JP4572524B2 - 磁気抵抗効果膜の製造方法 - Google Patents
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この磁気抵抗効果膜は、磁化の向きが所定の向きにピン止めされたピンド層と、磁化の向きが外部磁場に対応して変化するフリー層とを備えたものであり、外部磁場が加わった際、ピンド層の磁化の向きとフリー層の磁化の向きとの相対関係に応じた抵抗値を呈するようになっている。このため、磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定することで外部磁場を検出することができ、磁気センサとして利用できる。
前記規則化熱処理とは、ピニング層の磁化の向きを所望の方向とした状態で規則合金化することであり、この規則化熱処理によって磁化の向きが所望の方向となったピニング層と、ピンド層との間に交換結合磁界が生じ、ピンド層の磁化の向きがピン止め(固着)される。
2つのピンド層(第1のピンド層,第2のピンド層)の磁化は、反強磁性結合により強固に結合し、かつこの磁化の向きは互いに逆方向を向くことになるため、フリー層側の第2のピンド層の磁化の向きは、特許文献1等の磁気抵抗効果膜(ピンド層が1層のみ)のピンド層の磁化の向きとは逆方向となる。
このような磁気抵抗効果膜は、基板上に、ピニング層,第1のピンド層,SAFスペーサ層,第2のピンド層を順次形成し、更にスペーサ層,フリー層も形成した後に、磁場中で加熱してピニング層の規則化熱処理を行うことによって製造される(特許文献2参照。)。
しかし、スペーサ層は通常、2〜3nm(20〜30Å)であり、300℃以上の高温度で規則化熱処理を行った場合、スペーサ層のCu等の構成成分が拡散する恐れがあった。
このようなスペーサ層の構成成分の拡散を抑えるためには、規則化熱処理を比較的低温度で行う必要があり、規則化熱処理によってピニング層の磁化の向きを所定の方向に向いた状態とすることが不十分となる。
加熱中に数kOeの強い磁場を印加することは技術上難しく、SAFピンド層が設けられた磁気抵抗効果膜では、必要となる強さの磁場を印加し難く、ピニング層の磁化の向きを所定の方向に向いた状態とすることが不十分となる。
また、ピニング層を規則化熱処理する際の印加磁場によって、フリー層の磁気異方性の向きが規則化熱処理の印加磁場の方向に回転してしまい、磁気異方性を所望の方向に揃えることが難しい場合があった。
そこで、更に鋭意検討した結果、スペーサ層、フリー層を形成する前にピニング層の規則化熱処理を行う際に、層の表面に酸化層が形成されており、この酸化層を除去することによって優れた磁気抵抗効果が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
このため、磁気抵抗効果膜に印加された磁場に関わらず、SAFピンド層の磁化が常に
一定方向を向いた状態とすることができる。これにより、磁気抵抗効果膜に印加された磁
場の方向や強さを変化させた際、SAFピンド層の磁化を一定方向に保持した状態で、フ
リー層の磁化方向のみを変化させることができ、高感度で再現性に優れた磁気抵抗効果が
得られる。
が形成されていない状態でピニング層の規則化熱処理を行うことができ、これにより高温
度で長時間の規則化熱処理を行うことができる。
このため、ピニング層の磁化の方向を確実に所望の方向とすることができ、SAFピン
ド層とピニング層との交換結合磁界によってSAFピンド層の磁化の向きを更に強固にピ
ン止めできる。
形成されていない状態でピニング層の規則化熱処理を行うことができ、フリー層の磁気異
方性の向きが規則化熱処理にて印加する磁場の方向に回転することがなく、所望の方向に
磁気異方性を揃えることができる。
磁場で規則化熱処理を行うことができ、例えば製造工程にて、発生磁場が弱く、安価な磁
場発生装置を使用することができる。これにより、設備費を低減でき、安価に磁気抵抗効
果膜を製造できる。
図1〜3は、参考磁気抵抗効果膜の製造方法において、各工程を説明する模式的な断面図である。
図1は、基板1上に、ピニング層2とピンド層3を順に積層してなる第3の構造体4が
形成された状態を示す概略図である。
工程Dとして、以下に示されたように、基板1上に、ピニング層2とピンド層3を順に
積層してなる第3の構造体4を形成した後に、ピニング層2の規則化熱処理を行う。
まず、石英ガラスや酸化アルミニウムなどの絶縁性材料から構成された基板1上に、ピ
ニング層2として、PtMnやNiMnなどのCuAu−I型規則合金から構成された反
強磁性体膜を、その厚さが15〜30nmとなるように形成する。
た強磁性体膜を形成する。
ここで、ピンド層3は、後述する規則化熱処理によってその表面が酸化されて酸化層と
なる。この酸化層は工程Eにて除去するため、除去する膜厚を考慮して、予め必要となる
膜厚よりも厚くピンド層3を形成しておく。工程Dでは、通常、ピンド層3の厚さが3〜
10nmとなるように、ピンド層3を形成する。
前記ピニング層2とピンド層3を形成する方法としては、公知のスパッタリング法や蒸
着法などの成膜技術が適用できる。このピニング層2とピンド層3とが順に積層されたも
のが第3の構造体4となる。
則化熱処理を行う。
規則化熱処理では、磁場の向きが、ピニング層2の面内方向、すなわちピニング層2の
厚さ方向に垂直な方向となるように磁場を印加する。印加する磁場の強さは、100Oe
以上であり、これによりピニング層2の磁化の向きを面内の所定の方向にすることができ
、このピニング層とピンド層との交換結合磁界によってピンド層の磁化の向きを所望の方
向に強固にピン止めできる。
前記規則化熱処理の加熱温度、加熱時間は、特に限定されず、ピニング層2を構成する
材質によって適宜決定される。例えば、ピニング層2としてPtMnから構成された反強
磁性体膜を形成する場合、260℃以上、2時間以上で規則化熱処理する。
、これにより表面酸化を極力抑制することができる。
以上により、ピニング層2を規則合金化でき、磁化の向きを面内の所定の方向にするこ
とができる。これにより、ピニング層2とピンド層3間に交換結合磁界が生じ、ピンド層
3の磁化の向きがピン止め(固着)されることとなる。
前記工程Dにおいて、第3の構造体4を磁場中で熱処理した際、第3の構造体4の表面
が酸化されて酸化層が形成された状態となる。
そこで、工程Eとして、前記工程Dの後に、第3の構造体4の表面、すなわちピンド層
3の表面に形成された酸化層を除去する。この酸化層を除去する方法としては、イオンミ
リング法やプラズマエッチング法などが適用できる。
ことで、第3の構造体4の表面の酸化層を比較的簡便に除去できる。
通常、ピンド層3をその表面から1nm以上除去することによって、酸化層を除去でき
る。このように酸化層を除去することによって、ピンド層3の厚さを2〜4nmとする。
また、工程Eでは、酸化層を除去後、第3の構造体4の表面が平滑であり、かつ表面の
結晶構造の乱れのばらつきを極力低減するように、表面に対するイオンの照射角度や、イ
オンの照射量などを適宜調整して酸化層の除去を行うことが好ましい。これにより、更に
高感度で再現性に優れた磁気抵抗効果が得られる。
層してなる第4の構造体7が形成された状態を示す概略図である。
工程Fとして、酸化層が除去された第3の構造体4上に、スペーサ層5とフリー層6を
順に積層してなる第4の構造体7を形成する。
まず、前記工程Eにて酸化層を真空中で除去した後、この真空雰囲気を維持したまま、
表面の酸化層が除去された第3の構造体4上に、スペーサ層5を形成する。
前記スペーサ層5として、CuやCu合金などの非磁性の導電性金属薄膜を、その厚さ
が2〜3nmとなるように形成する。スペーサ層5を形成する方法としては、公知のスパ
ッタリング法や蒸着法などの成膜技術が適用できる。
フリー層6としては、例えば、厚さが1〜2nmのCoFe磁性膜61と、厚さが2〜5nmのNiFe磁性膜62と、厚さが6〜10nmのCoZrNbアモルファス磁性膜63とが順次積層されたものなどが適用できる。
NiFe磁性膜62とCoZrNbアモルファス磁性膜63は、軟質の磁性体である。またCoFe磁性膜61は、NiFe磁性膜62のNiとスペーサ層5のCuの拡散を低減するように機能するものである。
なお、フリー層6としては、前記CoZrNbアモルファス磁性膜63が積層されていない構成であっても構わない。
次に、フリー層6上に、キャップ層(図示省略)として、Ta,Tiなどを、その厚さが2〜3nmとなるように形成する。
法などの成膜技術が適用できる。
特に、フリー層6を形成する際、層の面内方向に100Oe以上の誘導磁場を印加した
状態で成膜する。これにより、フリー層6に、印加した誘導磁場と同一方向の磁気異方性
を付与することができる。
以上により、基板1上に、ピニング層2とピンド層3を順に積層してなる第3の構造体
4と、スペーサ層5とフリー層6を順に積層してなる第4の構造体7とが順次重ねられた
磁気抵抗効果膜10が形成される。
前記磁気抵抗効果は、2つの磁性層間に非磁性層を介在させた際、非磁性層の上下に位置する2つの磁性層の磁化の向きによって、非磁性層の上下の界面における電子の散乱(電気抵抗に寄与)又は鏡面反射(電気抵抗には寄与しない)の度合い、すなわち非磁性層の電気抵抗が変化する現象である。
酸化層は、電子を全反射するように機能するため、ピンド層3とスペーサ層5間に酸化層が存在する場合、ピンド層3とフリー層5の磁化の向きに関わらず電子を全反射してしまい、磁気抵抗効果が得られないことになる。
このため、磁気抵抗効果膜10に印加された磁場に関わらず、ピンド層3の磁化が常に一定方向を向いた状態とすることができる。これにより磁気抵抗効果膜10に印加された磁場の方向や強さを変化させた際、ピンド層3の磁化を一定方向に保持した状態で、フリー層6の磁化方向のみを変化させることができ、高感度で再現性に優れた磁気抵抗効果が得られる。
このため、例えばフリー層6の磁気異方性を、規則化熱処理によって規則合金化されたピニング層2の磁化の方向に対して平行とならない方向とすることもでき、必要となる磁気抵抗効果に応じてフリー層6の磁気異方性の向きを調整することができる。
にPtMnよりも高温度で規則化熱処理する必要のある材料を適用できる。
ピニング層2として、NiMn膜を用いた場合、PtMn膜を用いた場合に比べて、ピ
ニング層2とピンド層3間の交換結合磁界が大きく、ピンド層3の磁化の向きを更に強固
にピン止めでき、高感度で再現性に優れた磁気抵抗効果膜が実現できる。
また、NiMnは、より高いブロッキング温度を有し、熱ゆらぎに対して安定な磁気抵
抗効果膜10が実現できる。また、NiMnは安価であるため、製造コストを低減できる
。
参考の磁気抵抗効果膜の製造方法によれば、工程Dの後に、第3の構造体の表面から酸化層を除去する工程Eを具備することによって、ピンド層とスペーサ層間に介在する酸化層をほとんど取り去ることができる。
このため、磁気抵抗効果膜に印加された磁場の方向や強さを変化させた際、高感度で再
現性に優れた磁気抵抗効果が得られる。
更に、第3の構造体を形成して熱処理する工程Dを具備することによって、スペーサ層
が形成されていない状態でピニング層の規則化熱処理を行うことができ、これにより高温
度で長時間の規則化熱処理を行うことができる。
このため、ピニング層の磁化の方向を確実に所望の方向とすることができ、このピニン
グ層とピンド層との交換結合磁界によってピンド層の磁化の向きを強固にピン止めできる
。
また、第3の構造体を形成して熱処理する工程Dを具備することによって、フリー層が
形成されていない状態でピニング層の規則化熱処理を行うことができ、フリー層の磁気異
方性の向きが規則化熱処理にて印加する磁場の方向に回転することがなく、所望の方向に
磁気異方性を揃えることができる。
本実施形態では、本発明の磁気抵抗効果膜の製造方法を用いて、ピンド層として、SAFピンド層31が用いられた磁気抵抗効果膜20を製造する場合について説明する。
SAFピンド層31は、非磁性層のSAFスペーサ層31aを介して強磁性体の第1の
ピンド層31bと第2のピンド層31cとが形成されたものであり、第1のピンド層31
bと第2のピンド層31c間で反強磁性結合が生じ、ピニング層2との交換結合磁界によ
ってピン止めされた磁化の向きが強固に保持できるようになっている。
図4は、基板1上に、ピニング層2と第1のピンド層31bを順に積層してなる第3の
構造体8が形成された状態を示す概略図である。
工程Aとして、基板1上に、ピニング層2と第1のピンド層31bを順に積層してなる
第1の構造体8を形成した後に、ピニング層2の規則化熱処理を行う。
ピニング層2を形成する方法は、参考実施形態と同様であるため、詳細の説明を省略する。
体膜を形成する。
第1のピンド層31bは、後述する工程Bにて除去する膜厚を考慮し、予め必要となる
膜厚よりも厚く形成しておく。工程Aでは、通常、第1のピンド層31bの厚さが3〜1
0nmとなるように第1のピンド層31bを形成する。
そして、第1の構造体8を、外部から磁場を印加した状態で熱処理し、ピニング層2の
規則化熱処理を行う。
工程Bとして、第1のピンド層31bをその表面から1nm以上除去することによって
、第1のピンド層31bの表面、すなわち第1の構造体8の表面から酸化層を除去する。
このように酸化層を除去することによって、第1のピンド層31bの厚さを2〜4nmと
する。
ンド層31c,スペーサ層5,フリー層6を順に積層してなる第2の構造体9が形成され
た状態を示す概略図である。
工程Cとして、SAFスペーサ層31a,第2のピンド層31b,スペーサ層5,フリ
ー層6を順に積層してなる第2の構造体9を形成する。
まず、酸化層が除去された第1の構造体8上に、SAFスペーサ層31aを形成する。
前記SAFスペーサ層31aとして、Ru,Rh,Ir,Cr,又はこれらの元素から構
成された合金などの非磁性金属膜を、その厚さが0.5〜1nmとなるように形成する。
そして、SAFスペーサ層31a上に、第2のピンド層31cとして、第1のピンド層
31bと同様にCoFe磁性膜やNiFe磁性膜などの強磁性体膜を、その厚さが2〜4
nmとなるように形成する。
SAFピンド層31では、非磁性のSAFスペーサ層31aを介した第1のピンド層31bと第2のピンド層31c間にて反強磁性結合を形成できる。このため、第1のピンド層31bと第2のピンド層31cの磁化の向きとは互いに反対方向となり、SAFピンド層31の磁化の強さを小さくすることができる。
これにより、SAFピンド層31の磁化がフリー層6につくる磁場の強さを非常に小さなものとすることができ、フリー層6の磁化の向きが、磁気抵抗効果膜20に印加された磁場に応じて変化しやすくなり、高感度の磁気抵抗効果膜20が実現できる。
6,キャップ層(図示省略)を順に積層する。
以上により、基板1上に、ピニング層2と第1のピンド層31bを順に積層してなる第
3の構造体8と、SAFスペーサ層31a,第2のピンド層31c,スペーサ層5,フリ
ー層6を順に積層してなる第2の構造体9とが順次重ねられた磁気抵抗効果膜20が形成
される。
た後に、第1の構造体8の表面から酸化層を除去することによって、第1のピンド層31
bとSAFスペーサ層31a間に介在する酸化層をほとんど取り去ることができる。
このため、第1のピンド層31bと第2のピンド層31c間で生じる反強磁性結合が、
酸化層によって阻害されることを抑制でき、SAFピンド層31の磁化の向きを更に強固
に保持することができる。
これにより、磁気抵抗効果膜に印加された磁場の方向や強さを変化させた際、SAFピ
ンド層31の磁化を一定方向に保持した状態で、フリー層6の磁化方向のみを変化させる
ことができ、高感度で再現性に優れた磁気抵抗効果が得られる。
が形成されておらず、参考実施形態と同一の作用効果が得られる。
このため、比較的弱い磁場で規則化熱処理を行うことができ、例えば製造工程において、発生磁場が弱く、安価な磁場発生装置を使用することができる。これにより、設備費を低減でき、安価に磁気抵抗効果膜20を製造できる。
い。
[参考例1]
以下に述べる参考例1では、参考実施形態の磁気抵抗効果膜の製造方法を用いて、磁気抵抗効果膜10を製造した。
(1)工程D
基板1上に、ピニング層2としてPtMn磁性膜を、その厚さが24nmとなるように
形成した。そして、形成されたピニング層2上に、ピンド層3として、CoFe磁性膜を
、その厚さが4nmとなるように形成した。
次に、ピニング層2とピンド層3が順に積層された第3の構造体4を、外部から200
Oeの磁場を印加した状態で、4×10−6Torr以下の真空中、280℃で4時間熱
処理し、ピニング層2の規則化熱処理を行った。
イオンミリング法によって、真空中にてピンド層3の表面を1.5nm除去した。これ
により、ピンド層3表面に形成された酸化層を除去した。
真空雰囲気を維持したまま、表面の酸化層が除去された第3の構造体4上に、スペーサ
層5として、Cu層を、その厚さが2.6nmとなるように形成した。
そして、形成されたスペーサ層5上に、フリー層6として、厚さが1.2nmのCoF
e磁性膜61と、厚さが3.3nmのNiFe磁性膜62と、厚さが8nmのCoZrN
bアモルファス磁性膜63とを順次積層した。
ここで、フリー層6は、層の面内方向であってピンド層3の磁化方向と直交する方向に
、200Oeの誘導磁場を印加した状態で形成した。
更に、フリー層6上に、キャップ層として、厚さが2.5nmのTa層を形成した。
以上により、フリー層6の磁気異方性がピンド層3の磁化方向と直交する方向である磁
気抵抗効果膜10を製造した。
参考例2では、酸化層を除去する工程を行わず、他の工程は参考例1と同様にして磁気
抵抗効果膜を製造した。
すなわち、参考例2が参考例1と異なる点は、ピニング層2の規則化熱処理を行った後
に、第3の構造体4の表面の酸化層を除去せずに、第4の構造体7を積層した点である。
それ以外は、参考例1と同様にして磁気抵抗効果膜を製造した。
れた磁気抵抗効果膜10であり、(b)は、参考例2で製造された磁気抵抗効果膜である
。
ここで、MR曲線とは、ピンド層3のピン止めされた磁化の向きに対して平行な方向に
磁場を印加した際の磁気抵抗効果膜の抵抗値(R)を印加磁場の強さ(H)でプロットし
たものである。図7では、抵抗値を相対値として示している。
このため、MR曲線が図7(a)となる磁気抵抗効果膜10では、フリー層6の磁気異方性の向きが、精度良くピンド層3のピン止めされた磁化の向きに対して直交する方向であることが分かる。
酸化層を除去することによって、ピンド層3とスペーサ層5間に介在する酸化層をほとん
ど取り去ることができる。このため、図7(a)に示されたように優れた磁気抵抗効果が
得られる。
このため、フリー層6の磁気異方性の向きが、ピンド層3の磁化の向きに対して直交する方向となる磁気抵抗効果膜10を製造でき、図7(a)に示されたように、所望のMR曲線を有する磁気抵抗効果膜10が実現できたと考えられる。
場に対して、電気抵抗が変化しておらず、磁気抵抗効果が得られていないことが分かる。
これは、ピンド層3とスペーサ層5間に酸化層が介在し、この酸化層によってピンド層3
とフリー層5の磁化の向きに関わらず電子が全反射されてしまい、これにより磁気抵抗効
果が得られないと考えられる。
具体例1では、本発明の磁気抵抗効果膜の製造方法を用いて、SAFスペーサ層31aの厚さが異なる種々の磁気抵抗効果膜20を製造した。
(1)工程A
基板1上に、ピニング層2としてPtMn磁性膜を、その厚さが20nmとなるように
形成した。そして、形成されたピニング層2上に、第1のピンド層31bとして、CoF
e磁性膜を、その厚さが6nmとなるように形成した。
次に、ピニング層2と第1のピンド層31bが順に積層された第1の構造体8を、外部
から2kOeの磁場を印加した状態で、4×10−6Torr以下の真空中、270℃で
3時間熱処理し、ピニング層2の規則化熱処理を行った。
イオンミリング法によって、真空中にて第1のピンド層31bの表面を3.5nm除去
した。これにより、第1のピンド層31b表面に形成された酸化層を除去した。
真空雰囲気を維持したまま、表面の酸化層が除去された第1の構造体8上に、SAFス
ペーサ層31aとして、Ru層を所定の厚さ形成した。
そして、SAFスペーサ層31a上に、第2のピンド層31cとして、CoFe磁性膜
を、その厚さが2.5nmとなるように形成した。以上により第1のピンド層31b,S
AFスペーサ層31a,第2のピンド層31cが順に積層されたSAFピンド層31を形
成した。
そして、形成されたスペーサ層5上に、フリー層6として、厚さが1nmのCoFe磁性膜61と、厚さが3.3nmのNiFe磁性膜62と、厚さが4nmのCoZrNbアモルファス磁性膜63とを順次積層した。
ここで、フリー層6は、層の面内方向であってピニング層2の磁化方向と平行な方向に、200Oe以上の誘導磁場を印加した状態で形成した。
更に、フリー層6上に、キャップ層として、厚さが2.5nmのTi層を形成した。
具体例2は、酸化層を除去する工程を行わず、第1の構造体8と第2の構造体9とを連
続して順次形成した後に、12kOeの磁場中で規則化熱処理して磁気抵抗効果膜を製造
した。各層の製造条件等は、具体例1と同一であるため説明を省略する。
31の一軸反転磁界(Hua’)と、SAFスペーサ層31aの厚さとの関係を示す図で
ある。ここで、一軸反転磁界とは、ピニング層2に接する第1のピンド層31bの磁化が
反転する磁界を表すものであり、この一軸反転磁界が大きいほど、SAFピンド層31の
磁化は一定方向に強固に保持されていることになる。
一般にSAFスペーサ層31aの厚さが薄くなるほど、SAFスペーサ層31aを介し
た第1のピンド層31bと第2のピンド層31c間の反強磁性結合を大きくすることがで
き、SAFピンド層31の磁化の向きを強固に保持できる。
則化熱処理の際、SAFピンド層31の第1のピンド層31bと第2のピンド層31c間
の反強磁性結合で強固に結びついた磁化を飽和できる強さの磁化を印加しなければならな
い。
しかし、SAFスペーサ層31aの厚さが8Å以下では、12kOeの強さの磁場でも
SAFピンド層31の磁化を飽和させることができず、ピニング層2の磁化方向を、規則
化熱処理時の印加磁場の方向と平行とすることができない。
このように規則化熱処理によってピニング層2の磁化方向を所望の向きとすることがで
きず、これによりピニング層2とSAFピンド層31の交換結合磁界によりSAFピンド
層31の磁化の向きを所定の向きに強固にピン止めすることが難しくなり、SAFスペー
サ層31aの厚さが8Å以下では、SAFピンド層31の一軸反転磁界(Hua’)が低
下してしまうと考えられる。
このようにSAFピンド層31の一軸反転磁界(Hua’)が低い場合、磁気抵抗効果
膜に印加する磁場の方向や強さを変化させた際、磁気抵抗効果膜の感度や再現性が悪くな
ってしまう。
が5〜13Åにおいて、SAFスペーサ層31aの厚さが薄くなるほど、SAFピンド層
31とピニング層2の一軸反転磁界は直線的に増加している。
具体例1では、SAFスペーサ層31を形成する前に規則化熱処理を行うため、規則化
熱処理の際、SAFスペーサ層31の磁化を十分飽和させるための強い磁場を印加する必
要が無く、2kOeの弱い磁場でも十分にピニング層2の磁化を所望の向きとすることが
できる。
このため、ピニング層2の規則化熱処理を行った後に、第2の構造体9を形成すると、
ピニング層2の磁化方向が所望の向きとなっているため、ピニング層2とSAFピンド層
31間の交換結合磁界によりSAFピンド層31の磁化の向きを所定の向きにピン止めで
きる。
除去することによって、第1のピンド層31bとSAFスペーサ層31a間に介在する酸
化層をほとんど取り去ることができる。これによりSAFスペーサ層31aを介した第1
のピンド層31bと第2のピンド層31c間にて大きな反強磁性結合を得ることができ、
SAFピンド層31の磁化の向きを強固に保持できる。
このため、具体例1の磁気抵抗効果膜20では、SAFピンド層31の一軸反転磁界(
Hua’)が、具体例2のようにSAFスペーサ層31aの厚さが8Å以下でも低下する
ことなく、大きな値が得られ、SAFスペーサ層31aの厚さが薄くなるほど、SAFピ
ンド層31とピニング層2の一軸反転磁界が増加することになる。
特に、SAFピンド層31とピニング層2の一軸反転磁界は、SAFスペーサ層31a
の厚さに対して直線的に変化しており、この直線関係をもとにして、所望の一軸反転磁界
が得られるSAFスペーサ層31aの厚さを推定することができる。このため、所望の磁
気抵抗効果が得られるように、各層の厚さなどを容易に決定できる。
層、6‥‥フリー層、7‥‥第4の構造体、8‥‥第1の構造体、9‥‥第2の構造体、
10,20‥‥磁気抵抗効果膜、31a‥‥SAFスペーサ層、31b‥‥第1のピンド
層、31c‥‥第2のピンド層
Claims (2)
- 基板上に、反強磁性体膜からなるピニング層と強磁性体膜からなる第1のピンド層を順に積層してなる第1の構造体と、SAFスペーサ層,第2のピンド層,導電性の非磁性膜からなるスペーサ層,フリー層を順に積層してなる第2の構造体とを順次積層する磁気抵抗効果膜の製造方法において、
基板上に、第1の構造体を形成して熱処理する工程Aと、該工程Aの後に、第1の構造体の前記強磁性体膜の表面から酸化層を除去する工程Bと、該工程Bの後に、第1の構造体上に第2の構造体を積層する工程Cとを少なくとも具備することを特徴とする磁気抵抗効果膜の製造方法。 - 前記工程Bにて、イオンミリング法を用いることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果膜の製造方法。
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