ところで、光ピックアップ装置において、適切に情報の記録及び/又は再生を行うためには、対物光学素子を通過した光束を光情報記録媒体(光ディスク)の情報記録面のトラック上に適切に集光させる必要があり、そのため、対物光学素子の位置調整を行うフォーカシング動作とトラッキング動作とが必要となっている。ここで、例えばDVD/CD互換タイプの一般的な光ピックアップ装置においては、共通に用いる対物光学素子についてフォーカシング動作とトラッキング動作とを行えば足り、そのアクチュエータは小型のタイプを用いることができた。
しかるに、特許文献1に示すごとく2つの対物光学素子を用いる場合には、それぞれについてフォーカシング動作とトラッキング動作とを行う必要が生じるが、別個にアクチュエータを設けて、それぞれ独立して駆動するようにすると、アクチュエータの数が増大して構成の複雑化や装置の大型化を招く。更に、一方の対物光学素子を使用しているときは、他方の対物光学素子は使用されないので、対物光学素子を独立して駆動する必要はないという実情もある。
そこで、2つの対物光学素子を共通する支持部材で保持し、共通のアクチュエータで駆動する構成が企画された。ところが、2つの対物光学素子を、共通する支持部材ごと駆動する構成では、慣性質量の増大に対して、レスポンス良くフォーカシング動作とトラッキング動作を実施するために、アクチュエータにはより大きな駆動力が要求されることとなる。大きな駆動力を得るには通電量が多くなるので、発熱量も大きくなり、発生した熱が支持部材を伝わって対物光学素子を加熱するという問題が明らかになった。
特に、2つの対物光学素子を、共通する支持部材で支持する場合、熱源をいずれの対物光学素子に対して等距離に配置することは困難であるから、少なくともいずれかの対物光学素子は、温度分布が生じる形で加熱されることとなる。ところが、対物光学素子の光学面や素子内部における温度分布が光軸に対して回転非対称であると、コマ収差が発生する。一方、対物光学素子の光学面や素子内部における温度分布が光軸に対して回転対称であっても、素子の外側から光軸に向かうにつれて温度勾配を有すると球面収差が生じる。このように、対物光学素子において光軸垂直方向及び/又は光軸方向における温度分布が生じ温度差が過大になると、光学面の熱膨張や屈折率変化を招き、適切な情報の記録及び/又は再生を阻害する収差劣化を生じさせる恐れがある。特に近年は、光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う速度を増大させる要求があり、これに応じるためにも、対物光学素子を通過した光束の収差劣化を適正に抑える必要がある。
本発明は、かかる問題点に鑑みて成されたものであり、2つの対物光学素子を用いて、異なる光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/再生を行える光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の光ピックアップ装置は、380nm以上450nm以下である波長λ1の第1光源と、波長λ2の第2光源と、第1の対物光学素子及び第2の対物光学素子を含む集光光学系とを有し、前記第1光源からの光束を厚さt1の保護層を介して第1光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって情報の記録及び/又は再生が可能であり、前記第2光源からの光束を厚さt2の保護層を介して第2光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって情報の記録及び/又は再生が可能であり、前記第1の対物光学素子の最大開口数は、前記第2の対物光学素子の最大開口数よりも大きい光ピックアップ装置であって、
前記第1の対物光学素子及び前記第2の対物光学素子は、アクチュエータによって駆動される、第1の部材から形成された支持部材により支持され、
前記第1の部材よりも断熱性が高い第2の部材を前記第1の対物光学素子の周囲のみに配置したことを特徴とする。
前記第1の対物光学素子と前記第2の対物光学素子が、例えばアクチュエータなどの熱源により加熱される場合に、第1の部材から形成された前記支持部材に別な特性の部材を取り付けることで、前記対物光学素子の光学面や素子内部における温度分布の偏りを抑制したり、最高温度を低下させることができる。より具体的には、前記第1の部材よりも断熱性が高い第2の部材を前記第1の対物光学素子の周囲のみに配置することで、前記第2の対物光学素子の最大開口数よりも大きい最大開口数を有する前記第1の対物光学素子の断熱効果を高め、その光学面や素子内部における温度分布を一様に近づけ、且つ最高温度を抑制することができ、それにより第1の対物光学素子を通過する光束における収差劣化を抑えて、第1光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる。なお、前記第2の部材は、前記第1の対物光学素子に接触させるように配置すると好ましいが、両者間に別な介在物を配置しても良い。
請求項2に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記第1の部材は、金属製であることを特徴とするので、耐熱性に優れており、また放熱効果を高めることができる。
請求項3に記載の光ピックアップ装置は、請求項2に記載の発明において、前記第1の部材は、アルミニウム合金又はマグネシウム合金であることを特徴とするので、軽量化を図ることができる。又、アルミニウム合金の表面にアルマイト被膜処理を行うと放熱効果を高めることができる。
請求項4に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記第1の部材は、第1の樹脂材から形成されていることを特徴とするので、樹脂の特性を活かして軽量化を図ることができる。
請求項5に記載の光ピックアップ装置は、請求項4に記載の発明において、前記第1の樹脂材は繊維状物質を含むことを特徴とするので、強度及び耐熱性を向上させることができる。特に、繊維状物質として炭素繊維や金属繊維などを用いた場合、熱伝導率を高めることができる。
請求項6に記載の光ピックアップ装置は、請求項4に記載の発明において、前記第1の部材は、液晶ポリマーから形成されていることを特徴とするので、耐熱性を高めることができる。液晶ポリマーとしては全芳香族ポリエステルが好ましく用いられ、強度向上のためガラス繊維を含有することが望ましい。液晶ポリマーについては、例えば特開2000−345028、特開平10−46007等に詳細が記載されている。
請求項7に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記液晶ポリマーが全芳香族ポリエステルであることを特徴とする。
請求項8に記載の光ピックアップ装置は、請求項4に記載の発明において、前記第1の部材がガラス繊維と液晶ポリマーとの複合体であることを特徴とする。
請求項9に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記支持部材は、外周もしくはその近傍に放熱フィンを有することを特徴とするので、放熱効果を高め、前記対物光学素子の最高温度を低減できる。
請求項10に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜9のいずれかに記載の発明において、前記支持部材の周囲に磁界を形成する磁界形成手段と、前記支持部材の周囲に接触する磁性流体とを有することを特徴とするので、前記磁性流体を介して放熱効果を高めることができる。磁性流体については、例えば特開2004−227679等に詳細が記載されている。
請求項11に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、前記第2の部材は、第2の樹脂材から形成されていることを特徴とするので、樹脂の特性を活かして軽量化を図ることができる。
請求項12に記載の光ピックアップ装置は、請求項11に記載の発明において、前記第2の樹脂材は、樹脂発泡体であることを特徴とするので、断熱効果に優れる。
請求項13に記載の光ピックアップ装置は、請求項11に記載の発明において、前記第2の部材は、シート材であることを特徴とするので、コンパクト化を図ることができる。
請求項14に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜13のいずれかに記載の発明において、前記第2の部材は、環状であることを特徴とするので、前記対物光学素子の周囲に嵌合させることができる。ここで、「環状」とは、周方向に連続している形状の他、いわゆるC字状のように一部が途切れた形状も含む。
請求項15に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜14のいずれかに記載の発明において、前記第1の対物光学素子と前記第2の対物光学素子との間に、前記第2の部材よりも熱伝導率が高い部位を設けたことを特徴とするので、その光学面や素子内部における温度分布の均一化を図ることができる。
請求項16に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜15のいずれかに記載の発明において、前記第2の対物光学素子を通過した前記第2光源からの光束を、厚さt3(t3>t1又はt3>t2)の保護層を介して第3光情報記録媒体の情報記録面に集光させることによって、情報の記録及び/又は再生を行うことを特徴とするので、高密度DVD、DVD、CDに対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる。
請求項17に記載の光ピックアップ装置は、請求項16に記載の発明において、前記第1光情報記録媒体はブルーレイディスクであり、前記第2光情報記録媒体はDVDであり、前記第3光情報記録媒体はCDであることを特徴とする。
請求項18に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜17のいずれかに記載の発明において、前記第1の対物光学素子は2つ以上の光学素子を有し、前記第2の対物光学素子は単一の光学素子を有していることを特徴とするので、比較的高い光学性能が要求される光情報記録媒体については、前記第1の対物光学素子を用いて情報の記録及び/又は再生を行い、光学性能の要求が比較的緩やかな光情報記録媒体については、前記第2の対物光学素子を用いて情報の記録及び/又は再生を行い、性能とコストとのバランスを図ることができる。
請求項19に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜18のいずれかに記載の発明において、前記第1の対物光学素子及び前記第2の対物光学素子のうち少なくとも一方は、粒径が30nm以下の無機微粒子を分散させた有機無機複合体から形成されていることを特徴とする。
有機無機複合体として例えば熱可塑性樹脂中に分散される無機微粒子としては特に限定はなく、得られる熱可塑性樹脂組成物の温度による屈折率の変化率(以後、|dn/dT|とする)が小さいという本発明の目的の達成を可能とする無機微粒子の中から任意に選択することができる。具体的には酸化物微粒子、金属塩微粒子、半導体微粒子などが好ましく用いられ、この中から、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものを適宜選択して使用することが好ましい。
本発明において用いられる酸化物微粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である金属酸化物を用いることができ、具体的には、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl2O4)等が挙げられる。また、本発明において用いられる酸化物微粒子として希土類酸化物を用いることもでき、具体的には酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。金属塩微粒子としては、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、具体的には炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
また、本発明における半導体微粒子とは、半導体結晶組成の微粒子を意味し、該半導体結晶組成の具体的な組成例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II,IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化錫(IV)(SnS2)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al2S3)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga2S3)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In2O3)、硫化インジウム(In2S3)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As2S3)、セレン化砒素(III)(As2Se3)、テルル化砒素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb2S3)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi2S3)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe3O4)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta2O5)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO2、Ti2O5、Ti2O3、Ti5O9等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2O4)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr2S4)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF2)15F15や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
一般的に熱可塑性樹脂のdn/dTは負の値を持つ、即ち温度の上昇に伴い屈折率が小さくなる。従って、熱可塑性樹脂組成物の|dn/dT|を効率的に小さくする為には、dn/dTが大きい微粒子を分散させることが好ましい。熱可塑性樹脂のdn/dTと同符号の値を持つ微粒子を用いる場合には、微粒子のdn/dTの絶対値が、母材となる熱可塑性樹脂のdn/dTよりも小さいことが好ましい。更に、母材となる熱可塑性樹脂のdn/dTと逆符号のdn/dTを有する微粒子、即ち、正の値のdn/dTを有する微粒子が好ましく用いられる。このような微粒子を熱可塑性樹脂に分散させることで、少ない量で効果的に熱可塑性樹脂組成物の|dn/dT|を小さくすることができる。分散される微粒子のdn/dTは、母材となる熱可塑性樹脂のdn/dTの値により適宜選択することができるが、一般的に光学素子に好ましく用いられる熱可塑性樹脂に微粒子を分散させる場合は、微粒子のdn/dTが−20×10-6よりも大きいことが好ましく、−10×10-6よりも大きいことが更に好ましい。dn/dTが大きい微粒子として、好ましくは、例えば、窒化ガリウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどが用いられる。
一方、熱可塑性樹脂に微粒子を分散させる際には、母材となる熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率の差が小さいことが望ましい。発明者らの検討の結果、熱可塑性樹脂と分散される微粒子の屈折率の差が小さいと、光を透過させた場合に散乱を起こし難いということがわかった。熱可塑性樹脂に微粒子を分散させる際、粒子が大きい程、光を透過させた時の散乱を起こしやすくなるが、熱可塑性樹脂と分散される微粒子の屈折率の差が小さいと、比較的大きな微粒子を用いても光の散乱が発生する度合いが小さいことを発見した。熱可塑性樹脂と分散される微粒子の屈折率の差は、0〜0.3の範囲であることが好ましく、更に0〜0.15の範囲であることが好ましい。
光学材料として好ましく用いられる熱可塑性樹脂の屈折率は、1.4〜1.6程度である場合が多く、これらの熱可塑性樹脂に分散させる材料としては、例えばシリカ(酸化ケイ素)、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物などが好ましく用いられる。
また、発明者らの研究により、比較的屈折率の低い微粒子を分散させることで、熱可塑性樹脂組成物のdn/dTを効果的に小さくすることができることがわかった。屈折率が低い微粒子を分散した熱可塑性樹脂組成物の|dn/dT|が小さくなる理由について、詳細はわかっていないものの、樹脂組成物における無機微粒子の体積分率の温度変化が、微粒子の屈折率が低いほど、樹脂組成物の|dn/dT|を小さくする方向に働くのではないかと考えられる。比較的屈折率が低い微粒子としては、例えばシリカ(酸化ケイ素)、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウムが好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂組成物のdn/dTの低減効果、光透過性、所望の屈折率等を全て同時に向上させることは困難であり、熱可塑性樹脂に分散させる微粒子は、熱可塑性樹脂組成物に求める特性に応じて、微粒子自体のdn/dTの大きさ、微粒子のdn/dTと母材となる熱可塑性樹脂のdn/dTとの差、及び微粒子の屈折率等を考慮して適宜選択することができる。更に、母材となる熱可塑性樹脂との相性、即ち、熱可塑性樹脂に対する分散性、散乱を引き起こし難い微粒子を適宜選択して用いることは、光透過性を維持する上で好ましい。
例えば、光学素子に好ましく用いられる環状オレフィンポリマーを母材として用いる場合、光透過性を維持しながら|dn/dT|を小さくする微粒子としては、シリカが好ましく用いられる。
上記の微粒子は、1種類の無機微粒子を用いてもよく、また複数種類の無機微粒子を併用してもよい。異なる性質を有する複数種類の微粒子を用いることで、必要とされる特性を更に効率よく向上させることもできる。
また、本発明に係る無機微粒子は、平均粒子径が1nm以上、30nm以下が好ましく、1nm以上、20nm以下がより好ましく、さらに好ましくは1nm以上、10nm以下である。平均粒子径が1nm未満の場合、無機微粒子の分散が困難になり所望の性能が得られない恐れがあることから、平均粒子径は1nm以上であることが好ましく、また平均粒子径が30nmを超えると、得られる熱可塑性材料組成物が濁るなどして透明性が低下し、光線透過率が70%未満となる恐れがあることから、平均粒子径は30nm以下であることが好ましい。ここでいう平均粒子径は各粒子を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値を言う。
さらに、無機微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状の微粒子が好適に用いられる。具体的には、粒子の最小径(微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最小値)/最大径(微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最大値)が0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。
また、粒子径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
請求項20に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜21のいずれかに記載の発明において、前記第1の対物光学素子及び前記第2の対物光学素子のうち少なくとも一方は、ガラスから形成されていることを特徴とするので、温度分布が生じても収差変化を抑えるような対物光学素子とすることができる。
本明細書中において、対物光学素子(対物レンズともいう)とは、狭義には光ピックアップ装置に光情報記録媒体を装填した状態において、最も光情報記録媒体側の位置で、これと対向すべく配置される集光作用を有する光学素子を指し、広義にはその光学素子と共に、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に作動可能な光学素子を指すものとする。
本発明によれば、2つの対物光学素子を用いて、異なる光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/再生を行える光ピックアップ装置を提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、光ディスクOD1〜OD2高密度DVD(第1の光ディスクともいう)、従来のDVD(第2の光ディスクともいう)及びCD(第3の光ディスクともいう)の全てに対して情報の記録/再生を行える、第1の実施の形態にかかる光ピックアップ装置の概略断面図である。なお、第1の対物レンズOBJ1の最大開口数は、第2の対物レンズOBJ2の最大開口数より大きい(後述する図2の実施の形態において同じ)。
図1に示すように、支持部材であるレンズホルダHDは、アクチュエータACTにより少なくとも2次元的に可動に支持されている。アクチュエータACTは、光ピックアップ装置のフレーム(不図示)に対して位置調整可能にアクチュエータべースACTBを介して取り付けられている。アクチュエータべースACTBは、不図示のアクチュエータにより図で左右方向に移動可能に保持されている。
第1の光ディスクOD1に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合について説明する。かかる場合、不図示のアクチュエータによりアクチュエーベースACTBが移動され、第1の対物レンズOBJ1の光軸が、λ/4波長板QWPの光軸と一致するようになっているものとする。図1において、第1の光源としての第1半導体レーザLD1(波長λ1=380nm〜450nm)から出射された光束は、ビームシェイパBSを通過することで光束の形状を補正された上で、第1コリメートレンズCL1に入射して平行光束となる。第1コリメートレンズCL1から出射した光束は、第1ダイクロイックプリズムDP1を通過し、光源から出射した光束を記録再生用のメインビームとトラッキングエラー信号検出用のサブビームに分離するための光学手段である回折格子Gを通過し、更に偏光ビームスプリッタPBS、エキスパンダーレンズEXP及び第2ダイクロイックプリズムDP2を通過する。
第2ダイクロイックプリズムDP2を通過した光束は、λ/4波長板QWPを通過して、第1の対物レンズOBJ1により集光されて、第1の光ディスクOD1の保護層(厚さt1=0.1〜0.7mm)を介してその情報記録面に集光されここに集光スポットを形成する。
そして情報記録面で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び第1の対物レンズOBJ1、λ/4波長板QWP1、第2ダイクロイックプリズムDP2、エキスパンダーレンズEXPを通過して、偏光ビームスプリッタPBSで反射され、更にセンサレンズSLを通過し、光検出器PDの受光面に入射するので、その出力信号を用いて、第1の光ディスクOD1に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、第1半導体レーザLD1からの光束を第1の光ディスクOD1の情報記録面に結像するように、第1の対物レンズOBJ1をレンズホルダHDごと移動させるように、アクチュエータACTを駆動する。
第2の光ディスクOD2に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合について説明する。かかる場合、不図示のアクチュエータによりアクチュエーベースACTBが移動され、第2の対物レンズOBJ2の光軸が、λ/4波長板QWPの光軸と一致するようになっているものとする。第2半導体レーザLD2(波長λ2=600nm〜700nm)から出射された光束は、第2コリメートレンズCL2に入射して平行光束となる。第2コリメートレンズCL2から出射した光束は第1ダイクロイックプリズムDP1で反射され、回折格子Gを通過し、更に偏光ビームスプリッタPBS及びエキスパンダーレンズEXP及び第2ダイクロイックプリズムDP2を通過する。
第2ダイクロイックプリズムDP2を通過した光束は、λ/4波長板QWPを通過して、第2の対物レンズOBJ2により集光されて、第2の光ディスクOD2の保護層(厚さt2=0.5〜0.7mm)を介してその情報記録面に集光されここに集光スポットを形成する。
そして情報記録面で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び第2の対物レンズOBJ2、λ/4波長板QWP、第2ダイクロイックプリズムDP2、エキスパンダーレンズEXPを通過し、偏光ビームスプリッタPBSで反射され、更にセンサレンズSLを通過し、光検出器PDの受光面に入射するので、その出力信号を用いて、第2の光ディスクOD2に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、第2半導体レーザLD2からの光束を第2の光ディスクOD2の情報記録面に結像するように、第2の対物レンズOBJ2をレンズホルダHDごと移動させるように、アクチュエータACTを駆動する。
第3半導体レーザLD3はホログラムレーザであり、光源であるレーザチップLCと光検出器PD3がパッケージ化されている。第3の光ディスクOD3に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合について説明する。かかる場合、不図示のアクチュエータによりアクチュエーベースACTBが移動され、第2の対物レンズOBJ2の光軸が、λ/4波長板QWPの光軸と一致するようになっているものとする。
第3半導体レーザLD3(波長λ3=700nm〜800nm)のレーザチップLCから出射された光束は、第3コリメートレンズCL3を通過して平行光束となった後、第2ダイクロイックプリズムDP2で反射された後、λ/4波長板QWPを通過し、第2の対物レンズOBJ2により集光されて、第3の光ディスクOD3の保護層(厚さt3=1.1〜1.3mm)を介してその情報記録面に集光されここに集光スポットを形成する。
そして情報記録面で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び第2の対物レンズOBJ2、λ/4波長板QWPを通過し、第2ダイクロイックプリズムDP2で反射され、更に第3コリメートレンズCL3により集光されて第3半導体レーザLD3内の光検出器PD3の受光面に入射するので、その出力信号を用いて、第3の光ディスクOD3に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、第3光検出器PD3上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、第3半導体レーザLD3からの光束を第3の光ディスクOD3の情報記録面上に結像するように、第2の対物レンズOBJ2をレンズホルダHDごと移動させるように、アクチュエータACTを駆動する。
図2は、高密度DVD(第1の光ディスクともいう)、従来のDVD(第2の光ディスクともいう)及びCD(第3の光ディスクともいう)の全てに対して情報の記録/再生を行える、第2の実施の形態にかかる光ピックアップ装置の概略断面図である。
図2に示すように、支持部材であるレンズホルダHDは、アクチュエータACTにより少なくとも2次元的に可動に支持されている。アクチュエータACTは、光ピックアップ装置のフレーム(不図示)に対して、アクチュエータべースACTBを介して取り付けられている。
第1の光ディスクOD1に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合について説明する。図2において、第1の光源としての第1半導体レーザLD1(波長λ1=380nm〜450nm)から出射された光束は、ビームシェイパBSを通過することで光束の形状を補正された上で、第1コリメートレンズCL1に入射して平行光束となる。第1コリメートレンズCL1から出射した光束は、第1ダイクロイックプリズムDP1を通過し、光源から出射した光束を記録再生用のメインビームとトラッキングエラー信号検出用のサブビームに分離するための光学手段である回折格子Gを通過し、更に偏光ビームスプリッタPBS、エキスパンダーレンズEXP及び第2ダイクロイックプリズムDP2、λ/4波長板QWPを通過し、第3ダイクロイックプリズムDP3で反射される。
第3ダイクロイックプリズムDP3で反射された光束は、第1の対物レンズOBJ1により集光されて、第1の光ディスクOD1の保護層(厚さt1=0.1〜0.7mm)を介してその情報記録面に集光されここに集光スポットを形成する。
そして情報記録面で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び第1の対物レンズOBJ1を通過し、第3ダイクロイックプリズムDP3で反射され、λ/4波長板QWP1、第2ダイクロイックプリズムDP2、エキスパンダーレンズEXPを通過して、偏光ビームスプリッタPBSで反射され、更にセンサレンズSLを通過し、光検出器PDの受光面に入射するので、その出力信号を用いて、第1の光ディスクOD1に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、第1半導体レーザLD1からの光束を第1の光ディスクOD1の情報記録面に結像するように、第1の対物レンズOBJ1をレンズホルダHDごと移動させるように、アクチュエータACTを駆動する。
第2の光ディスクOD2に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合について説明する。第2半導体レーザLD2(波長λ2=600nm〜700nm)から出射された光束は、第2コリメートレンズCL2に入射して平行光束となる。第2コリメートレンズCL2から出射した光束は、第1ダイクロイックプリズムDP1で反射され、回折格子Gを通過し、更に偏光ビームスプリッタPBS及びエキスパンダーレンズEXP及び第2ダイクロイックプリズムDP2、λ/4波長板QWP、第3ダイクロイックプリズムDP3を通過し、ミラーMで反射される。
ミラーMで反射された光束は、第2の対物レンズOBJ2により集光されて、第2の光ディスクOD2の保護層(厚さt2=0.5〜0.7mm)を介してその情報記録面に集光されここに集光スポットを形成する。
そして情報記録面で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び第2の対物レンズOBJ2を通過し、ミラーMで反射され、第3ダイクロイックプリズムDP3、λ/4波長板QWP、第2ダイクロイックプリズムDP2、エキスパンダーレンズEXPを通過し、偏光ビームスプリッタPBSで反射され、更にセンサレンズSLを通過し、光検出器PDの受光面に入射するので、その出力信号を用いて、第2の光ディスクOD2に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、第2半導体レーザLD2からの光束を第2の光ディスクOD2の情報記録面に結像するように、第2の対物レンズOBJ2をレンズホルダHDごと移動させるように、アクチュエータACTを駆動する。
第3半導体レーザLD3はホログラムレーザであり、光源であるレーザチップLCと光検出器PD3がパッケージ化されている。第3の光ディスクOD3に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合について説明する。
第3半導体レーザLD3(波長λ3=700nm〜800nm)のレーザチップLCから出射された光束は、第3コリメートレンズCL3を通過して平行光束とされ、更に第2ダイクロイックプリズムDP2で反射された後、λ/4波長板QWP及び第3ダイクロイックプリズムDP3を通過し、ミラーMで反射され、第2の対物レンズOBJ2により集光されて、第3の光ディスクOD3の保護層(厚さt3=1.1〜1.3mm)を介してその情報記録面に集光されここに集光スポットを形成する。
そして情報記録面で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び第2の対物レンズOBJ2を通過し、ミラーMで反射され、第3ダイクロイックプリズムDP3、λ/4波長板QWPを通過し、第2ダイクロイックプリズムDP2で反射され、更に第3コリメートレンズCL3により集光されて第3半導体レーザLD3内の光検出器PD3の受光面に入射するので、その出力信号を用いて、第3の光ディスクOD3に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、第3光検出器PD3上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、第3半導体レーザLD3からの光束を第3の光ディスクOD3の情報記録面上に結像するように、第2の対物レンズOBJ2をレンズホルダHDごと移動させるように、アクチュエータACTを駆動する。
以上の実施の形態では、第1の対物レンズOBJ1を用いてブルーレイディスク又はHD DVDに対して情報の記録及び/又は再生を行い、第2の対物レンズOBJ2を用いて、DVD及びCDに対して情報の記録及び/又は再生を行うようにしているが、第1の対物レンズOBJ1を用いてブルーレイディスク、DVD及びCDに対して情報の記録及び/又は再生を行い、第2の対物レンズOBJ2を用いて、HD DVDに対して情報の記録及び/又は再生を行うようにしてもよい。その場合、波長λ1の光束は、第1の対物レンズOBJ1と第2の対物レンズOBJ2のいずれにも入射する構成となる。
図3は、上述した実施の形態に用いることができる対物レンズユニットOUの分解斜視図である。対物レンズユニットOUは、対物レンズOBJ1及び対物レンズOBJ2と、この対物レンズOBJ1,OBJ2を保持するレンズホルダ(支持部材ともいう)HDと、このレンズホルダHDの外周に形成され、フォーカシングアクチュエータの構成要素であるフォーカシングコイルFCと、レンズホルダHDの長手方向の両端に配置され、トラッキングアクチュエータの構成要素であるトラッキングコイルTCとを備える。なお、レンズホルダHDは、不図示のワイヤによってヘッド本体側に対し微小変位可能に支持されており、マグネット若しくはヨーク(不図示)に対向してトラッキングコイルTCが適所に配置されるようになっている。また、対物レンズユニットOUは、上記マグネット等によって形成された磁界中に配置された各コイルFC、TCに通電することによって、レンズホルダHDを対物レンズOBJ1,OBJ2とともに光軸に平行なZ方向やこれに垂直なX方向に対して所望量だけ移動させるコイル駆動回路(不図示)を備える。
対物レンズOBJ1,OBJ2は、プラスチック製の両凸レンズであり、円形の対物レンズ本体b1、b2の外周に環状のフランジ部f1、f2を有する。なお、対物レンズ本b1、b2に設けた一対の光学面は、例えば非球面等からなるものとすることができるが、単なる曲面に限定されるものではない。例えば、CD、DVD、高密度光ディスク等の複数規格に対して情報の再生・記録が可能な互換型の光ヘッドの場合には、対物レンズ本体b1、b2の光学面を回折構造或いは光路差付与構造を有するものとすることができる。さらに、これらの光学面は、特殊な輪帯構造に分割することもできる。
炭素繊維又はガラス繊維等を含む樹脂製のレンズホルダ(第1の部材ともいう)HDは、大径の開口部a1と小径の開口部a2を、長手方向に並べて形成している。開口部a1内には、レンズホルダHDの素材よりも断熱性が高い発泡樹脂からなる略円筒状の保持体(第2の部材ともいう)HBが嵌合配置されている。保持体HBは、中央に開口部a1’を有している。開口部a1’、a2の内径は、対物レンズのフランジ部f1、f2の外径に等しいか、より大きいと好ましい。又、開口部a1’、a2の内周には、半径方向内方に環状に張り出した保持部h1,h2が形成されている。保持部h1,h2の上面にフランジ部f1,f2を当接した状態で、対物レンズOBJ1,OBJ2は、接着剤などを用いて保持体HBとレンズホルダHDにそれぞれ取り付けられている。
本例によれば、熱源となるトラッキングコイルTC及びフォーカシングコイルFCから発生した熱は、レンズホルダHDに伝達されるが、断熱性が高い保持体HBにより熱伝導が抑制されるので、トラッキングコイルTC及びフォーカシングコイルFCに近い側の対物レンズOBJ1における光学面は加熱が抑制され、光学面や素子内部における温度分布の均一化を図ることができる。又、対物レンズOBJ1を断熱性が高い保持体HBにより保持することで、急激な温度変化を抑制できるので、外乱に対する抵抗力を高めることができる。
図4は、別な例にかかる対物レンズユニットOUの斜視図であり、対物レンズOBJ1,OBJ2はレンズホルダHDに組み込まれている。図3の例では、収差劣化に対する許容度が低い対物レンズOBJ1のみを、第2の部材である保持体HBを介して保持しているが、本例では、2つの対物レンズOBJ1、OBJ2を共通する保持体HBで保持している。
より具体的には、樹脂製のレンズホルダHDは、長手方向に伸びた長穴状の開口部a3を形成している。開口部a3内には、レンズホルダHDの素材よりも断熱性が高い発泡樹脂からなる略円筒状の保持体HBが嵌合配置されている。第2の部材である保持体HBは、中央に開口部a1’、a2’を有している。開口部a1’、a2’の内径は、対物レンズのフランジ部f1、f2の外径に等しいか、より大きいと好ましい。又、開口部a1’、a2’の内周に環状に張り出した保持部(不図示)の上面に、フランジ部f1,f2を当接した状態で、対物レンズOBJ1,OBJ2が、接着剤などを用いて保持体HBに取り付けられている。
本例によれば、熱源となるトラッキングコイルTC及びフォーカシングコイルFCから発生した熱は、レンズホルダHDに伝達されるが、断熱性が高い保持体HBにより熱伝導が抑制されるので、トラッキングコイルTC及びフォーカシングコイルFCに近い側の対物レンズOBJ1、OBJ2における光学面は加熱が抑制され、光学面や素子内部における温度分布の均一化を図ることができる。又、対物レンズOBJ1、OBJ2を断熱性が高い保持体HBにより保持することで、急激な温度変化を抑制できるので、外乱に対する抵抗力を高めることができる。
図5は、更に別な例にかかる対物レンズユニットOUの斜視図であり、対物レンズOBJ1,OBJ2はレンズホルダHDに組み込まれている。図4の例では、2つの対物レンズOBJ1、OBJ2を、共通する保持体HBを介して保持しているが、本例では、2つの対物レンズOBJ1、OBJ2を、保持体HB1,HB2で個々に保持している。又、樹脂製のレンズホルダHDには、その素材よりも熱伝導性が高いアルミニウム合金など金属製の伝熱部材(第3の部材ともいう)t1がインサート成形されている。
より具体的には、樹脂製のレンズホルダHDは、開口部a1と開口部a2を、長手方向に並べて形成している。開口部a1内には、レンズホルダHDの素材よりも断熱性が高い発泡樹脂からなる略円筒状の保持体HB1が嵌合配置されており、開口部a2内には、レンズホルダHDの素材よりも断熱性が高い発泡樹脂からなる略円筒状の保持体HB2が嵌合配置されている。第2の部材である保持体HB1,HB2は、中央に開口部a1’、a2’をそれぞれ有している。開口部a1’、a2’の内径は、対物レンズのフランジ部f1、f2の外径に等しいか、より大きいと好ましい。又、開口部a1’、a2’の内周に環状に張り出した保持部(不図示)の上面にフランジ部f1,f2を当接した状態で、対物レンズOBJ1,OBJ2は、接着剤などを用いて保持体HB1,HB2にそれぞれ取り付けられている。
伝熱部材t1は、レンズホルダHDを上面から見て、開口部a1と開口部a2を仕切るようにして、略H字状に配置されており、従って、その一部は対物レンズOBJ1,OBJ2の間に配置されている。
本例によれば、熱源となるトラッキングコイルTC及びフォーカシングコイルFCから発生した熱は、伝熱部材t1を介して対物レンズOBJ1,OBJ2の周囲に均等に伝達され、更に、断熱性が高い保持体HB1,HB2により熱伝導が抑制されるので、トラッキングコイルTC及びフォーカシングコイルFCに近い側の対物レンズOBJ1、OBJ2における光学面は加熱が抑制され、光学面や素子内部における温度分布の均一化を図ることができる。又、対物レンズOBJ1、OBJ2を断熱性が高い保持体HB1,HB2により保持することで、急激な温度変化を抑制できるので、外乱に対する抵抗力を高めることができる。
図6は、別な例にかかる対物レンズユニットOUの斜視図であり、対物レンズOBJ1,OBJ2はレンズホルダHDに組み込まれている。本例は、図3に示す例に対物レンズユニットに対し、レンズホルダHDの上面と下面において、周縁に沿って延在する薄壁状のフィンfnを形成している点のみが異なる。レンズホルダHDの周囲に配置されたトラッキングコイルTC及びフォーカシングコイルFCからの熱の一部は、フィンfnを介して放熱されるので、対物レンズOBJ1,OBJ2における光学面の加熱が抑制されることとなる。特に、レンズホルダHDに近接して光ディスクが回転している際に生じる風流を用いることで、フィンfnの放熱効果を高めることができる。なお、本例を、図4,5に示す例と組み合わせて用いることができることはいうまでもない。
図7は、別なレンズホルダHDを対物レンズOBJ1,OBJ2の光軸を含む面で切断して示す図である。本例においては、レンズホルダHDの開口a1,a2の内周下方部に、縮径した段部s1,s2が形成されている。段部s1,s2と、対物レンズOBJ1,OBJ2のフランジ部f1,f2との間には、レンズホルダHDの素材よりも断熱性が高い発泡樹脂からなるドーナツ円盤状の断熱シート材(第2の部材ともいう、図8において同じ)CS1,CS2がそれぞれ配置されている。フランジ部f1,f2の側面は、開口a1、a2に接触しないようにして配置され、更に不図示の接着剤を用いてレンズホルダHDに対物レンズOBJ1,OBJ2を接着することができる。ここで、対物レンズOBJ1,OBJ2のフランジ部f1,f2と段部s1,s2との間に、断熱シート材CS1,CS2が配置されているので、それによりトラッキングコイルTC等からの熱を遮熱できるため、対物レンズOBJ1,OBJ2における光学面の加熱が抑制されることとなる。なお、断熱シート材CS1,CS2は、完全な環状でなく、周方向の一部が途切れていても良い。
図8は、更に別なレンズホルダHDを対物レンズOBJ1,OBJ2の光軸を含む面で切断して示す図である。本例は、図7に示す対物レンズユニットに対して、ドーナツ円盤状のシートの外周縁に薄肉円管を接続した形状の断熱シート材CS1,CS2が設けられている。即ち、フランジ部f1,f2の側面は、開口a1、a2に対して、断熱シート材CS1,CS2の側壁を介して接触し、その下面は、段部s1,s2に対して、断熱シート材CS1,CS2の底壁を介して接触しているので、それによりトラッキングコイルTC等からの熱を遮熱できるため、対物レンズOBJ1,OBJ2における光学面の加熱が抑制されることとなる。
図9は、更に別なレンズホルダHDを対物レンズOBJ1,OBJ2の光軸を含む面で切断して示す図である。本例は、図7に示す対物レンズユニットに対して、対物レンズOBJ1,OBJ2のフランジ部f1,f2を、レンズホルダHDの段部s1,s2に直接接触させているが、トラッキングコイルTCとレンズホルダHDとの間に、レンズホルダHDの素材(例えば樹脂)よりも放熱性が高い(例えば金属製の)放熱部材(第4の部材ともいう)RBが配置されている。トラッキングコイルTCから発生した熱は、レンズホルダHDに伝達される前に放熱部材RBを介して空気中に放出されるので、対物レンズOBJ1,OBJ2における光学面の加熱が抑制されることとなる。
図10は、レンズホルダHDを、第2の対物レンズを含まず第1の対物レンズOBJ1の光軸を含む面で切断して示す図である。本実施の形態において、第1の対物レンズOBJ1は、複数の光学素子OE1,OE2とからなるが、不図示の第2の対物レンズは単玉である。対物レンズユニットOUの可動部は、レンズホルダHDと、それに取り付けられた磁石MGを含む。複数の弾性材料SPGにより可動部がx、z方向に可動な状態でアクチュエータベースACTBに固定されている。一方、アクチュエータベースACTBには磁性体で形成されたヨークYKが支持され、ヨークYKにはコイルCLが巻かれている。磁性流体MLは、磁石MGとコイルCLとの隙間に配設され、磁石MGとヨークYKとの間に発生している磁界により保持されている。このとき磁性流体MLは空気よりも熱伝導率が例えば4倍以上であるが、レンズホルダHDの素材より放熱性が高いものを用いる。磁石MGとコイルCLとヨークYKで、磁界形成手段又はアクチュエータを構成する。又、本例では磁石MGは、レンズホルダHDに取り付けられて支持部材の一部を構成する。
動作時に、磁石MGで発生した熱は、磁性流体MLを介してコイルCL側に逃がすことができる。このとき、磁性流体MLは液体状であるので、可動部の微少可動の弊害とならず、また磁石MGおよびヨークYKの間隙に発生する磁界の方向に影響を与えないため、可動部のアクチュエータ動作に悪影響を与えない。また、可動部は移動する際に、x、z方向のみ可動するため、磁石MGおよびコイルCLの間隙の距離は変化しない。このため可動部が動作中に、ジュール熱が伝導する磁性流体中の距離は変化しないため、対物レンズユニットOUの放熱特性は安定する。
更に図11は、別な形態のレンズユニットOU’の斜視図である。図11に示されるレンズユニットOU’は、図1、2の光ピックアップ装置に配置することができ、半導体レーザからのレーザ光を、異なる光ディスクの情報記録面上にそれぞれ集光する対物レンズOBJ1(第1の対物光学素子)、OBJ2(第2の対物光学素子)と、これらの対物レンズOBJ1,OBJ2の光軸を,同一円周PC上に保持するレンズホルダ(支持部材)HDと、このレンズホルダHDを円周PCの中心軸の位置に設けられた支軸SHを介して回転自在に且つこの回転の中心軸に沿って往復移動自在に保持するアクチュエータベースACTBと、レンズホルダHDを支軸SHに沿った方向に往復移動させるフォーカシングアクチュエータ(図示略)と、レンズホルダHDに回転動作を付勢して各対物レンズOBJ1,OBJ2の位置決めを行うトラッキングアクチュエータTAとを備えている。このレンズユニットOU’には、各アクチュエータの動作制御を行う動作制御回路(図示略)が設けられている。
対物レンズOBJ1,OBJ2は、それぞれ円板状のレンズホルダHDの平板面を貫通した孔部に装備されており、レンズホルダHDの中心からそれぞれ等しい距離で配設されている。このレンズホルダHDは、その中心部でアクチュエータベースACTBから立設された支軸SHの上端部と回転自在に係合しており、この支軸SHの下方には、図示を省略したフォーカシングアクチュエータが配設されている。
即ち、このフォーカシングアクチュエータは、支軸SHの下端部に設けられた永久磁石とこの周囲に設けられたコイルとにより電磁ソレノイドを構成し、コイルに流す電流を調節することにより、支軸SH及びレンズホルダHDに対して当該支軸SHに沿った方向(図11における上下方向)への微小単位での往復移動を付勢し,焦点距離の調整を行うようになっている。
また、前述したようにこのレンズホルダHDは、トラッキングアクチュエータTAによって、光軸と平行な軸線を有する支軸SHを中心とした回動動作が付与される。このトラッキングアクチュエータTAは、レンズホルダHDの端縁部に支軸SHを挟んで対称に設けられた一対のトラッキングコイルTCA,TCBと、レンズホルダHDの端縁部に近接してアクチュエータベースACTB上の支軸SHを挟んで対称となる位置にそれぞれ設けられた二組の対を成すマグネットMGA,MGB,MGC,MGDとを備えている。
そして、トラッキングコイルTCA,TCBが、一方の対を成すマグネットMGA,MGBと個々に対向するときには、対物レンズOBJ1がレーザ光の光路上となるように、マグネットMGA,MGBの位置が設定されており、また、マグネットMGC,MGDと個々に対向するときには、対物レンズOBJ2がレーザ光の光路上となるように、マグネットMGC,MGDの位置が設定されている。
また、上述のレンズホルダHDには、トラッキングコイルTCAとマグネットMGB又はマグネットMGD,及びトラッキングコイルTCBとマグネットTGA又はマグネットTGCとが対向することがないように、その回動範囲を制限する図示しないストッパが設けられている。
さらに、トラッキングアクチュエータTAは、円形のレンズホルダHDの外周の接線方向が光ディスクのトラックの接線方向と直交するように配設され、このレンズホルダHDに微小単位で回動動作を付勢することによりレーザ光のトラックに対する照射位置のズレの補正を行うためのものである。そのため、このトラッキング動作を行うために、例えば、各トラッキングコイルTCA、TCBが各マグネットMGA,MGBと対向した状態を保持しながら微妙にレンズホルダHDに回動を付勢する必要が生じる。
かかるトラッキング動作を行うために、各トラッキングコイルTCA,TCBには、その内側に鉄片が装備されており、この鉄片が各マグネットに引き寄せられながら、これら各マグネットとの間に微妙な斥力を生じるように各トラッキングコイルTCA,TCBに電流を流す制御が動作制御回路によって行われる構成となっている。
本例においては、対物レンズOBJ1とレンズホルダ(第1の部材ともいう)HDの間に、レンズホルダHDの素材よりも断熱性が高い発泡樹脂からなる略円筒状の保持体(第2の部材ともいう)HBを設けているので、トラッキングコイルTCA,TCBからの熱が、対物レンズOBJ1,OBJ2に伝わることを抑制している。なお、本例に図4〜11に示す構造を付加することもできる。
以上述べた実施の形態において、対物レンズOBJ1,OBJ2の少なくとも一方を、dn/dTが8×10-5未満である、粒径が30nm以下の無機微粒子を分散させたプラスチック樹脂から形成しても良い。或いは、対物レンズOBJ1,OBJ2の少なくとも一方を、dn/dTが5×10-5未満であるガラスから形成しても良い。かかる場合、通常のプラスチックレンズに比べ、dn/dTが小さくなるので、光学面や素子内部における温度分布に偏りが生じた場合でも、その局所的な屈折率変化を抑えることで、いずれの光ディスクに対しても適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる。レンズホルダHDは、3つ以上の対物レンズを保持するようにしても良い。
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、レンズホルダの素材は樹脂に限らず、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の金属を用いることもできる。いずれかの対物レンズが複数の光学素子からなる場合、熱源に近い一つの光学素子における光学面の温度と、残りの光学素子の光学面の温度とが顕著に異なる場合にも、本発明は適用可能である。