窒化物系半導体を用いた発光デバイスは、青色LEDに関しては、すでに実用化がなされている。従来、窒化物系半導体を用いた発光デバイスは、ほとんどが基板としてサファイヤ(Al2O3)を用いていた。サファイヤ基板の上にGaN、GaInNの薄膜をエピ成長させていた。サファイヤはGaNの成長に適し、非常に安定な基板材料である。この点はサファイヤの優れた点である。
しかしサファイヤは非常に硬い材料である。しかもLDで共振器を作る時に好都合な劈開性がない。自然劈開しないから機械的にウエハを切断してチップに分割しなければならない。発光ダイオード製造工程ではダイシング工程でコスト高を招くという欠点がある。半導体レ−ザ製造においては劈開による反射面(共振器)を作製できないので品質面での問題およびコスト高を招いていた。
またサファイヤは、絶縁性の基板である。サファイヤを基板とするLEDは、通常のLEDのように、デバイスの上下で電極をとることができない。プロセス的にも、エッチングによってチップの一部を除き、下層部の面出しをして電極を設け、デバイスを作製する必要性がある。またエッチング後に、横方向に電流を流すための比較的厚い導電層を成長させる必要がある。これらの工程が工程数、工程時間を増加させコスト高を招いていた。さらに同一面に電極を2箇所形成する必要性があり大きいチップ面積を必要とする。この点からもコスト増を招いていた。
サファイヤ基板にはこのような難点があるので、GaN系発光素子の基板として、SiC基板利用の可能性が提案された。SiCは劈開性がある。自然劈開によってLEDのチップへの分割は容易になる。半導体レ−ザの共振器を自然劈開によって形成できる。また導電性があるからチップの上下に電極を配分できる。だからプロセス的により便利である。しかしながらSiC基板は極めて高価である。製造量も少なく供給に難点がある。それ以上にSiC基板には結晶品質に問題があって、GaN系半導体の基板としては最適でない。
サファイヤもそうなのであるが、SiCのような異質の基板を用いると、GaNと基板材料との間の格子定数のミスマッチが、エピタキシャル層中に転位などの欠陥を数多く導入するという問題がある。現に現在市販されているサファイヤ基板を用いたデバイスのGaNエピタキシャル層中には1×109cm−2程度の夥しい数の転位が存在すると言われている。
サファイヤに比べ多少転位密度が小さいながらも、SiC基板を用いる場合は、1×108cm−2程度以上の転位が存在すると言われている。大量の転位はLEDとしては実用化に大きな支障にはなっていない。が、電流密度が格段に大きい半導体レ−ザ(LD)の場合は、これらの欠陥が半導体レ−ザの長寿命化を阻害する原因になることが明らかになってきた。
これらの理由から、サファイヤ基板、SiC基板は青色発光素子(LED、LD)の基板としてなお最適でないことがわかる。
最も理想的な基板はGaN単結晶である。GaN単結晶基板が得られれば、結晶格子のミスマッチの問題は全くなくなる。しかもGaNは劈開性を有し、導電性も得られる。まことに好都合であるはずである。しかしながら結晶製造技術がなお熟していない。デバイス製造のための基板として使用できる実用的なサイズを持ったGaN単結晶基板を製造することが困難である。
平衡状態を保ちつつ超高圧下でGaN結晶の合成が可能だと言われている。しかし大きいGaN結晶を超高圧下で合成できない。だからこの方法では大型のGaN基板を作ることができない。商業ベースでのGaN基板供給はこの方法では実現できない。
上述の技術的な問題点を検討した結果、サファイヤ基板上で窓付きのマスク層を通してGaNを気相成長させ、転位欠陥を低減する方法が提案されている。(非特許文献1、非特許文献2)
さらに、本発明者は既にGaAs基板上で窓付きのマスク層を通してGaNを気相成長し、さらにGaN基板を得る方法を発明した。(特許文献1及び特許文献2)
これによれば比較的低い結晶欠陥密度の広い面積のGaN結晶を成長させることができる、と言う。これをエピタキシャルラテラルオーバーグロース(Epitaxial Lateral Overgrowth:ELO)と言う。ここでは単にラテラル成長法と言う。
具体的には、HVPEなどの気相合成法によりGaAs基板上にストライプ窓や円形窓を多数有するマスクを形成し、その上にGaNをラテラル成長させた後、GaAs基板を除去することによってGaN基板を得るという方法である。
図1によってHVPE法を説明する。縦長の炉1の内部上方にGaボート2が設けられる。これにはGa融液3が収容される。炉1の下方にはサセプタ4が昇降回転自在に設けられる。サセプタ4の上にGaAs基板5が戴置される。炉1の周囲にはヒ−タ6があって炉1を加熱する。炉1の上方にあるガス導入口7から水素ガスとHClガスの混合ガスが導入される。HClがGaと反応してGaClを合成しGaClがガス状となって下方へ流れる。ガス導入口8から水素ガスとNH3ガスの混合ガスが導入される。これはGaClと反応してGaNを合成しGaAs基板5の上に堆積する。排ガスはガス出口9から排除される。
ラテラル成長法について図2〜図4によって説明する。これは特許文献1、特許文献2に詳しく述べられている。GaAs(111)基板の上に窓付きマスクを形成し窓を通してGaNをエピ成長させる。図2は四角窓付きのマスクをGaAs基板上に形成したものの平面図である。GaAsウエハ(基板)10の表面の全体を薄いマスク11によって被覆する。マスク11の材料はGaNがその上に直接に成長しないような性質を持つものを使用する。マスク11には規則正しく窓12が開いている。窓は隣接する3つの窓が正三角形を形成するような位置に設ける。窓はある方向に間隔Lを置いて配列される。隣接する列との間隔は31/2L/2であり、隣接列の窓はL/2だけ列方向にずれている。これは四角窓であるが、丸窓を設ける場合もある。
図3はマスクにストライプ状窓を開けたものを示す。これも前例と同じでGaAs基板10の上にGaNが成長しないマスク11を被覆し、窓12を正三角形の頂点の位置に設けたものである。違うのは窓の形状である。これは長方形状の窓を開けてマスクとなっている。ストライプ窓と呼んでいる。
このようなマスクを付けてから前述のHVPE法などによってGaAsウエハ10の上にGaNを成長させる。図4はGaAs基板上のGaNの堆積の様子を示す。図4(1)はマスク11を設けたGaAs基板10の断面を示す。成長前の状態である。GaNを合成するとGaAsが露呈している窓の部分にのみ選択的にGaN層が成長する。マスクはGaNの成長を阻む作用がありその上に成長できない。図4(2)のようにマスク11の高さよりも高く成長すると角錐状のGaN隆起部13になってゆく。これは{11−22}面を持つ角錐である。
細線は貫通転位14を示す。層の成長とともに転位14は成長方向に延びて行く。転位が、積み重なってゆく層を貫通して延びて行くので貫通転位と言う。貫通転位14は上向きに延びる。結晶の方位は下地のGaAsによって決まるがマスク列方向が[10−10]に、マスク列と直交する方向が[1−210]方向である。成長の方向は[0001]でありこれはc軸成長である。
それ以上に層が厚くなるとマスクの上にはみ出てゆく。優先的に現れる傾斜面は{11−22}面である。基板面に平行でない明確な面指数を持った面であるからファセット面と言う。図4(3)に示す通りである。これはマスクの上に成長しているのでなくGaN隆起層13の横から水平にGaNが成長しているのである。この間では水平延長層15の高さはしばらく一定である。マスク11を越えて成長させるのでオーバーグロースという命名をしている。貫通転位14も横へ延びる。
窓から横方向へはみ出してマスク上を成長した部分において、貫通転位が非常に小さいということが非特許文献1、非特許文献2によって報告されている。通常c軸方向に成長する場合、転位もc軸方向に延びる。ところがマスク窓から垂直方向(c軸方向)に成長した後、横方向に成長するに当たり、転位の向きが垂直方向から水平方向へ転換され、特に横方向に成長した領域でC面(0001)に垂直な方向の貫通転位が減少することを非特許文献1、非特許文献2は主張している。
やがて窓と隣接窓の中点でGaN水平延長層15のファセット面16{11−22}面が衝突する。さらに横方向成長することによって隣接窓から発生した水平延長層が合体する。合体することによって{11−22}ファセット面16が消失する。合体した部分に転位の集積する面状欠陥部17ができる。ファセット面16が消えた後、C面(0001)面において、二次元的な成長が行われ鏡面状の成長が進行する。以後、GaN層18は上向きに成長する。細い貫通転位は再び上向きに延び始める。この貫通転位については後ほど再び説明する。
上向き(c軸方向)のエピタキシャル成長が進行し膜厚が140μm程度に増加すると面状欠陥部16が消滅するということも報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。
図5は同じGaN層成長を図示している。図5(1)は窓付きマスク11をGaAs基板(111)10に形成した状態である。GaNのエピタキシャル成長を長時間持続するとマスク11の高さを大きく越えてGaNインゴット18が成長してゆく。これが図5(2)で示した状態である。成長方向は[0001]方向であり上面は(0001)面つまりC面である。上面は平坦の部分もあるが多少の凹凸もあってよい。厚いGaNインゴット18が成長できると炉から取り外して、GaAs基板10、マスク11を除去する。インゴット18をC面(成長面)に平行にスライスしてC面を表面とする数多くのGaNウエハ(基板)を得る。さらにウエハを研削加工、研磨加工してミラーウエハ19とする。これらのウエハはC面を持つウエハである。劈開面はC面に直交するからチップ切断、LD共振器作製に有利である。
図5の手法はGaAs基板から直接にGaNウエハを作るものであるが別の方法もある。
特許文献3は図5の工程で製造したGaN基板19を種結晶としてHVPE法などでさらにGaN結晶を成長させてGaNインゴットを作製し、インゴットを薄く切ってGaN基板(ウエハ)を量産する方法である。これもC面の種結晶にc軸方向[0001]にGaNを結晶成長させて、インゴットを得て、(0001)面に平行に切断してC面のウエハを得るものである。
本発明者のこれらの新しい方法によって、GaN単結晶基板を商業ベースで製造することが初めて可能になった。
そのようにして作製したGaN基板にはなお問題があった。最大の問題は、基板表面に貫通転位が残るということであった。成長表面が、平面状で成長する場合、貫通転位は消えることなく結晶表面に垂直に延びていく。結晶層の成長とともに、貫通転位自身も垂直方向に成長するのである。その結果、成長表面には常に貫通転位が存在する。
通常のラテラルオーバーグロースでは、成長方向が横向きに変換される成長初期においては、マスク上の成長部分に貫通転位の少ない領域ができる(図4(4))。
それは結構なのであるが、そのまま低転位でない。さらに上向きに厚く数十μm以上の成長を行うと貫通転位は上向きに延長方向を転ずる。厚さ140μmでは面状欠陥部17が消滅する。つまり、集約された貫通転位が分散し数を増やすように働く。だからエピ層の厚さの増加とともに、転位が広がってゆく。表面は平坦な鏡面であるが、転位密度は増える。
積層部の厚みが数cmになると、通常1×107cm−2程度の大きい貫通転位密度を有する転位群が表面上に存在するようになる。転位の向きが横向きになって一旦減少した転位密度が縦方向成長になり膜厚が増えると転位が再び増えてゆく。そのような高い転位密度を持つGaN基板の上にエピタキシャル成長によってレ−ザを形成した場合、転位から劣化が進行し、長寿命化は困難である。
そこで本発明者はこのような成長様式を詳しく検討した。以降の記述において、通常のc軸方向エピ成長で現れる平坦な(0001)面、すなわちC面での二次元的成長と傾斜面を持つ成長を区別するため、C面以外のファセット面を端にファセット面と呼びC面は成長面と言う。図4(4)のように膜厚が6μm程度でマスク上でファセット面{11−22}面が合体する。ここで転位密度が減少する。合体して平坦成長面(C面)を鏡面に維持しつつ成長させる。最終の膜厚が0.2mm〜0.6mmのものを作製し、それぞれの試料について転位密度を測定した。
ラテラルオーバーグロースによって転位密度は減少したが、それでも1×107cm−2を越える値である。この原因は、マスク上の合体部(図4(4))で一旦集合して転位密度が減るが、膜厚の増大とともに、転位束がばらばらになって再び転位密度が増大するのだと考えられる。
二次元的な(鏡面を維持した)成長をするかぎり転位はc軸方向に伸び続ける。一旦発生した転位は消滅しない。二次元的な成長には転位消滅機構はないのである。そこで積極的に転位を消滅させる方法を開発する必要があった。本発明者は、転位の消滅機構を結晶中に設けたまま結晶成長させる方法が可能ではないか?と考えた。その結果次の発明を想到した。
特許文献4は、GaN基板において、低転位化をはかるために成長表面を平面状態(鏡面)ではなく、三次元的なファセット構造を作り、ファセット構造を埋め込まないで成長するようにしたものである。ファセットを埋め込まないで成長することにより、特にファセットによるピットを形成することによって、転位をピット部分に集中させ、全体を低転位化する巧妙な成長方法である。
この発明は、ファセット構造をGaN表面に持たせ、ファセット面を利用して、ラテラル成長により転位を移動させ、例えばピット底の芯部に転位を集める。それにより結晶内全体を、低転位化するものである。これはまことに巧みな方法であって転位を纏めて束にすることによって、みかけの転位密度を減少させている。転位自体が消滅するのでないが、集約されるので転位密度が著しく減少しているようにみえる。
しばらく従来技術の説明から離れる。
[結晶方位の指定]
GaNは六方晶系であり結晶方位の指定方法がやや難しい。本発明は六方晶系の方位に関する表現をいくつも使う。混乱があってはいけない。ここで結晶方位について簡単に説明する。六方晶系の場合120度をなす3つの軸のうち二つをa軸、b軸と呼び、これらの軸と直交する軸をc軸と言う。3つの軸は等価な軸であるから残りの軸をここでは例えばd軸と言うことにする。3つの面指数を用いる表現法と、4つの面指数を用いる表現法がある。ここでは4面指数による表現を用いる。a軸の長さをaとしc軸の長さをcとする。a/cの比は六方晶系でも物質によって異なる。
面指数の定義を述べる。原点に最も近い1枚目の結晶面が3つの等価な軸a、b,dをa/h、b/k、d/mで切り、c軸をc/nで切る場合に面指数を(hkmn)によって表現する。指数h、k、m、nは整数である。面指数を表現する場合括弧の中にカンマを打たない。 図6はabd平面での面指数の定義を示す。ここでは面はa軸、b軸を正の半直線上で切り、d軸を負の半直線上で切っている。この図でわかるように、h、k、mがすべて正、全て負ということはない。
丸括弧(・・・・)は個別の面の表現である。波括弧{・・・・}は集合面の表現である。六方晶系結晶の対称操作の全てによって相互に変換できる個別の面の全てを集合表現の面指数で表すことができる。角括弧[・・・・]は個別の方位を示す。鍵括弧<・・・・>は集合的な方位を表現する。同じ面指数を持つ面と方位は常に直交する。
{hkmn}と書いた場合、nは独特の方位(c軸方位)であるが、前の3つhkmは交換可能である。結晶に6回対称性があり、またある結晶によっては反転対称性があるものもある。h,k,mを循環的に交換した{hkmn}、{kmhn}、{mhkn}・・・・などは同じ面の集合を表現している。ところがnは独特で循環的に動かすともはや別の面方位である。h,k,mとnは別に考えることができる。
また3つの同一平面内の面指数h、k、mは本来2つの指数で表記できるものであって、完全に独立でない。常に総和が0であるという性質がある。
h+k+m=0 (1)
図7によって証明する。Oは原点、OB、ODはb軸、d軸に取った点でOB=ODとする。OHは−a軸とBDの交点である。∠OBH=∠ODH=30゜である。Hを通る直線とOB、ODの交点をE、Fとする。EHFが面を表現している。OE=Y、OF=Z、OH=−Xとする(−X>0)。∠DHF=θとする。∠OFH=30゜−θ、∠OEH=30゜+θ、∠OHF=90゜+θ、∠OHE=90゜−θ。正弦定理より
−X=Ysin∠OEH/sin∠OHE
=Ysin(30゜+θ)/sin(90゜−θ)
−X=Zsin∠OFH/sin∠OHF
=Zsin(30゜−θ)/sin(90゜+θ)
であるから、
−X/Y−X/Z=sin(30゜+θ)/sin(90゜−θ)
+sin(30゜−θ)/sin(90゜+θ)
={sin(30゜+θ)+sin(30゜−θ)}/cosθ
=2sin30゜=1
となり、
1/X+1/Y+1/Z=0
となる。X=a/h、Y=b/k、Z=d/mであるが長さに関して、a=b=dであるから、
h+k+m=0
である。
簡単のためc軸に平行な面(n=0)を考える。面{hkm0}の面間隔dは、
によって与えられる。h,k,mは二次元の指数であるが、あたかも三次元の指数のような形になる。但し係数(3/2)1/2が付く点が三次元の場合と相違する。
c軸に平行な二つの面(hkm0)、(stu0)がある場合それらの面の成す角(交角)Θの余弦cosΘは
によって計算することができる。つまりc軸に平行な二つの面(hkm0)、(stu0)があってそれらが互いに直交する場合、
hs+kt+mu=0 (4)
だということである。
法線がc軸に平行な面(000n)はC面と表現する。全ての整数で定義される(hkm0)面は、C面と直交する。C面と直交する面群(hkm0)の中で互いに直交する面は式(4)を満足する。面指数が負の整数の場合数字の上に上線を引いて負であることを表現するのが結晶学の習わしである。しかし明細書では上線を付けることができないから、前に−符号を付けて負整数であることを示す。
図8のように(1−100)面と、(11−20)面は直交する。この二つの面は本発明において重要な役割を持つ。{1−100}面は集合的にM面と言う。{11−20}面は集合的にA面と呼ばれる。M面といっても個別には6つの面がある。(1−100)、(10−10)、(01−10)、(−1100)、(−1010)、(0−110)である。これらの面は正六角形の6辺をなすように並ぶことができる。だから隣接するM面相互は120度の角度をなす。M面といっても平行(180度)なものもあり、120度の角度、60度の角度をなすものがある。M面だけで正六角形を形成できる。
同様に、A面{11−20}といっても6つの個別面があり、相互に平行(180度)、120度、60度の角度をなす。A面の集合だけで正六角形を作ることができる。
M面とA面の全てが直交するのではなくて、(1−100)面と(11−20)面のような特別の組のM面とA面が直交する。一般にはM面とA面の成す角度は30度、90度、150度、210度、270度、330度である。
つまり6つのA面と6つのM面によって正12角形を構成することができる。A面をc軸に対して傾けた面{11−2n}の集合は正六角錐を作ることができる。M面をc軸に対して傾けた面{1−10n}の集合は正六角錐を形成できる。A面とM面を傾けた{11−2n}、{1−10n}の集合は正12角錐を作ることができる。
本発明の手法は、HVPE法、MOCVD法、昇華法などの、GaNの気相合成法において適用することができる。しかし貫通転位が成長方向と平行に延びるという性質を巧みに利用するのが本発明の骨子であるから、気相合成法以外のGaN結晶成長法にも本発明を適用することができる。高圧溶融法によるGaNの合成においても適用可能で汎用性の高い技術思想である。
本発明の基本的概念は、GaN単結晶の成長に於ける結晶成長方向g或いは転位の延びる方向qと平行な面でスライス加工して基板を作製することとして、基板表面の貫通転位を低減する、ということである。
まず、結晶成長の方向と、転位の延びる方向との関係であるが、発明者らの研究の結果から、次のような関係がある事が明らかになった。
これはインゴット結晶から(0001)面、(1−100)面、(11−20)面を表面とする面方位を持った結晶サンプルを切り出し、それらを種結晶として、そのサンプル上にさらに成長を行い、特定面における結晶成長の状況を把握した。GaNは六方晶系であるから面指数が4つあり直観的に分かりにくいので、これらの面には名前が付いている。(0001)面はC面と言う。(1−100)面はM面と呼ぶ。(11−20)面はA面と言う。この明細書において面指数の代わりに、時にこれらの符号を使い関係を分かりやすくする。
その結晶成長方向と、転位の向きを透過型電子顕微鏡を使用して、確認した。その結果(0001)、(1−100)、(11−20)面のサンプルのそれぞれにおいて、結晶面に対して垂直に鏡面状の結晶成長がなされた。
結晶成長と平均的な転位の延びる向きとの関係は次のようであった。
(1)結晶成長方向:<0001>、転位延長方向:<0001> (C面)
(2)結晶成長方向:<1−100>、転位延長方向:<1−100> (M面)
(3)結晶成長方向:<11−20>、転位延長方向:<11−20> (A面)
上記の(1)、(2)、(3)のように、C面、M面、A面成長の場合、結晶内の転位の延びる方向(転位延長方向qと呼ぶ)は結晶成長方向gと平均的に大体同じ方向であった。
本発明はこの性質(g=q)を利用して基板の貫通転位の低減化を図る。ただし(11−20)面においては、成長条件によっては、ファセット面が出やすい傾向があったが、条件を適当に選ぶ事によって上記の結果が得られる。
しかしながら、その他の面方位への成長の場合、必ずしも結晶内の転位の向き(転位延長方向)は、結晶成長方向と同じにはならない。下記のようなものの存在が確認された。
(4)結晶成長方向:<1−101>R面方向、転位延長方向<1−100>
(5)結晶成長方向:<11−22>F面方向、転位延長方向<11−20>
これら(R面、F面方向成長の場合)は結晶成長方向と転位延長方向(g≠q)が食い違う。本発明はこれらの方位の成長は利用しないと言うのではない。そうではなくて、q≠gの場合は、qを優先して、転位延長方向と平行な切断面Sによってインゴットを切断して基板とするのである。本発明はそのようなq≠gの場合でも適用できる。要するに転位延長方向qが一義的に定義できればよい。これらの場合も多段成長が可能であるが、転位延長方向に平行に切るとM面とA面結晶に還元される。だから以後の説明のどこかへ合流することになる。だからこれら(4)、(5)の例については以後は述べない。
より実用的に言えば、本発明は、C、M、A面の3面の成長において、転位延長方向qと結晶成長方向gが一致するという性質を利用し転位が走る方向にインゴットを切断して貫通転位の少ない基板を得るということにある。
例えば前述の(1)、(2)、(3)の例の状況において、g方向(g=m、a、c)にGaNの結晶成長させインゴットを作製し、結晶成長方向g、すなわち、転位の延びる方向qに平行(S面)にインゴットを切り出してウエハ(S面=A、M、C)とする。これによって表面の貫通転位が減少したGaN基板を得る事ができる。それは1段階の成長である。
それ以外に本発明は多段階成長にも適用でき多段階成長において効果が大きい。成長方向gに平行に切り出した低転位の基板を種結晶として厚いGaNインゴットを成長させ成長方向と平行に切断して低転位化したGaN基板を得る。これを何段階も繰り返すと転位の継承を禁止して低転位化することができる。
本発明はかなり複雑であって実施例も数多く相互の関係を直観的に理解しにくい。理解を助けるために、ここで簡単な表記法を定義する。これによれば本発明の幾多の実施例の関連が分かりやすい。
薄い基板の場合、表面の面方位をアルファベット大文字で表現する。厚いインゴットを成長させる場合の結晶成長の方向をアルファベット小文字で表現する。つまり基板=大文字、インゴット=小文字によって表現する。例えば”Xx”というと、X面を持つ種結晶の上にx方向に厚く結晶成長するという工程、あるいはその工程でできたX面を成長面とするインゴットを意味する。
種結晶とその上のエピタキシャル成長の方位は必ず一致するから大文字とそれに続く小文字は合致しなければならない。Xy、Yz…のようなものは禁止される。
そしてスライス加工を”;”によって表現する。スライス加工の方向を;に続くアルファベット大文字によって表現する。たとえば”Xx;Y”というと、X面を持つ種結晶の上にx方向に厚くエピタキシャル成長して成長表面がX面であるインゴットを作り、これをY面方向にスライス加工してY面を持つ薄い基板(ウエハ)を作るという工程、あるいはそれでできた基板を簡潔に表現している。
これは積演算が可能である。
”Xx;Yy”というと、X面を持つ種結晶の上にx方向に厚くエピタキシャル成長して成長表面がX面であるインゴットを作り、これをY面平行にスライス加工してY面を持つ薄い基板(ウエハ)を得て、さらにY面基板を種結晶としてy方向にエピ成長して成長表面がY面であるインゴットを得るという工程、あるいはY面を持つインゴットを意味するものとする。
”Xx;Yy;Z”というと、X面を持つ種結晶の上にx方向に厚くエピタキシャル成長して成長表面がX面であるインゴットを作り、これをY面平行にスライス加工してY面を持つ薄い基板(ウエハ)を得て、さらにY面基板を種結晶としてy方向にエピ成長して成長表面がY面であるインゴットを得て、これをZ面平行にスライス加工してZ面を持つ基板(ウエハ)を作るという工程、あるいはその工程でできた基板を表現するものとする。
”Xx;Yy;Zz”というと、X面を持つ種結晶の上にx方向に厚くエピタキシャル成長して成長表面がX面であるインゴットを作り、これをY面平行にスライス加工してY面を持つ薄い基板(ウエハ)を得て、さらにY面基板を種結晶としてy方向にエピ成長して成長表面がY面であるインゴットを得て、これをZ面平行にスライス加工してZ面を持つ基板(ウエハ)を作り、これを種結晶としてz方向にエピタキシャル成長してZ面を成長表面に持つインゴットを作る工程、あるいはその工程でできたインゴットを表現するものとする。以下同様である。
この表記を使うと、C面種結晶の上にc方向に厚くエピ成長しC面平行にスライス加工して複数のC面の基板を作製する従来のGaN基板製造方法は、簡潔にCc;Cと表現することができる。スライス加工において、c;Cのように、;の前と後ろが同一だから貫通転位の低減効果がない。従来法=Cc;Cだというように記憶すれば本発明の相違点はすぐにわかるであろう。
本発明は結局のところスライス加工の;において前と後ろの方位が異なり、転位方向とスライス加工後の切断表面方向が同一になるから貫通転位低減の効果があるのである。そのために結晶成長方向と転位延長方向が合致しなければならないから方位は先述のC、M、Aに限られる。つまり本発明の骨子は簡単にいえば
x;Y (x≠y) (10)
という式に尽きる。これが本発明を端的に表現している。成長面(X)と切断面(Y)が違うということである。これによって貫通転位密度を減らしているのである。これに対して従来法はx;Xだということである。
以下、3つの面M、A、Cの相互の変換だけに話を限局する。大文字のM、A、Cは面方位、面、基板を意味する。小文字m、a、cは成長方向、インゴット(結晶)あるいはその方向の成長を意味するものとする。また図形によってこれら成長方向の変換を直感的に表現するようにする。
図13のように下向きの3種類の矢印によって成長方向を表現する。m=<1−100>を左下向きの矢印とする。a=<11−20>を右下向きの矢印とする。c=<0001>を下向きの矢印とする。矢印は成長の進行を示す。多段階成長の場合は下へ下へと成長方向を示す矢印が連続する。このような結晶成長の変換を示すものを結晶成長ダイヤグラムと呼ぶ。図14〜図18は本発明の主な結晶成長のダイヤグラムである。
一段階の成長と一回のスライス加工によって基板を作る場合、本発明は次の6つ(3×2)の場合に限られる。これを図14に示す。
(1)m;A (2)a;M
(3)a;C (4)m;C
(5)c;M (6)c;A (11)
転位低減効果は、;の前後のアルファベットが異なるということによって表現される。この6つは基本形である。つまり本発明によって否定されているのはc;C、a;A、m;Mの3つである。特に従来法はc;Cである。
例えば(1)Mm;AというのはM面種結晶{1−100}面を使ってm方向のエピ成長をしてM面を成長表面に持つインゴットを作り、A面({11−20}面)に平行にスライス加工し、A面を持つ基板を作ったということである。この6つの場合の中で特にCとM、CとAが製造の容易さから重要である。つまり製造の容易さからは次の4つが有望である。
(6) c;A (5)c;M、
(4) m;C (3)a;C (12)
この4つを以下において、CAタイプ(6)、CMタイプ(5)、MCタイプ(4)、ACタイプ(3)と呼ぶことがある。式(11)にはこの他に1段階成長としてMAタイプ(1)とAM(2)タイプが含まれる。この二つも興味深い組み合わせであるが、実際の成長工程では使いにくいから以後はあまり述べない。
一段階成長で6つの場合があるから、2段階成長だとそれに続く異なる2方位が可能なので6×2=12の異なる成長方法がある。例えば2段階成長の純粋形の12の場合を次に挙げる。これのダイヤグラムを図15に示す。
(7) c;Aa;M (8) c;Aa;C (9)c;Mm;A
(10)c;Mm;C (11)m;Cc;A (12)m;Cc;M
(13)m;Aa;C (14)m;Aa;M (15)a;Cc;M
(16)a;Cc;A (17)a;Mm;C (18)a;Mm;A
ただし種結晶とインゴット結晶の組み合わせは常にMm、Cc、Aaというように同一であるから、図面では単純にm、c、aと描く。これらは等しく2回の転位低減の効果がある。しかし実際に結晶成長する場合は、c軸方向に成長させることが多いので、このうち特に重要なのは
(7)c;Aa;M (8)c;Aa;C
(9)c;Mm;A (10)c;Mm;C (14)
である。最終のウエハとしてC面ウエハが要求される事が多いので、さらに重要なのは
(8)c;Aa;C (10)c;Mm;C (15)
の2つである。
3段階成長だと、6×2×2=24の異なる成長方法がある。これを図16に示す。
(19)c;Aa;Mm;C (20)c;Aa;Cc;M (21)c;Mm;Aa;C
(22)c;Mm;Cc;M (23)m;Cc;Aa;M (24)m;Cc;Mm;A
(25)m;Aa;Cc;A (26)m;Aa;Mm;C (27)a;Cc;Mm;A
(28)a;Cc;Aa;C (29)a;Mm;Cc;A (30)a;Mm;Aa;C
(31)c;Aa;Mm;A (32)c;Aa;Cc;A (33)c;Mm;Aa;M
(34)c;Mm;Cc;A (35)m;Cc;Aa;C (36)m;Cc;Mm;C
(37)m;Aa;Cc;M (38)m;Aa;Mm;A (39)a;Cc;Mm;C
(40)a;Cc;Aa;M (41)a;Mm;Cc;M (42)a;Mm;Aa;M
(16)
これらはスライス加工で必ず転位方向にスライス加工する純粋形の場合である。これだと2段階、3段階の貫通転位低減効果がある。
しかし、それだけではない。一度転位低減化すれば、その他の段においては転位低減しなくてもよいということも言える。その場合は何れかのスライス加工において;の前後が等しいアルファベット大小文字になるc;C、a;A、m;Mをも許すことになる。
そうであれば本発明は、2段階成長の場合3×3×3−3=24、3段成長の場合3×3×3×3−3=78の種類の製造方法、基板を含むことになる。2段階成長の場合の24の組み合わせというのは、式(13)の12の他に12組があるということである。
1段階目に転位低減効果があり2段階目は転位低減効果がないというようなものに限ると(これは結局1段階成長の場合に還元されるわけである。)次の6つになる。図17にこれを示す。
(43)c;Aa;A (44)c;Mm;M (45)m;Cc;C
(46)a;Cc;C (47)a;Mm;M (48)m;Aa;A
(17)
1段階目に転位低減効果がなく2段階目は転位低減効果があるというようなものに限ると、次の6つになる。図18にこれを示す。
(49)c;Cc;A (50)c;Cc;M (51)m;Mm;C
(52)a;Aa;C (53)a;Aa;M (54)m;Mm;A(18)
この場合も最初の成長の方向はc軸方向であることが多いので、その意味で重要なのは4つである。するとC面成長から出発するとすれば式(15)と合わせて
(8) c;Aa;C (10)c;Mm;C
(43)c;Aa;A (44)c;Mm;M
(49)c;Cc;A (50)c;Cc;M (19)
が重要だということになる。上の2つは2回の転位低減効果があり、下の4つは1回の転位低減効果がある。
クレーム自体かなり複雑である。簡単には相互の関係を理解できない。そこでクレームに挙げられたものがどれに当たるのかを「請・・・」と略記し理解を容易にしよう。後ろに付けたのはダイヤグラムに付した番号である。
1〜4=m;A(1) a;M(2) a;C(3) m;C(4) c;M(5) c;A(6)
5 = m;C(4) 請2,3
6 = a;C(3) 請4,5
7 = Mm;C(4)
8×7 = c;Mm;C(10) (58)
9×7 = m;Mm;C(51)
10 = Aa;C(3)
11×10= c;Aa;C(8)
12×10= a;Aa;C
13 = c;M(5) 請6,7
14 = Cc;M(5)
15×14=Aa;Cc;M(15) Mm;Cc;M(12)
16×14=Cc;Cc;M(50)
17 = c;A(6) 請8,9
18 = Cc;A(6)
19×18=Aa;Cc;A(16) Mm;Cc;A(11)
20×18=Cc;Cc;A(49)
21〜26=m;A(1) a;M(2) a;C(3) m;C(4)c;M(5) c;A(6)
27、28= m;C(4)
29、30= a;C(3)
31、32= c;M(5)
33、34= c;A(6)
37 = c;Aa;A(43)a;Mm;M(47)m;Cc;C(45)
c;Mm;M(44)m;Aa;A(48)a;Cc;C(46)
38 = c;Aa;A(43)a;Mm;M(47)m;Cc;C(45)
c;Mm;M(44)m;Aa;A(48)a;Cc;C(46)
39 = m;Cc;C(45)
40 = a;Cc;C(46)
41 = c;Mm;M(44)
本発明が提案する基板において、表面に平行に転位が走っている。だから表面に露呈している貫通転位の数が減少する。これはc;M、m;A、a;C、c;A、a;M、m;Cの6つの場合を意味している。
また転位の走る方向は主に定まった一方向であり、それによって貫通転位が少なくなるのである。これも同じことでc;M、m;A、a;C、c;A、a;M、m;Cの6つの組を意味している。
より具体的な本発明のGaN基板の方位の組み合わせについて述べよう。成長方向と切り出し面の方向によって4つのタイプ、イ、ロ、ハ、ニが可能である。
イ.{1−100}/{0001}のMCタイプ (m;CとMm;C)
結晶成長面が{1−100}面であり、結晶成長方向と平行な(0001)面でスライス加工した(0001)面を有する単結晶GaAs基板の製造方法。
その種結晶は{1−100}面を有する。GaN基板の表面は{0001}面で、貫通転位方向は{1−100}である。
ロ.{11−20}/{0001}のACタイプ(a;CとAa;C)
結晶成長面が{11−20}面であり、結晶成長方向と平行な(0001)面でスライス加工した(0001)面を有する単結晶GaAs基板の製造方法。
その種結晶は{11−20}面を有する。GaN基板の表面は{0001}面で、貫通転位方向は{11−20}である。
ハ.{0001}/{1−100}のCMタイプ (c;MとCc;M)
結晶成長面が{0001}面であり、結晶成長方向と平行な{1−100}面でスライス加工した{1−100}面を有する単結晶GaAs基板の製造方法。
その種結晶は{0001}面を有する。GaN基板の表面は{1−100}面で、貫通転位方向は{0001}である。
ニ.{0001}/{11−20}のCAタイプ (c;AとCc;A)
結晶成長面が{0001}面であり、結晶成長方向と平行な{11−20}面でスライス加工した{11−20}面を有する単結晶GaAs基板の製造方法。
その種結晶は{0001}面を有する。GaN基板の表面は{11−20}面で、貫通転位方向は{0001}である。
イ({1−100}/{0001})MCタイプの種結晶の作製方法(Mm)
GaN結晶を、{1−100}面方向(m)に結晶成長させる場合に必要な{1−100}面を有する種結晶(M)は次のようにして製造する。
イの1.(0001)面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と平行な{1−100}面で切り出すことによって製造できる。先ほどの表記法でc;Mである。
イの2.{1−100}面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と垂直に{1−100}面で切り出すことによって製造できる。先ほどの表記ではm;Mである。
イの1の種結晶の場合、ファセット面からなるピットの形成が見られる場合があるが、ピット底への転位集中が起きても、切り出した{1−100}面の貫通転位は高くないので問題はない。
貫通転位密度の小さな種結晶から成長した結晶は、転位密度が小さい。さらにその後、成長方向に平行(転位の延びる方向)に切り出した場合、さらに小さな貫通転位密度になることが期待できる。
ロ({11−20}/{0001})ACタイプの種結晶の作製方法(Aa)
GaN結晶を、{11−20}面方向(a)に結晶成長させる場合に必要な{11−20}面を有する種結晶(A)は次のようにして製造する。
ロの1.(0001)面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と平行な{11−20}面で切り出すことによって製造できる(c;A)。
ロの2.{11−20}面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と垂直に{11−20}面で切り出すことによって製造できる(a;A)。
ロの1の種結晶の場合、ファセット面からなるピットの形成が見られる場合があるが、ピット底への転位集中がおきても、切り出した{11−20}面の貫通転位は高くないので問題はない。
貫通転位密度の小さな種結晶から成長した結晶は、転位密度が小さい。さらにその後、成長方向に平行(転位の延びる方向)に切り出した場合、さらに小さな貫通転位密度になることが期待できる。
ハ({0001}/{1−100})CMタイプの種結晶の作製方法(Cc)
GaN結晶を、{0001}面方向(c)に結晶成長させる場合に必要な{0001}面を有する種結晶(C)は次のようにして製造する。
ハの1.{11−20}面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と平行な{0001}面で切り出すことによって製造できる(a;C)。
ハの2.{1−100}面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と平行な{0001}面で切り出すことによって製造できる(m;C)。
ハの3.{0001}面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と垂直に{0001}面で切り出すことによって製造できる(c;C)。
ハの1、ハの2の種結晶の製造方法自体(a;C、m;C)が本発明の技術思想の実施に他ならず、種結晶自体にも相当な低貫通転位密度が期待される。その上に本発明の思想によって、あるいは本発明の思想によらず、厚い結晶インゴットをエピタキシャル成長させる。
貫通転位密度の小さな種結晶から成長した結晶は、転位密度が小さい。さらにその後、成長方向に平行(転位の延びる方向)に切り出した場合、さらに小さな貫通転位密度になることが期待できる。
ニ.({0001}/{11−20})CAタイプの種結晶の作製方法(Cc)
GaN結晶を、{0001}面方向(c)に結晶成長させる場合に必要な{0001}面を有する種結晶(C)は次のようにして製造する。
ニの1.{11−20}面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と平行な{0001}面で切り出すことによって製造できる(a;C)。
ニの2.{1−100}面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と平行な{0001}面で切り出すことによって製造できる(m;C)。
ニの3.{0001}面を成長面として成長させたGaN結晶から、成長方向と垂直に{0001}面で切り出すことによって製造できる(c;C))。
ニの1、ニの2の種結晶の製造方法自体(a;C m;C)が本発明の技術思想の実施に他ならず、種結晶自体にも相当な低貫通転位密度が期待される。
貫通転位密度の小さな種結晶から成長した結晶は、転位密度が小さい。さらにその後、成長方向に平行(転位の延びる方向)に切り出した場合、さらに小さな貫通転位密度になることが期待できる。
こうして得られたGaN基板は次のような特徴を有する基板となる。
[イ.MCタイプ(m;C)(4)]
基板表面が{0001}面であり、基板内に主に<1−100>方向に転位が走って存在しており、これによって低転位化がなされた単結晶GaN基板。
[ロ.ACタイプ(a;C)(3)]
基板表面が{0001}面であり、基板内に主に<11−20>方向に転位が走って存在しており、これによって低転位化がなされた単結晶GaN基板。
[ハ.CMタイプ(c;M)(5)]
基板表面が{1−100}面であり、基板内に主に<0001>方向に転位が走って存在しており、これによって低転位化がなされた単結晶GaN基板。
[ニ.CAタイプ(c;A)(6)]
基板表面が{11−20}面であり、基板内に主に<0001>方向に転位が走って存在しており、これによって低転位化がなされた単結晶GaN基板。
これらの発明によるGaN基板表面での貫通転位を測定した。貫通転位密度が1×106cm−2以下であることを確認した。
なお、これらの発明は、表面の貫通転位を低減したGaN結晶を種結晶に用いて、GaN結晶を製造するときにも適用することができる。
つまり種結晶自体を製造するのに本発明を用い、種結晶から大きい単結晶を作る場合にも本発明を重ねて適用するということが可能である。2段階成長をすると言っているのである。二重に本発明の転位低減機構を用いる。だから2重に貫通転位を減らすことができる。前記の表現では、
c;Aa;C c;Mm;C c;Aa;M c;Mm;A
m;Aa;C m;Aa;M m;Cc;A m;Cc;M
a;Cc;M a;Cc;A a;Mm;C a;Mm;A
の12種類の場合がある。これらはいずれも同じ効果がある。しかし実際にはGaAsなど異物質を基板に使ってc軸方向に最初の成長を行う事が多い。するとこの12の中でも実際に重要なのは、
c;Mm;C c;Mm;A c;Aa;C c;Aa;M
の4種類である。しかも出来上がった基板自体にもC面を持つ基板が要求されることが多い。その場合には、さらに絞られて、2段階転位減少機構を持つ場合は
c;Mm;C c;Aa;C
の2種類に絞られるのである。
しかし2重の成長において1回だけ本発明の思想を適用するということも可能である。結晶成長方向と平行な面でスライス加工することにより、スライス加工面で基板表面を貫通する貫通転位を低減したGaN単結晶を種結晶として、或いは基板内部において基板表面に平行に主に一方向の転位が走って存在する単結晶GaN基板を種結晶として用い、その種結晶上の成長において、成長方向と垂直な面でスライス加工することによって、低転位のGaN基板が得られる。本発明の思想からすると中途半端であるが、1回の低転位化で十分な場合もある。前記の表現では、
c;Aa;A c;Mm;M
m;Aa;A m;Cc;C
a;Cc;C a;Mm;M
の6種類である。
これは本発明によって既に低転位になっている結晶を種結晶として利用して、その種結晶上に成長させて製造した結晶を成長方向と垂直な面でスライス加工することによって低転位の基板を製造することができる。最終のスライス加工時においては、貫通転位が表面に垂直に走り、必ずしも好ましくないが、種結晶での貫通転位が低減しているから、比較的低転位のGaN基板を得る事ができるのである。
具体的には、結晶成長面が{1−100}であり、結晶成長方向と平行な(0001)面でスライス加工した単結晶や、結晶成長面が{11−20}面であり、結晶成長方向と平行な(0001)面でスライス加工した単結晶を種結晶として利用する。これら(0001)面を持つ種結晶を使って<0001>方向に結晶成長させ({0001}面を成長面として)成長させ、その成長方向と垂直な{0001}面でスライス加工することによって、比較的低転位のGaN結晶を得ることができる。
また、結晶成長面が(0001)面であり、その結晶成長方向と平行な{1−100}面でスライス加工した単結晶を種結晶として、その上に{1−100}面を成長面として、GaN単結晶を成長させ、成長方向と垂直な{1−100}面でスライス加工することによって比較的低転位のGaN結晶を得る事ができる。
本発明の結晶成長方法は、気相成長法を利用できる。例えば、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)、 MOCVD法 (Metallorganic Chemical Vapor Deposition)、有機金属塩化物気相成長法(Metallorganic Chloride Vapor Phase Epitaxy)、昇華法(Sublimation method)がGaN成長に適している。本発明は気相成長法を基本とするが、必ずしも気相成長法に限定されるものではない。超高圧化で合成する超高圧合成法を適用して本発明のGaN結晶を作製することもできる。
気相成長法のうちでも、最も簡便であって、成長速度が速いと考えられるHVPE法による場合について本発明の実施例を幾つか述べる。成長方法はMOCVD法でも昇華法でも有機金属塩化物気相成長法でもよい。いずれにも適用できる。
HVPE法というのは、ホットウオール型の炉内において、上流部でGaメタルと、HClガスを反応させ、GaClガスを合成し、基板付近において新たに流されたNH3ガスとGaClガスとの反応により、基板上にGaNを成長させる方法である。
実施例は5つあるが、よく似ており違いが分かりにくく関係が複雑である。予め前記の表記法で実施例を分類しておこう。図19〜図23に実施例1〜5の場合のダイヤグラムを示す。
実施例1 (55)c;A(6) (56)c;M(5) (57)c;C
実施例2 (58)c;Mm;C(10) (59)c;Mm;M (68)c;Mm;A(69)c;Mm;Aa;C
実施例3 (60)c;Aa;C(8) (61)c;Aa;A(70)c;Aa;M(71)c;Aa;Mm;C
実施例4 (62)c;Mm;Cc;M (63)c;Mm;Cc;A
(64)c;Mm;Cc;C
実施例5 (65)c;Aa;Cc;A (66)c;Aa;Cc;M
(67)c;Aa;Cc;C
実施例1で種結晶AとMとCを作る。実施例2は実施例1の種結晶Mからインゴットmを成長させ基板C、Mを切り出す。実施例3は実施例1の種結晶Aからインゴットaを成長させ基板C、Aを切り出す。実施例4は実施例2の基板Cからインゴットcを作り基板C、M、Aを切り出す。実施例5は実施例3の基板Cからインゴットcを作り基板C、M、Aを切り出す。
[実施例1:種結晶の作製(c;A、 c;M、 c;C)]
まずは、GaAs基板からGaNをc軸方向に成長させて、A面、M面、C面を持つGaN種結晶を作製する。
(イ)基板
結晶成長を始めるべき基板として、GaAs基板を用いる。GaAs基板を用いてGaNを成長させる場合、GaNが六方晶系でGaAsが立方晶系であるから対称性をあわせるために、GaAsの(111)面を持つ基板を用いることにする。
(ロ)SiO2マスク
GaAs(111)基板の全面に、プラズマCVD法によって、0.1μm厚みのSiO2膜をマスクとして形成した。その後、フォトリソグラフィによってマスクに窓を明けた。
(ハ)窓の形成
マスク窓はストライプ型や、ドット型など様々の形状が可能である。ここではドット状の窓を形成した。ドット型窓は直径2μm程度の寸法で、GaAs基板の<11−2>方向に4μmピッチで複数個1列に配置し、このドット列から<1−10>方向に3.5μm離れた部位にやはり<11−2>方向に4μmピッチでドット窓を複数個1列に配置した。ただし隣接行でドット列を列方向に2μmずらしている。つまり任意の最近接の3つのドット窓が1辺4μmの正三角形を構成するような二次元的な広がりを持つ窓配置としたのである。マスクはこのような窓を繰り返し設けたものである(図2)。
(ニ)HVPE装置
その後、マスクを形成したGaAs基板状にHVPE法(図1)によってGaNの成長を行った。常圧の反応炉の内部にGaメタルのボートが設けられる。Gaメタルは溶融状態にある。その下方のサンプルの上に(111)GaAs基板が置かれている。キャリヤガスはすべて水素ガスH2とする。使用するガスはHClガス(H2+HCl)と、NH3ガス(H2+NH3)である。
800℃以上に加熱されたGaメタルボートにHClガスを流す。HClガスとGaが反応して、GaClガスが合成される。このガスが加熱された基板近くに流れると基板付近に流されているNH3ガスと反応して、GaNとなりGaAs基板上にGaNの層を形成する。
このHVPE装置は長時間の成長が可能な装置になっている。GaN膜の成長速度は遅く、しかもかなり厚いGaN結晶を成長させる必要があるからである。
(ホ)GaNバッファ層形成
次の条件で80nmのGaNバッファ層を形成した。
成長温度 約500℃(約773K)
NH3ガス分圧 0.2atm (20kPa)
HClガス分圧 2×10−3atm(0.2kPa)
成長時間 30分
膜厚 80nm
この段階では、マスク窓のGaAs基板表面にGaNバッファ層が成長する(マスク厚みは100nmで、バッファ層厚みは80nm)。バッファ層は低温で成長させGaAsとGaNの格子定数の不整合を調整する作用がある。
(ヘ)GaNエピタキシャル層の形成
さらにその上へ高温でGaNエピ層を成長させる。条件は次のとおりである。
成長温度 1020℃(1293K)
NH3ガス分圧 0.3atm (30kPa)
HClガス分圧 2×10−2atm(2kPa)
成長時間 約180時間
膜厚 3cm
こうして高さが約3cmのGaNインゴットを成長させることができた。このGaNインゴットの成長方向はc軸方向であり、成長面はC面(0001)面である。長く延びたインゴットは小文字のアルファベットで表現することにする。これはC面を持つインゴットでGaAsからヘテロエピタキシャル成長した第1世代のインゴットであるから、”c1”というように表記できる。
成長面を顕微鏡で観察すると、{11−22}面、{1−102}面などからなる逆六角錐、逆十二角錐からなるファセットからなる成長ピットが形成されており、その成長ピットの底には、成長面と垂直方向に転位の集合した束が存在しているという事が分かった。
つまり、この結晶中には、成長方向であるc軸方向[0001]に転位が延びているということを確認した。
(ト)種結晶の作製(c1→M1、A1、C1)
3cmもの厚みを持つので、この(0001)成長面を持つこのインゴットから様々の方位を持つ種結晶を切り出すことができる。ここでは次の3種類の面方位を持つ種結晶を切り出した。
(1)主面を{1−100}とする種結晶(M1とする) (56)
(2)主面を{11−20}面とする種結晶(A1とする)(55)
(3)主面を{0001}面とする種結晶(C1とする) (57)
GaNインゴットは(0001)面を表面にしているから、表面と平行に切り出す従来法であるとC1基板を切り出すだけであった。ところが本発明はそのような常識を覆して表面に直角に切り出し、M1とA1のような基板をも作製している。前述の表記法ではc;Mとc;Aに当たる。
これらの種結晶はGaAs基板を元にしてエピタキシャル成長して作った第1世代のものであるから、”1”というサフィックスを付ける。これらの種結晶M1、A1、C1の評価を行った。
(チ)種結晶の評価
[種結晶C1の評価(c;C)]
主面を{0001}面とする種結晶C1については、貫通転位の存在をEPD(Etch Pit Density)によって評価した。ただし、本来の転位と測定されたピットとの関係は充分に明らかにはなっていない。エッチピットを表面に出すためにウエットエッチングを行った。エッチャントは燐酸と硫酸の混酸である。種結晶を温度250℃でエッチングすると表面にピットが現れる。
顕微鏡で観察すると、転位の集合束の部分で大きなピットが発生していることがわかった。それ以外の部分ではエッチピット密度は相当に低いということが分かった。
カソードルミネッセンス(CL)によって結晶を評価すると、転位の束のある位置とこのエッチングによって現れたピットの位置が完全に一致するという事が分かった。
検出されたピットは、転位の束に相当する直径10μm〜20μm径の相当に大きなピットから、1μm程度の直径の小さなピットも見られた。
このように貫通転位の存在に分布があるため、貫通転位密度としては、1つの数値によって表現する事は困難である。
しかし、これらのピットを大小の規模を無視して数えてエッチピットを求めると5×105cm−2の程度であった。従来のGaN結晶の転位密度は107cm−2以上であったから、それに比較して極めてEPDが少なくなっているということが確認された。
[種結晶M1の評価(c;M)]
主面を{1−100}面とする種結晶M1についても同様の方法でEPDを測定した。これもかなりピットが低減しているということがわかった。
ただし種結晶M1には、[0001]方向にピット列が存在しているということが確認された。そのピット列は1列でなく、かなり密集した複数の列からなる。反面ピット列とピット列の間にはピットの全く存在しない領域が見られた。ピットの存在しない領域の幅は場所によって異なるが、平均200μm程度であった。
[種結晶A1の評価(c;A)]
主面を{11−20}面とする種結晶A1についても同様の方法でEPDを測定した。これもかなりピットが低減しているということがわかった。
ただし種結晶A1には、[0001]方向にピット列が存在しているということが確認された。そのピット列は1列でなく、かなり密集した複数の列からなる。反面ピット列とピット列の間にはピットの全く存在しない領域が見られた。ピットの存在しない領域の幅は、場所によって異なるが、平均200μm程度であった。
これらの種結晶C1、A1、M1の内、A1とM1を種結晶として用いて次にGaNインゴットを作製する。そうするとインゴットを切断することによって多数の基板を製造することができる。
実施例2は種結晶M1を、実施例3は種結晶A1を出発原料としてGaNインゴットを作製するようにしたものである。
種結晶C1を出発原料とする場合は本発明のカテゴリに含まれない。だからこの種結晶C1を原料とするものについてはここでは述べない。しかし種結晶Cが全て否定されるではない。後で説明するが本発明の手法によって一旦貫通転位を低減した種結晶Cは出発原料とすることができるのである。
[実施例2;GaNインゴットm2の作製(種結晶M1を使って:c;Mm)]
実施例1で作った主面を{1−100}面とするGaN種結晶M1を用いて下記のようなGaNインゴット(m2)を作製した。このインゴットはGaN成長としては2世代になるから”2”というサフィックスを付した。先述の表記法ではc;Mmという成長である。
実施例1の種結晶製造のためのインゴットの成長と同じHVPE炉を用いて結晶成長を行った。キャリヤガスは全てH2ガスである。用いるガスはNH3ガス(NH3+H2)、HClガス(H2+HCl)である。成長条件は
成長温度 1020℃(1293K)
NH3ガス分圧 0.3atm (30kPa)
HClガス分圧 2×10−2atm(2kPa)
成長時間 約180時間
膜厚 2.5cm
であった。成長方向は種結晶の主面{1−100}面(M面)に垂直な<1−100>方向(m方向という)である。よって最終的な成長表面は{1−100}面であった。表面状態は鏡面であった。インゴットm2の高さは約2.5cmであった。
(a)(C面を持つ)Cm2基板の作製(c;Mm;C)(58)
このインゴットm2を内周刃スライサーにより、成長方向<1−100>に平行かつ(0001)面に平行の方向にスライスして基板を切り出した。つまり貫通転位と平行にスライス加工したのである。
前述の表記法に従えば、これはc;Mm;Cということである。種結晶M1から作られた第2世代の基板であるから履歴を含ませてこれをCm2基板と書くことにする。こうして{0001}面(C面)を表面に持つGaN単結晶基板25枚を切り出すことができた。
それらのGaN基板(Cm2)は厚さ0.7mmで、25mm×30mm程度の1インチサイズの基板であった。その後、これらの基板を研磨加工した。その結果表面に加工変質層を持たない、半導体基板として使用可能な基板が得られた。
Cm2基板について評価を実施した。基板Cm2の基板面(0001)Ga面をカソードルミネッセンスにより評価した。種結晶M1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面に見られたような転位の集合はいっさい見られず表面の状態は改善されている事が分かった。EPDを測定することによって同じ基板を評価した。初めの種結晶(C面)とは違って、10μm〜20μm径の大きいピットは全く観察されなかった。ピットは全て直径が1μm以下の小さなピットであった。しかもEPDは1×104cm−2程度であって非常な低転位密度であった。
この基板Cm2をTEM(透過型顕微鏡)により観察した。その結果これらの基板Cm2においては、(0001)面上には殆ど貫通転位が存在しないという事が分かった。転位の数は少ないがそれらの転位は、基板面である(0001)面と平行である<1−100>方向(m方向)に主に走っているという事が判明した。インゴットの成長方向がm方向であり貫通転位の延長方向がこれに一致しているのである。貫通転位が基板表面に平行に走るので、基板表面における貫通転位は著しく低減している。
すなわち、Cm2は基板表面である(0001)面(C面)に平行(m方向)に転位が走って存在する事によって、基板表面の貫通転位を低減した基板であると言える。また、この転位の走る方向(m方向)は、GaN結晶の成長方向(m方向)であり、この基板Cm2は結晶成長の成長方向(m方向)と平行な面でスライスした基板と言える。
(b)(M面を持つ)Mm2基板の作製(c;Mm;M)(59)
また種結晶M1を使用してm方向に成長させたGaNインゴットm2を、{1−100}面でスライス加工して同じ基板を多数作製した。これは初めから書くと、c;Mm;Mである。GaNの成長を2回繰り返しており、M基板を種結晶としているからこれはMm2と書く事ができる。このMm2基板が充分に低転位であることを確かめた。
(c)(A面を持つ)Am2基板の作製(c;Mm;A)(68)
また種結晶M1を使用してm方向に成長させたGaNインゴットm2を、{11−20}面でスライス加工して同じ基板を多数作製した。これは初めから書くと、c;Mm;Aである。GaNの成長を2回繰り返しており、M基板を種結晶としているからこれはAm2と書く事ができる。このAm2基板が充分に低転位であることを確かめた。
(d)(C面を持つ)Ca3基板の作製(c;Mm;Aa;C)(69)
2回の成長によって作製した(c)の基板Am2を種結晶として、さらに<11−20>方向(a方向)へGaN単結晶を成長させてGaNインゴットa3を複数個作製した。さらにこれを(0001)面でスライス加工してC面を持つ多数の(0001)GaN基板Ca3を作った。これはA基板を元にして作ったC基板であり3回の成長で作ったものだからCa3と書ける。これは初めから書くとc;Mm;Aa;Cということになる。このCa3基板は充分に低転位であることを確かめた。
[実施例3;GaNインゴットa2の作製(種結晶A1を使って:c;Aa)]
実施例1で作った主面を{11−20}面とするGaN種結晶A1を用いて下記のようなGaNインゴット(a2)を作製した。このインゴットはGaN成長としては2世代になるから”2”というサフィックスを付した。先述の表記法ではc;Aaという成長である。
実施例1の種結晶製造のためのインゴットの成長と同じHVPE炉を用いて結晶成長を行った。キャリヤガスは全てH2ガスである。用いるガスはNH3ガス(NH3+H2)、HClガス(H2+HCl)である。成長条件は
成長温度 1020℃(1293K)
NH3ガス分圧 0.3atm (30kPa)
HClガス分圧 2×10−2atm(2kPa)
成長時間 約180時間
膜厚 2.5cm
であった。成長方向は種結晶の主面{11−20}面(A面)に垂直な<11−20>方向(a方向という)である。よって最終的な成長表面は{11−20}面であった。表面状態は、鏡面の部分もあるが、{1−100}面からなるファセットも有する面であった。インゴットa2の高さは約2.5cmであった。
(a)(C面を持つ)Ca2基板の作製(c;Aa;C)(60)
このインゴットa2を内周刃スライサーにより、成長方向<11−20>(a方向)に平行かつ(0001)面に平行の方向にスライスしてC面を持つ基板を切り出した。つまり貫通転位と平行にスライス加工したのである。
前述の表記法に従えば、これはc;Aa;Cということである。種結晶A1から作られた第2世代の基板であるから履歴を含ませてこれをCa2基板と書くことにする。こうして{0001}面(C面)を表面に持つGaN単結晶基板25枚を切り出すことができた。
それらのGaN基板(Ca2)は厚さ0.7mmで、25mm×30mm程度の1インチサイズの基板であった。その後、これらの基板を研磨加工した。その結果表面に加工変質層を持たない、半導体基板として使用可能な基板Ca2が得られた。
Ca2基板について評価を実施した。基板Ca2の基板面(0001)Ga面をカソードルミネッセンスにより評価した。種結晶A1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面に見られたような転位の集合はいっさい見られず表面の状態は改善されている事が分かった。
EPDを測定することによって同じ基板を評価した。当初のGaN結晶c1の(0001)面(C面)とは違って、10μm〜20μm径の大きいピットは全く観察されなかった。ピットは全て直径が1μm以下の小さなピットであった。しかもEPDは4×104cm−2程度であって非常な低転位密度であった。
この基板Ca2をTEM(透過型顕微鏡)により観察した。その結果これらの基板Ca2においては、(0001)面上には殆ど貫通転位が存在しないという事が分かった。転位の数は少ないがそれらの転位は、基板面である(0001)面と平行である<11−20>方向(a方向)に主に走っているという事が判明した。インゴットの成長方向がa方向であり貫通転位の延長方向がこれに一致しているのである。貫通転位が基板表面に平行に走るので、基板表面における貫通転位は著しく低減している。
すなわち、Ca2は基板表面である(0001)面(C面)に平行(a方向)に転位が走って存在する事によって、基板表面の貫通転位を低減した基板であると言える。また、この転位の走る方向(a方向)は、GaN結晶の成長方向(a方向)であり、この基板は結晶成長の成長方向(a方向)と平行な面でスライスした(0001)基板と言える。
(b)(A面を持つ)Aa2基板の作製(c;Aa;A)(61)
また種結晶A1を使用してa方向に成長させたGaNインゴットa2を、{11−20}面でスライス加工して同じ基板を多数作製した。これは初めから書くと、c;Aa;Aである。GaNの成長を2回繰り返しており、A基板を種結晶としているからこれはAa2と書く事ができる。このAa2基板が充分に低転位であることを確かめた。
(c)(M面を持つ)Ma2基板の作製(c;Aa;M) (70)
また種結晶A1を使用してa方向に成長させたGaNインゴットa2を、{1−100}面でスライス加工して同じ基板を多数作製した。これは初めから書くと、c;Aa;Mである。
GaNの成長を2回繰り返しており、A基板を種結晶としているからこれはMa2と書く事ができる。このMa2基板が充分に低転位であることを確かめた。
(d)(C面を持つ)Cm3基板の作製(c;Aa;Mm;C) (71)
2回の成長によって作製した基板Ma2を種結晶として、さらに<1−100>方向(m方向)へGaN単結晶を成長させてGaNインゴットm3を複数個作製した。さらにこれを(0001)面でスライス加工してC面を持つ多数の(0001)GaN基板Cm3を作った。これはM基板を元にして作ったC基板であり3回の成長で作ったものだからCm3と書ける。これは初めから書くとc;Aa;Mm;Cということになる。このCm3基板は充分に低転位であることを確かめた。
[実施例4;GaNインゴットc3の作製(種結晶C2を使って:c;Mm;Cc)]
実施例2(a)で作った主面を(0001)面とするGaN種結晶Cm2を用いて<0001>方向(c方向)に成長させ下記のようなGaNインゴット(c3)を作製した。このインゴットはGaN成長としては3世代になるから”3”というサフィックスを付した。先述の表記法ではc;Mm;Ccという成長である。
実施例1の種結晶製造のためのインゴットの成長と同じHVPE炉を用いて結晶成長を行った。キャリヤガスは全てH2ガスである。用いるガスはNH3ガス(NH3+H2)、HClガス(H2+HCl)である。成長条件は
成長温度 1020℃(1293K)
NH3ガス分圧 0.3atm (30kPa)
HClガス分圧 2×10−2atm(2kPa)
成長時間 約180時間
膜厚 3cm
であった。成長方向は種結晶の主面(0001)面(C面)に垂直な<0001>方向(c方向)である。最終的な成長表面は(0001)面であった。表面状態はやや成長ピットが存在する鏡面である。インゴットc3の高さは約3cmであった。
(a)(C面を持つ)Cc3基板の作製(c;Mm;Cc;C)(64)
このインゴットc3を内周刃スライサーにより、成長方向(0001)面に垂直の方向にスライスして基板(C基板)を30枚切り出した。つまり貫通転位を横切る方向にスライス加工したのである。
前述の表記法に従えば、これはc;Mm;Cc;Cということである。種結晶C2から作られた第3世代の基板であるから履歴を含ませてこれをCc3基板と書くことにする。こうして{0001}面(C面)を表面に持つGaN(Cc3)単結晶基板30枚を切り出すことができた。
それらのGaN基板(Cc3)は厚さ0.7mmで、30mm×30mm程度の1インチサイズの基板であった。その後、これらの基板を研磨加工した。その結果表面に加工変質層を持たない、半導体基板として使用可能な基板が得られた。
Cc3基板について評価を実施した。基板Cc3の基板面(0001)Ga面をカソードルミネッセンスにより評価した。種結晶M1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面に見られたような転位の集合はいっさい見られず表面の状態は改善されている事が分かった。
EPDを測定することによって同じ基板を評価した。初めの種結晶M1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面(C面)とは違って、10μm〜20μm径の大きいピットは全く観察されなかった。ピットは全て直径が1μm以下の小さなピットであった。しかもEPDは1×104cm−2程度であって非常な低転位密度であった。
この基板Cc3をTEM(透過型顕微鏡)により観察した。その結果これらの基板Cc3においては、(0001)面上には殆ど貫通転位が存在しないという事が分かった。転位の数は少ないがそれらの転位は、基板面である(0001)面と平行である<1−100>方向(m方向)<11−20>方向(a方向)にも殆ど貫通転位が走っていないという事が判明した。
低転位の理由は次のように考えられる。基板表面に貫通転位が走っている低転位のC面基板Cm2(c;Mm;C)を種結晶としてc方向<0001>方向に成長させ低貫通転位の状態を<0001>方向に転写した構造のインゴットc3(c;Mm;Cc)からC面でスライス加工した基板Cc3(c;Mm;Cc;C)だからである。よって、基板Cc3には、表面の貫通転位密度は低く、表面平行に走る転位も少ない。理想的な基板である。
(b)(M面を持つ)Mc3基板の作製(c;Mm;Cc;M)(62)
このインゴットc3を内周刃スライサーにより、成長方向<0001>に平行な{1−100}面に平行にスライス加工して{1−100}面を持つ30枚の基板Mを切り出した。つまり貫通転位に平行にスライス加工したのである。これは本発明の思想にそう切り方である。
前述の表記法に従えば、これはc;Mm;Cc;Mということである。種結晶C2から作られた第3世代の基板であるから履歴を含ませてこれをMc3基板と書くことにする。こうして{1−100}面(M面)を表面に持つGaN単結晶基板30枚を切り出すことができた。
それらのGaN基板(Mc3)は厚さ0.7mmで、30mm×25mm程度の1インチサイズの基板であった。その後、これらの基板を研磨加工した。その結果表面に加工変質層を持たない、半導体基板として使用可能な基板Mc3が得られた。
Mc3基板について評価を実施した。基板Mc3の基板面{1−100}面をカソードルミネッセンス(CL)により評価した。種結晶M1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面に見られたような転位の集合はいっさい見られず表面の状態は改善されている事が分かった。
EPDを測定することによって同じ基板Mc3の{1−100}面を評価した。初めの種結晶M1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面(C面)とは違って、10μm〜20μm径の大きいピットは全く観察されなかった。ピットは全て直径が1μm以下の小さなピットであった。しかもEPDは8×103cm−2程度であって非常な低転位密度であった。
この基板Mc3の{1−100}面をTEM(透過型顕微鏡)により観察した。その結果これらの基板Mc3においては、{1−100}面上には殆ど貫通転位が存在しないという事が分かった。転位の数は少なく、少ない転位は基板面{1−100}に平行に走っていることが判明した。このために表面の低密度は大きく低減している。
低転位の理由は次のように考えられる。基板表面に貫通転位が走っている低転位のC面基板Cm2(c;Mm;C)を種結晶としてc方向<0001>方向に成長させ低貫通転位の状態を<0001>方向に転写した構造のインゴットc3(c;Mm;Cc)から成長方向と平行なM面でスライス加工した基板Mc3(c;Mm;Cc;M)だからである。よって、基板Mc3には、表面の貫通転位密度は低く、表面平行に走る転位も少ない。理想的な基板である。
(c)(A面を持つ)Ac3基板の作製(c;Mm;Cc;A)(63)
このインゴットc3を内周刃スライサーにより、成長方向<0001>に平行な{11−20}面に平行にスライス加工して{11−20}面を持つ30枚の基板Aを切り出した。つまり貫通転位に平行にスライス加工したのである。これは本発明の思想にそう切り方である。
前述の表記法に従えば、これはc;Mm;Cc;Aということである。種結晶C2から作られた第3世代の基板であるから履歴を含ませてこれをAc3基板と書くことにする。こうして{11−20}面(A面)を表面に持つGaN単結晶基板30枚を切り出すことができた。
それらのGaN基板(Ac3)は厚さ0.7mmで、30mm×25mm程度の1インチサイズの基板であった。その後、これらの基板を研磨加工した。その結果表面に加工変質層を持たない、半導体基板として使用可能な基板Ac3が得られた。
Ac3基板について評価を実施した。基板Ac3の基板面{11−20}面をカソードルミネッセンス(CL)により評価した。種結晶M1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面に見られたような転位の集合はいっさい見られず表面の状態は改善されている事が分かった。
EPDを測定することによって同じ基板Ac3の{11−20}面を評価した。初めの種結晶M1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面(C面)とは違って、10μm〜20μm径の大きいピットは全く観察されなかった。ピットは全て直径が1μm以下の小さなピットであった。しかもEPDは1×104cm−2程度であって非常な低転位密度であった。
この基板Ac3の{11−20}面をTEM(透過型顕微鏡)により観察した。その結果これらの基板Ac3においては、{11−20}面上には殆ど貫通転位が存在しないという事が分かった。転位の数は少なく、少ない転位は基板面{11−20}に平行に走っていることが判明した。このために表面の低密度は大きく低減している。
低転位の理由は次のように考えられる。基板表面に貫通転位が走っている低転位のC面基板Cm2(c;Mm;C)を種結晶としてc方向<0001>方向に成長させ低貫通転位の状態を<0001>方向に転写した構造のインゴットc3(c;Mm;Cc)から成長方向と平行なA面でスライス加工した基板Ac3(c;Mm;Cc;A)だからである。よって、基板Ac3には、表面の貫通転位密度は低く、表面平行に走る転位も少ない。理想的な基板である。
[実施例5;GaNインゴットc3の作製(種結晶C2を使って:c;Aa;Cc)]
実施例3で作った主面を(0001)面とするGaN種結晶Ca2を用いて<0001>方向(c方向)に成長させ下記のようなGaNインゴット(c3)を作製した。このインゴットはGaN成長としては3世代になるから”3”というサフィックスを付した。先述の表記法ではc;Aa;Ccという成長である。
実施例1の種結晶製造のためのインゴットの成長と同じHVPE炉を用いて結晶成長を行った。キャリヤガスは全てH2ガスである。用いるガスはNH3ガス(NH3+H2)、HClガス(H2+HCl)である。成長条件は
成長温度 1020℃(1293K)
NH3ガス分圧 0.3atm (30kPa)
HClガス分圧 2×10−2atm(2kPa)
成長時間 約180時間
膜厚 2.7cm
であった。成長方向は種結晶の主面(0001)面(C面)に垂直な<0001>方向(c方向)である。最終的な成長表面は(0001)面であった。表面状態はやや成長ピットが存在する鏡面である。インゴットc3の高さは約2.7cmであった。このようなインゴットを複数個成長させた。
(a)(C面を持つ)Cc3基板の作製(c;Aa;Cc;C)(67)
このインゴットc3を内周刃スライサーにより、成長方向(0001)面に垂直の方向にスライスして基板(C基板)を30枚切り出した。つまり貫通転位を横切る方向にスライス加工したのである。
前述の表記法に従えば、これはc;Aa;Cc;Cということである。種結晶C2から作られた第3世代の基板であるから履歴を含ませてこれをCc3基板と書くことにする。こうして{0001}面(C面)を表面に持つGaN(Cc3)単結晶基板30枚を切り出すことができた。
それらのGaN基板(Cc3)は厚さ0.7mmで、30mm×25mm程度の1インチサイズの基板であった。その後、これらの基板を研磨加工した。その結果表面に加工変質層を持たない、半導体基板として使用可能な基板が得られた。
Cc3基板について評価を実施した。基板Cc3の基板面(0001)Ga面をカソードルミネッセンス(CL)により評価した。種結晶A1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面に見られたような転位の集合はいっさい見られず表面の状態は改善されている事が分かった。
EPDを測定することによって同じ基板を評価した。初めの種結晶A1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面(C面)とは違って、10μm〜20μm径の大きいピットは全く観察されなかった。ピットは全て直径が1μm以下の小さなピットであった。ピットは<11−20>の方向に並ぶ傾向があることが分かった。しかもEPDは5×104cm−2程度であって低転位密度であった。
この基板Cc3をTEM(透過型顕微鏡)により観察した。その結果これらの基板Cc3においては、(0001)面上には殆ど貫通転位が存在しないという事が分かった。転位の数は少ないしそれだけでなく、基板面にも殆ど貫通転位が走っていないという事が判明した。このために基板面内での転位密度は大きく減少している。
低転位の理由は次のように考えられる。基板表面に貫通転位が走っている低転位のC面基板Ca2(c;Aa;C)を種結晶としてc方向<0001>方向に成長させ低貫通転位の状態を<0001>方向に転写した構造のインゴットc3(c;Aa;Cc)からC面でスライス加工した基板Cc3(c;Aa;Cc;C)だからである。よって、基板Cc3には、表面の貫通転位密度は低く、表面平行に走る転位も少ない。理想的な基板である。
(b)(M面を持つ)Mc3基板の作製(c;Aa;Cc;M)(66)
このインゴットc3を内周刃スライサーにより、成長方向[0001]に平行な{1−100}面(M面)に平行にスライス加工して{1−100}面を持つ30枚の基板Mを切りだした。つまり貫通転位に平行にスライス加工したのである。これは本発明の思想にそう切り方である。
前述の表記法に従えばこれはc;Aa;Cc;Mということである。種結晶C2から作られた第3世代の基板であるから履歴を含ませてこれをMc3基板と書くことにする。こうして{1−100}面(M面)を表面に持つGaN単結晶基板30枚を切り出すことができた。
それらのGaN基板(Mc3)は厚さ0.7mmで、30mm×25mm程度の1インチサイズの基板であった。その後、これらの基板を研磨加工した。その結果表面に加工変質層を持たない、半導体基板として使用可能な基板Mc3が得られた。
Mc3基板について評価を実施した。基板Mc3の基板面{1−100}をカソードルミネッセンス(CL)により評価した。種結晶A1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面に見られたような転位の集合はいっさい見られず表面の状態は改善されている事が分かった。
EPDを測定することによって同じ基板Mc3の{1−100}面を評価した。初めの種結晶A1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面(C面)とは違って、10μm〜20μm径の大きいピットは全く観察されなかった。ピットは全て直径が1μm以下の小さなピットであった。しかもEPDは1×104cm−2程度であって低転位密度であった。
この基板Mc3の{1−100}面をTEM(透過型顕微鏡)により観察した。その結果これらの基板Mc3においては、{1−100}面上には殆ど貫通転位が存在しないという事が分かった。転位の数は少なく、少数の転位は基板面{1−100}面に平行に走っていることが判明した。このために表面の低密度は大きく低減している。
低転位の理由は次のように考えられる。基板表面に貫通転位が走っている低転位のC面基板Ca2(c;Aa;C)を種結晶としてc方向<0001>方向に成長させ低貫通転位の状態を<0001>方向に転写した構造のインゴットc3(c;Aa;Cc)から成長方向と平行なM面でスライス加工した基板Mc3(c;Aa;Cc;M)だからである。よって、基板Mc3には、表面の貫通転位密度は低く、表面平行に走る転位も少ない。理想的な基板である。
(c)(A面を持つ)Ac3基板の作製(c;Aa;Cc;A)(65)
このインゴットc3を内周刃スライサーにより、成長方向<0001>に平行な{11−20}面に平行にスライス加工して{11−20}面を持つ30枚の基板Aを切り出した。つまり貫通転位に平行にスライス加工したのである。これは本発明の思想にそう切り方である。
前述の表記法に従えばこれはc;Aa;Cc;Aということである。種結晶C2から作られた第3世代の基板であるから履歴を含ませてこれをAc3基板と書くことにする。こうして{11−20}面(A面)を表面に持つGaN単結晶基板30枚を切り出すことができた。
それらのGaN基板(Ac3)は厚さ0.7mmで、30mm×25mm程度の1インチサイズの基板であった。その後、これらの基板を研磨加工した。その結果表面に加工変質層を持たない、半導体基板として使用可能な基板Ac3が得られた。
Ac3基板について評価を実施した。基板Ac3の基板面{11−20}面をカソードルミネッセンス(CL)により評価した。種結晶A1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面に見られたような転位の集合はいっさい見られず表面の状態は改善されている事が分かった。
EPDを測定することによって同じ基板Ac3の{11−20}面を評価した。初めの種結晶A1を切り出すべき当初のGaN結晶c1の(0001)面(C面)とは違って、10μm〜20μm径の大きいピットは全く観察されなかった。ピットは全て直径が1μm以下の小さなピットであった。しかもEPDは2×104cm−2程度であって非常な低転位密度であった。
この基板Ac3の{11−20}面をTEM(透過型顕微鏡)により観察した。その結果これらの基板Ac3においては、{11−20}面上には殆ど貫通転位が存在しないという事が分かった。転位の数は少なく、少ない転位は基板面{11−20}に平行に走っていることが判明した。このために表面の低密度は大きく低減している。
低転位の理由は次のように考えられる。基板表面に貫通転位が走っている低転位のC面基板Ca2(c;Aa;C)を種結晶としてc方向<0001>方向に成長させ低貫通転位の状態を<0001>方向に転写した構造のインゴットc3(c;Aa;Cc)から成長方向と平行なA面でスライス加工した基板Ac3(c;Aa;Cc;A)だからである。よって、基板Ac3には、表面の貫通転位密度は低く、表面平行に走る転位も少ない。理想的な基板である。