザ素子部110を含む場合にも、容易に、半導体レーザ素子50から出射されるレーザ光の出射位置および出射方向がばらつくのを抑制することができる。
また、第1参考形態では、半導体レーザ素子50の光出射面110a近傍を、基台70にコレット120により押圧しながら導電性接着層60を介して固定することによって、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H3を、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110b近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H4よりも、容易に、小さくすることができる。
また、第1参考形態では、融着層として、導電性を有するAuSnなどからなる導電性接着層60を用いることによって、半導体レーザ素子50と基台70の上面70aに形成された下地金属層70cとを容易に導通させることができる。これにより、半導体レーザ素子50が接合されていない基台70の上面70aをワイヤボンディングのための領域として有効に利用することができる。
(第2参考形態)
図6は、本発明の第2参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための断面図である。図7は、本発明の第2参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための平面図である。図8は、図6に示した本発明の第2参考形態による半導体レーザ装置の基台の構造を説明するための平面図である。図6〜図8を参照して、この第2参考形態では、上記第1参考形態と異なり、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a側のみが、基台140に固定されている場合について説明する。
第2参考形態による半導体レーザ装置130では、図6および図7に示すように、上記第1参考形態と同様、半導体レーザ素子50が、AuSnなどの導電性接着層60a(図6参照)を介して、基台140に固定されている。また、基台140は、SiCまたはAlNからなる基板140bを含んでいる。なお、導電性接着層60aは、本発明の「融着層」の一例である。
ここで、第2参考形態では、基板140bの上面上の半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍の領域、および、基板140bの下面上の全面には、上記第1参考形態と同様の積層構造の下地金属層140cが形成されている。すなわち、第2参考形態では、図8に示すように、基板140bの上面の下地金属層140cは、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a(図6参照)近傍の領域に形成されている一方、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110b(図6参照)側の領域には形成されていない。ここで、AuSnなどからなる導電性接着層60aは、SiCまたはAlNからなる基板140bとほとんど接着しないので、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110b側は、基台140に固定されずに、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍のみが、基台140に導電性接着層60aを介して固定されている。
なお、第2参考形態による半導体レーザ装置130のその他の構造は、上記第1参考形態と同様である。
次に、図6〜図8を参照して、第2参考形態による半導体レーザ装置130の製造プロセスについて説明する。
まず、上記第1参考形態と同様の製造プロセスにより、半導体レーザ素子50を形成する。
次に、第2参考形態では、図6および図8に示すように、基板140bの上面の半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍の領域、および、基板140bの下面の全面に下地金属層140cが形成された基台140を準備する。
そして、図6および図7に示すように、上記第1参考形態と同様のプロセスを用いて、半導体レーザ素子50の反りの凸側(基板100側)を基台140にダイボンドする。
なお、第2参考形態のその他の製造プロセスは、上記第1参考形態の製造プロセスと同様である。
第2参考形態では、上記のように、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110b側を、基台140に固定せずに、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110a近傍のみを、基台140に導電性接着層60aを介して固定することによって、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110aから光反射面110bまでの全体を基台140に固定する場合と異なり、導電性接着層60aの硬化時の熱収縮により半導体レーザ素子50内の応力が増加するのを抑制することができるので、レーザ特性が劣化したり、半導体レーザ素子50が破損するのをより抑制することができる。
なお、第2参考形態のその他の効果は、上記第1参考形態と同様である。
(第3参考形態)
図9は、本発明の第3参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための断面図である。図9を参照して、この第3参考形態では、上記第1参考形態と異なり、光反射面110d近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離が、光出射面110c近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離よりも小さい場合について説明する。なお、光出射面110cは、本発明の「他方端部」の一例であり、光反射面110dは、本発明の「一方端部」の一例である。
ここで、第3参考形態では、図9に示すように、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110d近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離(導電性接着層60の厚み)H5は、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110c近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離(導電性接着層60の厚み)H6よりも小さい。第3参考形態では、半導体レーザ素子50が、光出射面110c近傍において導電性接着層60が約4μm〜約8μmの厚み(距離H6)を有する場合、光反射面110d近傍における導電性接着層60が約1μmの厚み(距離H5)を有するように基台70に固定されている。
なお、第3参考形態による半導体レーザ装置40のその他の構造および製造プロセスは、上記第1参考形態と同様である。
第3参考形態では、上記のように、半導体レーザ素子50の共振器の光反射面110d近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H5(約1μm)を、半導体レーザ素子50の共振器の光出射面110c近傍における半導体レーザ素子50と基台70との間の距離H6(約4μm〜約8μmの範囲)よりも小さくすることによって、半導体レーザ素子50は、導電性接着層60が半導体レーザ素子50の共振器方向(B方向)に沿って厚みが変化するように基台70に接合される。これにより、ダイボンド(接合)後の導電性接着層60の厚みを測定して、半導体レーザ素子50のレーザ光の出射方向(光出射面110cの位置)を容易に識別することができる。なお、第3参考形態のその他の効果は、上記第1参考形態と同様である。
第4参考形態)
図10および図11は、それぞれ、本発明の第4参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための断面図および平面図である。図10および図11を参照して、この第4参考形態では、上記第1参考形態と異なり、素子の幅方向(共振器の延びる方向と直交する方向)に反りを有する半導体レーザ素子95を基台70に固定する場合について説明する。
第4参考形態による半導体レーザ装置40を備えた半導体レーザでは、図10および図11に示すように、半導体レーザ素子95が、AuSnなどの導電性接着層60を介して、基台70に固定されている。また、半導体レーザ素子95は、約800μmの幅(W1)と、約700μmの長さ(L1)と、約100μmの厚み(t1)とを有する。また、基台70は、約900μmの幅(W2)と、約1200μmの長さ(L2)と、約250μmの厚み(t2)とを有する。
ここで、第4参考形態では、図10に示すように、半導体レーザ素子95は、共振器の延びる方向(B方向)と直交する方向(C方向)に沿って約0.5μm〜約3μmの反りを有する。また、半導体レーザ素子部110は、基板100とは反対側の表面が凹状に形成されており、半導体レーザ素子95は、反りの凸側(基板100側)が基台70に固定されている。なお、半導体レーザ素子95のC方向の反りは、半導体レーザ素子95のB方向に生じる反りよりも大きい。
また、第4参考形態では、図10に示すように、半導体レーザ素子95の共振器端面(光出射面110eまたは光反射面110f)に沿った方向(C方向)の一方端部95a近傍における半導体レーザ素子95と基台70との間の距離(導電性接着層60の厚み)H7は、半導体レーザ素子95のC方向の他方端部95b近傍における半導体レーザ素子95と基台70との間の距離(導電性接着層60の厚み)H8よりも小さい。第4参考形態では、半導体レーザ素子95が、他方端部95b近傍において導電性接着層60が約4μm〜約8μmの厚み(距離H8)を有する場合、一方端部95a近傍における導電性接着層60が約1μmの厚み(距離H7)を有するように基台70に固定されている。
なお、第4参考形態による半導体レーザ装置40のその他の構造および製造プロセスは、上記第1参考形態と同様である。
第4参考形態では、上記のように、半導体レーザ素子95のC方向の一方端部95a近傍における半導体レーザ素子95と基台70との間の距離H7(約1μm)を、半導体レーザ素子95のC方向の他方端部95b近傍における半導体レーザ素子95と基台70との間の距離H8(約4μm〜約8μmの範囲)よりも小さくすることによって、半導体レーザ素子95は、導電性接着層60が半導体レーザ素子95の幅方向(C方向)に沿って厚みが変化するように基台70に接合される。これにより、ダイボンド(接合)後の導電性接着層60の厚みを測定して、半導体レーザ素子95のレーザ光の出射方向(光出射面110eの位置)を容易に識別することができる。
(第参考形態)
図12は、本発明の第参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための正面図である。図13は、本発明の第参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための平面図である。図14は、図12に示した本発明の第参考形態による半導体レーザ装置の半導体レーザ素子の構造を説明するための斜視図である。図12〜図14を参照して、この第参考形態では、上記第1〜第4参考形態と異なり、半導体レーザ素子160の基板190側が凹状になる(半導体レーザ素子部200側が凸状になる)ように半導体レーザ素子160が反りを有する場合について説明する。
参考形態による半導体レーザ装置150では、図12および図13に示すように、半導体レーザ素子160が、AuSnなどの導電性接着層170aおよび170b(図12参照)を介して、基台180に固定されている。なお、導電性接着層170aおよび170bは、本発明の「融着層」の一例である。
ここで、第参考形態では、図12に示すように、半導体レーザ素子160は、基台180側に配置された半導体レーザ素子部200と、基台180とは反対側に配置された基板190とを含んでいる。なお、基板190は、本発明の「基板」の一例である。
具体的には、図14に示すように、サファイアからなる基板190の上面上に、n型AlGaNクラッド層201が形成されている。このn型AlGaNクラッド層201の上面上の一方側の領域には、GaInNからなる活性層202およびp型AlGaNクラッド層203が形成されている。これらn型AlGaNクラッド層201、活性層202およびp型AlGaNクラッド層203によって、半導体レーザ素子部200が形成されている。なお、n型AlGaNクラッド層201、活性層202およびp型AlGaNクラッド層203は、本発明の「窒化物系半導体層」の一例である。また、p型AlGaNクラッド層203には、B方向に延びるリッジ部203aを形成することによって、導波路構造が形成されている。また、半導体レーザ素子部200のB方向の端部には、光出射面(共振器面)200aおよび光反射面(共振器面)200b(図13参照)が形成されている。この光出射面200a、光反射面200bおよび導波路構造によって、B方向に延びる共振器が構成されている。なお、光出射面200aは、本発明の「一方端部」および「光出射端」の一例であり、光反射面200bは、本発明の「他方端部」および「光反射端」の一例である。また、n型AlGaNクラッド層201の上面上の所定の領域、および、p型AlGaNクラッド層203のリッジ部203a以外の上面上には、SiOからなる絶縁膜204が形成されている。
また、n型AlGaNクラッド層201の上面上の他方側の領域には、n型AlGaNクラッド層201の側から近い順にAl層、Pd層およびAu層が積層されたn側電極191が形成されている。また、p型AlGaNクラッド層203のリッジ部203aおよび絶縁膜204の上面上の所定の領域には、リッジ部203aおよび絶縁膜204から近い順にPt層、Pd層、Ti層、Pd層およびAu層が積層されたp側電極205が形成されている。なお、第4参考形態では、n側電極191およびp側電極205の上面は、ダイボンド面である。
また、第参考形態では、図14に示すように、半導体レーザ素子160は、ヘテロ接合の添加元素の種類や量によって異なるが、共振器の延びる方向(B方向)に沿って約1μm〜約3μmの反りを有する。また、半導体レーザ素子部200は、基板190とは反対側の表面が凸状に形成されており、半導体レーザ素子160は、反りの凸側(半導体レーザ素子部200側)が基台180(図12参照)に固定されている。この半導体レーザ素子160の反りは、基板190と半導体レーザ素子部200との熱膨張係数差および格子定数差によって発生する。
具体的には、サファイアは、以下の表2に示すように、約7.5×10−6/Kのa軸方向の熱膨張係数を有するとともに、約4.4759×10−10mのa軸方向の格子定数を有する。また、AlGaNは、上記表1に示したように、約4.15×10−6/K〜約5.59×10−6/Kのa軸方向の熱膨張係数を有するとともに、約3.112×10−10m〜約3.189×10−10mのa軸方向の格子定数を有する。また、GaInNは、上記表1に示したように、約3.8×10−6/K〜約5.59×10−6/Kのa軸方向の熱膨張係数を有するとともに、約3.189×10−10m〜約3.533×10−10mのa軸方向の格子定数を有する。
Figure 0004573880
そして、基板190がサファイアからなる場合、半導体レーザ素子部200を構成するn型AlGaNクラッド層201、活性層202およびp型AlGaNクラッド層203の熱膨張係数が基板190の熱膨張係数よりも小さいことに起因して、半導体レーザ素子160の基板190側が凹状になる(半導体レーザ素子部200側が凸状になる)ように反りが発生する。なお、窒化ガリウムからなる基板に、n型GaInNクラッド層、GaInNからなる活性層およびp型GaInNクラッド層を形成した場合、半導体レーザ素子部を構成するGaInNの格子定数(約3.189×10−10m〜約3.533×10−10m)が窒化ガリウムの格子定数(約3.189×10−10m)(表1参照)よりも大きいことに起因して、半導体レーザ素子の基板側が凹状になる(半導体レーザ素子部側が凸状になる)ように反りが発生する。なお、半導体レーザ素子160のB方向の反りは、半導体レーザ素子160のC方向に生じる反りよりも大きい。
また、半導体レーザ素子160の光出射面200a側は、上記第1および第2参考形態と同様、基台180の上面180a(図12参照)と実質的に平行に配置されている。
また、基台180は、図12に示すように、上記第1および第2参考形態と同様、SiCまたはAlNからなる基板180bを含んでいる。
また、第参考形態では、基板180bの上面上の一方側、および、一方側から所定の距離を隔てた他方側には、それぞれ、上記第1および第2参考形態と同様の積層構造の下地金属層180cおよび180dが形成されている。また、基板180bの下面上の全面には、上記第1および第2参考形態と同様の積層構造の下地金属層180eが形成されている。
また、第参考形態では、導電性接着層170aおよび170bは、互いに所定の間隔を隔てて配置されている。また、導電性接着層170aは、下地金属層180cとp側電極205との間に配置されているとともに、導電性接着層170bは、下地金属層180dとn側電極191との間に配置されている。
なお、第参考形態による半導体レーザ装置150のその他の構造は、上記第1参考形態と同様である。
次に、図12〜図14を参照して、第参考形態による半導体レーザ装置150の製造プロセスについて説明する。
まず、図14に示すように、基板190の上面上に、n型AlGaNクラッド層201を形成する。そして、n型AlGaNクラッド層201の上面上の一方側の領域に、GaInNからなる活性層202およびp型AlGaNクラッド層203をエピタキシャル成長させることにより、半導体レーザ素子部200を形成する。その後、p型AlGaNクラッド層203に、B方向に延びるリッジ部203aを形成する。そして、n型AlGaNクラッド層201の上面上の所定の領域、および、p型AlGaNクラッド層203のリッジ部203a以外の上面上に、SiOからなる絶縁膜204を形成する。その後、n型AlGaNクラッド層201の上面上の他方側の領域に、n型AlGaNクラッド層201の側から近い順にAl層、Pd層およびAu層を積層してn側電極191を形成するとともに、p型AlGaNクラッド層203のリッジ部203aおよび絶縁膜204の上面上の所定の領域に、リッジ部203aおよび絶縁膜204から近い順にPt層、Pd層、Ti層、Pd層およびAu層を積層してp側電極205を形成する。このとき、第4参考形態では、基板190と半導体レーザ素子部200との熱膨張係数差および格子定数差に起因して、基板190側が凹状になる(半導体レーザ素子部200側が凸状になる)ように、半導体レーザ素子160に反りが発生する。
次に、第参考形態では、図12および図13に示すように、基板180bの上面上の一方側および他方側に、それぞれ下地金属層180cおよび180dが形成されているとともに、下面上の全面に、下地金属層180eが形成された基台180を準備する。
そして、第参考形態では、半導体レーザ素子160の反りの凸側(半導体レーザ素子部200側)を、導電性接着層170aおよび170b(図12参照)を介して基台180にダイボンドする。このとき、p側電極205を、導電性接着層170aを介して下地金属層180cに固定するとともに、n側電極191を、導電性接着層170bを介して下地金属層180dに固定する。
なお、第参考形態のその他の製造プロセスは、上記第1参考形態の製造プロセスと同様である。
参考形態では、上記のように、半導体レーザ素子160の半導体レーザ素子部200側を、基台180に導電性接着層170aおよび170bを介して固定することによって、半導体レーザ素子160が、基板190とは反対側の表面が凸状の半導体レーザ素子部200を含む場合にも、容易に、半導体レーザ素子160から出射されるレーザ光の出射位置および出射方向がばらつくのを抑制することができる。
なお、第参考形態のその他の効果は、上記第1参考形態と同様である。
なお、今回開示された参考形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した参考形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第5参考形態では、半導体レーザ素子を基台に固定する際に、コレットを用いて半導体レーザ素子を基台に押圧した例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体レーザ素子を基台に固定する際に、コレット以外の部材を用いて半導体レーザ素子を基台に押圧してもよい。
また、上記第1〜第5参考形態では、半導体レーザ素子部を、窒化物系半導体層により構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体レーザ素子部を、窒化物系半導体層以外の層により構成してもよい。
また、上記第1〜第5参考形態では、半導体レーザ素子の光出射面側を、基台の上面と実質的に平行に配置した例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体レーザ素子の光出射面側を、基台の上面と実質的に平行に配置しなくてもよい。
また、上記第実施形態では、半導体レーザ素子160の反りの凸側(半導体レーザ素子部200側)が、共振器の延びる方向(B方向)の全ての領域にわたって基台180に固定された例について示したが、本発明はこれに限らず、上記第2実施形態における半導体レーザ素子部と基台との固定方法と同様に、半導体レーザ素子160の共振器の光出射面200a側近傍の所定領域のみを導電性接着層170aおよび170bを介して基台180に固定するようにしてもよい。
本発明の半導体レーザ装置の概略的な構造を説明するための断面図である。 本発明の第1参考形態による半導体レーザ装置を備えた半導体レーザの構造を説明するための斜視図である。 本発明の第1参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための断面図である。 本発明の第1参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための平面図である。 図3に示した本発明の第1参考形態による半導体レーザ装置の半導体レーザ素子の構造を説明するための斜視図である。 本発明の第2参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための断面図である。 本発明の第2参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための平面図である。 図6に示した本発明の第2参考形態による半導体レーザ装置の基台の構造を説明するための平面図である。 本発明の第3参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための断面図である。 本発明の第4参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための断面図である。 図10に示した本発明の第4参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための平面図である。 本発明の第参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための正面図である。 図12に示した本発明の第参考形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための平面図である。 図12に示した本発明の第参考形態による半導体レーザ装置の半導体レーザ素子の構造を説明するための斜視図である。
1、40、130、150 半導体レーザ装置
10、50、95、160 半導体レーザ素子
10a 一方端部
10b 他方端部
20、60、60a、170a、170b 導電性接着層(融着層)
30、70、140、180 基台
95a 一方端部
95b 他方端部
100、190 基板
110a、200a 光出射面(一方端部、光出射端)
110b、200b 光反射面(他方端部、光反射端)
110、200 半導体レーザ素子部
110c 光出射面(他方端部)
110d 光反射面(一方端部)
111、201 n型AlGaNクラッド層(窒化物系半導体層)
112、202 活性層(窒化物系半導体層)
113、203 p型AlGaNクラッド層(窒化物系半導体層)
120 コレット(押圧部材)

Claims (6)

  1. 共振器の延びる第1方向または前記第1方向と交差する第2方向の少なくとも一方に沿って反りを有する半導体レーザ素子と、
    前記半導体レーザ素子の反りの凸側が固定される基台とを備え、
    前記第1方向または前記第2方向のうちの反りの大きい前記第2方向における前記半導体レーザ素子の一方端部と前記基台との間の距離は、前記第2方向における前記半導体レーザ素子の他方端部と前記基台との間の距離よりも小さいとともに、前記他方端部の近傍は、前記基台に固定されずに、前記一方端部の近傍が、前記基台に融着層を介して固定されている、半導体レーザ装置。
  2. 前記半導体レーザ素子は、基板と、前記基板の表面上に形成されるとともに、前記基板とは反対側の表面が凹状の半導体レーザ素子部とを含み、
    前記半導体レーザ素子は、前記基板側が前記基台に融着層を介して固定されている、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  3. 前記半導体レーザ素子は、基板と、前記基板の表面上に形成されるとともに、前記基板とは反対側の表面が凸状の半導体レーザ素子部とを含み、
    前記半導体レーザ素子は、前記半導体レーザ素子部側が前記基台に融着層を介して固定されている、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  4. 前記半導体レーザ素子は、窒化物系半導体層を有する半導体レーザ素子部を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  5. 共振器の延びる第1方向または前記第1方向と交差する第2方向の少なくとも一方に沿って反りを有する半導体レーザ素子を形成する工程と、
    前記第1方向または前記第2方向のうちの反りの大きい前記第2方向における前記半導体レーザ素子の一方端部と基台との間の距離が、前記第2方向における前記半導体レーザ素子の他方端部と前記基台との間の距離よりも小さくなるとともに、前記他方端部の近傍は、前記基台に固定されずに、前記一方端部の近傍が、前記基台に融着層を介して固定されるように、前記半導体レーザ素子の反りの凸側を前記基台に固定する工程とを備えた、半導体レーザ装置の製造方法。
  6. 前記半導体レーザ素子を前記基台に固定する工程は、前記第2方向における前記半導体レーザ素子の中央部よりも前記一方端部側を、押圧部材により前記基台に押圧しながら融着層を介して固定する工程を含む、請求項に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
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