JP4573049B2 - 窒化ガリウム結晶、窒化ガリウム基板及び半導体レーザデバイス - Google Patents

窒化ガリウム結晶、窒化ガリウム基板及び半導体レーザデバイス Download PDF

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Description

本発明は、3−5族窒化物系半導体からなる青色発光ダイオード(LED)や青色半導体レーザ(LD)など青色発光素子の基板として利用できる単結晶窒化ガリウム(GaN)基板、および単結晶窒化ガリウム基板(GaN)の成長方法、単結晶窒化ガリウム基板(GaN)の製造方法に関する。
窒化物系半導体(InGaN、GaN)を用いた発光素子は青色LEDとして既に実用化され利用されている。しかし広い面積をもつGaN基板を得る事ができないので、殆どの場合基板としては絶縁性のサファイヤ(α−Al)が用いられる。サファイヤの三回対称面の上にGaNやInGaNの薄膜をヘテロエピタキシャル成長させてLED構造を製造する。またSiC基板を用いたGaN系のLEDも提案され、一部実用に至っている。サファイヤ基板上に製作したGaInN系の青色LEDは転位密度が10〜1010cm−2もあるのに発光ししかも劣化せず長寿命である。
サファイヤは製造容易で入手しやすく廉価である。化学的に安定で物理的にも堅牢な結晶であるから発光素子の基板としては好適である。青色LEDの基板としては実績もあり将来もサファイヤ基板が利用され続けることであろう。
しかしながらサファイヤ基板の発光素子にはいくつかの欠点がある。劈開性を欠き、絶縁性であるということである。劈開がないとチップ切り出しに問題が生ずる。サファイヤウエハの上にウエハプロセスによって多数のLEDを製作したあとチップ毎に切り出すとき自然劈開を利用できない。刃物によってチップ毎に切断(ダイシングという)しなければならない。だから歩留まりが低く、コスト高になる。
絶縁性であるから電流を基板に通すことができない。つまりn型電極(カソード)を基板の底面に付けることができない。そこでサファイヤ基板の上に厚いn型のGaN層を作製し、その上にエピ成長によってInGaN系のLED構造を作り、上頂部のp−GaN薄膜から最下層のn−GaNにいたるまで一部をエッチング除去してn型部分を露呈しここへn電極(カソード)を付け、残った部分の上頂部p−GaNにp電極を付けるという構造になっている。n−GaNはかなり厚い導電性の高いものとしなければならない。電極が二つとも上面になりワイヤボンディングを二回しなければならない。そのような理由で工程が増え製造時間も増える。またn電極が発光面積を削減するから、発光面積が狭くなる。逆に言えば所定の発光量を得るためのチップ面積は広いものになる。それでコスト高になる傾向がある。
これらはLEDの基板としての欠点であるが、半導体レーザ(LD)とする場合は劈開がないからレーザの共振器端面を劈開によって作製することができないという難点がある。共振器端面は研磨やエッチングによって時間を掛けて形成する必要がある。もう一つの欠点はやはり欠陥密度の高さである。サファイヤ基板上のGaNは10cm−2程度の数多くの欠陥がある。LEDの場合はそれは問題にならず高効率で発光する。LDの場合は電流密度が格段に高いから欠陥をもとにして劣化が開始するということがありうる。そのようなわけでサファイヤ基板は青色InGaN発光素子の基板として実績があるが、なお最適の基板とは言えない。
窒化物系発光素子の基板として最適のものはやはりGaN単結晶基板である。現在まで高品質のGaN単結晶基板を製造する技術が未成熟であったため広い面積を有するGaN基板が入手できなかった。もしも高品質のGaN基板が製造できるようになれば、それが窒化物系発光素子にとって最上の基板となる筈である。GaN単結晶は自然劈開をもつ。それによってチップへの切り出しが単純化され正確になる。LDの共振器面を劈開によって形成することができるようになる。GaNはn型基板にすれば導電性があり、n型基板の底面にn電極を付けることができ素子構造が単純化され発光面積をより大きく取る事ができる。またエピタキシャル薄膜との間に格子定数の食い違いもない。そのような利点が見込まれる。
しかしGaN多結晶原料を加熱すると昇華してしまいGaNの融液を作ることができない。だから加熱融液を冷却することによって固体結晶を製造するチョクラルスキー法や、ブリッジマン法など通常の熱平衡下での大型結晶製造技術を利用できない。超高圧を掛けると熱平衡状態を保持した単結晶成長が可能であると言われている。たとえ可能であっても小型の結晶しかできないから商業ベースにのるような大型ウエハを製造できる見込みはない。
そこで適当な単結晶基板の上に気相成長法によってGaNの結晶を厚く成長させ基板を除去することによってGaNの単結晶自立膜を得るようにしたGaN基板製造方法が提案された。薄膜成長法を拡張した手法といえよう。しかしサファイヤ基板は化学的に安定で物理的にも硬いのでGaNを成長したあと除去することができず基板としては不適である。最近レーザを利用してサファイヤ基板を分離する方法も試みられているが、大型基板作成の歩留りは低いと考えられる。
結晶成長後除去しやすくGaNと相性のよい基板を選ぶべきである。たとえばGaAsの三回対称性をもった面(111)の上にGaNをc軸方向に気相合成することによってC面をもつ厚いGaNを作る。基板とGaNとは格子定数も熱膨張率も違うので、なかなかうまく基板上にGaNは成長しない。たとえ成長しても内部応力が大きくて高品質の単結晶基板にならない。さらなる工夫が必要であった。
そこで多数の窓を有するマスクをGaAs基板につけてマスクの上からGaNを気相成長させることによって内部応力、欠陥の少ないGaN結晶を製造するラテラル成長法(Lateral Overgrowth)というものを本発明者等は創案した。
特願平9−298300号 特願平10−9008号 特願平10−102546号 特願平10−171276号 特願平10−183446号 特開2001−102307号(特願平11−273882号)
などでその手法の内容を明らかにしている。例えば三回対称性をもつ(111)GaAs基板の上に、ストライプや円形窓を分布させたSiNマスク(例えば100nm厚み)をつける。マスクの長方形、円形窓は、6回対称性をもち正三角形の繰り返しパターンの正三角形頂点の位置に合致するように設ける。だから一つの窓からみれば60゜の中心角をなして6つの最近接の窓があることになる。
そのパターンにおいて正三角形の辺は例えばGaAsの[−110]方向或いは[11−2]方向に平行になるようにする。マスクにはGaNを排除する機能があり、窓のGaAs面からGaNが成長し、マスクの上にGaNは付かない。初めに低温(500℃〜600℃)でマスクより薄い(例えば80nm厚み)バッファ層を形成する。これはマスクより低いから窓内部だけにできる層である。それは独立のGaNの核が孤立した窓において独立に成長してきたものである。
その後より高温でGaN気相成長をすると、バッファ層の上にGaNが積み上がる。やがてマスクと同じ高さになる。マスクの上にGaNが付かなかったのであるが、窓内部からGaNがせり上がってきたので、その後GaNは縦方向と共に横向きにもマスクの上へと成長してゆく。だから窓の中心を中心とする正六角形錐台の形状を取ってGaN薄膜が成長してゆく。転位はGaN結晶の中に大量に含まれるがこれは成長方向に平行に伸びてゆく。マスクのエッジにおいて成長方向が一時的に横を向くから転位の延長方向も一時的に横向きに変化する。正六角形錐台の形状を保持しながらGaNが成長するから転位の転回点はマスクエッジから引いた外向き傾斜面の上に並ぶことになる。
横向き成長した薄膜はやがて隣接の窓から横向き成長してきた薄膜と相会する。6つの方向に同等の窓があってそこから等しい速度で横向き(水平)成長してきたから、それぞれの薄膜は窓を結ぶ線分の垂直二等分線で同時に合体するようになる。そのときに転位は横向きに延伸しているから反平行でありそれが衝突する。衝突によって転位が集中する。一部の転位はここで消滅することもある。転位が一部に高密度に集中するとその他の部分は低転位になり、発光素子の基板として充分に利用可能だということになる。
隣接窓から成長したGaN薄膜が二等分線で出会ったあとは、上向きの成長に変換されてゆきc軸にそう成長になる。C面を保持した成長ということである。時間を掛けて気相成長させてかなりの厚さ(数百μm)のGaN/マスク/GaAsの試料を得る。マスクとGaAsを除去してGaNのみの単独の自立膜にすると、GaNの基板結晶ができる。GaAsは王水で溶かして取ることができる。マスクも簡単に除去できる。
ラテラル成長法は、転位の延伸する方向が2回変化して転位密度がそれによって低減するという利点がある。これによって初めてGaNのかなり大きい単結晶が成長できるようになった。これは充分な厚さ(100μm以上)をもち自立でき、本発明者によって初めて得られたGaN単結晶の基板であった。
しかしながら窒化ガリウム基板そのものの品質が高品位でなければ、その上に良好なデバイスを作製することはできない。特に量産用の基板としては、広い範囲にわたって転位密度が低い良質の結晶が求められる。
多数の窓を有するマスクを使い気相成長させるラテラル成長法によっても、転位密度は1〜2×10cm−2程度もあって低転位のものはできない。InGaN系LD用の基板としてはいまだ不十分である。
そこで本発明者は、高品質低転位の窒化ガリウム単結晶を得るため、結晶成長とともに転位密度を減少させることができる新規な方法を工夫した。
GaAsの上にマスクを使ってラテラル成長させる際に、平坦なC面を保持しつつ気相成長するのでなくて凹凸に富んだ粗面(ファセット面)を保持しつつ成長させる。c軸方向にC面成長させるのではなくてC面から傾斜した面を表面に露呈させながら成長させるのである。ここではファセット成長法と呼ぶ。
図1〜図3によってそのファセット成長法を説明する。GaN結晶2は平坦表面7がC面になるようにc軸成長している。C面7に対して傾斜した面をファセット面6と呼ぶ。ファセット面6を埋め込む事無くファセット面6が露呈したまま成長させる。結晶は上に向かって積み上げられるのであるからファセット面6は集合して逆錐型のピット4となる。逆錐型のピット4は円形に見えるが、実は6角錐({11−2m}或いは{1−10m})か12角錐({11−2m}及び{1−10m})である(mは整数;結晶方位については後に説明する)。図1〜2では書き易い逆六角錐ピット4を示すが実際には12角錐の方がより頻繁に出現する。
そのようなピット4を埋め込むことなく成長を持続するのがファセット成長法の秘訣である。成長とともに凹面のファセット面6が上昇するから成長方向に平行に進む転位はファセット面に対して内向きに向けて進み、異なる方位のファセット面の境界線(稜線8)に集合する。稜線に至った転位は成長の進行とともに内向きに進み、ピット底にいたり多重点Dへ集結する。
互いに60゜の角度をもった稜線部には、多くの集結途中の転位が存在している。多重点Dに集結したものは線状の転位集合欠陥部11となる。集合途中の転位群は境界線から底面に下した垂直平面の中に含まれるようになる。そのように互いに60゜の角度をなす3枚の転位の集中した面を面状欠陥10という。特に多くの転位がここに集合した場合これはかなり安定な状態となる事がある。
このように前記のファセット成長は転位をファセット面で掃き集めて面状欠陥及び中心の多重点へと掃き溜めてゆくという作用がある。結晶成長は全体的には上向き(c軸向き)に進むが、転位の束は3枚の境界平面(面状欠陥10)に集中する。成長方向は常に内向き傾斜面の方向におこるから、最終的には転位束の一部は集中して線状欠陥の束11となることもある。
ファセット面からなるピットの底へ集中転位の束である面状欠陥や線状欠陥を生成するので残りの部分は低転位となる。適当な厚みまで成長させたら、GaN/GaAs試料を取り出して、GaAs基板とマスクを除去する。するとGaNだけの自立膜ができる。それは透明であって研磨によって平坦な基板にすることができる。目でみても平坦平滑なガラスのような材料であり転位はみえない。特別なエッチング液でエッチングしピットを出現させて顕微鏡観察することによって転位を見ることができる。また材料の違いは蛍光顕微鏡によってもみることができる。
基板上の低転位領域の転位密度を顕微鏡観察するとなんと10cm−2程度以下に減少することがわかった。ラテラル成長では1〜2×10cm−2程度の転位密度があったのだから、転位密度がさらに1ケタ程度減少したことになる。巧妙で有用な発明であった。
しかしながらそのような精妙な発明にも、LDの基板として使えるGaN単結晶を作るという課題からすると問題があることが分かった。
ファセット面からなるピットを埋め込まないで結晶成長させることによって、ピットの底へ転位を集めるようにするので、転位は狭い空間に集中する。しかしながら、完全に一点に集中するとは限らず、少しバラツクという問題があった。例えば100μm直径のピットを形成した場合、部位によっては、ピット中央の数μmの狭い範囲に転位が集中する。しかしその他の部位においては、30μm程度の範囲にぼんやりと広がって転位が存在するということもある。
これは一旦集中した転位が再びばらけてモヤモヤと広がったものである。集中転位の綻びということもできよう。モヤモヤと広がった転位の筋は、かなりの数の転位を含むものであることがわかった。つまり部位によってピットの中心点を芯として雲のようにモヤモヤと広がる転位の筋がある場合があるということである。モヤモヤは先述の蛍光顕微鏡観察で直接にみることができる。図3はピット底の転位の集合束15がばらけて転位がまわりに広がってゆく状況を説明している。
低転位領域を広げるために、ピットの径をより大きくすると、モヤモヤ状の転位の筋はより増大する傾向を示す。ピット径を大きくすると中心の芯へ集中される転位の数が増加するから綻びて星雲状になる転位の数や面積も増えるのである。
それでは一旦凝縮した転位は芯からどうして解けてゆくのか?綻びが生じる原因はどこにあるのか?そのような事を本発明者は考察した。それは転位の間に働く斥力のせいであろうと本発明者は気づいた。
転位というものは成長とともに成長の方向に伸びてゆくものであるが、離合集散することがあるが簡単には消滅しない。消滅せず集中するだけである。転位は結晶の乱れであるから、転位が平行に接近するとその間に結晶の不整合を圧縮させることになり格子のエネルギーが増大する。格子エネルギーの増加が斥力をもたらすのである。転位は一次元的にどこまでも伸びてゆくが相互に接近すると格子構造の乱れを集中させエネルギーを高めるので斥力を生ずることになるのであろう。そのようなダイナミズムは転位を10倍にも10倍にも凝集させて初めて現れるものでありこれまで知られていなかったものである。
1000本あるいは10000本もの転位線を狭い範囲に集めるとそれらの間の斥力も著しくなる。ために一旦凝集しても一部から転位線が解けてくるのである。それが芯のまわりに漂って見えるモヤモヤ星雲状構造を生成するのであろう。
モヤモヤ転位線での転位密度は10cm−2オーダー程度で、その他の部分を含めた平均の転位密度(10cm−2オーダー)よりも10倍以上大きい。モヤモヤ転位線の転位密度は、LD基板として不十分である。LD基板として利用できるためには、やはり10cm−2オーダー以下であることが望まれる。綻びによるモヤ状転位の問題、これが第一の問題である。
次の問題は、ファセット面6からなるピット4底に転位を集中させるさい、ピット中央部に互いに60゜の角度をなしてできる面状欠陥10である。ピットを維持して成長させると転位がファセット面の境界に集中しそこへ残留してゆくので面状に集中し面状欠陥10となるのである。ピット軸線に含まれ互いに60゜の角度をなし六回対称性をもつ面状欠陥は、転位が平行に面状に整列したもので転位の塊だと考えられる。面状欠陥は、先述のモヤ状転位とともに、結晶欠陥の問題である。面状欠陥はピット芯から60゜の角度をなして放射状に存在する。時には面状欠陥の両側面で結晶面のズレを生じている可能性もある。これら面状欠陥の存在は、基板の上にLD素子を製造した場合に、劣化の原因になりレーザの寿命を短くすることが予想される。だから面状欠陥を低減させる必要がある。
最後の問題はより根元的である。それはピットの分布が、予見不可能な偶然的確率的なものであるということである。つまり欠陥の分布がランダムだということである。前述のようにファセットピットをそのまま埋め込まずに成長させることによって転位を減少させる前記のファセット成長法はどこにピットができるのか、ということを予め規定することも知る事もできない。ファセット面よりなるピットは偶然的にそこに形成されるのであって偶然にそこに転位が集中するということになる。転位の束の分布が確率的、偶然的であることが問題になる。
そのGaNウエハを使ってウエハプロセスを行いGaN−LDチップを多数製造した場合、LDのストライプ(活性層)がたまたま転位束に掛かるということがありうる。発光層に欠陥の束が存在するとそのLDは短寿命となってしまう。その部分にストライプがかかっているLDチップは予め除去しなければならない。それはレーザ製造歩留まりを下げるということになる。
GaN基板上に製作されるLDチップの寸法は一定に決まらないが、例えば幅400μm、長さ600μmで中央縦に形成される発光層(ストライプ)が例えば2〜3μm幅×600μmだとする。ウエハ上に400μm×600μmの矩形上LDを製造するということを考える。全横幅が400μmでその内3μmだけがストライプだとすると、ストライプに転位芯やモヤモヤ転位が重なるということは少ないように思えるかもしれない。しかしそうではない。ストライプは幅こそ狭いものであるが、長さはチップ長さと同じでありしかも直線でなければならないのであるから、ストライプに転位芯(転位の集中点)が掛かるということは頻繁に起こりうることなのである。
LD用の基板を製造するためには、ストライプが転位芯、モヤモヤ転位に掛からないようにできる基板であることが必要である。そのために、転位束(転位芯)がどこにできるか分からないというのでは困る。そうでなくて転位芯の位置制御を積極的に行うようにしたいものである。転位芯が発生するのはやむをえないとしても、LDを製造するときに好都合なように配置され配置が予め分かれば良いのである。そのように転位芯(束)の位置制御を可能とする結晶成長方法が望まれる。
以上述べた3点が本発明の課題である。もう一度繰り返すと次のような事である。
(1)ファセット面からなるピット中央の転位集合部からの転位のモヤモヤ状分布の低減。
(2)ファセット面からなるピット中央の転位集合部の面状欠陥の消滅。
(3)ファセット面からなるピット中央の転位集合部の位置を制御すること。
本発明はこれら3つの困難な課題を解決することを目的とする。
発明の説明に入る前に用語を少し説明する。まず気相成長法ということであるが、GaNの薄膜形成法として気相成長法が用いられるがそれにはHVPE法、MOCVD法、MOC法、昇華法がある。これを基板の製造にも用いる。
1.HVPE法(ハイドライド気相成長法;Hydride Vapor Phase Epitaxy)
Ga原料として金属Gaを使う。窒素原料はアンモニアNHである。ホットウォール型の反応炉の下方のサセプタに基板を置き上方のボートにGa金属を入れ加熱しておく。そこへ水素ガス+HClガスを吹き付けて、塩化ガリウムGaClを生成する。これが水素ガスにのって下方へドリフトし加熱された基板にあたる。基板の近傍へは水素ガス+アンモニアガスが供給されておりGaClとアンモニアが反応してGaNを合成し加熱された基板の上に積み上げられる。原料がGa金属でありGaClを作るからGaN薄膜に炭素が入らないという利点がある。
2.MOCVD法(有機金属CVD;Metallorganic chemical vapor deposition)
これはGaN薄膜成長法として最も普通に利用されている方法である。コールドウォール型の反応炉において、TMG(トリメチルガリウム)などのGaの有機金属原料と、アンモニアNHとを水素ガス(H)とともに、加熱した基板に吹き付ける。ガリウム原料として有機金属を用いるのはGaN以外のガリウム化合物の薄膜形成で頻繁に行われることである。加熱基板上でTMGとアンモニアが反応して、GaNが合成されこれが堆積され薄膜が形成される。この方法は薄膜形成手法としては実績のあるものである。しかし薄膜でなくて厚い基板結晶を作製しようとすると問題がある。この方法は大量のガスを用いるから原料ガス収率が低い。薄膜では問題でないが基板形成の場合収率の低さは欠点となる。もう一つの問題は原料が有機物を含み炭素が存在するからGaNを形成した場合にその中へ炭素が混入するということがある。炭素は深いドナーとなり電子移動度を下げ電気特性を悪化させる場合がある。
3.MOC法(有機金属塩化物気相成長法;Metallorganic Chloride method)
Ga原料としてTMGなど有機金属化合物を用い、窒素原料としてアンモニアを使う。MOCVD法と異なって直接にTMGとアンモニアを化合させるのではない。ホットウォール型の反応炉でTMGをHCl(塩化水素)ガスを反応させ一旦GaClを合成する。これは気体の状態で加熱された基板まで流れてゆく。アンモニアは基板近くに供給されているから、アンモニアとGaClが基板近傍で反応してGaNとなり基板の上に逐次堆積してゆく。有機金属を使用するため薄膜への炭素の混入が生じるという欠点もある。しかし、MOCVDよりも原料ガス収率が高い。
4.昇華法
これは原料としてガスを用いない。多結晶のGaNを原料とするものである。反応炉の中で固体GaNと基板を別異の場所において温度勾配を設け、固体GaNを加熱して気化し、より温度の低い基板へ移動させて基板の上にGaN薄膜を堆積させるものである。
次に結晶方位について説明する。このようなことは斯界の常識のようにみえるが必ずしも周知されていない。混乱もあり、読者にとっては空間幾何学的な説明が理解できないということもある。以後結晶方位によって本発明の構造を述べるので方位の定義は明確にすべきである。GaNは六方晶系に属する。その場合面や方位を示す指数は3つ使うものと4つ使うものがある。4つ使う方法をここでは採用する。それについて表現方法を述べる。
結晶面と、結晶方位の表現に関していくつかの約束ごとがある。面方位を表現する総括表現は、{hkmn}というように波括弧{}を使う。h、k、m、nは面指数(或いはミラー指数)と呼び必ず整数である。個別面方位の表現は丸括弧()を使って(hkmn)というように表現する。結晶方位の総括表現は、鍵括弧<>を使って、<hkmn>と表現する。結晶方位の個別表現は角括弧[]を使って、[hkmn]というように表現する。同じ面指数をもつ結晶面と、結晶方位は直交する。つまり(hkmn)に直交する方向が[khmn]である。
その結晶が属する対称群によって許される対称操作が決まる。対称変換操作によって元に戻る場合、それらの面や方位は同じ総括表現によって表現される。六方晶系の場合、初めの3つの指数に関しては3回回転操作が許されるので、h、k、mを相互に入れ換える対称操作は同等のものである。しかしc軸の指数nは独特のものでこれらの3つの指数とは相互変換できない。総括表現で{hkmn}という総括面は一つの個別面(hkmn)から出発して全ての許される対称操作によって到達できる全ての個別面を包含する。六方晶系といっても許される対称操作は結晶によってなお幾つかの種類があり、一がいにどれが総括表現に含まれるということはいえない。
GaN結晶には3回対称性がある。だから(hkmn)、(kmhn)、(mhkn)、(hmkn)、(khmn)、(mkhn)は総括表現{hkmn}に含まれる6つの個別面である。逆に総括表現{hkmn}、{kmhn}、{mhkn}、{hmkn}、{khmn}、{mkhn}の6つは同等の表現である。面指数は整数であって、負の数には上線を付けるのが習わしであるが、明細書では上線を付けることができないので、前にマイナスの符号を付することにする。ただし面指数の間にはコンマをつけないから面指数か、座標かということは簡単に区別がつく。
GaNは六方晶系で3回対称性のある3つの軸がある。その内の二つをa軸、b軸という。3軸目には名称がないからそれでは不便だからd軸とする。つまりabd軸が120度の中心角をなして設けられる。それら3軸が含む面に直交する軸がc軸である。c軸は六方晶系において独特の軸であり、abd軸間の対称性を持たない。結晶面というのは同一の方向を向いた互いに平行な無数の面の集合である。結晶面の方位は、1枚目の結晶面がそれぞれの軸を切る接片の長さを軸の長さで割った値の逆数である。つまりa軸をa/hで切り、b軸をb/kで切り、d軸をd/mで切り、c軸をc/nで切る場合にその面指数を(hkmn)と表現する。
だから面指数が小さいほど基本的な面であり、面の数も少ないわけである。結晶方位[hkmn]は面(khmn)に直交する方向として定義される。4つの指数の内前の3つの指数h、k、mは独立でない。二次元だから二つの指数で表現する事ができ実際二つの指数で表現する方法もある。しかしここでは対称性を見やすくするために、4つの指数を用いている。だからh、k、mは一次従属であるが、その間には見やすいサムルールh+k+m=0が常に成り立っている。
GaNの場合代表的な面が3つ存在する。一つはC面である。これは(0001)面というように表現することができる。つまりc軸に直交する面である。面と軸は互いに直交するが、以後面は大文字で、軸は小文字で表現して区別することにする。GaNはc軸廻りの3回対称性をもつ。つまり120度の回転によってもとに戻るような対称性をもつ。異種の基板の上にGaNを結晶成長させる場合は、必ずc軸方向の成長を行う。GaAs基板やサファイヤ基板の上にヘテロエピ成長した場合は必ずc軸方向の成長になる。GaNは反転対称性がない。だから(0001)面と(000−1)面は相違する面である。
2番面の代表的な面はM面という。それは劈開面である。対称3軸(a、b、d)のうち一つの軸先端を通り、他の二つの何れかの軸とc軸に平行な面である。包括表現{1−100}、{01−10}、{−1010}、{−1100}、{0−110}、{10−10}や個別表現(1−100)、(01−10)、(−1010)、(−1100)、(0−110)、(10−10)などによって表現することができる。包括表現は全て等価であるが、個別表現は異なる面を意味している。異なる面は互いに60度の角度をなす。90度の角度でなくて60度であることに注意すべきである。M面という表現は通称であって、GaNの代表方位を表現するのに便利である。
3番目に代表的な面はA面という。対称3軸(a、b、d)のうち2軸の先端を結びc軸に平行な面である。包括表現{2−1−10}、{−12−10}、{−1−120}、{−2110}、{1−210}、{11−20}や、個別表現(2−1−10)、(−12−10)、(−1−120)、(−2110)、(1−210)、(11−20)などによって表現できる。上記の包括表現{…}は等価なものを意味するが、個別表現(…)は別の面を示す。
GaNは6回対称性はないから、上の個別の面は二つの種類の面を示す。それぞれの個別面は互いに60度の角度をなす。90度でないことに注意すべきである。この面をA面というのは通称である。便利な表現である。a軸とは区別するべきである。A面と同じ面指数をもつ方位<2−1−10>は、A面に直交する方位である。それはM面のいずれかと平行である。a方位と呼ぶことができようがそのようにはいわない。M面と同じ面指数をもつ方位<1−100>はM面に直交する方位であるが、A面と平行である。これをm方位と呼ぶことができるがそのようにはいわないようである。そのようにGaNは3つの代表的な面、C面、A面、M面を持つ。
後に出てくるファセット面というのは、A面やM面をc軸方向に少し傾けたもので構成される。だから例えば、A面から派生したファセット{2−1−11}、{2−1−12}や、M面から派生したファセット{1−101}、{1−102}などである。等価の6面が集合してピットを構成する。6角錐型のピットというのは、A面から派生したファセット{2−1−11}、{2−1−12}からなるか、M面から派生したファセット{1−101}、{1−102}からなるものである。A面もM面の60度の角度をなして6つ存在するから穴になった場合は六角錐状のピットとなる。その他に12角錐状のピットも形成されるが、それは、A面ファセット{2−1−11}、{2−1−12}とM面ファセット{1−101}、{1−102}が組み合わされるので12角形となるのである。12角形の場合これらの面が少しずれた面となっている場合も見られる。
4番目の指数nは上記のファセットでは1か2となっている。そのような低面指数のものが出現することが多いので、これらについて述べる。例えばA面{2−1−10}をc軸に対して少し傾けると{2−1−11}面となる。さらに傾けると{2−1−12}となる。4番目の指数nの値が大きいとc軸に対する傾斜も大きくなる。つまり水平に近づく。nについてそれ以上の高次の指数のファセット面が出現することもあるが、だいたいはn=1か2程度である。
後に二段重ねのファセットという概念が出てくる。ピットを構成するファセットとそれより浅いファセットという2種類のファセットが登場する。文脈を乱したくないから、ここでそれを予め説明する。浅いというのはより水平にC面に近いということである。つまりc軸方向のミラー指数nが大きいということである。
通常ピット周りに出現するファセットが{11−22}、{1−101}であると後で述べる。a軸長さをaで、c軸長さをcで表現すると、{1−101}面のC面に対する傾き角は、tan−1(31/2a/2c)である。{11−22}面のC面に対する傾き角は、tan−1(a/c)である。
より浅いファセットというと{11−23}、{1−102}、{11−24}、{1−103}などnが大きいものをいう。{1−10n}(n≧2)のC面に対する傾きはtan−1(31/2a/2cn)である。nが2より大きいとこの値はn=1の値より小さくなる。{11−2n}(n≧3)面のC面に対する傾き角は、tan−1(2a/nc)である。nが3より大きいと、この値はn=2の値より小さくなる。だからこのような高いnのものを浅いファセットと表現している。
GaNは六方晶系でありウルツ鉱型である。正六角形の6頂点と中心にGa原子が存在する底面と、正六角形の6頂点と中心にGa原子が存在する上面と、底面と上面の中間より少し下において正六角形の6頂点と中心にN原子が存在する下中間面と、その少し上に3つのGa原子が存在する中間面とその上に3つのN原子が存在する上中間面がある。3回対称性はあるが、反転対称性はない。六回対称性もない。
下地基板としてサファイヤ、Si、GaAsなどを用いる。サファイヤ(α−Al)は三方晶系であるが、対称性が悪くて三回対称性はない。反転対称性もない。対称性が悪いので劈開もない。
Siは六方晶系でなく立方晶系でありダイヤモンド構造をとる。だからミラー指数は3つである。3指数によって面方位(khm)を完全に記述できる。3指数は独立で前述のサムルールはなく、k+h+m≠0である。三回対称軸は対角線の方向である。それは(111)面とかける。通常のSiデバイスの場合(001)面を使うが、それは三回対称性がない。ここでは三回対称が必要だからSiの場合は(111)面を使う。
GaAsも六方晶系でなく立方晶系であり閃亜鉛鉱(ZnS:Zinc Blende)構造をとる。だからミラー指数は3つである。3指数によって面方位を完全に記述できる。三回対称軸は対角線の方向である。それは(111)面とかける。通常のGaAsデバイスの場合劈開の関係から(001)面を使うが、それは三回対称性がない。ここでは三回対称が必要だからGaAsの場合も(111)面を使う。GaAsは反転対称がないし(111)面といっても2種類がある。つまりAsが外部に出る(111)面と、Gaが外部に出る(111)面である。必要があれば(111)As面とか、(111)Ga面とか言って区別する。
平坦なC面を維持せず、ファセット面を保持しながらGaNを成長させることによって転位をピット底部に収束させ残りの部分を低転位化させる本発明者の創案した方法は見事なものであるが、いまだ問題があり3つの課題があることを説明した。
(1)ファセット面からなるピット中央の転位集合部からの転位のモヤモヤ状分布を低減すること。
(2)ファセット面からなるピット中央の転位集合部の面状欠陥を消滅させること。
(3)ファセット面からなるピット中央の転位集合部の位置を制御すること。
いずれも解決困難な課題である。これらの問題についてさらに説明する。
ファセット状ピットを形成維持しながら結晶成長させる本発明者の先願の最大の問題は転位の集合状態であると考えられる。図3(1)、(2)は先願におけるピットでの転位の集合を示す。GaN結晶12のどこか一部にファセット16からなるピット14が発生する。ピット14の生成位置は予め与えることができない。偶然的なものである。平坦面17がC面方向に成長するとファセット面1も上昇し転位15がピット14の底に溜まる。図3(2)に示すように、それは転位群15が一時的にピット底にあるだけであって転位自体はバラバラであるし開放されており再度広がる可能性もある。
ファセット面からなるピット部において、ファセット面での転位の伝搬方向の異方性を利用し数多くの転位をピット中央に集めてくる際、その転位の集合状態が問題になる。転位をピット中央に集中させることはできるが転位は高密度に集中した状態にあり消滅しておらずピットは開放されているから様々の問題を発生する。
本発明者の方法は、ファセット成長のピットが形状を維持したまま成長するのを利用して、数多く存在する転位を、ピット中央に集中させるのであるが、高密度の転位の集合が新たな問題を生ずる。
場合によって、逆方向のバーガースベクトルをもつ転位同士は衝突して消滅する可能性はあろう。しかし一つのファセット面によって掃引されて集合した転位は同符号の転位が多いものと考えられる。だから集合した転位が異符号であって互いに消滅するということは殆ど起こらないだろうと思われる。同符号の転位の集合の場合、転位は消滅しないでいつまでも残留する。ただ集中させるから残りの部分が低転位化するという利点がある。
しかし同符号の転位が穏やかに線、面に集中してくれるのであればいいのであるが実はそうでない。先述のように転位集中部分からモヤモヤの転位の拡散がみられる。それはどうしておこるのか?とその理由を考えると、同符号の転位が集中すると転位間に斥力が発生するからであると思われる。
格子のズレが連続したものが転位である。ズレの方向に同一の転位(同符号)が集中するとズレの方向が倍加されるから格子力学的なエネルギーが増加する。そのためにエネルギーを低下させる必要があってそれが斥力となる。転位どうしに働く斥力のために転位の集中体の一部から転位が解けてモヤモヤの転位の広がりとなる。折角集中させたのに転位が一部解けて拡散するのでは困る。
それにピットが合体して転位群が乱れたり、転位群の合流によって、転位が濃縮し転位密度がさらに上昇する。そのためもあってさらにモヤ状の転位が広がってゆくということもあろう。これが前記の(1)の転位モヤモヤ分布の問題である。
また状況によっては、ファセットからなるピッチ中央へ、転位が集合してゆく際中央から約60度の中心角をなして放射状に転位の面状集合体が形成されることもある。図1(b)の面状欠陥10のことである。これは転位が60度の角度をもって集合するためである。同符号の転位が集合した場合、転位同士に斥力が働き中央に集中できず、放射状の面状欠陥10に転位が集中するということもある。それが面状欠陥をより強固なものにする。
また複数ピットが合体しピットが大型化した場合、ピット中央に向かって集合する転位の数も増大し、それに付随する面状欠陥がより大面積化する。
さらにファセットの発生する位置は、自然現象に任せたままであるから不規則である。ピット位置は偶然的であり予め決定できない。制御不可能である。ピット位置が不規則、無限定、ランダムであるから、モヤモヤ状の転位群の面積が増大してきた場合、基板にデバイスを作製する時の妨げになる。デバイスの品質、歩留まりを下げることになる。
これらの課題を解決するためには、ファセット面からなるピットを維持して成長させ転位をピット中央に集合した際、転位が集合部に滞留するだけで収束しないということが問題だと本発明者は考える(図3(2)の転位群15)。
集合部での転位群は、転位の集合部にもしも転位の消滅機構、蓄積機構があればそれが固定されて再拡散がおこらず有効だと本発明者は考えた。
もしも転位の消滅機構あるいは蓄積機構が結晶中にあれば、転位が狭い領域に集中しても転位を消滅させたり蓄積させたりできるので、転位がばらけたり面状欠陥を作らないようになる筈である、と本発明者は考えた。
転位の消滅・蓄積機構として何を用いるか?それが問題である。本発明者は、単結晶中に故意に粒界などの欠陥を形成し欠陥面によって転位を消滅或いは蓄積させるようにした。結晶粒界などの欠陥を積極的に作り、これによって転位を安定に蓄積するか消滅させるようにしたのである。それが本発明の第1の新規な着想である。
本発明は、新たに結晶粒界を作り、それを有効利用しようとするのである。図4はそれを図示したものである。GaN結晶22にはファセット面26を有するピット24が生成されている。成長とともに転位はファセット面を介してC面に平行に移動しピット24の底部29にいたる。その後の転位の延長方向は成長方向(c軸方向)に平行である。ピット底部29に続いて閉じた欠陥集合領域25を作っている。閉じた欠陥集合領域25が前記の転位を吸収する。転位は消滅したりあるいは閉じた欠陥集合領域25に蓄積される。
一旦蓄積されたら再び外部へ出てゆきにくい。だからその意味においても「閉じた」ということが出来る。閉じているのは欠陥集合領域25の外を囲む結晶粒界Kである。これが欠陥集合領域25を封鎖する。転位が捕獲されたらもはや再拡散しにくい。
それでは欠陥集合領域25を閉鎖する結晶粒界Kを作るにはどうするのか?ファセットを維持しながらファセット成長させると、ファセットからなるピットの中央部底に転位が集中することは既に述べた通りである。このピットの中央部に、廻りの単結晶と異なる結晶を形成することによってそれらの境界に結晶粒界を生成することができる。周りの単結晶と相違する異結晶を作ればよいのだから、それは方位の相違する単結晶であってもよいし、方位を一義的に定義できない多結晶としてもよい。いずれにしても周りの単結晶は一様な方位をもっており全体で単結晶なのであるから、それと相違するような異結晶体をピット中央部に形成するとそれら異質の結晶の間に結晶粒界ができるはずである。はじめに多結晶をピット中央部に形成する場合を説明する。
具体的には、ピット中央部に多結晶領域を形成する。周りの単結晶領域と、ピット底の狭い部分の多結晶領域の間に、結晶粒界Kが生ずる。その結晶粒界Kを転位の消滅・蓄積場所とする。転位を減らすことが目的であるのに、転位を多数含む結晶粒界を新たに生成してそれを反対に有効利用するというものである。もちろんこれらの結晶粒界のみならず、結晶粒界で囲まれた、内部の領域も、転位の蓄積場所とすることができる。非常に意表を付いた着想であって斬新である。
そのように本発明は、転位のシンク(吸い込み)を形成することによって、モヤモヤ状の分布の成長を防ぎ一部消滅させることができる。またピット中央部から広がる面状欠陥の低減消滅を促進することができる。
さらに研究を重ねると、このような転位に消滅・蓄積場所として機能する領域は、多結晶に限るものではないということを発見した。ピット底部に続いて単結晶領域を生成してもそれが他の単結晶と結晶方位が異なるものであれば、その間に結晶粒界Kができるから結晶粒界Kが転位の消滅・蓄積場所となる。例えば、c軸が反転した、即ちGa面と窒素面が逆転した反転層となっている場合も含む。 ここで反転相とは、GaN結晶の所定の領域において、それ以外の領域とGaN結晶の<0001>方向のみが180゜逆転し、極性(polarity)が反転しているものである。GaN結晶の(0001)面は、表面がGa原子面となっているが、(000−1)面は、窒素原子面となっている。
さらに、単結晶であって、他の領域の単結晶と方位が同一であっても、面欠陥で囲まれ、小傾角粒界で囲まれている場合は、その小傾角結晶粒界Kが、転位の消滅・蓄積場所となることがわかった。つまりピット中央部底部に続く領域であって、
A.多結晶領域
B.周りの単結晶と方位の違う単結晶領域
C.周りの単結晶と方位が同一であるが小傾角粒界で囲まれた単結晶領域
であれば、それらの領域と周りの領域の間に結晶粒界Kができるから、結晶粒界Kが転位の消滅・蓄積作用をもつのである。転位を消滅させることができれば効果的であるが、蓄積させて解き放たないというだけでも効果がある。そのような結晶芯となる部分はいずれも結晶欠陥を内蔵しており、しかも結晶粒界で包囲されているから、「閉じられた欠陥集合領域」と呼ぶことができる。そのような部分構造自体新規なものである。
閉じられた欠陥集合領域では冗長であるから、閉鎖欠陥集合領域Hと呼ぶことにしよう。これはファセット成長においてファセット面の集合であるピットの底部に生成されて周りの単結晶と何らかの異なる結晶性をもつ芯Sがありその表面が結晶粒界Kによって包まれているという領域を意味する。つまり芯SがA、B、Cのいずれかであって、閉鎖欠陥集合領域Hは芯Sと結晶粒界Kとよりなる。象徴的にいえば、
H=S+K
K=A、B、またはC
ということである。Kは結晶粒界であるが転位を消滅・蓄積することができる。芯Sは、Kの内部にあって、周囲の単結晶とは何らかの相違点ある結晶性をもち、ファセット成長においてピットの底部に生成されるものである。それら二つの成分を含めて閉鎖欠陥集合領域Hと呼ぶのである。閉鎖欠陥集合領域Hの中にピットの最深部があり、ここには、転位の集合部が生じている。上の説明では、結晶粒界Kだけが転位の消滅・蓄積作用があるように思えるが、それだけではなく、閉鎖欠陥集合領域Hの内部の芯Sにも転位の消滅・蓄積作用がある。KとSの両方に転位の消滅・蓄積作用がある。
本発明者の先願(特許文献6:特開2001−102307号)においてはピットがどこにできるのかは予め指定することができない。そうであればピット底部に連続して発生する閉鎖欠陥集合領域Hもどこにできるか予め決めることができない。しかしピットの中央に閉鎖欠陥集合領域ができるという相関が分かったことには意味がある。さらに発明者は研究を進めて、閉鎖欠陥集合領域Hを予め与えることができるということを発見した。
話しが逆になるが、閉鎖欠陥集合領域Hの位置を何らかの手段によって予め与えることができればピットの出現する場所が決まるということになる。これらの点にいろいろな飛躍があるので充分に注意すべきである。
閉鎖欠陥集合領域Hを決める手段は後に詳しく述べる。簡単にいえば下地基板の閉鎖欠陥集合領域ができて欲しい位置へ「種」となるものを規則的に配置するということである。その上からGaNを成長させると、種に続きピットが生成されピットに続いて閉鎖欠陥集合領域ができるのである。
もしも閉鎖欠陥集合領域Hが決まると、この領域は他のC面の成長に比較して成長速度が遅いから、他のC面成長する部分に比べて低い窪み(ピット)となる。窪みとなるとその周囲は安定な低次の面指数をもつファセット面で囲まれる。成長と共にファセット面が大きく成長し、それがピットとなる。ピットは消滅することなくファセット成長の間維持されるからピットに続いて閉鎖欠陥集合領域Hが連続的に生成される。縦方向に成長するから、初めに決めた閉鎖欠陥集合領域Hの位置から上が全て閉鎖欠陥集合領域となる。そのような手法によってピット位置を制御することができるようになる。任意の位置に閉鎖欠陥集合領域を作り得る。それも本発明の著しい特徴の一つである。
もう一つの閉鎖欠陥集合領域生成のメカニズムがある。ピットはファセット面からなるが、その底部にはより浅い傾斜(c軸面指数のnが大きい)の他のファセット面が形成されやすく(図5(b)の(3)に示す)、角度の浅いファセット面がピットの底に形成され二重のファセット面構造となる。これがピット中心を固定する。浅いファセット面に続いて閉鎖欠陥集合領域Hが生成される。 詳細は後述するが、閉鎖欠陥集合領域Hが、周りに対してGaN結晶の<0001>方向のみが180゜逆転したc軸方向の反転相からなる場合、この現象が明確に現れる。
閉鎖欠陥集合領域の生成については、次のように考えられる。種の上に多結晶が形成された場合、閉鎖欠陥集合領域は多結晶となり、他の単結晶部分と明確に区別される。境界には結晶粒界Kが発生する。
しかし閉鎖欠陥集合領域は多結晶ばかりでなく、単結晶の場合もある。単結晶であるが周囲の単結晶部分と結晶方位が相違する。相違の方向は多様である。後にこれも詳しく述べる。どうして結晶方位が相違するのか?それはピット底部に小さい傾斜のファセット面(nが大きい)が発生しそれを一面とするように閉鎖欠陥集合領域が形成されるので、閉鎖欠陥集合領域が単結晶だとしても他の単結晶部分と結晶方位が相違するのである。結晶方位が相違するから、閉鎖欠陥集合領域と他の単結晶部分の境界には必ず結晶粒界Kができる。結晶粒界Kによって閉鎖欠陥集合領域の芯Sが完全に密封方位され閉じた欠陥の集合を作る。それが閉鎖欠陥集合領域Hである。
このように、H=S+Kとなる閉鎖欠陥集合領域を作りGaNをファセット成長させる方法は、先に述べた3つの問題を全て解決することができる。ピット中央から拡散するモヤモヤ状の転位は、先述の結晶粒界Kによって吸収蓄積され解けないから外部へもはや出てゆかない。ピット中央部底部から発生した60度をなす面状欠陥は結晶粒界Kによって引き寄せられその中に蓄積され外部へ出ない。
またピット中心位置が定まらないからLDを作ったときに活性層(ストライプ)がピットに重なることがあるという偶然性の問題は、積極的に閉鎖欠陥集合領域つまりピットのできる位置を予め決めることによって解決できる。そのようなピット位置を予定できるということが本発明では最も有用な利点だということもいえよう。
以上本発明の原理を説明した。本発明によって前記の3つの問題点(ピット中央のモヤモヤ転位、面状欠陥、位置制御の困難)を解決できるということも述べた。以下に本発明の効果を述べ、さらに具体的な態様についてより詳しく説明する。
本発明はファセット成長によってピット底部に転位を集めてその他の部分を低転位化し、ピット底部に閉鎖欠陥集合領域Hを形成して転位を閉じ込め再び解き放つということがない。閉鎖欠陥集合領域Hのために先に課題として挙げた3つの問題、
(1)ファセット面からなるピット中央の転位集合部からの転位のモヤモヤ状分布の低減。
(2)ファセット面からなるピット中央の転位集合部の面状欠陥の消滅。
(3)ファセット面からなるピット中央の転位集合部の位置を制御すること。
を本発明は全て解決できる。
本発明の方法によって、転位の集合した閉鎖欠陥集合領域Hの位置を正確に制御し、低転位の窒化ガリウム基板を作製することができる。また本発明のGaN基板は、転位を規則正しく特定の狭い部分に集合させてあり、デバイスの重要部分に使用する部分(単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Y)では低転位で単結晶である。InGaN青紫レーザダイオード(LD)などの低転位GaN基板として最適のものを与える。
本発明の実施の形態について述べる。本発明の基本原理は次のようなことである。
ファセット面からなるピットが常に表面に存在し欠陥の集合である閉鎖欠陥集合領域Hが内部に存在するように窒化ガリウムを成長させ、閉鎖欠陥集合領域Hとその周囲の単結晶低転位随伴領域Zとの境界面である結晶粒界Kを転位の消滅場所、蓄積場所とすることによって、閉鎖欠陥集合領域Hの周囲の単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Yにおける転位を減少させ低転位のGaN結晶基板を得る、というところにある。
或いは、ファセット面からなるピットが常に表面に存在し、しかも欠陥の集合である閉鎖欠陥集合領域Hが内部に存在するように窒化ガリウムを成長させ、閉鎖欠陥集合領域Hとその周囲の単結晶低転位随伴領域Zとの境界面である結晶粒界Kとその内部の芯Sを転位の消滅場所、蓄積場所とすることによって、閉鎖欠陥集合領域Hの周囲の単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Yにおける転位を減少させ低転位のGaN結晶基板を得る、というところにある。
実際の実現方法としては、結晶成長時の成長表面において、ファセット面からなるピットを形成し、常にピット底に閉鎖欠陥集合領域Hを保持して結晶成長させ、閉鎖欠陥集合領域に転位を捕獲させることによって、その周囲の単結晶部(単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Z)の転位を低減させるようにするのである。
これらが本発明の基本思想である。ファセットからなるピットを結晶表面に生成するというだけでは不十分である。ピットに続いてその底に閉鎖欠陥集合領域Hが存在するということが必要である。閉鎖欠陥集合領域Hは内部(芯Sと呼ぶ)と表面(結晶粒界Kと呼ぶ)よりなるがこれは欠陥の集合体でありしかも結晶粒界Kによって完全に閉じられている空間である、ということが重要である。そして結晶粒界Kか、それに加えて芯Sが転位の蓄積、消滅を担うので他の部分の転位が減少する。
「他の部分」というのは二つに分割される。ピットの下に続く部分とピットの外にある部分である。ピットによって覆われる部分をここでは単結晶低転位随伴領域Zと呼ぶことにする。ピットの外にある部分を単結晶低転位余領域Yと呼ぶ。いずれも低転位であって、しかも単結晶である。
閉鎖欠陥集合領域の役割は、単結晶低転位余領域Yや単結晶低転位随伴領域Zを低転位単結晶にするということにある。それは結晶粒界Kや芯Sが転位を吸収して消滅させあるいは蓄積して離さないからである。本発明において最も重要なのは閉鎖欠陥集合領域Hである。閉鎖欠陥集合領域Hが本発明において根元的な重要性を持っている。
それでは表面のピットは何故に必要か?ということであるが、それは二つの機能を持っている。一つはピットの底に閉鎖欠陥集合領域Hを保持するということである。ピットの底に連続して閉鎖欠陥集合領域Hができる。ピットがなければ閉鎖欠陥集合領域Hができない。ピットあっての閉鎖欠陥集合領域である。その点でピットの生成は必須である。しかし逆は必ずしも真でない。ピットがあってもその下に閉鎖欠陥集合領域がないものもある。それを空ピットと呼ぶことができよう。空ピットにしてしまってはいけないのである。
本発明者の前記の先願(特許文献6(特開2001−102307号))はピット生成を必須の要件としているがそれは閉鎖欠陥集合領域Hをともなわない空ピットであった。だから転位を消滅蓄積できなかったのである。空ピットの底部には60゜の角度をなす面状欠陥や線状欠陥ができるが転位を閉じ込めることができなかった。
本発明はピットの底に閉鎖欠陥集合領域Hを形成している。このように閉鎖欠陥集合領域を底部に有するピットは「実ピット」と呼ぶことができる。本発明はだから実ピットを生成し閉鎖欠陥集合領域を設けることによって閉鎖欠陥集合領域に転位を永久に消滅蓄積できるようにする。
ピットのもう一つの役割はエピタキシャル成長とともに内向きの傾斜が周囲の(単結晶低転位随伴領域や単結晶低転位余領域)転位を内側へ引き込み閉鎖欠陥集合領域Hへと掃引するということである。ピットの傾斜がなければ転位はそのまま上方へ(成長方向に平行)伸びるだけで閉鎖欠陥集合領域へ集結しない。集結しなければ転位は減少しない。だからピットには、閉鎖欠陥集合領域Hを保持するという役割と、転位を集めて閉鎖欠陥集合領域へ導入するという役割がある。
それではどうして閉鎖欠陥集合領域を作るのか?という問題であるが、そのためには結晶成長の初期に基板面に種を分布させておくのである。種が基板面にあることによってその上に閉鎖欠陥集合領域とピットが形成される。種を基板面に積極的に配置することによって閉鎖欠陥集合領域とピットの位置を正確に指定できる。実は本発明の新規独創の着想は種の播種にあるのである。種を幾何学的に規則正しく配置することによって閉鎖欠陥集合領域Hとピットを幾何学的に規則正しく生成することができる。
閉鎖欠陥集合領域は欠陥の集合であって使用できないとすると、その残りの単結晶低転位随伴領域Zや単結晶低転位余領域Yが使用できることになる。閉鎖欠陥集合領域の位置が種の播種によって厳密に予め指定できるならば、単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zが予め指定できる、ということである。そのような空間的な制御性は種の播種に起因するのである。本発明の価値はその種撒きによって単結晶低転位随伴領域や単結晶低転位余領域を指定できるという空間的な制御性の高さにある。
閉鎖欠陥集合領域Hが本発明において根本的に重要である。それで閉鎖欠陥集合領域についてより詳しく説明する必要がある。閉鎖欠陥集合領域は1種類の構造を取るのではない。多結晶、単結晶など多様な構造の閉鎖欠陥集合領域がある事が分かった。単結晶でも方位が様々のものがある。閉鎖欠陥集合領域の種類を以下に説明しよう。いずれの構造の閉鎖欠陥集合領域も本発明の基本原理にもとづき転位低減の効果を奏することができる。
[1.多結晶の閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域Hが方位のバラバラの多結晶GaNであることがある。その場合は閉鎖欠陥集合領域だけが多結晶であり、閉鎖欠陥集合領域周りに随伴するピット直下の単結晶低転位随伴領域Zやその外側の単結晶低転位余領域Yは単一の単結晶である。閉鎖欠陥集合領域が多結晶ならそれは粒界の集まりである。閉鎖欠陥集合領域外周の結晶粒界Kというのは最外の粒界の連続体を意味する。
[2.異なる方位の単結晶の閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域Hが周囲の単結晶と異なる一定方位の単結晶GaNの1個以上の集合であることがある。C面方向に成長させる場合、単結晶低転位随伴領域Zや単結晶低転位余領域Yは(0001)面を表面平行にする単結晶である。閉鎖欠陥集合領域は一定方位をもつ結晶の集合であるがc軸、a軸などが、単結晶部分のc軸、a軸と食い違っている。
[3.<0001>だけ一致する方位の単結晶の閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域Hが周囲の単結晶と<0001>だけ共通でその他では異なる一定方位の単結晶GaNの1個以上の集合であることがある。C面方向に成長させる場合、単結晶低転位随伴領域Zや単結晶低転位余領域Yは(0001)面を表面平行にする単結晶である。閉鎖欠陥集合領域はc軸を単結晶部分のc軸(<0001>)に平行とするがa軸、b軸が単結晶部分のa軸、b軸とは異なるというものである。つまりc軸回りに回転している。閉鎖欠陥集合領域を反対にc軸周りに回転させると単結晶部分と同じ方位になる。
[4.極性が反転した単結晶の閉鎖欠陥集合領域H]
単結晶部分のc軸方向に対して閉鎖欠陥集合領域Hのc軸が反平行だというものである。すなわち閉鎖欠陥集合領域Hにおいて、その周りと<0001>方向のみが180゜逆転し、極性が反転している単結晶となっているものである。閉鎖欠陥集合領域Hのc軸を180゜回転させると単結晶部分の方位と同一にできる。GaN結晶は極性を有しており、(0001)面は表面がGa原子面となっているが、(000−1)面は窒素原子面となっている。よって、<0001>方向のみが180゜逆転し、極性が反転している場合、その領域の境界には粒界が存在する。この閉鎖欠陥集合領域Hは、単結晶であっても<0001>方向のみが180゜逆転した一つ以上の結晶粒からなる多結晶であってもよい。
[5.面状欠陥で仕切られた閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域が周囲の単結晶部分とは面状欠陥によって仕切られた1以上の結晶粒である。
[6.線状欠陥で仕切られた閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域が周囲の単結晶部分とは線状欠陥によって仕切られた1以上の結晶粒である。
[7.面状欠陥で仕切られた同一方位の閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域が周囲の単結晶部分と結晶方位は同一であるが面状欠陥によって仕切られた1以上の結晶粒である。
[8.線状欠陥で仕切られた閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域が周囲の単結晶部分と結晶方位は同一であるが線状欠陥によって仕切られた1以上の結晶粒である。
[9.微傾斜した閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域が周囲の単結晶部分の結晶方位に対して殆ど同一だが微傾斜しているというものである。
以上が閉鎖欠陥集合領域の結晶方位に関する多様性である。結晶方位に続いて欠陥についても説明する。閉鎖欠陥集合領域内部には特に結晶欠陥が多い。閉鎖欠陥集合領域が多結晶(1)の場合粒界があるのは当然である。しかし閉鎖欠陥集合領域Hが単結晶の場合でも欠陥が多くなる。ファセット面からなるピットの底が閉鎖欠陥集合領域Hの内部にある。閉鎖欠陥集合領域内部に転位群の集合部が形成されたり面状欠陥が形成されることがある。だから閉鎖欠陥集合領域は欠陥を含み周囲の単結晶部とは面状欠陥で仕切られるということがある。
[10.欠陥を含み面状欠陥で仕切られた閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域Hは結晶欠陥を含み、周囲の単結晶部分と面状欠陥によって仕切られる。
[11.欠陥を含み線状欠陥で仕切られた閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域Hは結晶欠陥を含み、周囲の単結晶部分と線状欠陥の集合体によって仕切られる。
[12.線状欠陥、面状欠陥を含む閉鎖欠陥集合領域H]
閉鎖欠陥集合領域Hは結晶欠陥を含み、その欠陥は、面状欠陥であるか線状欠陥であることが多い、ということである。
以上で多様な閉鎖欠陥集合領域について説明した。次に結晶成長の方位であるが、結晶成長の方向はc軸方向であるのが通常である。異種基板の上に六方晶系の窒化ガリウム結晶を成長させるから、3回対称性のあるc軸方向に成長させると、異種基板とGaNの結晶方位の対称性を合致させることができる。そのためにc軸方向に成長させることが多いということになる。もしもGaN自身を基板とすることができたらc軸以外の成長も可能であるが異種基板であるからc軸成長が主流である。
その場合、ファセット面からなるピットが逆六角錐あるいは逆十二角錐となる。GaNは六方晶系でありc軸まわりに同等の傾斜面を6つ持っているからである。それが六角錐ピットを形成する。図1はC面にできたピットを図示するが、逆六角錐のピットは6つの傾斜面をもつ。平均的な成長方向はc軸方向つまり図で上方である。しかし傾斜面(ファセット面)では面は矢印のように内向きに成長する。同等の傾斜面が二組あれば十二角錐を形成するのである。つまり(hkmn)面の前の3つの指数h、k、mを入れ換えたものが同等であるから6つの同等の面が存在するのである。
ファセット面の面指数は一般に{kk−2kn}(k、nは整数)と{k−k0n}というように表現できる。これら2種類の面はそれぞれ60゜ごとに存在し、二組の面は30゜の角度をなす。だから30゜刻みの面を構成できる。だから逆12角錐ができる。いずれか一方の群だけが優越する場合は逆6角錐となる。
その中でも最も頻出するファセット面は、{11−22}面と{1−101}面である。いずれか一方だけで逆六角錐ができるし、両方が並存すると逆十二角錐ができる。{11−21}面も出ることがある。
さらにファセット面からなるピットが、傾斜角の異なる二段重ねの逆六角錐、逆十二角錐のこともある。これは例えば{11−22}、{11−21}とか{1−101}、{1−102}いうようにc軸指数nが異なるものがあるということである。傾斜の浅い方が中心にくる(nが大きい方)。傾斜のきつい面は外周にくる(nが小さい)がそれが単結晶低転位随伴領域Zに接続する。
閉鎖欠陥集合領域Hと結晶成長時のファセットの関係について述べる。閉鎖欠陥集合領域Hとファセット面の面指数に一定の関係のあることが分かった。
ファセット面からなるピット底には閉鎖欠陥集合領域Hがある。閉鎖欠陥集合領域Hは、ピットのファセット面とは面指数が少し異なる面を有する。先述のようにピットを構成する大部分のファセット面の面指数は{11−22}と{1−101}である。
ところが閉鎖欠陥集合領域の頂部(ピット底)はファセットの傾斜面より浅い傾斜となっている。例えば図5(b)(3)において二段傾斜面が示される。それはc軸の指数がより大きいということだから、{11−24}、{11−25}、{11−26}、{1−102}、{1−104}などが出現しそれがピット底の傾斜面となっているということである。ファセット面からなるピット底に続く閉鎖欠陥集合領域Hは、単結晶低転位随伴領域Zや単結晶低転位余領域Yとは、<0001>方向のみが180゜逆転し、極性が反転している場合に顕著に傾斜角のより小さい面方位を表面として成長する。この場合、傾斜角のより小さい結晶面方位は、{11−2−4}、{11−2−5}、{11−2−6}、{1−10−2}、{1−10−3}、{1−10−4}からなる。それが成長とともに埋まって閉鎖欠陥集合領域となるから閉鎖欠陥集合領域がこのようなnのより大きい面指数をもつということになるのである。ファセット面からなるピット底にある閉鎖欠陥集合領域の境界は、ピットを構成するファセット面よりも角度の浅い境界部に形成される。この現象は、特に閉鎖欠陥集合領域Hが周りの単結晶領域と<0001>方向のみが180゜逆転し、極性が反転している場合に顕著に認められる。ピット底の傾斜面の角度が浅いというのは重要な知見である。
ファセット面からなるピット底にある閉鎖欠陥集合領域Hは、点状に集中して存在する。ここで点状というのは線状とかドーナツ状というのではなくて一箇所に点に集まっているという意味である。例えば図7の同心円の中心の黒い部分が閉鎖欠陥集合領域Hであり、点状に集中している。点状に集中しているからGaN基板を様々な方向に劈開しても断面に閉鎖欠陥集合領域Hが出てくる確率が低いという利点がある。
劈開面に閉鎖欠陥集合領域Hが露呈しにくいので劈開面を有効に利用できる。それに劈開が容易だという利益もある。劈開しようとする平面に欠陥があると劈開が妨げられるからである。
ピット底にできる閉鎖欠陥集合領域Hは、1μm〜200μmの直径を保持して成長させることができる。成長条件にもよるが、閉鎖欠陥集合領域Hの直径を1μm〜200μmにして成長させることによって、転位をピット中央の閉鎖欠陥集合領域Hに集めることができる。
ファセット状ピットの直径が小さい場合は、閉鎖欠陥集合領域Hの直径も小さい方がよい。ファセット状ピットの直径が大きい場合は、閉鎖欠陥集合領域Hの直径も大きい方がよい。実際においては、小さい場合で閉鎖欠陥集合領域の直径が1μmあれば効果(転位低減の)があり、大きい場合でも経済的な影響を考慮して直径200μmまでが適当であると考えられる。
ファセット面からなるピット底の閉鎖欠陥集合領域Hの形状(横断面)は通常不定形である。これは、閉鎖欠陥集合領域Hが成長するにつれ、エネルギー的にも不安定であるために結晶方位との関係から、ファセット形状に応じて閉鎖欠陥集合領域が変形するためである。
場合によっては閉鎖欠陥集合領域の形状(横断面)が円形になる場合もありうる。閉鎖欠陥集合領域Hの多結晶粒の粒子数が多い場合や、閉鎖欠陥集合領域の直径が大きい場合に円形断面のものがよく見られる。
一方ファセット面からなるピット底の閉鎖欠陥集合領域Hの多結晶粒子数が少ない場合や、閉鎖欠陥集合領域の直径が小さい場合、閉鎖欠陥集合領域Hの形状が角型になることもある。
平均的な結晶成長方向がc軸方向である場合、実際の結晶成長の最表面ではファセット面からなるピット底の多結晶領域部が、結晶成長とともにピット底に引き続き形成されその結果結晶中には、c軸に平行に柱状に多結晶領域がのびた形で存在することになる。
またその際、ファセット面からなるピットの底の閉鎖欠陥集合領域と周りの単結晶部(単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Z)との境界において、単結晶部から閉鎖欠陥集合領域Hへ向かってC面に平行に伸びた転位を集め、境界Kにおいて転位を消滅蓄積させて単結晶部の転位を減らすメカニズムが働く。
この転位集中のメカニズムはC面から傾いたファセット面よりなるピットにおいて、ファセット面の成長とともに転位がC面に平行にピット中心へ向かって伸び閉鎖欠陥集合領域に集中することによって、単結晶部Z、Yでの貫通転位を低減させるということである。例えば図1の(a)(b)でファセット面は矢印のように内向きに積層してゆくから転位は矢印で示されるようにC面に平行に内向きに進行するようになる。つまり転位はピット中心に向かって集中し中心部の閉鎖欠陥集合領域Hに吸収される。図2はファセット面での転位の動きを示すための平面図である。内向きに進んだ転位は6角錐の稜線8に衝突すると稜線の方向へ転換して稜線に沿って水平に進むから中央の多重点Dに集中するのである。
それが先願においても述べられた転位減少の機構である。しかし先願では多重点の下に閉鎖欠陥集合領域が存在せず、図1(b)のように広い面状欠陥10になり転位減少は不十分であった。
図3は先願の場合の転位の運動を示すが、ピットの底に閉鎖欠陥集合領域がない。だから転位は集中するが開放しており再び広がる可能性もある。集中度も低い。開放系ではいけない。
本発明は図4に示すようにピット底に閉鎖欠陥集合領域があり転位は閉鎖欠陥集合領域Hに吸収される。ここで一部は消滅し一部は蓄積される。その部位は閉鎖欠陥集合領域Hの外周部である結晶粒界Kと内部の芯Sである。結晶粒界Kだけである場合もあり、KとSの両方である場合もある。いずれにしても閉鎖欠陥集合領域は結晶粒界Kによって閉じられており密封空間である。原理的には転位が一旦閉鎖欠陥集合領域Hに入ると再び出ることができない。だから単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zでの転位の減少は永久的である。先願と本発明の対比は図3、図4によく現れる。
さて、実際の窒化ガリウム基板の製造において本発明の手法をどのように適用するのかについて説明する。異種基板を使うから三回対称性のあるc軸方向を成長方向とする。
実際の結晶基板の結晶成長方法としては、結晶成長時の表面において、ファセット面からなるピットを形成し、ピット中央の底に閉鎖欠陥集合領域Hを有するものを基本の構造物としてこれを規則正しく配列させて結晶成長させる。
それは空間的に規則正しくピット、閉鎖欠陥集合領域を配列するということである。図6(b)、図7、図8(a)、(b)などに規則正しい基礎構造体の配列を示す。規則正しく同じパターンによって空間をくまなく埋め尽くすようにするのが最も良い。その場合可能なパターンはおのずから決まってくる。
このようにファセット面からなり中央に閉鎖欠陥集合領域を有するピットを規則正しく隈なく並べるには、六回対称性(正三角形を並べ頂点に配置する)、四回対称性(正方形を並べ頂点に配置する)、二回対称性(長方形を並べ頂点に配置する)の3種類のパターンしかない。最も隈なく同じもので並べるという条件をはずすともっとたくさんのパターンが可能となる。
[1.六回対称性パターン(図8(a)、(b))]
これは図8に示すが、ピットが円形に近い12角形、6角形であるので最稠密の配列となる。正三角形の一辺の長さをピッチpと呼ぶ。これはパターンの繰り返し周期である。もしも隣接のピットが互いに接触するならピットの直径dはピッチpにほぼ等しい(p=d)。図8の(a)はピッチの方向がGaN結晶の<11−20>の方向に平行である。図8の(b)はピッチの方向がGaN結晶の<1−100>の方向に平行である。
この図において同心円の中心の黒丸が閉鎖欠陥集合領域Hである。その周囲の白丸の部分がピットの広がりを示すがそれは同時に単結晶低転位随伴領域Zの範囲を示している。隣接する同心円の隙間にできる狭い三角形の領域が単結晶低転位余領域Yである。最稠密に配置しているということはある一定面積の中に占める単結晶低転位随伴領域Zの面積が最大になるということである。しかし同時に閉鎖欠陥集合領域面積も最大になる。反対に単結晶低転位余領域Yの面積は最小になるわけである。C面から成長した領域(単結晶低転位余領域Y)は比抵抗が高くなる傾向がある。だから導電性基板とする場合はYが狭くなる六回対称パターンが望ましい。
[2.四回対称性パターン(図9(a)、(b))]
これは図9に示すが、ピットが円形に近い12角形、6角形であるので中程度の稠密の配列となる。正方形の一辺の長さをピッチpと呼ぶ。これはパターンの繰り返し周期である。もしも隣接のピットが互いに接触するならピットの直径dはピッチpにほぼ等しい(p=d)。図9の(a)はピッチの方向がGaN結晶の<11−20>と<1−100>の方向に平行である。図9の(b)はピッチの方向がGaN結晶の<11−20>と<1−100>の方向に対し45度をなす。この方位は低面指数で表現できない。
この図において同心円の中心の黒丸が閉鎖欠陥集合領域Hである。その周囲の白丸の部分がピットの広がりを示すがそれは同時に単結晶低転位随伴領域Zの範囲を示している。隣接する同心円の隙間にできる星芒形の領域が単結晶低転位余領域Yである。これは前例1よりも単結晶低転位余領域Yの面積が広くなる。C面から成長した領域(単結晶低転位余領域Y)は比抵抗が高いので導電性基板とする場合は好ましくない。しかしGaNデバイスチップの形状が正方形である場合などではこの方がずっと好ましい。実際デバイスチップとして有効に利用できるのは単結晶低転位余領域Yと単結晶低転位随伴領域Zであり、それが規則正しく広くなっているからデバイス配置に余裕がある。デバイスのピッチとピットのピッチを合致させると全て同じ条件でデバイスを作製することができ劈開も単純になる。
[3.二回対称性パターン(図10(a)、(b))]
これは図10に示すが、ピットが円形に近い12角形、6角形であるので稠密でない配列となる。基本は長方形である。その短辺側のピッチpと長辺側のピッチqを区別しなければならない。これはパターンの繰り返し周期に異方性があるということである。もしも隣接のピットが互いに接触するならピットの直径dは短ピッチpにほぼ等しい(p=d)。図10の(a)は短ピッチpの方向がGaN結晶の<11−20>の方向に平行である。図10の(b)は短ピッチpの方向がGaN結晶の<1−100>の方向に平行である。
この図において同心円の中心の黒丸が閉鎖欠陥集合領域Hである。その周囲の白丸の部分がピットの広がりを示すがそれは同時に単結晶低転位随伴領域Zの範囲を示している。隣接する同心円の隙間にできる幅の広い帯状の領域が単結晶低転位余領域Yである。これはqをpより大きくするに従って前例の2つよりも単結晶低転位余領域Yの面積が広くなる。デバイスチップとして有効に利用できるのは単結晶低転位余領域Yと単結晶低転位随伴領域Zであり、それが規則正しく広くなっているからデバイス配置に余裕があり実際のデバイスチップは矩形であるからこのパターンが最適だといえる。
結晶成長時の結晶表面に、底部に閉鎖欠陥集合領域を有しファセット面からなるピットを数多く規則正しく配列するのであるが、それらのピット間の最短の中心距離(ピッチp)は、50μm〜2000μmであるのが望ましい。
実際のデバイスをその上に作製することを考えるとデバイスのチップの大きさよりもピットピッチが小さいと使い難い。だから低転位単結晶のピットのピッチは最低50μmは必要である。それ以下ではデバイスを製造するのが難しい。
反対にピットピッチの上限は2000μm程度である。あまりにピッチが広くなるとピットの深さも大きくなる。研磨してピット部分は除去するがピットが広いと深さも大きく研磨厚みが大きくなるから無駄が増える。経済的に不利になるからピットのピッチは2000μm以下とする。それは経済的な理由による制限であってピッチがこれ以上であっても本発明の転位減少という効果は十分にある。
[閉鎖欠陥集合領域Hの形成方法]
ファセット面からなるピットの中央部底に発生する閉鎖欠陥集合領域Hの形成方法について説明する。図5(a)、(b)にピット一つ分についての成長を示す。図6では基板の平面図を示す。
本発明の結晶成長においては、ベースとなる下地基板21を使用する。窒化ガリウム単結晶を下地基板21としてもよいのは勿論である。しかし大型のGaN単結晶基板は容易に製造できないから、異種材料を基板とするのが現実的である。異種基板でもGaN基板でもよいのであるが、その下地基板21の閉鎖欠陥集合領域となるべき部位に閉鎖欠陥集合領域の種23を配置する。この図はピット、種、閉鎖欠陥集合領域の一つ分だけを図示しており実際には表面に多数のピットが形成されるのである。
種23は幾何学的に規則正しく基板表面に配置される。平面図は図6(a)に示すとおりである。ここでは下地基板21の上に六回対称となる位置に種23を配置している。下地基板21の残りの部分19は基板面が露呈している。GaN結晶22を下地基板21と種23の上に成長させる。GaNは種23の上には成長しにくいが下地の上は成長しやすい。成長の難易の差を利用しピットを生成する。巧妙な方法である。図5(a)、(b)の(2)のように下地面の上には厚く結晶22が付いてその上は平坦面27(C面)ができる。種23の上は結晶が付きにくいからピット24(凹部)となる。ピット24は6つあるいは12のファセット面26からなる。種23の上にピット24ができる、ということが重要である。
さらにGaN結晶22を成長させると対向するファセット面26が種23の上で相合うようになる。そうなると種23の上にもGaN結晶の一部が堆積してゆく。この部分はピット24の底29となる。成長とともにピット24は上方へ移動する。ピット24の底29も段々に結晶が堆積してゆく。図5(a)、(b)の(3)はそのような状態を示す。
底29の下へ連続して成長する結晶25はその他の部分の結晶22とは異質である。底29の下種23の上に当たる部分の結晶25を閉鎖欠陥集合領域Hと呼ぶ。閉鎖欠陥集合領域Hとその他の結晶22との境界線30が結晶粒界Kである。それに対して内部を芯Sと呼ぶ。つまり種23−閉鎖欠陥集合領域H−底29が上下に並ぶ。種23の位置の上方に必ずピットの中央底がきて、種とピット底の間が閉鎖欠陥集合領域Hなのである。
ファセット26の直下の部分の結晶が単結晶低転位随伴領域Zにあたる。平坦面27の直下の結晶が単結晶低転位余領域Yに当たる。
ピット底29については二通りの場合がある。図5(a)ではピット底29の傾斜はファセット26の傾斜と同じであり同じ結晶方位の面である。しかし図5(b)の場合、ピット底29の傾斜は、ファセット26より傾斜がゆるいものになっている。傾斜が浅いピット底29は、ファセット面26と少し違う面となっているわけである。つまりc軸方向の面指数nが少し大きくなっているのである。ファセット面26が(11−22)だとするとそれに続く底29は(11−24)のように表現できる。
[多様な種の可能性]
閉鎖欠陥集合領域のもととなる種23は下地基板に直接に付けても良いし、下地基板にGaN層を薄くのせてからその上に付けてもよい。
種23は空間的に規則正しく配置すべきである。六回対称、四回対称、二回対称の種パターンについては既に説明した。
種の形態材料としては、GaNの成長しにくい材料であればよく、薄膜、粒子、異種基板面などがある。薄膜の場合は、非晶質薄膜、多結晶薄膜の両方を用いることができる。薄膜、粒子、基板面など形態が異なると種の作製法、配置法も異なってくる。
[種の作製方法1(薄膜の場合)]
下地基板の上に閉鎖欠陥集合領域とすべき部分に薄膜の種を乗せる。薄膜は二次元形状を有し、所望の形状、分布にパターニングする事が可能である。パターニングするには、フォトリソグラフィを用いる方法や、メタルマスクを使って薄膜を蒸着する方法、マスクを使った印刷法などが可能である。精度良くパターニングすることによって、閉鎖欠陥集合領域の位置精度が向上する。
個々の種の形状は円形、多角形などとすることができる。多角形というのは三角形、四角形、六角形、八角形などである。これは閉鎖欠陥集合領域Hの形状にも影響する。これら円形、多角形にパターニングした非晶質、多結晶薄膜の直径は1μm〜300μmとするのが好ましい。種の大きさによってその上に成長する閉鎖欠陥集合領域Hの大きさが大体決まる。閉鎖欠陥集合領域の直径として1μm〜300μm程度が良いので種の大きさもそのようにする。ただし種直径よりも閉鎖欠陥集合領域直径の方が僅かに小さいようである。
[薄膜の種材料の種類]
種にするための多結晶薄膜、非晶質薄膜は金属でも酸化物でもよいのであるが特に、
イ.SiO薄膜(多結晶又は非晶質)
ロ.Si薄膜(多結晶又は非晶質)
ハ.Pt薄膜(多結晶)
ニ.W薄膜(多結晶)
などが効果的である。
[種の作製方法2(粒子の場合)]
種は必ずしも薄膜にかぎらない。GaN多結晶粒子を下地基板の上に規則正しく配置することによって閉鎖欠陥集合領域の種とすることができる。GaN単結晶粒子を下地基板の上に規則正しく配置することによって閉鎖欠陥集合領域の種とすることができる。これらGaN粒子が下地基板の上に配置されることにより、その上には周りの単結晶部とは異なった方位の多結晶が成長する。
GaN粒子であるのにその上へのGaNの成長を遅延させピットを形成するというのはおかしいように思えるが、粒子は方位が違うので同じ材料のGaNの結晶成長でもそれを阻止する作用があるのである。だからGaNとはかぎらず、どのような材料の粒子でも良いのである。しかしGaN粒子とすれば拡散による汚染の恐れがないから最適なのである。
粒子は、薄膜と違って三次元な構造をもつのであるが、薄膜と同様にピット、閉鎖欠陥集合領域形成の効果を持つ。独立の粒子であるから自由に下地基板の上へ乗せれば良い。
[種の作製方法3(異種基板面の場合)]
種は必ずしも薄膜、粒子にかぎらない。異種の下地基板面そのものを種とすることができる。下地基板はGaNと違うのでGaNの成長速度が異なるからピットを生成する原動力を与えることができる。これも凝った方法である。
GaN以外の異種基板面をGaN層から周期的に露呈して種とするのである。それだけではわかりにくいがこういうことである。下地基板に一旦GaNエピ層(GaNバッファ層)を薄く成長させ、閉鎖欠陥集合領域Hを生成すべき部位のGaNエピ層を除去して下地基板を露呈させその上にGaNを再びエピ成長させると下地基板の上で成長が遅れピットを生成し閉鎖欠陥集合領域を作ることができる。
下地基板を露呈することによって種とする手法では、GaNバッファ層なしにGaNを成長させることになるからその上には閉鎖欠陥集合領域が生成されることが多い。先述の薄膜種もフォトリソグラフィによって生成できるが、基板面種の場合、陰陽が反対になることに注意すべきである。下地基板としては、サファイヤ、スピネル、SiC、GaAsなどを利用できる。
[種の作製方法4(GaNエピ層の上に薄膜を設ける場合)]
種は下地基板の上に直接に薄膜を設けるとは限らない。下地基板の上にGaNエピ層を成長させその上に異種材料の多結晶、非晶質薄膜マスクを積層し、マスクをフォトリソグラフィによって部分的に除去し残った薄膜マスクを種とすることもできる。つまり下地基板/GaN/薄膜種という構造となる。初めに述べたものはGaNがなくて下地基板/薄膜種となっていたので区別しなければならない。この薄膜種によってもピットをここから成長させ、ピット底に引き続いて閉鎖欠陥集合領域Hを成長させることができる。
[種の作製方法5(下地基板の上に薄膜を設ける場合)]
下地基板の上に直接に異種材料の多結晶、非晶質薄膜マスクを積層し、マスクをフォトリソグラフィによって部分的に除去し残った薄膜マスクを閉鎖欠陥集合領域Hの種とすることもできる。つまり下地基板/薄膜種という構造となる。
[種の作用(図5)]
種を設けた下地基板において、種以外の部位においては、GaNは下地基板からエピタキシャル成長する。しかし種はGaN成長を阻止する作用があり、GaNの成長が遅延する。遅延するが周囲の下地基板上エピ層が高く成長するとそれらが侵入してくるので種の上にもGaNが乗ってくる。それが成長条件に依存していろいろに変わる。種の上にできるGaNが多結晶であること(A)もある。
種の上に周りの単結晶が押し寄せてきて、種の上を単結晶とする場合もある。そのときでも周囲の単結晶とは結晶方位が異なる(B)。結晶方位が異なるが極性が反転することもある。また<0001>軸が共通で周りの単結晶より回転していることもある。あるいは少しだけ方位が異なる単結晶という場合もありうる。種の上にできるGaNが閉鎖欠陥集合領域Hであるから、条件によって閉鎖欠陥集合領域Hの構造が多様に変化する。
[ELOマスクと閉鎖欠陥集合領域種マスクとの併用1(同時的)]
ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)というのは、規則正しく小窓を配置したマスクを下地基板の上に付け小窓面に孤立したGaN層をエピタキシャル成長させ、GaN層がマスク厚みを越えると転位方向が横向きになりGaN層が隣接窓間の二等分線で相合したときに転位が衝突して消滅するようにしたもので、初期に転位を低減させることができる精妙な手法である。これは本発明者の先願である特許文献1(特願平9−298300号)、特許文献2(特願平10−9008号)にも書いてある。マスクを越えて横方向へ層を延ばし転位を横に走らせるからラテラルといい、マスクを越えて成長させるのでオーバーグロースと呼ぶ。
ELOマスクは遮蔽部面積が広く開口部面積が狭くて、小面積の小窓が規則正しくポツポツと開いているというようなネガ型のマスク(遮蔽部面積>50%)である。これもくまなく敷き詰めた正三角形の頂点に小窓を配置し、マスクパターンは六回対称とすることが多い。この点でこれまで述べた閉鎖欠陥集合領域H種のパターンと似た点もある。
しかし相違点が明確に存在する。ELOマスクにおいて、小窓は小さくて小窓配列のピッチも細かい。小窓径も、ピッチも数μmの程度である。遮蔽部面積が広く開口部面積が狭いネガ型のマスク(遮蔽部面積>50%)である。
種パターンはより大きい種(直径;1μm〜300μm)が広くまばらに(50μm〜2000μm)分布したようなパターンである。遮蔽部面積が狭く開口部面積が広いポジ型のマスク(遮蔽部面積<50%)である。このように形状、寸法が異なる。
作用も異なるので混同してはならない。そもそもELOは転位を消滅させるのが目的であり、閉鎖欠陥集合領域Hの種は積極的に閉鎖欠陥集合領域Hを形成するのが目的である。
種パターンは空白部(下地基板が露呈する部分)が広い。空白部にELOマスクを載せる。つまり下地基板は種パターンとその空白部に形成したELOマスクという2種類の別異のマスクによって覆われるということになる。まことに複雑で洗練された手法である。例えば図6(a)において、下地基板21の上に種23を6回対称に配置しているが、広い空白部19が残る。その空白部19にELOマスクを載せるというのである。マスク材料は同じものであってかまわない。SiO、SiNや金属マスクを利用できる。マスク材料が同一なら一回の蒸着、フォトリソグラフィ或いは印刷でマスクを形成できる。
そのような複合マスクの作用は別々のものである。ELOマスクでのGaN成長においては転位を横向きにして初期に転位を減らす作用がある。種マスクの種では、ピットと閉鎖欠陥集合領域Hが形成される。そのような作用は単に相加的である。しかし成長初期に転位が減少しており少なくなった転位を閉鎖欠陥集合領域Hが吸収し消滅、蓄積するので単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Yでの低転位化が一層推進される。
[ELOマスクと閉鎖欠陥集合領域種マスクとの併用2(経時的)]
ELOマスクを、種の空白部19(図6(a))に設ける先述の方法はマスク形成、GaN成長が一度でできるという利点がある。しかし種23のない空白部19だけにELOマスクを付けるので成長条件が場所によって相違することになる。それが好ましくないという場合は、初めに下地基板の上にELOマスクを付けELO成長して薄い低転位GaN層を作りその上に種マスクを付けてファセット成長させるように2段階の成長をさせるとよい。下地基板の上にGaNの薄いバッファ層を成長させてからELOマスクを付けてもよい。その後ELO成長させ、種マスクを付けファセット成長させるのは同様である。
上記の方法では、初めに、下地基板の上、或いはGaNバッファ層を有する下地基板の上にELOマスクを形成する。これはSiNやSiOの薄膜(100nm〜200nm程度)を形成してくまなく並べた一辺が数μmの正三角形の頂点位置に小窓(円形、角型、短冊型)をエッチング除去して形成する。その上にGaNバッファ層(80nm〜130nm程度)を低温で気相成長させる。バッファ層は格子不整合を調整するための層である。その上にGaNエピタキシャル層を高温で気相成長させる。ラテラルオーバーグロースによってGaN層を低転位化する。
その上に先述の種パターンを設ける。これは薄膜でも粒子でもよい。パターンサイズが大きいのでELOとは区別できる。種パターンを持つGaNエピタキシャル層の上にGaNを成長させると、種に続いてピットが形成されピットの底部には閉鎖欠陥集合領域Hが生成される。ピットの傾斜面の下には単結晶低転位随伴領域Zができる。ピットとピットの間はC面成長となりその下は単結晶低転位余領域Yが生成される。2段階の異なる低転位化のための成長を用いているからいっそうGaN結晶は低転位になる。
[ファセット面からなるピットの位置の制御法]
種パターンを下地基板に(下地基板の上にGaNバッファ層を設けたものでもよい)配置しその上にGaNをファセット成長させると種の上に一体一対応してピットが発生する。それは本発明の根本であってこれまでにもたびたび説明した。図6の(a)の種パターンと、(b)のGaN厚膜の配置を比較すればよく理解できる。
本発明は、下地基板の上に予めピット発生のための種を配置しその上からGaNを結晶成長させて、種の場所に優先的にピットを発生させる。
具体的には、パターンニングした非晶質、多結晶薄膜種を離散的周期的に下地基板の上に配置しておきその上から窒化ガリウムを成長させ、薄膜種の上に優先的にピットを発生させることができる。それはパターンニングした非晶質多結晶薄膜種の上にGaN結晶成長させると種と下地基板余白部分で成長の条件が異なり種部分での成長が遅延するから種を底にするピットが形成されるからである。
種となるものは金属、酸化物、窒化物など任意であり、薄膜であっても粒子であっても良い。下地基板とGaNバッファ層の組み合わせで種を作りだすこともできる。これについては詳しく述べた。非晶質多結晶薄膜としては、SiO膜、SiN膜が特に効果的である。種として微粒子を用いることもできる。下地基板あるいは下地基板の上に薄いGaNバッファ層を設けたものの上に微粒子を規則正しく配置させその上からGaNをファセット成長させる。そうすると微粒子の上とその他の部位での成長条件が異なるから微粒子の上に底がくるようなピットが優先的に形成される。
そのための微粒子としては異種金属の微粒子や、酸化物の微粒子を用いることもできる。またGaN多結晶微粒子、GaN単結晶微粒子をも使うことができる。このように下地基板の上に空間的に規則正しく種を配置してその上にGaNをファセット成長させると種位置にピット底がくるようになる。ピット位置を予め決めることができる。ピット底には閉鎖欠陥集合領域Hがあり、ピットの傾斜面(ファセット)の下には単結晶低転位随伴領域Zがあり、ピットの外のC面成長平坦部下には単結晶低転位余領域Yがあるのだから、種の配置によってこれら3つの領域H、Y、Zを厳密に正しく与えることができる。
[平坦な窒化ガリウム基板の製造]
従来のGaAs基板などに窒化ガリウム結晶を成長させる場合は例外無く平坦なC面成長を行っていた。C面成長の場合表面は綺麗な平坦面を保持して成長させていた。それは均一に大量の転位が分布し高転位のものであったが表面は平坦であった。先述のELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)成長の場合も平坦C面成長であった。それであれば平坦面をそのまま利用することができる。
しかし本発明者の先願(特許文献6:特開2001−102307号)はファセット成長を初めて提案した。本発明もファセット成長に加えて種の播種による閉鎖欠陥集合領域Hの創成をいう成長方法を提案する。その成長方法もファセット面を維持しながら成長させるもので、できた結晶の表面はファセット面からなるピットを数多く含み極めて凹凸に富む。そのままでは凹凸のためにデバイスを作ることができない。
だから本発明の方法で製造された窒化ガリウムは必ず機械加工し研磨しなければならない。機械加工し、研磨した窒化ガリウム基板は平坦面をもち、デバイス製造のためのウエハとすることができる。機械加工としては、スライス加工、研削加工、ラッピング加工などを用いる。さらに裏面に付いた下地基板はエッチングや研磨、機械研削などによって除去する必要がある。下地基板を除いた裏面も同様に平坦に研磨する。
本発明は、GaN結晶成長において、閉鎖欠陥集合領域Hを保持して成長させ、閉鎖欠陥集合領域Hの芯Sと結晶粒界Kを転位の消滅場所、蓄積場所として利用することにより周囲の単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yを低転位化し、得られたGaN結晶を機械加工した後、研磨し、平坦な表面を有する基板とする。
或いは、本発明は、GaN結晶成長において、成長表面にファセット面からなるピットを形成し、ピット底に閉鎖欠陥集合領域Hを保持して成長させ、閉鎖欠陥集合領域Hの芯Sと結晶粒界Kを転位の消滅場所、蓄積場所として利用することにより周囲の単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yを低転位化し、得られたGaN結晶を機械加工した後、研磨し、平坦な表面を有する基板とする。
機械加工の方法としては、スライス加工、研削加工、ラッピング加工のうち一つあるいは二つ以上の組み合わせとなる。
本発明の結晶成長の下地基板としては、GaN、サファイヤ、SiC、スピネル、GaAs、Siなどの単結晶を用いることができる。
また、以上に述べてきた製造方法で、GaNの結晶成長を実施する際に、GaN結晶を厚く成長させインゴットとし、当該結晶をスライス加工することにより多数枚の窒化ガリウム結晶を得ることもできる。さらには、既に本発明の方法により作成したGaN基板を種結晶として、その上に厚く成長することができる。この際、注目すべきは、種結晶の閉鎖欠陥集合領域Hの上には閉鎖欠陥集合領域Hが成長し、単結晶低転位随伴領域Zや単結晶低転位余領域Yの上には単結晶低転位随伴領域Zまたは単結晶低転位余領域Yが成長するという事実である。別の表現をすると、種結晶の閉鎖欠陥集合領域Hの上にはファセット面からなるピットの底が形成され、そこには閉鎖欠陥集合領域Hが形成され、また、種結晶の単結晶低転位随伴領域Zや単結晶低転位余領域Yの上にはファセット面からなるピットの斜面および水平なファセット面が形成され、単結晶低転位随伴領域Zまたは単結晶低転位余領域Yが成長する。結局、このように種結晶として本発明によるGaN結晶を用いて厚くGaN結晶成長を実施した場合、前述のインゴットとほぼ同等なインゴットを得ることができる。これらのインゴットからスライス加工することにより、多数枚の窒化ガリウム結晶を得ることができる。
[本発明の窒化ガリウム基板]
本発明の結晶成長方法、製造方法によって作製された窒化ガリウム基板について述べる。機械加工研磨した後の基板であるから平坦であり、下地基板も除去されている。図7に本発明の下地基板除去・平坦化後のGaN基板を示す。これはCL(カソードルミネセンス)による観察像を斜視図にして分かりやすく示したもので肉眼視像でも顕微鏡像でもない。肉眼でみれば単に透明のガラスのようなものである。
規則正しくパターンが並んでいる。同心円状の繰り返しパターンである。中心の黒い部分が閉鎖欠陥集合領域Hである。これはピット底に連続して成長する部分であり芯Sとそれを囲む結晶粒界Kからなる。結晶粒界Kと芯Sあるいは結晶粒界Kが転位の消滅、蓄積場所となっている。ピットは種に続いて形成される。種を下地基板へ規則正しく配置したので閉鎖欠陥集合領域H自体が規則正しく配列している。
この状態では基板を平坦に研磨したのでピットは存在しないし種もない。上下方向中間部の閉鎖欠陥集合領域Hだけが残る。閉鎖欠陥集合領域Hを同心状に囲む白地の部分が単結晶低転位随伴領域Zである。ピットの傾斜壁として成長した部分である。即ち、過去においてピットの傾斜壁であった部分である。ピットは機械研削などで除去しているから存在しないがその履歴にあたる部分が単結晶低転位随伴領域Zなのである。
単結晶低転位随伴領域Zは円状(十二角、六角)でありほぼ同一の寸法であるが、隣接した部分の間の単結晶部が単結晶低転位余領域Yである。単結晶低転位余領域Yも単結晶低転位随伴領域Zの低転位であり単結晶でありC面を表面とする。しかしCL像では明確な相違があって明度の差となって現れる。
本発明の窒化ガリウム基板は、基板表面において一部に閉鎖欠陥集合領域Hを有し、その周囲に単結晶の低転位領域(Y、Z)を有するものである。
それはH+Y+Zよりなる基本組織体一単位にすぎない。一単位で小片に切断すればそのようになるし、ピット径が大きくて基板全体にピットを一つだけ形成したという場合もそのようになる。
或いは、本発明の窒化ガリウム基板は、基板表面において一部に閉鎖欠陥集合領域Hを有し、その周囲に単結晶の低転位領域(Y、Z)を有する基本組織体(H+Y+Z)を一単位として複数の基本組織体からなるものである。
以上が本発明の単結晶窒化ガリウム基板の基本である。
[閉鎖欠陥集合領域Hの種類]
これまでにもたびたび述べているが閉鎖欠陥集合領域Hには多様性がある。多結晶であることもあり、単結晶である場合もある。単結晶でも周囲の単結晶(Y、Z)と結晶方位が異なる。異なるといっても一筋縄ではゆかない。周囲単結晶と<0001>軸を共通にしてその軸回りに回転した単結晶のこともある。<0001>軸が反転している場合もある。さらに周囲の単結晶から結晶方位がわずかにずれている場合もある。
A.多結晶の場合
閉鎖欠陥集合領域Hが多結晶で、周囲の部分(Z、Y)は低転位の単結晶である。その場合は方位が違うから周囲部分との間に結晶粒界Kが明白に存在する。
B.周囲の単結晶部と結晶方位の異なる単結晶の場合
閉鎖欠陥集合領域Hが、単結晶であるが周囲の単結晶部と結晶方位が違う1個以上の結晶粒からなることもある。
閉鎖欠陥集合領域Hが、周囲の単結晶部とは<0001>軸のみ合致するが残りの3軸方向が異なる結晶方位の1個以上の結晶粒からなることもある。
閉鎖欠陥集合領域Hの結晶方位が、周囲の単結晶部とは<0001>軸方向の結晶方位が180゜異なり、極性が反転した単結晶領域からなる場合、有効である。また、その場合の閉鎖欠陥集合領域Hは単結晶以外でもよく、<0001>軸方向の結晶方位が180゜異なった一個以上の結晶粒であってもよい。
その場合は結晶粒界Kを境界として内外で(0001)Ga面と(000−1)N面が逆になっている。GaNは反転対称性がないので、[0001]と[000−1]面は相違する。
閉鎖欠陥集合領域Hが、周囲の単結晶部とは微傾斜した結晶方位をもつ1個以上の結晶粒からなることもある。
閉鎖欠陥集合領域Hが、周囲の単結晶部とは面状欠陥で仕切られている場合もある。
閉鎖欠陥集合領域Hが、周囲の単結晶部とは線状欠陥集合体で仕切られている場合もある。
C.周囲の単結晶部と結晶方位が同一である場合
閉鎖欠陥集合領域Hが、周囲の単結晶部と結晶方位が同一である単結晶であるが、周囲の単結晶部とは面状欠陥で仕切られている場合もある。
閉鎖欠陥集合領域Hが、周囲の単結晶部と結晶方位が同一である単結晶であるが、周囲の単結晶部とは線状欠陥集合体で仕切られている場合もある。
[閉鎖欠陥集合領域Hの内部構造]
閉鎖欠陥集合領域Hの内部には特に結晶欠陥が多い。転位群の集合や、面状欠陥が形成されることもある。境界である結晶粒界Kが面状欠陥、線状欠陥の集合体であることもあり、内部の芯Sが面状欠陥、線状欠陥の集合体であることもある。
本発明の閉鎖欠陥集合領域Hは、周囲の単結晶領域(Z、Y)とはその境界部において面状欠陥で仕切られ、内部は結晶欠陥を含む結晶領域となっている。
或いは、本発明の閉鎖欠陥集合領域Hは、周囲の単結晶領域(Z、Y)とはその境界部において線状欠陥の集合体で仕切られ、内部は結晶欠陥を含む結晶領域となっている。
本発明の閉鎖欠陥集合領域Hの芯Sに含まれる結晶欠陥は、線状欠陥あるいは面状欠陥であることが多い。
[閉鎖欠陥集合領域Hの形状]
閉鎖欠陥集合領域Hの直径は1μm〜200μmである。それは種の直径によって簡単に制御することができる。
基板表面において閉鎖欠陥集合領域Hがドット状に存在していることがある。その直径は5μm〜70μmであって、実際上は20μm〜70μmが好ましい。ドット状というのは単に孤立して点在するということを表現したことばであり、形状を限定していない。その形状については、
基板表面において、閉鎖欠陥集合領域Hが不定形であることもある。
基板表面において、閉鎖欠陥集合領域Hが円形であることもある。
基板表面において、閉鎖欠陥集合領域Hが角形であることもある。
閉鎖欠陥集合領域Hの形状は、種の形状、結晶成長条件、制御状況などによって変わる。
[転位密度の分布]
本発明の窒化ガリウム基板において転位密度を評価した。単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yにおいて平均の貫通転位密度は、5×10cm−2以下であった。
さらに細かく見てゆくと、閉鎖欠陥集合領域Hの極々近傍(単結晶低転位随伴領域Z)の30μm以内の領域では、貫通転位密度のやや高い1×10cm−2〜3×10cm−2の領域が観察されることがある。しかし、これから離れると極めて転位密度の低い10cm−2台程度以下の領域が見られる。低いところでは5×10cm−2の領域も見られた。
平均転位密度は閉鎖欠陥集合領域Hから離隔するにしたがって低減するという傾向が見られる。これは、閉鎖欠陥集合領域Hの転位の閉じ込めが完全ではなく、Hからの転位のほどけの発生が見られる為である。
これら転位密度は、透過電子顕微鏡(TEM)、カソードルミネセンス(CL)、エッチピット密度(EPD)測定などによって評価することができる。
[基板の方位]
本発明による転位低減の効果は、窒化ガリウムの成長方向が<0001>方向であるときに特に顕著である。つまり平均的な成長表面が(0001)面であり、かつC面を表面とするように切りだした場合に表面の転位密度減少が顕著に現れる。その場合最終的な窒化ガリウム基板の表面はC面(0001)である。
[転位の延長方向]
本発明の単結晶窒化ガリウム基板は、平均的な成長方向がc軸方向である場合、表面にはファセット面からなるピットを数多く形成し維持しながら成長させる。ピット底には閉鎖欠陥集合領域Hを伴う。ファセット面は面に直交する方向に成長し転位はピット中心にむかってC面に平行に移動するから中心へ集中する。ファセット面よりなるピットは転位求心作用(Centripetal Function)がある。そのメカニズムによって転位を中心の閉鎖欠陥集合領域Hに集中させる。だから周りの単結晶低転位随伴領域Zでは大部分の転位はC面平行で閉鎖欠陥集合領域Hにむかう求心的分布(Centripetal Distribution)をする。
[閉鎖欠陥集合領域Hの延長方向]
本発明の単結晶窒化ガリウム基板は、平均的な成長方向がc軸方向である場合、閉鎖欠陥集合領域Hは結晶内部でc軸方向に長く伸びて存在する。つまり閉鎖欠陥集合領域Hは基板厚みを横断している。それは成長時において、閉鎖欠陥集合領域Hも成長方向に平行に伸びるからである。だから平坦なGaN基板の表面が(0001)面(C面)であるとき、閉鎖欠陥集合領域Hは基板表面に垂直に伸びている。
本発明の結晶成長は表面にファセット面からなるピットを数多く形成し維持しながら成長させるので凹凸がある。だから機械研削し研磨して平坦平滑面をもつ基板に加工する必要がある。平均的な成長方向がc軸方向である場合、そうしてできた平面状基板は(0001)面を表面とする窒化ガリウム基板である。もちろん閉鎖欠陥集合領域Hが多結晶からなる場合、その部分だけは多結晶となる。また、閉鎖欠陥集合領域Hが周囲の単結晶領域とc軸方向に180゜反転している場合には、その部分だけは(000−1)面、すなわちGa面となる。その場合は、研磨完了した段階で閉鎖欠陥集合領域Hにおいて段差が生じ、若干低くなる。これは、研磨のされやすさの相違のためであると考えられる。
[閉鎖欠陥集合領域Hのパターン]
たびたび述べたが、閉鎖欠陥集合領域Hの周期的規則的分布のパターンをここで繰り返し説明する。
本発明のGaN結晶は、表面に垂直に伸び欠陥を多数含む閉鎖欠陥集合領域Hとこれを同心状に包囲する単結晶低転位随伴領域Zとその外側にある余空間である単結晶低転位余領域Yとからなる基本組織体を一単位としている。一単位でもよいが、これを規則正しく多数配列したものも本発明のGaN基板である。
二次元的に規則正しく配列するパターンは4つある。ア.6回対称(図8)、イ.4回対称(図9)、ウ.2回対称(図10)、エ.3回対称の4つである。これまでア〜ウについては繰り返し説明したが、エもあり得るのでここでは可能な全ての配列について述べよう。
[ア.六回対称パターン(図8)]
閉鎖欠陥集合領域Hとその周囲の単結晶低転位随伴領域Z、Yとからなる基本組織体を一単位として六回対称に、つまり隈無く敷き詰めた正三角形の頂点に閉鎖欠陥集合領域Hがくるように配列したものである。これは最稠密配列である。ピットは12角形で厳密には円でないが以下の説明では簡単に円だとして述べる。隣接ピットは外接するとして説明する。
正三角形の辺の方向つまり最短ピッチpの方向が<1−100>方向となるようにできる(図8(b))。ピット直径をdとするとピッチはp=dである。劈開したとき閉鎖欠陥集合領域Hの間隔hを広くできる。GaNの劈開面はM面{1−100}であるが方向にすると<11−20>である。<11−20>方向に切断したとき、ピットの直径をdとすると、閉鎖欠陥集合領域Hの間隔は、h=31/2dとなるということである。劈開と直交する方向の繰り返しピッチqは狭い。q=dである。
正三角形の辺の方向つまり最短ピッチpの方向が<11−20>方向となるようにできる(図8(a))。ピッチはp=dである。劈開(<11−20>方向に切断した)ときの閉鎖欠陥集合領域Hの間隔hが狭い。閉鎖欠陥集合領域Hの間隔は、h=dとなる。しかし劈開面に直交する方向のくりかえしピッチqを大きくできる。q=31/2dである。
H、Z、Yの断面積を比較する。単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Yの比はパターンが決まれば決まる。しかし同心のZとHの比はそれでは決まらない。ZとHの半径の比をξとする(ξ>1)と、
Z:H=ξ−1:1
Y:(H+Z)=2×31/2−π:π=1:10
である。単結晶低転位余領域Yが最も狭くなるパターンである。単結晶低転位余領域YはC面成長した部分であり伝導率が低い。単結晶低転位余領域Yの比率が低いので導電性基板としての用途に向いている。
[イ.四回対称パターン(図9)]
閉鎖欠陥集合領域Hとその周囲の単結晶低転位随伴領域Z、Yとからなる基本組織体を一単位として四回対称につまり隈無く敷き詰めた正方形の頂点に閉鎖欠陥集合領域Hがくるように配列したものである。
正方形の辺の方向が<1−100>方向となるようにできる(図9(a))。ピット直径をdとするとピッチはp=dである。劈開したとき(<11−20>方向に切断したとき)の閉鎖欠陥集合領域Hの間隔hは狭い(h=d)。劈開と直交する方向の繰り返しピッチqも狭い(q=d)。
正方形の対角線の方向が<1−100>方向となるようにできる(図9(b))。ピット直径をdとするとピッチはp=dである。劈開したとき(<11−20>方向に切断したとき)の閉鎖欠陥集合領域Hの間隔hは広い(h=21/2d)。劈開と直交する方向の繰り返しピッチqも広い(q=21/2d)。
H、Z、Yの断面積を比較する。
Z:H=ξ−1:1
Y:(H+Z)=4−π:π=1:3.66
である(ξはZとHの半径の比)。単結晶低転位余領域Yがより広くなる。閉鎖欠陥集合領域Hの間隔も広がり正方形チップのデバイスを作製するのに好適のものとなる。
[ウ.二回対称パターン(図10)]
閉鎖欠陥集合領域Hとその周囲の単結晶低転位随伴領域Z、Yとからなる基本組織体を一単位として二回対称につまり隈無く敷き詰めた長方形の頂点に閉鎖欠陥集合領域Hがくるように配列したものである。長方形の長辺と短辺の比をζとする(ζ>1)。
長方形の短辺の方向が<11−20>方向となるようにできる(図10(a))。ピット直径をdとすると短辺方向のピッチはp=dで、長辺方向のピッチはζdである。劈開したとき(<11−20>方向に切断したとき)の閉鎖欠陥集合領域Hの間隔hは狭い(h=d)。劈開と直交する方向の繰り返しピッチqは広い(q=ζd)。
長方形の短辺の方向が<1−100>方向となるようにできる(図10(b))。ピット直径をdとすると短辺方向のピッチはp=dで、長辺方向のピッチはζdである。劈開したとき(<11−20>方向に切断したとき)の閉鎖欠陥集合領域Hの間隔hは広い(h=ζd)。劈開と直交する方向の繰り返しピッチqは狭い(q=d)。
H、Z、Yの断面積を比較する。
Z:H=ξ−1:1
Y:(H+Z)=4ζ−π:π=1+4.66(ζ−1):3.66
である(ξはZとHの半径の比)。単結晶低転位余領域Yがさらにより広くなる。閉鎖欠陥集合領域Hの間隔も広がり正方形チップ、長方形チップのデバイスを作製するのに好適のものとなる。
[エ.三回対称パターン]
閉鎖欠陥集合領域Hとその周囲の単結晶低転位随伴領域Z、Yとからなる基本組織体を一単位として三回対称につまり隈無く敷き詰めた正六角形の頂点に閉鎖欠陥集合領域Hがくるように配列したものである。これは図8の構造において一つおきに基本組織体を除去したもので疎配列である。
正六角形の辺の方向つまり最短ピッチpの方向が<1−100>方向となるようにできる。正六角形の辺の方向つまり最短ピッチpの方向が<11−20>方向となるようにもできる。
H、Z、Yの断面積を比較する。単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Yの比はパターンが決まれば決まる。しかし同心のZとHの比はそれでは決まらない。ZとHの半径の比をξとする(ξ>1)と、
Z:H=ξ−1:1
Y:(H+Z)=3×31/2−π:π=1:1.5
である。単結晶低転位余領域Yが広くなるパターンである。六回対称のものの6倍程度である。単結晶低転位余領域Yは低転位で単結晶であるからこれが広いと余裕をもってデバイス作製をすることができる。
[閉鎖欠陥集合領域Hの間隔]
本発明の窒化ガリウム基板において、閉鎖欠陥集合領域Hの中心間距離は、50μm〜2000μmである。これはピット形成上の制約からくるものである。
[閉鎖欠陥集合領域Hが基板を貫通すること]
本発明の窒化ガリウム基板において、閉鎖欠陥集合領域Hはc軸方向に長く伸びている。閉鎖欠陥集合領域Hが基板を貫通して存在する。
c軸方向の結晶成長の場合、閉鎖欠陥集合領域Hはc軸方向に伸びる。C面を表面とする基板の場合、閉鎖欠陥集合領域Hが厚さ方向に基板を貫通する。
以上に説明した単結晶窒化ガリウム基板を用いて半導体レーザデバイスを作製することができる。非常に低転位であり、導電性の基板であるから長寿命の高性能レーザができる。
窒化ガリウムの成長方法については、すでに説明したように、HVPE、MOCVD法、MBE法、MOC法、昇華法がある。本発明の方法はどの製造方法を用いても実施することができる。
[実施例1(サファイヤ基板、図11)]
本発明のGaN基板を製造する方法(実施例1)を述べる。製造工程を図11に示した。下地基板としてサファイヤC面基板51を使用した。図11(1)はサファイヤ基板51を図示している。サファイヤは三方晶系(Trigonal symmetry)であり、GaNは六方晶系に属する。既に実用化されているLED、LDでは専らサファイヤC面基板が用いられている。
サファイヤ基板51に予めMOCVD法(有機金属CVD法)によって、厚さ約2μmのGaNエピ層52を設けた。表面はだからGaNのC面になる。
GaNエピ層52の上面に、厚さ100nmのSiO膜を一様に成膜した。これは種53を規則正しくGaNエピ層52の上に設定するためのものである。フォトリソグラフィによって所望の種パターン53を形成した。種パターンはマスクと呼ぶこともある。種パターン53は、同一サイズの正三角形を一辺の方向が<11−20>(a方向)となるようにくまなく敷き詰めてその正三角形の頂点に位置するように多数の円形部53を残しそれ以外の部分を除去したパターンである。円形部が種53となる。正三角形の配置は図8、図9に示すような六回対称の配置となる。それはC面上のGaNが六回対称であることに対応する。その状態を図11(3)に示す。
種パターンは六回対称であるが、円形部分の直径と、円形のピッチを変化させた次の4種類のパターンA、B、C、Dとした。それぞれの種パターンの円形部の直径と、円形部のピッチ(正三角形辺長)は次のようである。
パターンA 円形部径 50μm;正三角形辺長 400μm
パターンB 円形部径200μm;正三角形辺長 400μm
パターンC 円形部径 2μm;正三角形辺長 20μm
パターンD 円形部径300μm;正三角形辺長2000μm
それぞれの種パターンA、B、C、Dをもつ試料をサンプルA、B、C、Dと呼ぶことにする。
(1)サンプルA、サンプルBの成長
種パターンAをもつサンプルAと、種パターンBを持つサンプルBの上にGaN結晶を成長させた。成長法としてはHVPE法を用いた。縦長の反応炉は内部上方にGaメタルを収容したバリアボートを有し下方には、基板を上向きに戴置したサセプタが設けられる。サセプタの上に基板を設置する。ここでは、サンプルAとサンプルBをサセプタに載せて同じ条件でGaN成長させる。
反応炉の上方から水素ガス(H)と塩化水素(HCl)ガスをGaボートに供給するようになっており、アンモニアガス(NH)と水素ガスをサセプタに載せた基板の直近へ供給できるようになっている。水素ガスはキャリヤガスである。
実施例1では、反応炉は常圧としてGaボートは800℃以上に加熱した。サファイヤ基板は1050℃に加熱した。GaとHClでGaClが合成される。GaClが下降して基板付近に至りアンモニアガスと反応する。反応生成物であるGaNが、GaNエピタキシャル層52や種53の上に堆積する。
エピ層の成長条件は次の通りである。
成長温度 1050℃
NH分圧 0.3atm (30kPa)
HCl分圧 0.02atm( 2kPa)
成長時間 10時間
この成長の結果、パターンA、パターンBの上に、1200μm厚みのGaNエピ層をもったサンプルA、サンプルBが得られた。図11(4)はその状態を示している。
[サンプルAの観察(SEM、TEM、CL)]
まずサンプルAについて観察した。サンプルAは、逆12角錐のファセット面56からなるピットを一面に有している。ファセット面56からなるピットは基板上に規則正しく配列していることが顕微鏡観察によって分かった。
ピットの配列の規則性は初めのマスク(種パターン)と一致していた。しかもファセット面56よりなるピットの中心59の位置は初めにGaN層の上に与えた円形部(種)の位置と正確に合致していた。それは種53の直上がピット中心59だということである。ピット中心59は正三角形を敷き詰めたパターンの頂点に並ぶようになる。その正三角形は一辺が400μmであった。
サンプルAの表面に現れるピットの直径は約400μmであった。それは円形部の配列のピッチ(正三角形の一辺の長さ)と等しい。ということは種パターン53(SiO)の上にピットが円錐状に成長したということである。さらに隣接した種から成長したピットは互いに接触している事も分かる。
くまなく敷き詰めた繰り返し正三角形の頂点にかさなるように設けた種(円形部)53を中心としてファセット面56よりなるピットが成長していったということである。図11(4)において、種53の上に擂り鉢状のピットが存在する。擂り鉢状ピットの底59は先述の閉鎖欠陥集合領域55(H)となっている(閉鎖欠陥集合領域55の周囲の境界線60が結晶粒界となる)。隣接ピットの継ぎ目には平坦部57が存在する。継ぎ目平坦部分(C面)57は基板面から円形ピットを除いた十字型の部分である。
理解を速めるように結晶内部とピットの関係について予め結論を述べる。結晶の内部には、種53の上に成長した部分とそうでない部分がある。種53の上に成長した部分が閉鎖欠陥集合領域55とピット底59である。これが最も成長の遅れる部分である。だからピットの底59が閉鎖欠陥集合領域55となり成長が持続するとその上下が全部閉鎖欠陥集合領域となるのである。種53(SiO)はGaNでないから成長が遅くなりそのためにここがピットの底59になるのである。ピットは欠陥を集めながら成長が進行するので、成長の最も遅い種直上部分に欠陥が集合して閉鎖欠陥集合領域55となるのである。つまり結晶に表面のピット底59と、閉鎖欠陥集合領域55と、種53が上下に一対一の対応をするのである。
さらにピットの傾斜面の直下に成長した部分が単結晶低転位随伴領域54(Z)に該当する。その部分Zは単結晶になっている。上下方向に種周囲−単結晶低転位随伴領域Z54−ピット傾斜壁56という対応がある。ピットとピットの継ぎ目に僅かに平坦部57が残る。平坦部57の直下が単結晶低転位余領域58となる。その部分も単結晶である。上下方向に種隙間−単結晶低転位余領域58−平坦部57というような対応関係がある。
顕微鏡鏡観察によれば、12角形のピット間の隙間の部分の平坦部57は全て鏡面状の(0001)面となっていた。ピット内部の傾斜面(ファセット面)は{11−22}面、{1−101}面の集合となっていた。さらにピットの底にはやや角度の浅いファセット面59が存在している事が分かった。
サンプルAを、{1−100}劈開面で劈開した。劈開面に現れるピットの断面を観察した。断面観察は、走査型電子顕微鏡(SEM)とカソードルミネセンス(CL)によって行った。
この観察の結果ピット底59の下には、ある程度の幅をもってC軸方向(成長方向)に伸びている、他の部分と区別できる部分があることが分かった(後に閉鎖欠陥集合領域と命名する部分)。その区別可能な成長方向に伸びる部分(閉鎖欠陥集合領域H)は直径が40μm程であって、CLによって、他の領域に比べて暗いコントラストになった。この部分は明確に他の部分と区別できた。さらに様様の部分で劈開することによって、この区別可能なC軸方向延長部分が三次元的に柱状に存在している事が分かった。
さらにピット底59に続く柱状の部分をCL(カソードルミネセンス)とTEM(透過電子顕微鏡)によってより詳細に分析した。その結果転位の様子が他の部分と著しく相違する事が分かった。つまり暗い線状の境界線60によって囲まれた部分(閉鎖欠陥集合領域)は数多くの転位が存在した。転位密度で10〜10cm−2もの高転位密度であった。さらに暗い線状の境界線60(後に結晶粒界Kであることがわかる)は転位の集合体であることが分かった。
境界線60(結晶粒界K)によって囲まれる部分55は結晶欠陥の集合であることもわかった(これが芯Sに対応する)。結晶成長の方向に伸びる三次元的な構造をもつこの領域55は結晶欠陥を多数もっており、明確な境界線60で囲まれている。そこでその部分55を芯Sと呼ぶ。欠陥を含む芯Sとそれを囲む欠陥集合体である境界線(結晶粒界K)を併せて閉鎖欠陥集合領域Hと呼ぶことにした(H=K+S)。閉鎖欠陥集合領域はその他の部分よりずっと欠陥密度が高いし結晶の性質も相違している。そこでここを他から区別することが重要である。
閉鎖欠陥集合領域は図11(3)の種53の上にできるから閉鎖欠陥集合領域の位置を積極的に制御する事が可能である。この制御可能性が広い用途を展望を本発明に与えている。
目を閉鎖欠陥集合領域Hの外側に転じよう。暗い境界線(結晶粒界K)の外側の領域においては、転位密度は極めて低い。つまり境界線を境に転位密度は著しい非対称性を示す。境界線より外側は低転位密度になっており、境界線の極近くでは、10〜10cm−2の中程度の転位密度の部分が存在する。しかし境界線から離れるにしたがって転位密度は減少してゆく。境界線から100μm程度も離れると、転位密度は10〜10cm−2にも低下している。場所によっては境界線の近くでも転位密度は10〜10cm−2である部分もある。境界線の外部ではこのようにピットの中心59から離れるに従って転位密度は下がってゆく。
その部分の転位は少ないがその延長方向はほとんどがC面に平行である。C面に平行であってしかもそれは中心の閉鎖欠陥集合領域の方向へ伸びる傾向がある。
しかも閉鎖欠陥集合領域外部の転位密度は初めかなり高いが、成長とともに転位密度が低くなってゆくことがわかる。つまり境界線外部において積層の初期と終期を比較すると転位密度が徐々に減少していっていることがわかる。しかも境界線外部は単結晶であることがわかった。
つまりそれらの事実はこういうことを示唆している。境界線の外側の欠陥は成長とともにファセット面によって中央部(閉鎖欠陥集合領域)へと掃きよせられて、境界線に蓄積される。そのために外部での転位密度は減少し、境界線での転位密度は高いのである。境界線からさらに欠陥が内部の芯Sにまで入る。これら転位欠陥の境界線部と芯Sにおける存在比率等、詳しいことはまだわかっていない。
境界線の外部といっても煩雑であるから、その性質をとって単結晶低転位領域と呼ぶことにしたい。しかし境界線外部といっても二つの区別できる領域がある。つまりピットの傾斜壁56が通過した部分54と、ピットの隙間の平坦部57が通過した部分58は相違するものである。ピット傾斜壁56直下部分54はファセットに従って成長したことによって低転位になっている。だからここでは「単結晶低転位随伴領域Z」と呼ぶことにする。ファセットに随伴するから随伴領域と呼ぶのである。この部分は閉鎖欠陥集合領域に随伴する部分であるから閉鎖欠陥集合領域が高密度に(種が高密度に)存在することによって増える部分である。
平坦な部分57(C面に平行な鏡面部分)の直下の部分58は最も低転位であって綺麗な結晶質の領域である。これはファセット面が通過した部分でないがファセット面の影響によって低転位化した部分である。ファセットは円形や12角形をして上へ伸びてゆくからどうしても余分の部分が残る。同等の正三角形によって平面をくまなく覆う事ができるし、同等の正六角形によって平面を覆うこともできる。
しかし正12角形や円形によっては平面をくまなく覆うという事はできない。どうしても一部が残ってしまう。同一寸法の円形を隣接するように敷き詰めたとしても十字形の部分が残る。そのような部分は平坦部57の下の58になるがやはり低転位であり単結晶であることがわかった。ファセットの外側にあるのでここは「単結晶低転位余領域Y」と呼ぶことにする。「余」というのはファセットの残りの部分ということである。この部分は、閉鎖欠陥集合領域が高密度に存在するに従って面積が減少する。その点で先ほどの単結晶低転位随伴領域Zとは違う。しかし結晶が低転位であり単結晶である点は共通である。
つまり全GaNの表面Tは、閉鎖欠陥集合領域H、単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yの合計であり、閉鎖欠陥集合領域は芯Sと結晶粒界Kの和である。
T=H+Z+Y、
H=S+K
こうして用語を定義して結晶の区別をした。これによって本発明のGaN結晶の構造がより明確になった。
さらにこの閉鎖欠陥集合領域Hと、ピット内のファセット面56の関係について詳細に検討した。このピットを形成するファセット面は{11−22}面、{1−101}面が主流となっており、ピットの底59にはこれらのファセット面56に対してやや角度の浅いファセット面59が存在している。このことは先にも述べている。浅いファセット面59は何か?ということである。
調査の結果、より浅い部分により結晶成長がなされた部分が閉鎖欠陥集合領域Hに当たるという事が分かった。角度の浅いファセット面59と角度の深いファセット面56の境界に続くのが閉鎖欠陥集合領域Hの境界である結晶粒界K(60)である。サンプルAの場合角度の浅いファセット面が閉鎖欠陥集合領域Hを形成するということがハッキリした。
さらに角度の浅いファセット面59は、ピット底の両側から形成されている。角度の浅いファセットは周辺部ではc軸方向に伸びて結晶粒界Kになっている。角度の浅いファセット面は中心部ではc軸方向にのびて芯Sになる。両方併せて閉鎖欠陥集合領域Hとなる。芯Sの部分が転位密度が高い。ファセット面{11−22}面、{1−101}面によってピット中央に集められた転位は閉鎖欠陥集合領域Hの芯Sに蓄積される。それによって周辺部が低転位の単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yとなる。
本発明は常にファセットを保持しながら成長させることによって、閉鎖欠陥集合領域Hがファセットの底に付随し、しかも欠陥を結晶粒界Kに収束させることが明らかになってきた。一部は芯Sにも集積しているのかもしれない。そのようにして本発明の成長方法はファセット面によって閉鎖欠陥集合領域の周囲の部分の転位を低減しているということがわかる。
[サンプルBの観察(SEM、TEM、CL)]
サンプルBについてもSEM、TEM、CLによって観察した。その結果は似たようなものである。しかしサンプルBでは閉鎖欠陥集合領域Hの大きさが180μmと大きかった。サンプルAでは閉鎖欠陥集合領域直径が40μmであったからそれは直径で4倍以上、面積が20倍になる。閉鎖欠陥集合領域Hの形状は断面形状は不定形であり、三次元的には柱状である。
さらにサンプルBの閉鎖欠陥集合領域Hを詳細に調べた。閉鎖欠陥集合領域Hには、周囲の単結晶領域Z、Yに対して微傾斜している事が分かった。閉鎖欠陥集合領域Hの内部において、幾つかの結晶方位の異なる部分領域があることもわかった。部分領域の結晶方位はそれぞれ微傾斜している。サンプルBの閉鎖欠陥集合領域Hは、転位欠陥や、面状欠陥を含み、微傾斜したグレインを含むという事も分かった。
(サンプルA、サンプルBの加工)
サンプルA、サンプルBの基板を研削加工した。裏面のサファイヤ基板を研削加工で削り落とした。その後表面を研削加工して、平板な基板状とした。そのあと研磨加工して、平坦な表面を有するGaN基板とした。直径1インチ程度の大きさのGaN基板が得られた。図11(5)のような形状になる。ファセットがないが、ファセット中心部の直下は閉鎖欠陥集合領域H(55)に、ファセット壁の下は単結晶低転位随伴領域Z(54)に、平坦部(C面)の直下部分は単結晶低転位余領域Y(58)になっている。結晶粒界Kが境界60を与える。図11(5)は断面図だから区別して描いているが、肉眼でみた場合ガラス板のように一様な透明板にすぎないし顕微鏡でもそのような違いは分からない。
このGaN基板は、表面を(0001)面、C面とする基板である。基板自体は透明で平坦である。しかし基板表面のCL像を観察すると、結晶成長の履歴がコントラストとして観察できる。GaNのバンド端に近い波長の360nmの光でCL観察すると、閉鎖欠陥集合領域が400μmピッチで規則正しく並んでいるという事が分かった。これはマスク53のピッチと同じである。
また閉鎖欠陥集合領域Hは暗いコントラストとして見える事が多いが、場所によっては明るいコントラストとなる。必ずしもそれらの性質が合致しないことがある。明るい、暗いといってもCL像のことであり肉眼観察では全く一様であり透明平坦である。顕微鏡観察でも透明であり平坦である。CL像として初めて明るい、暗いという差異が出てくるのである。
しかしファセットのピット壁56に続いて成長した単結晶低転位随伴領域Zは、12角形の明るいコントラストとして見える。
平坦分57の下の単結晶低転位余領域Yは暗いコントラストとして見える。これはC面成長した部分である。CLによって観察するとコントラストによって、簡単に丸い閉鎖欠陥集合領域H、その同心円の単結晶低転位随伴領域Z、残余の単結晶低転位余領域Yを区別することができる。
閉鎖欠陥集合領域Hはc軸方向に伸びている。閉鎖欠陥集合領域Hは基板結晶を貫通して基板表面に垂直に伸びるものとして存在している。しかしながら基板に穴が開いている訳ではない。基板は一様な充填物である。CLによって初めて見える組織である。しかしながら、閉鎖欠陥集合領域Hの領域が、若干の段差が生じて窪んでいる場合がある。特にサンプルAについては0.3μm程の段差が見られた。これは閉鎖欠陥集合領域Hにおいて研磨時の研磨速度に若干の差があったためであると考えられる。
平坦な基板形状になっているから、貫通転位密度などは測定容易である。CL像、エッチピット、TEMによって観察することができる。しかしCL像で観察するのが最も容易である。
CL像では貫通転位は暗い点として観察される。サンプルB、サンプルAでは、閉鎖欠陥集合領域Hの内部に貫通転位が集中している事が分かった。閉鎖欠陥集合領域Hの境界に転位が集合して線状に並んでいるということも分かった。これは三次元的には面状欠陥に相当する。閉鎖欠陥集合領域HはCLでも暗い閉曲線(境界線;結晶粒界K)で明確に区別される。
閉鎖欠陥集合領域HはサンプルAでは40μm直径(種は50μm直径)で形状は角型、不定形であった。閉鎖欠陥集合領域はサンプルBでは180μm直径(種は200μm)であり、丸みを帯びた不定形であった。サンプルA、Bの違いは閉鎖欠陥集合領域の直径だけである。そしてそれは種(SiO)の大きさに依存する。
サンプルA、サンプルBともに閉鎖欠陥集合領域Hの外側(単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Y)は、転位は少なく、閉鎖欠陥集合領域Hから離れるにしたがって転位密度は減少する。場所によっては、閉鎖欠陥集合領域Hからすぐに転位密度が激減することもある。単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yにおいて平均の転位密度は5×10cm−2以下であった。単結晶低転位余領域、単結晶低転位随伴領域では転位はC面に平行で閉鎖欠陥集合領域Hに向けて走っているものが多い。だから転位は閉鎖欠陥集合領域Hに吸収蓄積されるのでその他の領域(単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Y)で転位が低くなるのだと考えられる。
サンプルA、BのGaN基板をKOH水溶液によって温度を上げてエッチングした。サンプルBについて観察すると、特に閉鎖欠陥集合領域が選択的にエッチングされやすいという部分が存在した。その他の単結晶低転位余領域、単結晶低転位随伴領域はエッチングされにくい。閉鎖欠陥集合領域にはエッチングされ易い部位とされにくい部位がある。ということは閉鎖欠陥集合領域Hは、Ga面である(0001)面だけではなくて(エッチングされにくい)、N(窒素)面である(000−1)面となっている部分もある、ということである。単結晶低転位余領域や単結晶低転位随伴領域はGa面(0001)面ばかりでエッチングされにくく、閉鎖欠陥集合領域は一部極性が反転しており窒素面(000−1)が出ているからKOHによってエッチングされ易いところが一部に出現したのであろう。このように閉鎖欠陥集合領域には極性が一部逆転した部位も存在する。
それに対し、サンプルAについて詳細に観察すると、大部分の閉鎖欠陥集合領域Hの部分がエッチングされ窪んでいた。さらにTEM(透過電子顕微鏡)観察結果と合わせて分析した結果、このサンプルAの閉鎖欠陥集合領域Hについては、大部分が周囲の単結晶領域とは結晶方位が<0001>方向に180゜逆転した単結晶からなることがわかった。よって、研磨後の表面は周囲の単結晶領域がGa面であるのに対し、閉鎖欠陥集合領域Hは窒素面である。さらに、詳細な解析の結果、サンプルAの数多くの閉鎖欠陥集合領域Hの中には、結晶方位が<0001>方向に180゜逆転しているが複数の結晶粒からなるところもあることが判明した。
また、これらの結果から、サンプルAの結晶成長時における閉鎖欠陥集合領域Hに相当する傾斜角の小さいファセットの面指数は、{11−2−4}、{11−2−5}、{11−2−6}、{1−10−2}、{1−10−3}、{1−10−4}であると考えられる。
サンプルA(種径50μm)、サンプルB(種径200μm)のGaN基板は基本的な性質は共通である。最も大きい相違は、閉鎖欠陥集合領域Hの大きさである(40μmと180μm)。それは種(SiO)の大きさによって予め決めることができる。基板面積をできるだけ有効に利用するためには、転位の多い閉鎖欠陥集合領域Hを小さくするのが良い。そして単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zを大きくするのが得策である。
しかしながらあまりに閉鎖欠陥集合領域Hを小さく(種を小さく)しすぎると、閉鎖欠陥集合領域Hがそもそも形成されないということがある。そうなるとファセット成長によって欠陥を掃き集めるということができず、単結晶低転位余領域や単結晶低転位随伴領域ができず転位密度を下げることができない。
[サンプルC(種径2μm、ピッチ20μm)の成長]
2μm径の種を20μm辺の正三角形の頂点に分布させたサンプルCについてGaN成長を行った。これは種直径が小さくピッチも小さい例である。前述のサンプルA、Bと同様にHVPE法で成長させようとした。すると2μm径の種(SiO)が埋まってしまいファセット成長させても、ファセット底が種から発生するというような関係にならなかった。だから種53によってファセット中心を規定することができなかった。ランダムなファセットの分布となってしまった。ピット位置の制御ができなかった。それは問題である。
そこでHVPE法をやめてMOCVD法により遅い成長速度でGaN結晶を成長させた。成長速度を落とすのは種(SiO)からピットを立ち上がらせるためである。
MOCVD法は金属Gaを使わず、Gaを含む有機金属を原料とする。ガス原料はトリメチルガリウム(TMG;3族ガス)とアンモニアガス(NH;5族ガス)と水素ガス(H;キャリヤガス)を用いる。
反応炉のサセプタにサンプルCを置いて1030℃に加熱し、原料ガスを常圧で3族:5族比=1:2000で供給してGaNの成長を行った。成長速度は4μm/hであり、成長時間は30時間であった。120μm程度の厚みのGaN層を成長させることができた。
これによって種53を底としたピット状のファセットを持った結晶成長が行われた。ピット底が種53の位置に合致するのでピット配置の制御が可能である。ピットの底には閉鎖欠陥集合領域Hが連続する。
サンプルCにおいては種の直径は2μmと極めて小さいが、ピット底にできた閉鎖欠陥集合領域Hもそれにつれて小さくて直径は1μm程度であった。つまり種53は閉鎖欠陥集合領域Hの位置を与えるだけでなくその大きさをも与えることができるということである。
ピットの傾斜面56の下に連続して単結晶低転位随伴領域Zが成長した。ピッチが狭いからこれは小さい円となる。TEM観察によってここは低転位で単結晶であることを確認した。ピット間の平坦面(C面)57に対応して単結晶低転位余領域Yも発生した。ここも低転位で単結晶であった。そのような性質はサンプルA、Bと共通である。閉鎖欠陥集合領域Hが極めて小さいというところがサンプルCの特徴である。HVPEでは不可能でもMOCVD法を使うことによって小さい種と同じ配置寸法の閉鎖欠陥集合領域Hの分布を得る事ができた。
[サンプルD(種径300μm、ピッチ2000μm)の成長]
300μm径の種を2000μm辺の正三角形の頂点に分布させたサンプルDについてGaN成長を行った。これは種直径が大きくピッチも大きい例である。前述のサンプルA、Bと同様にHVPE法で成長させた。HVPEの成長条件は次の通りである。
成長温度 1030℃
NH分圧 0.3atm(30kPa)
HCl分圧 2.5×10−2atm(2.5kPa)
成長時間 30時間
この成長によって、厚さ4.3mmのGaN厚膜結晶が得られた。サンプルDにおいては、逆12角錐形状のファセット面からなるピットが見られる。閉鎖欠陥集合領域Hは規則正しく配列していた。その位置は、初めのGaN膜の上に形成した種(SiOマスク)53の位置と正しく一致した。
しかしながら、ピット形状には崩れかかったところも多かった。またマスクに対応して規則正しく配列しているピット以外に小さいピットも発生していた。ピットの位置制御性が不完全である。
閉鎖欠陥集合領域Hは2000μmピッチで存在しそれは当初のマスク(種)53のピッチと等しい。そのような規則正しい位置にあるピットは直径が2000μm程度で逆12角錐の綺麗な形状のものもあった。しかし2000μmピッチで所定の位置にあるにもかかわらず形が崩れ隣接ピットがつながったものもあった。そのような形状乱れのあるピットの径(位置は正しいが)は約200μm程度で小さいものであった。閉鎖欠陥集合領域Hは転位密度は高かった。
しかし閉鎖欠陥集合領域が型くずれしていても所定位置にある閉鎖欠陥集合領域Hの周りには、単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zが生成されその部分の平均の転位密度は5×10cm−2以下であり低転位であった。
規則的配置からずれた部位(種に基づかない)にできた閉鎖欠陥集合領域Hの周囲には単結晶低転位余領域や単結晶低転位随伴領域の生成が明確でなくて低転位にならないところもあった。
サンプルA〜Dによる実験によって、
閉鎖欠陥集合領域Hの直径は1μm〜200μm、
閉鎖欠陥集合領域を与える種(マスク;円形部)の直径は2μm〜300μm、
閉鎖欠陥集合領域のピッチは20μm〜2000μm
という条件で、充分に本発明の効果を得る事ができる、ということが明白になった。
[実施例2(GaAs、Si、サファイヤ基板;パターンA、H(A+ELO);図12)]
次の三種類の異種材料基板を準備した。
イ.(111)面GaAs基板
ロ.C面(0001)サファイヤ基板
ハ.(111)面Si基板
Siはダイヤモンド構造の立方晶系である。GaAsは閃亜鉛鉱構造(Zinc Blende)型の立方晶系である。GaNは六方晶系である。そのC面は3回回転対称性をもつ。立方晶系は(111)面だけが3回対称性をもつ。それでSiとGaAsは三回対称性の(111)面の基板を用いる。サファイヤは三方晶系である。c軸方向に成長させるためサファイヤはC面(0001)をもつ単結晶を基板とする。
図12(1)〜(3)にGaNの成長方法を図示した。サンプルA〜Dは異種基板の上に2μm厚みのGaN層を付けてからマスク(SiO)材を付けて種53を形成したが、実施例2では初めから異種材料下地基板51の上にマスク材をつけて種53を形成する。直接異種基板51に0.1μm厚みのSiO層を形成しフォトリソグラフィによって周期的に設けた正三角形の頂点に円形部が残留するような六回対称性のあるパターンの種53を形成した。
実施例2で用いられる種53の配置パターンはAとパターンHの二つである。パターンAは実施例1と同じである。パターンHはパターンAにELO(ラテラル成長)マスクを重ね合わせたハイブリッド型である。
(パターンA) 実施例1のパターンA(50μm直径、400μmピッチ)と同様の配置とする。つまり一辺400μmの正三角形の集合を想定しその頂点に直径50μmの円形部を設けたものである。これはそれ以外の面(余白19:図6(a))はそのままで何も付けないというものである。
(パターンH) パターンA(50μm直径、400μmピッチ)とELOマスクを重畳したハイブリッドなマスクとする。パターンAというのは、一辺400μmの正三角形の集合を想定しその頂点に直径50μmの円形部を設けたものである。これは開口部の方が広い面積をとるようなパターンである。その円形部のない部分(余白部19)にELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)マスクを付ける。ELOマスクとしてはというのは、ラテラルオーバーグロースを行うときに用いられるマスクパターンである。それは開口部は少なくマスク面積の方が広いようなパターンである。例えばここでは一辺が4μmの正三角形をくまなく敷き詰めたパターンの正三角形の頂点に直径2μmのドット状の開口部(窓)を配置したものである。基準となる正三角形の一辺が、パターンAの正三角形の一辺の方向と平行になるようにしている。図12(1)ではあまりに細かいからELOパターンの図示を略しているが、種53の間に多数窓が存在する薄膜層を設けているのである。
異種基板の上に直接にマスクパターンを乗せるから、その方位はGaN結晶の方位によって定義できない。異種基板の方位によって定義する必要がある。パターンAの場合正三角形の辺の方向を基準方向ということにする。GaAs基板の場合は、基準方向が<1−10>方向とした。サファイヤ基板の場合は<1−100>方向とした。Si基板の場合は<1−10>方向とした。こうして基板の違うものとパターンの違うもので4種類のサンプルE〜Hを作製した。それぞれのサンプルは次のようなものである。
サンプルE;GaAs基板(111)の上に直接にパターンA(50μm直径円部、400μmピッチ)を種パターンとして設けたもの。
サンプルF;サファイヤ基板(0001)の上に直接にパターンA(50μm直径、400μmピッチ)を種パターンとして設けたもの。
サンプルG;Si基板(111)の上に直接にパターンAの種パターン形成したもの。
サンプルH;GaAs基板の上に直接にパターンH(パターンA+ELO)を形成したもの。
これらの試料のマスクを付けた状態は図12(1)に示す。実施例1と違うのは異種基板の上にGaN層を付けることなく基板へ直接にマスクパターンを形成したことである。サンプルE〜Hについて実施例1と同じようにHVPE法によってGaNの層を形成した。HVPE法は反応炉の上方にGaボートを有し、下方に基板を乗せるためのサセプタを有する。上方から水素ガスとHClガスをGaボートに供給してGaClを生成する。GaClが下方へ流れ加熱された基板に接触する部位においてアンモニアを供給してGaClとの反応によってGaNを合成する方法である。マスクの上へGaNバッファ層を低温で成長した後高温でGaNエピ層を厚く成長させる。GaNについて2段階の成長をさせる。
(1.GaNバッファ層の成長)
GaAs、サファイヤ、Si基板などの上にGaNバッファ層を次の条件でHVPE法により成長させた。バッファ層を設けるのは通常よく行うことである。
アンモニア分圧 0.2atm (20kPa)
HCl分圧 2×10−3atm(200Pa)
成長温度 490℃
成長時間 15分
バッファ層厚み 50nm
(2.GaNエピ層の成長)
低温成長したバッファ層の上にHVPE法により高温でエピ層を設ける。
アンモニア分圧 0.2atm (20kPa)
HCl分圧 2.5×10−2atm(2500Pa)
成長温度 1010℃
成長時間 11時間
エピ層厚み 約1300μm(1.3mm)
このように低温でバッファ層を、高温でエピ層を成長させる手法はよく知られたものである。サンプルE〜Hともに厚みは1.3mmで透明のGaN基板が得られた。外見は実施例1のサンプルと同様である。透明であってガラスのような感じがする。CLによって観察して初めて閉鎖欠陥集合領域、単結晶低転位随伴領域、単結晶低転位余領域などの違いがわかるのである。しかしファセット成長するから表面の凹凸(ピット)は顕微鏡観察でもよくわかる。
図12(2)に断面図を示す。4つのサンプルのいずれもファセット面56からなるピットを表面に多数有していた。ピット中心位置(底)59は、最初に種53(SiO)として設けたマスク位置と合致していた。つまり実施例1と同様に最稠密配列した直径400μmのピットが互いに接して表面上に存在する。ピットは逆12角錐であり中心部にはより角度の小さいファセットが存在することも確認された。
種53の上には閉鎖欠陥集合領域(H)55が続き、その上がピットの底59となっている。ピットの傾斜面56の下が単結晶低転位随伴領域Zとなり、C面の平坦面57の下が単結晶低転位余領域(Y)58となっている。単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zともに低転位で単結晶であった。
(研削加工)
サンプルE〜Hに研削加工をした。まず裏面を研削して、異種基板51であるGaAs基板、Si基板、サファイヤ基板を除去した。種53もついでに除去される。さらに表面も研削しピットを除いて表面を平坦にした。平坦な表裏面を有する基板ができた。直径は2インチ程度の平坦平滑透明の基板が得られた。図12(3)はその状態を示す。これら基板は全てGaN(0001)面(C面)を表面とする透明の基板である。基板表面に6回対称性をもって閉鎖欠陥集合領域(H)55が並んでいる。その中心は初めに設定した種53と一致する。それぞれの閉鎖欠陥集合領域Hは不定形であった。閉鎖欠陥集合領域Hの直径は約40μmであった。それは種パターン(50μm直径、400μmピッチ)に対応した寸法である。六回対称性をもつSiO種53の上に閉鎖欠陥集合領域が成長すると考えればうなずける結果である。
閉鎖欠陥集合領域Hの内部では転位密度は高いが、閉鎖欠陥集合領域から離れるにしたがって転位密度が下がる。閉鎖欠陥集合領域Hの外側の単結晶低転位余領域(Y)58、単結晶低転位随伴領域Zでは低転位密度となっていた。いずれのサンプルでも、5×10cm−2以下の低転位であった。より具体的には、単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yの平均転位密度は、
サンプルE(GaAs基板); 2×10cm−2
サンプルF(サファイヤ基板); 1×10cm−2
サンプルG(Si基板); 3×10cm−2
サンプルH(GaAs基板); 9×10cm−2
であった。いずれも十分な低転位密度になっている。下地基板に対する依存性があるようである。E、F、Gの中で最も転位密度を低くするものはサファイヤ基板(F)である。ついでGaAs基板(E)が転位密度を低くする。Si基板(G)は転位低減の作用が最も弱いようである。
さらにELOの手法を併用したサンプルHは最も低転位化が著しい。種マスクだけのサンプルEと比べて、平均転位密度が約半分に減少している。種マスクによる低減(閉鎖欠陥集合領域H)とELOマスク(方向転換と衝突による転位低減)の作用が大体同じ程度であることが推定される。
閉鎖欠陥集合領域Hの状態も実施例1と同様であった。ファセット面よりなるピットが最初の種53の上に成長してゆき、ピットの底に転位が集中して閉鎖欠陥集合領域が形成される。転位が閉鎖欠陥集合領域に集中するからその他の単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yでは転位が減っている。
(サンプルEの不思議)
サンプルE(GaAs基板;パターンA)についてはサンプルを2枚作製した。不思議な事に2枚について成長結晶の様子が異なっていた。サンプルEの1枚は、実施例1や実施例2として先述のように閉鎖欠陥集合領域Hと単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yが明確に区別され、Z+Yでは低転位となっていた。しかしサンプルEのもう一つの基板には、ファセット面からなるピットは種53の上に正しく六回対称の位置に生成されていたがピット中央に閉鎖欠陥集合領域Hが存在しないということがわかった。それはCL像をみることによって分かる。同じ製法で違うものができたのは不思議な事である。
(閉鎖欠陥集合領域を欠くサンプルE)
そのサンプルEをより子細に調べてみると、ピットの底59に続く筈の閉鎖欠陥集合領域Hがなくてファセットによって集められるべき転位の束が広い領域に広がっているのだ、という事が分かった。平均の転位密度は6×10cm−2であった。だから他のサンプルの単結晶低転位随伴領域や単結晶低転位余領域より転位密度が高い。このサンプルEにおいて、幾つかのピットにおいては、ピット中央59から線状に転位群が並んでいた。線状欠陥の周りには面状欠陥も存在した。この面状欠陥は図1(b)の互いに60度の角度をなす面状欠陥である。線状欠陥は面状欠陥の交線でありピット底の直下に延びる。面状欠陥はピット中心から100μm以上にわたって延びているものもあった。これは一旦集中した転位がばらばらに分散したと考えられよう。
サンプルEの一つのように閉鎖欠陥集合領域が消失している場合は、ファセットからなるピットにおいて転位の集積集合がうまく行われず、転位が広がり、面状欠陥がピット底に出現する。もちろんその場合でもピットの配列は種の配列を正確に転写している。しかしピット底部に閉鎖欠陥集合領域Hが形成されない(空ピット)。そのため低転位化がなされていないのである。空ピットではだめなのである。
つまり低転位GaN結晶を作ろうとする本発明を実効あるものにするには、ピットが種の配列を忠実に転写して生成されることと、ピット底に閉鎖欠陥集合領域Hが生成されることの二つの条件が必須だということである。ピットが規則的に形成されただけでは不十分である。さらにピット底に閉鎖欠陥集合領域Hが形成されなければならないのである。本発明のGaN基板において、閉鎖欠陥集合領域Hの重要性が理解できよう。
[実施例3(マスクの種類)]
面方位(111)As面を有するGaAs基板を複数枚下地基板として用意した。マスク(種パターン)の差異がどのような効果をもつのか確かめるために基板に異なる薄膜の種パターンを作製する。
(111)As−GaAs基板に直接に、厚さ0.15μmのSi薄膜を形成したもの(I)、厚さ0.2μmのPt薄膜を形成したもの(J)、厚さ0.2μmのW薄膜を形成したもの(K)、厚さ0.1μmのSiO薄膜を形成したもの(L、M)を作製した。
レジストを塗布しフォトリソグラフィとエッチングによって、薄膜の一部を除去し種パターンを作製した。
種パターンは、SiN薄膜(I)、Pt薄膜(J)、W薄膜(K)については、実施例1で述べた六回対称のパターンA(図6(a))とした。パターンAは、一辺400μmの正三角形の繰り返しからなるものの頂点に50μm直径の円形種を配置したものである。正三角形の一辺(ピッチ)方向がGaAs基板の<1−10>方向に平行になるようにした。
SiO薄膜基板については四回対称のパターンLと二回対称のパターンMを作製した。パターンLは、一辺400μmの正方形の繰り返しからなるものの頂点に50μm直径の円形の種を配置した四回対称のものである。パターンMは、400μm×600μmの長方形の繰り返しからなるものの頂点に50μm直径の円形の種を配置した二回対称のものである。パターンLは繰り返し正方形の一辺の方向がGaAs基板の<1−10>方向に平行になるようにした。パターンMは繰り返し長方形の短辺の方向がGaAs基板の<1−10>方向に平行になるようにした。
4種類の薄膜をX線回折法で調査した。Si薄膜(I)は非晶質、Pt薄膜(J)は多結晶、W薄膜は多結晶、SiO薄膜は非晶質であった。
これら5種類の種マスクをもった試料をサンプルI、J、K、L、Mとする。
サンプルI;Si薄膜のパターンAを直接形成したGaAs基板
サンプルJ;Pt薄膜のパターンAを直接形成したGaAs基板
サンプルK;W薄膜のパターンAを直接形成したGaAs基板
サンプルL;SiO薄膜のパターンLを直接形成したGaAs基板
サンプルM;SiO薄膜のパターンMを直接形成したGaAs基板
その後、これらサンプル基板上にHVPE法によって、GaNの成長を行った。実施例3におけるHVPE法は実施例1、2におけるものと同じものである。
ホットウォール型反応炉の上方にGaボートがあり下方に基板を載せたサセプタがある。Gaは800℃以上に加熱されてGa融液になっている。基板も下記の温度に加熱される。上方から水素とHClガスをGaボートに吹き付けGaClを合成する。GaClが加工して基板の近傍に導入されるNH(+水素)と反応してGaNができるがそれが基板上に堆積してGaN層となる。
最初にバッファ層を低温で薄く成長させその上に高温で厚くエピ層を成長させる。条件は以下のようである。
(バッファ層の成長条件;HVPE法)
成長温度 490℃
NH分圧 0.2atm (20kPa)
HCl分圧 2×10−3atm(200Pa)
成長時間 20分
膜厚 60nm
(エピタキシャル層の成長条件;HVPE法)
成長温度 1030℃
NH分圧 0.25atm (25kPa)
HCl分圧 2.5×10−2atm (2.5kPa)
成長時間 13時間
膜厚 1800μm(平均)
平均1.8mmのGaN厚膜を堆積したサンプルは表面に多数のピットを持っていた。サンプルI、J、Kは外見上殆ど同じ表面形態をもっていた。逆12角錐上のファセット面からなるピットを多数有しており、しかもその位置が当初基板の上に設けた円形ドット状の種の位置と一致しており、正しく六回対称に並んでいた。つまり図6(b)に示すようになっていた。ピッチは約400μmであって、ピットの径も約400μmであり隣接ピットは外接しており二次元最稠密配列になった。外見上は実施例1のサンプルAと全く同じであった。つまり種の位置とピット中心位置が合致していた。
サンプルL、Mについても逆12角錐のファセットからなるピットが数多く見られるという点では同様であった。しかしその配列が違いサンプルLは400μmピッチの正方形パターンからなる四回対称のものとなった。
サンプルMは短辺400μm、長辺600μmの矩形パターンからなる二回対称のものとなった。これらにおいても種の位置とピット中心位置が合致していた。
サンプルMでは長方形の長辺にそってピット・ピット間の広い間隙が生ずる(単結晶低転位余領域Y)。この単結晶低転位余領域Yにおいては種に対応しないピット発生が所々に散見された。しかし大体においてピットと種は上下対応していた。
ファセット面からなるピットの底の形状を観察した。サンプルI、J、K、L、Mにおいては、ピット底にピット傾斜面を形成するファセット面よりも角度の浅いファセット面(c軸指数のnが大きい)の存在が確認された。しかしサンプルJに関してはピット底にごつごつした凹凸が見られた。
その後、これら5種類のサンプルI〜Mを研削加工した。つまり裏面のGaAs基板を研削加工によって削り落とし、それから表面を研削加工して平板な基板状とした。そのあと研磨加工を施して、平坦平滑な表面を有する基板とした。2インチ程度の直径の基板が得られた。
これらサンプルI、J、Kの基板は、表面を(0001)面、つまりC面とする基板である。基板自体は平坦で透明である。表面には閉鎖欠陥集合領域Hが規則正しく並んでいた。サンプルI〜Kについては閉鎖欠陥集合領域が六回対称に並び、閉鎖欠陥集合領域Hの形状はサンプルI、K、L、Mにおいては角型を含んだ不定形であった。直径は40μm程度であった。しかしサンプルJにおいては、閉鎖欠陥集合領域は直径が50μm〜80μmにばらついており、その形状は円形、丸みを帯びた不定形であるものが多かった。
いずれのサンプルにおいても、閉鎖欠陥集合領域の外側では、転位は少ない。閉鎖欠陥集合領域から離れるに従って転位密度は減少する。場所によっては、閉鎖欠陥集合領域の境界から転位は激減することも確認した。
閉鎖欠陥集合領域Hの外側の単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yでの平均的な転位密度はいずれも5×10cm−2以下であった。より具体的には
サンプルI:1×10cm−2
サンプルJ:4×10cm−2
サンプルK:2×10cm−2
サンプルL:2×10cm−2
サンプルM:4×10cm−2
というような転位密度であった。サンプルI、K、L、Mにおいては、閉鎖欠陥集合領域Hの状況は、実施例1のサンプルAと同じであった。ファセット面からなるピットが円形マスク(種)を中心として形成され、円形マスク(種)上でピッチ底に続いて閉鎖欠陥集合領域が成長すること、転位が閉鎖欠陥集合領域Hに集められていることが分かった。
基板表面のCL像をとって観察したところPtを種としたサンプルJについては少し事情が相違することがわかった。閉鎖欠陥集合領域Hが多結晶であるということが判明したのである。
CL像、TEMにより閉鎖欠陥集合領域Hの構造を解析すると、閉鎖欠陥集合領域Hには多様な形態があるということが分かった。
サンプルJのように幾つかの結晶粒子からなる多結晶であることがある。そうでなくて結晶粒は1個(単結晶)であるがその周りの単結晶領域(Z、Y)とは異なる結晶方位を有する場合もある。あるいは周りの単結晶領域とは<0001>軸のみ一致するが異なる結晶方位を持つ場合もある。そのように多様な閉鎖欠陥集合領域Hがあるという事が分かった。
Ptを種としたサンプルJにおいても、ファセット面からなるピットが円形マスクを中心として形成され、円形マスク上で閉鎖欠陥集合領域Hが形成され、閉鎖欠陥集合領域Hがピット底に付随して成長することによって転位を閉鎖欠陥集合領域Hに集められている、という点は他のものと共通する。
サンプルJに顕著に現れた多結晶の閉鎖欠陥集合領域Hは、サンプルAやサンプルEについても認められた。それが特にサンプルJにおいてはっきりと現れた。多結晶の閉鎖欠陥集合領域Hは、成長初期に、円形のマスク上に形成されたGaNからなるポリ結晶が先に延びて、角度の浅いファセット面に埋め込まれる前に十分に延びていたために発生するに至ったためであると考えられている。
サンプルLについては、閉鎖欠陥集合領域Hが一辺400μmの正方形の頂点にくるように四回対称の位置に発生していた。サンプルMについては、閉鎖欠陥集合領域Hが400μm×600μmの長方形の頂点の位置に来るように2回対称位置に発生した。隣接した閉鎖欠陥集合領域の最近接の方向(ピッチ方向)はGaAs基板の<11−20>方向となっていた。サンプルL、Mのような配置によって閉鎖欠陥集合領域H、ピットの位置を直交系に配置することができる。正方形、長方形のデバイスを作製したとき転位分布、結晶性をそれぞれにおいて同一にすることができる。サンプルL、Mでは、パターンの配列方向(ピッチ方向)は<11−20>としたが、<1−100>としても良い。
[実施例4(GaN粒子を種とする;図13)]
GaN単結晶、GaN多結晶を粉砕してGaNの微粒子を作製した。この微粒子はGaNの単結晶、多結晶の微粒子である。その直径は10μm〜50μmにばらついていた。
さらにくまなく敷き詰めた一辺500μmの正三角形の頂点の位置に微細な穴を穿孔したメタルプレートを作製した。微粒子はフォトリソグラフィが使えないから規則正しい播種のためにステンシルとしてのメタルプレートを用いるのである。
基板としてC面を表面とするサファイヤ基板61を用意した(図13(1))。サファイヤ基板61の表面に予めHVPE法で厚さ約3μmのGaNエピ層62を全面に成長させた(図13(2))。
サファイヤ基板上のGaN層の上に正三角形の辺の方向がGaNの<11−20>に平行になるようメタルプレートをおいてその上からGaN微粒子をばらまいた。微細孔に微粒子が入り込みGaN層の上に付着する。メタルプレートを除去すると、GaN層の上に種としての微粒子63が6回対称の位置に配置されたことになる。それが図13(3)に示す状態である。
単結晶GaN微粒子と多結晶GaN微粒子をメタルプレートをとおしGaN層上に散布した2種類のものを作製した。それぞれをサンプルN、Oとする。
サンプルN:種としてGaN単結晶微粒子を配置したGaN層つきサファイヤ基板
サンプルO:種としてGaN多結晶微粒子を配置したGaN層つきサファイヤ基板
これら基板上に、HVPE法によってGaNの厚い層を成長させた。その手法は実施例1、2、3で述べたものと同じである。上方にGaボートを下方にサセプタをもつ反応炉のサセプタの上にサセプタ基板を戴置し、Gaボートは800℃に加熱し、HClと水素ガスをGaボートへ、アンモニアと水素ガスをサセプタへと導き、GaClを合成してから、アンモニアと反応させ、基板の上にGaN層を堆積させる。
(エピ成長条件)
成長温度 1050℃
NH分圧 0.3atm(30kPa)
HCl分圧 2.5×10−2atm(2.5kPa)
成長時間 10時間
成長膜厚 約1400μm
この成長によって、約1400μmのGaN厚膜層が得られた。サンプルN、Oは外見上は殆ど同じ表面形態をしていた。断面形状が図13(4)に示すようなものになった。逆十二角錐のファセット面66からなるピットが表面に規則正しい配列で存在する。ピットは表面で、二次元的に大体において最稠密配列しており直径500μmのピットが外接して存在する。ピット間には平坦部67(C面)がある。ピット底69を観察すると、ファセット面66よりも傾斜角の浅い別のファセット面(c軸面指数nが大きい)を有しているものもあることが観察された。
底69に続く部分が閉鎖欠陥集合領域(H)65であり、結晶粒界(K)70によって仕切られている。ファセット面66の直下で結晶粒界K70の外側が単結晶低転位随伴領域Z(64)である。平坦面67の直下が単結晶低転位余領域(Y)68である。つまりピット底69−閉鎖欠陥集合領域(H)65−種63が上下に並ぶ。ファセット66−単結晶低転位随伴領域Z、および平坦部67−単結晶低転位余領域(Y)68が上下に並んでいる。
サンプルN、Oの基板は凹凸があるから研削加工を行った。まず裏面を研削加工してサファイヤ基板61と種(微粒子)63を削り落とした。さらに表面を研削加工してピットを消滅させ平坦表面とした。さらに研磨した平坦平滑の表面をもつ平板基板とした。2インチ直径程度の大きさのGaN基板が得られた。
図13(5)に平坦平滑基板を示す。閉鎖欠陥集合領域Hとその両側の単結晶低転位随伴領域Z、さらに離れた部位の単結晶低転位余領域Yが断面に現れる。 これら基板N、Oは、表面を(0001)面つまりC面とする基板である。基板自体は透明であり肉眼では一様に透明にみえるだけである。CLやTEMでみると、閉鎖欠陥集合領域H、単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yを明確に弁別することができる。閉鎖欠陥集合領域Hは規則正しく、(種と同じ)六回対称位置に並んでいた。その(横断面)形状は不定形である。閉鎖欠陥集合領域Hの直径はばらつきがあるが、10μm〜70μmの程度であった。これは種である微粒子の直径のばらつきを反映している。
閉鎖欠陥集合領域Hの内部は高密度の欠陥が存在する。単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yでは転位は少なくて、閉鎖欠陥集合領域Hから遠く離れるに従って転位は減少する。結晶粒界K(70)から少し離れるだけで激減するところもあった。単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yでの平均的な転位密度は何れのサンプルでも5×10cm−2以下であった。それぞれは
サンプルN: 1×10cm−2
サンプルO: 2×10cm−2
という転位密度であった。閉鎖欠陥集合領域Hの状況は実施例1のサンプルAと同様であった。
実施例4ではメタルプレートによって微粒子を位置決めするから微粒子径のばらつきや散布のばらつきのために、フォトリソグラフィを使う実施例1、2ほど位置精度が高くない。このように微粒子も閉鎖欠陥集合領域Hの種として使えることが確かめられた。GaNの単結晶微粒子(サンプルN)でもGaN多結晶微粒子(サンプルO)でも差がない事も分かった。
ここでは不純物を避けるためにGaN自身を微粒子としたが、それ以外の半導体材料、金属材料、絶縁材料の微粒子でも同様に、閉鎖欠陥集合領域Hの種となりうる。そのような場合でも裏面研磨によって下地基板61とともに種63も除去するから最後の平坦基板の内部構造は変わらないわけである。
[実施例5(下地基板一部露呈部を種とする;図14)]
基板としてC面を表面とするサファイヤ基板71を用意した(図14(1))。サファイヤ基板71の表面に予めMOCVD法で厚さ約2μmのGaNエピ層72を全面に成長させた(図14(2))。
一辺400μmの正三角形の辺の方向がGaN72の<11−20>に平行になるよう正三角形を隈なく敷き詰めた種パターンをサファイヤ基板上の上に想定する。その種パターンの正三角形頂点に当たる部位のGaN層72に直径70μmの円形穴を開けた。図14(3)に示すようになる。GaN層72の上よりも下地基板面である円形穴73の上でのGaN成長が遅延する。だから円形穴の下地基板露呈面73が種として機能しうる。実施例5はこのように下地基板露呈部を種73とするものである。これは他の材料を使わないからGaNの純度が高くしかもフォトリソグラフィによって正確に位置決めできるという優れた利点がある。この種パターンもピッチ400μm、種径70μmである六回対称パターンである。これをパターンPとしそのパターンPを持つ基板をサンプルPとする。
サンプルP:種として異種材料下地基板露呈部をもつGaN層つきサファイヤ基板
この基板P上に、HVPE法によってGaNの厚い層を成長させた。その手法は実施例1、2、3、4で述べたものと同じである。上方にGaボートを下方にサセプタをもつ反応炉のサセプタの上にサセプタ基板を戴置し、Gaボートは800℃以上に加熱し、HClと水素ガスをGaボートへ、アンモニアと水素ガスをサセプタへと導き、GaClを合成してから、アンモニアと反応させ、基板の上にGaN層を堆積させる。
(エピ成長条件)
成長温度 1030℃
NH分圧 0.25atm(25kPa)
HCl分圧 2.0×10−2atm(2kPa)
成長時間 12時間
成長膜厚 約1500μm
この成長によって、約1500μmのGaN厚膜層が得られた。サンプルPの断面形状が図14(4)に示すようなものになった。逆十二角錐のファセット面76からなるピットが表面に規則正しい配列で存在する。ピットは表面で、二次元的に大体において最稠密配列しており直径400μmのピットが外接して存在する。ピット間には平坦部77(C面)がある。ピット底79を観察すると、ファセット面76よりも傾斜角の浅い別のファセット面(c軸面指数nが大きい)を有しているものもあることが観察された。
底79に続く部分が閉鎖欠陥集合領域(H)75であり、結晶粒界(K)80によって仕切られている。ファセット面76の直下で結晶粒界K80の外側が単結晶低転位随伴領域Zである。平坦面77の直下が単結晶低転位余領域(Y)78である。つまりピット底79−閉鎖欠陥集合領域(H)75−種73が上下に並ぶ。ファセット76−単結晶低転位随伴領域(Z)74、および平坦部77−単結晶低転位余領域(Y)78が上下に並んでいる。
サンプルPの基板は凹凸があるから研削加工を行った。まず裏面を研削加工してサファイヤ基板71とGaN層72(種73を挟む部分)を削り落とした。さらに表面を研削加工してピットを消滅させ平坦表面とした。さらに研磨した平坦平滑の表面をもつ平板基板とした。2インチ直径程度の大きさのGaN基板が得られた。図14(5)に平坦平滑基板を示す。閉鎖欠陥集合領域Hとその両側の単結晶低転位随伴領域Z、さらに離れた部位の単結晶低転位余領域Yが断面に現れる。
これら基板N、Oは、表面を(0001)面つまりC面とする基板である。基板自体は透明であり肉眼では一様に透明にみえるだけである。CLやTEMでみると、閉鎖欠陥集合領域H、単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yを明確に弁別することができる。閉鎖欠陥集合領域Hは規則正しく、(種と同じ)六回対称位置に並んでいた。その(横断面)形状は不定形である。閉鎖欠陥集合領域Hの直径は大体50μmの程度であった。フォトリソグラフィで下地基板露呈面73を正確に形成しているから直径のばらつきが少ない。位置のばらつきも少ない。精度の高い手法である。
閉鎖欠陥集合領域Hの内部は高密度の欠陥が存在する。単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yでは転位は少なくて、閉鎖欠陥集合領域Hから遠く離れるに従って転位は減少する。結晶粒界K(80)から少し離れるだけで激減するところもあった。サンプルPの単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yでの平均的な転位密度は1×10cm−2以下であった。閉鎖欠陥集合領域Hの状況は実施例1のサンプルAと同様であった。
このようにGaN層を一部除去した下地基板露呈面73も閉鎖欠陥集合領域Hの種として使えることが確かめられた。これはGaN層自体を種のネガとして利用するもので不純物汚染の問題がない。種の部分のGaNはどうせ削り取るのだからGaN結晶の厚み方向の不均一性はない。
[実施例6(GaN基板、パターンA;図15)]
実施例6について二種類のサンプルを準備した。一つは実施例1において用いたパターンA(種パターン円形部直径50μm、円形部ピッチ400μm)によって作成したGaN基板である(図15(1))。これは、既に下地基板が除去されているもので、表面加工が施され研磨もされており、基板上にエピタキシャル成長が実現できるよう準備を整えているものである。これをサンプルQとする。
もう一つは、サファイヤ基板上にSiO薄膜を成膜させたものを用いる。これは、あらかじめサファイヤ基板上にMOCVD法により厚さ2μmのGaNエピ成長層を設け、エピ成長層の表面に厚さ0.1μmのSiO薄膜を成膜して、フォトリソグラフィーによりパターン形成を行ったものである。作成プロセスは実施例1と同じであり、パターンAを用いている。これをサンプルRとよぶ。
これらサンプルQとサンプルRを用いて、QとRの上に同時にGaNエピタキシャル成長層を厚付した(図15(2)(3))。これには、これまでの実施例と同じHVPE法を成長法として採用した。反応炉に基板をセットした後、キャリアガスはH2ガスとして昇温し、1030℃の高温にてGaNエピタキシャル層を成長させた。エピタキシャル層の成長条件については下記のとおりである。なお、サンプルQ、サンプルRの基板径は共に30mm径である。
(エピ成長条件)
成長温度 1030℃
NH分圧 0.25atm(25kPa)
HCl分圧 2×10−2atm(2kPa)
成長時間 80時間
成長薄膜 約10mm
その結果、サンプルQ、サンプルRともに厚さが10mm程度のGaN結晶のインゴットが得られた。この二つのインゴットをそれぞれQインゴット、Rインゴットとよぶ。これらのインゴットはそれぞれが同様の表面形態を有して成長していた。すなわち、元のパターンに応じて2次元的に大体において最稠密配列して、径400μmのファセットからなるピットを敷き詰めた形になっている。特に注目すべきは、Qインゴットにおいて、特にパターンは設けず既に作成したGaN基板の上に更に成長を行っただけであるのに、成長後の表面形態はパターン形成したのと同等の表面形態になっていたことである。
さらに、Qインゴット及びRインゴットの端を縦に切断し断面を観察した。Qインゴットの断面を図15(3)に示す。その結果、Qインゴットにおいて種結晶の閉鎖欠陥集合領域55Hの上には閉鎖欠陥集合領域85Hが引き継いで成長し、単結晶低転位随伴領域54Zや単結晶低転位余領域58Yの上には必ずしも一致しないが単結晶低転位随伴領域84Zまたは単結晶低転位余領域88Yのどちらかが成長していることがわかった。もちろん、閉鎖欠陥集合領域85Hの領域は、ファセット面86からなるピットの底89に位置している。
これら二種類のインゴットにスライス加工を施し多数枚のGaN基板を切り出した後、表面研削加工、研磨加工を施した。スライス加工には、ワイヤーソーを用いた。その結果、それぞれのインゴットから9枚ずつのGaN基板が得られた(図15(4))。
これらの基板は、成長の終りの2〜3枚は異物欠陥等が見られたが、成長初期の6〜7枚は良好であると見られる。これらの基板は、表面を(0001)面、C面とする基板であり、基板自体は平坦で透明である。基板表面に閉鎖欠陥集合領域Hが大体において規則正しく6回対称に並んでおり、その形状は不定形であり、径は50μm程度であった。閉鎖欠陥集合領域Hの外側では転位は少なく、閉鎖欠陥集合領域部Hから離れるに従って転位密度は減少する。場所によっては閉鎖欠陥集合領域部の境界から転位は激減するところがあることも確認した。閉鎖欠陥集合領域部の外側の平均的な転位密度は、いずれも5×10cm−2以下であり、実用的なGaN基板として使用に耐えうるものであった。
この方法は、結晶成長の生産性向上につながる有効な製造方法であると考えられる。
本発明者が特開2001−102307号(特許文献6)において提案した表面にファセット面からなるピットを形成し維持しながらGaNを結晶成長させるファセット成長法においてファセットは平均的な成長方向とは別にピットの内向きに成長するので転位がファセット稜線に掃き寄せられるということを説明するための斜視図。(a)はファセット面が内向きに成長し転位が稜線に集まりピット底へ溜まることを示す斜視図。(b)はピット底に溜まった転位の間に強い斥力が生ずるから六方へ放射状に広がった面状欠陥が形成されることを説明する斜視図。
本発明者が特開2001−102307号(特許文献6)において提案した表面にファセット面からなるピットを形成し維持しながらGaNを結晶成長させるファセット成長法においてファセットは平均的な成長方向とは別にピットの内向きに成長するので成長とともに転位がファセット稜線に掃き寄せられさらにピット底の多重点に集中するということを説明するためのピットの平面図。
本発明者が特開2001−102307号(特許文献6)において提案した表面にファセット面からなるピットを形成し維持しながらGaNを結晶成長させるファセット成長法においてファセットは平均的な成長方向とは別にピットの内向きに成長するので成長とともに転位がファセット稜線に掃き寄せられさらにピット底の多重点に集中し底に続く転位の集合束を縦長に形成するということを説明するためのピットの断面図。(1)は成長とともにピット底へ転位が集中して縦方向に伸びる転位束を形成することを説明する断面図。(2)は成長とともにピット底へ転位が集中して縦方向に伸びる転位束を形成するのであるが被覆するものがなく転位集合開放系であり転位相互には強い斥力が働くので一旦集合した転位がばらけてきて周りに広がりモヤモヤ状の転位の拡散が起こることを説明する断面図。
表面にファセット面からなるピットを形成し維持しながらGaNを結晶成長さるファセット成長法においてファセットは平均的な成長方向とは別にピットの内向きに成長するので成長とともに転位がファセット稜線に掃き寄せられさらにピット底の多重点に集中し底に続く閉じた転位の集合束である閉鎖欠陥集合領域Hを縦長に形成し閉じた空間に転位を集結させるので転位が再びばらけることがないという本発明の単結晶窒化ガリウム基板の成長方法の概略を説明するためのピットの断面図。(1)は成長とともにピット底へ転位が集中して縦方向に伸びる閉じた閉鎖欠陥集合領域に転位束を集結させることを説明する断面図。(2)は成長とともにピット底が上昇するが常に底へ閉鎖欠陥集合領域Hが付随して転位を吸収してゆくことを説明する断面図。
下地基板の上に種を配置しその上にGaNをファセット成長させてピット底に閉鎖欠陥集合領域Hをその周りに単結晶低転位随伴領域Zを形成し、その周りに単結晶低転位余領域Yを設けるようにした本発明の単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す図。
下地基板の上に種を配置しその上にGaNをファセット成長させてピット底に閉鎖欠陥集合領域Hをその周りに単結晶低転位随伴領域Zを形成し、その周りに単結晶低転位余領域Yを設けるようにした本発明の単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す平面図。種の配置を下地基板上に幾何学的に規則正しく行っていることがわかる。
下地基板の上に種を配置しその上にGaNをファセット成長させてピット底に閉鎖欠陥集合領域Hをその周りに単結晶低転位随伴領域Zを形成し、その周りに単結晶低転位余領域Yを設けるようにして結晶を成長させた後、下地基板を除去し平坦にした本発明の単結晶窒化ガリウム基板の斜視図。
下地基板の上に種を六回対称性パターンで配置し結晶を成長させる本発明の単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す平面図。
下地基板の上に種を四回対称性パターンで配置し結晶を成長させる本発明の単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す平面図。
下地基板の上に種を二回対称性パターンで配置し結晶を成長させる本発明の単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す平面図。
下地基板の上にGaNエピ層を成長させ、その上に種を配置しGaNをファセット成長させてピット底に閉鎖欠陥集合領域Hをその周りに単結晶低転位随伴領域Zを形成し、その周りに単結晶低転位余領域Yを設けるようにして結晶を成長させた後、下地基板とGaNエピ層を除去し平坦にした本発明の実施例1にかかる単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す図。
下地基板の上に直接に種を配置しGaNをファセット成長させてピット底に閉鎖欠陥集合領域Hをその周りに単結晶低転位随伴領域Zを形成し、その周りに単結晶低転位余領域Yを設けるようにして結晶を成長させた後、下地基板を除去し平坦にした本発明の実施例2にかかる単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す図。
サファイヤなどの異種基板の上にGaNエピ層を成長させ、その上にGaN粒子である種を配置しGaNをファセット成長させてピット底に閉鎖欠陥集合領域Hをその周りに単結晶低転位随伴領域Zを形成し、その周りに単結晶低転位余領域Yを設けるようにして結晶を成長させた後、サファイヤ基板とGaNエピ層を除去し平坦にした本発明の実施例4にかかる単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す図。
サファイヤなどの異種基板の上にGaNエピ層を成長させ、GaNエピ層にエッチング除去により穴をあけ、その穴の上にGaNをファセット成長させてピット底に閉鎖欠陥集合領域Hをその周りに単結晶低転位随伴領域Zを形成し、その周りに単結晶低転位余領域Yを設けるようにして結晶を成長させた後、サファイヤ基板とGaNエピ層を除去し平坦にした本発明の実施例5にかかる単結晶窒化ガリウム基板の成長方法を示す図。
本発明の実施例1のパターンAを用いて作成したGaN基板を下地基板として使い、種は配置せず、その上にGaNエピ層をファセット成長させ、閉鎖欠陥集合領域Hの上には閉鎖欠陥集合領域Hが形成され、単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zの上には単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zのどちらかが形成された厚いGaN結晶をスライス加工し、研磨して複数枚のGaN基板が得られることを示す本発明実施例6にかかる単結晶窒化ガリウム基板の製造工程図。
符号の説明
H 閉鎖欠陥集合領域
Z 単結晶低転位随伴領域
Y 単結晶低転位余領域
2 GaN結晶
4 ピット
6 ファセット
7 平坦面
8 稜線
9 内向き成長方向
10 面状欠陥
11 線状転位集合欠陥部
12 GaN結晶
14 ピット
15 転位集合束
17 平坦面
19 余白部
21 基板
22 GaN結晶
23 種
24 ピット
25 閉鎖欠陥集合領域(H)
26 ファセット
27 平坦面
29 ピット底(浅いファセット面)
30 結晶粒界(K)
51 基板
52 GaN結晶
53 種
54 単結晶低転位随伴領域(Z)
55 閉鎖欠陥集合領域(H)
56 ファセット
57 平坦面
58 単結晶低転位余領域(Y)
59 ピット底(浅いファセット面)
60 結晶粒界(K)
61 基板
62 GaN結晶
63 種
64 単結晶低転位随伴領域(Z)
65 閉鎖欠陥集合領域(H)
66 ファセット
67 平坦面
68 単結晶低転位余領域(Y)
69 ピット底(浅いファセット面)
70 結晶粒界(K)
71 基板
72 GaN結晶
73 種(穴)
74 単結晶低転位随伴領域(Z)
75 閉鎖欠陥集合領域(H)
76 ファセット
77 平坦面
78 単結晶低転位余領域(Y)
79 ピット底(浅いファセット面)
80 結晶粒界(K)
84 単結晶低転位随伴領域(Z)
85 閉鎖欠陥集合領域(H)
86 ファセット
87 平坦面
88 単結晶低転位余領域(Y)
89 ピット底(浅いファセット面)
90 粒界(K)

Claims (8)

  1. GaN、サファイヤ、SiC、スピネル、GaAs、Siのいずれかの材料からなる下地基板上と、下地基板の上に規則正しく配列される繰り返しパターンの頂点の位置に配置された非晶質あるいは多結晶の薄膜と、下地基板の上で薄膜によって覆われない部分の上に形成され閉鎖欠陥集合領域Hに接する単結晶低転位随伴領域Zと、下地基板の上で薄膜で覆われない部分の上に形成され単結晶低転位随伴領域Zの外側に存在し単結晶低転位随伴領域Zと同一の結晶方位を有する単結晶低転位余領域Yを有していることを特徴とする窒化ガリウム結晶。
  2. 非晶質あるいは多結晶の薄膜の直径が1〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム結晶。
  3. 非晶質あるいは多結晶の薄膜の直径が5〜70μmであることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム結晶。
  4. 非晶質あるいは多結晶の薄膜の直径が20〜70μmであることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム結晶。
  5. 直径が1インチ(25mm)以上であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム結晶。
  6. 請求項1に記載の窒化ガリウム結晶を加工することによって得られる窒化ガリウム基板。
  7. 閉鎖欠陥集合領域Hの領域が他の領域よりも0.3μm程度窪んでいることを特徴とする請求項に記載の窒化ガリウム基板。
  8. 請求項に記載の窒化ガリウム基板を用いて作製した半導体レーザデバイス。
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