JP4218687B2 - 単結晶窒化ガリウム基板と単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法 - Google Patents

単結晶窒化ガリウム基板と単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法 Download PDF

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Description

本発明は、3−5族窒化物系化合物半導体からなる発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)等の発光デバイス等の基板として用いられる単結晶窒化ガリウム(GaN)基板、およびその単結晶窒化ガリウム基板の製造の基礎となる窒化ガリウムの結晶成長方法、また、その単結晶窒化ガリウム基板の成長方法に関する。
窒化物系半導体を用いた発光デバイスは、青色LEDをはじめ、既に実用化がなされている。従来、窒化物系半導体を用いた発光デバイスは、ほとんどが基板としてサファイアが用いられていた。サファイアは非常に堅牢で物理的化学的に安定な基板材料である。窒化ガリウム結晶をその上にヘテロエピタキシャル成長させることができるという優れた利点がある。
反面、サファイヤは劈開性がなく、絶縁体であり、エピタキシャル膜の窒化ガリウムと格子のミスマッチが大きいという問題点があった。サファイヤは三方晶系であるが3回対称性や3回反転対称性がなく対称性が低いため劈開がない。
よって、サファイア基板を用いることによるいくつかの問題点を抱えていた。発光ダイオード(LED)製造ではダイシング工程で劈開性がないため、歩留まりが上がらず、コスト高を招いていた。
また、半導体レーザでは、劈開による良好な反射面(共振器)の作成が困難であり、レーザ特性等の品質面で問題があった。
また、サファイアは、絶縁性の基板であるため、通常のLEDの様に、デバイスの上下面で電極を取ることができない。プロセス的にもエッチングにより、同一平面上に下層部の面出しをしてデバイス作製する必要性がある。
また、エッチング後に横方向に電流を流すための比較的厚めの導電層を成長する必要があり、工程数、工程時間が増加しコスト高を招いていた。
さらに、同一平面に電極を2カ所形成する必要性から、大きいチップ面積が必要となるため、この点からもコスト増を招いていた。
また、サファイア基板を用いた場合、GaNと基板との間の格子定数のミスマッチにより、エピ層中に転位等の欠陥が多く導入されるという問題がある。現に現在市販されているサファイア基板を用いたデバイスのGaNエピ層中には、1×10cm−2程度の転位が存在すると言われている。
また、サファイアよりも格子のミスマッチが少し小さいSiC基板を用いた場合でも大差ない状況であった。
サファイヤ基板状に成長させたGaN薄膜の高転位密度は、電流密度の低いLEDでは実用上大きな支障とはなっていない。しかし電流密度の高い半導体レーザの場合、大電流によって欠陥が増殖するのでこの高密度欠陥が半導体レーザの寿命を短縮する。
これらの点から、最も理想的な基板は、窒化ガリウム(GaN)単結晶である。高品質なGaN単結晶基板が得られれば、結晶格子のミスマッチの問題は解決できる。
また、窒化ガリウムは対称性が良くて{1−100}面に強い劈開性を有する。自然劈開によって共振器を形成できレーザ反射面の品質の問題は大きく改善される。
さらに、サファイアと違って、ドーピングにより、導電性基板が容易に得られる。よって、電極も同一平面ではなく、上下面に取ることができる。チップサイズの縮小が可能で、低コスト化が実現可能となる。
しかしながら、GaN単結晶は製造が難しい。これまで基板として使用できる実用レベルの大きさの高品質のものを製造することは殆ど不可能であった。
超高圧下の液相と固相の平衡状態からごく小さいGaN単結晶の合成が可能だといわれているが実用的でない。基板の大型化が困難であり、商業ベースの実現は難しいからである。
これに対して、異種の下地基板上に窒化ガリウムを気相成長法によって厚く成長させ、その後基板を除去する事で、窒化ガリウム基板を得ることが提案されている。
特願平9−298300号 特願平10−9008号
本発明者は既に、窓付のマスク層を通してGaNを気相成長によりラテラル成長させ、結晶欠陥密度を低減する方法、ラテラルオーバーグロース(Epitaxial Lateral Overgrowth)を利用する発明を提示した(特許文献1、特許文献2)。
具体的には、GaAs基板上に、ストライプや円形の形状をしたマスクを形成し、その上にGaNをラテラル成長させた後、GaAs基板を除去することにより、GaN基板を得る方法である。
特願平10−102546号
また、本発明者はこれらのGaN基板上にさらにGaNを成長してインゴットを作製し、そのインゴットからGaN基板を切り出すことにより、GaN基板を量産する方法についても既に提示した(特許文献3)。
これらの新しい製法により、GaN単結晶基板の商業ベースでの実現が、初めて可能になった。
しかしながら、作成する窒化ガリウム基板そのものの品質が、高品位なものでなければ、良好なデバイスは得られない。
特に、量産用の基板としては、広い領域にわたって、転位密度の低い良質の基板が求められる。
特開2001−102307号
この高品質の窒化ガリウム基板を得るために、基板自体の転位密度を低減する方法についても、本発明者らによって下記のように提案(特許文献4)がなされている。本発明はこの転位低減方法の改善に関する。
これは、3次元的なファセット構造を有して、例えば、ファセット面からなる逆6角錐形状のピットを形成して、これらのファセット構造を常に維持して、埋め込まないで成長することにより、転位を一カ所に集合し転位を低減する方法である。
この3次元的なファセット構造は、ファセット面からなる逆12角錐状のピットであっても良い。これらのファセット面は、代表的な面として、{11−22}面や、{1−101}面があり得る。
これらの面からなるファセット面を有したまま、埋め込まないで、成長することにより、これらの面自体も成長する。図1によって本発明者の先願(特許文献4)のGaN結晶成長法を説明する。これはGaN結晶のごく一部だけを示している。基板(図示しない)の上にGaN薄膜を気相成長法(HVPE法、MOCVD法、MOC法、昇華法)によってc軸方向に成長させる。それはc軸方向成長であるが従来のGaN気相成長のようにC面成長させない。
従来のC面成長法は、鏡面のように平滑なC面を維持しながら薄膜をエピタキシャル成長させるものである。これは転位密度が1010cm−2程度も発生してデバイスの基板にはできない。本発明者の先願はファセット面を積極的に作りだしファセット面を埋め込まずファセット面を維持して転位を減らす斬新な手法である。
GaN結晶2の表面にいくつもの逆六角錐のピット4が発生する。図1はその一つ分を示す。ピット4の傾斜した6面は低指数のファセット面6(結晶学的に現れる面)であり、{11−22}とか{1−101}面とかである。ピット4の横の平坦面7はC面成長(縦矢印で示す)している部分である。ところが傾斜面の集合であるピット4では成長方向がファセットの法線(面に立てた垂線)方向である(斜め矢印で示す)から転位は成長とともに稜線8の方へ移動する。
稜線8に集まったあと、転位は稜線8をすべりおりてピット底に集中する。実際に転位が下降運動するわけはないが成長によってピット、稜線、底が次第に上昇するから、相対的に下降運動のように記述しているのである。実際には、転位は成長と共にC面に平行にピット底の方向に向かい伝播していくと考えられる。そのようにピット内に存在した転位は最終的にピット底に集中することになり、その分ピット内にある転位が減少する。
ファセット成長が進むとともに図1(b)のように稜線8の下に連続して転位の集合である面状欠陥10ができる場合がある。結晶の対称性に応じて60度の角度をなすような6枚の面状欠陥10である。面状欠陥10の中心の交差点が転位が高密度に凝集した線状転位集合欠陥部11となる。理想的にはピット内にもともと存在した転位は全て、線状欠陥11と面状欠陥10に掃きよせられる。だからその他の部分は非常な低転位になるのである。そのようにして低転位GaN単結晶を作るというのが前記の本発明者の先願発明の骨子である。
その結果、最終的には、ファセット面からなるピット中央の位置に集合することになる。このメカニズムによって、これらのファセット面によって掃かれる領域の転位は、全て、ピット中央の位置に集合し、当該領域においては、転位密度の大きな低減がなされる。
しかしながら、ファセット面からなるピットを偶然的自然発生的に発生させて、ファセットを維持しながら(埋め込まないで)結晶成長することで、ピット中央の底に、転位を集中させる本発明者の新規な手法(特許文献4)にはなお問題がある。
この方法では、確かに、転位が集中するものの、完全に1点に集まりきらないという問題があった。100μm径のピットを形成した場合、場所によっては、転位は、ピット中央の数μmの範囲に集合する。しかしながら、場所によるバラツキが存在し、集合部から転位がほどけていき、例えば50μm程度の径の領域に、モヤの様に中程度の転位密度の領域が存在することがある。
図3によってこれを説明する。図3(1)はc軸方向に成長させることによりファセットが内向き斜めに進みファセット16よりなるピット14の底に線状の転位の集合束15が集められている状態を示す。それだけならいいのであるが、図3(2)のようにピット底に一旦凝集した転位がばらけてピット内に広がる。この広がりをモヤ状の転位の広がりとここでは呼んでいる。
さらには、良好な領域の面積を広げるために、成長時のファセット面からなるピットの径を大きくすると、このモヤ状の転位の集合部の面積は、さらに増加する傾向がある。これは、転位を集合してくる転位の数も増加するため、当然ながら、集合部からのほどける数も増加したためであると考えられる。
この転位群のピット中央からの転位のほどけ現象は、多くの転位を集合させた場合の転位間の斥力によるものと考えられる。さらには、ピットの合体による転位群の乱れ、濃縮化による、モヤ状転位の広がり面積の拡大も加わると考えられる。
モヤ状の転位の広がりは、場所によるバラツキはあるものの、転位密度としては、2×10cm−2前後程度である。しかし、この転位密度では、レーザダイオード用の基板として十分な寿命を達成するには不十分である。その1/20以下の1×10cm−2以下に転位密度を減らす必要がある。
もう一つの問題は、ファセット面からなるピット底に転位が集合してくる際に、ピット中央に存在する面状欠陥10である(図1(b))。この面状欠陥は、中央から、60°の角度を持って存在することが多い。転位が中央に集まってくる際に、成長の進行とともに転位の集合の経路として集まり、基板表面に垂直に面状欠陥10として存在する場合がある。これは転位が一列に並んだ状態とも考えられ、前述の転位群のモヤと並んで、結晶欠陥の問題である。場合によっては、この面状欠陥の両側で、結晶面のずれをも生じる可能性もある。
また、これらの面状欠陥10は、ピット中央位置から放射状に60°の角度を持って存在することが多いが、約30°の角度で存在する(12角形のピットの場合)こともある。これらの面状欠陥は基板表面で転位列として存在することが多い。面状欠陥はレーザの長寿命化にとっては重大な障害となっており、低減の必要がある。
最後の問題は、欠陥の分布の問題である。前述のファセット状ピットにより、転位を低減する方法は、あくまで自然発生的なファセットの出現を利用したものである。どこにピットが発生するのか予め指定できない。ピットはランダムに発生する。ためにピット位置の制御が不可能であった。
実際にレーザダイオードを製造する場合、基板表面にランダムに転位束が存在するので、レーザデバイスの活性層を含むストライプ構造が、転位束の位置と偶然一致する可能性がある。転位束とストライプ活性層が合致した場合、レーザの発光層が欠陥を含むことになってしまう。転位増殖により劣化が速められるからレーザの寿命が短くなる。
この転位束の位置が制御できないため、結局、レーザチップの製造歩留まりに、悪影響を及ぼすことになる。
レーザ用のGaN基板として、実用化するためには、レーザ製造歩留まりを上げるため、この転位束の位置制御を実現する必要がある。すなわち、レーザ製造時のレーザストライプ構造に、転位束が重ならないように、位置制御を行う必要がある。
以上述べたように、3点の解決すべき課題が挙げられた。
再度まとめると、本発明が解決せんとする課題は、下記の3点である。
1)ファセット面からなるピット中央の転位集合部からの転位のモヤ状の分布を低減すること。
2)ファセット面からなるピット中央の転位集合部付近の面状欠陥の消滅。
3)ファセット面からなるピット中央の転位集合部の位置を制御すること。
本発明はこれらの3点の課題を解決することを目的とする。
本発明の課題を明らかにしたが本発明の説明を容易にするため、GaNの結晶方位と、GaNの気相成長法について予め説明する。
本発明はここに述べる気相成長法のどれを使っても実施することができる。
GaNは六方晶系であり立方晶系であるSiやGaAsのように面や方位の指定が簡単でなく発明の理解が容易でないからここで方位の表記についても述べておこう。
これから、結晶方位によって本発明の構造物の関係や所在、形状などを述べるので結晶方位の定義は明確にすべきである。GaNは六方晶系に属する。その場合面や方位を示す指数は3つ使うものと4つ使うものがある。4つ使う方法をここでは採用する。それについて表現方法を述べる。
結晶面と、結晶方位の表現に関していくつかの約束事がある。以後に現れるh、k、m、nは面指数(或いはミラー指数)と呼び必ず整数である。
面方位を表現する総括表現は、{hkmn}というように波括弧{}を使う。
個別面方位の表現は丸括弧()を使って(hkmn)というように表現する。
結晶方位の総括表現は、鍵括弧<>を使って、<hkmn>と表現する。
結晶方位の個別表現は角括弧[]を使って、[hkmn]と表現する。
同じ面指数をもつ結晶面と結晶方位は直交する。つまり(hkmn)に直交する方向が[khmn]である。
その結晶が属する対称群Gによって許される対称操作Oが決まる。対称変換操作Oによって元に戻る場合、それらの面や方位は同じ総括表現によって表現される。六方晶系GaNの場合初めの3つの指数に関しては3回回転操作が許されるので、h、k、mを相互に入れ換える対称操作は同等のものである。しかしc軸の指数nは独特のものでこれらの3つの指数とは相互変換できない。総括表現で{hkmn}という総括面は一つの個別面(hkmn)から出発して全ての許される対称操作によって到達できる全ての個別面を包含する。
六方晶系といっても許される対称操作は結晶によってなお幾つかの種類があり、一概にどれが総括表現に含まれるということはいえない。GaNは3回対称性があるが反転対称性はない。サファイヤ(Al)は偏心した構造で三方晶系であるが3回対称性がなく反転対称性もない。だから劈開もない。以下に述べることはGaNには成り立つがサファイヤには成り立たないことである。
GaN結晶には3回対称性がある。だから(hkmn),(kmhn)、(mhkn)、(hmkn)、(khmn)、(mkhn)は総括表現{hkmn}に含まれる6つの個別面である。逆に総括表現{hkmn}、{kmhn}、{mhkn}、{hmkn}、{khmn}、{mkhn}の6つは同等の表現である。面指数は整数であって、負の数には上線を付けるのが習わしであるが、明細書では上線を付けることができないので、前にマイナスの符号を付することにする。ただし面指数の間にはコンマを付けないから面指数か、座標かということは簡単に区別がつく。
しかし反転対称性がないから{hkmn}と{−h−k−m−n}は同等でない。C面(0001)と−C面(000−1)は同等な面でない。そこで表面にGa原子が露呈しているかN原子が露呈しているかによって、(0001)Ga面と表記して(0001)面を、(0001)N面と表記して(000−1)面を区別して表現する。
GaNは六方晶系で3回対称性のある3つの軸がある。その内の二つをa軸、b軸という。3軸目には名称がない。それでは不便だからここではd軸とする。つまりabd軸が120度の中心角をなして設けられる。それら3軸が含む面に直交する軸がc軸である。c軸は六方晶系において独特の軸であり、abd軸間の対称性を持たない。結晶面というのは同一の方向を向いた互いに平行な無数の面の集合である。結晶面の方位は、1枚目の結晶面がそれぞれの軸を切る接片の長さを軸の長さで割った値の逆数である。つまりa軸をa/hで切り、b軸をb/kで切り、d軸をd/mで切り、c軸をc/nで切る場合にその面指数を(hkmn)と表現する。
だから面指数が小さいほど基本的な面であり、面の数も少ないわけである。結晶方位[hkmn]は面(khmn)に直交する方向として定義される。4つの指数の内前の3つの指数h、k、mは独立でない。二次元だから二つの指数で表現する事ができ実際二つの指数で表現する方法もある。しかしここでは対称性を見やすくするために、4つの指数を用いている。だからh、k、mは一次従属であるがその間には見やすいサムル−ル(Sum Rule)h+k+m=0が常に成り立っている。
GaNの場合代表的な面が3つ存在する。一つはC面である。これは(0001)面というように表現することができる。つまりc軸に直交する面である。面と軸は互いに直交するが、以後面は大文字で、軸は小文字で表現して区別することにする。
GaNはc軸廻りの3回対称性をもつ。つまり120度の回転によって元に戻るような対称性をもつ。異種の基板の上にGaNを結晶成長させる場合は、必ずc軸方向の成長を行う。GaAs基板やサファイヤ基板の上にヘテロエピ成長した場合は必ずc軸方向の成長になる。GaNは反転対称性がない。だから(0001)面と(000−1)面は相違する面である。
2番目の代表的な面はM面という。それは劈開面である。対称3軸(a、b、d)のうち一つの軸先端を通り、他の二つの何れかの軸とc軸に平行な面である。包括表現{1−100}、{01−10}、{−1010}、{−1100}、{0−110}、{10−10}や個別表現(1−100)、(01−10)、(−1010)、(−1100)、(0−110)、(10−10)などによって表現することができる。
包括表現は全て等価であるが、個別表現は異なる面を意味している。異なる面は互いに60度の角度をなす。90度の角度でなくて60度であることに注意すべきである。M面という表現は通称であって、GaNの代表方位を表現するのに便利である。
3番目に代表的な面はA面という。対称3軸(a、b、d)の軸の先端を結びc軸に平行な面である。包括表現{2−1−10}、{−12−10}、{−1−120}、{−2110}、{1−210}、{11−20}や、個別表現(2−1−10)、(−12−10)、(−1−120)、(−2110)、(1−210)、(11−20)などによって表現できる。上記の包括表現{…}は等価なものを意味するが、個別表現(…)は別の面を示す。
GaNは6回対称性はないから、上の個別の面は二つの種類の面を示す。それぞれの個別面は互いに60度の角度をなす。90度でないことに注意すべきである。この面をA面というのは通称である。便利な表現である。a軸とは区別するべきである。
A面と同じ面指数をもつ方位<2−1−10>は、A面に直交する方位である。それはM面のいずれかと平行である。a方位と呼ぶことができようがそのようには言わない。M面と同じ面指数をもつ方位<1−100>はM面に直交する方位であるが、A面と平行である。これをm方位と呼ぶことができるがそのようには言わない。
そのようにGaNは3つの代表的な面、C面、A面、M面を持つ。方位と面を混同してはならない。同じ指数の面と方位は直交する。反対に直交するような指数をもつ面と方位は平行である。少しややこしいが注意すべきである。
本発明を記述するために頻繁に使われるファセット面というのは、A面やM面をc軸方向に少し傾けたもので構成される。だから例えば、A面から派生したファセット{11−21}、{11−22}や、M面から派生したファセット{1−101}、{1−102}などである。
前3指数が平行な2面が集合してV溝(谷)を構成する。V溝(谷)というのは、A面から派生したファセット{2−1−1±1}、{2−1−1±2}からなるか、M面から派生したファセット{1−10±1}、{1−10±2}からなるものである。
4番目の指数nは上記のファセットでは1か2となっている。そのような低面指数のものが出現することが多いがそれ以上のものも現れる。例えばA面{2−1−10}をc軸に対して少し傾けると{2−1−11}面となる。さらに傾けると{2−1−12}となる。4番目の指数nの値が大きいとc軸に対する傾斜も大きくなる。つまり水平に近づく。nについてそれ以上の高次の指数のファセット面が出現することもあるが、だいたいは、n=1、2、3、4程度である。
後に二段重ねのファセットという概念が出てくる。V溝(谷)を構成するファセットとそれより浅いファセットという2種類のファセットが登場する。文脈を乱したくないからここでそれを予め説明する。浅いというのはより水平にC面に近いということである。つまりc軸方向のミラー指数nが大きいということである。
通常V溝(谷)周りに出現するファセットが{11−22}、{1−101}であると後で述べる。a軸長さをaで、c軸長さをcで表現すると、{1−101}面のC面に対する傾き角は、tan−1(31/2a/2c)である。{11−22}面のC面に対する傾き角は、tan−1(a/c)である。
より浅いファセットというと{11−23}、{1−102}、{11−24}、{1−103}などnが大きいものをいう。{1−10n}(n≧2)のC面に対する傾きはtan−1(31/2a/2cn)である。nが2より大きいとこの値はn=1の値より小さくなる。{11−2n}(n≧3)面のC面に対する傾き角は、tan−1(2a/nc)である。nが3より大きいとこの値はn=2の値より小さくなる。だからこのような高いnのものを浅いファセットと表現している。
GaNは六方晶系でありウルツ鉱型である。正六角形の6頂点と中心にGa原子が存在する底面と、正六角形の6頂点と中心にGa原子が存在する上面と、底面と上面の中間より少し下において正六角形の6頂点と中心にN原子が存在する下中間面と、その少し上に3つのGa原子が存在する中間面とその上に3つのN原子が存在する上中間面がある。3回対称性はあるが、反転対称性はない。六回対称性もない。
下地基板としてサファイヤ、Si、GaAsなどを用いる。サファイヤ(α−Al)は三方晶系であるが、対称性が悪くて三回対称性はない。反転対称性もない。対称性が悪いので劈開もない。
Siは六方晶系でなく立方晶系でありダイヤモンド構造をとる。だからミラー指数は3つである。3指数によって面方位(khm)を完全に記述できる。3指数は独立で前述のサムルールはなく、k+h+m≠0である。三回対称軸は対角線の方向である。それは(111)面と書ける。通常のSiデバイスの場合(001)面を使うが、それは三回対称性がない。ここでは三回対称が必要だからSiの場合は(111)面を使う。
GaAsも六方晶系でなく立方晶系であり閃亜鉛鉱(ZnS;Zinc Blende)構造をとる。だからミラー指数は3つである。3指数によって面方位を完全に記述できる。三回対称軸は対角線の方向である。それは(111)面と書ける。通常のGaAsデバイスの場合劈開の関係から(001)面を使うが、それは三回対称性がない。ここでは三回対称が必要だからGaAsの場合も(111)面を使う。
GaAsは反転対称がないので(111)面といっても2種類がある。つまりAsが外部に出る(111)面と、Gaが外部に出る(111)面である。必要があれば(111)As面とか、(111)Ga面とか言って区別する。同じことを(111)A面と(111)B面と表現することもある。
本発明においてGaNの膜形成法として気相成長法が用いられる。それにはHVPE法、MOCVD法、MOC法、昇華法がある。これらを説明する。
1.HVPE法(ハイドライド気相成長法;Hydride Vapor Phase Epitaxy)
Ga原料として金属Gaを使う。窒素原料はアンモニアNHである。ホットウォール型の反応炉の下方のサセプタに基板を置き上方のボートにGa金属を入れ加熱しておく。そこへ水素ガス+HClガスを吹き付けて、塩化ガリウムGaClを生成する。これが水素ガスにのって下方へドリフトし加熱された基板にあたる。基板の近傍へは水素ガス+アンモニアガスが供給されておりGaClとアンモニアが反応してGaNを合成し加熱された基板の上に積み上げられる。原料がGa金属でありGaClを作るからGaN薄膜に炭素が入らないという利点がある。
2.MOCVD法(有機金属CVD;Metallorganic Chemical Vapor Deposition)
これはGaN薄膜成長法として最も普通に利用されている方法である。コールドウォール型の反応炉において、TMG(トリメチルガリウム)などのGaの有機金属原料と、アンモニアNHとを水素ガス(H)とともに、加熱した基板に吹き付ける。ガリウム原料として有機金属を用いるのはGaN以外のガリウム化合物の薄膜形成で頻繁に行われることである。加熱基板上でTMGとアンモニアが反応して、GaNが合成されこれが堆積され薄膜が形成される。この方法は薄膜形成手法としては実績のあるものである。しかし薄膜でなくて厚い基板結晶を作製しようとすると問題がある。この方法は大量のガスを用いるから原料ガス収率が低い。薄膜では問題はないが基板形成の場合収率の低さは欠点となる。もう一つの問題は原料が有機物を含み炭素が存在するからGaNを形成した場合にその中へ炭素が混入するということがある。炭素のため黄色に着色する場合がある。炭素は深いドナーとなり電子移動度を下げ電気特性を悪化させる。
3.MOC法(有機金属塩化物気相成長法;Metallorganic Chloride Method)
Ga原料としてTMGなど有機金属化合物を用い、窒素原料としてアンモニアを使う。MOCVD法と異なって直接にTMGとアンモニアを化合させるのではない。ホットウォール型の反応炉でTMGをHCl(塩化水素)ガスと反応させ一旦GaClを合成する。これは気体の状態で加熱された基板まで流れてゆく。アンモニアは基板近くに供給されているから、アンモニアとGaClが基板近傍で反応してGaNとなり基板の上に逐次堆積してゆく。一旦GaClを作るから薄膜への炭素の混入が少なくなるという利点がある。ガスを大量に消費するという欠点は克服できない。
4.昇華法
これは原料としてガスを用いない。多結晶のGaNを原料とするものである。反応炉の中で固体GaNと基板を別異の場所において温度勾配を設け、固体GaNを加熱して気化し、より温度の低い基板へ移動させて基板の上にGaN薄膜を堆積させるものである。
上記の課題を解決するための本発明の基本原理について説明する。
その前にもう少し詳しく上記3点の課題について説明する。
ファセット状ピットを形成しながら結晶成長することの最大の問題は転位の集合状態である。すなわち、ファセット面からなるピット部において、ファセット面での転位の伝播方向を利用して、ファセット面の成長と共に、数多くの転位をピット中央に集めてくる際その転位の集合状態が問題となる。
転位が集合する際、逆方向のバーガースベクトルを有する転位同士は、合体により消滅する可能性がある。しかしながら、実際問題としては、一つのファセット面を介して集合してくる転位は同符号の転位が多いと推測される。異符号の転位同士の合体による消滅機構はほとんど働いていないと考えられる。
同符号の転位が集合してきた場合、転位間には斥力が働く。合体して消滅することはない。この斥力によって、集合した転位同士は結晶成長とともにお互いに離れる方向に移動すると考えられる。その結果、ピット中央に集められた転位は、逆に広がる方向に移動を始めると考えられ、ピット中央の転位束付近にモヤ状の転位群が発生すると考えられる。
このモヤ状の転位群の発生原因はまだ明確に解っていないが、転位の集中による応力集中もその原因の一つであろうと推測される。その他に、成長の進行と共に複数のピットが合体し、それによって転位群が合流するがその過程で転位群が乱されてしまう。ピット合体による転位群の乱れも、モヤ状の転位群の発生原因であると考えられる。
また、ピットの合体によりピット径が大型化した場合は、ピット中央に集合する転位の数も増大し、その為モヤ状の転位群が広がり、その面積も拡大すると考えられる。
状況によっては、ファセットからなるピット中央へ転位が集合していく際、隣り合うファセット面の境界部にファセット中心から互いに約60°の角度を有して放射線状に転位の面状の集合部が形成されることがある。
これは、転位が60°の角度をもって集合する為であるが、この際、転位同士の斥力が働いた場合は、ピット中央に転位が集中せずに、この面状欠陥部に転位が一層集合し、面状欠陥がより強固になる場合がある。
また、ピットの合体により、ピット径が、大型化した場合は、ピット中央へ向かって集合する転位の数も増大し、その為、この面状欠陥も大面積化すると考えられる。
また、これらのファセット面からなるピットの発生位置は、前述のように自然現象に任せたままであるため、ランダムで偶然的で不規則である。
そのため、モヤ状の転位群の面積が拡大した基板において、基板上にデバイスを作成する時、品質がばらつき歩留まりの点で一層問題となる可能性がある。
本発明の課題を再び述べた。これらの課題を解決するためには、発明者らは、ファセット面からなるピットを維持して成長させ、転位が集合した際、転位が収束せず、集合部付近に転位が滞留する事が問題であると考えた。そして、それらの転位群の滞留は、転位の集合部に効率的な転位の消滅機構または蓄積機構があれば、改善されるはずであると考えた。
そして、そのような転位の消滅または蓄積機構として、単結晶中に故意に結晶粒界等の欠陥面を利用することを思いついた。つまり欠陥を結晶中の所定の位置に積極的に作り出しこの欠陥面によって転位を消滅させ蓄積させるという巧妙な工夫を編み出した。
まず、前記先願の方法は転位の収束にはファセット面斜面を維持して成長することによって転位を伝播させ収束させているわけである。そのメカニズムが働く限りは、ファセット面の形状を、特に円錐型ピット形状にこだわる必然性はないと本発明者は考えた。そのような思いつきから、円錐形ピットに代えて、幅を持った直線状のファセット面を、形成させて成長することを考えた。
全体の形状としては円錐穴でなく、断面が3角形のプリズムを横にして平行においたような形状となる。複数条あれば山と谷(V溝)が交互に続く凹凸構造となる。それでも転位を掃き寄せる作用はある。
図4で本発明の方法を簡単に述べる。これはファセット面よりなるV溝の断面図である。紙面に垂直の方向に同一の断面が連続する。図3は円錐形のピットの断面図である。断面は似ているが紙面直角方向の様子は全く違う。下地基板(図示しない)の上にGaN結晶22をファセット成長させる。ファセット26、26は傾斜した2面であってV溝24を構成する(ピットでない)。V溝(谷)24の底29に連続して欠陥集合領域Hが成長してゆく。ファセット26の直下には低欠陥単結晶領域Zが成長する。その外側は平坦面27となる。平坦面はC面である。その直下にはC面成長領域Yが連続する。C面成長領域Yも単結晶で低転位だが低欠陥単結晶領域Zより電気抵抗が大きい。低欠陥単結晶領域ZやC面成長領域Yに存在した転位はファセット26の成長によって内側へ集められV溝底の欠陥集合領域Hに集中する。大部分の転位はC面に平行に欠陥集合領域Hに向かって集合すると考えられる。ここで一部の転位は合体して消滅し残りの転位はここに閉じ込められ蓄積される。欠陥集合領域Hでの転位蓄積部位は、境界Kと内部Sである。Kだけである場合もあり(S+K)の場合もある。欠陥集合領域Hに一旦捕獲されると転位は二度と外部へ出てくることはできない。
図3(1)の細く狭い線状のピット底の転位集合所と違って、本発明は長手方向に伸び幅もあるような断面の広い欠陥集合領域Hによって転位を蓄積しているから大量の転位を捕獲蓄積できる。欠陥集合領域H断面積が大きいというのが本発明の第1の強みである。
しかもファセット面が幅を持った直線状(V溝)だと、ピット形状の場合のように、ファセット面とファセット面との稜線が出来ない。そのため面状欠陥の発生が抑えられるというメリットがある。面状欠陥10(図1(b))は重大な難点であったが線状の山谷の繰り返しにすると斜め稜線が消滅するから面状欠陥が稜線に続いて発生するという問題をあっさり解決できる。
このような、幅を持った直線状のファセット面斜面を有して、かつ常に維持して成長し、そのファセット面の最も下部に、直線状のファセット面に対応して、直線状に伸びた、例えば多結晶領域を形成し、隣接する単結晶部との境界Kに結晶粒界を形成し、この結晶粒界Kを転位の消滅場所あるいは蓄積場所として機能させることが可能なことが判った(図4)。
このような、転位の消滅場所あるいは蓄積場所を形成することで、転位集合部からの転位のモヤ状の分布の低減、消滅をはかると同時に、ピットを形成した場合に見られたピット中央の転位集合部付近の面状欠陥の低減、消滅をもはかることが出来る事を見いだした。これらは、転位の消滅あるいは蓄積機構が、出来たために、滞留する転位が激減したためであると考えられる。そのために、モヤ状の転位群、および面状欠陥が大きく低減できたと結論づけられる。
さらなる研究により、このような転位の消滅場所、蓄積場所として機能する領域は多結晶領域のみに限らないことも見出した。
例えば多結晶ではなくても、単結晶であって、隣接する単結晶領域の結晶から僅かに微傾斜している場合、あるいは隣接する単結晶部と同じ方位の単結晶であっても、面状欠陥を境界に有している場合、小傾角粒界を境界に有している場合は、単結晶の欠陥集合領域Hでも転位の消滅場所、蓄積場所として機能する事を見出した。欠陥集合領域Hのc軸が、その周りの結晶のc軸が反転している場合も同じ効果があることを見出した。また、これらの転位の消滅場所、蓄積場所は、面状に広がっているだけではなく、幅(厚さ)hを有した領域として存在することを特徴としている。
この転位蓄積場所が幅hを有した領域であることのメリットは、次のように考えられる。同じストライプ構造を用いた、通常のELO(エピタキシャル・ラテラル・オーバーグロース;Epitaxial Lateral Overgrowth)においては、ファセット面を形成して転位を集合する訳であるが、転位の集合体は厚さのほとんどない面状欠陥に集められる。そのため、転位は薄い面状欠陥部に高密度に集合し斥力のためばらけてしまう。
それに対して、本発明の方法では、欠陥集合領域が厚さを持っているので、片側から集められた転位群は、片側の境界面Kに集合し、もう片側から集められた転位群は、別の片側Kに集合する。その結果、境界面に集合する転位密度を半減する事が出来る。
また、さらに、厚さを持った欠陥集合領域であるため、その内部Sにも、転位欠陥を集合することが可能で、蓄積する単位体積あたりの転位欠陥量を極めて低くすることが出来る。よって、転位のばらけも発生しにくいと考えられる。
さらに、通常のELOでは、成長と共にファセット面斜面は埋め込まれて、最表面は平坦な面(C面成長)となる。そうなると、一旦面状欠陥部に集められた転位群は、再度、ばらけ出す。ために成長と共に転位は拡散し転位が均一に高密度分布してしまう。この転位密度は、10cm−2のオーダーで、このままでは、レーザ用基板として使用できない。
しかしながら、本発明においては、詳細は後述するが、本発明の厚さを持った欠陥集合領域を形成することで、このファセット面斜面の埋め込みを回避でき、ファセット面斜面を維持したまま結晶成長を継続できる。そのため、転位群を欠陥集合領域に閉じこめたまま、成長を継続できる。
これは大きな特徴である。これが可能な理由は、欠陥集合領域が多結晶状態であるか、あるいは別の角度の浅いファセット面をこの欠陥集合領域に形成している為である。
これらの具体的な例は、前述のもの以外も含めて後述するが、これらを総称して、本発明においては、「幅を持った結晶欠陥集合領域H」と呼ぶことにする。
「幅を持った結晶欠陥集合領域H」を有して結晶成長する事により、転位を低減することを本発明の骨子とする。幅hは1μm〜200μm程度でかなり分厚いもので転位をよく蓄積できる。
さらに発明者らは、この「幅を持った結晶欠陥集合領域H」の発生する場所を制御することで、幅zを持った直線状のファセット面の発生位置、即ち、低欠陥の良好な単結晶部(低欠陥単結晶領域Z)の位置をも制御できることを見出した。
結晶成長の初期に所定の場所に、これら「幅を持った結晶欠陥集合領域H」を生じうる有限の幅hを持った直線状のマスク(あるいは種(たね))を形成しておけば、成長と共にこの場所に優先的に「幅を持った結晶欠陥集合領域H」が形成される。
さらに、その領域に隣接して、幅zを持った直線状のファセット面が形成される。そのファセット面の底に、常に「幅を持った結晶欠陥集合領域H」が存在することを見出した(図5(a)、図6)。
この幅を持った結晶欠陥集合領域Hを底に有するファセット面の発生について、そのメカニズムは、結晶欠陥集合領域Hの種類によって異なる。
しかし、概略としては下記の通りとなる。つまり、何らかの手法で、幅を持った結晶欠陥集合領域Hを生じうるマスクを形成した場合、結晶成長中に常にこの領域は窪み状になる。
この理由は、このマスク上の領域はC面の成長速度に比べて成長速度が小さいというのも一つの理由であると考えられる。
この窪みを有することで安定的にこの位置の両側に、ファセット面からなる斜面を形成することが出来る。
また、他のメカニズムとしては、この幅を持った結晶欠陥集合領域Hに、その両側のファセット面斜面よりも角度の浅いファセット面が形成されやすく、結局、この角度の浅いファセット面が存在するために、この位置に安定的にこの部分を谷底とした、ファセット面からなる谷が形成される(図5(b))。
こうして、ファセット面からなる谷の位置も固定されることになる。このような配置となった場合は、ファセット面が埋め込まれることはなく、この形状を維持して成長が進行する。このプロセスを経由する事で、ファセット面の位置制御が可能となる。即ち、低欠陥単結晶領域Zと欠陥集合領域の位置も固定され、制御可能となる。これにより、規則正しい低欠陥単結晶領域Z、欠陥集合領域Hの配置も可能となる。これも、本発明の骨子の一つである。
また、欠陥集合領域の形成のされ方については、下記の様に考えられる。即ち、欠陥集合領域を形成するためのマスクの上に、多結晶領域が形成された場合は、欠陥集合領域は多結晶領域として明確に区別される。しかし、欠陥集合領域としては、色々な場合が考えられ、例えばその一つに、面状欠陥面を境界に有した単結晶領域である場合がある。
この場合は、ごく成長の初期段階において、欠陥集合領域の両側のファセット面の傾きに比べ、やや傾きの浅いファセット面が出現し、そのファセット面の境界がこの欠陥集合領域の境界となる。
そのメカニズムは、ファセット面の谷底に存在するファセット面の角度の差を有したファセット面の境界で、結晶成長の進行と共に転位が集められ、結局その場所が、転位の集合場所、即ち閉じた欠陥集合領域となると考えられる。
また、顕著な例としては、この欠陥集合領域がGaN結晶の極性が反転した領域となっている場合があり、頻繁に見られる現象である。これは、即ち、低欠陥単結晶領域Zに対して、欠陥集合領域は窒化ガリウム結晶のc軸が180°向きが違っていると言うことである。この場合は、明らかに欠陥集合領域の境界に粒界が発生し、結晶成長と共にファセット面を通して、欠陥集合領域に集められた転位はこの粒界に集積されていくと考えられる。
以上で、本発明の基本的な原理説明をした。この発明によって、前掲の3点の技術課題、即ち、転位集合部付近の転位のモヤ、面状欠陥、位置制御の困難が全て解決出来る。即ち図7の様な立体的な結晶成長後の形状を有することにより、図8の様な組織を有する基板が作成され、結晶欠陥分布が大きく改善された。図7において、下地基板21の上にGaN結晶22が成長しているが表面は山谷の繰り返しになっている。谷(V溝)の直下に続く細い幅をもつ平面が欠陥集合領域Hである。傾斜がファセット26である。ファセット26の直下に続く部分が低欠陥単結晶領域Zである。これは山の頂上が鋭利に尖っており平坦なC面成長領域Yが存在しない場合を示している。その場合は隣接する欠陥集合領域H、Hによって挟まれる部分は全て一様な低欠陥単結晶領域Zとなる。p=z+hという簡単な構造になる。平坦部が存在する場合低欠陥単結晶領域Zが二分されるから、その平坦部の幅をwとしてp=2z+w+hとなる。山の高さ(V溝の深さ)とピッチpの関係は後に述べる。図8は基板を除去し上面の凹凸を除去して両面を研磨した状態の矩形ウエハを示す。これは欠陥集合領域H、低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yが順に規則正しく並ぶHZYZHZYZH…構造をしている。なお、C面成長領域Yは成長条件により必ずしも幅を持った直線状とはならず、幅にバラツキを有し、ゆらいでいる場合も多い。次に、本発明の具体的な内容について、詳しく説明していく。
本発明はファセット成長によってV溝(谷)底部に転位を集めてその他の部分を低転位化し、V溝(谷)底部に欠陥集合領域Hを形成して転位を閉じ込め再び解き放つということがない。欠陥集合領域Hのために先に課題として挙げた3つの問題
(1)ファセット面からなるV溝(谷)中央の転位集合部からの転位のモヤモヤ状分布の低減。
(2)ファセット面からなるV溝(谷)中央の転位集合部の面状欠陥の消滅。
(3)ファセット面からなるV溝(谷)中央の転位集合部の位置を制御すること。
を本発明は全て解決できる。
以下に本発明の実施形態について述べる。
再度、本発明の基本的な原理を繰り返すと、本発明は幅を持った直線状に伸びたファセット面よりなる谷(V溝)を維持して結晶成長させることを前提としている。ファセット面よりなる谷の底には幅をもった直線状の欠陥集合領域Hができる。幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hに隣接して低欠陥単結晶領域Zを成長させ、結晶欠陥集合領域Hの境界部Kまたは境界Kと内部Sにその周辺に存在する転位を引き込む。境界Kまたは境界Kと内部Sで転位を消滅させるか蓄積するかする。
本発明は、このように欠陥集合領域Hの境界K、内部Sを転位の消滅場所あるいは蓄積場所としてGaNを成長することで転位を低減することを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法である。
あるいは、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hに隣接して低欠陥単結晶領域Zを成長させ、結晶欠陥集合領域Hの境界Kまたは境界Kと内部Sを、周辺に存在する転位の消滅場所あるいは蓄積場所として、GaNを成長することで、転位を低減することを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法である。
さらに、具体的には、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hに隣接して、ファセット面斜面を有して、成長し、そのファセット面を維持することによって、結晶欠陥集合領域Hの境界部Kまたはその内部Sを転位の消滅場所あるいは蓄積場所とし、その結果として転位を低減することを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法である。
また、結晶欠陥集合領域Hとの関係を明確にすると、次のようになる。幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hに隣接して、ファセット面斜面を有して、成長するにあたり、結晶欠陥集合領域Hを谷間として、その両側にそのファセット面を維持することによって、そのファセット面を通して転位が結晶欠陥集合領域Hへ集合し、結晶欠陥集合領域Hの境界部Kまたはその内部Sを転位の消滅場所あるいは蓄積場所として成長し、その結果として転位を低減することを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法である。
実際は、複数本の結晶欠陥集合領域Hを有して成長すると考えられる。その際には、次のように記述される。間隔をおいて互いに平行な複数本の、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hに隣接して、長手方向に伸びた帯状のファセット面斜面を有し、それを維持して成長することで、転位を低減することを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法である。
さらに、結晶欠陥集合領域Hと、ファセット面との関係を明らかにすると、下記の様に書ける。間隔をおいて互いに平行な複数本の、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hに隣接して、長手方向に伸びた帯状のファセット面斜面を有し、それを維持して成長するにあたり、その配置は、結晶欠陥集合領域Hを谷間として、その両側にファセット面を有して成長することにより、転位を低減することを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法である。
さらに具体的に、結晶欠陥集合領域Hを谷間として、その両側にファセット面を有して成長するには、次のような場合がある。間隔をおいて互いに平行な複数本の、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hに隣接して、長手方向に伸びた帯状のファセット面斜面を有し、それを維持して成長するにあたり、ファセット面により形成される形状は、長手方向に伸びた左右対称のプリズム型であることを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法である。
この際に、プリズム結晶の頂上に水平な面を有した左右対称のプリズム型であっても良い。
この際の、ファセット面指数は、次のようである。平均的な結晶成長方向がc軸方向であり、直線状の結晶欠陥集合領域Hの方向が<1−100>である場合は、ファセット面は、{kk−2kn}(k、nは整数)である。
その中でも、頻度の高いファセット面は、{11−22}であることが多い。また、直線状の結晶欠陥集合領域Hの方向は、<1−100>でも良いが、<11−20>である事も可能である。よって、平均的な結晶成長方向がc軸方向であり、直線状の結晶欠陥集合領域Hの方向が<11−20>であり、ファセット面は、{k−k0n}(k、nは整数)である。
その場合の代表的なファセット面は、{1−101}である。
プリズム結晶の頂上に水平な面を有した左右対称のプリズム型である場合、平均的な結晶成長方向がc軸方向であり、直線状の結晶欠陥集合領域Hの方向が<1−100>あるいは<11−20>のどちらかであり、ファセット面が{11−22}、{1−101}、{kk−2kn}、{k−k0n}(k、nは整数)のいずれかである時、その頂上の水平な面は(0001)面である。また、この水平な面は幅を持った直線状とならず、幅が変動し、ゆらいだ形状となる場合もある。
これらの結晶成長において、厚く結晶成長した場合および成長条件等によっては本来幅を持った直線状である結晶欠陥集合領域Hが、完全な直線でなく幅を持ち、破線状に途切れる場合がある。この場合においても、結晶欠陥集合領域Hの両側のファセット面により、転位は結晶欠陥集合領域Hの近傍に集められる。しかし、結晶欠陥集合領域Hが直線状ではなく幅をもち、破線状に途切れているため、途切れた箇所では、転位は結晶欠陥集合領域Hからはみ出して存在する。このような結晶欠陥集合領域Hが直線状ではなく幅をもち、破線状に途切れた場合においても、転位の閉じ込めの効果は認められる。よって、本発明にはこのような場合も含む。
以上で、低転位単結晶部のファセット面について、述べてきたが、次に、欠陥集合領域について記述する。欠陥集合領域については様々なバリエーションがある。幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hは多結晶である場合がある。
それ以外の場合について述べる。幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hは、その両側の単結晶領域部のファセット面斜面に比べて、角度が浅いファセット面を有して成長する場合がある。
しかもその場合、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hは、その境界を、その両側の単結晶領域部のファセット面と角度が浅いファセット面との境界と一致して成長する事が多い。
また、欠陥集合領域の特徴として、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hは、その境界に面状欠陥を有して成長する場合が多い。
また、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hは、その境界の両側において結晶軸が微傾斜して成長する場合がある。
結晶欠陥集合領域Hは、角度の浅いファセット面を有して成長した領域と一致するが、さらに幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hは、その両側の境界の内側に角度の浅いファセット面の両側からの整合部を有して成長することも多い。
そして、その下にはその整合部の下に面状欠陥を有して成長する事も多い。
さらに、最も不思議な現象であるが、非常に重要な現象として、反転現象がある。GaNは[0001]軸において極性を持つ。即ち、(0001)面と(000−1)面とで物性が異なる。この反転が、この欠陥集合領域で発生する場合が多いのは大変興味深い。即ち、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hは、それに隣接するファセット面部とはc軸を反転して成長する場合がある。
即ち、結晶欠陥集合領域Hは、[000−1]軸を主軸として成長し、それに隣接するファセット面部は、[0001]軸を主軸として成長するということである。
この場合は、直線状の結晶欠陥集合領域Hの方向が<1−100>の時、角度の浅いファセット面は、{11−2−5}または{11−2−6}として成長する。
反転現象が起きない場合は、直線状の結晶欠陥集合領域Hの方向が<1−100>であり、角度の浅いファセット面は、{11−25}または{11−26}として成長する。
次に結晶組織の寸法について述べる。直線状の結晶欠陥集合領域Hの幅は、1μmから200μmで効果を発すると考えられる。
小さい方では1μmから原理的には可能である。上限は200μmと考える。これは、あまりに大きくなりすぎると、様々な結晶状の乱れが生じてくるために、実験上から上限は200μmとした。また、低欠陥単結晶領域Zの幅は、10μmから2000μmであるとした。
これは、下限は10μm程度から実現可能と見積もられ、上限は実験上あまりに大きく取りすぎると、ファセット面の乱れや結晶欠陥の発生等が生じてくるために、このような上限を設けた。
また、実際の基板として適用するためには、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hを、規則正しく等間隔で並べ、それらの間に低欠陥単結晶領域Zを有して成長することが必要である。その際に、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hが等間隔で並ぶピッチが20μmから2000μmとする。理由は、先ほどの低欠陥単結晶領域Zの幅の制限と同じ理由である。
さて次に、如何に結晶欠陥集合領域Hを作成するかについて述べていく。下地基板上に、幅を持った直線状のマスクを形成し、そのマスク上で結晶欠陥集合領域Hを成長し、それ以外の場所においては低欠陥単結晶領域Zを成長する事を基本プロセスとする。
実際は、このマスクは下地基板上に幅を持った直線状のマスクを複数本互いに平行に等間隔で形成し、その上から窒化ガリウムを成長する事で実現する。
さらにこのマスクの上で起きる現象については、次の様に記述される。下地基板上で、マスクの無い場所では、マスクに隣接して長手方向に伸びたファセット面を有した単結晶領域が成長し、マスクの上では、当該ファセット面よりも浅い角度を有したファセット面が成長する事が多い。
この場合マスクの材質について下記のように記述出来る。即ち、マスクはSiOあるいはSiである。
又は、マスクはPtあるいはWである。
あるいは、マスクは多結晶AlNあるいは多結晶GaNであっても良い。
更に、マスクは表面に多結晶GaNの析出したSiOでも良い。これら列挙したマスクはいずれも結晶欠陥集合領域Hの作製に効果がある。
また、実際の製造プロセスとして、下記が挙げられる。
下地基板上にGaNからなるエピタキシャル層を作成した後で、マスク層を形成し、当該マスク層を部分的にエッチングし、所定の形状にパターニングしたものを欠陥集合領域部を形成する場所に配置した後、その上からGaNを成長するもの。
下地基板上に直接マスク層を形成し、当該マスク層を部分的にエッチングし、所定の形状にパターニングしたものを欠陥集合領域Hを形成する場所に配置し、その上からGaNを成長するもの。この場合は、一旦低温バッファ層を成長した後に高温エピ成長する場合と、直接高温エピ成長する場合との両方があり得る。
またマスクの作成に当たり、欠陥集合領域部を発生させるための下地基板上に設置するマスクとして、マスク層を所定の形状にパターニングする際に、当該領域以外の領域において、エピタキシャル・ラテラル・オーバーグロースを行うためのパターンを同時に形成して、結晶成長を行う事も可能である。
作成するマスクについては、次のような制限があり得る。直線状の結晶欠陥集合領域Hを形成するためのマスクの幅hは10μmから250μmである。
幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hを形成するためのマスクが等間隔で並ぶピッチが、20μmから2000μmである。
このようにして結晶成長したGaN結晶は、次のようなプロセスで基板に製造される。即ち、結晶成長において、幅を持った直線状の欠陥集合領域部を有して成長し、単結晶部Z、Yと欠陥集合領域Hとの境界Kおよび内部Sを、単結晶部Z、Yの転位の蓄積あるいは消滅場所として成長することで、単結晶部Z、Yの転位を低減し、得られた結晶を機械加工した後、研磨を施し平坦な表面を有した基板とする。
あるいは、結晶成長時の成長表面において、ファセット面からなる谷を形成し、幅を持った直線状の欠陥集合領域Hを谷の底に有して成長することで、その周りの単結晶部Z、Yの転位を低減し、得られた結晶を機械加工した後、研磨を施し平坦な表面を有した基板とする。
また、機械加工として、スライス加工、研削加工、ラッピング加工のうち少なくとも一つを含む。
また、ここまで述べてきた、下地基板としては、GaN、サファイア、SiC、スピネル、GaAs、Siを用いる事が出来る。
このようにして作成された窒化ガリウム単結晶基板は、次のようなものである。表面に、幅を持ち直線状に伸びた低欠陥単結晶領域Zを有し、その両側に境界線を介して幅を持った結晶欠陥集合領域Hを有し、その結晶欠陥集合領域Hも両側に境界線を有している単結晶窒化ガリウム基板である。欠陥集合領域Hは両側に境界線K、Kをもち、直線状の広がりをもつ低欠陥単結晶領域Zの両側に欠陥集合領域Hが接合したHZHの構造を表面に有する。
あるいはまた、表面にほぼ直線状に伸びた境界線を両側に持ち、かつ、幅を持った低欠陥単結晶領域Zを有し、それに接して、ほぼ直線状に伸びた境界線を両側に持ち、かつ、幅を持った結晶欠陥集合領域Hを有し、それらが、互いに接して交互に並び、規則正しく等間隔で複数回繰り返して存在する単結晶窒化ガリウム基板である。これはHZHZHZ…と繰り返す構造が表面にあるような基板である。
基板の表面に存在する低欠陥単結晶領域Zと、結晶欠陥集合領域Hが、基板表面にほぼ垂直にそれぞれ基板内部にわたって存在している単結晶窒化ガリウム基板である。先述のZH構造が表面だけでなく内部へも延長しておりZは有限の幅zをもつ平面、Hも有限の幅hをもつ平面であり、境界Kも平面である。
また、表面に存在する低欠陥単結晶領域Zと、結晶欠陥集合領域Hが、基板表面にほぼ垂直にそれぞれ基板内部にわたって存在しており、基板内部においてもそれらの領域が互いに接して交互に並び、規則正しく等間隔で複数回繰り返して存在する単結晶窒化ガリウム基板である。これはHZHZHZ…と繰り返す構造が表面にも内部にもあるような基板である。
表面に存在する、幅を持ち直線状に伸びた低欠陥単結晶領域Zのほぼ中央に、幅を持ちほぼ直線状に伸びた、比抵抗の異なる領域が存在する単結晶窒化ガリウム基板である。これは比抵抗が高いC面成長領域Yが低欠陥単結晶領域Zの中間にあり、HZYZHとなる構造を有する基板だということをいっている。特に、欠陥集合領域のGaN結晶のc軸の極性が反転した場合、ファセット面の形状制御はうまくいく。極性が反転した場合、結晶成長速度が遅くなるという要因が寄与していると考えられる。
また、表面に繰り返して存在する、幅を持ち直線状に伸びた低欠陥単結晶領域Zのほぼ中央に、幅を持ちほぼ直線状に伸びた、比抵抗の異なる領域が存在する単結晶窒化ガリウム基板である。これはHZYZHZYZHZYZH…という繰り返し周期構造が表面に存在する。
ここに述べたように、結晶成長時に表面にC面の鏡面部を有して成長した場合、他の領域の{11−22}面を有して成長した領域に比べ、比抵抗が大きくなる傾向がある。これは、面指数が異なることにより、不純物の取り込み効率が異なるためである。単結晶で低転位の部分が、低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Yと2種類あるが、C面成長領域Yで比抵抗が高い理由を述べている。C面成長よりもファセット成長の方が電気伝導度の高い基板が得られる。成長してみればいずれもC面形成で方位は同一なのであるが、成長の方向が違うのでそのような比抵抗の相違が発生する。
表面に存在する、幅を持ち直線状に伸びた低欠陥単結晶領域Zのほぼ中央に、幅を持ちほぼ直線状に伸びた、比抵抗の異なる領域が存在し、基板表面にほぼ垂直に、低欠陥単結晶領域Zに伴って、基板内部にわたって存在している単結晶窒化ガリウム基板である。
表面に繰り返して存在する、幅を持ち直線状に伸びた低欠陥単結晶領域Zのほぼ中央に、幅を持ちほぼ直線状に伸びた、比抵抗の異なる領域が存在し、基板表面にほぼ垂直に、低欠陥単結晶領域Zに伴って、基板内部にわたって存在している単結晶窒化ガリウム基板である。
基板表面に存在する、低欠陥単結晶領域Zと結晶欠陥集合領域Hが、基板表面から裏面まで貫通して存在する単結晶窒化ガリウム基板である。
基板表面に低欠陥単結晶領域Z、結晶欠陥集合領域H、C面成長領域Yが存在する中、結晶欠陥集合領域Hのみが幅をもった直線状ではなく、幅を持ち破線状に途切れている場合もある。この場合には低欠陥単結晶領域Zにおいて十分な低転位な領域が得られる。
次に欠陥集合領域について記述する。
結晶欠陥集合領域Hは多結晶からなり、接する低欠陥単結晶領域Zとの境界に結晶粒界を有する単結晶窒化ガリウム基板である。
しかし、結晶欠陥集合領域Hは、むしろ単結晶状態の場合が多い。結晶欠陥集合領域Hは単結晶からなり、接する低欠陥単結晶領域Zとの間で、境界に面状欠陥を有する単結晶窒化ガリウム基板である。
ある場合には、結晶欠陥集合領域Hは単結晶からなり、領域内部に貫通転位群を有する単結晶窒化ガリウム基板であることもある。
またある場合には、結晶欠陥集合領域Hは単結晶からなり、領域内部に貫通転位群および面状欠陥を有する単結晶窒化ガリウム基板であることもある。
更にまた結晶欠陥集合領域Hは単結晶からなり、接する低欠陥単結晶領域Zとの間で、結晶軸が微傾斜している単結晶窒化ガリウム基板であることもある。
結晶欠陥集合領域Hは単結晶からなり、接する低欠陥単結晶領域Zとの間で、境界に面状欠陥を有し、領域内部に貫通転位群、面状欠陥を有する単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
或いは結晶欠陥集合領域Hは単結晶からなり、接する低欠陥単結晶領域Zとの間で、境界に面状欠陥を有し、領域内部に長手方向に伸びた1層の面状欠陥を有する単結晶窒化ガリウム基板であることもある。
基板表面が、(0001)面を主面とする単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
更に結晶欠陥集合領域Hは接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなる単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
また結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなり、かつ、接する低欠陥単結晶領域Zとの間で、境界に面状欠陥を有する単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
或いは結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなり、結晶欠陥集合領域H内部Sに、貫通転位群を有する単結晶窒化ガリウム基板であることもある。
また結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなり、結晶欠陥集合領域H内部Sに、貫通転位群および面状欠陥を有する単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
更にまた結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなり、かつ、結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとの間で、結晶軸方向が微傾斜している単結晶窒化ガリウム基板であることもある。
更に結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなり、接する低欠陥単結晶領域Zとの間で、境界に面状欠陥を有し、結晶欠陥集合領域H内部に、貫通転位群、面状欠陥を有する単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
また結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなり、接する低欠陥単結晶領域Zとの間で、境界に面状欠陥を有し、結晶欠陥集合領域H内部に、長手方向に伸びた1面の面状欠陥を有する単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
更にまた結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなり、低欠陥単結晶部は、基板表面の主面が(0001)面であり、結晶欠陥集合領域Hは、基板表面の主面が(000−1)面である単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
また、基板表面の、低欠陥単結晶領域Zおよび結晶欠陥集合領域Hの長手方向の結晶方位は、<1−100>である単結晶窒化ガリウム基板である。あるいは、<11−20>であっても良い。
基板内部において、面として存在する低欠陥単結晶領域Zおよび結晶欠陥集合領域Hの分布面は、<1−100>方向および<0001>方向に平行である単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
基板内部において、面として存在する低欠陥単結晶領域Zおよび結晶欠陥集合領域Hの分布面は、<11−20>方向および<0001>方向に平行である単結晶窒化ガリウム基板である場合もある。
低欠陥単結晶領域の幅が、10μmから2000μmである単結晶窒化ガリウム基板である。これはC面成長領域Yが存在しない場合はそのとおり低欠陥単結晶領域Zの幅zを意味するが、C面成長領域Yが存在する場合は2z+yを意味する。低欠陥単結晶領域ZもC面成長領域Yの低欠陥で単結晶だからである。
低欠陥単結晶領域の幅が、100μmから800μmである単結晶窒化ガリウム基板である。これもC面成長領域Yが存在しない場合はそのとおり低欠陥単結晶領域Zの幅zを意味するが、C面成長領域Yが存在する場合は2z+yを意味する。
結晶欠陥集合領域Hの幅が、1μmから200μmである単結晶窒化ガリウム基板である。
或いは結晶欠陥集合領域Hの幅が、10μmから80μmである単結晶窒化ガリウム基板である。
また低欠陥単結晶領域Zの平均貫通転位密度が、5×10cm−2以下である単結晶窒化ガリウム基板である。
低欠陥単結晶領域Zにおいて、結晶欠陥集合領域Hの近傍30μmの領域で、やや貫通転位密度が高く3×10cm−2以下であることが多い。
低欠陥単結晶領域Zの貫通転位密度が、結晶欠陥集合領域Hとの境界付近で最も高く、境界から離れるに従って減少していく単結晶窒化ガリウム基板である。
或いは基板表面において、段差を有し、結晶欠陥集合領域Hがやや窪んでいる単結晶窒化ガリウム基板である。
或いはまた段差部の窪みの深さは、1μm以下である単結晶窒化ガリウム基板である。
単結晶窒化ガリウム基板を表裏を逆にし、裏側を表側として基板を使用する場合、次のような窒化ガリウム基板となる。すなわち、結晶欠陥集合領域Hは、接する低欠陥単結晶領域Zとは、c軸が反転している単結晶からなり、低欠陥単結晶部は、基板表面の主面が(000−1)面であり、結晶欠陥集合領域Hは、基板表面の主面が(0001)面である単結晶窒化ガリウム基板である。
或いは基板表面において、段差を有し、低欠陥単結晶領域Zがやや窪んでいる単結晶窒化ガリウム基板である。
幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hが、規則正しく、等間隔pで並び、それらの間に低欠陥単結晶領域を有する単結晶窒化ガリウム基板である。この低欠陥単結晶領域は、低欠陥で単結晶である低欠陥単結晶領域Z、あるいは低欠陥単結晶領域Zと低欠陥単結晶で高比抵抗のC面成長領域Yの三重層ZYZからなる。
幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hが等間隔で並ぶ、ピッチが、20μmから2000μmである単結晶窒化ガリウム基板である。
好ましくは、幅を持った直線状の結晶欠陥集合領域Hが等間隔で並ぶピッチが、100μmから1200μmである単結晶窒化ガリウム基板である。
以上述べてきた単結晶窒化ガリウム基板を用いて作成された半導体レーザデバイスを作成することが出来る。
通常ピット周りに出現するファセットが{11−22}、{1−101}であると述べた。すでに述べたようにa軸長さをaで、c軸長さをcで表現すると、{1−101}面のC面に対する傾き角は、tan−1(31/2a/2c)である。{11−22}面のC面に対する傾き角は、tan−1(a/c)である。
{11−22}のC面に対する傾き角Θは、a=0.31892nm、c=0.51850nmであるから、tan−1(31/2a/2c)=28.043゜である。
{1−101}のC面に対する傾き角Θは、tan−1(a/c)=31.594゜である。
図9(a)のように<1−100>方向に延びるストライプマスクを設けた場合、V溝を構成するファセット面は(11−22)と(−1−122)面である。そのC面に対する傾斜角Θは28゜である。
V溝の深さをV、結晶欠陥集合領域Hの幅をhとするとファセット面(11−22)、(−1−122)の広がりはVcosecΘであり、ファセット面のC面への投影はz=VcotΘによって与えられる。
結晶欠陥集合領域H、C面成長領域Yのピッチをpとすると、それは結晶欠陥集合領域Hの幅hと、ファセット面のC面への投影幅が二つ分とC面成長領域Yの幅yを加えたものに等しい。
p=h+y+2z=h+y+2VcotΘ
結晶欠陥集合領域Hの幅hはストライプマスクの幅sによってほぼ決まり、ストライプマスクのピッチpも初めの設計によって決まる。結晶欠陥集合領域Hの幅hが1μm〜200μmで、ピッチpは20μm〜2000μmで、y+2zが10〜2000μmであるということを述べた。
ストライプマスクの幅sとピッチpを与えるので結晶欠陥集合領域H幅hが大体決まり、HZYZHZYZ…の周期のピッチはマスクピッチpに等しいから既に決まっている。
V溝の深さVが浅いうちは、C面成長領域Yの幅yが有限値をとる。しかしV溝の深さVが深くなるとC面成長領域Yが消失(y=0)する。C面成長領域Yが消失する臨界のV溝深さをVとすると、それは
(<1−100>方向のV溝の場合)
=(p−h)tanΘ/2=0.307(p−h)
(<11−20>方向のV溝の場合)
=(p−h)tanΘ/2=0.266(p−h)
によって与えられる。つまりV溝の深さVが決まれば平坦部(C面成長領域Y)の幅yが決まるということである。
そしてV溝の深さVをV>Vとしてファセット成長させればC面成長領域Yの面積を0にし平坦部のない山谷構造が形成される筈である。しかし後に述べる実施例では全てC面成長領域Yの幅yは有限値をとり(y>0)、V<Vであるようになっている。
後に述べる実施例1のサンプルAでは、s=50μm、h=40μm、p=400μm、y=30μm、厚さT=1250μmである。この値を用いると、V溝の深さは、V=100μmで、臨界深さはV=110μmである。低欠陥単結晶領域Zの幅はz=165μmとなる。
結晶を厚く成長させてGaN結晶の厚みTをVより大きくしてもV溝はそれに応じて深くなるのではなく、臨界深さVよりも浅いようである。
また、本発明では低コストで窒化ガリウム結晶を製造する方法をも開示する。厚く結晶成長させてインゴットを作製しスライスする方法である。すなわち、これまでに説明してきた方法により、結晶成長表面に長手方向に伸びた帯状の斜面からなるファセット面を形成し、そのファセット面を両側にもつ谷間の底部に結晶欠陥集合領域Hを形成し、それらの形状を維持して連続して成長させ、結晶欠陥集合領域Hの周囲の低欠陥単結晶領域ZやC面成長領域Yの転位を引き込み低減した結晶を厚く成長させインゴットとし、当該結晶をスライス加工することにより多数枚の窒化ガリウム結晶基板を得ることができる。
また、このインゴット作製においては、本発明による窒化ガリウム結晶基板を種結晶として用いることもできる。本発明による窒化ガリウム結晶基板を種結晶として結晶成長した場合、種結晶の結晶欠陥集合領域Hの上には新たに結晶欠陥集合領域Hが引き継がれ、低欠陥単結晶領域ZやC面成長領域Yの上には新たに低欠陥単結晶領域ZやC面成長領域Yが成長することが分った。ただ、興味深いことには、C面成長領域Yの位置は種結晶とその上に結晶成長した部分とは必ずしも一致しないことが判明した。これは、低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Yは結晶構造としては全く同じ結晶構造のものであるためと考えられる。結晶中の不純物濃度が異なるのみである。このようにして本発明による窒化ガリウム結晶基板を種結晶として、その上に厚く成長したインゴットを作製し、当該結晶をスライス加工することにより多数枚の窒化ガリウム結晶を得ることができる。
この内容を実際の結晶のファセット面観察から記述すると次のようになる。本発明による単結晶窒化ガリウム基板を種結晶として、その上に窒化ガリウムを成長させ、種結晶の結晶欠陥集合領域Hの上には浅い角度を有したファセット面からなるピットの底を形成し、底には結晶欠陥集合領域Hが形成され、また、低欠陥単結晶領域ZおよびC面成長領域Yの上にはファセット面からなる斜面または水平なファセット面が形成され、低欠陥単結晶領域ZまたはC面成長領域Yを成長させることでインゴットを作製し、当該結晶をスライス加工することにより多数枚の窒化ガリウム結晶を得ることができる。
[実施例1(サファイヤ基板;サファイヤ基板;図10)]
本発明のGaN基板を製造する方法(実施例1)を述べる。製造工程を図10に示した。下地基板としてサファイヤC面基板41を使用した。図10(1)はサファイヤ基板41を図示している。サファイヤは三方晶系(Hexagonal symmetry)であり、GaNも同じ晶系に属する。既に実用化されているLED、LDでは専らサファイヤC面基板が用いられている。
サファイヤ基板41に予めMOCVD法(有機金属CVD法)によって、厚さ約2μmのGaNエピ層42を設けた。図10(2)にこの状態の断面図を示す。エピ層42の表面はGaNのC面になる。
GaNエピ層42の上面に、厚さ100nmのSiO膜を一様に成膜した。フォトリソグラフィによってストライプ状のマスクパターン43を形成した。図10(3)にこの状態の断面図を示す。SiO被覆部分43は同じ幅の帯状であり等間隔に並ぶ。GaNが露呈した露呈部分48も帯状で等間隔に並んでいる。幅やピッチや方向が相違する5種類の異なるストライプパターンA、B、C、D、Eを形成して比較した。パターンA〜Dは、ストライプの長手方向がGaNエピ層42の<1−100>方向とした。つまり{11−20}面(A面)に平行である。パターンEは、ストライプの長手方向が<11−20>方向とした。つまり{1−100}面(M面)に平行である。ストライプ(被覆部43)幅をsとし、マスクのないGaNエピ層の露呈部幅をtとする。パターンのピッチをpとする。p=s+tである。
パターンA ストライプ幅s=50μm;ピッチp=400μm;t=350μm
パターンB ストライプ幅s=200μm;ピッチp=400μm;t=200μm
パターンC ストライプ幅s=2μm;ピッチp=20μm;t=18μm
パターンD ストライプ幅s=300μm;ピッチp=2000μm;t=1700μm
パターンE ストライプ幅s=50μm;ピッチp=400μm;t=350μm
それぞれのストライプパターンA、B、C、D、Eをもつ試料をサンプルA、B、C、D、Eと呼ぶことにする。
(1)サンプルA、サンプルBの成長
ストライプパターンAをもつサンプルAと、ストライプパターンBを持つサンプルBの上にHVPE法によってGaN結晶を成長させた。HVPE装置において、縦長の反応炉は内部上方にGaメタルを収容したGaボートを有し、下方には基板を上向きに戴置したサセプタが設けられる。サセプタの上にサファイヤC面基板41を設置する。ここでは、サセプタAとサセプタBをサセプタに載せて同じ条件でGaN成長させる。
反応炉の上方から水素ガス(H)と塩化水素(HCl)ガスをGaボートに供給するようになっており、アンモニアガス(NH)と水素ガスをサセプタに載せた基板の直近へ供給できるようになっている。水素ガスはキャリヤガスである。
実施例1では、反応炉は常圧としてGaボートは800℃以上に加熱した。サファイヤ基板は1050℃に加熱した。GaとHClの反応で一旦GaClが合成される。GaClが下降して基板付近に至りアンモニアガスと反応する。反応生成物であるGaNが、GaNエピタキシャル層露呈部48やマスク43の上に堆積する。
エピ層の成長条件は次の通りである。
成長温度 1050℃
NH分圧 0.3atm (30kPa)
HCl分圧 0.02atm( 2kPa)
成長時間 10時間
この成長の結果、マスクパターンA、マスクパターンBの上に、約1250μm厚みのGaNエピ層をもったサンプルA、サンプルBが得られた。図10(4)はその状態を示している。
[サンプルAの観察(SEM、TEM、CL)]
まずサンプルAについて表面を顕微鏡観察した。サンプルAは、その表面が平行なV溝44の集合よりなる。V溝44はファセット面46、46で構成される。つまり多数の正三角形のプリズムを横にして並べたような表面形状を有する。V溝44の間には平坦部47が存在することもある。平坦部47はC面に平行である。平坦部47とその直下の部分をC面成長領域と呼ぶこともある。
V溝44の底49は初めに設けたストライプマスク43と上下方向で常に合致する。つまりV溝底49がマスク43の上に形成される。マスク位置によってV溝底部を正確に指定することができる。露呈部48の上に、V溝44のファセット面46と平坦部47が成長するのである。
サンプルAの表面に現れるV溝44のピッチは400μmであった。それは初めのストライプマスク43のピッチpと同一である。つまりマスク位置の上に谷が来るように、400μmピッチの山と谷が交互に連続するファセット面の集合となっている。プリズム(V溝)を形成するファセット面の多くは{11−22}面をもつものであった。<1−100>方向({11−20}面に平行)にストライプを形成したから、ファセット面はストライプの方向に平行だということがわかる。
隣接するプリズム状ファセット面46、46の間には平坦部47が見られる。これはC面に平行で((0001)面)鏡面である。幅は30μm程度であった。V溝44を構成するファセット面46、46の間のV溝底49には前記のファセットより浅い角度の別のファセット面が存在している事が分かった。
サンプルAを劈開面{1−100}で基板ごとに劈開し、その断面を観察した。観察手段は、走査電子顕微鏡(SEM)、カソードルミネセンス(CL)、蛍光顕微鏡によった。
この観察の結果V溝44の底49に、ある程度の幅をもってc軸方向(成長方向)に伸びている、他の部分と区別できる部分45があることが分かった(後に欠陥集合領域Hと命名する部分)。その区別可能な成長方向(c軸方向)に伸びる部分(欠陥集合領域H)45は幅が40μm程であって、CLにおいて、他の領域に比べて暗いコントラストになり、明確に他の部分と区別できた。さらに様様の部分で劈開することによって、この区別可能なc軸方向延長部分が三次元的に厚さを持った面状領域として結晶中に存在している事が分かった。つまり結晶の厚さ方向とマスクストライプの方向に延びる面状の領域なのである。面状の領域は平行に等間隔に並ぶ。
さらにサンプルAをCL(カソードルミネセンス)とTEM(透過電子顕微鏡)によってより詳細に分析した。その結果転位の挙動がこの部分(欠陥集合領域H)と他の部分と著しく相違する事が分かった。つまり暗い線状の境界線50によって囲まれた部分48には数多くの転位が存在した。10〜10cm−2もの高転位密度を有するところもあった。さらに(CLで見て)暗い線状の境界線50(後に結晶粒界Kであることがわかる)は転位の集合体であることが分かった。この境界線50は場所によっては転位がつらなり面状欠陥として存在している箇所もあった。このサンプルAにおいて境界線の両側の結晶方位に有意の差は認められなかった。つまり境界線50の両側部分の結晶方位はほぼ同一であろうと考えられる。
(CLで見て)暗い境界線50(結晶粒界K)の外側の領域(低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Y)においては、転位密度は極めて低い。つまり境界線を境に転位密度は著しい非対称性を示す。境界線より外側は低転位密度になっている。境界線の極近くでは、10〜10cm−2の中程度の転位密度の部分が存在するものの境界線50から離れるにしたがって転位密度は急激に減少する。境界線50から100μm程度も離れる(低欠陥単結晶領域Z)と、転位密度は10〜10cm−2にも低下している。場所によっては境界線の近くでも転位密度は10〜10cm−2である部分もある。境界線50の外部(低欠陥単結晶領域Z)ではこのようにV溝44の底49から離れるに従って転位密度は下がってゆく。
ファセット面の山の部分は平坦面47となっている。それはC面に平行である。その直下の部分も転位は低い。その部分をC面成長領域Yと呼ぶ。転位は低く抵抗率が高い。低欠陥単結晶領域Zは抵抗率が低いので、その点でC面成長領域Yとは違う。これら種類の領域はすべて面状の領域であり、ストライプ方向と結晶厚み方向に延びている。だからストライプと直交する方向に交互に存在するということになる。面の記号で書くと、
…YZHZYZHZYZHZYZHZYZH…
というような繰り返しになる。低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Yでの転位は少ないが、その転位はほとんどがC面に平行に延びている。C面に平行であってしかも中心の欠陥集合領域Hの方向へ向かって伸びている。しかも低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yの転位密度は成長初期でかなり高いが、成長の進行とともに転位密度が次第に低くなってゆくことがわかった。さらに境界線外部(低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Y)は単結晶であることがわかった。
つまりそれらの事実はこういうことを示唆している。境界線50の外側の欠陥は成長とともにファセット面成長によってV溝底49(欠陥集合領域H)へと掃きよせられて、境界線50とその内部(欠陥集合領域H)に蓄積される。そのために境界線50外部(低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Y)での転位密度は減少し、境界線とその内部(欠陥集合領域H)での転位密度は高い。
境界線の外部といっても煩雑であるから、その性質をとって単結晶低転位領域と呼ぶことにしたい。しかし境界線外部といっても二つの区別できる領域がある。つまりV溝44の傾斜壁(ファセット面)46が通過した部分Zと、V溝(谷)の隙間の平坦部47が通過した部分Yは相違するものである。ファセット面46直下部分Zはファセットに従って成長したことによって低転位になり単結晶である。だからここを「低欠陥単結晶領域Z」と呼ぶことにする。
平坦な部分47(C面に平行な鏡面部分)の直下の部分Yはもっとも低転位であって綺麗な結晶質の領域である。これはファセット面が通過した部分でないがファセット面の影響によって低転位化した部分である。ストライプマスクの幅や間隔によってV溝で覆われない余分の部分が残ることがある。そのような残留部分は(C面の鏡面)平坦部47に続いて成長した部分であるがやはり低転位であり単結晶であることがわかった。しかしC面成長するから電気抵抗が高い。ここはC面成長するのでC面成長領域Yと呼ぶことにする。
注意すべきことがある。低欠陥単結晶領域Zも欠陥集合領域HもC面が最終的な表面となりその点でC面成長領域Yと同一の結晶方位をもつ。しかし低欠陥単結晶領域Zと欠陥集合領域Hの成長面はC面でなくファセット面である。それで電気抵抗の著しい差が出てくる。低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Yは結晶が低転位であり単結晶である点は共通である。
さらにこの欠陥集合領域Hと、V溝44内のファセット面46の関係について詳細に検討した。このプリズム(V溝の山に着目したもの)を形成するファセット面は{11−22}面が主流となっている。先に述べたように、谷(V溝)底49にはこれらのファセット面46に対してやや角度の浅いファセット面が存在することもある。角度が浅いというのは4番目の指数nが2より大きいということである。浅いファセット面から下部に向かって、欠陥集合領域Hがc軸方向に伸びていた。
サンプルA、Bにおいて、浅いファセット面(谷底)49が欠陥集合領域Hを形成していることが明らかになった。つまり欠陥集合領域Hは境界50、50と浅いファセット49によって囲まれておりファセット面46の上昇とともにc軸方向に成長してゆく。
さらに角度の浅いファセット面は、V溝(谷)44の底49の両側から形成されている。角度の浅いファセット面はV溝の中央(谷底にあたる)で合体しその部分で角度をもった底を形成する。この角度をもった底49の部分が最も高い転位欠陥密度をもつということが分かった。
そのような事実から、転位は、ファセット面{11−22}面によってV溝(谷)44に集められ、欠陥集合領域Hを形成し、さらに谷底49により高密度に集められるということがわかった。
本発明は常にファセット46を保持しながら成長させることによって、ファセット面46が作る谷44の底49に付随して、欠陥集合領域Hを成長させ、周囲の転位を引き込み、欠陥集合領域Hの内部Sおよび境界面Kで転位を消滅させるかあるいは蓄積する。つまり欠陥集合領域Hを転位の消滅蓄積場所としている。そのような巧妙なメカニズムによって本発明は欠陥集合領域Hの周囲の低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yの転位を低減しているということがわかる。
[サンプルBの観察(SEM、TEM、CL)]
サンプルBについてもSEM、TEM、CLによって表面や劈開面を観察した。その結果はサンプルAに似たようなものである。
大きな違いは、ファセット面谷間44の欠陥集合領域Hの幅hであった。サンプルAでは欠陥集合領域Hの幅hは40μmであったが、サンプルBでは欠陥集合領域Hの幅hは190μm程度と広かった。これらはほぼストライプマスクの幅(s=50μm、s=200μm)と合致している。これからマスクの直上にマスク幅と同じ幅の欠陥集合領域Hが形成されるということがわかる。
サンプルAの欠陥集合領域Hは均一であったが、サンプルBの欠陥集合領域Hは直線状(表面で)だが内部はかなり不均一であった。サンプルBの欠陥集合領域Hの表面には、角度の浅いファセット面だけでなくて多結晶状の突起も数多く見られて、乱れた状態となっていた。
さらにサンプルBの欠陥集合領域Hを詳細に調べた。欠陥集合領域Hには、周囲の単結晶領域Z、Yに対して微傾斜している領域がある事が分かった。さらに欠陥集合領域Hの内部において、幾つかの結晶方位の異なる部分領域があることもわかった。部分領域の結晶方位はそれぞれ微傾斜していた。サンプルBの欠陥集合領域Hは、転位欠陥や面状欠陥を含み、微傾斜したグレインを含むという事も分かった。
[サンプルA、サンプルBの加工]
サンプルA、サンプルBの基板を研削加工した。まず、裏面のサファイヤ基板を研削加工で削り落とした。その後、表面を研削加工し平板な基板状とした。そのあと研磨加工して、平坦な表面を有するGaN基板とした。直径1インチ程度の大きさのGaN基板が得られた。平坦なGaN基板のサンプルA、Bは図10(5)のような形状になる。
このGaN基板は、表面を(0001)面、C面とする基板である。基板自体は透明で平坦である。しかし基板表面のCL像を観察すると、結晶成長の履歴がコトラストの違いとして観察できる。
GaNのバンド端に近い波長の360nmの光でCL観察すると、サンプルA、Bともに直線状に伸びた欠陥集合領域Hが400μmピッチで規則正しく並んでいるという事が分かった。これはマスク43のピッチと同じである。
また欠陥集合領域Hは暗いコントラストとして見える事が多いが、場所によっては明るいコントラストとなり必ずしも一定していない。
明るいと言い暗いと言ってもCL像のことであり肉眼観察では全く一様であり透明平坦である。顕微鏡観察でも透明であり平坦である。CL像として初めて明るい、暗いという差異がでてくるのである。
直線状に伸びた欠陥集合領域Hの両側のファセット46に続いて成長した低欠陥単結晶領域Zは、帯状の明るいコントラストとして観察される。その明るいコントラストの帯状の領域(低欠陥単結晶領域Z)の中央に暗いコントラストの筋状の部分が観察された。この筋状の暗いコントラストの部分はC面を維持して成長した部分(C面成長領域Y)である。
通常、CL像においては、{11−22}面で成長した領域は明るいコントラストとして見え、(0001)面で成長した領域は暗いコントラストとして観察される。つまり3種類の区別できる領域に対しCL像では、
欠陥集合領域H…明(一部で暗)
低欠陥単結晶領域Z…明
C面成長領域Y…暗
という対応がある。
欠陥集合領域Hは三次元的に厚さを有した板状をしておりc軸方向(とストライプの方向)に伸びている。欠陥集合領域Hは基板結晶の表裏を貫通して基板表面に垂直に伸びるものとして存在している。
しかしながらもちろん基板に穴が開いている訳ではない。基板は一様な充填物である。CLによって初めて見える結晶組織状の記述である。
図10(5)に示すように、平坦な基板形状になっているから、貫通転位密度などは測定容易である。CL像、エッチV溝(谷)、TEMによって観察することができる。その中でもCL像で観察するのが最も容易である。
CL像では貫通転位は暗い点として観察される。サンプルB、サンプルAの基板で、欠陥集合領域Hの内部に多くの貫通転位が集中している事が分かった。欠陥集合領域Hの境界に転位が集合して線状に並んでいるということも分かった。
これは三次元的には面状欠陥に相当する。欠陥集合領域HはCLでも境界面K50が暗いコントラストで明確に区別される。境界Kは面状欠陥、あるいは転位の集合部で作られている。
欠陥集合領域Hは、ストライプマスク幅50μmのサンプルAでは40μm幅でストライプ状であった。欠陥集合領域Hはマスク幅200μmのサンプルBでは約190μm幅でストライプ状であった。
サンプルA、サンプルBともに欠陥集合領域Hの外側(低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Y)は、転位は少なく、欠陥集合領域Hから離れるにしたがって転位密度は減少する。場所によっては、欠陥集合領域Hからすぐに転位密度が激減するところもある。低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yにおいて平均の転位密度は5×10cm−2以下であった。
C面成長領域、低欠陥単結晶領域では転位は少ないが、存在する転位はC面に平行で欠陥集合領域Hに向けて走っているものが多い。転位は欠陥集合領域Hに吸収され一部消滅し残りは蓄積されるのでその他の領域(低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Y)で転位が低くなるのだと考えられる。本発明の基板は、このように欠陥集合領域Hを有することで、転位密度を低減した基板である。
サンプルA、BのGaN基板をKOH水溶液に漬け温度を上げてエッチングした。このエッチングはGa面はエッチングされにくくN面はエッチングされ易いという異方性がある。
その結果欠陥集合領域Hが選択的にエッチングされ易いという部分が存在した。その他のC面成長領域Y、低欠陥単結晶領域Zはエッチングされにくかった。欠陥集合領域Hにはエッチングされ易い部位とされにくい部位があった。
ということは欠陥集合領域Hは、エッチングされにくいGa面である(0001)面だけではなくて、エッチングされやすいN(窒素)面である(000−1)面となっている部分もある、ということである。C面成長領域Yや低欠陥単結晶領域ZはGa面(0001)面ばかりでエッチングされにくい。
欠陥集合領域は一部極性が反転しており窒素面(000−1)が出ているからKOHによってエッチングされ易いところが一部に出現したのであろう。このように欠陥集合領域Hには極性が一部反転した部位も存在する。
サンプルA(マスク幅50μm)、サンプルB(マスク幅200μm)のGaN基板は基本的な性質は共通である。先述のようにもっとも大きい相違は欠陥集合領域Hの幅hである(h=40μm、h=190μm)。それはストライプマスク(SiO)の幅hによって予め決めることができる。
基板面積をできるだけ有効に利用するためには、転位の多い欠陥集合領域Hを小さくし、C面成長領域Y、低欠陥単結晶領域Zを大きくするのが得策である。また欠陥集合領域Hの幅hが大きすぎると、内部に異常欠陥を含み易いので好ましくない。
しかしあまりに欠陥集合領域Hを小さくしようと(マスク幅sを狭く)しすぎると、欠陥集合領域Hがそもそも形成されないということがある。そうなるとファセット成長によって欠陥を掃き集めるということができず、C面成長領域Yや低欠陥単結晶領域Zができず転位密度を下げることができない。
[サンプルC(ストライプマスク幅s=2μm、ピッチP=20μm)の成長]
2μm幅、20μmピッチ(s=2μm、p=20μm)のストライプマスクを持つパターンCについてGaN成長を行った。前述のサンプルA、Bと同様にHVPE法で成長させようとした。
すると2μm幅のストライプマスク43(SiO)がGaNによって埋まってしまいファセット成長させても、ファセット面をもつV溝がストライプマスク43から発生するというような関係にならなかった。だからストライプマスク43によってV溝44の中心(底)49を規定することができずランダムなファセットの分布となってしまった。V溝(谷)の位置の制御ができずそれは問題である。
そこでHVPE法をやめ、MOCVD法により遅い成長速度によってGaN結晶を成長させた。成長速度を落とすのはストライプマスク(SiO)43からV溝44(谷底49)を立ち上がらせるためである。
MOCVD法は金属Gaを使わず、Gaを含む有機金属(TMG、TEG等)を原料とする。ここでは、ガス原料として、トリメチルガリウム(TMG;3族ガス)とアンモニアガス(NH;5族ガス)と水素ガス(H;キャリヤガス)を用いる。
反応炉のサセプタにサンプルCを置いて1030℃に加熱し、原料ガスを常圧で3族:5族比=1:2000で供給してGaNの成長を行った。成長速度は4μm/hであり、成長時間は30時間であった。ファセット面を有する120μm程度の厚みのGaN層を成長させることができた。
これによってストライプマスク43の直上に底49をもつファセットよりなるV溝(谷)44表面のGaN結晶成長が行われた。V溝(谷)44の底49がストライプマスク43の位置に合致した。ストライプマスク43の配置によりV溝(谷)44配置の制御が可能である。V溝(谷)44の底49には欠陥集合領域Hが連続して成長していた。
サンプルCにおいてはマスク幅sは2μmと極めて小さいが、V溝(谷)底49にできた欠陥集合領域Hもそれにつれて小さくて幅hは1μm程度であった。つまりこのように細いストライプマスクでもファセットよりなるV溝を所定の位置に形成できるということである。透過電子顕微鏡観察によって、欠陥集合領域Hによる、欠陥集合領域H、低欠陥単結晶領域Zの転位低減効果を確認した。
欠陥集合領域Hが極めて小さいというところがサンプルCの特徴である。HVPEでは不可能でも成長速度の遅いMOCVD法を使うことによって細いマスクと同じ配置の細い欠陥集合領域Hの線状分布を得る事ができることを確認した。
[サンプルD(ストライプ幅s=300μm、ピッチp=2000μm)の成長]
300μm幅、2000μmピッチのストライプマスクを有するパターンDについてGaN成長を行った。これはマスク幅sが大きくピッチpも大きい例である。前述のサンプルA、Bと同様にHVPE法で成長させた。HVPEの成長条件は次の通りである。
成長温度 1030℃
NH分圧 2.5×10−2atm(2.5kPa)
成長時間 30時間
この成長によって、厚さ4.4mmのGaN厚膜結晶が得られた。サンプルDにおいては、ストライプの方向に長く伸びたファセット面からなる山谷(V溝)構造が表面に現れた。ファセット46よりなるV溝44の底部49には欠陥集合領域Hが規則正しく並んでいた。欠陥集合領域Hの位置は、初めのGaN膜の上に形成したストライプマスク43の位置と正しく一致した。
しかしながら、V溝(谷)を構成するファセット形状には崩れかかったところも多かった。またマスクに対応して規則正しく配列しているファセットからなる山の部分に直径の小さいピットや小さい山が発生することもあり状況は必ずしも良好でない。
欠陥集合領域Hは2000μmピッチで存在しそれは当初のストライプマスク43のピッチpと等しい。そのような規則正しい位置に固定されたプリズム状の山は正しい形状を保っていた。しかし形が崩れ、端部分やファセット面の斜面が平面でなく別異のファセットが出た部分もあった。また山の頂上にあるC面成長領域Yの面積にばらつきがあった。
しかし欠陥集合領域Hは所定の位置にちゃんと存在していた。欠陥集合領域Hの幅hは約250μmであった。このように、欠陥集合領域Hの幅hは成長厚さdの増加とともに減少してゆく傾向があった。
また、傾向として、欠陥集合領域Hの幅hを大きく設定し過ぎると、欠陥集合領域Hの内部に異形状の多結晶領域が出現する。その異形状多結晶が転位の乱れを引き起こしそれが欠陥集合領域Hを越えて、低欠陥単結晶領域ZやC面成長領域Yにまで広がる場合があるので注意しなければならない。
たとえ型くずれしていても所定位置にある欠陥集合領域Hの周りには、C面成長領域Y、低欠陥単結晶領域Zが生成される。その部分の平均の転位密度は5×10cm−2以下であり低転位であった。よってファセット面が崩れていてもマスクに基づく欠陥集合領域Hの存在による転位低減機構は良好に機能していることがわかる。
しかしファセット面の形状が大きく乱れた所では、転位が筋状になって集合して存在している領域があった。
サンプルA〜Dによる実験によって、
欠陥集合領域Hの幅hは2μm〜200μm、
欠陥集合領域を与えるストライプマスクの幅sは2μm〜300μm、
欠陥集合領域のピッチpは20μm〜2000μm
という範囲で、充分に本発明の効果を得る事ができる、ということが明白になった。
[サンプルE(ストライプ方向<11−20>;幅s=50μm、ピッチp=400μm)の成長]
<11−20>方向に伸びる50μm幅、400μmピッチのストライプマスクを有するパターンEについてGaN成長を行った。これはマスク幅s、ピッチpはサンプルAと同一であるが、ストライプの伸びる方向が<1−100>でない。サンプルEにおいて、ストライプの延長方向が<11−20>であるのでストライプ延長方向は劈開面{1−100}に平行である。
パターンAとはマスク方位が異なるだけで後の条件は同じとした。
前述のサンプルAと同じ条件でHVPEによって成長させた。HVPEの成長条件は次の通りである。
成長温度 1050℃
NH3分圧 0.3atm(30kPa)
HCl分圧 2.0×10−2atm(2.0kPa)
成長時間 10時間
このパターンは成長速度が遅くて10時間の成長によって平均厚みが800μm程度のGaN厚膜が得られた。このパターンEではストライプ状の結晶の合体が起こりにくいという傾向があった。そのために成長速度が遅くなり800μmのあまり厚くないGaN結晶が得られた。
場所によっては、結晶の合体が発生しておらず、ストライプ状の結晶間で、隙間が非常に深いところもあった。厚さについても分布があって、均一な成長でない。ファセット面についてもばらつきが大きい。必ずしも、所定のファセット面が結晶表面の全面を覆うということもないようであった。
しかしながら調査の結果、結晶が合体して、GaNの厚膜結晶の形状を保っているところでは、多少形状が乱れたファセット面の谷間の底に欠陥集合領域Hが見られ本発明の形状を保っていた。また直線状の欠陥集合領域Hが存在しているところでは、その位置はストライプ状マスクパターンの設定位置に存在していた。
欠陥集合領域Hの結晶性を分析したところ、それは多結晶からなることが分かった。この点で、サンプルEはこれまでのサンプルA〜Dと少し違う。
さらに透過電子顕微鏡で、結晶中の転位分布を調べた。多結晶からなる欠陥集合領域Hの外側の、低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yでは転位密度が非常に小さいということが分かった。欠陥集合領域Hの近くでは7×10cm−2という所もあったが、多結晶の欠陥集合領域Hから離れるに従って転位密度は減少し、低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yでの平均の転位密度は5×10cm−2以下であり低転位であった。最も低い転位密度は5×10cm−2であった。
サンプルEの結果から、ストライプ方向が<11−20>であっても、本発明の効果が認められた。ストライプ方向が<1−100>方向の場合(サンプルA〜D)に比較してなお問題があるが、それらの問題も今後の改良によって解決されるであろう。
[実施例2(GaAs、Si、サファイヤ基板;パターンA、H(A+ELO);図11)]
次の三種類の異種材料基板を準備した。
イ.GaAs基板(111)A面
ロ.C面(0001)サファイヤ基板
ハ.(111)面Si基板
Siはダイヤモンド構造の立方晶系である。GaAsは閃亜鉛鉱構造(Zinc Blende)型の立方晶系である。GaNは六方晶系である。そのC面は3回回転対称性をもつ。立方晶系は(111)面だけが3回対称性をもつ。それでSiとGaAsは三回対称性の(111)面の基板を用いる。GaAsの(111)面はGa面とAs面の区別がある。ここではGa面を使う。A面というのは3族面でここではGa面である。サファイヤは三方晶系でGaNと同じ晶系である。c軸方向に成長させるためサファイヤはC面(0001)をもつ単結晶を基板とする。
図11(1)〜(3)に異種基板の上にGaNを成長させる方法を図示した。実施例1では異種基板41の上に薄いGaN層を付けてからマスク(SiO)を形成したが、実施例2では初めから異種材料下地基板51の上にマスク材を付けてストライプマスク53を形成する。つまり直接異種基板51に0.1μm厚みのSiO層を形成しフォトリソグラフィによってパターンAのストライプマスクを作製した。
この実施例2ではパターンAとは異なるパターンIをも用いる。新しいパターンIはパターンAのマスクを使うがそのマスクのない部分にエピタキシャルラテラルオーバーグロース(epitaxial lateral overgrowth)のパターンを同時に形成した。このELOパターンは、直径2μmの円形開口部が4μmピッチで正三角形の頂点に来るように六回対称に配置したものである。正三角形の辺がストライプに平行であるように方位を決めた。ELOパターンは、ストライプパターンよりずっと繰り返し周期の小さいパターンである。つまりパターンIはパターンAにELO(ラテラル成長)マスクを重ね合わせたハイブリッド型である。
パターンA ストライプ幅s=50μm、ピッチp=400μm
パターンI パターンA(50μms、400μmp)+ELOマスク(2μm×4μm;六回対称)
異種基板の上に直接にマスクパターンを乗せるからその方位は、GaN結晶の方位によって定義できない。異種基板の方位によって定義する必要がある。GaAs基板の場合は、ストライプ長手方向が<11−2>方向とした。サファイヤ基板の場合はストライプ長手方向が<11−20>方向とした。Si基板の場合は<11−2>方向とした。こうして基板の違うものとパターンの違うもので4種類のサンプルF〜Iを作製した。それぞれのサンプルは次のようなものである。
サンプルF;直接にパターンAを設けた(111)GaAs基板
サンプルG;直接にパターンAを設けた(0001)サファイヤ基板
サンプルH;直接にパターンAを設けた(111)Si基板
サンプルI;直接にパターンI(パターンA+ELO)を設けた(111)GaAs基板
これらの試料のマスクを付けた状態は図11(1)に示す。サンプルF〜Iについて実施例1と同じようにHVPE法によってGaNの層を形成した。HVPE法は反応炉の上方にGaボートを有し、下方に基板を乗せるためのサセプタを有する。上方から水素ガスとHClガスをGaボートに供給してGaClを生成し、GaClが下方へ流れ加熱された基板に接触する部位においてアンモニアを供給してGaClとの反応によってGaNを合成する方法である。マスクの上へGaNバッファ層を低温で成長したのち高温でGaNエピ層を厚く成長させる。GaNについて2段階の成長をさせる。
(1.GaNバッファ層の成長)
GaAs、サファイヤ、Si基板などの上にGaNバッファ層を次の条件でHVPE法により成長させた。低温でバッファ層を設けるのは通常よく行うことである。
アンモニア分圧 0.2atm (20kPa)
HCl分圧 2×10−3atm(200Pa)
成長温度 490℃
成長時間 15分
バッファ層厚み 50nm
(2.GaNエピ層の成長)
低温成長したバッファ層の上にHVPE法により高温でエピ層をもうける。
アンモニア分圧 0.2atm (20kPa)
HCl分圧 2.5×10−2atm(2500Pa)
成長温度 1010℃
成長時間 11時間
エピ層厚み 約1400μm(1.4mm)
サンプルF〜Iともに厚みは1.4μmで透明のGaN単結晶厚膜が得られた。外見は実施例1のサンプルと同様である。透明であってガラスのような感じがする。ファセット成長しており表面はファセットの集合で構成されている。正三角形に近いプリズムを横にして多数並べたような山と谷が交代する形状となっている。しかも山と谷が等しいピッチで規則正しく配列していることが分かった。この規則配列は基板上に形成したマスクの位置と合致していた。ファセット面の谷間のピッチは約400μmでストライプマスクのピッチ400μmと同一であった。つまり400μmのピッチで山と谷を交互にして表面を敷き詰めた形になっている。透明であるが表面の規則正しい凹凸(V溝(谷))は顕微鏡観察でもよくわかる。
サンプルF〜I表面のプリズムを形成するファセット面56は、{11−22}面が中心となっていることが判った。隣り合う二つの{11−22}面56が作る山の頂上57には、20〜40μm程度の幅の鏡面状の(0001)面が見られた。そして、さらに、隣り合う二つのファセット{11−22}面が作る谷の底59には、これらのファセット面56に対して、やや角度の浅いファセット面が存在していることが、判明した。以上のように外見は、実施例1のサンプルAと、全く同様な形態であった。
その後、この4種類の基板(サンプルF〜I)に、研削加工を行った。まず、裏面のGaAs基板、Si基板、サファイア基板をそれぞれ研削加工で削り落とした。その後、表面を研削加工し、平板な基板状とした。GaAs基板(サンプルF、I)、Si基板(サンプルH)の方が、サファイア基板(サンプルG)よりも加工は容易であった。そのあと、研磨加工を施し、平坦な表面を有した基板とした。直径が2インチ程度の窒化ガリウム基板が得られた。図11(3)にその断面図を示す。
これらのGaN基板は、表面を(0001)面、C面とする基板であり、基板自体は平坦で透明である。基板表面に欠陥集合領域Hが規則正しく、直線状に並んでおり、その形状はストライプ形であり、幅hは40μm程度であった。閉じた欠陥集合領域部Hの外側に低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yが存在する。横方向に、ZHZYZHZYZH…のように並ぶ。
低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yでは転位は少なく、欠陥集合領域Hから離れるに従って、転位密度は減少する。場所によっては、閉じた欠陥集合領域Hの境界から、転位は激減するところがあることも確認した。閉じた欠陥集合領域Hの外側の低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yの平均的な転位密度は、サンプルF〜Iのいずれも5×10cm−2以下であった。具体的には、
サンプルF:3×10cm−2
サンプルG:2×10cm−2
サンプルH:3×10cm−2
サンプルI:9×10cm−2
という転位密度であった。ELOマスクを併用したサンプルIで最も転位密度が低くなっている。サンプルF〜Iにおいて、ストライプ状の閉じた欠陥集合領域Hは実施例1のサンプルAと同様な状況であった。サンプルF、G、H、Iにおいても、ちょうどストライプマスク53の直上に欠陥集合領域Hが存在する。欠陥集合領域Hを谷間59として、幅を持った直線状のファセット面56が、欠陥集合領域Hの両側に隣接して成長することにより、転位が欠陥集合領域部Hに集められていることが判った。
また、これらサンプルF〜Iは、表面に幅を持った直線状の欠陥集合領域Hが蛍光顕微鏡等で観察できたが、これらの欠陥集合領域Hは、基板を厚さ方向に貫通して、基板の裏側にも到達していることが観察された。
さらに、ELOマスクを併用したサンプルIについて、詳細に調査してみた。硫酸、硝酸の混酸で、200℃の温度でエッチングを試みたところ、サンプルIの表面では、欠陥集合領域Hのみがストライプ状にエッチングされ、陥没部となった。
しかし、その裏側においては、反対に欠陥集合領域Hはほとんど変化が無く、低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yが、エッチングされ、陥没部となった。このエッチング方法によっては、(0001)面のGa面はエッチングされにくく、(000−1)面の窒素(N)面は、エッチングされやすいということが解っている。これらの現象は、この欠陥集合領域Hのみが、極性が反転して、Ga面(0001)で成長するところを窒素面(000−1)で成長していることを示している。
よって、サンプルIにおいて、欠陥集合領域Hに相当する、やや浅い角度を有して成長している領域は、反転して、ファセット面(11−2−5)または、(11−2−6)面として−c軸方向<000−1>に成長したと考えられる。
ところで、(111)面GaAsを基板とするサンプルFについては、2枚作製した。一枚(F1)は、先程説明したように、良好な基板として作製された。
しかしながら、その内の別の1枚(F2)においては、谷間を有したプリズム型のファセット面56を形成していない領域があった。本来あるべき欠陥集合領域Hにおける谷間の代わりに、ファセット面からなる逆12角錐形をしたピットが、一列に並んで存在している領域があった。
もっとも谷間59を有したプリズム型のファセット面56を有している場所もあったが、しかしその場合でも、CL像での評価の結果、1対のファセット面56で形成された谷間54の底59には、存在するはずの欠陥集合領域部Hが、存在していないことが判明した。谷底59の直下に欠陥集合領域Hが不在である理由は不明であるが、このようなサンプルF2が作製されたのは事実である。
何らかの理由で、欠陥集合領域Hが形成されず、その結果、プリズム型に分布したファセット面が形成されない領域が発生したものと考えられる。欠陥集合領域Hがないから表面に角錐型ピットができるし、プリズム状の構造ができないところもあるのである。直線状に続くV溝の変わりに離散的なピットが数多く現れるのではストライプマスクを利用した本発明の目的に沿わない。原因を追求しなければならない。
そこで、このサンプル(F2)を詳細に調査した。ファセット面からなるピットが並んでいる領域には、ピットの底の中央に集められている転位の束が、広い領域にわたって広がっていることが判明した。サンプルF2の表面の転位密度を測定すると、7×10cm−2であり、V溝54の底59に続く欠陥集合領域Hを有して成長した場合に比較して、転位密度が高かった。
また、面状欠陥の存在も確認され、この面状欠陥は、ピット中央から互いに60°の角度を持って存在しており、ピット中心から100μm以上にわたって伸びて存在している場合もあることが判った。それは先願のピット構造を示す図1(b)の面状欠陥10と同様の構造であった。さらには、欠陥集合領域Hを有しない、プリズム型のファセット面を有した領域においても、プリズムの底に、線状に転位群が並んでおり、3次元的に表現すると、面状欠陥も出現していることが判った。
以上に述べたように、サンプルF2のように欠陥集合領域Hが消失している場合は、ファセット面からなるプリズム型のファセット形成部において、この形状の維持が行われず、形が崩れ去ることが明確になった。
また、転位の消滅、蓄積機構として働く欠陥集合領域Hが形成されない場合、転位の集合が理想的に行われず、転位が広がり、さらに面状欠陥が出現する場合がある事が判った。欠陥集合領域Hが重要だということはサンプルF2から良く分かる。
たとえ、プリズム型にファセット面が整列していたとして、転位が効果的に集合されず、低欠陥領域を形成することができず、本発明の効果を、十分に得ることができない。このように、ファセット面からなるプリズム型配置の底部に欠陥集合領域Hを有して成長する事は、本発明の効果を生かすためには必須の条件である。
[実施例3(マスク種類による相違)]
(マスクの種類;SiN、Pt、W、SiO
次にマスク材料の違いによる影響を調べた。面方位(111)A面を有したGaAs基板を複数枚準備した。このGaAs基板表面に、直接、
厚さ0.15μmのSi薄膜を形成したもの(J)、
厚さ0.2μmのPt薄膜を形成したもの(K)、
厚さ0.2μmのW薄膜を形成したもの(L)、
厚さ0.1μmのSiO薄膜上に厚さ0.2μmのGaNを形成したもの(M)、厚さ0.1μmのSiO薄膜上に厚さ0.2μmのAlNを形成したもの(N)を準備した。
Mについては、SiO薄膜/GaAs基板の上に、MOCVDによって、GaNを低温(600℃)で成長した。Nについては、SiO薄膜/GaAs基板上にAlNを低温(700℃)で成長した。GaN、AlNの結晶状態は、微細な多結晶状態であった。M、Nとも合計の膜厚は0.3μm程度である。
その後、Si薄膜、Pt薄膜、W薄膜、GaN/SiO薄膜、AlN/SiO薄膜をフォトリソグラフィーによって、パターン形成した。そのパターンは、実施例1で説明したストライプ型のパターンA(S=50μm、p=400μm)を使用した。いずれもパターンのストライプの方向(長手方向)が、GaAs基板の<11−2>方向になるようにした。
これらの4種類の薄膜を、X線回折により、調査した。Si薄膜は非晶質、Pt薄膜は多結晶、W薄膜は多結晶であった。SiO薄膜は通常は非晶質であるが、その上に多結晶のGaN、AlNを成長したものは、微細な多結晶であった。
以上で作製したサンプルは、下記の5種類であり、下記のようにサンプルJ〜Nと呼ぶことにする。製造プロセスは図11に示したものと同様である。
サンプルJ:直接パターンAを形成したSi薄膜付きGaAs基板
サンプルK:直接パターンAを形成したPt薄膜付きGaAs基板
サンプルL:直接パターンAを形成したW薄膜付きGaAs基板
サンプルM:直接パターンAを形成したGaN/SiO薄膜付きGaAs基板
サンプルN:直接パターンAを形成したAlN/SiO薄膜付きGaAs基板
その後、その基板上にHVPE法により、GaNの成長を行った。本実施例3におけるHVPE法は、実施例1、実施例2と同じものである。本実施例3では、実施例2と同じく、まず、最初に低温バッファ層を形成する。成長方法は、実施例2とほぼ同じである。
(バッファ層の成長条件)
成長温度 約490℃
NH分圧 0.2atm (20kPa)
HCl分圧 2×10−3atm(0.2kPa)
成長時間 20分
膜厚 60nm
バッファ層は60nm程度の厚みしかないから、パターン厚み(150nm〜300nm)より薄い。バッファ層はマスクには付かず、GaAs基板だけに形成される。
その後昇温し1030℃の高温にて、GaNエピタキシャル層を成長させた。エピタキシャル層の成長条件については、下記の通りである。
(エピ層の成長)
成長温度 1030℃
NH3分圧 0.25atm (25kPa)
HCl分圧 2.5×10−2atm(2.5kPa)
成長時間 13時間
その結果、厚さ平均約1.9mmのGaN単結晶厚膜が得られた。サンプルJ、K、L、M、Nの5種類のサンプルは、外見上は、ほとんど同様な表面形態を有していた。
これらのサンプルJ〜Nは、表面がファセット面で構成されており、正3角形に近いプリズムを横にして等ピッチで規則正しく多数並べたような形状となっていることが、顕微鏡観察によりわかった。この規則配置の位置は、全く、当初の基板上に形成したストライプのマスクの位置と一致しており、ファセット面の谷間54の底59が、ストライプマスクの位置53と合致していることが判明した(図11)。さらに、このファセット面の谷間54のピッチは、約400μmあり、ストライプマスクのピッチ(p=400μm)と等しい。400μmのピッチで山と谷を交互にしてファセット面を敷き詰めた形になっている。
このプリズムを形成するファセット面56は、主に{11−22}面であることが判った。隣り合う二つの{11−22}面が作る山の頂上には、30〜50μm程度の幅の鏡面状の(0001)面が見られた(C面成長領域Y)。
さらに、サンプルJ、L、M、Nにおいては、隣り合う二つの{11−22}面が作る谷の底59には、これらのファセット面56に対して、やや角度の浅いファセット面が存在していることが判明した。以上のように外見は実施例1のサンプルAと全く同様な形態であった。
しかし、サンプルKに関しては、V溝54の底59に、ごつごつした凹凸が見られた。単結晶的なファセット面が見られない領域がほとんどであった。
その後、この5種類の基板に、研削加工を行った。裏面のGaAs基板をそれぞれ研削加工で削り落とし、その後、表面を研削加工し、平板な基板状とした。そのあと、研磨加工を施し、平坦な表面を有した基板とした。直径が2インチ程度のGaN基板が得られた。
これらの窒化ガリウム基板は、表面を(0001)面(C面)とする基板である。基板自体は平坦で透明である。
基板表面に欠陥集合領域Hが規則正しく、幅を持ったストライプ状に、直線的に、<1−100>方向に向かって並んでおり、それらの相互の間隔は、400μmである。また、欠陥集合領域Hの幅hは、大抵、約40μm程度であった。これらは下地のストライプマスクに対応している。
しかし、サンプルKにおいては、欠陥集合領域部の形状は、所々、40μm幅から逸脱して、ふくらんだり、あるいは、縮んだりして、安定していないところも多かった。
カソードルミネッセンス(CL)で転位密度を測定した。欠陥集合領域Hの外側(低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Y)では、転位は少なく、閉じた欠陥集合領域部Hから離れるに従って、転位密度が減少しているのを確認した。場所によっては、閉じた欠陥集合領域部Hの境界から、転位は激減するところがあることも確認した。閉じた欠陥集合領域Hの外側の低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yの平均的な、転位密度はいずれも5×10cm−2以下であった。具体的には、
サンプルJ:3×10cm−2
サンプルK:4×10cm−2
サンプルL:3×10cm−2
サンプルM:1×10cm−2
サンプルN:2×10cm−2
という転位密度であった。サンプルJ、L、M、Nにおいては、欠陥集合領域Hの状況も、実施例1のサンプルAと、同様な状況である。サンプルJ、L、M、Nにおいても、ストライプマスク上に欠陥集合領域Hが存在し、欠陥集合領域Hを谷間として、幅を持った直線状のファセット面56が、欠陥集合領域Hの両側に隣接して成長することにより、転位が欠陥集合領域Hに集められていることが、判った。
また、これらサンプルは表面に幅を持った直線状の欠陥集合領域Hを蛍光顕微鏡等で観察できた。これらの欠陥集合領域Hは基板を厚さ方向に貫通して、基板の裏側にも到達していることが観察された。
透過電子顕微鏡やカソードルミネッセンス等による評価の結果、サンプルJ、L、M、Nにおいては、ファセット面56で形成された谷間59に存在する欠陥集合領域Hは単結晶であることが解った。
サンプルM、Nにおいても、マスク表面が多結晶でGaNやAlNであるにもかかわらず、単結晶状態にあることが分った。これはマスク上にて、浅い角度を有したファセット面が横方向成長をする事を示している。
また、サンプルJ、Mについて、この欠陥集合領域Hを調査した。その結果、欠陥集合領域Hはそれ自体単結晶であるがその他の部分にくらべc軸が反転していることが判明した。即ち、低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yにおいては、基板表面は(0001)面(つまりGa面)となっているが、欠陥集合領域は(000−1)面(つまり窒素面)となっている事が判明した。そのため、欠陥集合領域Hと低欠陥単結晶領域Zの界面60には、明確な粒界Kが存在し、粒界Kで、効率的に転位の消滅、蓄積がなされると考えられる。
一方、サンプルKについては、基板表面のCL像をとり観察したところ、他のサンプルと少し状況が異なることが判明した。即ち、欠陥集合領域Hが多結晶状であることが判った。CL像、およびTEMにより構造を解析すると、この閉じた欠陥集合領域Hは様々な形態があることが判った。
;多結晶であり、いくつか複数の結晶粒からなる場合。
;結晶粒は、一個であるが、その周りの単結晶領域とは異なる結晶方位を有する場合。
;周りの単結晶領域(低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Y)とは、<0001>軸のみ合致するが、異なる結晶方位を有する場合
などがあった。このように、サンプルKは様々な、多結晶の欠陥集合領域Hを有することが判った。
しかしながら、このサンプルKにおいても、幅を持ったファセット面56が欠陥集合領域Hを谷間59としてその両側に形成され、横になったプリズム状を呈し、これらの形状を維持しながら成長することによって、転位が欠陥集合領域Hに集められており、それによって転位の低減がなされている。また、サンプルKにおいても欠陥集合領域Hは、あらかじめ形成したマスクの位置と一致している。だからサンプルKも、本発明の実施様態の一つである。
サンプルKにおいて特に顕著に現れた多結晶からなる欠陥集合領域Hについては、実は、極わずかな箇所においては、他のサンプル例えばサンプルAやサンプルJ等においても認められた。それがサンプルKにおいては特に顕著であった。
このサンプルKにおいて顕著に現れる多結晶からなる欠陥集合領域Hは、成長初期に、ストライプマスク上に形成されたGaNからなるポリ結晶が、基板から成長してきたGaN単結晶より先に延びて、角度の浅いファセット面に埋め込まれる前に、既に十分に伸びていたために発生するに至ったからであると考えられる。
実施例1〜3で述べたサンプルA〜NのGaN基板について、ストライプマスク幅s、結晶欠陥集合領域Hの幅h、マスクピッチp、C面成長領域Yの幅y、GaN成長膜の膜厚Tを下記の表1に示した。単位はμmである。
[実施例4(GaN粒子を種とする);図12、13、14]
次に本発明にかかる実施例4を説明する。
使用したのは二種類のサンプルで、一つは実施例1においてパターンAを用いて作製したGaN基板であり、既に下地基板が除去されて表面加工が施され、研磨もなされており、基板上にエピタキシャル成長が実施できる準備が整ったものである。これをサンプルOとする。
もう一つのサンプルは、これも実施例1と同じプロセスで作製されたものでサファイア基板上にあらかじめMOCVDにより厚さ2μmのGaNエピ成長層を設け、その表面に0.1μmのSiO薄膜を成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン形成したものである。この場合のパターンは実施例1におけるパターンAとする。これをサンプルPとする。
これらサンプルOとサンプルPを用いて、同時にこれらの上にGaNエピタキシャル成長層を厚付けした。成長法はこれまでの実施例と同じHVPE法である。反応炉に基板をセットした後、キャリアガスはHガスとし、昇温し、1030℃の高温にてGaNエピタキシャル層を成長させた。エピタキシャル層の成長条件については下記の通り実施した。なお、サンプルO、サンプルPの基板径はともに30mm径である。
成長温度 1030℃
NH分圧 0.25atm(25kPa)
HCl分圧 2.0×10−2atm(2.0kPa)
成長時間 80時間
その結果、双方ともに厚さが10mm程度のGaN結晶インゴットが得られた(図12(2))。この二つのインゴットをそれぞれOインゴット、Pインゴットと呼ぶ。これらのインゴットは、双方ともに同様の表面形態を有して成長していた。すなわち、これらのサンプルはファセット面で構成されており、概略、正三角形に近いプリズムを横にして多数並べたような形状となっている。ほぼ等ピッチで規則正しく配列している。この規則配置の位置は、ファセット面の谷間がストライプマスクの位置と合致しているためである。このファセット面の谷間のピッチはストライプマスクのピッチと同じ約400μmで、山と谷を交互にしてファセット面を敷き詰めた形になっている。しかし、形状は実施例1と比べると乱れが多いようである。
このプリズムを形成するファセット面は、{11−22}面が中心となっている。隣り合う二つの{11−22}面が作る山の頂点には、幅を持った鏡面状の(0001)面がみられた。そして、さらに隣り合う二つの{11−22}面が作る谷の底には、実施例1に見られたようなこれらファセット面に対してやや角度の浅いファセット面は形状の乱れもあり観察が困難であった。
特に注目すべきはOインゴットである。パターンは特に設けず、既に作製したGaN基板の上にさらに成長を行っただけであるのに、成長後の表面形態はパターン形成したのと同等の表面形態になっていたことである。
さらに、これらのインゴットの端を縦に切断し断面を観察した。その結果、Oインゴットにおいて種結晶の結晶欠陥集合領域Hの上には結晶欠陥集合領域Hが引き継がれて成長し、低欠陥単結晶領域ZやC面成長領域Yの上には、成長界面で必ずしも一致しないが低欠陥単結晶領域ZまたはC面成長領域Yのどちらかが成長していることがわかった。もちろん、結晶欠陥集合領域Hの領域にはファセット面からなる斜面の谷底に位置している。
これら二種類のインゴットにスライス加工を施し、多数枚のGaN基盤を切り出した後、表面研削加工、研磨加工を施した。スライス加工にはワイヤーソーを用いた。その結果、それぞれのインゴットから9枚ずつのGaN基板が得られた。
図12(3)にその一部を図示する。
これらの基板は、成長の終りの2〜3枚は異物欠陥等が見られたが、成長初期の6〜7枚は良好であった。これらの基板は表面を(0001)面、つまりC面とする基板であり、基板自体は平坦で透明である。CL像を撮って観察してみると、基板表面に結晶欠陥集合領域Hが400μmピッチで規則正しく<1−100>方向に並んでいた。
しかし、インゴットの成長の後半部の数枚においては、サンプルを詳細に評価してみると、本来幅をもった直線状に存在している結晶欠陥集合領域Hが必ずしも直線状になっていないことが判明した。直線に途切れがみられ、または破線状に存在していた。もちろん、結晶欠陥集合領域Hは明確に境界をもち、周りの低欠陥単結晶領域Zとは明らかに区別される。さらに、詳細にCL像により解析を行った。その結果、転位は本来直線状にあるべき結晶欠陥集合領域Hの位置に直線状に集合して存在しているが、実際の結晶欠陥集合領域Hが途切れあるいは破線状に存在しているため、転位は結晶欠陥集合領域Hをはみ出して存在していることがわかった。しかし、さらに詳細なCL観察の結果、このような転位のはみ出しは、低欠陥単結晶領域Zの転位分布に特に大きな影響を与えないことが分かった。
この結晶欠陥集合領域Hの途切れや破線状化は、厚く成長させた場合やある特定の成長条件で成長させた場合によくみられる。この結晶欠陥集合領域Hの途切れや破線状化は容認してよいと思われる。しかし、結晶欠陥集合領域Hが完全に消失してしまうとファセット面からなる斜面の形状が維持できなくなり、本発明の効果を失うことになる。結晶欠陥集合領域Hの途切れおよび破線状化を図13および図14に示した。
以上のように、結晶欠陥集合領域Hの途切れや破線状化はみられるものの、結晶欠陥集合領域部の外側では転位は少なく、閉じた結晶欠陥集合領域部から離れるに従って転位密度は減少する。結晶欠陥集合領域Hの近傍30μmくらい離れた領域では3×10cm−2程度の領域が見られたが、場所によっては結晶欠陥集合領域Hの境界から転位は激減するところもあることを確認した。転位密度の低いところでは、1×10cm−2以下の領域もある。結晶欠陥集合領域部の外側の平均的な転位密度は何れも5×10cm−2以下であり、実用的なGaN基板として使用に耐えうるものであった。
この方法は、結晶成長の生産性向上につながる有効な製造方法であると考えられる。
本発明の方法によって、転位の集合した欠陥集合領域Hの位置を正確に制御し、低転位の窒化ガリウム基板を作製することができる。また本発明のGaN基板は、転位を規則正しく特定の狭い部分に集合させてあり、デバイスの重要部分に使用する部分(低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Y)では低転位で単結晶である。InGaN青紫レーザダイオード(LD)などの低転位GaN基板として最適のものを与える。
本発明者が特許文献4において提案した表面にファセット面からなるピットを形成し維持しながらGaNを結晶成長させるファセット成長法においてファセットは平均的な成長方向とは別にピットの内向きに成長するので転位がファセット稜線に掃き寄せられるということを説明するための斜視図。(a)はファセット面が内向きに成長し転位が稜線に集まりピット底へ溜まることを示す斜視図。(b)はピット底に溜まった転位の間に強い斥力が生ずるから六方へ放射状に広がった面状欠陥が形成されることを説明する斜視図。 本発明者が特許文献4において提案した表面にファセット面からなるピットを形成し維持しながらGaNを結晶成長させるファセット成長法においてファセットは平均的な成長方向とは別にピットの内向きに成長するので成長とともに転位がファセット稜線に掃き寄せられ、さらにピット底の多重点に集中するということを説明するためのピットの平面図。 本発明者が特許文献4において提案した表面にファセット面からなるピットを形成し維持しながらGaNを結晶成長させるファセット成長法においてファセットは平均的な成長方向とは別にピットの内向きに成長するので成長とともに転位がファセット稜線に掃き寄せられ、さらにピット底の多重点に集中し底に続く転位の集合束を縦長に形成するということを説明するためのピットの断面図。(1)は成長とともにピット底へ転位が集中して縦方向に伸びる転位束を形成することを説明する断面図。(2)は成長とともにピット底へ転位が集中して縦方向に伸びる転位束を形成するのであるが被覆するものがなく転位集合開放系であり転位相互には強い斥力が働くので一旦集合した転位がばらけてきて周りに広がりモヤモヤ状の転位の拡散が起こることを説明する断面図。 表面にファセット面からなるV溝(谷)を形成し維持しながらGaNを結晶成長させ、ファセットは平均的な成長方向とは別にV溝(谷)の内向きに成長し、成長とともに転位がファセット稜線に掃き寄せられさらにV溝(谷)底の多重点に集中し底に続く閉じた転位の集合束である欠陥集合領域Hを縦長に形成し、境界Kによって囲まれた内部Sを有する欠陥集合領域Hの閉じた空間に転位を集結させるので転位が再びばらけることがないという本発明のGaN成長方法の概略を説明するためのV溝(谷)の断面図。(1)は成長とともにV溝(谷)底へ転位が集中して縦方向に伸びる閉じた欠陥集合領域Hに転位束を集結させることを説明する断面図。(2)は成長とともにV溝(谷)底が上昇するが常に底へ欠陥集合領域Hが付随して転位を吸収してゆくことを説明する断面図。 基板上に直線状に伸びるマスクを設け、その上にファセットを維持しながらGaNを成長させることによってマスク上に欠陥集合領域Hとファセット面よりなるV溝を位置させ、それに隣接する基板露呈部の上には低欠陥単結晶領域Zとファセット面を位置させて成長させる本発明のGaN結晶成長値方法を説明するための断面図。図5(a)は欠陥集合領域Hの上にあたるファセット面谷底まで上部からのファセット面が連続し浅い傾斜のファセット面が形成されない場合を図示している。図5(b)は欠陥集合領域Hの上にあたるファセット面谷底まで上部からのファセット面に連続して浅い傾斜のファセット面が形成される場合を示している。ファセット面の境界と欠陥集合領域Hの境界Kが合致することを示す。 基板上に直線状に伸びるマスクを設け、その上にファセットを維持しながらGaNを成長させることによってマスク上に欠陥集合領域Hとファセット面よりなるV溝を位置させ、それに隣接する基板露呈部の上には低欠陥単結晶領域Zとファセット面を位置させて成長させる本発明のマスクを用いるGaN結晶成長方法を説明するための平面図。図6(a)は下地基板に平行等間隔の直線状で幅をもつストライプマスクを形成した状態の平面図。図6(b)は下地基板に平行等間隔の直線状で幅をもつストライプマスクを形成した上にGaNをエピタキシャル成長させることによってできた欠陥集合領域Hと、低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Yが順に現れるZHZYZHZYZ…構造を有する本発明のGaN厚膜の平面図。 下地基板に平行等間隔の直線状で幅をもつストライプマスクを形成した上にGaNをエピタキシャル成長させることによってできたファセットよりなる山谷構造(プリズム構造)と、ファセットの下に続く低欠陥単結晶領域Zと、谷底に続く欠陥集合領域Hと、欠陥集合領域Hと、低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Yが順に現れるZHZYZHZYZ…の周期構造を形成するようにした、本発明にかかるGaN単結晶製造方法を示す斜視図。 下地基板に平行等間隔の直線状で幅をもつストライプマスクを形成した上にGaNをエピタキシャル成長させることによってできた欠陥集合領域Hと、低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Yが順に現れるZHZYZHZYZ…構造を有する本発明にかかるGaN基板の斜視図。 下地基板に平行等間隔の直線状で幅をもつストライプマスクを形成した上にGaNをエピタキシャル成長させることによってできた欠陥集合領域Hと、低欠陥単結晶領域ZとC面成長領域Yが順に現れるZHZYZHZYZ…構造を有する本発明に係るGaN厚膜の平面図。図9(a)はGaN結晶の<1−100>方向に平行な長手方向のストライプマスクを設けてエピタキシャル成長して得られたGaN厚膜の表面に現れる<1−100>方向に平行なZHZYZHZYZ…構造を示す。図9(b)はGaN結晶の<11−20>方向に平行な長手方向のストライプマスクを設けてエピタキシャル成長して得られたGaN厚膜の表面に現れる<11−20>方向に平行なZHZYZHZYZ…構造を示す。 サファイヤ基板上に薄いGaNエピタキシャル層を成長させ、その上に直線状に伸びるストライプマスクを設けその上にファセットを維持しながらGaNを成長させることによってマスク上に欠陥集合領域Hとファセット面よりなるV溝を位置させ、それに隣接する基板露呈部の上には低欠陥単結晶領域Zとファセット面を位置させ、研削研磨して平坦なGaN基板を製造する実施例1のGaN結晶基板製造方法を説明するための断面図。図10(1)はサファイヤ基板、図10(2)はサファイヤ基板の上に薄いGaNエピ層を成長したもの、図10(3)はその上にストライプマスクを形成したものである。図10(4)はファセット面を維持しながらGaNを成長させた状態の断面図、図10(5)は下地基板を除去し表面のプリズム状凹凸を除去し表裏面を平滑に研磨したGaN基板の断面図である。 下地基板上に直接に直線状に伸びるストライプマスクを設けその上にファセットを維持しながらGaNを成長させることによってマスク上に欠陥集合領域Hとファセット面よりなるV溝を位置させ、それに隣接する基板露呈部の上には低欠陥単結晶領域Zとファセット面を位置させ、研削研磨して平坦なGaN基板を製造する実施例2、3のGaN結晶基板製造方法を説明するための断面図。図11(1)は下地基板にストライプマスクを設けたもの、図11(2)はストライプマスク/下地基板の上にファセット面を維持しながら厚いGaNエピ層を成長したもの、図11(3)は下地基板を除去し表面のプリズム状凹凸を除去し表裏面を平滑に研磨したGaN基板の断面図である。 実施例1により作製したGaN基板を種結晶として、その上にファセットを維持しながらGaNを成長させることによってマスク上に欠陥集合領域Hとファセット面よりなるV溝を位置させ、それに隣接する基板露呈部の上には低欠陥単結晶領域Zとファセット面を位置させ、研削研磨して平坦なGaN基板を製造する実施例4のGaN結晶基板製造方法を説明するための断面図。図12(1)は既に低転位成長したGaN基板を種結晶として用いたもの、図12(2)は種結晶の上にファセット面を維持しながら厚いGaNエピ層を成長させたもの、図12(3)は下地基板を除去し表面のプリズム状凹凸を除去し表裏面を平滑に研磨したGaN基板の断面図である。 実施例4の成長方法にて成長したGaNインゴットをスライス加工しCL像観察を行ったところ、成長後半部にあたるGaN基板の結晶欠陥集合領域Hに途切れ状態、もしくは破線状が見られることを示す平面図。 実施例4の成長方法にて成長したGaNインゴットをスライス加工しCL像観察を行ったところ、成長後半部にあたるGaN基板の結晶欠陥集合領域Hに途切れ状態、もしくは破線状が見られることを示す縦断面図。
符号の説明
H 欠陥集合領域
Z 低欠陥単結晶領域
Y C面成長領域
K 欠陥集合領域の境界
S 欠陥集合領域の内部
h 欠陥集合領域の幅
z 低欠陥単結晶領域の幅
y C面成長領域の幅
s マスク幅
t 露呈部幅
p マスクピッチ
2 GaN結晶
4 ピット
6 ファセット
7 平坦面
8 稜線
9 内向き成長方向
10 面状欠陥
11 線状転位集合欠陥部
12 GaN結晶
14 ピット
15 転位集合束
16 ファセット
17 平坦面
21 下地基板
22 GaN結晶
23 ストライプマスク
24 V溝(谷)
25 欠陥集合領域(H)
26 ファセット
27 平坦面
28 C面成長領域(Y)
29 V溝(谷)底
30 欠陥集合領域の境界(K)
41 サファイヤ基板
42 GaNエピ層
43 ストライプマスク
44 V溝(谷)
45 欠陥集合領域(H)
46 ファセット
47 平坦面
48 GaN露呈部分
49 V溝(谷)底
50 境界(K)
51 下地基板
53 ストライプマスク
54 V溝(谷)
55 欠陥集合領域(H)
56 ファセット
57 平坦面
59 V溝(谷)底
60 境界(K)

Claims (11)

  1. 表面と裏面と厚みを有し、直線状に伸び表裏面に貫通し幅を持ち幅方向の両側に境界線K、Kを有し内部に転位を集合させた結晶欠陥集合領域Hと、直線状に伸び表裏面に貫通し境界線Kを介して結晶欠陥集合領域Hに接し幅を持ち結晶欠陥集合領域Hよりも転位密度の低い低欠陥単結晶領域Zと、低欠陥単結晶領域Zのほぼ中央にあって直線状に伸び表裏面に貫通し幅を持ち結晶欠陥集合領域Hよりも転位密度が低く低欠陥単結晶領域Zより比抵抗が高いC面成長領域Yとがあり、HZYZの構造を持ち、C面成長領域Yは幅が一定でなくバラツキを有し、厚み方向及び面に平行な方向にゆらいでいることを特徴とする単結晶窒化ガリウム基板。
  2. 結晶欠陥集合領域Hが、多結晶或いは低欠陥単結晶領域Zと異なる方位の単結晶、或いは低欠陥単結晶領域Zとはc軸が反転している単結晶であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶窒化ガリウム基板。
  3. 下地基板の上に直線状に伸び幅が10μm〜250μmのマスクをピッチが20μm〜2000μmになるよう複数本平行に設け、マスク端から立ち上がるファセットを形成し、ファセットを最後まで維持しながら窒化ガリウム結晶を気相成長させ、マスクの上には欠陥を集結させた結晶欠陥集合領域Hを成長させ、マスクで覆われない部分においてはファセットに続き結晶欠陥集合領域Hより低転位密度の低欠陥単結晶領域Zと、C面に続くC面成長領域Yを成長させ、直線状に伸び幅をもつ低欠陥単結晶領域Zと、直線状に伸び幅を持ち幅方向の両側に境界線K、Kを有し境界線Kを介して低欠陥単結晶領域Zに接する結晶欠陥集合領域Hと、低欠陥単結晶領域Zのほぼ中央に幅を持つC面成長領域Yとを成長させ、C面成長領域Yの幅が厚み方向及び面に平行な方向にバラツキを有し、ゆらぎながら成長させることを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法。
  4. 表面上の一方向と厚み方向に直線状に伸び幅を持つ平面状の低欠陥単結晶領域Zのほぼ中央に、表面上の同一方向と厚み方向に直線状に伸び表裏に貫通し幅を持つ低欠陥で単結晶であるがZより比抵抗の高いC面成長領域Yが存在し、基板表面にほぼ垂直に低欠陥単結晶領域Zに挟まれて基板内部から表裏面にわたって存在し、低欠陥で単結晶である3つの領域ZYZが一組になって結晶欠陥集合領域H、Hによって挟まれておりHZYZHの構造を持ちC面成長領域Yの幅が厚み方向及び面に平行な方向に揺らいでいる事を特徴とする請求項1に記載の単結晶窒化ガリウム基板。
  5. 表面上の一方向と厚み方向に直線状に伸び幅を持つ平面状の低欠陥単結晶領域Zのほぼ中央に、表面上の同一方向と厚み方向に直線状に伸び表裏に貫通し幅を持つ低欠陥で単結晶であるがZより比抵抗の高いC面成長領域Yが存在し、基板表面にほぼ垂直に低欠陥単結晶領域Zに挟まれて基板内部から表裏面にわたって存在し、低欠陥で単結晶である3つの領域ZYZが一組になって結晶欠陥集合領域H、Hによって挟まれた構造HZYZHZYZ…が基板全体において規則正しく複数回繰り返して存在しC面成長領域Yの幅が厚み方向及び面に平行な方向に揺らいでいる事を特徴とする請求項2に記載の単結晶窒化ガリウム基板。
  6. 表面と裏面を有し、欠陥を多数蓄積し幅をもち表裏に貫通し直線状の結晶欠陥集合領域Hが、表面の一方向に規則正しく、等間隔pで並び、結晶欠陥集合領域H、Hの間に、低欠陥で単結晶である低欠陥単結晶領域Z、或いは低欠陥で単結晶である低欠陥単結晶領域Zと低欠陥単結晶で低欠陥単結晶領域Zよりも高い比抵抗のC面成長領域Yの三重層ZYZが挟まれており、表裏に伸びるHZHZ…或いは表裏に伸びるHZYZHZYH…構造が等間隔pで幅方向に繰り返しC面成長領域Yの幅が厚み方向及び面に平行な方向に揺らいでいる事を特徴とする請求項に記載の単結晶窒化ガリウム基板。
  7. 幅を持ち表裏面に貫通する直線状の結晶欠陥集合領域Hが幅方向に等間隔で並ぶピッチpが20μmから2000μmであることを特徴とする請求項に記載の単結晶窒化ガリウム基板。
  8. 幅を持ち表裏面に貫通する直線状の結晶欠陥集合領域Hの幅が1μm〜200μmであることを特徴とする請求項に記載の単結晶窒化ガリウム基板。
  9. 基板の上に、幅が10μm〜250μmの直線状のマスクをピッチが20μm〜2000μmになるよう平行に複数本形成し、GaN結晶を気相成長させ、マスク端から立ち上がりマスクに覆われない露呈部にかけて傾斜する平行なファセットを形成し、傾斜方向の異なる隣接するファセットとファセットの間には平坦なC面を形成し、マスクの上にはマスクの両側から続くファセットの谷を形成し、ファセットとC面を維持しながらGaN結晶を成長させ、マスクの上で谷の下に多数の転位を含む結晶欠陥集合領域Hを形成し、マスクに覆われない基板の上でファセットの下に結晶欠陥集合領域Hより転位密度の低い低欠陥単結晶領域Zを形成し、マスクに覆われない基板の上でC面の下に結晶欠陥集合領域Hより転位密度の低い低欠陥単結晶領域Zより比抵抗の高いC面成長領域Yを形成し、基板面と平行な方向に幅を持ち基板面に平行に伸びる直線状の結晶欠陥集合領域Hと、幅を持ち基板面と結晶欠陥集合領域Hに平行に直線状に伸びる低転位で単結晶の低欠陥単結晶領域Zと、幅を持ち基板面と結晶欠陥集合領域Hに平行で直線状に伸びるC面成長領域Yと、幅を持ち基板面と結晶欠陥集合領域Hに平行に直線状に伸びる低転位で単結晶の低欠陥単結晶領域Zとが基板面に平行でマスクと垂直の方向に隣接してなるHZYZの繰り返し構造を形成し、結晶成長の終わりまでファセットを維持し、近接する低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域Yに存在した転位を結晶成長の進行とともにファセット底の結晶欠陥集合領域Hへ引きつけ、結晶欠陥集合領域Hの境界面Kまたは内部Sを転位の消滅場所或いは蓄積場所として窒化ガリウム結晶を成長させることによって隣接する低欠陥単結晶領域Zの転位を低減させるようにし、C面成長領域Yは厚み方向、マスク平行方向にその幅が変化することを特徴とする単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法。
  10. 基板の上に、基板表面に平行に直線状に伸びる幅を持った複数の結晶欠陥集合領域Hと、その間にあって基板面と平行に伸びる低欠陥単結晶領域Zと、低欠陥単結晶領域Zのほぼ中間にあって基板表面に平行に直線状に伸び幅を持ったC面成長領域YとからなるHZYZH構造を等間隔pで幅方向に繰り返し設けC面成長領域Yは厚み方向、マスク平行方向にその幅が変化することを特徴とする請求項に記載の単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法。
  11. 基板の上に、結晶欠陥集合領域Hと低欠陥単結晶領域Z、C面成長領域YがZYZHZYZH…構造をなすように等間隔pで並ぶピッチpが20μm〜2000μmである事を特徴とする請求項10に記載の単結晶窒化ガリウムの結晶成長方法。
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