JP2002198585A - 反強磁性層の改質方法及び交換結合素子 - Google Patents

反強磁性層の改質方法及び交換結合素子

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JP2002198585A JP2000396895A JP2000396895A JP2002198585A JP 2002198585 A JP2002198585 A JP 2002198585A JP 2000396895 A JP2000396895 A JP 2000396895A JP 2000396895 A JP2000396895 A JP 2000396895A JP 2002198585 A JP2002198585 A JP 2002198585A
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Koujirou Ogami
公二郎 屋上
Masakiyo Tsunoda
匡清 角田
Ken Takahashi
高橋  研
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い一方向異方性定数Jkを有し、かつ高い
ブロッキング温度TBを有し、膜厚が薄い交換結合素子
及び反強磁性層の改質方法を提供する。 【解決手段】 基体上に反強磁性層を形成し、該反強磁
性層を初期真空度が10 -9Torr以下の真空雰囲気中で熱
処理することを特徴とする反強磁性層の改質方法を採用
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、交換結合素子の改
質方法、交換結合素子及びスピンバルブ型磁気抵抗素子
並びに磁気ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ハードディスクドライブの再生ヘッドと
して用いられるスピンバルブ型磁気抵抗素子には、外乱
磁界に対する信頼性、特に高温での動作特性、耐ESD、
固定磁化層の磁化の反転防止のため、高いブロッキング
温度TBと交換結合磁界Hexが要求されている。また、
記録密度向上とともにスピンバルブ型磁気抵抗素子の厚
みを低減することが必要となり、極薄化と耐熱性の向上
がともに要求されている。特に40 Gbit/in2超の記録密
度に対応するには、TBとして300℃以上が必要とされて
いる。
【0003】上記の要求に対して従来は、反強磁性層材
料の検討、あるいは反強磁性層の膜厚を厚くすることに
より対処してきた。たとえば、TBが300数十度と高
いPt-Mn合金を用いることなどが挙げられる。しかし、P
t-Mn合金からなる反強磁性層は、反強磁性層としての機
能を発現するために必要な厚さが厚いという問題があ
る。すなわち反強磁性層には、固定磁化層に一方向異方
性定数Jkを誘導するために必要な最低厚み(臨界厚)
があり、この臨界厚は材料によって異なるがPt-Mn合金
の場合はこれが厚いことが知られている。たとえば、J
kの飽和値を得るためには20nm以上が必要とされて
いる。しかし、記録密度の高密度化に対応するため再生
ヘッドの狭ギャップ化が進められており、40Gbit/in2
の場合、0.1μm以下のギャップ長が要求されてい
る。この場合、スピンバルブ型磁気抵抗素子の厚みは3
0nm以下にする必要があり、反強磁性層の厚みとして
は15nm以下にする必要がある。従って、Pt-Mn合金
では、将来の極薄化に対応できない。
【0004】一方、Mn-Ir合金は各種反強磁性層の構成
材料の中で最も臨界厚が小さい材料である。このMn-Ir
合金によれば、製法にもよるが5nm以上あればJkの
飽和値を得ることができ、Jkの絶対値も、Pt-Mn合
金に匹敵する。しかし、TBが250℃以下と低いのが
致命的と言われてきた。これに対し、厚みを厚くして反
強磁性層中の結晶粒の持つ磁気異方性エネルギーを増加
することで、TBを高めることはできる。たとえば、Mn-
Ir膜においても膜厚を20nmとすれば300℃を越え
るTBが得られる。しかしながら、先に述べた狭ギャッ
プ化のためには、反強磁性層を15nm以下とすること
が必要であり、膜厚増加によるTBの向上は現実的な手
段ではない。また、反強磁性層の膜厚増加とともに、J
kの減少、ΔRの減少、Rsの増加、結果として磁気抵抗
変化率(MR比)の低下、といった問題が発生する。こ
のため、Mn-Ir膜厚として適当な値で妥協しなければな
らず、通常、7〜10nmで使用される。このため、Mn
-Ir合金でTBを300℃以上とするのは困難であった。
【0005】また、スピンバルブ型磁気抵抗素子におけ
るJkについてみると、反強磁性層の材質の検討、反強
磁性層の膜厚の検討、反強磁性層/固定磁化層(強磁性
層)の積層順序(top型かbottom型か)、固定磁化層で
ある強磁性層の材質の検討、成膜後の磁場中アニール方
法の検討等がなされ、Jkの向上が図られてきた。しか
し、どのような方法によっても、反強磁性層と固定磁化
層の界面に誘導されるJkの値は要求値には不十分であ
った。これに対し、固定磁化層を適当厚のRuを介して2
つの強磁性膜を積層させる積層フェリ構造とすることが
提案されている。この積層フェリ構造によれば、反強磁
性層と固定磁化層の界面におけるJkが小さくても、2
つの強磁性膜間に働く反強磁性的結合により固定磁化層
の磁化方向が固定されるため、TBまでは大きな磁気異
方性を維持することが可能となる。しかしながら、固定
磁化層の磁化固定に本質的に重要な因子は反強磁性層/
固定磁化層間の交換結合であり、この点については何ら
改善されていない。また、TBの値も変わらない。
【0006】以上の問題に対し、本発明者らは超高真空
プロセス(XC-process)を提案し、このXC-processが反強
磁性層の極薄化と耐熱性向上の両立に効果があることを
示してきた。すなわち、反強磁性層を形成する際に、初
期真空度を10-11Torr台とし、純度9N(ナイン)の
高純度Arを成膜ガスに使用するなどの工夫により、反
強磁性層の表面を清浄化し、更に、反強磁性層中の不純
物を極力低減することにより結晶粒の成長を促進して高
い結晶配向性を発現させることによりJk及びTBを向上
させた。さらに、反強磁性層の下地膜材及び下地膜構成
を工夫することによってもJkを向上させた。この結
果、たとえば、厚さ7nmのMn-Ir合金膜と2nmのCo-
Fe合金膜からなる交換結合素子を備えたbottom型のスピ
ンバルブ型磁気抵抗素子において、Jkを0.30er
g/cm2以上とし(Hexにして例えば1kOe以
上)、TBを280〜290℃とすることが可能になっ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のXC-pro
cessによってもTBの値としては不足であり、さらに耐
ESD等を考えるとJkのさらなる向上が求められる。
また、反強磁性層の下地膜の変更によるJkの向上は、
しばしばMR特性を低下させるという問題が生じてい
た。
【0008】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であって、高い一方向異方性定数Jkを有し、かつ高い
ブロッキング温度TBを有し、膜厚が薄い交換結合素子
及びスピンバルブ型磁気抵抗素子及び磁気ヘッド並びに
反強磁性層の改質方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は以下の構成を採用した。本発明の反強磁
性層の改質方法は、基体上に反強磁性層を形成し、該反
強磁性層を初期真空度が10-9Torr以下の真空雰囲気中
で熱処理することを特徴とする。また本発明の反強磁性
層の改質方法においては、前記反強磁性層を初期真空度
が10-10Torr以下の真空雰囲気中で熱処理することが
好ましい。
【0010】係る反強磁性層の改質方法によれば、初期
真空度が10-9Torr以下、好ましくは10-10Torr以下
の高真空中で熱処理するので、反強磁性層の表面の酸化
や表面への気体状の不純物元素の吸着を防止することが
でき、表面の原子配列等を変化させて反強磁性層の表面
を改質させることができ、この改質された表面に強磁性
層を積層した場合に、反強磁性層と強磁性層との間で交
換結合磁界を発現させ、同時に高い一方向異方性定数J
k及び高いブロッキング温度TBを発現させることが可能
になる。
【0011】また本発明の反強磁性層の改質方法は、先
に記載の反強磁性層の改質方法であって、前記反強磁性
層がMn-Ir合金であってIrの組成比が8原子%以上40
原子%以下のものであることを特徴とする。
【0012】更に本発明の反強磁性層の改質方法は、前
記反強磁性層を赤外光照射により加熱処理することを特
徴とする。また本発明の反強磁性層の改質方法は、赤外
光を透過させる透過窓を備えたチャンバ内に、前記反強
磁性層を形成した基体を配置し、該チャンバ内を10-9
Torr以下の真空雰囲気とした後に、前記チャンバの外側
に配置された赤外光源から赤外光を照射し、この赤外光
を前記透過窓を介して前記基体に照射することにより、
前記反強磁性層を熱処理することを特徴とする。また、
本発明の反強磁性層を改質する別の方法として、反強磁
性層を形成した基体をチャンバ内の試料ステージに設置
し、該チャンバ内を10-9Torr以下の真空雰囲気とした
後に、前記試料ステージに備えられたヒータによって前
記試料ステージを介して前記反強磁性層を加熱すること
により行っても良い。
【0013】係る反強磁性層の改質方法によれば、赤外
光を透過する透過窓を備えたチャンバ内に、反強磁性層
を形成した基体を配置し、チャンバ内を10-9Torr以下
の真空雰囲気とした後に、赤外光を前記透過窓に透過さ
せて前記反強磁性層に照射して熱処理するので、高真空
状態を保ったまま熱処理することができ、反強磁性層の
表面の酸化や表面への気体原子の吸着を防止することが
可能になり、高い一方向異方性定数Jk及び高いブロッ
キング温度TBを発現させることが可能になる。
【0014】次に本発明の熱処理装置は、赤外光を透過
させる透過窓を備えたチャンバと、該チャンバ内を10
-9Torr以下の真空雰囲気とする排気機構と、赤外光を前
記チャンバの外側より前記透過窓を介して前記チャンバ
内部に照射する赤外光源とを具備してなることを特徴と
する。
【0015】係る熱処理装置によれば、赤外光を透過す
る透過窓を備えたチャンバ内に、反強磁性層を形成した
基体を配置し、チャンバ内を10-9Torr以下の真空雰囲
気とした後に、赤外光を前記透過窓に透過させて前記反
強磁性層に照射して熱処理するので、高真空状態を保っ
たまま熱処理することができ、反強磁性層の表面の酸化
や表面への気体状の不純物元素の吸着を防止することが
可能になり、高い一方向異方性定数Jk及び高いブロッ
キング温度TBを有する交換結合素子を製造することが
できる。
【0016】また本発明の交換結合素子の製造装置は、
基体上に反強磁性層を形成する第1成膜装置と、前記反
強磁性層を熱処理する熱処理装置と、熱処理後の反強磁
性層に強磁性層を形成する第2成膜装置とを具備してな
り、前記熱処理装置は、赤外光を透過させる透過窓を備
えたチャンバと、該チャンバ内を10-9Torr以下の真空
雰囲気とする排気機構と、赤外光を前記チャンバの外側
より前記透過窓を介して前記チャンバ内部に照射する赤
外光源とを具備してなることを特徴とする。
【0017】係る交換結合素子の製造装置によれば、反
強磁性層を形成した後に、真空を破ることなく反強磁性
層を熱処理し、続いて真空を破らずに反強磁性層上に強
磁性層を形成できるので、反強磁性層と強磁性層との界
面を不純物元素や気体状の不純物元素等により汚染させ
ることがなく、高い一方向異方性定数Jk及び高いブロ
ッキング温度TBを有する交換結合素子を製造すること
が可能になる。
【0018】次に本発明の交換結合素子は、基体上に、
反強磁性層と、該反強磁性層と交換結合する強磁性層と
が順次積層されてなり、前記反強磁性層は、強磁性層の
積層前に初期真空度が10-9Torr以下の真空雰囲気中で
熱処理されて表面が改質されたものであり、前記強磁性
層はこの改質面上に積層されたものであることを特徴と
する。
【0019】係る交換結合素子によれば、初期真空度が
10-9Torr以下、好ましくは10-1 0Torr以下の高真空
中で反強磁性層が熱処理されるので、反強磁性層の表面
の酸化や表面への気体状の不純物元素の吸着を防止する
ことができ、表面の原子配列等を変化させて反強磁性層
の表面を改質させることができ、この改質された表面に
強磁性層を積層した場合、反強磁性層と強磁性層との間
で交換結合磁界を発現させ、同時に高い一方向異方性定
数Jk及び高いブロッキング温度TBを発現させることが
可能になる。
【0020】また本発明の交換結合素子は、先に記載の
交換結合素子であって、前記反強磁性層がMn-Ir合金で
あってIrの組成比が8原子%以上40原子%以下のもの
であることを特徴とする。また本発明の交換結合素子
は、先に記載の交換結合素子であって、前記強磁性層が
Co-Fe合金であってFeの組成比が5原子%以上50原子
%以下のものであることを特徴とする。
【0021】係る交換結合素子によれば、極薄で高い交
換結合磁界Hex及びブロッキング温度TBを導出するこ
とが可能になる。またCo-Fe合金からなる強磁性層を備
えるので、反強磁性層/強磁性層間に大きな一方向異方
性定数Jkを誘導することができ、同時に高い抵抗変化
率を得ることができる。
【0022】次に本発明のスピンバルブ型磁気抵抗素子
は、先のいずれかに記載の交換結合素子を備えたことを
特徴とする。即ち、本発明のスピンバルブ型磁気抵抗素
子は、基体上に、反強磁性層と、該反強磁性層と交換結
合する強磁性層とが順次積層されてなり、前記反強磁性
層が強磁性層の積層前に初期真空度が10-9Torr以下の
真空雰囲気中で熱処理されて表面が改質され、前記強磁
性層がこの改質面上に積層されてなる交換結合素子を具
備することを特徴とする。特に前記反強磁性層がMn-Ir
合金であってIrの組成比が8原子%以上40原子%以下
のものであることが好ましい。また前記強磁性層がCo-F
e合金であってFeの組成比が5原子%以上50原子%以
下のものであることが好ましい。上記のスピンバルブ型
磁気抵抗素子の具体例として、上記の交換結合素子の強
磁性層上に、非磁性高電導層と別の強磁性層を積層した
ものを例示できる。
【0023】次に、本発明の交換結合素子をトンネル型
磁気抵抗素子に適用しても良い。即ち、このトンネル型
磁気抵抗素子は、基体上に、反強磁性層と、該反強磁性
層と交換結合する強磁性層とが順次積層されてなり、前
記反強磁性層が強磁性層の積層前に初期真空度が10-9
Torr以下の真空雰囲気中で熱処理されて表面が改質さ
れ、前記強磁性層がこの改質面上に積層されてなる交換
結合素子を具備することを特徴とする。特に前記反強磁
性層がMn-Ir合金であってIrの組成比が8原子%以上4
0原子%以下のものであることが好ましい。また前記強
磁性層がCo-Fe合金であってFeの組成比が5原子%以上
50原子%以下のものであることが好ましい。上記トン
ネル型磁気抵抗素子の具体例として、上記の交換結合素
子の強磁性層上に、絶縁膜と別の強磁性層を積層したも
のを例示できる。
【0024】次に、本発明の交換結合素子を磁気式メモ
リに適用しても良い。即ち、この磁気式メモリは、基体
上に、反強磁性層と、該反強磁性層と交換結合する強磁
性層とが順次積層されてなり、前記反強磁性層が強磁性
層の積層前に初期真空度が10-9Torr以下の真空雰囲気
中で熱処理されて表面が改質され、前記強磁性層がこの
改質面上に積層されてなる交換結合素子を具備すること
を特徴とする。特に前記反強磁性層がMn-Ir合金であっ
てIrの組成比が8原子%以上40原子%以下のものであ
ることが好ましい。また前記強磁性層がCo-Fe合金であ
ってFeの組成比が5原子%以上50原子%以下のもので
あることが好ましい。
【0025】次に本発明の磁気ヘッドは、先のいずれか
に記載の交換結合素子を備えたことを特徴とする。即
ち、本発明の磁気ヘッドは、基体上に、反強磁性層と、
該反強磁性層と交換結合する強磁性層とが順次積層され
てなり、前記反強磁性層が強磁性層の積層前に初期真空
度が10-9Torr以下の真空雰囲気中で熱処理されて表面
が改質され、前記強磁性層がこの改質面上に積層されて
なる交換結合素子を具備することを特徴とする。特に前
記反強磁性層がMn-Ir合金であり、Irの組成比が8原子
%以上40原子%以下であることが好ましい。また前記
強磁性層がCo-Fe合金であり、Feの組成比が5原子%以
上50原子%以下であることが好ましい。上記の磁気ヘ
ッドの具体例として、上記の交換結合素子の強磁性層上
に非磁性高電導層と別の強磁性層を積層してスピンバル
ブ型磁気抵抗素子を形成し、このスピンバルブ型磁気抵
抗素子を一対の絶縁膜で挟み、更にこれらのスピンバル
ブ型磁気抵抗素子及び絶縁膜をシールド層で挟んだもの
を例示できる。
【0026】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、本発明
の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、以
後の明細書において、圧力をTorrの単位で表記するが、
これをSI単位であるPa(パスカル)に変換する場合に
は、1Torr=133Paにより換算すればよい。また、
膜厚をÅの単位で表記する場合があるが、これをSI単
位であるnm(ナノメートル)に変換する場合には、1Å
=0.1nmにより換算すればよい。更に磁界をOe
(エルステッド)の単位で表記する場合があるが、これ
をSI単位であるA/m(アンペア毎メートル)に変換す
る場合には、1 Oe=79.58A/mにより換算す
ればよい。
【0027】図1には、本発明の実施形態である交換結
合素子1を示す。この交換結合素子1は、基体2上に積
層された反強磁性層4と、反強磁性層4上に形成された
強磁性層5と、保護層6とから構成されている。上記基
体2は、例えば少なくとも表面に0.5〜10nm程度
のTaからなる層を備えているものが好ましい。なお、基
体2は、Taからなる層に代えてTa-Ni-Fe系合金からなる
層を表面に形成してなるものであってもよい。
【0028】また反強磁性層4は例えば膜厚が5〜20
nmのMn-Ir合金からなる層であり、強磁性層5と交換
結合して強磁性層5の磁化を一方向に固定する。Mn-Ir
合金は、Irの組成比が8原子%以上40原子%以下のも
のが好ましい。なお、反強磁性層4はMn-Ir合金に限ら
れず、既報のいかなる反強磁性層でもよい。この反強磁
性層4は、強磁性層5の積層前に初期真空度が10-9To
rr以下、好ましくは10-10Torr以下の真空雰囲気中で
熱処理されて表面が改質されたものが好ましい。反強磁
性層4が初期真空度10-9Torr以下の高真空中で熱処理
されると、反強磁性層4の表面の酸化や表面への気体状
の不純物の吸着を防止しつつ熱処理がなされ、表面の原
子配列等を変化させて反強磁性層の表面を改質させるこ
とができる。この改質された表面に強磁性層5を積層し
た場合、反強磁性層4と強磁性層5との間の交換結合磁
界が増強され、高い一方向異方性定数Jk及び高いブロ
ッキング温度TBを発現させることが可能になる。
【0029】高真空雰囲気中で熱処理されたMn-Ir合金
からなる反強磁性層4について、X線回折等で構造解析
を行うと、低角入射反射率の測定や、θ-2θ法による測
定によっても熱処理の有無による明確な相違は見られ
ず、結晶構造の違いは認められない。また断面を電子顕
微鏡等で観察しても明確な変化が見られない。またMn-I
r合金は不規則相を有しているが、熱処理による規則化
もみられない。以上から、高真空中における熱処理によ
る構造変化は、X線回折で検出される程度の変化ではな
く、X線回折ではわからない膜表面数原子層程度の変化
と考えられる。たとえば、真空中での加熱による少量の
Mn原子の蒸発による組成変化などが考えられる。あるい
は表面エネルギー低減のため原子の入れ替えが生じると
いったことも考えられる。また、反強磁性層表面の歪み
緩和、最表面のみの規則化なども考えられる。
【0030】強磁性層5は、反強磁性層4の改質された
表面上に積層される。これにより、反強磁性層4と強磁
性層5との間の交換結合磁界が増強され、高い一方向異
方性定数Jk及び高いブロッキング温度TBを発現させる
ことが可能になる。強磁性層5は、例えば膜厚が1〜5
nmのNi-Fe合金またはCo-Fe合金、あるいはCo、または
それらの積層膜からなる層であり、特にFeの組成比が5
原子%以上50原子%以下のCo-Fe合金が好ましい。ま
た、Ni-Fe合金、Co-Fe合金のいずれも、他の添加元素が
添加されていても良い。更に強磁性層5は、適当厚のRu
膜を介して2つの強磁性膜を積層させて積層フェリ構造
としてもよい。この積層フェリ構造によれば、2つの強
磁性膜間に働く反強磁性的結合により強磁性層の磁化方
向が固定されるため、ブロッキング温度TBまで加熱さ
れても大きな磁気異方性を維持することが可能となる。
保護層6は例えば膜厚が0.5〜5nmのTaからなる層
であり、強磁性層5の表面の酸化を防止する。
【0031】また、基体2と反強磁性層4との間に下地
層を設けても良い。下地層は、下地膜単体か、2以上の
下地膜の積層構造のいずれかであってもよい。下地膜単
体の場合、Cu膜、Ni-Fe合金膜またはCo-Fe合金膜のいず
れかであることが好ましい。この場合の下地層の厚さは
1nm以上5nm以下の範囲が好ましい。また積層構造
の下地層の場合は、2つの下地膜のうちいずれか1つが
Cu膜とするとともに他の1つがNi-Fe合金膜またはCo-Fe
合金膜とすることが好ましい。この場合、下地層の全層
厚は1nm以上5nm以下の範囲が好ましく、また各下
地膜の各膜厚はそれぞれ0.5nm以上1.5nm以下
が好ましい。
【0032】下地層の全層厚が1nm以上であれば、下
地層の(111)配向した結晶性を維持することが可能
になり、また層厚が5nm以下であれば、交換結合素子
1を磁気抵抗効果素子等に用いた場合に、検出電流の分
流が抑制されてシャントロスを低減することが可能にな
る。更に、下地層が積層構造の場合、各下地膜の各膜厚
が0.5nm以上であれば、各下地膜の結晶性を維持す
ることが可能になり、また各膜厚が1.5nm以下であ
れば上記と同様に検出電流のシャントロスを低減するこ
とが可能になる。
【0033】下地層を構成するCu、Ni-Fe合金、Co-Fe合
金はいずれもfcc結晶構造(面心立方構造)を有する材
料であり、これらの材料はスパッタリング等によって
(111)面を優先配向しつつ成膜されるため、膜表面
での(111)面の露出確率が高くなる。従って、この
下地層上に反強磁性層4及び強磁性層5をエピタキシャ
ル成長させつつ成膜すると、反強磁性層4及び強磁性層
5が(111)面配向された状態で形成され、この結
果、反強磁性層4と強磁性層5との界面で誘導される一
方向異方性定数Jkを高くし、交換結合磁界Hexを向上
できる。
【0034】尚、下地層による一方向異方性定数Jk及
び交換結合磁界Hexの向上の効果は、反強磁性層4を真
空中での加熱処理により改質することによって得られる
効果にそのまま上乗せできる。即ち、反強磁性層4の改
質と下地層の形成を同時に行うことにより、反強磁性層
4の改質による一方向異方性定数Jkの増加分に、下地
層の形成によるJkの増加分を足し合わせた分のJkの増
加を見込むことができる。
【0035】次に、上記の交換結合素子1の製造方法を
説明する。図2には、上記の交換結合素子1を製造する
際に用いる熱処理装置50の要部を示す。この熱処理装
置50は、赤外光を透過する透過窓51を備えたチャン
バ52と、チャンバ52内を10-9Torr以下の真空雰囲
気とする図示しない排気機構と、赤外光をチャンバ52
の外側から透過窓51に透過させてチャンバ52内に照
射する赤外光源53を主体として構成されている。
【0036】チャンバ52は、図示しない排気機構に接
続されていて、内部を10-9Torr以下、好ましくは10
-10Torr以下の真空雰囲気にできるようになっている。
また、チャンバ52内には試料ステージ54が備えられ
ていて、試料ホルダー55を介して基体2を固定できる
ようになっている。また、試料ステージ54には熱電対
等の温度センサ56が取り付けられている。また、試料
ステージ54は、図2における上下方向に駆動できるよ
うに構成されていて、赤外光源53と基体2との照射距
離を調整できるように構成されている。
【0037】また、チャンバ52の上部には赤外光を透
過する透過窓51が備えられている。透過窓51は、赤
外光に対して高い透過率を有するとともに、チャンバ5
2内を高真空に保つためにガスバリア性に優れた材料か
らなるものが好ましく、例えばα-Al23等が好まし
い。
【0038】赤外光源53は、電源57に接続されたフ
ィラメント58と、開口部60を有する反射板59とか
ら構成されている。電源57からフィラメント58に通
電することにより発した赤外光は、反射板59の集光効
果により赤外光源53内に位置する焦点に一旦集光さ
れ、開口部60からチャンバ52の透過窓51に向けて
放射状に照射される。更に赤外光は透過窓51を透過し
てチャンバ52内の試料ステージ近傍まで届くように構
成されている。尚、開口部60には図示しない絞りが取
り付けられていて、赤外光の照射範囲を調整できるよう
に構成されている。また、赤外光源53も試料ステージ
54と同様に、図2における上下方向に駆動できるよう
に構成されていて、基体2との照射距離を調整できるよ
うに構成されている。
【0039】上記の熱処理装置50は、交換結合素子の
製造装置に組み込んで用いることが好ましい。即ち、基
体2上に反強磁性層4を形成する第1成膜装置と、上記
の熱処理装置50と、熱処理後の反強磁性層4に強磁性
層5を形成する第2成膜装置とを具備してなる交換結合
素子の製造装置を構成することが好ましい。前記第1成
膜装置は熱処理装置50の上流側に、前記第2成膜装置
は熱処理装置の下流側に配置することが好ましい。
【0040】第1,第2成膜装置の具体例としては、ス
パッタリング装置、真空蒸着装置等を適用することがで
きるが、10-9Torr以下、好ましくは10-10Torr以下
の背圧で成膜可能なものが好ましい。更にこれら第1,
第2成膜装置が、熱処理装置50のチャンバ52に直接
に接続されていることが好ましい。各成膜装置がチャン
バ52に接続されていれば、例えば第1成膜装置で基体
2上に反強磁性層4を形成した後に、大気に曝すことな
く基体2上の反強磁性層4をチャンバ52に移動させて
熱処理することができ、更に熱処理後の反強磁性層4を
第2成膜装置に移動させて強磁性層5を成膜することが
でき、高真空下で成膜と熱処理とを連続して行うことが
できる。
【0041】上記の交換結合素子の製造装置を用いて交
換結合素子を製造するには、まず第1成膜装置内で基体
2上にMn-Ir合金からなる反強磁性層4を形成する。反
強磁性層4は、10-9Torr以下、好ましくは10-10Tor
r以下の背圧下で、純度が9ナインのアルゴンガスを導
入しつつ行うスパッタリング法若しくは真空蒸着法によ
り形成することが好ましい。
【0042】次に、反強磁性層4が形成された基体2を
図2に示す熱処理装置50に搬送し、反強磁性層4の改
質を行う。搬送された基体2は試料ホルダ55上に載置
されるが、基体2の赤外光の透過率が高い場合には、図
2に示すように、反強磁性層4が透過窓51の反対側に
向くように基体2を試料ホルダ55に載置してもよい。
なお、基体2が赤外光を透過しない場合には、反強磁性
層4を透過窓51側に向けて配置する。
【0043】そして、赤外光源53から赤外光を照射
し、この赤外光を透過窓51に透過させつつ基体2に照
射する。基体2自体は図3(a)に示すように赤外光
(IR)をほとんど透過する。基体2に反強磁性層4が
形成された場合は、図3(b)に示すように赤外光が基
体2を透過して反強磁性層4まで照射され、反強磁性層
4が熱処理される。
【0044】反強磁性層4の熱処理温度は、赤外光源5
3のフィラメント58への通電量により調節される。反
強磁性層4は、例えば150〜300℃に加熱される。
反強磁性層4の実際の温度は、試料ステージ54に接続
された温度センサ56により間接的に測定される。反強
磁性層4の熱処理温度が150℃以下では反強磁性層4
の表面を十分に改質させることができないので好ましく
なく、熱処理温度が300℃以上では増強効果が飽和
し、また、下地層と反強磁性層間の拡散が懸念されるの
で好ましくない。
【0045】図4には、フィラメント58への通電量を
一定にした場合の反強磁性層4の温度変化を示す。所定
時間経過後に反強磁性層4の温度が一定になり、温度が
一定になった時間から赤外光源(IRランプ)53への
通電を切るまでの時間が保持時間となる。また、赤外光
源53若しくは試料ステージ54のいずれか一方または
両方を上下させて照射距離を調整するか、あるいは赤外
光源53の開口部60の大きさを調整することにより、
赤外光の照射範囲を調整することができる。
【0046】熱処理前の雰囲気は、10-9Torr以下、好
ましくは10-10Torr以下の真空雰囲気とするのが好ま
しい。真空度が10-9Torrより低下すると、チャンバ5
2内部に残留した酸素、水等が反強磁性層4の表面に吸
着し、場合によっては反強磁性層4の表面が酸化された
り変質されてしまい、一方向異方性定数Jk及びブロッ
キング温度TBを低下させてしまうので好ましくない。
上記のような高真空中で反強磁性層4を熱処理すること
により、反強磁性層4の表面の酸化や表面への気体原子
の吸着を防止することができ、表面の原子配列等を変化
させて反強磁性層4の表面を改質させることができ、こ
の改質された表面に強磁性層5を積層すれば、反強磁性
層4と強磁性層5との間で交換結合磁界を発現させ、高
い一方向異方性定数Jk及び高いブロッキング温度TBを
発現させることができる。
【0047】次に、熱処理されて改質された反強磁性層
4に強磁性層5を積層する。熱処理後の基体2を例えば
チャンバ52に連結された第2成膜装置まで搬送し、1
-9Torr以下、好ましくは10-10Torr以下の背圧とし
た状態で、スパッタ法もしくは真空蒸着法により、改質
後の反強磁性層4の表面上に強磁性層5を形成する。更
に、強磁性層5上に保護層6を形成した後、磁場中でア
ニール処理を施すことで、反強磁性層4と強磁性層5と
の界面にて交換結合磁界を発現させることにより、交換
結合素子1が得られる。
【0048】上記の熱処理装置50による反強磁性層4
の改質方法によれば、赤外光を透過する透過窓51を備
えたチャンバ52内に、反強磁性層4を形成した基体2
を配置し、チャンバ52内を10-9Torr以下の真空雰囲
気とした後に、赤外光を透過窓51に透過させて反強磁
性層4に照射して熱処理するので、高真空状態を保った
まま熱処理することができ、反強磁性層4の表面の酸化
や表面への気体原子の吸着を防止することが可能にな
り、高い一方向異方性定数Jk及び高いブロッキング温
度TBを発現させることができる。
【0049】また上記の交換結合素子の製造装置によれ
ば、反強磁性層4を形成した後に、真空を破ることなく
反強磁性層4を熱処理し、続いて真空を破らずに反強磁
性層4上に強磁性層5を形成できるので、反強磁性層4
と強磁性層5との界面を不純物元素や気体元素等により
汚染させることがなく、高い一方向異方性定数Jk及び
高いブロッキング温度TBを有する交換結合素子1を製
造することができる。
【0050】尚、上記の反強磁性層を改質する別の方法
として、反強磁性層を形成した基体をチャンバ内の試料
ステージに設置し、該チャンバ内を10-9Torr以下の真
空雰囲気とした後に、試料ステージに備えられたヒータ
によって試料ステージを介して反強磁性層を加熱するこ
とにより行っても良い。
【0051】(第2の実施形態)図5には、本発明の第
2の実施形態であるスピンバルブ型磁気抵抗素子10を
示す。このスピンバルブ型磁気抵抗素子10は、基体1
2上に積層された本発明に係る交換結合素子11と、交
換結合素子11上に形成された非磁性高導電層16と、
非磁性高導電層16上に形成された別の強磁性層17
と、保護層18とから構成されている。
【0052】交換結合素子11は、第1の実施形態にて
説明した交換結合素子1とほぼ同様のものであり、基体
12上に積層された下地層13と、下地層13上に形成
された反強磁性層14と、反強磁性層14上に形成され
た強磁性層15とから構成されている。下地層13は、
例えばNi-Fe合金からなる層である。上記の基体12、
反強磁性層14及び強磁性層15は、第1の実施形態に
て説明した基体2、反強磁性層4及び強磁性層5の構
成、材質、膜厚等と同様であるので、その説明を省略す
る。
【0053】下地層13はNi-Fe合金からなる層であ
り、厚さが1.5〜3nmの膜である。この下地層13
の効果は第1の実施形態で説明した効果と同じである。
強磁性層15は、例えば厚さ2nmのCo~Fe、Ni~Feある
いはCo、またはそれらの膜をそれぞれ適当な厚みで積層
した膜からなるが、その他に、適当な厚みのRuを介して
2つの強磁性体膜を対向させ、両膜の磁化を反強磁性的
に交換結合させた、いわゆる積層フェリあるいは積層反
強磁性膜構造としてもよい。非磁性高導電層16は例え
ば膜厚が2〜2.5nmのCuからなる層であり、強磁性
層15、17の間に位置して両強磁性層15,17の磁
化方向に依存した電子のスピン依存伝導を生じさせる。
また強磁性層17は例えば膜厚が1〜5nmのNi-Fe合
金またはCo-Fe合金またはCoまたはそれらの積層膜から
なる層であり、非磁性高導電層16に隣接している。上
記の積層構造では、強磁性層15が磁化固定層を構成
し、別の強磁性層17が磁化自由層を構成する。また保
護膜18は、例えば膜厚が2nmのTaからなる膜であ
る。強磁性膜17とTa保護膜との界面反応を嫌う場合
は、両膜間に厚さ1nm程度の反応防止層としてのCu膜を
挿入しても良い。
【0054】上記のスピンバルブ型磁気抵抗素子10に
よれば、交換結合磁界Hex及びJkが高い本発明に係る
交換結合素子11を備えているので、外部磁界によって
強磁性層15(磁化固定層)の磁化方向が変動すること
がなく、高いMR比を発現することができる。また交換
結合素子11のブロッキング温度TBが高いので、スピ
ンバルブ型磁気抵抗素子10の耐熱性を向上させること
ができる。更に、反強磁性層14の改質処理を行った場
合でも、MR比が低下することがないので、MR比を維
持したままでJk及びTBを改善することができる。更
に、上記の強磁性層17と保護層18との間に、電子を
弾性散乱させる金属酸化物からなる鏡面反射層を形成し
ても良い。鏡面反射層を形成した場合には、MR比を更
に向上させることができる。反強磁性層14の改質処理
によるJk及びTBの向上効果は、この際、何ら影響を受
けない。
【0055】また、上記のスピンバルブ型磁気抵抗素子
10によれば、下地層13の層厚を2nm程度にするこ
とができるので、スピンバルブ型磁気抵抗素子10の全
厚をに低減することができ、ギャップ長を短縮して高記
録密度化に対応させることができる。
【0056】上記のスピンバルブ型磁気抵抗素子10に
よれば、例えば、ブロッキング温度TBを300℃以上
とし、反強磁性層14の膜厚を15nm以下とし、スピ
ンバルブ型磁気抵抗素子10全体の厚さを30nm以下
とし、交換結合磁界Hexを1kOeとすることができ
る。
【0057】(第3の実施形態)図6には、本発明の第
4の実施形態であるGMR型再生ヘッド及びこの再生ヘ
ッドと誘導型記録ヘッドを組み合わせた記録再生分離型
磁気ヘッドを示し、図7には、GMR型再生ヘッドの要
部を示す。図6及び図7において、符号800は本発明
に係るスピンバルブ型磁気抵抗素子、801は本発明に
係る交換結合素子、802は下地層、803は高真空下
で熱処理されて改質された反強磁性層、804は固定磁
化層として機能する強磁性層、805は非磁性高導電
層、806は磁化自由層として機能する強磁性層、80
7はMR電極、808はハード膜、811はGMR型再
生ヘッド、812は記録ヘッドの下部磁極(824)を
兼ねるGMR型再生ヘッド811の上部シールド層、8
13、814は非磁性絶縁膜、815はGMR型再生ヘ
ッド811の下部シールド、821は記録ヘッド、82
2は記録ヘッド821の上部ポール、823は導電体か
らなるコイル、824はGMR型再生ヘッド811の上
部シールド(812)を兼ねる記録ヘッドの下部磁極で
ある。
【0058】本発明に係る交換結合素子801を含むス
ピンバルブ型磁気抵抗素子800を上部シールド層81
2と下部シールド層815で挟んだ部分が再生ヘッドと
して機能し、薄膜Cuからなるコイル823を上部磁極8
22と下部磁極824で挟んだ部分が記録ヘッドとして
機能する。この記録再生分離型磁気ヘッドは、GMR型
再生ヘッド811の上部シールド層812が、記録ヘッ
ド821の下部磁極824を兼ねる構成とした場合であ
るが、上部シールド層と下部磁極に別材料を用いて別構
成としたり、あるいは両者の間に他の構成物を配置して
も本発明の作用、効果は失われるものではない。
【0059】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。熱酸化により表面にSiO2膜が形成されたSi基板
(基体)上に、5nmのTa層、Ni-Fe合金からなる2n
mの下地層及びMn-Ir合金からなる6.8nmの反強磁
性層を順次積層して膜付き基板を形成した。成膜は、反
強磁性層の表面の清浄性及び反強磁性層中の不純物の低
減による結晶粒成長及び高い結晶配向性を得るために超
高真空プロセス(XC-process)で行った。即ち、成膜装置
内の初期真空度を10-11 Torr台とした後に純度9ナイ
ンの高純度アルゴンガスを導入し、マグネトロンスパッ
タ法により行った。また、成膜は膜面内平行に約30
Oeの磁界を印加しつつ行った。
【0060】次に、この膜付き基板を、図2に示す加熱
装置のチャンバ内に搬送し、反強磁性層が透過窓の反対
側に向くように配置した後に、チャンバ内の真空度を1
-1 1 Torr台とし、赤外光源から透過窓を介してチャン
バ内の膜付き基板に赤外光を照射することにより、反強
磁性層の熱処理を行った。赤外光は基板であるSiをほと
んど透過するため、反強磁性層を主に加熱することがで
きる。反強磁性層の熱処理温度は、赤外光源の通電量を
変化させて調整した。また熱処理中における反強磁性層
の実際の温度は、試料ステージの温度を温度センサで検
出することにより間接的に測定した。反強磁性層の温度
が一定になってから更に20〜360分加熱して熱処理
した。尚、表1に、赤外光源に通電した電流値Iと試料
ステージ(stage)及び基板(wafer)の温度との関係を示
す。電流値Iを例えば6〜12Aの範囲とした場合、試
料ステージ温度が80〜250℃の範囲となり、反強磁
性層の温度は60〜230℃の範囲となる。
【0061】
【表1】
【0062】尚、熱処理前の真空度は10-11 Torr台で酸
素、水がない雰囲気とすることが好ましい。酸素が残留
している雰囲気では熱処理により反強磁性層が酸化する
おそれがあるので好ましくない。また真空度が低い場合
には、雰囲気中に残留する不純物の種類によっては熱処
理中にMn-Ir膜面に不純物が付着し、JkやTBを低下さ
せるおそれがあり、好ましくない。熱処理により試料ス
テージ等からガス状の不純物が放出されて真空度が若干
低下するが、不純物は炭素系ガスによるものであり表面
酸化の問題はない。尚、表1に、赤外光源に通電した電
流値Iと、熱処理によって一時的に低下する真空度との
関係を示す。電流値Iが上昇すると、試料ステージ等の
温度が上昇し、それに伴って真空度が低下するのがわか
る。
【0063】次に、熱処理後の膜付き基板を別の成膜装
置に搬送し、基板の温度が40℃以下に低下した後、反
強磁性層上に強磁性層(固定磁化層)としてのCo-Fe合
金層、非磁性導電層としてのCu層、別の強磁性層(磁化
自由層)Co-Fe合金層、反応防止層としてのCu層及び保
護層としてのTa層を順次積層した。成膜は、成膜装置内
の初期真空度を10-11 Torr台とした後に純度9ナイン
の高純度アルゴンガスを導入し、マグネトロンスパッタ
法により行った。また、成膜は膜面内平行に約30 O
eの磁界を印加しつつ行った。成膜後、280〜320
℃にて30〜60分、印加磁界0.7kOeの条件で磁
場中アニールを行い、反強磁性層と固定磁化層の界面に
て交換結合磁界を発現させた。このようにして、本発明
に係る交換結合素子を備えたスピンバルブ型磁気抵抗素
子を得た。スピンバルブ型磁気抵抗素子の構成は、熱酸
化Si基板/Ta(5nm)/Ni-Fe(2nm)(下地層)/Mn-Ir(6.8
nm)(反強磁性層)/Co-Fe(2nm)(固定磁化層)/Cu(2.5n
m)(非磁性導電層)/Co-Fe(2nm)(磁化自由層)/Cu(1nm)
(反応防止層)/Ta(2nm)(保護層)であり、いわゆるbot
tom型のスピンバルブ型磁気抵抗素子である。これは、
反強磁性層を改質した後に強磁性層を成膜することから
必然的である。Mn-Ir合金のIrは26原子%、Co-Fe合金
のFeは10原子%とした。
【0064】得られたスピンバルブ型磁気抵抗素子につ
いて、磁気抵抗変化を直流4端子法にて測定し、交換結
合磁界Hex、ブロッキング温度TB等を求めた。また一
方向異方性定数Jkは、Jk=MPHexdPの式より算出し
た。ここで、MPは固定磁化層たる強磁性層の飽和磁
化、dPはその厚み、Hexは交換結合磁界である。結果
を表1〜6及び図8〜図12に示す。
【0065】(交換結合磁界Hexの向上について)表2
及び図8〜図10に結果を示す。表2には、熱処理条件
(IR加熱処理条件)と、Hex、Jk、抵抗変化量ΔR、
シート抵抗Rs、MR比及び磁化固定層-自由磁化層間の
強磁性的結合磁界Hinとの関係を示す。また図8(a)
に、反強磁性層の改質なしの場合(試料No.1)のMR曲
線を示し、図8(b)に、反強磁性層の改質有りの場合
(試料No.6)のMR曲線を示す。また図9(a)に、反
強磁性層の改質なしの場合(試料No.1)のMH曲線を示
し、図9(b)に、反強磁性層の改質有りの場合(試料N
o.6)のMH曲線を示す。
【0066】表2中、No.1は改質なしのスピンバルブ
型磁気抵抗素子であり、JK=0.24〜0.25er
g/cm2、Hex=0.8kOe程度である。一方、1
0A、20min(分)の条件で反強磁性層を改質した
No.6の試料でJkが0.32〜0.35erg/c
2、Hexが1.17kOeとなり、改質処理によりJk
及びHexが向上していることがわかる。また、試料2〜
5及び試料7〜8についても同様に、Jk及びHexがN
o.1よりも向上していることがわかる。また、図8及
び図9からも改質処理によるHexの向上が明らかにわか
る。
【0067】
【表2】
【0068】次に図10には、表2におけるHexと赤外
光の照射時間との関係を、電流値ごとにプロットしたグ
ラフで示す。尚、図中、ref.は試料No.1の値であり、
曲線の添え字は電流値である。電流値が6Aから10A
に向上するとともに曲線の傾きが大きくなり、Hexが向
上していることがわかる。
【0069】しかし、赤外光源への通電量が10Aを越
え、試料ステージ温度から推測される反強磁性層の温度
が200数十℃となると、Hexの向上は飽和する傾向に
ある。即ち図11に示すように、たとえば、電流値が1
0Aと12Aの場合を比較すると、Hexの値に大きな差
がないことからも明らかである。また照射時間について
も、図11に示すように10Aの電流値で照射時間を2
0min(分)と1h(時間)とした場合(表2中、N
o.6及びNo.7)ではHexに大きな差が見られない。同
様に、電流値が8Aのときに照射時間を1h〜6hとし
た場合(表2中、No.3、4、5)にもHexに大きな変
化がない。よって、昇温時間を除いた照射時間は60分
以下とすることができる。
【0070】また、表2に示すように、ΔR、Rs、M
R比等のMR特性については、本発明の改質処理によっ
ても顕著な変化はなく、従って本発明に係る改質処理に
よりMR特性に影響せずHex及びJkの向上が可能であ
ることがわかる。また、Hinの変化がないことから、反
強磁性層/固定磁化層間の界面形態の変化も起きていな
いことがわかる。
【0071】(反強磁性層の改質処理及び下地層の変更
によるHexの向上の効果)表3に、No.1の下地層をTa/
Cu/Co-Fe合金の積層構造とした場合(No.9)、及び下
地層をTa/Cu/Co-Fe合金の積層とし、反強磁性層を改質
処理した場合(No.10)のHex、Jk、ΔR、Rs、M
R比及びHinを示す。なお、No.9及びNo.10におい
て、下地層の詳細な構成は、Ta(5nm)/Cu(1nm)/Co-Fe
合金(1nm)である。なお、いずれの場合もスピンバルブ
型磁気抵抗素子の成膜後に、真空中、280℃で1時間
の磁場中アニールを行ったものである。
【0072】
【表3】
【0073】表3から明らかなように、下地層をTa/Ni-
Fe合金からTa/Cu/Co-Fe合金の3層構造とした場合(No.
1及びNo.9)、Hex及びJkの値が2割ほど上昇する。
ただし、ΔR、Rs及びMR比といったMR特性は低下
する。次に、下地層をTa/Cu/Co-Fe合金の3層とし、更
に反強磁性層を改質処理した場合(No.10)にはNo.1
に対してHexがさらに向上し、具体的には1.04kO
eから1.29kOeに向上する。このときのHexの増
加率は23%である。一方、下地層がTa/Ni-Fe合金の場
合における反強磁性層の改質処理によるHexの増加率
は、No.1及びNo.3の結果から約24%となり、No.1
及びNo.10の場合とほぼ同じである。尚、図10に、N
o.9及びNo.10の結果を併せて示す。図10から明ら
かなように、下地層を3層構造とした場合でも照射時間
の向上によるHexの向上が見られる。
【0074】以上のことから、本発明に係る反強磁性層
の改質処理によるHexの向上効果は、下地層の変更によ
るHex向上の効果と独立に作用し、両効果の足し合わせ
が可能であることがわかる。
【0075】(ブロッキング温度TBの向上)表4に、N
o.1,5,6,9及び10のブロッキング温度TBを示
す。下地層がTa/Ni-Fe合金の場合、反強磁性層の改質処
理なしのNo.1に対して、改質を行ったNo.5及び6のT
Bが向上していることがわかる。特に電流10A、照射
時間を20min(分)の条件で改質処理を行った場合(N
o.6)は、改質なし(No.1)の場合よりTBが30℃以
上も向上していることがわかる。また、下地層がTa/Cu/
Co-Fe合金の場合も上記と同様に、反強磁性層の改質処
理なしのNo.9に対して、改質を行ったNo.10のTBが
15℃程度向上していることがわかる。これはNo.1か
らNo.5の場合と同程度である。
【0076】
【表4】
【0077】図12には、TBと反強磁性層の厚さdAF
との関係を示す。尚図12中、白抜き四角形のプロット
は表4におけるNo.6の試料である。また、図中白丸の
プロットは、Ta(5nm)/Ni-Fe(5nm)/Mn74Ir29(dAF)/Ta
(5nm)なる構成であって反強磁性層の改質処理なしの交
換結合素子であり、図中白丸のプロットは、Ta(5nm)/N
i-Fe(5nm)/Mn74Ir29(dAF)/Co-Fe(2nm)/Cu(2.5nm)
/Co-Fe(2nm)/Cu(1nm)/Ta(5nm)なる構成であって反強
磁性層の改質処理なしのスピンバルブ型磁気抵抗素子で
ある。図12から明らかなように、改質処理を行わずに
No.6と同程度までTBを向上するには、反強磁性層の厚
さdAFを15nm(150Å)程度にする必要がある。し
かるに、本発明の係るスピンバルブ型磁気抵抗素子によ
れば、反強磁性層を改質することにより、6.8nm(68
Å)の厚さの反強磁性層でも320℃以上のTBが得ら
れ、本発明に係る反強磁性層の改質処理が、スピンバル
ブ型磁気抵抗素子の薄膜化に有効であることがわかる。
【0078】(磁場中アニール時のアニール温度の向
上)反強磁性層の改質によるブロッキング温度TBの向
上に伴い、交換結合磁界を発現させるための磁場中アニ
ールのアニール温度を従来の280℃からTB以上の3
20〜330℃に上げることによりHexはさらに向上す
る。即ち表5に示すように、例えばIR加熱処理を10
A、20minの条件で行った場合(No.6及びNo.6-
2)、アニール温度が280℃ではJkが0.35erg
/cm2であるが、320℃でアニールするとJkが0.
39erg/cm2に向上する。IR加熱処理を8A、
6hの条件で行った場合(No.5及びNo.5-2)における
Jkの向上も同様である。図13には、No.6及びNo.6-
2について、Hexの温度特性を示す。No.1についても
参考に示す。図13から明らかなように、反強磁性層の
改質(No.1からNo.6、6-2)によってTBが向上し、更
にアニール温度の向上(No.6からNo.6-2)によってHe
xが向上していることがわかる。
【0079】
【表5】
【0080】(反強磁性層の改質処理と鏡面反射層によ
るMR比向上効果)ここでは、反強磁性層の改質による
Hex及びTBの向上に加え、磁化自由層の外側、即ち反
強磁性層の反対側に鏡面反射層を設けてMR比を高めた
例について説明する。鏡面反射層は、保護層として設け
ているTa膜を適当な方法で酸化膜とすることによって得
た。なお、鏡面反射層としては、酸化Taに限らず、Fe-
O、Co-Fe-O等、各種酸化物膜が適宜使用できる。これ
によりΔRの向上、及びRsの減少が起き、MR比が向
上する。
【0081】具体例を表6に示す。No.1は、鏡面反射
層の形成も反強磁性層の改質も行わない参考例である。
No.6は、反強磁性層の改質処理のみの例であり、No.1
に対しMR特性(ΔR、Rs、MR比)は同等である
が、Hex及びJkが向上していることは先に述べたとお
りである。次にNo.6-3は、No.6に対して鏡面反射層
を設けた例であり、No.6に対しΔRが1.8から2.
1Ω/□に向上している。次にNo.6-4は、No.6-3に
対してアニール温度を320℃に向上したもので、高い
MR特性を維持しつつHex及びJkがさらに向上してい
る。40Gbit/in2の記録密度に対して必要とさ
れるΔR=1.6〜1.9Ω/□に対して、No.1では
ΔR=1.7〜1.9Ω/□であり十分とは言えない
が、No.6-3及びNo.6-4ではΔRが2.1〜2.2Ω
/□に増加していることがわかる。
【0082】
【表6】
【0083】以上により、本発明に係る反強磁性層の改
質処理に加えて、下地層の改良、鏡面反射層の形成等を
行うことにより、極薄のスピンバルブ型磁気抵抗素子で
Hex、Jk、TB及びMR特性を同時に向上することがで
きた。すなわち、6.8nm(68Å)のMn-Ir合金から
なる反強磁性膜を含む全厚23.3nm(233Å)の
スピンバルブ型磁気抵抗素子にて、Jk=0.39er
g/cm2(Hexにして1.3kOe)、TB=320〜
325℃、ΔR=2.2Ω/□(MR比で8.5%)の
特性値を得ることができた。
【0084】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
反強磁性層の改質方法によれば、反強磁性層を初期真空
度が10-9Torr以下、好ましくは10-10Torr以下の高
真空中で熱処理するので、反強磁性層の表面の酸化や表
面への気体状の不純物元素の吸着を防止することがで
き、表面の原子配列等を変化させて反強磁性層の表面を
改質させることができ、この改質された表面に強磁性層
を積層した場合に、反強磁性層と強磁性層との間の交換
結合を増強し、高い一方向異方性定数Jk及び高いブロ
ッキング温度TBを発現させることができる。
【0085】また本発明の反強磁性層の改質方法によれ
ば、赤外光を透過する透過窓を備えたチャンバ内に、反
強磁性層を形成した基体を配置し、チャンバ内を10-9
Torr以下の真空雰囲気とした後に、赤外光を前記透過窓
に透過させて前記反強磁性層に照射して熱処理するの
で、高真空状態を保ったまま熱処理することができ、反
強磁性層の表面の酸化や表面への気体原子の吸着を防止
することが可能になり、高い一方向異方性定数Jk及び
高いブロッキング温度TBを発現させることができる。
【0086】また本発明の熱処理装置によれば、赤外光
を透過する透過窓を備えたチャンバ内に、反強磁性層を
形成した基体を配置し、チャンバ内を10-9Torr以下の
真空雰囲気とした後に、赤外光を前記透過窓に透過させ
て前記反強磁性層に照射して熱処理するので、高真空状
態を保ったまま熱処理することができ、反強磁性層の表
面の酸化や表面への気体状の不純物元素の吸着を防止す
ることが可能になり、高い一方向異方性定数Jk及び高
いブロッキング温度TBを有する交換結合素子を製造す
ることができる。
【0087】また本発明の交換結合素子の製造装置によ
れば、反強磁性層を形成した後に、真空を破ることなく
反強磁性層を熱処理し、続いて真空を破らずに反強磁性
層上に強磁性層を形成できるので、反強磁性層と強磁性
層との界面を不純物元素や気体状の不純物元素等により
汚染させることがなく、高い一方向異方性定数Jk及び
高いブロッキング温度TBを有する交換結合素子を製造
できる。
【0088】次に本発明の交換結合素子によれば、初期
真空度を10-9Torr以下、好ましくは10-10Torr以下
の高真空とした上で反強磁性層が熱処理されるので、反
強磁性層の表面の酸化や表面への気体状の不純物元素の
吸着を防止することができ、表面の原子配列等を変化さ
せて反強磁性層の表面を改質させることができ、この改
質された表面に強磁性層を積層した場合、反強磁性層と
強磁性層との間の交換結合が増強され、高い一方向異方
性定数Jk及び高いブロッキング温度TBを発現させるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態である交換結合素
子の断面模式図である。
【図2】 図1に示す交換結合素子を製造する際に用
いる加熱装置を示す模式図である。
【図3】 基体に赤外光を照射させた場合の模式図で
あって、(a)は基体のみに赤外光を照射させた場合の
模式図であり、(b)は反強磁性層を形成した基体に赤
外光を照射させた場合の模式図である。
【図4】 赤外光の照射時間と反強磁性層の温度との
関係を示すグラフである。
【図5】 本発明の第2の実施形態であるスピンバル
ブ型磁気抵抗素子の断面模式図である。
【図6】 本発明の第3の実施形態である記録再生分
離型磁気ヘッドを示す斜視図である。
【図7】 図6に示す記録再生分離型磁気ヘッドに備
えられたGMR型再生ヘッドの要部を示す断面模式図で
ある。
【図8】 スピンバルブ型磁気抵抗素子のMR曲線を
示す図であって、(a)は試料No.1のMR曲線であ
り、(b)は試料No.6のMR曲線である。
【図9】 スピンバルブ型磁気抵抗素子のMH曲線を
示す図であって、(a)は試料No.1のMH曲線であ
り、(b)は試料No.6のMH曲線である。
【図10】 赤外光の照射時間と交換結合磁界Hexと
の関係を示すグラフである。
【図11】 赤外光の照射時間と交換結合磁界Hexと
の関係を示すグラフである。
【図12】 反強磁性層の膜厚dAFとブロッキング温
度TBとの関係を示すグラフである。
【図13】 試料No.1、No.6及びNo.6-2の交換結
合磁界Hexの温度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 交換結合素子 2 基体(基板) 4 反強磁性層 5 強磁性層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 43/08 G01R 33/06 R (72)発明者 屋上 公二郎 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉05 東北大 学大学院工学研究科電子工学専攻内 (72)発明者 角田 匡清 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉05 東北大 学大学院工学研究科電子工学専攻内 (72)発明者 高橋 研 宮城県仙台市太白区人来田2丁目20−2 Fターム(参考) 2G017 AD55 AD63 AD65 5D034 BA04 DA04 DA07 5E049 AA04 AA10 AC05 BA12 BA16 EB06

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に反強磁性層を形成し、該反強
    磁性層を初期真空度が10-9Torr以下の真空雰囲気中で
    熱処理することを特徴とする反強磁性層の改質方法。
  2. 【請求項2】 前記反強磁性層を初期真空度が10-10
    Torr以下の真空雰囲気中で熱処理することを特徴とする
    請求項1に記載の反強磁性層の改質方法。
  3. 【請求項3】 前記反強磁性層がMn-Ir合金であってIr
    の組成比が8原子%以上40原子%以下のものであるこ
    とを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反強磁
    性層の改質方法。
  4. 【請求項4】 前記反強磁性層を赤外光照射により加
    熱処理することを特徴とする請求項1ないし請求項3の
    いずれかに記載の反強磁性層の改質方法。
  5. 【請求項5】 赤外光を透過させる透過窓を備えたチ
    ャンバ内に、前記反強磁性層を形成した基体を配置し、
    該チャンバ内を10-9Torr以下の真空雰囲気とした後
    に、前記チャンバの外側に配置された赤外光源から赤外
    光を照射し、この赤外光を前記透過窓を介して前記基体
    に照射することにより、前記反強磁性層を熱処理するこ
    とを特徴とする請求項4に記載の反強磁性層の改質方
    法。
  6. 【請求項6】 赤外光を透過させる透過窓を備えたチ
    ャンバと、該チャンバ内を10-9Torr以下の真空雰囲気
    とする排気機構と、赤外光を前記チャンバの外側より前
    記透過窓を介して前記チャンバ内部に照射する赤外光源
    とを具備してなることを特徴とする熱処理装置。
  7. 【請求項7】 基体上に反強磁性層を形成する第1成
    膜装置と、前記反強磁性層を熱処理する熱処理装置と、
    熱処理後の反強磁性層に強磁性層を形成する第2成膜装
    置とを具備してなり、 前記熱処理装置は、赤外光を透過させる透過窓を備えた
    チャンバと、該チャンバ内を10-9Torr以下の真空雰囲
    気とする排気機構と、赤外光を前記チャンバの外側より
    前記透過窓を介して前記チャンバ内部に照射する赤外光
    源とを具備してなることを特徴とする交換結合素子の製
    造装置。
  8. 【請求項8】 基体上に、反強磁性層と、該反強磁性
    層と交換結合する強磁性層とが順次積層されてなり、 前記反強磁性層は、強磁性層の積層前に初期真空度が1
    -9Torr以下の真空雰囲気中で熱処理されて表面が改質
    されたものであり、前記強磁性層はこの改質面上に積層
    されたものであることを特徴とする交換結合素子。
  9. 【請求項9】 前記反強磁性層がMn-Ir合金であってIr
    の組成比が8原子%以上40原子%以下のものであるこ
    とを特徴とする請求項8に記載の交換結合素子。
  10. 【請求項10】 前記強磁性層がCo-Fe合金であってFe
    の組成比が5原子%以上50原子%以下のものであるこ
    とを特徴とする請求項8または請求項9に記載の交換結
    合素子。
  11. 【請求項11】 請求項8ないし請求項10のいずれ
    かに記載の交換結合素子を備えたことを特徴とするスピ
    ンバルブ型磁気抵抗素子。
  12. 【請求項12】 請求項8ないし請求項10のいずれ
    かに記載の交換結合素子を備えたことを特徴とする磁気
    ヘッド。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005008799A1 (ja) * 2003-07-18 2005-01-27 Fujitsu Limited Cpp磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気ヘッド、磁気記憶装置
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KR100769501B1 (ko) * 2006-01-17 2007-10-24 후지쯔 가부시끼가이샤 Cpp 자기 저항 효과 소자 및 그 제조 방법, 자기 헤드, 자기 기억 장치

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