JP2004182551A - 単結晶窒化ガリウム基板、単結晶窒化ガリウム基板の製造方法および窒化ガリウム成長用下地基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】外周部Rも中央部Qも同じように開口部と被覆部が規則的に繰り返す周期性大パターンとラテラルオーバーグロース用小パターンを有する複合マスクを下地基板結晶の表面の外周部Rと中央部Qに形成し、複合マスクの上からGaNを下地基板の上にファセットを維持しながら気相成長させ、不規則に分布する欠陥集合領域Hとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Uと規則的に配列する欠陥集合領域Hとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Uを発生させ、規則配列する領域の面積Gと不規則分布する領域の面積Fの合計(G+F)によって不規則分布領域の面積Fを割ったランダム面積比Mが中央部Qで10%以下、外周部Rで10%以上とし、外周部Rによって中央部Qを補強しクラックの発生を抑制する。
【選択図】 図15
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は単結晶窒化ガリウム(GaN)、単結晶窒化ガリウムの製造方法、窒化ガリウム成長のためのマスク付き下地基板に関する。
InGaN系の発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)は青色発光素子として有用であり実績もある。それらはGaNのバンドギャップの広いことを利用して青色を発生させている。InGaN−LEDはすでに広く使用されており、InGaN−LDは近い将来市販されることになろう。InGaNという表記は活性層の組成を表現している。InGaN−LDというのは三元混晶であるInGaNを活性層として発光するLDということである。接頭語は基板を表記しているのではない。同じものを時にGaN−LDと表記する場合もある。基本になる結晶はGaNであり混晶InGaN、AlGaNなどを薄膜を積層するから、そのように表現する。
【0002】
今もなお良好なn型GaN基板を製造することができないので、実用的なInGaN発光素子は全てサファイヤ基板の上に、n型、p型のGaN、InGaN、AlGaNなどの薄膜をヘテロエピタキシャル成長したものである。
【0003】
InGaN/サファイヤのLDは基板がサファイヤであり劈開がないから機械的にチップを切り出して、共振器面は研磨して精度良く平坦平行面に仕上げる必要がある。それはレーザ製造歩留まりを著しく低下させる。それがInGaN/サファイヤ−LDのコストを押し上げることになるであろう。
【0004】
InGaN−LDはやはりn型GaN基板の上に作製するべきだと考える。n型GaN単結晶基板の製造は大層難しい。本出願人はこれまで最大の努力を傾注してGaN単結晶基板の製造技術を開発してきた。
【0005】
もしもGaN単結晶基板(GaNウエハ)が製造できれば、その上にGaN、InGaN、AlGaNなどの薄膜を成長させた場合、熱歪みが起こらないし、自然劈開によってチップ分離できるし、レーザの共振器面を自然劈開によって作製することができる。
【0006】
ところが現在のところ劈開性に優れ、しかもクラックの発生しないようなGaN基板の製造方法は存在しない。欠陥が少ないGaN単結晶を製造することは極めて難しい。劈開性があり、しかも堅牢であるGaN単結晶基板を作ることはさらに難しい。劈開性と堅牢さは矛盾する性質で、両立させることは困難である。
【0007】
本発明は、レーザの共振器製造に適する劈開性に優れ、かつ製造時にクラックなどが入らず歩留まりの良い窒化ガリウム単結晶基板を製造する方法に関する。
【0008】
【従来の技術】
本出願人は単結晶窒化ガリウム(GaN)基板を製造するための数多くの発明をしている。本発明はそれらの手法を利用しているので、その幾つかを説明する。ここで述べるのはエピタキシャルラテラルオーバーグロース法(ELO)と、ファセット成長法、および閉鎖欠陥集合を利用する低転位化への工夫である。
【0009】
(1) 特願2000−519462
GaAs基板上に離隔配置された複数の開口窓を有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、前記マスク層上にGaNからなるエピタキシャル層を成長させるエピタキシャル層成長工程とを備える事を特徴とする単結晶窒化ガリウム基板の製造方法である。
【0010】
この時マスク層の開口部でGaN核が形成され、このGaN核が次第にマスク層上の横方向に向かって、ラテラル成長する。GaN核がラテラル成長するときにGaN核内の欠陥は広がらないため、結晶欠陥が大幅に低減された単結晶窒化ガリウム基板を形成することができる。これはエピタキシャルラテラルオーバーグロース(Epitaxial Lateral Overgrowth)法と呼ばれており、GaN製造ではよく知られている。
【0011】
サファイヤ基板の上に成長させるELOについては他にもたくさんの文献が知られている。いずれもサファイヤ基板の上にELO法を適用するものである。サファイヤ基板の場合は基板を付けたままInGaN発光素子を作製する。GaN系薄膜を成長した試料からサファイヤ基板を除去することはできない。サファイヤ基板が付いたままのデバイスとなる。だから硬いサファイヤをダイシングするという困難な作業が必要になる。
【0012】
本出願人はGaAsの(111)結晶を基板に用いる。GaAs基板を用いるとGaNを厚膜成長させGaAs下地基板を除去してGaNの自立単結晶膜を生成する可能性がある。だからGaAsを下地基板とするということはGaAs付きのInGaN発光素子を作るというのではなくてGaN自身の単結晶基板を作るということが目的になる。その単結晶基板がInGaN系発光素子製造の出発基板となりサファイヤ基板を置き換えようとするものである。
【0013】
マスクは例えば1〜2μm直径の正六角形、円、正方形、帯状などの形状の窓を1〜2μm間隔で6回対称の位置に置いたものである。マスクはGaNの成長を抑制する作用があるので、GaNは個々の窓内で独立に核発生する。窓面をC面とするような核が発生する。窓を満たしたGaN薄膜はさらにc軸方向に成長し窓と同じ高さまでのびる。転位は成長とともに縦方向に延びる。窓を越えるとマスクの上を這うように成長するから、成長が横方向(a軸、b軸、d軸方向)になる。転位は成長方向と一緒であるから転位の延長方向も横方向になる。これがラテラルオーバーグロースということである。隣接窓から延長したGaNが窓の丁度二等分線のところで衝突する。そのときに転位が180度で正面衝突するから転位がここで打ち消し合って大幅に減少する。その後は成長方向が再び上向き(c軸方向)になる。上向き成長とともに転位も上向きに成長する。
【0014】
図1によってラテラルオーバーグロースを順序だてて説明をする。図1(1)は基板2の表面断面図である。基板2はGaAs、サファイヤなどの単結晶の基板である。図1(2)のように基板2の上にSiN、SiO2、AlNなどの薄いマスク3を形成している。マスク上にはGaNが成長しにくい。つまり成長抑止作用がある。マスク3には規則正しく多数の開口部4(窓)が穿たれる。開口部4から基板表面が露呈している。GaNをHVPE法、MOCVD法、MOC法、昇華法などで薄膜形成する。
【0015】
図1(3)に示すように開口部4の基板2上だけにGaN結晶核5が孤立して形成される。さらに成長が進むと、図1(4)のように窓4の内部で島状の結晶核が合体して薄い膜状結晶6になってくる。マスクの厚みは80nm〜100nm程度の薄いものである。薄膜結晶6の表面はC面でありc軸方向に成長している。やがてGaNの結晶6はマスク3の厚みと同じ厚さになる。さらにGaNの成長が進行するが、マスクの上にはなかなか成長せず、開口部4の上の結晶の上にどんどんと積み重なってゆく。するとGaN結晶7は錘状に成長する。錘状GaN結晶7の表面はある低面指数の結晶方位面である。それをファセット面と呼ぶ。ファセットというのは本来カットした宝石の結晶面を意味する広義の言葉であるが、ここではより狭い意味で用いる。
【0016】
ファセットというのはC面成長の場合に、C面以外の結晶面が表面に現れた場合にそれを指して言う言葉である。結晶面というのはミラー指数(整数)によって表現される面でありランダムな平面ではない。C面成長している場合C面自身も結晶面の一つであるがC面だけを除外し表面に実際に出現した結晶面をファセットと言うのである。それは{−1101}面、{2−1−12}面などである。通常、結晶成長というのは結晶方向に垂直平面の表面(鏡面)をもって成長させるものである。C面を維持しながら成長させる場合それをC面成長と呼ぶ。c軸方向に成長させるが表面にC面以外のファセットを保有しながら成長させるとき、それをファセット成長と呼び、C面(鏡面)成長と区別する。
【0017】
成長結晶はその面に平行な方向に層状に積み重なって成長する。結晶中に縦線で示しているのは転位Dである。GaN結晶は膨大な数の転位を含み縦方向に延びてゆく。図1(5)での成長はC面成長でなくてファセット面成長である。マスクの開口部いっぱいになるとそれ以上に高くなれないので、GaN結晶はマスクの上へ横方向へのびてゆく。
【0018】
図1(6)ではそのような途中の状態を示している。横方向へ延びた結晶のファセット面8の先端はマスクの上を進む。やがて隣接窓から延びて来たものと接触する。ぞれが図1(6)の状態である。これもファセット面8の上に成長しているのでファセット成長である。しかし短い間のファセット成長であり基本的にはC面成長である。結晶の頂面9は平坦面となる。隣接結晶の間はV溝となる。転位は折れ曲がり、この方向に延びる。隣接窓の間にできるV溝がだんだんにうずまってゆく。図1(7)のように両方から延びた結晶が衝合面20で衝突する。衝合面20で転位がぶつかるので消滅するものもあり転位密度が一時的に減少する。それがラテラルオーバーグロース法(ELO)の利点である。
【0019】
その後は上方へ向けて成長する。転位Dは上向きにのびてゆく。上面23は平坦なC面である。だからそれはC面成長である。つまりELO法は殆どはC面成長を採用する。それを図1(8)に示す。その後、厚い結晶を成長させて、基板2とマスク3を除去するとGaN単結晶の自立膜となる。それはGaNの単結晶基板である。図1に示したようなGaNのラテラルオーバグロース法(ELO)はよく知られている。
【0020】
それだけでは充分に転位密度が減少しない。InGaN−LEDやInGaN−レーザなどの基板とすることはなお難しい。自立GaN膜基板は高価なこともあって、実績あるサファイヤ基板に取って代わることはできない。さらに低転位化が望まれる。
【0021】
(2) 特願2001−284323(ファセット成長法)
結晶成長時の成長表面において、ファセット面からなるピットを形成し、常にピットの底に欠陥の集合である閉鎖欠陥集合領域Hを保持して結晶成長させ、閉鎖欠陥集合領域に転位を捕獲させることによって、その周囲の低転位単結晶部U(単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Y)の転位を低減させるというものである。
【0022】
それは非常に精妙な成長方法である。閉鎖欠陥集合領域Hというものを結晶中に無理に作って、そこへ欠陥を集中させるものである。閉鎖というのは欠陥集合領域Hが閉じられているということで欠陥が再拡散しないという意味で使っている。欠陥集合領域Hの生成のためその他の部位は欠陥が少なくなっており、レーザの基板として好適なGaN基板となりうる、というわけである。それはラテラルオーバグロースが終了した後の話しである。
【0023】
ラテラルオーバーグロース(ELO)のあと、GaNは縦方向(c軸方向)に成長するのであるが平滑平坦なC面を保持して成長するのではなく成長面が斜めのファセット面とするのである。ファセット面は斜め方向を向いたまま上向き(c軸方向)に成長するので欠陥を掃引して中央部へ押しやり中央部へ欠陥を高密度に集合させる。それが閉鎖欠陥集合領域Hなのである。閉鎖欠陥集合領域Hは欠陥が高密度に集合しており、しかも閉じられた結晶部位なので閉鎖欠陥集合領域Hと呼ぶのである。
【0024】
図2、図3によってそのような低転位密度への工夫を説明する。図2は結晶表面の一部の平面図であり、図3はその3−3断面図である。6角形をしているのは6角錘状のピットP(凹部)である。それはファセット面F1、F2、…、F6などよりなる凹部であり、中心に閉鎖欠陥集合領域Hがある。基板2の上に種(遮蔽層)Eを形成しておいて、その上にGaNをファセット成長させると、種Eに続いて欠陥が高密度に凝縮した閉鎖欠陥集合領域Hが成長する。その周囲のファセット面Fに続いて成長する部分は抵抗率が低く転位が少ない良質の単結晶である。それは閉鎖欠陥集合領域Hに隣接しそれに付随して生ずる。それでその良質の単結晶領域のことを本発明者は単結晶低転位随伴領域Zと名付けた。それは閉鎖欠陥集合領域に随伴して出現し低転位であって単結晶だから、そのように言うのである。それはファセット成長した部分であって、C面成長でない。
【0025】
隣接ピットP、Pの間には平坦面の部分が存在する。その平坦面の部分はもとの基板面に平行なC面を表面としてもつ。それも単結晶であって低転位である。しかしそれはファセット面の下にファセット成長したのではなくて、C面成長したのである。電気抵抗は高くてファセット面成長した単結晶低転位随伴領域Zとは区別される。単結晶低転位随伴領域Zは閉鎖欠陥集合領域Hに伴って生じるが、C面成長する部分は単結晶低転位随伴領域Zの外側に、その余りの領域として発生するので単結晶低転位余領域Yと呼ぶことにする。単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Yを合わせて低欠陥単結晶領域Uと呼び、いずれも欠陥集合領域Hを中心として単結晶で低転位化した部分である(U=Z+Y)。以後、閉鎖欠陥集合領域Hを欠陥集合領域Hと簡単に呼ぶこともある。
【0026】
ラテラルオーバーグロース法(ELO)の説明でも述べたがGaNには多大の転位密度が発生する。ラテラルオーバーグロースで少し減る(1010cm−3〜108cm−3)がまだまだ多すぎる。転位は成長とともに上方向に延びる。ファセット成長を維持するとF1、F2の面で転位は左右に振り分けられて境界線に集まる。さらにファセット成長をすると境界線に集まった転位は中心に集まる。中心に転位が集まるので、それが閉鎖欠陥集合領域Hとなるのである。上向きのロート型の形をしたピットがそのように転位を中心に集めてしまう作用があるのである。
【0027】
転位は簡単には消滅しない。が、中心に凝集するのでその他の部分の転位密度は減少するわけである。中心の閉鎖欠陥集合領域Hには単結晶、反転結晶とか粒界とかが高密度で存在する。それは転位の塊である。その外側から転位が除去されてすぐ隣りのファセット面Fの下の単結晶低転位随伴領域Zは低転位になるのである。単結晶低転位随伴領域Zが低転位になると、その隣りの単結晶低転位余領域の転位がしだいに引き寄せられてピットPに入る。ピットPの中でファセット面に掃き寄せられて、境界線から中止線へと転位が凝集してゆくのである。だから残りの単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yでの転位密度は106cm−3〜105cm−3に減る。
【0028】
孤立した閉鎖欠陥集合領域Hの周りには同心状にHZYの構造ができる。種Eを基板上に予め作っておけば、種Eと同一の箇所に閉鎖欠陥集合領域Hができる。図2のように規則正しくHZYを構造を作るには最初に基板2の上に規則正しく種Eを形成しておけば良いのである。そのように規則正しく種Eを配置して同じパターンの閉鎖欠陥集合領域Hの集合を作製したものがドット型である。
【0029】
閉鎖欠陥集合領域Hを作るために始めからGaAs基板の上にSiO2、SiN、Pt、Moなどの異種材料の種を載せるということもする。異種材料の上にはGaNが成長しにくいから成長が遅れ、それがファセットピットの位置になる。つまり異種材料の種からファセットピットが発生する。ファセットピットは先述のように転位を掃引して中へ中へと転位を引き込み、中心に先述の閉鎖欠陥集合領域Hを形成する。だから始めにGaAs基板に配置した異種材料種の位置によって閉鎖欠陥集合領域Hの位置を指定することができる。
【0030】
だから始めの孤立した種(円、正方形)の配置をランダムにしておけば閉鎖欠陥集合領域Hは結晶中ランダムな配置をして分布する。これをランダム型と呼ぶ。
【0031】
始めの孤立した種の分布を基板上縦横に規則正しく配置しておけば、その上に成長したGaNは同じ規則性をもつ閉鎖欠陥集合領域Hを有するにいたる。そのように閉鎖欠陥集合領域Hが規則正しく孤立して存在するものをドット型と呼ぶことにする。ドットというのは閉鎖欠陥集合領域の平面形状が孤立した点(円とか正方形、正六角形)であるからドットと呼ぶ。それ自体に規則正しく配列したという語感はないのであるが、ここでは規則正しく配列したものをドット型と呼ぶ。
【0032】
図4はドット型マスクのGaNを製作するための基板2上の種Eの配置を示す。そのように縦横に規則正しく種Eを形成しファセット成長させれば種Eの上に規則正しく閉鎖欠陥集合領域Hを中心とする同心のHZY構造が発生する。マスクは被覆部と開口部からなるが、この例では被覆部は種Eであり、開口部は種Eのない部分である。下地基板上の種EとGaN結晶中の欠陥集合領域Hは合致するので図4のドット状のEは閉鎖欠陥集合領域Hの分布とみなすこともできる。
【0033】
図5は寸法が異なる種Eをランダムに配置したマスクを示す。ランダムマスクによってランダムに分布する欠陥集合領域HをもつGaN結晶を作ることができる。その場合でも欠陥集合領域Hを中心として同心のHZY構造が形成される。だから図5はランダムマスクの平面図であるが、ランダムマスクを使って成長したGaN結晶の欠陥集合領域Hの分布を示す平面図とも言える。マスクの被覆部(種E)と欠陥集合領域Hの寸法はほぼ同じであり位置は種Eによって決まるので、そのような対応がある。
【0034】
しかしランダムな欠陥集合領域Hの分布は、種が全くなくて細かい窓からなるELOマスクだけでも生成することができる。ELOマスクをしたGaAs基板の上にファセット成長条件を保持してGaNを成長させると、図5のようなランダム分布する欠陥集合領域Hを有するGaN結晶ができる。その場合もELOマスクだけではだめでファセット成長条件が必須である。
【0035】
GaN結晶は透明である。閉鎖欠陥集合領域H、単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zはそのままでは区別できない。CL(カソードルミネセンス)によって初めて見える区別である。
【0036】
種Eをマスクとして作製するというだけなら話は簡単であるが、実際にはラテラルオーバーグロースと併用するということになる。するとマスクが2種類存在するということになり複雑になる。ラテラルオーバーグロースのマスクは穴が小さく周期も小さいが、ファセット成長の種のマスクは大きくて間隔も広い。ELOマスクは1〜2μm程度の窓、間隔が並ぶ。欠陥集合領域H生成のためのマスクは数十μm〜数百μmの周期で被覆部、開口部が並ぶ。だから寸法の上で数十〜数百倍の相違がある。
【0037】
ファセット成長の種となるマスクは被覆部と開口部とよりなる。その開口部にELOのマスクが設けられるということになる。
ファセット成長用マスクを大マスクと呼び、ELOマスクを小マスクと呼んで区別しよう。大マスクの開口部に小マスクが相補的に設けられるという訳である。
【0038】
図11はそのような2重構造のマスク22の例を示す。ドット型マスク22は2重の周期性をもつ。数多くの小さい正六角形窓が図1に現れる窓(ELO用開口部)4である。それはごく狭い窓4で1μm〜2μmの直径、1μm〜2μmといった狭い被覆部3とよりなる。小さいピッチで6回対称の位置に設けられたラテラルオーバーグロースのための窓4と被覆部3である。
【0039】
それに対して大きい被覆部27(E)が大きい周期をもって規則的に存在する。その被覆部27が閉鎖欠陥集合領域Hの種Eである。被覆部27(種E)は直径が10μm〜50μmと大きくて周期も100μm〜400μmというように広い。大きいパターンの開口部は被覆部27以外の広い領域を意味する。大パターンの開口部はELOパターンによって覆われており最早開口部とは言えないが大パターンという立場から見れば開口部である。大パターンの開口部、被覆部は、基板の上に形成するLD、LEDなど発光デバイスの大きさに合わせて形成するものである。だから目的のデバイスによってその大きさやピッチ(周期)を適宜変更すればよい。
【0040】
図11では小パターンであるラテラルオーバーグロース用のマスクと、閉鎖欠陥集合領域Hの種(E)を区別しやすくするために種Eは縦、横4つずつしか書いていないが実際には、図4のように種23(E)は基板上縦横に多数形成するのである。ELOの窓も実際にはもっと細かくて下地基板の上にもっと数多く存在する。ここでは窓も大きく書いているが、ELO(小パターン)の窓の周期の数十倍〜数百倍の周期で種パターン(大パターン)が設けられる。ここではラテラルオーバーグロースの遮蔽部3のマスク材料と閉鎖欠陥集合領域Hの種Eの材料を同一のものにしているから図形が複雑になっている。が、それは異種物質にしてもよい。
【0041】
遮蔽部3は種Eよりも強くGaN結晶成長を抑制する作用がある方が良いということが分かってきた。反対に種Eが結晶成長を抑制する作用が強すぎると閉鎖欠陥集合領域Hが充分に形成できないし、たとえ形成できても途中で切れてしまうということがありうる。
【0042】
それでラテラルオーバーグロースの遮蔽部3はSiO2、SiNなどの誘電体として、閉鎖欠陥集合領域Hの種EはPt、Pd、Niなどの金属とする。
【0043】
ところが種Eを無理に作製しておかなくても、ファセット成長を維持して(C面成長しないで)ゆくのであれば、どこかで閉鎖欠陥集合領域Hが自然発生的に生ずる。どこかで閉鎖欠陥集合領域Hが発生すると、それが維持されて縦に延びるのでやはり閉鎖欠陥集合領域Hの周囲にHZYの同心構造ができるのである。どこで発生するかというと、それは偶然によって決まる。だから閉鎖欠陥集合領域Hを中心とする同心HZY構造の分布はランダムになる。
【0044】
図5はそのように偶然的に発生した閉鎖欠陥集合領域Hの分布の例だとも言える。閉鎖欠陥集合領域Hは自由エネルギーの不均一のある場合に偶発的に生ずるのであってその大きさや分布は偶然で決まる。しかし図5のようなランダム分布する種Eを基板2の上に形成しておいてファセット成長させても同様のものが得られる。
【0045】
種Eがあるときでもないときでも閉鎖欠陥集合領域Hは時に消滅することがある。ファセット成長でなくC面成長になるとそのような閉鎖欠陥集合領域Hは一旦消滅し凝集して転位群はほどけてしまって周囲にばらけてしまう。再び周囲の結晶は高転位となるのである。それは困るのでファセット成長を維持するように細心の注意をしてGaN結晶を監視する必要がある。ファセット成長はC面成長に比べて相対的に低温で行う。ファセットピットを常に観察してピットが消えるような兆しがあれば温度を下げてファセット成長の条件を強化するようにする。
【0046】
そのように転位の凝集を維持するファセット成長が鍵となる。それはc軸方向に成長するのであるがC面成長ではない。C面でなくてファセット面成長なのである。ファセットピットの底に閉鎖欠陥集合領域Hができる。そのすぐ周囲はファセット面に続いて成長した部分であり、それは単結晶低転位随伴領域Zである。それはその部分が単結晶であり、低転位であり、閉鎖欠陥集合領域Hに随伴して生ずるからそう呼ぶのである。ここが良好な単結晶でありレーザの基板として有用な部分である。
【0047】
単結晶低転位随伴領域Zはc軸方向に成長するのであるが、C面成長でない。といっても閉鎖欠陥集合領域Hとその廻りの単結晶低転位随伴領域Zは円柱状(正しくは正六角柱状か正12角柱)で成長するから、どうしてもそれから取り残された部分がある。それはファセット成長できずC面成長となる。C面成長する部分は単結晶で低転位であるがC面成長なので単結晶低転位随伴領域Zとは少し違う。何より抵抗率が高い、という特徴がある。それはC面成長するからであり、円柱などから取り残された部分であるから、それを単結晶低転位余領域Yと呼ぶことにする。単結晶低転位余領域Yも低転位であるが抵抗率が高い。
【0048】
そのような違いはどうしてできるのかというと、それはファセット面には酸素がドープされて、それがn型不純物となり低抵抗になるが、C面には酸素がドープされず高抵抗となる、ということである。本発明とは直接の関係がないのであるが単結晶低転位余領域Yと単結晶低転位随伴領域Zの違いがあること、その原因は何であるかということを述べた。
【0049】
ZとYを合わせて低欠陥単結晶領域Uということもある。低欠陥単結晶領域Uは欠陥集合領域Hに付随するものであり、本発明では面積が問題になるが、その場合の面積は、欠陥集合領域Hとそれに付随する低欠陥単結晶領域Uの合計を面積とする。
【0050】
ファセット面F1、F2、F3、F4、F5、F6は{1−101}面あるいは{2−1−12}面などである。ここで波括弧の{1−101}というのは面の集合表現であり、6つの対称な個別表現(1−101)、(−1101)、(01−11)、(0−111)、(10−11)、(−1011)を含む。同様に波括弧の{2−1−12}というのは、6つの対称な個別表現(−1−122)、(11−22)、(1−2−12)、(−1212)、(2−1−12)、(−2111)を含む。両方の面方位が混在する場合は十二面体の角錐状となる。
【0051】
(3) 特願2001−311018(ストライプ型)
これも結晶中の所定の位置に平行ストライプ状欠陥集合領域Hを積極的に作り出し、その周辺にファセット面Fを維持して成長させ、欠陥を伝搬させ閉鎖欠陥集合領域Hに収束させる。そこは前述のものと同様である。違うのは、SiO2、SiN、Pt、Moなどの種を平行帯状(ストライプ)に配置し、閉鎖欠陥集合領域Hをも平行帯状に発生させるということである。
【0052】
図6にストライプ構造を作り出すためのマスクを示す。マスク24は数多くの平行な遮蔽部(種E)25とその間に存在する数多くの平行な開口部26よりなる。この図で遮蔽部25、開口部26の延長方向をx方向とする。基板の結晶方位により、その上に成長するGaN結晶の方位が決まる。ストライプと直交する方向に劈開面{1−100}ができるようにストライプ状遮蔽部25(種E)の方位を選んで基板2の上に形成する。基板2、マスク24の上にGaNをファセット成長させる。図7のように平行な閉鎖欠陥集合領域Hが遮蔽部25の上に生ずる。欠陥集合領域Hの両側に平行な多数の単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yが発生する。それはストライプマスクに対応したストライプとなっている。図8は同じものの断面図であり基板面に垂直に欠陥集合領域H、単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yが成長していることが分かる。図7では図6を90度回転してあり、x方向が上向きになる。
【0053】
遮蔽部25(種E)の両側にファセット面が生ずる。それはもはや正六角形とか正十二角形ではない。図8の断面図に示すようにV溝のようになる。ファセット面ピットPが錘状にならず平行なV溝となる。平行な種25(遮蔽部E)の上に閉鎖欠陥集合領域Hがのびる。V溝の斜壁ファセット面Fの下に連続して単結晶低転位随伴領域Zが成長する。隣接V溝の境界である狭い平坦面はC面である。C面成長する部分は単結晶低転位余領域Yである。ファセット成長の条件や遮蔽部25の間隔によってC面成長する単結晶低転位余領域Yができないこともある。図7のように単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zの部分が平行にできる。
【0054】
そのようにすると閉鎖欠陥集合領域H、単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yが平行に規則正しく並び、HZYZHZYZHZYZHZYZ…というようになる。欠陥は帯状のHの部分に集中して蓄えられる。その両側の単結晶低転位随伴領域Zは単結晶であり、低抵抗であり低転位である。それはレーザ用基板として最適である。レーザの幅に合わせてストライプの幅を決めることによって、一つのストライプから一群のレーザを取ることができる。そしてHの部位で切ってその部分を用いないようにすれば欠陥は実効的に排除できたということになる。レーザの幅を400μmだとすれば、HとHで挟まれるZYZの部分の幅を450μmとか500μm程度にすればよい。図6にそのようなストライプ型のマスク24を示す。種Eとして直線状被覆部25を平行に多数設けたマスクである。GaN成長をさせると直線被覆部25の上に閉鎖欠陥集合領域Hが成長する。
【0055】
GaNの劈開面は{1−100}面であるが、その何れかをそのストライプと直交するようにすれば、レーザチップの分離を自然劈開によって行うことができる。それは共振器面となるので平坦平滑面を簡単に形成することができる、という利点がある。
【0056】
このように閉鎖欠陥集合領域H、単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zが平行に並ぶものをストライプ型と呼ぶことにする。ドット型は孤立した欠陥集合領域Hが規則正しく二次元的に配列され、ストライプ型は線状の欠陥集合領域Hが平行に多数規則正しく並んでいる。欠陥集合領域Hの分布に規則性のないものをランダム型と呼ぶ。
【0057】
【発明が解決しようとする課題】
ここで閉鎖欠陥集合領域Hを利用した3種類のGaNの単結晶を製造する方法を紹介した。閉鎖欠陥集合領域の分布に関し、従来例(2)はドット型、ランダム型を提案している。(3)はストライプ型を提案している。
【0058】
ファセット成長させたGaN結晶はそのように3種類の異なった部位、
閉鎖欠陥集合領域H
単結晶低転位随伴領域Z
単結晶低転位余領域Y
【0059】
からなる単結晶である。単結晶といっても単結晶低転位余領域Y+単結晶低転位随伴領域Zは単結晶(低欠陥単結晶領域U)であるが、閉鎖欠陥集合領域Hはそうでない。しかしレーザの基板として閉鎖欠陥集合領域Hを使わなければ良いのである。
【0060】
上記の出願はいずれもファセット成長による閉鎖欠陥集合領域の分布を利用して転位を減少させる方法を提案している。閉鎖欠陥集合領域Hの分布によって、簡単にランダム型、ドット型、ストライプ型という。ドット型、ランダム型は閉鎖欠陥集合領域Hを中心として同心状に単結晶の単結晶低転位随伴領域Zと単結晶低転位余領域Yをもつ。その分布が規則的なものをドット型、ランダムなものをランダム型と呼ぶ。いずれもHZYの同心構造である。ストライプ型は帯状にHZYZH…という構造が連続する。いずれも巧妙なGaNであるが、なお難点をもっている。それを述べる。
【0061】
[1.ストライプ型の欠点]
(3)特願2001−311018の幅を持った直線状の欠陥集合領域Hとその両隣のファセット面からなる幅をもった直線状の低欠陥単結晶領域Z、Yから形成されるようにしたGaN成長方法(ストライプ型)では、劈開性が著しく改善される。HZYZHZY…というように平行帯状にそのような領域を意図的に形成し、ZYZの部分にレーザチップがくるようにウエハプロセスでレーザを作製すればよい。レーザの中心部分(活性層:ストライプ)がHにかからないように規則正しくレーザを作製することができる。がウエハプロセスが終ると、ZYZの辺と直交する方向(劈開面)にスクライブしてHの部分をも切りとり、チップに切り出す。レーザの共振器面が劈開面となる。それはレーザチップを切り出すときに特に便利な性質である。さらに共振器面を劈開面にできて便利である。
【0062】
そのような利点があるが、反面結晶が弱くて、成長後、下地除去、研磨、ウエハプロセスにおいて、結晶基板にクラックが発生しやすいという問題が存在する。ストライプ型はストライプと直角の方向に簡単にクラックが生ずる。図9にその様子を示す。黒地の部分が閉鎖欠陥集合領域Hでありその両側に単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yがある(単結晶低転位余領域Yはないこともある)。劈開面はストライプに直交するように存在する。そのために劈開面に平行なクラック30が入る事が多い。クラック30はストライプに直交する。クラック30のためにウエハが破断することもある。クラック30は直径全部に及ぶ長いものである。1本のこともあり2本以上のこともある。
【0063】
GaNは本来硬く脆い結晶である。ストライプ型の場合、結晶成長後の冷却時に発生する熱応力やGaN基板加工時に発生する応力によりGaN基板外周よりクラックが発生する。ときに割れてしまうこともある。単結晶成長し冷却し研磨したときに割れるということがある。
【0064】
甚だしい場合は単結晶成長して冷却しただけでウエハ面にクラックが発生することもある。その場合はそもそも丸いウエハそのものが製造できない。たとえGaNウエハになってもレーザデバイスをウエハプロセスによって製作したときに熱応力などの作用で破断してしまう。
【0065】
そのように脆くて割れ易いのでは、とてもその上にGaN、InGaN、AlGaN薄膜などをエピタキシャル成長させ、チップに切り出してレーザデバイスとすることができない。だから極めて歩留まりが悪いということである。
【0066】
[2.ドット型、ランダム型の欠点]
(2)特願2001−284323の成長方法では、欠陥の集合した芯Sに応力が集中するが、この芯はGaN基板上にランダムあるいは規則的に孤立して存在する。閉鎖欠陥集合領域、ファセットの分布が直線状でないので、劈開面が一様でない。劈開面に対して閉鎖欠陥集合領域H、単結晶低転位余領域Y、単結晶低転位随伴領域Zが非対称に存在し、閉鎖欠陥集合領域に非対称に応力が加わる。劈開に対して非対称に応力が加わるため綺麗に劈開せず切り口がギザギザになる。つまり劈開性が悪いという問題があった。
【0067】
GaNの劈開面は{1−100}面であり、その方法で作られたものは全体として単結晶であるが閉鎖欠陥集合領域Hの部分は単結晶でない。閉鎖欠陥集合領域Hの中は多結晶かもしれないし、単結晶であっても方位が別の部分とは反転しているのかもしれない。とにかく閉鎖欠陥集合領域Hはすぐに隣接する単結晶と格子構造が連続していない。非連続である。だから、ある劈開面にそって劈開しようとしても、その延長線上に閉鎖欠陥集合領域があり切断線がそれに衝突すると綺麗に劈開できない。閉鎖欠陥集合領域で格子が不連続であるから連続して劈開しなくなる。その部分で切断ができないということもある。閉鎖欠陥集合領域を迂回して切断されることもある。
【0068】
そうなると劈開といっても劈開面が綺麗な切断面とならない。ギザギザになってしまったり閉鎖欠陥集合領域のところから斜めに割れてしまったりする。だからランダム型、ドッド型は劈開が不完全であるという難点がある。レーザ用の基板とする場合それは不都合なことである。
【0069】
反面、それはクラックが発生しにくい結晶でもあった。クラックというのは綺麗に劈開面で切断してしまう現象であるから、ランダムに閉鎖欠陥集合領域が分布した結晶は劈開面がどこかで閉鎖欠陥集合領域に衝突し、そのために劈開が妨害される。だからクラックが発生しようとしても閉鎖欠陥集合領域Hによってすぐにくい止められる。だから破断するということはない。つまりランダム型、ドット型は機械衝撃、熱衝撃に強く容易に破断せず研磨やその他のウエハの加工においても堅牢、頑健であって破壊されない。それはドット型、ランダム型の著しい利点である。
【0070】
そのようにストライプ型は劈開性に優れるが脆くてクラックが発生し易く、ランダム型、ドット型は堅牢であってクラックはできないが劈開性に劣る。
【0071】
劈開性に優れかつクラック、破断などの難点のない丈夫なGaNウエハを製造する方法を提供することが本発明の第1の目的である。
多数のレーザチップをその上に製作し劈開によってチップに切り出すことができるようなGaNウエハの製造方法を提供することが本発明の第2の目的である。
【0072】
【課題を解決するための手段】
本発明の単結晶窒化ガリウム基板は、開口部と被覆部が規則的に繰り返し外周部Rも中央部Qも同一である周期性大パターンを有し大パターンの開口部に外周部Rでは周期性大パターンの周期より狭い一定の間隔Srで周期的に繰り返す窓Wrを有し中央部QではSrより短い一定の間隔Sqで周期的に繰り返す窓Wqを有する(Sr>Sq)ラテラルオーバーグロース用(ELO)小パターンを有する複合マスクを出発基板結晶の表面の外周部Rと中央部Qに形成し、ファセットを維持しながら窒化ガリウムを気相成長させることによって、不規則に分布した欠陥集合領域Hfとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Uf、規則的に配列した欠陥集合領域Hgとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ugを含む窒化ガリウム結晶を成長させ、不規則に分布した欠陥集合領域Hfとその隣接低欠陥単結晶領域Ufの合計の不規則面積Fが、規則的に配列した欠陥集合領域Hgとその隣接低欠陥単結晶領域Ugの合計の規則面積Gと不規則面積Fの合計である全体面積(G+F)に占めるランダム面積比Mが、外周部Rよりも中央部Qで低くなるようにし(Mq<Mr)、所定の厚みに達すると成長を中止し、出発基板やマスクを除去して製造されるものである。
【0073】
中央部Qでのランダム面積比Mqは10%以下である(Mq≦0.1)。より望ましくは中央部Qでのランダム面積比Mqを0〜1%とすることである(0≦Mq≦0.01)。
【0074】
外周部Rでのランダム面積比Mrは10%以上とするのが良い(Mr≧0.1)。より好ましくは、外周部Rでのランダム面積比Mrを30%〜70%とする(0.3≦Mr≦0.7)。
【0075】
ランダム面積比Mというのは、不規則分布をする欠陥集合領域Hとそれに伴う低欠陥単結晶領域Uの部分の面積が全体面積に占める割合である。これが大きいと劈開性が減少し強度が増す。ランダム面積比Mが低いと劈開性が明確になり素子分離や、レーザの共振器形成に適している。
【0076】
外周部Rはランダム面積比Mを高くして強度を高めている。外周部Rでのランダム面積比Mは10%以上とする。より好ましくは30%〜70%とする。外周部Rはランダム面積比Mが高いので堅牢であり破断しない。だからランダム面積比Mの高い外周部Rは補強効果をもつ。外周部Rが中央部Qを補強するのである。外周部Rは補強効果はあるが劈開性を犠牲にしており性能の良いレーザなどの光素子をそこから作り出す事ができない。つまり光素子の基板という意味では無駄になるが中央部Qを補強するという積極的な役割があるので、それで良いのである。
【0077】
反対に中央部Qではランダム面積比Mが低く、10%以下とする。好ましくは1%以下が良い。ランダム面積比Mが低いので劈開性が強く現れ自然劈開によるチップ分離が可能になるしレーザ共振器ミラーを劈開面によって形成できる。ウエハの中央部Qにレーザ、発光ダイオードを歩留まり良く形成することができる。そのままでは研磨時、搬送時、ウエハプロセスにおいてクラック、割れ、破断などの可能性があるが外周部Rによる補強効果によって割れ、破断などが起こらなくなる。そのような内外の相補性が本発明の特徴である。
【0078】
ELOマスクの窓の間隔Sを中央部Qと外周部Rで異ならせることによって不規則に分布する欠陥集合領域Hと規則的に配列する欠陥集合領域Hの比率を中央部Qと外周部Rで異なるものにしている。間隔Sの定義を図21によって説明する。図21では窓は正六角形であって正三角形の集合の隅部に正六角形窓が位置するようなELOパターンとなっている。しかし窓の形状は丸、正方形、正三角形、帯状など任意である。窓の配列の対称性はこのように6回回転対称と限らない。4回回転対称、3回回転対称、2回回転対称などでもよい。
【0079】
図21において上側のより大きい寸法の窓が規則配列しているのが外周部RにおけるELO窓Wの配置である。間隔Sというのは隣接窓の縁から縁までの距離である。それだけでは窓配列は決まらない。窓の大きさを示すパラメータが必要である。窓の直径Wもパラメータとなる。外周部Rでの窓間隔Sr、窓直径Wrは、中央部Qでの窓間隔Sq、窓直径Wqよりも大きい。Sr>Sq、Wr>Wqである。直径Wは大体間隔Sに等しく取る。これまで窓間隔がSr>Sqだという表現をしてきたが、より詳しくは、窓間隔と窓直径が、外周部Rで広く中央部Qで狭いということである。
【0080】
Sr,Wr= 0.3μm〜6μm
Sq,Wq= 0.1μm〜3μm
最適の場合
Sr,Wr= 2μm
Sq,Wq= 1μm
である。
【0081】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化ガリウム基板の中央部Qは規則性があって劈開性のよい結晶とし、外周部Rでは不規則で強度に優れた結晶として外周部Rによって中央部Qを補強するようにしたものである。窒化ガリウムウエハの中央部Qは劈開性がよく規則性に優れているので発光素子製造に用いることができ外周部Rは補強作用があり研磨工程やウエハプロセスにおいてウエハが破断しクラックが生ずることを防止する。表1に外周部R、中央部Qにおける欠陥集合領域H、低欠陥単結晶領域U、ランダム面積比Mなどの定義と広狭の比較を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
外周部Rの幅Rwには下限があり、1mm以上でなければならない。1mm以下であると補強効果が少なくてクラックが発生したり破断したりする。外周部Rの幅Rwが大きい方が補強効果は大きい。
【0084】
しかし外周部Rは無駄になる部分だから、あまり広いのは望ましくない。ウエハの直径にもよるが、経済性から外周部Rの幅Rwは20mm以下である。つまりRw=1〜20mmである。
【0085】
外周部Rのより好ましい幅Rwは2mm〜5mmである。
中央部Qの方はランダム面積比Mが低い方がよい。ランダム面積比Mが低いと劈開性が強く現れる。劈開面があれば劈開面に沿ってチップを自然劈開することができるし、劈開した平行な面を共振器のミラー面として有効利用できる。その点でサファイヤ基板にヘテロエピタキシャル成長して形成したものよりも有利である。中央部Qはランダム面積比Mが低い方が良い。そのためには中央部Qのランダム面積比Mqは10%以下とする。より好ましくは0〜1%のランダム面積比Mqとする。そのように外周部Rと中央部Qとが相補的な性質をもつため破損、クラック、破断などが起こらず、かつ劈開性のある窒化ガリウム単結晶とすることができる。中央部Qと外周部Rの相補性が本発明の本質である。
【0086】
そのように本発明の窒化ガリウム単結晶は中央部Qと外周部Rの同心二重構造を有する。基板上での違いはランダム面積比Mである(Mq<0.1<Mr)。そのような違いを生じさせるために本発明は特別な形状の複合マスクを出発基板の上に形成し、その上から窒化ガリウムを気相エピタキシャル成長させる。
【0087】
本発明で用いる複合マスクは、開口部と被覆部がある周期Tで規則正しく繰り返す周期の長い大パターンと、大パターンの開口部においてある短い周期で繰り返す窓からなるラテラルオーバーグロース用の小パターンを組み合わせたものである。大パターンは開口部と被覆部があり、被覆部はそのままであるが、開口部にはさらに小パターンを設けるのである。小パターンはすでに説明したラテラルオーバーグロース用のパターンである。ラテラルオーバーグロース用パターンだから連続被覆部にある間隔で窓を設け開口部としたものである。
【0088】
大パターンは外周部Rでも中央部Qでも同じである。だから大パターンの周期Tは外周部Rも中央部Qも同一である。
【0089】
違いを出すために本発明は、小パターンの窓の間隔に工夫をこらしている。つまりラテラルオーバーグロースのマスクである小パターンの窓Wの間隔Sが中央部Qと外周部Rで異なる。それによってエピタキシャル成長した窒化ガリウムの欠陥集合領域Hの不規則部分と規則部分の面積の広さを相違させている。
外周部Rでの窓間隔Srの方が広くてSr=0.3μm〜6μmである。
中央部Qでの窓間隔Sqの方が狭くてSq=0.1μm〜3μmである。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
比較例のマスクを図13に、本発明で用いる内外二重マスクを図14、15に示す。
[A.ランダム型内外二重マスク(図13)]
これはELO(小パターン)だけを内外二重構造にしたものである。中央部Q(内側)での窓の直径、間隔が狭く、外周部R(外側)での窓の直径、間隔が広い。規則性のある大パターン(開口部+被覆部)が存在しないので、これを下地基板上に形成してGaNをファセット成長させても規則性のある欠陥集合領域Hを作り出すことができない。欠陥集合領域Hは図5のようにランダム分布する。これは本発明のためには用いることができないが小パターンが基本的な内外二重構造をもつものであるので図示している。
【0093】
[B.ドット型内外二重マスク(図14)]
これは、ドット型大パターンの開口部に、ELO(小パターン)を内外二重構造にして設けた複合マスクである。ELOマスク(小パターン)が内外二重構造であるのは先例と同じだがドット型大パターンを持っている点でAと相違する。ELO(小パターン)パターンは、中央部Q(内側)での窓の直径、間隔が狭く、外周部R(外側)での窓の直径、間隔が広い。規則性のあるドット型大パターン(開口部+被覆部)が存在するので、これを下地基板上に形成してGaNをファセット成長させるとドット上に規則性配列する欠陥集合領域Hとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Uを作り出すことができる。それだけでなく一部に不規則に分布する欠陥集合領域Hとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Uをも生成することができる。これは本発明のGaN製造のために用いることができるマスクである。大パターンは内外共通だが小パターンが内外に二重の構造をもつ。
【0094】
[C.ストライプ型内外二重マスク(図15)]
これは、ストライプ型大パターンの開口部に、ELO(小パターン)を内外二重構造にして設けた複合マスクである。ELOマスク(小パターン)が内外二重構造であるのは先例と同じだがストライプ型大パターンを持っている点でAと相違する。ELO(小パターン)パターンは、中央部Q(内側)での窓の直径、間隔が狭く、外周部R(外側)での窓の直径、間隔が広い。規則性のあるドット型大パターン(開口部+被覆部)が存在するので、これを下地基板上に形成してGaNをファセット成長させるとストライプ状に規則性配列する欠陥集合領域Hとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Uを作り出すことができる。それだけでなく一部に不規則に分布する欠陥集合領域Hとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Uをも生成することができる。これは本発明のGaN製造のために用いることができるマスクである。大パターンは内外共通だが小パターンが内外に二重の構造をもつ。
【0095】
【実施例】
規則配置した開口部、遮蔽部よりなる大パターンと、大パターンの開口部に内外で相違する小パターン(ELO)とを有する複合マスクをGaAs基板上に形成した。マスクの上からHVPE法によってGaNエピタキシャル層を成長させた。キャリヤガスとして水素ガス(H2)を用いた。原料ガスとしては、塩化水素ガス(HCl)とアンモニアガス(NH3)を用いた。
【0096】
初めに低温の成長温度(530℃)で約80nm厚みのGaNバッファ層を形成した。GaNバッファ層成長条件は以下のようである。
[バッファ層成長条件]
ガス流量 5L (流速100cm/分)
Ga分圧 2.5×10−3atm (0.33Pa)
NH3分圧 0.12atm (16Pa)
成長温度 530℃
成長時間 20分
成長膜厚 80nm
【0097】
その後1030℃まで昇温して、その上に以下の条件で、GaNエピ層を約3mm(3000μm)成長させた。
【0098】
[エピ層成長条件]
ガス流量 5L (流速100cm/分)
Ga分圧 1.6×10−2atm (2.1Pa)
NH3分圧 0.2atm (27Pa)
成長温度 1030℃
成長時間 30時間
成長膜厚 3000μm(3mm)
【0099】
これによってGaN/GaAsの試料を得た。それを王水でエッチングしてGaAs基板とマスクを除去した。自立した(フリースタンディング)単結晶窒化ガリウム基板を得た。これを加工、研磨して平坦なGaN単結晶基板の14種類のサンプル(試料1〜試料14)を作製した。同じ条件の各試料はそれぞれ数十枚〜数百枚あった。
【0100】
試料1〜14の外周部Rと中央部Qの境界を調べ外周部Rの幅Rwを測定した。 GaN単結晶基板サンプル(試料1〜試料14)の中央部Qの規則配列する欠陥集合領域Hgqとその周辺の低欠陥単結晶領域Ugqの面積を測定し合計面積Gを求めた。同様に中央部Qで不規則分布する欠陥集合領域Hfqとその周辺の低欠陥単結晶領域Ufqの合計面積Fを求めた。Fを(F+G)で割って中央部Qでのランダム面積比Mqを求めた。
【0101】
同様に試料1〜試料14の外周部Rの規則配列する欠陥集合領域Hgrとその周辺の低欠陥単結晶領域Ugrの面積を測定し合計面積Gを求めた。外周部Rで不規則分布する欠陥集合領域Hfrとその周辺の低欠陥単結晶領域Ufrの合計面積Fを求めた。Fを(F+G)で割って外周部Rでのランダム面積比Mrを求めた。
【0102】
中央部Qにクラックが発生しているかどうかを調べた。一つでもクラックが発生していれば、それはクラック発生基板とし、全くクラックがない基板をクラック非発生基板とした。同じ試料番号について数十〜数百の試料があるので、それぞれの全体数でクラック発生基板の数を割ってクラック発生頻度Kを求めた。
【0103】
表4にそれぞれの試料1〜14について中央部Qランダム面積比Mq(%)、外周部Rランダム面積比Mr(%)、外周部Rの幅Rw(mm)、クラック発生頻度K(%)を示す。
【0104】
【表4】
【0105】
[試料1(Mq=100%、Mr=100%、K=0%、Rw=0)]
これは内外二重構造をもたない。本発明の実施例ではない。図10に示すような大パターンをもたず小パターンだけのマスク、つまり一様な細かい窓配置をもつラテラルオーバーグロース用のマスクを用いファセット成長させてGaN結晶を形成したものである。内外ともに欠陥集合領域Hが不規則分布している。これはラテラルオーバーグロース(ELO)マスクだけでファセット成長させると欠陥集合領域Hがランダム分布するということを示している。基板全体一様にランダム面積比Mが100%であり、それは堅牢である。クラックは発生しない。その点では最も優れたものであるが中央部Qで劈開性がないからレーザ素子、LED素子の基板としては適しない。
【0106】
[試料2(Mq<1%、Mr<1%、K=90%、Rw=0)]
これも内外二重構造をもたない。これも本発明の実施例でない。規則配置した開口部と被覆部からなる大パターンと、その開口部に細かい一様窓配置をもつ小パターン(ELO)をもつ複合マスクをGaAs基板に形成してHVPE法によってGaNを成長させたものである。小パターンの間隔が内外一様であるから内外の二重構造が発生しない。外周部Rでもランダム面積比Mが1%以下であり欠陥集合領域Hが規則正しく並び劈開性がある。それだけに弱くてクラック発生頻度Kが90%となっている。一様マスクによる手法で作製されたものは破損し易く弱いということである。
【0107】
[試料3(Mq<1%、Mr=100%、K=90%、Rw=0.1mm)]
これは内外二重構造をもつ比較例である。内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付けて、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えば図14のようなドット型に種Eを設けた複合マスクを用いる。あるいは図15のようなストライプ型に種Eを平行に設けた複合マスクを用いる。
【0108】
クラック発生頻度は90%というように高い。それは外周部Rが狭すぎるからである。外周部Rの幅はRw=0.1mmである。それが狭すぎて補強効果が不十分だということである。それと外周部Rのランダム面積比Mが100%というのがかえって良くないということを示唆している。
【0109】
[試料4(Mq<1%、Mr=100%、K=70%、Rw=4mm)]
これも内外二重構造をもつ比較例である。内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付けて、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えば図14のようなドット型に種Eを設けた複合マスクを用いる。あるいは図15のようなストライプ型に種Eを平行に設けた複合マスクを用いる。
【0110】
クラック発生頻度は70%というようになお高い。クラック発生頻度が70%でも使えるが、より低い比率の方が望ましい。
外周部RはRw=4mmであって充分な広さをもっている。
【0111】
外周部Rのランダム面積比Mr=100%で、1%以下の中央部Qのランダム面積比Mqというように違いすぎるので、組織の状態、成長速度、反りなどが内外で大きく異なり内外の境界に大きな応力が発生し、それがクラックを誘引しているのであろう。試料4は内外のランダム面積比Mの違いが余りに大きすぎてもいけないということを意味する。
【0112】
しかし外周部Rのランダム面積比Mr=100%が全く禁止されるということではない。中央部Qでのランダム面積比Mqが10%というように大きければクラック発生頻度はより低くなって実用的なものになる。
【0113】
[試料5(Mq<1%、Mr=80%、K=90%、Rw=0.1mm)]
これも内外二重構造をもつ比較例である。試料3、4と同様に、内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0114】
クラック発生頻度は90%というようになお高い。それは外周部Rの幅がRw=0.1mmというように狭いから補強効果が弱いためである。外周部Rの幅をもっと広くすれば実用的なクラック発生頻度に下がるであろう。
【0115】
[試料6(Mq<1%、Mr=80%、K=30%、Rw=4mm)]
これが内外二重構造をもつ実施例である。試料3〜5と同様に、内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0116】
クラック発生頻度は30%というように低くなっている。それは外周部Rの幅がRw=4mmというように広くて補強効果が強く現れるためである。4mmでもよいが外周部Rの幅をもっと広くすれば、さらにクラック発生頻度が下がる。
【0117】
これは30%のクラック発生頻度で実用的な意味がある。試料4と比較すると外周部Rでのランダム面積比Mrが100%から80%に下がり内外でのランダム面積比Mの差が20%低下しているところに違いがある。内外のランダム面積比Mがあまり大きいと、成長速度が違い、結晶組織も異なり、内外境界に内部応力が強く発生して、それがクラックの発生をかえって促す。
ということは、さらに内外のランダム面積比Mq、Mrの差を下げた方が良いだろうということを示唆する。
【0118】
[試料7(Mq<1%、Mr=50%、K=90%、Rw=0.1mm)]
これも内外二重構造をもつ比較例である。試料3〜6と同様に、内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0119】
試料6の意味する所に従って外周部Rのランダム面積比Mを50%に下げている。しかし、クラック発生頻度は90%というようになお高い。それは外周部Rの幅がRw=0.1mmというように狭いから補強効果が弱いためである。外周部Rの幅をもっと広くすれば、より実用的なクラック発生頻度に下がるであろう。
【0120】
[試料8(Mq<1%、Mr=50%、K=10%、Rw=4mm)]
これも内外二重構造をもつ実施例である。試料3〜7と同様に、内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0121】
試料6の意味する所に従って外周部Rのランダム面積比Mを50%に下げている。外周部Rの幅もRw=4mmというように広くしている。クラック発生頻度は10%というように極めて低い。
【0122】
試料4、試料6と比較すると、外周部Rのランダム面積比Mrが50%であって、内外のランダム面積比Mの差が50%以下に減っている。それが成長速度の差を緩和し、内部組織の差異を減じ、境界での内部応力を減少させクラック発生を抑制しているのであろう。試料4、6と比較して、外周部Rのランダム面積比Mrは70%以下であることが良いということがわかる。
【0123】
外周部Rのランダム面積比Mrが70%〜100%であっても、中央部Qのランダム面積比Mが10%に近いと差異は減少するのでクラック発生は減る。
それでは外周部Rのランダム面積比Mrの許される下限はどのぐらいであろうか、ということが問題になる。
【0124】
[試料9(Mq<1%、Mr=30%、K=90%、Rw=0.1mm)]
内外二重構造をもつ比較例である。試料3〜8と同様に、内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0125】
試料8の示唆に従って外周部Rのランダム面積比Mを30%に下げている。しかし、クラック発生頻度は90%というようになお高い。それは外周部Rの幅がRw=0.1mmというように狭くて補強効果が弱いためである。外周部Rの幅をもっと広くすれば、より実用的なクラック発生頻度に下がるであろう。そこでRwを増やしてみた。
【0126】
[試料10(Mq<1%、Mr=30%、K=10%、Rw=4mm)]
内外二重構造をもつ実施例である。試料3〜9と同様に、内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0127】
試料8、9の示唆に従って外周部Rのランダム面積比Mを30%に下げ外周部Rの幅をRw=4mmに増やしている。クラック発生頻度は10%というように充分に低い。それは外周部Rの幅がRw=4mmというように広くて補強効果があるということと、外周部Rでのランダム面積比Mが30%であって内外のランダム面積比Mの差が小さくて、内外成長速度差、結晶組織差が小さくて境界に強い応力が生じないためであろう。外周部Rランダム面積比Mrが30%というように低くても良いというこがわかった。さらに外周部Rのランダム面積比Mrを下げ、その効果を調べる。
【0128】
[試料11(Mq<1%、Mr=10%、K=90%、Rw=0.1mm)]
内外二重構造をもつ比較例である。内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0129】
試料8〜10の示唆に従って外周部Rのランダム面積比Mrを10%に下げている。クラック発生頻度は90%というように極めて高い。それは外周部Rの幅がRw=0.1mmというように狭くて補強効果が弱いためか、ランダム面積比Mr=10%が低いためかわからない。そこでRwを増やしてみた。
【0130】
[試料12(Mq<1%、Mr=10%、K=40%、Rw=4mm)]
内外二重構造をもつ実施例である。内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0131】
試料8〜11の示唆に従って外周部Rのランダム面積比Mrを10%に下げ、外周部Rの幅をRw=4mmに増やしている。クラック発生頻度は40%というように高くなる。40%のクラック発生頻度でも使うことはできるが不満が残る。
【0132】
外周部Rの幅はRw=4mmであるから充分であろう。試料8、10と比較すると、外周部Rのランダム面積比Mr=10%が低すぎるということがわかる。ということは、外周部Rのランダム面積比Mrは30%以上であることが望ましいということがわかる。試料6、8、10、12から外周部Rの好ましいランダム面積比Mrの範囲が30%〜70%だということがわかる。
【0133】
それは中央部Qのランダム面積比Mqが1%以下で小さく内外の差異が強調されるからである。中央部Qのランダム面積比Mqが10%に近いときは、外周部Rのランダム面積比Mrを70〜100%にすることもできる。
【0134】
[試料13(Mq<1%、Mr=5%、K=90%、Rw=0.1mm)]
内外二重構造をもつ比較例である。内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0135】
外周部Rのランダム面積比Mrをさらに5%に下げている。クラック発生頻度は90%というように極めて高い。それは外周部Rの幅がRw=0.1mmというように狭くて補強効果が弱いためか、ランダム面積比Mr=5%が低いためであろう。
【0136】
[試料14(Mq<1%、Mr=5%、K=50%、Rw=4mm)]
内外二重構造をもつ比較例である。内外ともに規則配置した開口部と被覆部とよりなる大パターンと、大パターンの開口部に細かい窓が等間隔で並ぶラテラルオーバーグロース(ELO)用の小パターンを含む複合マスクをGaAs下地基板に付け、その上にHVPE法でGaNを成長させたものである。複合マスクは例えばドット型に種Eを設けた複合マスク(図14)、或いはストライプ型に種Eを平行に設けた(図15)複合マスクを用いる。
【0137】
外周部Rのランダム面積比Mrを5%に下げている。クラック発生頻度は50%というように極めて高い。外周部Rの幅がRw=4mmであって充分であるのにクラック発生頻度が50%なのであるから、外周部Rのランダム面積比Mr=5%というのが低すぎるのである。試料12と試料14を比較して、外周部Rのランダム面積比Mrは10%以上なければならないという事がわかる。
【0138】
【発明の効果】
以上の実施例の試料8および試料10において、ウエハ中央部のクラック発生を10%にまで抑えることができた。従来の、外周部・中央部の区別をもたないウエハではウエハプロセスにおいて熱応力などにより劈開面に平行なクラックが入り、ウエハが破断することもあったが、本発明では外周部のランダム面積比Mrを中央部のランダム面積比Mqより多くすることにより外周部からのクラック発生を抑制することができ、ウエハ破断を防ぐごとができる。
【0139】
本発明の方法で成長させたウエハの中央部を使用して、その上にGaN、InGaN、AlGaN薄膜などをエピタキシャル成長させ、劈開面を利用してチップに切り出した後、レーザデバイスとすることができる。極めて歩留まりが良いGaNウエハの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラテラルオーバーグロース法を説明するための図。(1)は基板、(2)は基板の上にマスクを設けたもの、(3)は開口部に結晶核が発生したもの、(4)は開口部にGaN薄膜が形成された状態、(5)は開口部から角錐状に成長したGaN結晶と転位、(6)は開口部からマスクの上へと横向きに成長したGaN結晶、(7)は隣接開口部から横向き成長した結晶が合体して転位が減少している状態、(8)は合体したあと平坦なC面を維持しながらC面成長している状態を示している。
【図2】基板上に規則正しい配置で種Eを設けて、その上にGaNをファセット成長させるとファセットピットが種Eからのびてゆき種Eの直上部は閉鎖欠陥集合領域Hとなり、その廻りは正六角形状のファセットピットになり、ピットとピットの間は平坦なC面となって成長することを説明するためのファセット成長するGaN結晶の一部拡大平面図。
【図3】基板上に規則正しい配置で種Eを設けて、その上にGaNをファセット成長させるとファセットピットが種Eからのびてゆき種Eの直上部は閉鎖欠陥集合領域Hとなり、ファセットの下には欠陥が少なく単結晶である単結晶低転位随伴領域Zが成長し、平坦なC面の下には欠陥が少なく単結晶であり高抵抗の単結晶低転位余領域Yが成長してゆくことを説明するための断面図。
【図4】基板の上に規則正しい配置で種Eを設けたマスクの上にGaNをファセット成長させ閉鎖欠陥集合領域が規則正しく分布するドット型単結晶GaNを成長させたときのGaN結晶の閉鎖欠陥集合領域分布を示すための平面図。
【図5】基板の上にランダムな配置で種Eを設け、あるいは種を全く設けずに基板の上にGaNをファセット成長させ閉鎖欠陥集合領域がランダムに分布するランダム型単結晶GaNを成長させたときのGaN結晶の閉鎖欠陥集合領域のランダム分布を示すための平面図。
【図6】平行な複数の閉鎖欠陥集合領域Hをファセット成長によって発生させるために基板の上に形成する平行な被覆部をもつストライプ状のマスクの平面図。
【図7】図6のストライプ被覆部マスクを用いてファセット成長させたときのGaN結晶の表面に現れる平行な複数の閉鎖欠陥集合領域Hとその両側に発生する平行な単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yを示すGaN結晶の平面図。
【図8】図6のストライプ被覆部マスクを用いてファセット成長させたときのGaN結晶の表面に現れる平行な複数の閉鎖欠陥集合領域Hとその両側に発生する平行な単結晶低転位随伴領域Z、単結晶低転位余領域Yを示すGaN結晶の縦断面図。
【図9】図6のような平行ストライプのマスクをGaAs基板上に被覆しGaNを結晶成長させ、図7、8のような平行に延びる欠陥集合領域Hとその両側にあって平行に延びる低欠陥単結晶領域U(単結晶低転位随伴領域Z+単結晶低転位余領域Y)を生成した場合、劈開性が強いので、エッチング、研磨、ウエハプロセスにおいてストライプと直交する方向に割れてしまう事があるということを示すための成長GaN基板の平面図。
【図10】短い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓Wをもつラテラルオーバーグロース用小パターンを全面に形成したELOマスクの平面図。
【図11】規則正しく格子状に欠陥集合領域Hが発生するよう格子状(ドット型)に長い周期で規則正しく被覆部(種E)と開口部が並ぶファセット成長用大パターンと、その開口部に短い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓Wをもつラテラルオーバーグロース用小パターンを含む複合マスクの平面図。
【図12】規則正しく平行ストライプ状に欠陥集合領域Hが発生するよう平行ストライプ状に長い周期で規則正しく被覆部(種E)と開口部が並ぶファセット成長用大パターンと、その開口部に短い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓Wをもつラテラルオーバーグロース用小パターンを含む複合マスクの平面図。
【図13】外周部Rでは少し広い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓をもち中央部Qでは少し狭い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓をもつ内外二重ラテラルオーバーグロース用小パターンを形成した二重ELOマスクの平面図。
【図14】規則正しく格子状に欠陥集合領域Hが発生するよう格子状(ドット型)に長い周期で規則正しく被覆部(種E)と開口部が並ぶファセット成長用大パターンと、その開口部に外周部Rでは少し広い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓をもち中央部Qでは少し狭い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓をもつ内外二重ラテラルオーバーグロース用小パターンを含み本発明で用いられる複合マスクの平面図。
【図15】規則正しく平行ストライプ状に欠陥集合領域Hが発生するよう平行ストライプ状に長い周期で規則正しく被覆部(種E)と開口部が並ぶファセット成長用大パターンと、その開口部に外周部Rでは少し広い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓をもち中央部Qでは少し狭い一定間隔で規則正しく並べられた同等の細かい窓をもつ内外二重ラテラルオーバーグロース用小パターンを含み本発明で用いられる複合マスクの平面図。
【図16】ファセット成長したGaN結晶において不規則に分布する欠陥集合領域Hとそれに隣接する低欠陥単結晶領域U(単結晶低転位随伴領域Z+単結晶低転位余領域Y)を含む部分をCL(カソードルミネセンス)観察したものの平面図。多様な寸法形状でランダムに分布する欠陥集合領域Hとそれに接する低欠陥単結晶領域Uが見える。低欠陥単結晶領域Uの位置、寸法、形状も不規則である。この図に現れたものは全て不規則に分布する欠陥集合領域Hf、低欠陥単結晶領域Ufであるから不規則分布領域の面積Fに算入される。
【図17】図16の17−17断面図。多様な位置、寸法、形状の欠陥集合領域Hfと低欠陥単結晶領域Uf(単結晶低転位随伴領域Z+単結晶低転位余領域Y)は垂直方向には大体一定であるが水平方向にはランダムである。
【図18】ファセット成長したGaN結晶において不規則に分布した欠陥集合領域H、低欠陥単結晶領域Uと、(ストライプ状に)規則的に配列した欠陥集合領域H、低欠陥単結晶領域Uとの境界部分の構造をCLで見た平面図。平行で幅が一様な規則正しいストライプ構造が終り楔型の境界から不規則に分布する欠陥集合領域Hと低欠陥単結晶領域Uが存在するという明白な構造の変化を示す。楔型の境界の上の部分が規則分布領域の面積Gに算入される。楔型の境界から下の部分が不規則分布領域の面積Fに算入される。ランダム面積比Mというのは全面積(F+G)によって、不規則領域の面積Fを割ったものとして定義される。M=F/(F+G)。
【図19】図18の19−19断面図。
【図20】図18の20ー20断面図。
【図21】ELOマスクの窓の間隔Sを中央部Qと外周部Rで異ならせることによって不規則に分布する欠陥集合領域Hと規則的に配列する欠陥集合領域Hの比率を中央部Qと外周部Rで異なるものにしている本発明において、間隔Sと窓Wの定義を説明する図。外周部Rでは間隔Sr、窓Wrが大きく、中央部Qでは間隔Sq、窓Wqが小さくなっている。
【符号の説明】
2 基板
3 マスク
4 窓
5 GaN結晶核
6 膜状GaN結晶
7 錘状GaN結晶
8 ファセット面
9 頂面
20 衝合面
21 マスク
22 マスク
23 上面
24 マスク
25 遮蔽部
26 開口部
27 被覆部
H 閉鎖欠陥集合領域
E 種
Z 単結晶低転位随伴領域
Y 単結晶低転位余領域
Q 中心部
R 外周部
U 低欠陥単結晶領域
S マスクの窓間隔
W 窓
Claims (17)
- 外周部Rと中央部Qを持ち、規則的に配列した複数の欠陥集合領域Hgとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ugと、不規則に分布する複数の欠陥集合領域Hfとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ufを含み、不規則分布欠陥集合領域Hfとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ufの面積の合計をFとし、規則配列欠陥集合領域Hgとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ugの面積の合計をGとし、不規則領域面積Fの全体の面積(F+G)に対する値としてランダム面積比M=F/(F+G)を定義し、中央部Qでのランダム面積比Mqよりも外周部Rでのランダム面積比Mrの方が高い(Mr>Mq)ことを特徴とする単結晶窒化ガリウム基板。
- 外周部Rの幅Rwは1〜20mmである事を特徴とする請求項1に記載の単結晶窒化ガリウム基板。
- 外周部Rの幅Rwは2mm〜5mmである事を特徴とする請求項2に記載の単結晶窒化ガリウム基板。
- 中央部Qでのランダム面積比Mqが0〜10%である事を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の単結晶窒化ガリウム基板。
- 中央部Qでのランダム面積比Mqが0〜1%である事を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の単結晶窒化ガリウム基板。
- 外周部Rでのランダム面積比Mrが10%〜100%である事を特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の単結晶窒化ガリウム基板。
- 外周部Rでのランダム面積比Mrが30%〜70%である事を特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の単結晶窒化ガリウム基板。
- 開口部と被覆部が規則的に繰り返し外周部Rも中央部Qも同一である周期性大パターンを有し、周期性大パターンの開口部に外周部Rでは周期性大パターンの周期より狭い一定の間隔Srで周期的に繰り返す窓Wrを有し中央部QではSrより短い一定の間隔Sqで周期的に繰り返す窓Wqを有する(Sr>Sq)ラテラルオーバーグロース用小パターンを有する複合マスクを基板結晶の表面の外周部Rと中央部Qに形成し、気相合成法によって複合マスクの上に窒化ガリウム結晶をファセットを維持させながら成長させ、規則的に配列した欠陥集合領域Hgとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ugと不規則に分布する欠陥集合領域Hfとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ufとよりなる窒化ガリウム結晶を成長させ、所定の厚みに達した後に結晶成長を中止し、基板とマスクを除去して、自立した窒化ガリウムウエハとし、不規則分布欠陥集合領域Hfとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ufの合計面積をFとし、規則分布欠陥集合領域Hgとそれに隣接する低欠陥単結晶領域Ugの合計面積をGとし、不規則領域面積Fの全体の面積(F+G)に対する値としてランダム面積比M=F/(F+G)を定義し、中央部Qでのランダム面積比Mqが、外周部Rでのランダム面積比Mrよりも低いようにし、外周部Rが補強作用をもち中央部Qでのクラック発生、破断を防ぐようにしたことを特徴とする単結晶窒化ガリウム基板の製造方法。
- 中央部Qでのラテラルオーバーグロース用小パターンの窓の間隔Sqは0.1〜3μmであり、外周部Rでのラテラルオーバーグロース用小パターンの窓の間隔SrはSqより大きく、かつ0.3μm〜6μmである事を特徴とする請求項8に記載の単結晶窒化ガリウム基板の製造方法。
- 中央部Qでのラテラルオーバーグロース用小パターンの窓の間隔Sqによって、外周部Rでのラテラルオーバーグロース用小パターンの窓の間隔Srを差し引いた値(Sr−Sq)は0.2μm〜3μmである事を特徴とする請求項8に記載の単結晶窒化ガリウム基板の製造方法。
- 中央部Qでのラテラルオーバーグロース用小パターンの窓の間隔Sqによって、外周部Rでのラテラルオーバーグロース用小パターンの窓の間隔Srを差し引いた値(Sr−Sq)は0.5μm〜1.5μmである事を特徴とする請求項10に記載の単結晶窒化ガリウム基板の製造方法。
- 中央部Qでのラテラルオーバーグロース用小パターンの窓の間隔Sqは1μmであり、外周部Rでのラテラルオーバーグロース用の窓の間隔Srは2μmである事を特徴とする請求項11に記載の単結晶窒化ガリウム基板の製造方法。
- 外周部Rの幅Rwが1〜20mmである事を特徴とする請求項8〜12の何れかに記載の単結晶窒化ガリウム基板の製造方法。
- 外周部における成長速度から中央部の成長速度を引いたものが、外周部成長速度の50%以下であることを特徴とする請求項8〜13の何れかに記載の単結晶窒化ガリウム基板の製造方法。
- 外周部Rも中央部Qも同じように開口部と被覆部が広い周期で規則的に繰り返す周期性大パターンを有し、大パターンの被覆部は外周部Rでは周期性大パターンの周期より狭い0.3〜6μmの間隔Srで周期的に繰り返す窓Wrを有し中央部QではSrより短い0.1μm〜3μmの間隔Sqで周期的に繰り返す窓Wqを有する(Sr>Sq)ラテラルオーバーグロース用小パターンを有する複合マスクを基板結晶の表面の外周部Rと中央部Qに形成したことを特徴とする窒化ガリウム成長用下地基板。
- 開口部と被覆部が広い周期で規則的に繰り返す周期性大パターンは、幅が一定で一定間隔をおいて並ぶ平行な複数のストライプ状の被覆部とその間の開口部からなるものであることを特徴とする請求項15に記載の窒化ガリウム成長用下地基板。
- 開口部と被覆部が広い周期で規則的に繰り返す周期性大パターンは、二次元的に回転対称性をもって一定間隔をおいて並ぶ孤立した同等の多角形又は円状の被覆部とその間の開口部からなるものであることを特徴とする請求項15に記載の窒化ガリウム成長用下地基板。
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