JP4562001B2 - 窒化ガリウム単結晶基板ならびにその製造方法 - Google Patents

窒化ガリウム単結晶基板ならびにその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4562001B2
JP4562001B2 JP2006137194A JP2006137194A JP4562001B2 JP 4562001 B2 JP4562001 B2 JP 4562001B2 JP 2006137194 A JP2006137194 A JP 2006137194A JP 2006137194 A JP2006137194 A JP 2006137194A JP 4562001 B2 JP4562001 B2 JP 4562001B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plane
gan
crystal
substrate
oxygen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2006137194A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006282504A (ja
Inventor
健作 元木
昌紀 上野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority to JP2006137194A priority Critical patent/JP4562001B2/ja
Publication of JP2006282504A publication Critical patent/JP2006282504A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4562001B2 publication Critical patent/JP4562001B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Description

この発明は、3−5族窒化物系化合物半導体からなる発光ダイオードや、半導体レ−ザなどの発光デバイスや、電子デバイスに用いられる窒化ガリウム(GaN)単結晶基板結晶の酸素ドーピング方法に関する。基板の上にエピ成長するGaN薄膜成長およびGaNバルク結晶成長における、GaN結晶自体への不純物ドーピングである。窒化物系化合物半導体と一般的に表現するのは、積層される薄膜がGaN薄膜だけでなく、これにIn、P、As、…などの成分を加えた三元混晶膜、四元混晶膜を積層することがあるからである。光を発生する活性層はGaInNである。しかし主体はGaNである。がその他の成分もあるので窒化物系と正確に述べているのである。だから以後の記述において、GaN系デバイスとかGaInN系デバイスとか表現するが同一のものをさしているのである。
窒化物系半導体を用いた発光デバイスは、青色LEDをはじめ、既に実用化がなされている。従来、窒化物系半導体を用いた発光デバイスは、基板としてサファイヤが用いられていた。単結晶サファイヤ基板の上に、GaN層、GaInN層などをエピタキシャル成長させてエピウエハとする。GaNに対し、n型ドーパントとして利用されているものはSiである。エピウエハの上にウエハプロセスによってGaInN−LEDデバイスを作製する。サファイヤは極めて安定した堅牢な基板である。サファイヤ基板の上にGaN層やさらにその上にGaInN層が良好にエピ成長する。現在でもGaN系の青色LEDはサファイヤ基板の上に作られている。サファイヤ(α−Al)とGaNは格子定数が違う(ミスマッチ)が、それでもサファイヤ基板の上にGaN層はうまく成長するのである。しかもGaN層は多大な転位の存在にも拘らず劣化せず堅牢である。
サファイヤは三方晶系の単結晶を作るので、そのC面の上にGaN薄膜を成長させる。サファイヤとGaNは晶系が異なるから3回対称性のあるC面の上にしかGaNをエピタキシャル成長させることができない。だから現在使用され実績のあるGaInN−LEDは何れもC面のサファイヤ基板に、c軸方向に成長した薄膜の集合からなっている。
つまりサファイヤ面上のGaNやGaInN薄膜などエピ層はいずれもC面成長している。サファイヤを基板に使う限りC面成長しかできない。他の面方位でエピタキシャル成長することは不可能であった。だから現在製造され利用されているGaInN−LED、GaInN−LDはいずれもC面成長のGaN、GaInN層などのを積み重ねであり、他の面方位の薄膜は存在しない。しかしながら、ELO(エピタキシャルラテラルオーバーグロース)やpendeo−epiについては成長途中段階で端部にC面以外の面が現れ、その限りではない。
サファイヤとGaNは格子不整合が大きく欠陥が多いのであるが、GaNはセラミックに近い堅牢さをもっており欠陥が成長しない、欠陥が増大して脆性化するということはない。夥しい欠陥密度であるがGaN−LEDは長寿命であり、すでに厚い実績があり高い評価がなされている。
ところがサファイヤ基板にはいくつかの欠点がある。サファイヤ基板は極めて硬くて劈開面がない。そのためにウエハプロセスによってデバイスをウエハ上に形成した後、チップに切り出すときに劈開によって分離することができない。機械的に切断(ダイシング)する他はない。ダイシング工程のためにコスト高になる。
LEDの場合はそれでもよいが、LD(半導体レ−ザ)の場合は共振器をなすミラー面が活性層の両側に必要である。が、劈開面がないから自然劈開によってミラー面を形成することができない。RIE(リアクティブイオンエッチング)等の気相エッチングなどで端面を精度良く平坦平滑に加工してミラー面を出す必要がある。これは簡単な作業でない。またチップ毎に加工しなければならず煩雑な作業である。共振器面出しの作業がGaInN系−LDの製造コストを押し上げる原因になっている。
さらにサファイヤは絶縁体であるから、底面に電極を形成するということができない。p電極、n電極ともに上面に形成しなければならない。サファイヤ基板の上にn型層を何層か積層する必要がある。電流が横に流れるからn型導電層を厚く形成しなければならない。積層したn型層の上にp型層を積んでpn接合を形成する。上面にあるp型層にp電極を付けるのは当然であるが、外周部のp型層を少し除去してn型層を露呈させて、その部分にn電極をオーミック接合するという煩雑さがある。工程数、工程時間が増えてコスト高になる。また同一面に電極を二箇所形成する必要性から、必要なチップの面積が大きくなる。その点からもコスト増大を招いていた。サファイヤ基板のGaN系のLEDは実績があるが、上記のような欠点を克服できないでいる。
このような問題を解決できる理想的な基板はGaN単結晶基板である。GaNやGaInNなどのエピ層を堆積させるのであるから、GaN基板であれば結晶格子のミスマッチの問題は全くない。それにn型GaNを作ることができれば、n型電極をチップの底面からとることが可能になる。上下にp電極、n電極を配分できればデバイス製造もより楽になるし、パッケージへの実装においてワイヤボンディングも容易になる。必要なチップ面積を削減することができる。
それに何よりも、GaNには劈開があるから自然の劈開によってウエハをチップに切り出すことができる。但し劈開面は正三角形の辺の方向にあり、矩形上の劈開面でない。だから劈開だけで矩形状のチップを切り出すことができない。その点Si半導体や、GaAs半導体とは違って不利な点である。しかし一部は劈開によってチップ分離できる。だからダイシングによる切り出し加工が軽減される。それに半導体レ−ザ(LD)とする場合に必須の共振器のミラー面を劈開によって作り出すことができるのである。劈開によって平坦平滑のミラー面ができればGaInN系青色LDをより簡単に作ることができるはずである。
しかしながら高品質で大面積のGaN単結晶を長い間、育成することができなかった。GaN基板を入手できないから、GaN基板の上にGaInN系のLED、LDを作製するということは不可能であった。だから実用的なGaN基板上のLED、LDを作製することはできなかった。
窒素の蒸気圧が高いので、GaN融液を入れたるつぼに種結晶を付けて引き上げるという通常の引き上げ法ではGaN結晶を作る事はできない。超高圧を掛けてGaN単結晶を合成することはできるが小さいものしか製造することができない。とても実用的な大きさのGaN結晶を成長させることは不可能である。また石英管に封入したボートの中に多結晶を入れて加熱溶融し端から固化してゆくボート法でもGaN単結晶を作ることはできない。その他の結晶成長技術によってもGaNの大型の基板を製造することはできなかった。
ところが近年になって気相成長法によってGaNの単結晶を成長させるという手法が提案され様々な改良がなされている。大型GaN基板がないので異種材料の基板を使う。その基板の上に薄膜成長と同様の気相合成法によってGaNの単結晶層を堆積してゆく。気相成長法は本来は薄膜の成長のための方法であるが、時間を掛けて成長を持続することによって厚い結晶層が得られる。厚いGaN結晶が成長したら基板をエッチングや研磨によって除去することによってGaNの単体の基板ができる。もちろん単純に気相合成するだけではなかなか良質のGaN結晶を得る事はできない。いくつもの工夫が必要である。
気相合成といっても幾つかの異なる方法がある。これらはいずれもサファイヤ基板の上にGaNの薄層を成長させるために開発された手法である。有機金属(例えばトリメチルガリウムTMG)とアンモニアを原料とする有機金属気相成長法(MOCVD)、ガリウム単体をボートに入れてHClガスによって酸化しGaClとするHVPE(ハイドライド気相エピタキシ−)や、有機金属とHClを反応させGaClを作りアンモニアと反応させるMOC法(有機金属塩化物気相成長法)、GaN多結晶を加熱し昇華させて基板へ堆積させる昇華法というのがある。サファイヤ基板の上に成長させて先述のGaInN系LEDを製造するのに用いることができる。それぞれに長所と短所がある。
(1)有機金属気相成長法(MOCVD法)
そのうちで最もよく利用されているのはMOCVD法である。コールドウオールの反応炉において、TMGとアンモニアを水素で希釈した原料ガスを加熱したサファイヤ基板に吹き付けることによって基板上で直ちに反応をおこさせてGaNを合成する。これは大量のガスを吹き付けてその一部だけがGaN薄膜形成に寄与するので残りは無駄になる。収率が低い。成長速度も大きくすることはできない。LEDの一部をなすGaN薄層の形成にはよいが、厚いGaN結晶層を積むのには向いていない。それに有機金属に含まれる炭素が不純物として混入するので特性を落とす場合がある。
(2)有機金属塩化物成長法(MOC法)
MOC法はホットウオール型反応炉においてTMGとHClを反応させ一旦GaClを作り、これを加熱させた基板の近くでアンモニアと反応させGaNとする。この方法はGaClを経るのでMOCVD法よりも炭素の混入が少ないがそれでも炭素混入があり、電子移動度の低下などを招く場合がある。
(3)ハイドライド気相成長法(HVPE法)
HVPE法は、Ga単体を原料とする。図1によって説明する。ホットウオール型反応炉1の周囲にはヒ−タ2が設置されている。反応炉1の上頂部に2種類の原料ガスを導入するためのガス導入管3、4が設けられる。反応炉1の内部上方空間にGaボート5を設ける。Ga融液6をGaボート5に収容しヒ−タ2によって加熱する。反応炉1の上方のガス導入口3はGaボート5に向かって開口している。これはH+HClガスを導入する。もう一方のガス導入管4はGaボート5より下方で開口している。これはH+NHガスを導入する。
反応炉1の内部空間の下方にはサセプタ7が回転軸8によって回転昇降自在に支持される。サセプタ7の上にはGaAs基板を載せる。あるいはGaAs基板から出発しGaNを作ることができれば、サセプタ7上にGaN基板を載せることもできる。ヒ−タ2によってサセプタ7や基板9を加熱する。HCl(+H)ガスをガス導入管3から供給しGa融液6に吹き付けるとGaClというガス状の中間生成物ができる。これが炉内を落下して加熱された基板の近傍でアンモニアと接触する。基板9の上でGaClとNHの反応が起こってGaNが合成される。この方法は原料が炭素を含まないからGaN薄膜に炭素が混入せず電気特性を劣化させるということがない、という利点がある。
(4)昇華法
GaNは高圧を掛けないと融液にできない。低圧で加熱すると昇華してしまう。この方法は、GaN多結晶を加熱し昇華させて空間中を輸送し、より温度の低い基板に堆積させるものである。
さらにサファイヤ基板の上に、GaN薄膜を成長させる手法の改良も提案されている。有力な改良法の一つを述べる。
[ラテラルオーバーグロース法(Lateral Overgrowth)]
碓井彰「ハイドライドVPEによる厚膜GaN結晶の成長」電子情報通信学会論文誌vol.J81−C−II、No.1、p58〜64(1998年1月)
非特許文献1などにラテラルオーバーグロース法によるGaN成長の詳しい説明がある。サファイヤ基板の上に縞状(或いはストライプ状)の窓のあるマスクを付けその上にGaNを成長させる。窓の中から別個の結晶粒が成長し窓を越えてゆき窓の外のマスクの上で合体する。そのために欠陥密度が減少する。これはサファイヤ基板の上にGaN膜を付ける際において欠陥密度を減らすための工夫である。
本発明者は気相合成法の中でもHVPE法を利用したGaN結晶基板の製造方法について改良を進めている。GaN基板を作ろうとするのであるから異種材料を基板にするが、サファイヤを基板とするとサファイヤだけを除く事ができない。化学的にも物理的にも堅牢で、研磨やエッチングでサファイヤだけ除去できないのである。
それに対して、基板としてGaAsを用いるという方法がある。3回対称性のあるGaAsの基板の上に、Ga金属と水素ガス希釈HCl、水素ガス希釈NHを原料としてGaNを成長させる。当然にc軸方向に成長し成長面はC面である。そのままでは転位が線状に成長してゆく。転位が消える事なく永久に伸びてゆく。
そこでGaAs基板へ直接に或いはある程度GaN層が成長したあと多数の規則正しく配列された穴を有するマスクを載せてマスク穴を通じてGaNの成長を続ける方法などを本発明者は創案している。これはサファイヤ基板でなく、GaAs基板上のGaN成長にラテラルオーバーグロース法(Lateral Overgrowth)を適用したものである。例えば本出願人による
特願平10−183446号(特開2000−22212)
特許文献1などに説明がある。これはGaAs(111)面を基板としてドット、ストライプ窓のあるマスクによって基板を覆い、その上にGaN膜を気相成長させるものである。孤立した窓から結晶核が独立に成長しマスクの上で合体するから欠陥の数を減らすことができる。転位の延伸を断ち切って欠陥の少ない結晶を成長させることができる。
そのような方法によって三回対称性のあるGaAs(111)面の上にGaN層を気相成長させて、GaAs基板をエッチング(王水)、研磨によって除去しGaNのみからなる自立膜を製造することが可能となる。そのようにしてできたGaN結晶は表面がC面(0001)である。つまり(0001)面GaN結晶である。
さらに特許文献1には、そのような製造方法で作製した20mm以上の直径、0.07mm以上の厚さをもつGaN自立単結晶基板を提案している。これもC面をもつGaN(0001)結晶である。さらに本発明者の発明にかかる
特願平10−171276号 (特開2000−12900)
特許文献2も、そのような製造方法で作製したGaN自立単結晶基板を提案する。これも(0001)面GaN結晶である。これらの発明においては、GaAs基板にGaNを厚く気相成長させるからどうしても反りができてしまい、反りを減ずるにはどうすればよいのか?ということが問題になっている。また成長面(C面)が平坦な面になる場合とギザギザな粗面になる場合があるがその条件などを求めている。導電型は殆ど問題になっていない。
Kensaku Motoki, TakujiOkahisa, Naoki Matsumoto, Masato Matsushima, Hiroya Kimura, Hitoshi Kasai,Kikurou Takemoto, Koji Uematsu, Tetsuya Hirano, Masahiro Nakayama, SeijiNakahata, Masaki Ueno, Daijirou Hara, Yoshinao Kumagai, Akinori Koukitu andHisashi Seki,"Preparation of Large Freestanding GaN Substrates by HydrideVapor Phase Epitaxy Using GaAs as a Starting Substrate", Jpn. J.Appl.Phys. Vol.40(2001) pp.L140-143
非特許文献2は、GaAs(111)結晶を基板としてラテラルオーバーグロース法によってGaN単結晶自立膜を製造している。これも(0001)GaN結晶である。厚みは500μmで直径は2インチの結晶である。n型の導電型であったと述べている。転位密度は2×10cm−2であり、キャリヤ濃度はn=5×1018cm−3で、移動度は170cm/Vs、抵抗率は8.5×10−3Ωcmであると説
明している。n型ドーパントについては説明していない。
特願平11−144151号 (特開2000−44400)
特許文献3は、本発明者になるものであるが、n型のドーパントとして酸素が有効であることを初めて見い出している。そして酸素をn型ドーパントとしたn型GaN自立膜を提案している。さらに酸素はGaN中で活性化率が高くて1に近いということも発見している。炭素(C)もGaN中でn型不純物であるから炭素を極力排除する必要があるといっている。そのためにも現在主流であるMOCVD法は好ましくない。HVPE法がよいと主張している。
GaNは3回対称性のある六方晶系(Hexagonal
symmetry)の結晶であるから、
結晶面の表記がGaAs(閃亜鉛鉱型)など立方晶系(cubic
symmetry)の場合とは相違する。六方晶系の結晶表記法について簡単に述べる。3つのパラメータによって表現する方法と、4つのパラメータを使う方法がある。ここでは4パラメータを使った表現を用いる。初めの3つの主軸a軸、b軸、d軸とする。これらの主軸は一平面上にあって、120度の中心角を成している。しかもa=b=dである。
a、b、dのいずれにも直交する軸がある。これをc軸という。a軸、b軸、d軸に対してc軸は独自のものである。平行な多数の結晶面がある。その結晶面の原点からかぞえて1番目の結晶面がa軸、b軸、d軸、c軸を切る切片が原点から、a/h、b/k、d/m、c/nの距離にあるとする。これらの軸の正の部分を切ることができない場合は反対に延長した−a、−b,−dとの交差点を考える。h,k,m,nは必ず整数である。その場合の面指数を(hkmn)と書くものと約束する。
3つの主軸a、b、dに関する指数は幾何学的な制限則h+k+m=0が存在する。c軸との交差点の指数nは自由である。面指数の表現にはカンマを入れない習わしであるから正負の整数4つを括弧の中に入れたものが表記となる。負の数は数字の上に上線を引いて表現するのが鉱物学の決まりである。それができないのでここでは前にマイナス符号を付して表す。
(hkmn)によって表現されるのは個別面表現である。{hkmn}によって表現されるものは包括面表現である。その結晶の対称操作によって変換し得る全ての面方位を包含する包括的な表現である。
面方位とは別に、線方向を示す表現がある。個別方向は[hkmn]によって表現する。これは個別面方位(hkmn)と直交する方向を意味する。包括方向表示は、<hkmn>である。これは個別方位(hkmn)から結晶が許す対称操作によって到達できる全ての個別方位の集合である。
C面が最も代表的な面である。これまでの結晶成長によって作製されたGaNは全てC面成長だといえる。サファイヤやGaAsなど異種単結晶基板を用いる場合、三回対称性面を使うしかないのでその上に成長する面はC面に限定される。C面(0001)以外に重要な面が二つある。
一つは{1−100}面である。これは劈開面である。C面に垂直な面であるが、これは6つの個別面の集合である。(1−100)、(10−10)、(01−10)、(−1100)、(−1010)、(0−110)の全てをM面と呼ぶ。劈開面は互いに60度の角度を成しており直交しない。
もう一つ重要な面は{11−20}面である。これにも通称があってA面と呼ばれる。A面は劈開面でない。A面も6つの個別面の総称である。(11−20)、(1−210)、(−2110)、(2−1−10)、(−12−10)、(−1−120)の全てをA面と呼ぶ。
C面は一義的に決まるが、A面とM面は3つの異なる方向のものがある。あるA面とあるM面とは直交する。だからA面、M面、C面は直交する面の組を構成することができる。本発明者の
特願平10−147049号特許文献4は、劈開面(M面)を辺にもつGaNデバイスを提案している。これもC面を表面にするGaN結晶である。劈開面を問題にする発明なのでここに挙げた。貫通転位を減らすための工夫もいろいろと提案されている。本発明者の
特願平11−273882号特許文献5はC面を鏡面成長させるのでなく、C面以外のファセット面を保有したままc軸方向に成長させることによってファセットに転位を掃きよせ転位を低減している。これはファセット面を維持しつつというが、平均的にはC面成長である。さらに本発明者の
特願2000−207783号特許文献6はGaN中の貫通転位が面と直交して延伸するという性質を発見している。C面成長ならc軸方向に貫通転位が伸びる。そこでこの発明はC面成長させたGaNをA面方向に切り出し、その上にA面成長させるあるいはC面成長させたGaNをM面方向に切り出し、その上にM面成長させるという凝った方法を提案する。その後C面で切り出し、低転位のGaN結晶を得るという巧妙な発明である。
この従来技術の特許文献5、特許文献6だけがC面以外の面で成長させるということを初めて提唱している。目的は違うが面方位に着眼した初めての発明であるからここに紹介した。
サファイヤ基板上へのGaN気相成長法は例外なくC面を上面として成長させている。サファイヤ基板(α−Al)の3回対称面の上にGaNを成長させる場合、C面は6回対称性をもち鏡面になり最も成長させ易いのである。だから現在製造され使用されているサファイヤ基板上のGaInN−LEDやGaInN系−LDはC面のGaN層、GaInN層の積み重ねである。
それはGaAsを基板とするときも同様でGaAsの3回対称面(111)の上にGaNを成長させるときもC面が表面になるように成長させる。
本発明者はGaNのn型ドーパントとして酸素(O)を使いたい。酸素をドープしようとする場合、成長面(C面)にはなかなか入っていかない、ということを最近本発明者が発見した。
これはわかりやすい現象ではない。だから最近まで誰も気付かなかったのである。本発明者はC面成長させたGaN試料の表面の組成をSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)によって分析した。これはイオン(一次イオン)を加速して試料に当て試料からたたき出される二次イオンの数を数えることによって試料表面に存在する物質の存在比を求める方法である。初めの頃は分解能が充分でなくイオンビームがかなりの広がりを持っていたので二次イオンが広い範囲から放出されていた。それで酸素の二次イオンも試料面から出ていたのでC面にも酸素がドープされるかのように見えたのである。
しかしながらビームを絞ることによってSIMSの分解能を上げると意外な事が分かってきた。粗面化したC面は細かく見ると、C面部分の他に凹凸(ファセット)がたくさんあって傾斜面を保持しながら成長することがある。二次イオンはC面からも凹凸部分からも放出される。C面と凹凸部(ファセット)を区別して酸素二次イオンを測定すると、C面から酸素が殆どでて来ないということがわかった。換算してみると、C面以外の酸素濃度が5×1018cm−3の時でも、同じ結晶表面上のC面での酸素濃度は1×1017cm−3未満であることが分かった。つまり酸素を取り込む能力において50倍もの相違があるという事である。酸素二次イオンはC面から出るのでなく実はファセットから放出されているのである。
また、成長条件を変化させ、全面鏡面のC面としたサンプルを作成し、表面よりSIMSにて分析を行うと、やはり、酸素は1×1017cm−3未満であり濃度は低かった。
ということはC面には酸素が殆どドープされないということである。C面成長でありC面には酸素が入らないのに酸素が自然に入ってしまうのはC面以外のファセット面があるからである。そういうことが初めて分かってきた。
単結晶が成長しているのであるから面内のどの部分も結晶方位は同一である。ファセットの部分も上方がc軸になるような構造をもっている。だからc軸方向に成長しているのである。それはそうなのであるが、表面に露呈した面がC面でないということである。そして原料ガスに含まれる酸素が結晶内に取り込まれるかどうかということはその部位の内部的な結晶構造によるのでなくて、結晶成長時の表面自体の微視的な構造によるのである。表面が傾いておりC面以外の面、たとえばM面やA面が露呈しているのであれば、その面がもつ独自の酸素吸着能力によって酸素を取り込むということになる。
GaNの成長においてファセットとなる部分は平均的な成長方向に沿って連続する事が多い。ファセットは頻繁に消滅・発生を繰り返すのでない。例えば、c軸方向に結晶成長する場合、ファセット面が維持されて縦方向にGaNがc軸方向に成長してゆくということである。だからSIMSとエッチングを組み合わせて酸素濃度を結晶の深さ方向にc軸方向に測定すると酸素濃度分布はだいたいどの深さでも同じようなばらつきを示す。だからC面成長においても酸素がドープされるのはC面以外の微視的なファセット面が存在するからである。
そのようなことは未だに斯界の専門家にも知られていない。酸素ドープしたGaNがn型になる理由は本発明者等が特許文献3によって初めて明らかにしている。酸素が窒素サイトを置換してn型不純物になるのであろう。しかし酸素をGaN中でn型ドーパントとして利用するというのは未だ主流でない。本発明者が主張しているだけである。GaN中のn型ドーパントとして主流であるのは硅素(Si)である。Siがガリウム(Ga)サイトを置き換えてn型になると考えられている。酸素をn型ドーパントとするという着想は本発明者以外に見当たらないのが現状である。それに酸素ドープには面方位依存性がある事がいまだに知られていない。GaN成長は3回対称性のある異種材料から成長するので必ずC面を表面とする成長しか行われていない。しかし前記の実験からC面には酸素が殆ど入らない。だからC面鏡面成長に固執すると酸素を所望の濃度でドープすることができない。ということは所望の抵抗率のn型GaN基板を作ることができないということである。そのような新発見に基づき本発明は酸素を効率良くドーピングすることのできるGaN結晶成長方法を提案する。
成長面を変えて成長させるなど詳細な検討を重ねた結果、酸素の取り込み量は面方位依存性があるということが分かった。酸素ドープ量の面方位依存性があることを発見したのは本発明者の実験の成果である。それに、C面には入らないがどのような面方位にも酸素が入らないということでないということが分かった。C面以外で酸素が入り(ドーピングされ)易い面が存在するのである。酸素ドープしやすい面方位は大きく2つの種類のものがある、ということが分かってきた。
それは次のような面方位である。
(1) {kk−2kh} (k,hは整数)
特に、{11−20}面が顕著な効果を示す、ということがわかっている。{11−22}面でも酸素の取り込み効率は大きい。高面指数になるに従い、酸素の取り込み効率は低下してゆく傾向があるようである。
(2) {k−k0h} (k,hは整数)
特に、{1−100}面が顕著な効果を示す。{1−101}面でも酸素の取り込み効率は大きい。この面方位も高面指数になるに従い、酸素の取り込み効率が低下してゆく傾向があるようである。
つまり面{hkmn}には固有の酸素ドーピング能力というようなものがあり、これをOD{hkmn}という関数によって表現できる。
OD{hkmn}の詳細はいまだよくわからないが、C面以外の面{hkmn}についてOD{hkmn}>OD{0001}ということが言える。つまりC面は酸素ドーピングが最も難しい面だということである。
A面{11−20}については、OD{11−20}>50OD{0001}である。 A面はC面よりも50倍以上も酸素ドーピングしやすいということである。
M面{1−100}についても、OD{1−100}>50OD{0001}である。M面はC面よりも50倍以上も酸素ドーピングしやすいのである。
酸素ドーピングを行うには、C面以外の面を上面に持つように結晶成長することによって効率的にドーピングができる。この方法によってドーピングするには、バルク結晶内で、結晶成長の履歴がC面以外の面である領域において、酸素ドーピングがなされる。
必ずしも全面がこれらの(C面以外の)結晶面である必要はない。部分的にファセット面という形で存在するだけであってもよい。もちろんC面成長部分が広く存在する場合は、その部分での酸素取り込み効率は低下している。
酸素取り込みの面方位依存性はその現象を本発明者らが発見したばかりである。そのメカニズムの詳細は未だ不明である。結晶面の表面に出ている原子の結合の手の状態が異なる事に起因する特定元素の結合の仕方が異なるため、不純物の取り込まれ方が変化するものと考えられる。
特にGaN(0001)Ga面が成長面となった場合、酸素がn型キャリヤとして入るべき窒素サイトに、非常に入りにくいメカニズムが働いているものと推測される。これらの現象は当然ながら、サファイア、SiC、GaN等のいかなる下地基板、種結晶を用いた場合においても見られる普遍的な現象である。
これまで行われてきたGaNのC面鏡面成長では酸素ドーピングが殆ど不可能であった。本発明は、C面以外の面が上面になるように成長させるか、ファセットを維持しながらC面成長させることによって、C面以外の面を露呈させつつGaN成長を行うようにする。本発明によって、GaN結晶中へ効果的に酸素を取り込むようにすることができる。面方位を決めることによって酸素のドーピング量を正確に制御することができる。酸素がn型ドーパントとして有効に機能することができる。極めて効率的な酸素ドーピング方法である。
なお酸素のドーピングは、結晶成長中の原料ガスの中に水を含ませるのが最も効果的である。HVPEの場合はアンモニア(NH)、塩化水素ガス(HCl)に水を含ませる。もともとNH、HClには不純物として水が含まれている事が多く、特に水を原料ガスに追加しなくても元々含まれた水分によって酸素ドープされる事もある。しかし安定的に酸素ドーピングを行うためには微量の水を原料ガスに定量的に加えるのが望ましい。
本発明の思想に従って、効率的に酸素ドーピングする方法には多く分けて二つの手法がある。一つはC軸以外の方向に成長させる(非C軸成長)させることであり、もうひとつはC軸方向にファセット成長させることである。つまり非C軸成長とファセットC軸成長である。
(甲)[非C軸成長]C面以外の面{hkmn}を表面(上面)にもつ種結晶を用いて、C面以外の面で結晶成長させ、その面方位にのびた単結晶インゴットを製造する方法。
甲の方法は、種結晶の結晶面{hkmn}をそのまま維持して結晶成長した場合、全面において、効率的に酸素ドーピングがなされる。
例えば、種結晶全面において、{1−100}面(M面)、或いは一般的に{k−k0h}面(k,hは整数)である場合に効率的な酸素ドーピングが行われる。
また{11−20}(A面)或いは一般的に{kk−2kh}面(k,hは整数)においても同様である。この場合の酸素ドープ効率は単純に
OD=OD{hkmn}
によって象徴的に表現される。この方法は原理は単純であるが実行するには幾つかの問題がある。C面以外の表面を持つGaN単結晶は天然に存在しないし、異種基板から気相成長によって製造することもできない。現在LEDやLDに使われている、サファイヤの3回対称面の上に成長させたGaN、GaInN薄膜はC面結晶である。先述のようにサファイヤ基板上に成長させた場合はサファイヤを除去できずGaN結晶単体を得ることはできない。
GaAs(111)面の上に気相成長させた場合、C面をもつGaN結晶が成長する。GaAs基板を王水で除去できるからGaNの単体単結晶が得られる。しかしその結晶も表面はC面である。厚いGaNの結晶を作り、例えばA面方向に切断してA面を表面に持つ単結晶を作り、これを種結晶とする。このようにC面以外の面をもつ種結晶を作るという前工程が必要になる。
(乙)[ファセットC軸成長]C面を上面とする結晶を成長させるが、ミクロに見ればC面以外のファセット面を持つように成長させる方法。
乙の方法は種結晶表面の平均的な結晶面がC面であっても、ミクロにC面以外のファセット面を持って成長した場合、ファセット面を通して酸素をドーピングする効果が得られるのである。
具体的なファセット面としては、{1−101}面などの{k−k0h}面(k,hは整数)がある。これらはM面を傾斜させた面である。M面自体はC面と垂直であるからファセット面とはならない。
或いは{11−22}面などの{kk−2kh}面などがある。これらはA面を傾斜させた面である。A面自体はC面と垂直であるからC面成長でのファセット面とはならない。これは単一のファセット面をC面内に含む場合である。
単一といってもGaN結晶はc軸まわりに6回対称性があるからこれらの面は6つの個別面の集合である。単一の面であっても6角錘状の穴(ピット)や6角錘状の突起をC面上に形成することができる。全部の面が出現しないこともあるがそれでも3角錐状穴、突起とか異形の5角錘状の穴、突起を形成する。
これは単一のファセット面を含む場合であるが、複数のファセット面を含むようなC面成長をさせることによって酸素ドープを有効にすることができる。例えば、{kk−2kh}面、{k−k0h}面からなる複数のファセット面を含んで結晶成長させる事によって酸素ドーピングさせることができる。例えば{11−21}面が6つと{1−101}面が6つで正12角錐を形成することができる。二つの面の組み合わせによってそのような穴または突起を形成できる。3以上の面が集まればより複雑な形状の角錐の穴や突起を作り出すことができる。
{kk−2kh}面、{k−k0h}面(k,hは整数)の集合からなる逆六角錐(六角錐穴)、逆十二角錐(十二角錐穴)形状のピット状ファセット面を保有しながらC面成長させる場合、このピット状ファセット面において酸素ドープすることができる。この方法は複合的であり、{hkmn}面のC面内での存在確率をρ{hkmn}と書くと、酸素ドープ効率は
OD=Σρ{hkmn}OD{hkmn}
というように象徴的に表現することができる。
GaNの成長方法は従来のサファイヤ基板上の成長方法として有効なHVPE法、MOC法、MOCVD法、昇華法など全てを利用することができる。
[実施例1(M面(1−100)を上面とする結晶成長;図2)]
GaN単結晶のインゴットから切り出した表面がM面(1−100)からなるGaN種結晶を準備した(図2(a))。GaN単結晶は、GaAs基板の上にラテラルオーバーグロース法によってGaNをC面成長させGaAs基板を王水で溶解除去したものである。M面だからこの結晶の成長方向に平行な一つの面で切っていることになる。
このM面種結晶は表面研磨してあり、表面に加工変質層は除去されて全く存在しない。
この種結晶の上に、HVPE法によって、GaN結晶を成長させた(図2(b))。その成長条件は、以下の通りである。なお窒素分の原料ガスであるNHについては、2ppmほどの水を含んだ原料ガスを使用した。水は酸素源として含ませているのである。
・成長温度 1020℃
・NH分圧 0.2atm (2×10Pa)
・HCl分圧 1×10−2atm(10Pa)
・成長時間 6時間
成長膜厚さが約500μmとなった。その後、下地の種結晶部を研削除去した(図2(c))。さらに表面を研磨した(図2(d))。種結晶を除いて成長部だけにした結晶層の厚みは約400μmであった。
この試料の電気的特性をホール(Hall)測定によって求めると、4点での平均が、
・キャリヤ濃度 = 6×1018cm−3
・キャリヤ移動度= 160Vs/cm
の程度であり結晶内でほぼ均一であった。
さらに同一サンプルの表面付近のSIMS(Secondary
Ion Mass Spectroscopy)分析を行った。その測定の結果次のようなことが分かった。
水素(H) 2×1017cm−3
炭素(C) 3×1016cm−3
酸素(O) 8×1018cm−3
珪素(Si) 3×1017cm−3
キャリヤ濃度が6×1018cm−3であり、酸素濃度が8×1018cm−3である。GaNの中でn型不純物になる可能性のある炭素(1016cm−3のオーダー)、珪素(1017cm−3のオーダー)はキャリヤ濃度(1018cm−3のオーダー)よいもずっと低い。ということはこれらのキャリヤ(電子)は、酸素に由来するということである。酸素がn型不純物として働いており、その活性化率がかなり高いということを示唆する。
抵抗率を測定したところ、7×10−3Ωcm程度でかなり高い導電性をもっている。n型導電性のGaN基板として利用できる。つまりサファイヤのように上面にn電極をとらなければならないということはなくn型GaN基板の底面からn電極をとることが可能となる。
この実施例によって製造された試料は、表面が平坦な、厚さ400μmの単体のGaN基板である。GaN基板の上に、その後、エピタキシャル成長を行ってデバイスを作製することができるような形状となっている。
[比較例1(C面(0001)を上面とする結晶成長;図3)]
GaN単結晶のインゴットから切り出した、表面がC面(0001)面からなるGaN種結晶を準備した(図3(a))。表面の極性はGa面である。このC面種結晶は表面研磨してあり、表面に加工変質層が全く存在しない。
この種結晶の上にHVPE法によってGaNを成長させた。その成長条件は、以下の通りである。実施例1と同様に窒素分の原料ガスであるNHについては、2ppmほどの水を含んだ原料ガスを使用した。
・成長温度 1050℃
・NH分圧 0.15atm (1.5×10Pa)
・HCl分圧 5×10−3atm(5×10Pa)
・成長時間 10時間
成長膜厚さが約500μmとなった(図3(b))。表面は(0001)面からなる平坦な鏡面状態であった。成長後の表面もC面を維持している事が分かる。
その後、下地の種結晶部を研削除去した(図3(c))。表面を研磨し種結晶を除いて成長部だけにした結晶層の厚みは約400μmであった(図3(d))。
この試料の電気的特性をホール(Hall)測定によって求めようとしたが測定不能であった。その原因は、GaN結晶が高抵抗の膜となっており極めて電気伝導度が低くて現在保有している測定機器では測定できないからである。基板面内どの点においても測定不能であった。つまり自由に動き得る電子が乏しくキャリヤ濃度が低すぎて充分な電流が流れず測定できないということである。
さらにこの試料の表面付近のSIMS(Secondary Ion
Mass Spectroscopy)分析を行った。その測定の結果次のようなことが分かった。
水素(H) 1×1018cm−3
炭素(C) 7×1016cm−3
酸素(O) 1×1017cm−3
珪素(Si) 2×1016cm−3以下
このように酸素濃度が実施例1よりずっと低い。約1/100程度に低下していることが分かる。これは面方位(C面とM面)の違いだけに起因する。つまり酸素の取り込みについて著しい面方位依存性があるということである。Siについても約1/10に減少しており、Siについても面方位依存性が見られる。炭素や水素はむしろC面成長の方が結晶中へより多く入るようである。が、依存性は少ない。もっとも顕著な面方位依存を示すのは酸素である。
この比較例ではn型不純物としての酸素の取り込み量が少ないからn型キャリヤ(電子)が放出されず絶縁体になるのであろうと考えられる。このような高抵抗の基板は底面からn電極を取り出せないのでGaNデバイスの導電性基板としては使用不能である。
[実施例2(C面(0001)を上面としピット状ファセット面を維持する結晶成長;図4)]
GaN単結晶のインゴットから切り出した、表面がC面(0001)からなるGaN種結晶を準備した(図4(a))。この表面の極性はGa面である。このC面種結晶は表面研磨してあり、表面の加工変質層は除去されて全く存在しない。
この種結晶の上に、HVPE法によって、GaNを成長させた。その成長条件は、以下の通りである。窒素分の原料ガスであるNHについては、2ppmほどの水を含んだ原料ガスを使用した。
・成長温度 1030℃
・NH分圧 0.2atm (2×10Pa)
・HCl分圧 1×10−2atm(10Pa)
・成長時間 5時間
成長膜厚さが約500μmとなった(4(b))。表面状態は、比較例1のように平坦なC面の鏡面ではなかった。成長後の結晶の表面は、C面以外の小面からなる多数のファセット面を有する。ファセット面がキラキラと光を反射し光って見える。特に逆六角錐状、逆十二角錐状のファセット面からなるピット状形態が見られる。つまり角錐のピットの集合である。これらの錘面がファセット面である。このサンプルにおいては、C面はほとんど見られない。
様々な面方位のものが混在している。多いのは{1−101}面、{11−22}面、{1−102}面、{11−24}面である。これらを纏めて{k−k0h}(k,hは整数)、{kk−2kh}面(k,hは整数)というように表現することができる。
その後、下地の種結晶部を研削除去した(図4(c))。種結晶を除いて成長部だけにした結晶層の厚みは約400μmであった。この基板はファセット面のため表面が平坦でない。そこで両面を研磨して厚さ350μmの基板とした(図4(d))。
この試料の電気的特性をホール(Hall)測定によって求めると、4点での平均が、
・キャリヤ濃度 = 5×1018cm−3
・キャリヤ移動度= 170Vs/cm
の程度であり結晶内でほぼ均一であった。
さらに同じ試料の表面付近のSIMS(Secondary Ion
Mass Spectroscopy)分析を行った。その測定の結果次のようなことが分かった。
水素(H) 2×1017cm−3
炭素(C) 3×1016cm−3
酸素(O) 5×1018cm−3
珪素(Si) 4×1016cm−3 以下
キャリヤ濃度が5×1018cm−3であり、酸素濃度が5×1018cm−3である。GaNの中でn型不純物になる可能性のある炭素(1016cm−3のオーダー)、珪素(1016cm−3のオーダー)はキャリヤ濃度(1018cm−3のオーダー)よいもずっと低い。ということはこれらのキャリヤ(電子)は、酸素に由来するということである。酸素濃度とキャリヤ濃度が同程度だということは、酸素がn型不純物として働いており、その活性化率がかなり高いということを示唆する。
抵抗率を測定したところ、6×10−3Ωcm程度でかなり高い導電性をもっている。n型導電性のGaN基板として利用できる。つまりサファイヤのように上面にn電極をとらなければならないということはなくn型GaN基板の底面からn電極をとることが可能となる。この実施例はc軸方向の成長でもC面以外のファセット面を維持しつつ成長させるとファセット面から酸素が入り込み低抵抗のn型GaN結晶を製造できるということを意味している。
この実施例にかかる試料片は、表面が平坦な、厚さ350μmの単体のn型GaN基板であった。その後に、GaN基板表面上にさらにエピタキシャル成長を行い、デバイス作製が可能な形状であった。
HVPE法によるGaN結晶の成長装置の概略断面図。
M面(1−100)を持つGaN種結晶の上に、GaN層を気相成長法によって成長させる実施例1の工程を示すGaN結晶の断面図。(a)はM面(1−100)を持つGaN種結晶断面図、(b)はGaN種結晶の上に、(1−100)結晶を成長させた状態のGaN結晶断面図。(c)は種結晶を除去した成長部分だけのGaN結晶断面図。(d)はさらに研磨した状態のM面GaN結晶の断面図。
C面(0001)を持つGaN種結晶の上に、GaN層を気相成長法によって成長させる比較例1の工程を示すGaN結晶の断面図。(a)はC面(0001)を持つGaN種結晶断面図、(b)はGaN種結晶の上に、(0001)結晶を成長させた状態のGaN結晶断面図。(c)は種結晶を除去した成長部分だけのGaN結晶断面図。(d)はさらに研磨した状態のC面GaN結晶の断面図。
C面(0001)を持つGaN種結晶の上に、ファセット面を維持しながらGaN層を気相成長法によって成長させる実施例2の工程を示すGaN結晶の断面図。(a)はC面(0001)を持つGaN種結晶断面図、(b)はGaN種結晶の上に、ファセットを多数有する(0001)結晶を成長させた状態のGaN結晶断面図。(c)は種結晶を除去した成長部分だけのGaN結晶断面図。(d)はさらに研磨した状態のC面GaN結晶の断面図。
符号の説明
1 HVPE反応炉
2 ヒ−タ
3 原料ガス導入管
4 原料ガス導入管
5 Ga溜(Gaボート)
6 Ga融液
7 サセプタ
8 回転軸
9 基板
10 ガス排出口

Claims (5)

  1. サファイア基板、GaAs基板、SiC基板又はGaN基板のいずれかである下地基板の上にGaN結晶をc軸方向に成長する方法であって、成長するGaN結晶にC面とC面以外のファセット面を同時に出現させながら成長させることで、C面以外のファセット面で成長した領域に酸素を含有させながら成長することを特徴とする窒化ガリウム単結晶基板の製造方法。
  2. 窒化ガリウム結晶の成長方法がHVPE法、MOC法、MOCVD法、あるいは昇華法であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム単結晶基板の製造方法。
  3. 窒化ガリウム結晶に酸素ドープするために原料ガスに含まれた水、あるいはもともと原料ガスに含まれていた水を酸素源とすることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の窒化ガリウム単結晶基板の製造方法。
  4. サファイア基板、GaAs基板、SiC基板又はGaN基板のいずれかである下地基板の上にc軸方向に成長させたGaN結晶であって、C面とC面以外のファセット面(非C面)を有し、C面で成長した領域に比べてC面以外のファセット面で成長した領域に酸素を多く含有していることを特徴とする窒化ガリウム単結晶基板。
  5. 非C面を通して酸素ドープしながら成長した結晶において酸素の活性化率が75%以上であることを特徴とする請求項に記載の窒化ガリウム単結晶基板。

JP2006137194A 2001-04-12 2006-05-17 窒化ガリウム単結晶基板ならびにその製造方法 Expired - Lifetime JP4562001B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006137194A JP4562001B2 (ja) 2001-04-12 2006-05-17 窒化ガリウム単結晶基板ならびにその製造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001113872 2001-04-12
JP2006137194A JP4562001B2 (ja) 2001-04-12 2006-05-17 窒化ガリウム単結晶基板ならびにその製造方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002103723A Division JP3826825B2 (ja) 2001-04-12 2002-04-05 窒化ガリウム結晶への酸素ドーピング方法と酸素ドープされたn型窒化ガリウム単結晶基板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006282504A JP2006282504A (ja) 2006-10-19
JP4562001B2 true JP4562001B2 (ja) 2010-10-13

Family

ID=37404795

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006137194A Expired - Lifetime JP4562001B2 (ja) 2001-04-12 2006-05-17 窒化ガリウム単結晶基板ならびにその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4562001B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4830901B2 (ja) * 2007-02-22 2011-12-07 住友電気工業株式会社 Iii族窒化物結晶の成長方法およびiii族窒化物結晶
JP5023834B2 (ja) * 2007-06-19 2012-09-12 住友電気工業株式会社 半導体結晶の成長方法
KR20130081956A (ko) * 2012-01-10 2013-07-18 삼성전자주식회사 질화물 반도체층 성장 방법

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10341060A (ja) * 1997-06-09 1998-12-22 Nec Corp 窒化物系化合物半導体の結晶成長方法および窒化ガリウム系発光素子
JPH11251687A (ja) * 1998-03-06 1999-09-17 Matsushita Electric Ind Co Ltd 半導体の製造方法及び半導体装置
JP2000299496A (ja) * 1999-04-14 2000-10-24 Sharp Corp 窒化ガリウム系化合物半導体層の製造方法およびそれにより製造された半導体装置
JP2002026464A (ja) * 2000-07-13 2002-01-25 Sanyo Electric Co Ltd 窒化物系半導体素子

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10341060A (ja) * 1997-06-09 1998-12-22 Nec Corp 窒化物系化合物半導体の結晶成長方法および窒化ガリウム系発光素子
JPH11251687A (ja) * 1998-03-06 1999-09-17 Matsushita Electric Ind Co Ltd 半導体の製造方法及び半導体装置
JP2000299496A (ja) * 1999-04-14 2000-10-24 Sharp Corp 窒化ガリウム系化合物半導体層の製造方法およびそれにより製造された半導体装置
JP2002026464A (ja) * 2000-07-13 2002-01-25 Sanyo Electric Co Ltd 窒化物系半導体素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006282504A (ja) 2006-10-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5141985B2 (ja) 発光デバイスの製造方法、発光デバイス、GaN基板の製造方法およびGaN基板
JP3826825B2 (ja) 窒化ガリウム結晶への酸素ドーピング方法と酸素ドープされたn型窒化ガリウム単結晶基板
JP3788104B2 (ja) 窒化ガリウム単結晶基板及びその製造方法
JP3968968B2 (ja) 単結晶GaN基板の製造方法
US8310030B2 (en) III-nitride crystal substrate and III-nitride semiconductor device
CN1148810C (zh) 氮化镓单晶衬底及其制造方法
JP3864870B2 (ja) 単結晶窒化ガリウム基板およびその成長方法並びにその製造方法
KR20060043770A (ko) GaN 단결정 기판의 제조 방법 및 GaN 단결정 기판
US9305776B2 (en) Oxygen-doped gallium nitride crystal substrate
JP4656438B2 (ja) 単結晶GaN基板の製造方法と単結晶GaN基板
JP2006290697A (ja) 窒化物半導体基板及びその製造方法
JP4562000B2 (ja) 窒化ガリウム結晶への酸素ドーピング方法と酸素ドープされたn型窒化ガリウム単結晶基板
JP4562001B2 (ja) 窒化ガリウム単結晶基板ならびにその製造方法
JP4573049B2 (ja) 窒化ガリウム結晶、窒化ガリウム基板及び半導体レーザデバイス
JP2006193422A (ja) 窒化ガリウム単結晶基板及びその製造方法
JP2010254576A (ja) 単結晶GaN基板
JP2013199412A (ja) Iii族窒化物半導体結晶の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090529

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090701

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100707

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130806

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4562001

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100720

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term