この発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明に係るパーキング装置Pの構成例を説明する。この発明に係るパーキング装置Pは、車輪の回転を規制する装置であり、例えば、車両の停車時に変速機の出力軸を回転不能にロックするように構成されている。図1は、そのパーキング装置Pの第1の実施例における構成を説明するための模式図であって、図1ではパーキング装置Pがパーキング操作がおこなわれてロックされた状態を示している。
図1において、符号1はパーキングギヤの一部をその厚さ方向(図1のx方向)における断面として示すものであり、そのパーキングギヤ1は、例えば変速機の出力軸やプロペラシャフトなど、車輪とともに常時回転する動力伝達部材(それぞれ図示せず)と一体回転・停止するように構成されていて、その外周部には、凸部(すなわち歯)と凹部(すなわち歯溝)とが円周方向に交互に形成されている。すなわち、パーキングギヤ1は、凹部と凸部とから構成される外歯1aを有している。
パーキングギヤ1の外周と対向する位置に、パーキングポール2が設けられている。このパーキングポール2には、パーキングギヤ1の各外歯1a間の歯溝に嵌り込むもしくは噛み合うことが可能な噛み合い部2aが形成されている。そしてこのパーキングポール2は、噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に選択的に噛み合うことが可能なように、パーキングポール2がパーキングギヤ1に接近・離脱する方向(図1のy方向)にストロークできるように構成されている。なお、パーキングポール2は、噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に噛み合った状態、すなわちパーキングポール2がパーキングギヤ1に噛みあった状態でパーキングギヤ1が回転しないように、例えば車体に固定されている変速機のケース(図示せず)などに支持されている。
具体的には、パーキングポール2がパーキングギヤ1に近づけられて噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に噛み合った状態、すなわちパーキングギヤ1の回転がパーキングポール2によってロックされた状態と、パーキングポール2がパーキングギヤ1から離れさせられて噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に噛み合わない状態、すなわちパーキングポール2によるパーキングギヤ1の回転のロックが解除された状態とを選択的に設定できる位置にパーキングポール2が移動可能なように、パーキングポール2がストロークするように構成されている。
例えば、噛み合い部2aと所定の間隔を有するパーキングポール2の一方の端部側に、パーキングギヤ1の回転軸方向(図1のx方向)と平行もしくはほぼ平行な方向の回転軸線を有する支軸を設け、その支軸を中心としてパーキングポール2を回転させることで、噛み合い部2aを各外歯1a間の歯溝に選択的に噛み合わせるようにパーキングポール2をストロークさせること、言い換えるとパーキングポール2をパーキングギヤ1に選択的に噛み合わせることが可能である。
また、パーキングポール2の噛み合い部2aと反対側の端面には、パーキングカム3のガイド面3a,3bと当接する当接部2bが形成されている。この当接部2bは、例えば、前述のように一方の端部側に支軸が設けられた構成のパーキングポール2の場合は、その支軸と反対側の他方の端部側に形成される。
一方、パーキングカム3は、例えば円筒状の部材により形成されていて、パーキングカム3の外周部には、第1ガイド面3aと第2ガイド面3bとが形成されている。ここで、パーキングカム3の円筒状部分の軸線方向すなわち後述のパーキングロッド4の軸線方向(図1のx方向)における、パーキングカム3がパーキングポール2(あるいは後述するカムストッパ7)に近づく方向(図1での右方向)を、パーキングカム3の前進方向と規定し、パーキングカム3がパーキングポール2(あるいは後述するカムストッパ7)から遠ざかる方向(図1での左方向)を、パーキングカム3の後退方向と規定する。したがって、パーキングロッド4の軸線方向において、パーキングカム3のパーキングポール2(あるいは後述するカムストッパ7)に近づく方向への移動が、パーキングカム3の前進移動であり、パーキングカム3のパーキングポール2(あるいは後述するカムストッパ7)から遠ざかる方向への移動が、パーキングカム3の後退移動である。
パーキングカム3の第1ガイド面3aは、その先端側(図1での右側)、すなわち、パーキングカム3の前進方向側の端面である前進端面3c側から第2ガイド面3b側に向かって拡径する傾斜を備えた円錐面状に形成されている。また第2ガイド面3bは、第1ガイド面3a側から前進端面3cと反対側の端面、すなわちパーキングカム3の後退方向側の端面である後退端面3d側に向かって拡径する傾斜(第1ガイド面の円錐面の傾斜よりは緩やかな傾斜)を備えた円錐面状に形成されている。なお、この第2ガイド面3bは、円筒状の部材であるパーキングカム3の中空部分の軸線方向の所定長さに亘ってほぼ同一外径に設定された円柱面状に形成することも可能である。
そして、このパーキングカム3は、その中空部分にパーキングロッド4が挿通されていて、パーキングロッド4にその軸線方向(図1のx方向)に移動自在に保持されている。ここで、パーキングロッド4の軸線方向は、例えばパーキングポール2の当接部2bと、パーキングカム3の第1ガイド面3aおよび第2ガイド面3bとが当接する状態においては、前述のパーキングギヤ1の回転軸方向と平行もしくはほぼ平行な方向になるように設定されている。
そのため、パーキングカム3がパーキングロッド4の軸線方向において前進・後退移動することで、第1ガイド面3aおよび第2ガイド面3bに当接部2bが当接しているパーキングポール2が、前述のストローク方向(図1のy方向)にストロークされる。すなわち、パーキングカム3が前進方向(図1での右方向)に移動すると、第1ガイド面3aに当接している当接部2bがガイド面3aの傾斜に沿って摺動するため、パーキングポール2が次第にパーキングギヤ1に近づく方向(図1での上方向)に移動する。したがって、パーキングロッド4の軸線方向において、パーキングロッド4およびパーキングカム3を、パーキングカム3の前進方向に移動させることによって、パーキングポール2をパーキングギヤ1側に押し付けることができる。
パーキングロッド4には、パーキングロッド4に固定されるスプリングストッパ5が設けられているとともに、そのスプリングストッパ5とパーキングカム3との間に、例えば圧縮コイルばねなどの弾性部材であるカムスプリング6が装着されている。すなわちスプリングストッパ5は、パーキングカム3およびカムスプリング6の、パーキングカム3の後退方向側の端部である後退端(図1での左側端部)位置を規制する部材である。また、カムスプリング6の内径はパーキングカム3の中空部分の最大内径よりも大きく設定されていて、外径はパーキングカム3の後退端面3d部の外径およびスプリングストッパ5の外径よりも小さく設定されている。したがって、パーキングカム3がカムスプリング6の弾性力によりパーキングポール2に向けて押圧される構成となっている。
また、パーキングロッド4の自由端であって、パーキングロッド4のパーキングポール2に近い側(図1での右側)の端部に、カムストッパ7が形成されている。このカムストッパ7は、例えば円柱状の部材により形成されていて、カムストッパ7の外径はパーキングカム3の中空部分の最大内径よりも大きく設定されている。したがって、このカムストッパ7は、パーキングカム3の前進方向の前進端面3cの位置を規制することができる。
なお、このカムストッパ7により規制される前進端面3cすなわちパーキングカム3の位置は、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合った状態、すなわち噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に噛み合った状態、言い換えると、パーキングギヤ1の回転がパーキングポール2によってロックされた状態で、前進端面3cとカムストッパ7とが当接する位置、もしくは前進端面3cとカムストッパ7とが当接する位置から所定のクリアランスを設けた分だけパーキングカム3の後退方向側(図1での左側)の位置となるように設定されている。
さらに、パーキングロッド4のカムストッパ7が設けられている側と反対側(図1での左側)の端部は、例えば図示しない変速機のシフトレバーのシフト動作に連動して回転する部材に連結されていて、その部材の回転に連動してパーキングロッド4をそのほぼ軸線方向(図1のx方向)に動作させるように構成されている。
そして、パーキングカム3とスプリングストッパ5との間であって、パーキングロッド4およびカムスプリング6の外周部に、ストッパ8が設けられている。このストッパ8は、スリーブ状の部材により形成されていて、その外径はパーキングカム3の後退端面3d部の外径より小さく設定され、内径はカムスプリング6の外周部分と干渉しない程度の大きさに設定されている。ストッパ8のスプリングストッパ5側(図1での左側)の一方の端部は、例えばスプリングストッパ5に固定されていて、他方の端部には、パーキングカム3の前進端面3cがカムストッパ7と当接している状態で、後退端面3dと所定間隔D1を有して対向する係合端面8aが形成されている。
そのため、パーキングカム3がカムストッパ7と当接している状態から所定間隔D1の距離を後退移動すると、すなわち、パーキングカム3がカムストッパ7と当接している状態から所定間隔D1の距離をパーキングポール2と反対側(図1での左側)へ移動すると、パーキングカム3の後退端面3dとストッパ8の係合端面8aとが当接して係合し、パーキングカム3の後退移動が規制もしくは抑制される。したがって、このストッパ8は、パーキングロッド4の軸線方向におけるパーキングカム3のパーキングポール2と反対側(図1での左側)への後退移動を、パーキングカム3を係合させて規制するいわゆる規制手段として機能する。また、このストッパ8は、カムスプリング6を圧縮すなわち弾性変形させてパーキングカム3がパーキングポール2と反対側へ所定距離(上記の例では所定間隔D1)だけ後退移動した位置にパーキングカム3を係止させてパーキングカム3の後退移動を規制する手段としても機能する。
なお、ここで所定間隔D1は、パーキングカム3の前進端面3cがカムストッパ7と当接している状態での後退端面3dのパーキングロッド4の軸方向における位置(すなわち図1で直線Aで示す位置)から、後述するパーキングギヤ1とパーキングポール2とのいわゆる「非噛み合い」状態での後退端面3dのパーキングロッド4の軸方向における位置(すなわち図1で直線Bで示す位置)までの間隔として示されるいわゆる「非噛み合い」時ストロークSと等しい間隔か、もしくは所定のクリアランスを設けた分だけ長い間隔(すなわち図1で直線Aで示す位置から直線B’で示す位置までの間隔)に設定されている。
つぎに、上記のパーキング装置Pの第1の実施例における動作を説明する。パーキングロッド4は、前述したように変速機のシフトレバーのシフト操作に連動するように構成されていて、シフトレバーがパーキングレンジに切り換えられると、パーキングロッド4がパーキングポール2に近づく方向(図1での右方向)に移動する。またパーキングロッド4の移動に伴って、パーキングカム3も同様にパーキングポール2に近づく方向(図1での右方向)に移動する。
パーキングカム3がパーキングポール2に近づく方向に移動すると、パーキングカム3の第1ガイド面3aが、パーキングポール2の当接部2bに当接する。さらにパーキングロッド4とパーキングカム3とがパーキングポール2に近づく方向(図1での右方向)に移動すると、当接部2bが第1ガイド面3aの傾斜に沿って摺動しながら、パーキングポール2が、パーキングロッド4から離れる方向すなわちパーキングギヤ1に近づく方向(図1での上方向)に移動する。言い換えると、パーキングポール2が、そのストローク方向において、パーキングギヤ1に接近するようにストロークする。
したがって、上記のようにパーキング装置Pが動作すると、パーキングポール2がパーキングギヤ1に接近するようにストロークする。このとき、パーキングギヤ1の円周方向において、パーキングギヤ1の各外歯1a間の歯溝とパーキングポール2の噛み合い部2aとが同一の位相にあれば、噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に嵌合する。すなわち、パーキングポール2がパーキングギヤ1側に押し付けられ、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされる。言い換えると、パーキング装置Pのシフトレバーがパーキングレンジに切り換えられると、すなわちパーキング装置Pのパーキング操作がおこなわれると、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされる。
具体的には、各外歯1a間の歯溝と噛み合い部2aとが同一の位相になると、シフト操作によりパーキングロッド4がパーキングカム3の前進方向に移動し、それに伴ってパーキングカム3もパーキングカム3の前進方向に移動して、当接部2aが第1ガイド面3aに沿って動作する。さらにパーキングカム3がシフト操作によりパーキングカム3の前進方向に移動することによって、図1に示す状態のように、パーキングポール2が第2ガイド面3bに乗り上げる。そして、噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に嵌り込み、パーキングポール2のストローク方向における移動が停止する。
その結果、パーキング操作がおこなわれた際にパーキングポール2の噛み合い部2aがパーキングギヤ1の各外歯1a間の歯溝に嵌り込み、パーキングギヤ1の回転がパーキングポール2によってロックされた状態となってパーキングギヤ1および出力軸の回転が規制される、いわゆる「噛み合い」状態になる。またこのとき、パーキングカム3は、カムスプリング6の弾性力により前進端面3cがカムストッパ7に当接するまで前進方向へ移動し、その際の後退端面3dのパーキングロッド4の軸方向における位置が、前述したように、図1の直線Aで示す位置となる。
これに対して、パーキングギヤ1の円周方向において、各外歯1a間の歯溝と噛み合い部2aとが異なる位相にある場合には、外歯1aの歯先面1bと、噛み合い部2aのパーキングギヤ1と対向する側(図1での上側)の先端面2cとが当接し、パーキング操作がおこなわれた際にパーキングポール2の噛み合い部2aがパーキングギヤ1の各外歯1a間の歯溝に嵌り込まない、いわゆる「非噛み合い」状態になる。
このような「非噛み合い」状態になると、歯先面1bと先端面2cとが当接することによって、パーキングポール2の、そのストローク方向における移動が停止するとともに、パーキングカム3が、その第1ガイド面3aがパーキングポール2の当接部2bに当接したまま停止し、パーキングロッド4とパーキングカム3とが相対移動して、パーキングカム3とスプリングストッパ5とによりカムスプリング6が圧縮される。その結果、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わない状態が継続される。またこのとき、パーキングカム3は、カムスプリング6を圧縮して後退方向へ移動し、その際の後退端面3dのパーキングロッド4の軸方向における位置が、前述したように、図1の直線Bで示す位置となる。
また、上記のようなパーキング装置Pにおいては、パーキング操作がおこなわれてパーキングギヤ1とパーキングポール2とが噛み合わされる「噛み合い」状態になるまでの過渡時に、パーキングカム3とパーキングポール2とが当接してパーキングポール2がパーキングギヤ1側へ押圧される際に、パーキングギヤ1が回転すると、パーキングポール2の噛み合い部2aとパーキングギヤ1の各外歯1a間の歯溝とが噛合せずに、噛み合い部2aが回転するパーキングギヤ1の各外歯1aに繰り返し弾かれるいわゆるラチェッティング現象が生じる場合がある。
このようなラチェッティング現象が生じると、噛み合い部2aが各外歯1aにパーキングカム3側へ弾かれ、第1ガイド面3aと当接している当接部2bが第1ガイド面3aの傾斜に沿ってパーキングカム3およびパーキングロッド4の軸心に近づく方向に押圧される。すると、パーキングカム3が後退方向、すなわちパーキングポール2と反対側、すなわちカムスプリング6を圧縮する方向に戻されることになる。
このとき、カムスプリング6の弾性力を強く設定することで、パーキングカム3のカムスプリング6を圧縮する方向への戻りを抑制することができる。しかしながら、カムスプリング6の弾性力を強くすると、パーキング操作の際、例えばシフトレバーをパーキングレンジに切り換える操作がおこなわれる際に、カムスプリング6が圧縮される状態となった場合にシフトレバーの操作に大きな力が必要とされるなど、いわゆるシフトフィーリングが低下する場合がある。
このように、シフトフィーリングを考慮すると、パーキングカム3のカムスプリング6を圧縮する方向への戻りを抑制するためにカムスプリング6の弾性力を強く設定するには制約があり、そのためにパーキングカム3の後退方向への戻りが大きくなると、パーキングポール2をパーキングギヤ1と噛み合わせるためにパーキングカム3が再びパーキングポール2をパーキングギヤ1側へ押圧するのに要する時間が長くなってしまう。その結果、パーキングギヤ1の回転をロックできる回転数、言い換えると出力軸の回転をロックできる車速が低下してしまい、所望した車速で、パーキングギヤ1の回転すなわち出力軸の回転をロックできなくなる場合がある。
そこで、この第1の実施例におけるパーキング装置Pでは、前述したように、パーキングカム3とパーキングポール2とが当接している際に、パーキングギヤ1が回転した場合においても、パーキングカム3の後退方向への戻りを規制もしくは抑制することができるストッパ8が設けられている。そのため、例えば、上記のように、パーキングカム3とパーキングポール2とが当接している際にパーキングギヤ1が回転し、いわゆるラチェッティング現象が生じた場合に、パーキングカム3が後退方向に移動しても、パーキングカム3の後退端面3dがストッパ8の係合端面8aと当接して係合することによって、パーキングカム3の後退方向への移動が規制もしくは抑制される。
すなわち、パーキングギヤ1とパーキングポール2とを噛み合わすパーキング操作がおこなわれた場合に、パーキングロッド4の軸線方向におけるパーキングポール2と反対側(図1での左側)へのパーキングカム3の後退移動が、パーキングカム3の後退端面3dがストッパ8の係合端面8aと当接して係合されることにより規制される。その結果、パーキングカム3が後退方向に大きく戻されて、パーキングカム3がパーキングポール2をパーキングギヤ1側へ押圧するのに要する時間が期所の時間より長くなってしまうことを回避することができ、所望した車速でパーキングギヤ1の回転すなわち出力軸の回転をロックすることができる。
図2は、この発明に係るパーキング装置Pの第2の実施例における構成を説明するための模式図であって、上記の図1の場合と同様、図2ではパーキング装置Pのパーキング操作がおこなわれてロックされた状態を示している。また図1に示す構成と同様の部分には、図1に付した符号と同様の符号を付してその説明を省略する。
図2において、パーキングカム3は、その中空部分にパーキングロッド9が挿通されていて、後述するパーキングロッドの小径部分において、パーキングロッド9にその軸線方向(図2のx方向)に移動自在に保持されている。ここで、パーキングロッド9の軸線方向は、前述の第1の実施例におけるパーキングロッド4と同様に、例えばパーキングポール2の当接部2bと、パーキングカム3の第1ガイド面3aおよび第2ガイド面3bとが当接する状態においては、前述のパーキングギヤ1の回転軸方向と平行もしくはほぼ平行な方向になるように設定されている。
そのため、パーキングカム3がパーキングロッド9の軸線方向において移動することで、第1ガイド面3aおよび第2ガイド面3bに当接部2bが当接しているパーキングポール2が、そのストローク方向(図2のy方向)にストロークされる。すなわち、パーキングカム3がパーキングポール2に近づく方向(図2での右方向)に移動すると、第1ガイド面3aに当接している当接部2bがガイド面3aの傾斜に沿って摺動するため、パーキングポール2が次第にパーキングギヤ1に近づく方向(図2での上方向)に移動する。したがって、パーキングロッド9の軸線方向において、パーキングロッド9およびパーキングカム3をパーキングポール2に近づける方向(図2での右方向)に移動させることによって、パーキングポール2をパーキングギヤ1側に押し付けることができる。
前述の第1の実施例におけるパーキングロッド4と同様に、パーキングロッド9には、パーキングロッド9に固定されるスプリングストッパ5が設けられているとともに、そのスプリングストッパ5とパーキングカム3との間に、カムスプリング6が装着されている。
また、パーキングロッド9の自由端であって、パーキングロッド9のパーキングポール2に近い側(図2での右側)の端部に、カムストッパ7が形成されている。なお、パーキングロッド9のカムストッパ7が設けられている側と反対側(図2での左側)の端部は、例えば図示しない変速機のシフトレバーのシフト動作に連動して回転する部材に連結されていて、その部材の回転に連動してパーキングロッド9をそのほぼ軸線方向(図2のx方向)に動作させるように構成されている。
そして、このパーキングロッド9には、前進端面3cがカムストッパ7と当接している状態でのパーキングカム3とスプリングストッパ5との間の所定の位置に、段差部9aが設けられている。パーキングカム3とスプリングストッパ5との間の所定の位置とは、パーキングカム3の前進端面3cがカムストッパ7と当接している状態で、後退端面3dからスプリングストッパ5の方向へ所定間隔D1だけ離れた位置である。すなわち、前述の第1の実施例におけるストッパ8の係合端面8aと同じ位置であって、図1,2で直線Bもしくは直線B’で示される位置である。
また、段差部9aとは、図2での直線Bもしくは直線B’で示される位置の左右において大小に相違する外径に設定されている部分であって、その外径が大小に変化する部分において後退端面3dと対向する係合端面9bが形成されている。すなわち、直線Bもしくは直線B’で示される位置よりスプリングストッパ5側(図2での左側)の部分の外径d1に対して、直線Bもしくは直線B’で示される位置よりカムストッパ7側(図2での右側)の部分の外径d2が小さくなるように設定されている。外径d1はパーキングカム3の中空部分の最大内径より大きく設定されていて、外径d2はパーキングカム3の中空部分の最大内径より小さく、そのパーキングロッド9の小径部分すなわち外径d2の部分においてパーキングカム3がその軸方向で移動自在となるような大きさに設定されている。
そのため、前述の第1の実施例の場合と同様に、パーキングカム3がカムストッパ7と当接している状態から所定間隔D1の距離を後退移動すると、すなわちパーキングカム3がカムストッパ7と当接している状態から所定間隔D1の距離をパーキングポール2と反対側(図2での左側)へ移動すると、パーキングカム3の後退端面3dと係合端面9bとが当接して係合し、パーキングカム3の後退移動が規制もしくは抑制される。
したがって、パーキングロッド9の段差部9aにおける係合端面9bは、前述の第1の実施例における係合端面8aと同様に、パーキングカム3の前進端面3cがカムストッパ7と当接している状態で、後退端面3dと所定間隔D1を有して対向し、パーキングロッド4の軸線方向におけるパーキングカム3のパーキングポール2と反対側(図2での左側)への後退移動を、パーキングカム3を係合させて規制するいわゆる規制手段として機能する。また、このパーキングロッド9の段差部9aにおける係合端面9bは、カムスプリング6を圧縮すなわち弾性変形させてパーキングカム3がパーキングポール2と反対側へ所定距離(上記の例では所定間隔D1)だけ後退移動した位置にパーキングカム3を係止させてパーキングカム3の後退移動を規制する手段としても機能する。
つぎに、上記のパーキング装置Pの第2の実施例における動作を説明する。上記のパーキング装置Pの第2の実施例の構成例で説明したように、第2の実施例においては、前述の第1の実施例における係合端面8aと同様に機能する係合端面9bが設けられている。すなわち、この第2の実施例では、前述の第1の実施例における係合端面8aに代えて係合端面9bを設け、パーキングカム3とパーキングポール2とが当接している際にパーキングギヤ1が回転した場合においても、パーキングカム3の後退方向(図2での左方向)への戻りを規制もしくは抑制することができるように構成された例である。
したがって、前述の第1の実施例の場合と同様に、この第2の実施例におけるパーキング装置Pでは、パーキングカム3とパーキングポール2とが当接している際にパーキングギヤ1が回転し、いわゆるラチェッティング現象が生じた場合に、パーキングカム3が後退方向に移動しても、パーキングカム3の後退端面3dがパーキングロッド9の係合端面9bと当接して係合することによって、パーキングカム3の後退方向への移動が規制もしくは抑制される。
すなわち、パーキングギヤ1とパーキングポール2とを噛み合わすパーキング操作がおこなわれた場合に、パーキングロッド4の軸線方向におけるパーキングポール2と反対側(図2での左側)へのパーキングカム3の後退移動が、パーキングカム3の後退端面3dがパーキングロッド9の係合端面9bと当接して係合されることにより規制される。その結果、パーキングカム3が後退方向に大きく戻されて、パーキングカム3がパーキングポール2をパーキングギヤ1側へ押圧するのに要する時間が期所の時間より長くなってしまうことを回避することができ、所望した車速でパーキングギヤ1の回転すなわち出力軸の回転をロックすることができる。
図3は、この発明に係るパーキング装置Pの第3の実施例における構成を説明するための模式図であって、前述の図1,2の場合と同様、図3ではパーキング装置Pのパーキング操作がおこなわれてロックされた状態を示している。また図1,2に示す構成と同様の部分には、図1,2に付した符号と同様の符号を付してその説明を省略する。すなわち図3(a)では、パーキングギヤ1、パーキングポール2、パーキングカム3、パーキングロッド4、スプリングストッパ5、カムスプリング6、カムストッパ7で構成される前述の第1の実施例と同様のパーキング装置Pの構成の一部が、ロックスリーブ10の内部に挿入された状態を示している。なお、図3(b)は、図3(a)をパーキングカム3の前進端側(図3(a)での右側)から見た側面図である。
図3において、ロックスリーブ10は、例えば環状の部材により形成されていて、その一方(図3(a)での右側)の端部に半円状の孔10aが形成されている。この孔10aは、その中心軸線Cが前述の出力軸の軸線方向あるいはパーキングギヤ1の回転軸方向とほぼ平行となるように設定されていて、孔10aを形成する保持面10bを有している。そしてこの保持面10bは中心軸線Cとほぼ平行に形成されている。すなわち保持面10bは中心軸線Cを中心とする所定角度範囲で円弧形状に形成されている。またロックスリーブ10の他方(図3(b)での左側)の端部には、ガイド孔10cが形成されている。そしてこのガイド孔10cの内周には、中心軸線C方向に延ばされた円弧形状のガイド面10dが形成されている。そして、ガイド孔10cの内周であって、ガイド面10dより保持面10bに近い側(図3(a)での右側)には、保持面10bとガイド面10dとにそれぞれ連続する傾斜面10eが形成されている。
傾斜面10eの所定の位置に、係止爪11が挿通される挿通孔10fが形成されている。また係止爪11には、パーキング装置Pが「噛み合い」状態の際のパーキングカム3の後退端面3dと対向する係合端面11aが形成され、パーキングロッド4の軸線方向におけるその係合端面11aと反対側(図3(a)での左側)の位置に、係止爪11の先端(図3(a)での上端)に向かって係止爪11のパーキングロッド4の軸線方向における肉厚が減少する円弧面状もしくは傾斜面状のガイド面11bが形成されている。すなわち、このガイド面11bは、パーキング装置Pが「噛み合い」状態になる前の状態において、パーキングカム3およびパーキングロッド4が、パーキングカム3の前進方向(図3(a)での右方向)に移動させられる際に、パーキングカム3のガイド面3aおよびガイド面3bと当接して摺動し、その際に、係止部11にパーキングロッド4の軸心から遠ざかる方向(図3(a)での下方向)への所定の荷重が作用するような形状(傾斜)に形成されている。
そして、係止爪11は、連結部材12を介して、例えばトランスアクスルケース13の外部に設けられたソレノイドスイッチ14のシャフト14aに連結されている。シャフト14aは、例えば圧縮コイルばねなどにより形成される戻しばね14bによって、ソレノイドスイッチ14のコイル部14cの軸線方向(図3(a)のy方向)における連結部材12側(図3(a)での上側)へ押圧される構成となっている。
また、このソレノイドスイッチ14は通電時にONとなるON−OFFソレノイドスイッチであって、シフトレバー15からの所定の電気信号を受けた場合に通電されて、ONの状態になるように、すなわちシャフト14aがコイル部14cで発生する磁力により引き寄せられるように、言い換えるとシャフト14aが戻しばね14bの弾性力に抗して図3(a)での下側へ移動させられるように構成されている。ここでシフトレバー15からの所定の電気信号とは、パーキング装置Pのロック状態すなわちパーキングギヤ1とパーキングポール2との噛み合い状態を解消させるパーキング解除操作がおこなわれた場合、例えばシフトレバー15がパーキングレンジにシフトされている状態からパーキングレンジ以外のレンジにシフトする操作がおこなわれた場合にソレノイドスイッチ15へ出力され、ソレノイドスイッチ14をONの状態に動作させる信号である。なお、図3(a)ではソレノイドスイッチ14がOFFの状態を示している。また符号16はオイルシールである。
このように、係止爪11が連結部材12を介してソレノイドスイッチ14と連結されていることにより、係止爪11がロックスリーブ10の半径方向すなわちパーキングロッド4の半径方向(すなわち図3(a)のy方向における上下方向)に動作することができる。すなわち、ソレノイドスイッチ14がOFFの状態では、係止爪11は戻しばね14bの弾性力により常にパーキングロッド4の軸心へ近づく方向(図3(a)での上方向)に押圧されている。言い換えると、パーキングロッド4の軸心へ近づく方向に突出されている。そして係止爪11は、その状態でパーキングロッド4の軸心から遠ざかる方向へ所定の荷重が作用することにより、戻しばね14bの弾性力に抗してその荷重方向へ移動することができる。また、ソレノイドスイッチ14がONの状態になることで、係止爪11がパーキングロッド4の軸心から遠ざかる方向へ移動した状態を保持することができる。
さらに、係止爪11は、前述したように傾斜面10eの所定の位置に設けられた挿通孔10fに挿通されているが、その場合の所定の位置は、係止爪11の係合端面11aのパーキングロッド4の軸線方向における位置が、パーキングカム3の前進端面3cがカムストッパ7と当接している状態での後退端面3dの位置(すなわち図3(a)で直線Aで示す位置)、もしくは所定のクリアランスを設けた分だけパーキングカム3の後退方向側(図3(a)での左側)の位置(すなわち図3(a)で直線A’で示す位置)、すなわち、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合った状態での後退端面3dの位置となるように設定されている。
そして、係止爪11がロックスリーブ10の半径方向に動作する場合の係止爪11の先端の位置は、ソレノイドスイッチ14がOFF状態の場合に、係止爪11の先端とパーキングロッド4の軸心との距離が、バーキングカム3の後退端面3dの外径部の半径よりも小さくなるように設定され、ソレノイドスイッチ14がON状態の場合に、係止爪11の先端とパーキングロッド4の軸心との距離が、バーキングカム3の後退端面3dの外径部の半径よりも大きくなるように設定されている。
したがって、ソレノイドスイッチ14がOFF状態のときにパーキングカム3の後退端面3dが、図3(a)で直線Aもしくは直線A’で示す位置にある状態、すなわちパーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合った状態では、係止爪11の係合端面11aとパーキングカム3の後退端面3dとが対向して当接もしくは近接することになる。そのため、その状態からパーキンカム3がパーキングポール2と反対側(図3(a)での左側)へ後退移動しようとすると、係合端面11aと後退端面3dとが係合し、パーキングカム3の後退移動が規制される。すなわち、係止爪11は、ソレノイドスイッチ14がOFFの状態で、パーキングカム3の前進移動を可能にし、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合った状態になった場合に、パーキングロッド4の軸心へ近づく方向に突出されてパーキングカム3の後退端面3dと対向し、パーキングカム3が後退移動する際に後退端面3dと係合する係合部材として、パーキングロッド4の軸線方向におけるパーキングカム3のパーキングポール2と反対側(図3(a)での左側)への後退移動を規制するいわゆる規制手段として機能する。
一方、ソレノイドスイッチ14がON状態のときは、係止爪11が、その先端とパーキングロッド4の軸心との距離がバーキングカム3の後退端面3dの外径部の半径よりも大きくなる位置に保持されることによって、ソレノイドスイッチ14がOFF状態のときのように係合端面11aと後退端面3dとが係合されることがなくなる、言い換えると、パーキングカム3を係合させることによるパーキングカム3の後退移動の規制が解除される。すなわち、係止爪11は、ソレノイドスイッチ14がON状態の場合、パーキングカム3を係合させることによるパーキングカム3の後退移動の規制を解除するいわゆる解除手段として機能する。
つぎに、上記のパーキング装置Pの第3の実施例における動作を説明する。初めに、シフトレバー15がパーキングレンジ以外のレンジからパーキングレンジに切り換えられる場合、すなわちパーキングポール2とパーキングギヤ1とを噛み合わすパーキング操作がおこなわれる場合、前述の第1,第2の実施例の場合と同様に、パーキングロッド4とパーキングカム3とが、パーキングポール2に近づく方向(図3(a)での右方向)、すなわちパーキングカム3の前進方向に移動する。なお、この場合のソレノイドスイッチ14はOFFの状態であり、すなわち係止爪11はロックスリーブ10の半径方向すなわちパーキングロッド4の半径方向に動作可能な状態である。
パーキングカム3が前進方向に移動すると、パーキングカム3の第1ガイド面3aと係止爪11のガイド面11bとが当接しながら摺動し、その際、ガイド面11bにパーキングロッド4の軸心から遠ざかる方向(図3(a)での下方向)への荷重が作用することによって、係止爪11が戻しばね14bの弾性力に抗してパーキングロッド4の軸心から遠ざかる方向へ移動する。
さらにパーキングカム3が前進方向へ移動すると、ガイド面11bは第1ガイド面3aに続いて第2ガイド面3bと当接しながら摺動を続ける。そしてパーキングカム3の後退端面3dが、図3(a)において直線Aもしくは直線A’で示す位置に到達するまで移動すると、ガイド面11bと第2ガイド面3bとの当接状態が解消され、係止爪11が、戻しばね14bの弾性力により押圧されてパーキングロッド4の軸心へ近づく方向に移動する。すなわち係止爪11がロックスリーブ10の半径方向においてパーキングロッド4の軸心へ近づく方向に突出させられる。その結果、係止爪11が、係止爪11の係合端面11aとパーキングカム3の後退端面3dとが対向して当接もしくは所定のクリアランス分まで近接することになる。そして、係合端面11aと後退端面3dとが当接した状態もしくは近接した状態になると、パーキングカム3の後退移動が規制もしくは抑制される。
また、上記のようにパーキングカム3が前進方向に移動することによって、第1ガイド面3aとガイド面11bとが当接しながら摺動することに併せて、パーキングカム3の第1ガイド面3aとパーキングポール2の当接部2bとが当接して当接部2bが第1ガイド面3aの傾斜に沿って摺動し、パーキングポール2が、パーキングロッド4から離れる方向すなわちパーキングギヤ1に近づく方向(図3(a)での上方向)に移動する。言い換えると、パーキングポール2が、そのストローク方向(図3(a)のy方向)において、パーキングギヤ1に接近するようにストロークする。そしてパーキングカム3の後退端面3dが、図3(a)において直線Aもしくは直線A’で示す位置に到達するまで移動すると、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合った状態、すなわちパーキング装置Pがロックされた状態となる。
したがって、上記のように係止爪11が連結部材12およびシャフト14aを介して戻しばね14bの弾性力により押圧される構成は、ソレノイドスイッチ14がOFFの状態において、ガイド面11bに作用するパーキングロッド4の軸心から遠ざかる方向の荷重に対してのみ、その荷重方向すなわちロックスリーブ10の半径方向に動作可能となり、パーキングカム3の前進移動を可能にし、パーキングギヤ1とパーキングポール2とが噛み合わされた場合にパーキングカム3の後退移動を規制する、いわゆるラチェット機構として機能する。
続いて、シフトレバー15がパーキングレンジからパーキングレンジ以外のレンジに切り換えられる場合、すなわちパーキングギヤ1とパーキングポール2との噛み合いを解消させるパーキング解除操作がおこなわれる場合は、ソレノイドスイッチ14をONの状態に動作させる信号が、シフトレバー15からソレノイドスイッチ14へ出力される。その信号によってソレノイドスイッチ14がON状態に動作されると、係止爪11が、その先端とパーキングロッド4の軸心との距離がバーキングカム3の後退端面3dの外径部の半径よりも大きくなる位置、すなわちパーキングカム3を係合させることによるパーキングカム3の後退移動の規制が解除される位置に移動されて保持される。
前述したように、パーキング装置Pは、パーキング操作がおこなわれた際に、パーキングポール2のパーキングギヤ1との噛み合い部に対するパーキングギヤ1の外歯1aの位置、すなわちパーキングギヤ1の円周方向におけるパーキングギヤ1の各外歯1a間の歯溝とパーキングポール2の噛み合い部2aとの位相によって、パーキングギヤ1とパーキングポール2との噛み合い状態が異なる場合がある。すなわち、パーキングシフトされた際に、外歯1aと噛み合い部2aとが異なった位相にあると、噛み合い部2aの先端面2cと外歯1aの歯先面1bとが当接したいわゆる「非噛み合い」状態となる。そして、外歯1aと噛み合い部2aとが同一の位相にあると、噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に嵌合した状態、すなわちパーキングギヤ1がロックされたいわゆる「噛み合い」状態となる。
パーキング操作がおこなわれた際に「非噛み合い」状態になると、歯先面1bと先端面2cとが当接することにより、パーキングポール2の、そのストローク方向における移動が停止するとともに、パーキングカム3が、その第1ガイド面3aがパーキングポール2の当接部2bに当接したまま停止し、パーキングロッド4とパーキングカム3とが相対移動して、パーキングカム3とスプリングストッパ5とによりカムスプリング6が圧縮される。その結果、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わない状態が継続される。この「非噛み合い」状態が継続されている間はパーキングギヤ1および出力軸の回転が規制されないため、例えば、車両が坂路の途中で停車した場合に車両が坂路を降下することによって、あるいは、変速機から車輪に至る動力伝達系統内における例えばイナーシャトルクなどのトルクの残留分の影響によって、出力軸すなわちパーキングギヤ1が回転する場合がある。
上記のように、パーキング装置Pが「非噛み合い」状態のなったときにパーキングギヤ1が回転すると、歯先面1bと先端面2cとが当接している状態が変化して、噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に嵌合された「噛み合い」状態に移行する場合がある。すなわち、「非噛み合い」状態のときにパーキングギヤ1が回転すると、各外歯1a間の歯溝と噛み合い部2aとが異なる位相にある状態から、各外歯1a間の歯溝と噛み合い部2aとが同一の位相にある状態に変化して、噛み合い部2aの先端面2cと外歯1aの歯先面1bとが当接していた状態から、噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に嵌り込んだ状態に移行する場合がある。
パーキング装置Pが「非噛み合い」状態から「噛み合い」状態に移行する際には、パーキングポール2と当接してカムスプリング6を圧縮した状態で停止していたパーキングカム3が、パーキングポール2との当接状態が解消されることによって、カムスプリング6の弾性力によりカムストッパ7側すなわちパーキングカム3の前進方向(図3(a)での右方向)に向かって急激に移動することになる。パーキングカム3がカムスプリング6に押圧されてパーキングカム3の前進方向に向かって急激に移動すると、パーキングカム3とカムストッパ7とが衝突し、その衝突の際の衝撃力によってパーキングカム3が後退方向に大きく跳ね返されてしまう可能性がある。パーキングカム3が後退方向に大きく跳ね返されると、パーキングカム3に当接してパーキングギヤ1側(図3(a)での上側)に押圧されていたパーキングポール2が、パーキングカム3と離れてパーキングギヤ1側への押圧力を失った状態となって、パーキングギヤ1の回転をロックできなくなる可能性がある。
そこで、この第3の実施例によるパーキング装置Pでは、上記のように係止爪11がいわゆるラチェット機構として機能するように構成されていて、パーキングカム3の後退端面3dが、図3(a)において直線Aもしくは直線A’で示す位置に到達するまで移動してパーキング装置Pがロックされた状態となった場合に、係止爪11の係合端面11aとパーキングカム3の後退端面3dとが対向して当接もしくは近接することによって、パーキングカム3の後退移動を規制もしくは抑制することができる。すなわち、パーキング装置Pが「非噛み合い」状態から「噛み合い」状態に移行する際に、パーキンポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされるのと同時に、係合端面11aと後退端面3dとが対向して当接もしくは近接することで係止爪11がパーキングカム3の後退移動を規制もしくは抑制する位置に移動されることによって、「噛み合い」状態に移行する際にパーキングカム3がカムストッパ7と衝突して後退方向へ大きく跳ね返されることを回避することができる。
したがって、この第3の実施例におけるパーキング装置Pでは、シフトレバー15がパーキングレンジにシフトされると、すなわちパーキング操作がおこなわれると、パーキングロッド4およびパーキングカム3がパーキングカム3の前進方向へ移動され、パーキングカム3の後退端面3dが図3(a)において直線Aもしくは直線A’で示す位置に到達するまで移動されると、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされる。それとともに、係止爪11の係合端面11aとパーキングカム3の後退端面3dとが対向して当接した状態もしくは所定のクリアランス分まで近接した状態にされ、パーキングカム3が後退移動しようとする際に係合端面11aと後退端面3dとが係合されることで、パーキングカム3の後退移動が規制もしくは抑制される。
すなわち、前述の第1,第2の実施例と同様に、パーキングギヤ1とパーキングポール2とを噛み合わすパーキング操作がおこなわれた場合に、パーキングロッド4の軸線方向におけるパーキングポール2と反対側(図2での左側)へのパーキングカム3の後退移動が、パーキングカム3の後退端面3dが係止爪11の係合端面11aと係合されることにより規制される。その結果、パーキングカム3が後退方向に大きく戻されて、パーキングカム3がパーキングポール2をパーキングギヤ1側へ押圧するのに要する時間が期所の時間より長くなってしまうことを回避することができ、所望した車速でパーキングギヤ1の回転すなわち出力軸の回転をロックすることができる。
また、パーキングカム3と係合されてパーキングカム3の後退移動を規制もしくは抑制する係止爪11が、上記のようないわゆるラチェット機構として機能するように構成されていることで、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされるのと同時にパーキングカム3の後退移動を規制もしくは抑制できる状態に移動されるため、パーキングカム3の後退方向への大きな跳ね返りを防止することができる。
一方、シフトレバー15がパーキングレンジからパーキングレンジ以外のレンジにシフトされると、すなわちパーキング解除操作がおこなわれると、パーキングロッド4およびパーキングカム3がパーキングカム3の後退方向へ移動されるが、その際にパーキングレンジにシフトされていたことでパーキングカム3の後退移動を規制していた係止爪11が、パーキングカム3の後退移動の規制が解除される位置に移動して保持されることによって、パーキングカム3の後退移動が可能となる。
その結果、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合い、係止爪11によりパーキングカム3の後退移動が規制されている状態、すなわちパーキング操作がおこなわれ、パーキングギヤ1とパーキングポール2とが噛み合わされた状態から、パーキングギヤ1とパーキングポール2との噛み合いを解消させるパーキング解除操作がおこなわれた場合、係止爪11によるパーキングカム3の後退移動の規制が解除されて、パーキングカム3のパーキングポール2と反対側への戻りを確実にすることができる。
図4は、この発明に係るパーキング装置Pの第4の実施例における構成を説明するための模式図であって、図4(a)では、上述の図1,2,3の場合と同様、パーキング装置Pがパーキング操作がおこなわれてロックされた状態すなわちパーキング装置Pが「噛み合い」の状態を示し、図4(b)では、パーキング装置Pが「非噛み合い」の状態を示している。また、図1,2,3に示す構成と同様の部分には、図1,2,3に付した符号と同様の符号を付してその説明を省略する。
すなわち図4では、パーキングギヤ1、パーキングポール2、パーキングカム3、パーキングロッド4、スプリングストッパ5、カムスプリング6、カムストッパ7で構成される前述の第1,第3の実施例と同様のパーキング装置Pの構成の一部に対して、スプリングストッパ5とパーキングカム3との間に、選択的に介在させてその軸線方向において埋めた状態にしてパーキングカム3の後退方向(図4での左方向)への移動を規制する規制部材を備えた構成の例を示している。
図4(a)において、スプリングストッパ5とパーキングカム3の後退端面3dとの間であって、パーキングカム3の円周方向の所定の位置に、ロックロッド17が設けられている。ロックロッド17は、第1ロッド17aと第2ロッド17bとにより構成されていて、第1ロッド17aおよび第2ロッド17bは、それぞれ、例えば円柱形状の部材により形成され、ロックロッド17の軸線方向(図4(a)のx方向)に垂直な方向(図4(a)での紙面に垂直な方向)の中心軸のまわりに互いに回動可能なヒンジ17cによって連結されている。そして、第1ロッド17aのヒンジ17cと反対側(図4(a)での右側)の端部が、例えば蝶番のようなヒンジ17dを介してパーキングカム3に固定されていて、第2ロッド17bのヒンジ17cと反対側(図4(a)での左側)の端部が、例えば蝶番のようなヒンジ17eを介してスプリングストッパ5に固定されている。
したがってロックロッド17は、パーキングカム3のパーキングロッド4の軸線方向(図4(a)のx方向)への移動に伴って、ヒンジ17cを関節として、第1ロッド17aの軸線方向と第2ロッド17bの軸線方向とが一致した(すなわち第1ロッド17aの軸線方向と第2ロッド17bの軸線方向とのなす角度が180°となる)直線状態と、第1ロッド17aの軸線方向と第2ロッド17bの軸線方向とのなす角度が180°以外の所定の角度(0°以上で180°未満の範囲での所定の角度)となる屈曲状態とに変化することができる構成となっている。
ここで、ロックロッド17の軸線方向における長さは、ロックロッド17が上記のようにヒンジ17dおよびヒンジ17eを介してパーキングカム3およびスプリングストッパ5に固定された状態で、かつロックロッド17が直線状態である場合において、スプリングストッパ5のカムスプリング6と当接する側(図4(a)の右側)の端面5aのパーキングロッド4の軸線方向における位置(すなわち図4(a)で直線Eで示す位置)と、パーキングカム3の前進端面3cがカムストッパ7と当接している状態もしくは所定のクリアランスを設けて近接している状態(すなわちパーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合った状態)での後退端面3dのパーキングロッド4の軸線方向における位置(すなわち図4(a)で直線Aもしくは直線A’で示す位置)との間の距離D2と等しくなるように設定されている。
ロックロッド17の外周部分に、例えば環状の部材により形成され、ロックロッド17に軸線方向に移動自在に保持されるスライダ18が設けられている。また第2ロッド17bのスプリングストッパ5に近い側(図4(a)での左側)に、第2ロッド17bに固定されるスプリングストッパ19が設けられている。さらにそのスプリングストッパ19とスライダ18との間に、例えば圧縮コイルばねなどの弾性部材であるスプリング20が装着されている。スプリング20の内径はスライダ18の中空部分の最大内径よりも大きく設定されていて、外径はスライダ18の後退方向側(図4(a)での左側)の端面18b部の外径およびスプリングストッパ19の外径よりも小さく設定されている。したがって、スライダ18がスプリング20の弾性力によりその前進方向(図4(a)での右方向)に向けて押圧される構成となっている。
また、スライダ18は、連結部材21を介してワイヤ22の一方(図4(a)での右側)の端部と連結されていて、ロックロッド17が直線状態のときに、その軸線方向(図4(a)のx方向)における中心部分が、ヒンジ17cの位置付近にあって、スライダ18の前進方向側(図4(a)での右側)の端面18a部が第1ロッド17aの外周部分に位置し、端面18bが第2ロッド17bの外周部分に位置するように保持されている。すなわち、ロックロッド17が直線状態になる場合に、スライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態で保持されるように、スライダ18の形状・寸法、およびスプリング20のロックロッド17の軸線方向における長さあるいは弾性力、およびワイヤ22の長さあるいは設置位置などが設定されている。
したがって、上記のようにスライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態で保持された場合は、ロックロッド17は、屈曲状態となることができなくなり、直線状態に保持される。すなわち、スライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態で保持された場合、ロックロッド17は、直線状態に保持されてスプリングストッパ5とパーキングカム3との間に、その軸線方向すなわちロックロッド4の軸線方向において埋めた状態に介在されて、パーキングカム3の後退移動を規制する規制部材として機能する。
そして、ワイヤ22がロックロッド17の軸線方向においてヒンジ17cからスプリングストッパ19の方向へ所定の方法により牽引されることにより、スプリング20の弾性力に抗してロックロッド17の軸線方向においてヒンジ17cからスプリングストッパ19の方向へ、端面18aが第2ロッド17bの外周部分に位置するまで、スライダ18を移動することができるように構成されている。すなわち、ワイヤ22がロックロッド17の軸線方向においてヒンジ17cからスプリングストッパ19の方向へ牽引されると、図4(b)に示す状態のように、スライダ18が、スプリング20を圧縮しながらロックロッド17の軸線方向においてヒンジ17cからスプリングストッパ19の方向へ、その端面18aが第2ロッド17bの外周部分に位置する状態、すなわちスライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態が解除された状態まで移動するように、スライダ18の形状・寸法、およびスプリング20のロックロッド17の軸線方向における長さあるいは弾性力、およびワイヤ22の長さあるいは設置位置などが設定されている。
したがって、上記のようにスライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態が解除された状態で保持された場合には、ロックロッド17は、直線状態から屈曲状態となることが可能になり、パーキングカム3のパーキングロッド4の軸線方向における移動が可能になる。すなわち、スライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態が解除された状態で保持されることで、スライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態で保持された場合に、ロックロッド17が上記のように規制部材として機能することによるパーキングカム3の後退移動の規制が解除される。
なお、ワイヤ22をロックロッド17の軸線方向においてヒンジ17cからスプリングストッパ19の方向へ牽引する所定の方法は、例えば、前述の図3に示す第3の実施例における、連結部材12およびソレノイドスイッチ14およびシフトレバー15により構成される、係止爪11をパーキングカム3の後退移動を規制する位置とその規制を解除する位置とに選択的に移動させる機構を応用することができる。すなわち、ワイヤ22の他方(図4(a)での左側)の端部(図示せず)を、図3に示す上記の構成におけるソレノイドスイッチ14のシャフト14aに連結する構成とすることで、シフトレバー15からの所定の信号に応じてソレノイドスイッチ14の状態をON−OFFに切り換え、そのソレノイドスイッチ14がON状態となった場合に、シャフト14aがコイル部14cへ引き寄せられることによって、ワイヤ22をロックロッド17の軸線方向においてヒンジ17cからスプリングストッパ19の方向へ牽引することができる。
例えば、シフトレバー15がパーキングレンジにシフトされている状態からパーキングレンジ以外のレンジにシフトする操作、すなわちパーキング解除操作がおこなわれた場合に、ソレノイドスイッチ14をONの状態に動作させる信号を出力するように構成することで、パーキング解除操作がおこなわれた場合に、スライダ18を、第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態が解除された状態、すなわちロックロッド17を屈曲可能な状態に保持することができる。
つぎに、上記のパーキング装置Pの第4の実施例における動作を説明する。初めに、シフトレバー15がパーキングレンジ以外のレンジからパーキングレンジに切り換えられる場合、すなわちパーキングポール2とパーキングギヤ1とを噛み合わすパーキング操作がおこなわれる場合、前述の第1,第2,第3の実施例の場合と同様に、パーキングロッド4とパーキングカム3とが、パーキングカム3の前進方向に移動する。なお、この時点では、ワイヤ22は牽引された状態、すなわちスライダ18は第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態が解除された状態に保持されていて、したがってロックロッド17は屈曲可能な状態である。
この状態でパーキングカム3が前進方向に移動すると、パーキングポール2がパーキングギヤ1に接近するようにストロークする。このとき、パーキングギヤ1の円周方向において、パーキングギヤ1の各外歯1a間の歯溝とパーキングポール2の噛み合い部2aとが同一の位相にあれば、噛み合い部2aが各外歯1a間の歯溝に嵌合する。すなわち、図4(a)に示す状態のように、パーキングポール2がパーキングギヤ1側に押し付けられてパーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされ、パーキングギヤ1の回転がパーキングポール2によってロックされた状態となってパーキングギヤ1および出力軸の回転が規制される、いわゆる「噛み合い」状態になる。
このとき、ワイヤ22の牽引状態を解除することで、スライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態にされ、ロックロッド17が、屈曲状態となることができない直線状態に保持される。その結果、ロックロッド17が上述のように規制部材として機能し、パーキングカム3の後退移動が規制される。
したがって、上記のように構成されたロックロッド17は、パーキングポール2とパーキングギヤ1とを噛み合わすパーキング操作がおこなわれて、パーキングカム3の後退端面3dのパーキングロッド4の軸線方向における位置が図4(a)で直線Aもしくは直線A’で示す位置となった場合、スライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態で保持されることによりロックロッド17が直線状態に保持され、スプリングストッパ5とパーキングカム3との間に、その軸線方向において埋めた状態に規制部材として選択的に介在させられて、パーキングカム3の後退移動を規制する規制手段として機能する。
これに対して、パーキングギヤ1の円周方向において、各外歯1a間の歯溝と噛み合い部2aとが異なる位相にある場合には、図4(b)に示すように、パーキングシフトされた際にパーキングポール2の噛み合い部2aがパーキングギヤ1の各外歯1a間の歯溝に嵌り込まない、いわゆる「非噛み合い」状態になる。このような「非噛み合い」状態になると、歯先面1bと先端面2cとが当接することによって、パーキングポール2の、そのストローク方向(図4(b)のy方向)における移動が停止するとともに、パーキングカム3が、その第1ガイド面3aがパーキングポール2の当接部2bに当接したまま停止し、パーキングロッド4とパーキングカム3とが相対移動して、パーキングカム3とスプリングストッパ5とによりカムスプリング6が圧縮される。
また、上記のようにパーキングロッド4とパーキングカム3とが相対移動することにより、パーキングカム3はパーキングロッド4に対してパーキングカム3の後退方向(図4(b)の左方向)へ移動することになり、そのパーキングカム3の後退移動に伴ってロックロッド17が、図4(b)に示すように屈曲状態にされる。そして、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わない状態が継続される。
前述したように、「非噛み合い」状態のときにパーキングギヤ1が回転すると、各外歯1a間の歯溝と噛み合い部2aとが異なる位相にある状態から、各外歯1a間の歯溝と噛み合い部2aとが同一の位相にある状態に変化して、「噛み合い」状態に移行する場合がある。パーキング装置Pが「非噛み合い」状態から「噛み合い」状態に移行する際には、パーキングカム3とカムストッパ7とが衝突し、その衝突の際の衝撃力によってパーキングカム3が後退方向に大きく跳ね返されてしまい、パーキングギヤ1の回転をロックできなくなる可能性がある。
そこで、この第4の実施例によるパーキング装置Pでは、上記のように、パーキングカム3の後退端面3dが、図4(a)において直線Aもしくは直線A’で示す位置に到達するまで移動してパーキング装置Pがロックされた状態となった場合すなわちパーキング装置Pが「噛み合い」状態になった場合に、ロックロッド17を直線状態に保持するように構成することで、パーキングカム3の後退移動を規制もしくは抑制することができる。すなわち、パーキング装置Pが「非噛み合い」状態から「噛み合い」状態に移行する際に、パーキンポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされるのと同時に、ロックロッド17が直線状態に保持されて屈曲状態となることが不可能にされることによって、「噛み合い」状態に移行する際にパーキングカム3がカムストッパ7と衝突して後退方向へ大きく跳ね返されることを回避することができる。
したがって、この第4の実施例におけるパーキング装置Pでは、例えば、前述の第3の実施例の場合と同様に、シフトレバー15がパーキングレンジにシフトされると、すなわちパーキング操作がおこなわれると、パーキングロッド4およびパーキングカム3がパーキングカム3の前進方向へ移動され、パーキングカム3の後退端面3dが図4(a)において直線Aもしくは直線A’で示す位置に到達するまで移動されると、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされる。それとともに、ロックロッド17が直線状態に保持されて、パーキングカム3の後退移動が規制もしくは抑制される。
その結果、前述の第1,第2,第3の実施例と同様に、パーキングギヤ1とパーキングポール2とを噛み合わすパーキング操作がおこなわれた場合に、パーキングロッド4の軸線方向におけるパーキングポール2と反対側(図2での左側)へのパーキングカム3の後退移動が、パーキングカム3の後退端面3dが係止爪11の係合端面11aと係合されることにより規制される。その結果、パーキングカム3が後退方向に大きく戻されて、パーキングカム3がパーキングポール2をパーキングギヤ1側へ押圧するのに要する時間が、期所の時間より長くなってしまうことを回避することができ、所望した車速でパーキングギヤ1の回転すなわち出力軸の回転をロックすることができる。
また、上記のように、パーキング装置Pが「噛み合い」状態になった場合に、ロックロッド17を直線状態に保持するように構成されていることで、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合わされるのと同時にパーキングカム3の後退移動を規制もしくは抑制できる状態にされるため、パーキングカム3の後退方向への大きな跳ね返りを防止することができる。
一方、例えば、前述の第3の実施例の場合と同様に、シフトレバー15がパーキングレンジからパーキングレンジ以外のレンジにシフトされると、すなわちパーキング解除操作がおこなわれると、パーキングロッド4およびパーキングカム3がパーキングカム3の後退方向へ移動されるが、その際にパーキングレンジにシフトされていたことで、直線状態に保持されてパーキングカム3の後退移動を規制していたロックロッド17が、屈曲可能な状態とされることによって、パーキングカム3の後退移動が可能となる。
したがって、上記のように構成されたロックロッド17は、パーキングポール2とパーキングギヤ1との噛み合いを解消させるパーキング解除操作がおこなわれた場合、スライダ18が第1ロッド17aと第2ロッド17bとに跨って覆った状態が解除された状態で保持されることにより、ロックロッド17が屈曲可能な状態に保持され、上記のようにロックロッド17が規制手段として機能した際のパーキングカム3の後退移動の規制を解除する解除手段として機能する。
その結果、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが噛み合い、直線状態に保持されたロックロッド17によりパーキングカム3の後退移動が規制されている状態、すなわちパーキング操作がおこなわれ、パーキングギヤ1とパーキングポール2とが噛み合わされた状態から、パーキングギヤ1とパーキングポール2との噛み合いを解消させるパーキング解除操作がおこなわれた場合、規制部材として機能するロックロッド17によるパーキングカム3の後退移動の規制が解除されて、パーキングカム3のパーキングポール2と反対側への戻りを確実にすることができる。
なお、この発明は上記の具体例に限定されないのであって、上記の具体例では、弾性部材としてカムスプリング6が設けられ、規制手段としてストッパ8あるいは係合端面9bを有するパーキングロッド9が設けられた例を示しているが、弾性部材が規制手段を兼ねることも可能である。すなわち、例えばカムスプリング6がパーキングカム3の後退移動によりその後退方向に圧縮された場合に、パーキングカム3の後退端面3dと当接するカムスプリング6の端面のパーキングロッド4の軸線方向における位置を、ストッパ8あるいはパーキングロッド9の係合端面9bがパーキングカム3の後退端面3dと係合する位置と等しくなるようにカムスプリング6の最小高さ(カムスプリング6が最大限に圧縮された際の軸線方向の長さ)を設定することで、その場合のカムスプリング6が、この発明における弾性部材としての機能を備えるとともに、規制手段としての機能を兼ね備えた構成とすることも可能である。
また、この発明において、「パーキングポールと反対側へのパーキングカムの後退移動を規制する規制手段」は、上記の具体例では、パーキングカム3の後退端面3dと当接もしくは近接させて係合させることによって、パーキングカム3の後退移動を規制する手段として構成された例を示しているが、パーキングカム3と係合させる例としては、例えば電磁的にパーキングカム3の後退端面3dなどと係合させて、パーキングカム3の後退移動を規制する手段として構成することも可能である。
さらに、この発明において、「ストッパとパーキングカムとの間に、その軸線方向において埋めた状態に規制部材を選択的に介在させてパーキングカムの後退移動を規制する手段」は、例えば、規制部材がストッパとパーキングカムとの間に設けられるとともに、直線状態と屈曲状態とを、あるいは伸長状態と短縮状態とを、あるいは係合状態と解放状態とを選択的に設定できる部材により構成され、パーキングギヤとパーキングポールとを噛み合わすパーキング操作がおこなわれた場合に、前記規制部材を選択的に直線状態、あるいは伸長状態、あるいは係合状態にすることにより、ストッパとパーキングカムとの間に介在されてパーキングカムの後退移動を規制する手段とすることも可能である。
1…パーキングギヤ、 2…パーキングポール、 3…パーキングカム、 4,9…パーキングロッド、 5…スプリングストッパ(ストッパ)、 6…カムスプリング(弾性部材)、 7…カムストッパ、 8…ストッパ(規制手段)、 9a…段差部(規制手段)、 11…係止爪(規制手段・係止部材・解除手段)、 17…ロックロッド(規制手段・規制部材・解除手段)、 P…パーキング装置。