本発明の請求項1記載の発明は、標的分子と結合する一種類以上の標的分子結合素子が固定化された標的分子結合素子固定部と、前記標的分子結合素子固定部上に前記標的分子を含んだ検体を保持する検体保持部と、前記検体保持部の蓋部とを備え、前記検体保持部あるいは前記蓋部に検体蒸発限度表示手段を備えることを特徴とする検体反応装置としたものであり、検体を標的分子結合素子固定部上に反応させる際に、反応時間の経過と共に検体量が蒸発により減少しても、検体蒸発限度表示手段の示す限度量よりも検体量が多いかどうかを比較することによって、検体反応が悪影響を受ける限度量よりも検体が減少しているかどうか容易にモニタリングすることができ、検体反応が精度良く行われているかどうかが容易に判断できるようになるという作用を有する。
本発明の請求項2記載の発明は、前記標的分子結合素子固定部上に前記標的分子が固定化されている領域を表示する標的分子結合素子固定領域表示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の検体反応装置としたものであり、検体保持部に検体を入れ蓋部を載せることで検体を保持し反応させる際に、標的分子結合素子固定部に表示されている標的分子結合素子固定領域表示手段によって、検体反応させる検体の標的分子結合素子固定部上における位置をモニタリングすることができるため、検体が標的分子結合素子が固定化されている領域からずれることによる検出精度の悪化を防止できるという作用を有する。
本発明の請求項3記載の発明は、前記標的分子結合素子が炭素骨格を有する有機分子であることを特徴とする請求項1または2記載の検体反応装置としたものであり、検体反応中に検体量が変化しても検体量が変化することによる検出精度の悪化を防止でき、検体中に含まれる有機分子に結合する標的分子が標的分子結合素子に結合し、検体中に含まれる有機分子に結合する標的分子が選択的に結合することによって精度良く反応させることができるという作用を有する。
本発明の請求項4記載の発明は、前記標的分子結合素子が有機金属錯体であることを特徴とする請求項1または2記載の検体反応装置としたものであり、検体反応中に検体量が変化しても検体量が変化することによる検出精度の悪化を防止でき、検体中に含まれる有機金属錯体に結合する標的分子が標的分子結合素子に結合し、検体中に含まれる有機金属錯体に結合する標的分子が選択的に結合することによって精度良く反応させることができるという作用を有する。
本発明の請求項5記載の発明は、前記標的分子結合素子が核酸であることを特徴とする請求項1または2記載の検体反応装置としたものであり、検体反応中に検体量が変化しても検体量が変化することによる検出精度の悪化を防止でき、検体中に含まれる核酸に結合する標的分子が標的分子結合素子に結合し、検体中に含まれる核酸に結合する標的分子が選択的に結合することによって精度良く反応させることができるという作用を有する。
本発明の請求項6記載の発明は、前記標的分子結合素子がタンパク質あるいはペプチドであることを特徴とする請求項1または2記載の検体反応装置としたものであり、検体反応中に検体量が変化しても検体量が変化することによる検出精度の悪化を防止でき、検体中に含まれるタンパク質あるいはペプチドに結合する標的分子が標的分子結合素子に結合し、検体中に含まれる有機分子に結合する標的分子が選択的に結合することによって精度良く反応させることができるという作用を有する。
本発明の請求項7記載の発明は、前記標的分子結合素子が糖質であることを特徴とする請求項1または2記載の検体反応装置としたものであり、検体反応中に検体量が変化しても検体量が変化することによる検出精度の悪化を防止でき、検体中に含まれる糖質に結合する標的分子が標的分子結合素子に結合し、検体中に含まれる糖質に結合する標的分子が選択的に結合することによって精度良く反応させることができるという作用を有する。
本発明の請求項8記載の発明は、前記標的分子結合素子が脂質であることを特徴とする請求項1または2記載の検体反応装置としたものであり、検体反応中に検体量が変化しても検体量が変化することによる検出精度の悪化を防止でき、検体中に含まれる脂質に結合する標的分子が標的分子結合素子に結合し、検体中に含まれる脂質に結合する標的分子が選択的に結合することによって精度良く反応させることができるという作用を有する。
本発明の請求項9記載の発明は、前記標的分子結合素子固定部に金属を蒸着してあること特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の検体反応装置としたものであり、検体中の標的分子を標的分子結合素子に結合させた後、標的分子を光学的に検出する際、標的分子結合素子固定部上に蒸着された金属が光の乱反射を抑えることによって光学的ノイズの少ない検出を行うことのできるという作用を有する。
本発明の請求項10記載の発明は、前記標的分子結合素子固定部にスポット状に金属が蒸着されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の検体反応装置としたものであり、金属が蒸着されたスポットに標的分子結合素子を固定化することによって、精度良く標的分子結合素子を固定化することができ、検出感度が安定する検体反応装置ができるという作用を有する。また、検体中の標的分子を標的分子結合素子に結合させた後、標的分子を光学的に検出する際、標的分子結合素子が固定化されているスポット状に蒸着された金属が光の乱反射を抑えることによって光学的ノイズの少ない検出を行うことのできるという作用を有する。
本発明の請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の検体反応装置を固定する検体反応装置固定手段と、前記標的分子結合素子固定部に光を照射する光照射手段と、前記標的分子結合素子固定部から反射する反射光を受光する受光手段と、前記標的分子結合素子固定部と前記受光手段の間に配置された集光レンズとを備えたことを特徴とする標的分子検出装置としたものであり、検体反応中に検体量が変化しても検体量が変化することによる検出精度の悪化を防止でき、検体中に含まれる標的分子を精度良く反応させた検体反応装置を簡単にセットし、光学的に検出することができる検出装置ができるという作用を有する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(A)は本発明の請求項1に記載の検体反応装置1を示した図である。図1(C)〜(F)は検体反応装置1を上面図で示した図である。
図1(A)が示すように検体反応装置1は標的分子結合素子2を固定化した標的分子結合素子固定部3と、円形支持部4と、標的分子5を含有する検体6を保持する検体保持手段7と検体保持手段7内の検体6を濾過するためのピストン部8と、標的分子結合素子固定部3と相似形をした蓋部9から構成されている。標的分子結合素子2と円形支持部4は一体化するように形成され円形支持部4は標的分子結合素子固定部3がずれたり外れたりしないように固定している。標的分子結合素子固定部3としては例えばナイロンメンブレンやフッ化ビニリデン樹脂メンブレンに0.2〜0.8μmの大きさの穴が開けられたフィルターメンブレンが使用される。フィルターメンブレンにある穴の密度は特に限定されないが通常15%前後の開孔率のものが使用される。ピストン部8としては、例えばゴムで構成されており、検体保持手段7と同径の平らな面を持っており、検体保持手段7に装着される。検体保持手段7は、例えば金、鉄、銅、アルミなどの金属や塩化ビニル、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの樹脂で形成された円筒形の容器であり、標的分子結合素子固定部3を底面として円形支持部4に装着される。なお、熱可塑性の無い耐熱性の材料であれば上記以外の材料で形成することもできる。また、検体保持手段7に例えば0.1%BSA、PBSで10〜60分浸漬し親水性処理を施し、検体6が非特異的に結合しにくくすることができる。また、検体保持手段7の容量としては、例えば、直径0.5mm〜30mmの真円の標的分子結合素子固定部3に対して高さが10mm〜50mmの円筒形をした検体保持手段7が円形支持部4に装着される。
標的分子結合素子固定部3の上には標的分子結合素子2がそれぞれ独立した領域に固定化されている。標的分子結合素子2としては例えば生体中の特定の塩基配列を持った核酸を検出するための相補的塩基配列を有した核酸プローブが用いられ、合成された一本鎖核酸プローブやcDNAを溶解した核酸溶液をフィルターメンブレンに滴下し乾燥させ物理吸着させる方法や、フィルターメンブレン上にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を導入し、一本鎖核酸やcDNAとカップリング反応させる方法や、光重合反応を利用してフィルターメンブレン上で一本鎖核酸プローブを合成する方法によって固定化される。例えば特定の細菌を検出するために、細菌のゲノム情報を元に細菌ゲノムに対する相補的な塩基配列を一本鎖核酸プローブとすることで試料中の細菌を検出することができる。例えばVOC分解菌であるDehalococcoides ethenogenes 195Rを検出するためにDehalococcoides ethenogenes 195RのゲノムのITS領域を含む数十〜数百の塩基配列を一本鎖核酸プローブとして利用し、土壌、河川水などのサンプルあるいは、培養液中から抽出した核酸を一本鎖核酸プローブとフィルターメンブレン上でハイブリダイゼーションさせることによって標的となるDehalococcoides ethenogenes 195Rゲノム由来の核酸を検体反応装置1に補足し、補足された核酸を検出することによってサンプル中のDehalococcoides ethenogenes 195Rの存在を検出することができる。また、同一サンプル中に含まれる複数種類の核酸分子を同時に検出するために、複数種類の核酸分子に対して相補的な塩基配列を有した複数種類の一本鎖核酸プローブをフィルターメンブレン上にそれぞれ独立した領域に固定化することができる。例えば、同時にDehalococcoides ethenogenes 195RとDehalobacterとDesulfitobacteriumを検出する場合に、それぞれDehalococcoides ethenogenes 195RとDehalobacterとDesulfitobacteriumゲノムのITS領域を含む数十〜数百の塩基配列を一本鎖核酸プローブとして独立した領域に固定化し、土壌、河川水などのサンプルあるいは、培養液中から抽出した核酸を一本鎖核酸プローブとフィルターメンブレン上でハイブリダイゼーションさせることによって標的となるDehalococcoides ethenogenes 195RとDehalobacterとDesulfitobacteriumゲノム由来の核酸を検体反応装置1に補足し、補足された核酸を検出することによってサンプル中のDehalococcoides ethenogenes 195RとDehalobacterとDesulfitobacteriumの存在を検出することができる。独立した領域とは円形や四角形に規定された一つの領域を指し、互いに結合していない二次元平面状に分布した領域であって、例えば円形スポットが数十〜数百個並んだDNAマイクロアレイが利用されている。DNAマイクロアレイの場合数十μm〜数百μmの直径を有する円形スポットが数十μm〜数百μmの間隙をあけて二次元平面上に配設される。
また、サンプル中のタンパク質や糖鎖などの抗原を検出する場合、タンパク質や糖鎖と特異的に結合する抗体やレクチンなどが利用され、例えば、B型肝炎ウイルスの存在を検出するためにはB型肝炎ウイルスの抗原であるHBS抗原に対する抗HBS抗体がプローブとして用いられ、また、例えば肝癌マーカーであるα−フェトプロテインアイソフォームを検出するにはAFPレクチンがプローブとして用いられる。なお、プローブとしてこれら以外のものでも、特定の標的生体分子と結合することのできる分子であれば、タンパク質、糖鎖に限らずタンパク質断片、ペプチド、エピトープ、受容体、抗原、アプタマ−アレルゲンなども利用することができる。例えば、0.1μg/ml〜0.1mg/mlの抗HBSモノクローナル抗体などをPBSなどの緩衝液に希釈し0.1μl〜10μlの微小液滴としてスライドグラス上に滴下して固相化することができる。
図1(B)が示すように、円形支持部4は円形支持部上部10と円形支持部下部11から構成されており、円形支持部上部10と円形支持部下部11によって標的分子結合素子固定部3を挟み込み標的分子結合素子固定部3を固定している。円形支持部上部10と円形支持部下部11には標的分子結合素子固定部3より大きくて同じ形状の内側開口部12が内側に開口しており、標的分子結合素子固定部3を固定する際、円形指示部4の内側に標的分子結合素子固定部3が隙間無く提示される。円形支持部4としては例えば、金、鉄、銅、アルミなどの金属や塩化ビニル、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの樹脂で形成されているが熱可塑性の無い耐熱性の材料が望ましい。円形支持部上部10と円形支持部下部11には、例えば、直径0.5mm〜30mmの同形かつ円形の内側開口部12が内側に開口しており、二つの内側開口部12が重なるように標的分子結合素子固定部3を挟み込むことで、内側開口部12の内側に隙間無く標的分子結合素子固定部3が固定されることとなる。挟み込む方法としては、例えば円形支持部上部10と円形支持部下部11を接触させ接着剤などを用いて接着させる方法が用いられる。円形支持部4の形状としては内側開口部12を形成できる形であれば円形以外に多角形の形状にすることもでき、手で持ちやすいように取手を形成することも可能である。
図1(C)が示すように、標的分子結合素子固定部3には標的分子結合素子2がほぼ中央に固定化されている。図1(D)および図4に示すように蓋部9には、蓋部9を標的分子結合素子固定部3に重ねた時に標的分子結合素子が固定化された領域を表示する標的分子結合素子固定領域表示手段32が設けられている。蓋部9としては、例えばカバーガラスなどの透明で薄い板が用いられる。標的分子結合素子固定領域表示手段32としては例えば閉じた線で透明な蓋部9上に描かれたものである。また、標的分子結合素子固定領域表示手段32は標的分子結合素子2が固定化されている領域を表示するために設けられているが、検体6を載せた際に必要最小量の検体量を表示するための検体最小量表示手段として描くこともできる。また、図1(E)が示すように検体6を標的分子結合素子固定部3に満たして反応させるが、図1(F)が示すように蒸発により検体6が減少し、標的分子結合素子固定部3が乾いてくる。乾燥によって検体中の夾雑物が標的分子結合素子固定部3に強固に結合してしまい検体反応を阻害する。標的分子結合素子2が固定化されている領域が表示されているので、検体6の蒸発によって標的分子結合素子固定部3が乾燥することを未然に察知することができる。
検体反応装置1を用いて検体6中の標的分子5を検出する工程は以下の5つの工程を含む。(1)検体反応装置1の標的分子結合素子固定部3上に目的の標的分子5と結合する標的分子結合素子2を固定化する標的分子結合素子固定化工程。(2)検体6中の標的分子5に標識分子を結合させる検体標識反応工程。(3)標識分子を結合した標的分子を標的分子結合素子固定部3上の標的分子結合素子2と結合させる検体結合反応工程。(4)標的分子結合素子固定部3上で標的分子結合素子2と結合していない目的外の分子を除去するための洗浄工程。(5)標的分子結合素子2と特異的に結合した生体分子に標識されている標識分子を検出する標識検出工程である。
標的分子結合素子2を固定化する方法としては、例えば前述のように化学修飾基を用いて共有結合させる方法や、標的分子結合素子固定部3上にアビジンを固定化し、ビオチン修飾した核酸や抗体などを結合させ、間接的に固定化する方法が用いられる。
生体分子に標識分子を結合させる方法としては、例えば核酸を検出する場合、生物試料からRNA分子をラウリル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、リン酸ラウリル、カプリレート塩、コレート塩、スルフォンなどのアニオン性界面活性剤処理で抽出させた後、抽出されたRNAをハイドロキシアパタイトカラムを利用して精製し、あるいはアルコール沈殿方法を利用して精製し、精製されたRNA100μgをM−MuLVリバーストランスクリプターゼとCy3−dCTPおよびCy5−dCTPを使用して40μlの標識反応液中で標識することができる。また、Cy3以外の蛍光色素や酵素や金属粒子などの標識分子にアミノ基を導入し、標的生体分子のカルボキシル基と標識分子のアミノ基を50mg/mL 1−Ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide、50mg/mL Dithiobis(succinmidyl hexanoate)中で25℃30分架橋反応させることで直接的に結合させることもできる。
検体結合反応としては、例えば標識分子で標識されたDNA分子を94℃で1分間処理した後、0℃に急冷し一本鎖核酸に変性させた後、変性させた核酸を含む検体6を標的分子結合素子固定部3上に例えばピペットなどを用いて滴下し、45℃〜60℃で1時間から24時間ハイブリダイゼーション反応させる方法が用いられる。標的分子結合素子固定部3上の溶液の蒸発を防止するため標的分子結合素子2上に溶液を滴下した後、カバーガラスなどで蓋をしたり、検体反応装置1を保湿箱内に静置する。また、標的分子結合素子2として抗体を使用する場合は、検体6中の標的分子5と標的分子結合素子2との抗原抗体反応を維持させるために同様に蒸発防止をして4℃〜37℃で5分〜24時間反応させる。
洗浄工程としては、例えばハイブリダイゼーション反応後の標的分子結合素子固定部3を洗浄する場合は、2XSCC緩衝液を検体の10〜1000倍量を用いて45℃〜60℃にて洗浄することによって、標的分子結合素子2に結合していない核酸分子を標的分子結合素子固定部3から洗い流すことができる。また、標的分子結合素子2として抗体を使用している場合は、洗浄液として0.05%Tween20、PBSが検体結合反応と同じ温度で使用される。
標識検出工程としては、例えば蛍光分子であるCy3やCy5で標識されたDNAを検出する場合は、蛍光スキャナーを用いて蛍光分子が標的分子結合素子固定部3上にあることを検出することができ、Cy3を検出する場合は例えば550nmの波長の光を出すLEDを励起光源として用いることで、Cy3は反射光として570nmの波長の光を反射する。反射された反射光を例えばバンドパスフィルターを通過させた後にCCDなどを用いて光電変換することによって標的分子結合素子固定部3上のCy3を定量することができる。また、生体分子に標識された酵素としてアルカリフォスファターゼを検出する場合、ECLなどの発光基質を用いて蛍光させてCCDなどを用いて光電変換することによって検出することができる。
図2は、検体反応装置を用いた検体反応の動作を横からの断面図で示している。円形支持部4によって起伏発生手段14が標的分子結合素子固定部3に密着して固定されている。起伏発生手段14としは、例えばピエゾ素子のように交流の入力によって振動を発生するものが用いられる。起伏発生手段14に挟まれている標的分子結合素子固定部3の表面には標的分子結合素子2が固定化されており、裏面には標的分子5に似た擬似標的分子15と結合する擬似標的分子結合素子16が固定化されている。例えば検体6として地下水があり、検体6中の標的分子5としてVOC分解菌であるDehalococcoides ethenogenes 195Rの16SrRNAを検出する場合、標的分子結合素子2として16SrRNAに対する相補的塩基配列を持った一本鎖DNAプローブを用いる。16SrRNAは同属微生物の種間で似ているため、16SrRNAに対する一本鎖プローブを用いると同属の微生物種由来の16SrRNAも標的分子結合素子2に結合してしまい、検出精度として微生物に対する種特異性は悪くなってしまう。例えば擬似標的分子15としてDehalobacter restrictus由来の16SrRNAを排除したい場合、擬似標的分子結合素子16として検出から排除したいDehalobacter restrictusの16SrRNAに隣接するITS配列に対する相補的塩基配列を持った一本鎖DNAプローブが利用できる。検体6中に含まれる検出から排除したいDehalobacter restrictusの16SrRNAは標的分子結合素子固定部3裏面に結合し、標的分子結合素子固定部3の表面からは排除される。例えば、擬似標的分子結合素子16としてDehalococcoides ethenogenes 195Rと似ているDehalobacter restrictus特異的な配列として、Journal Microbiological Methods 57 (2004) 369−378に公開されている5‘−gttagggaagaacggcatctgt−3’あるいは5‘―cctctcctgtcctcaagccata―3’あるいは5‘−cgaagcactcccatatct−3’の配列を用いることができる。また、擬似標的分子結合素子16として一本鎖DNAプローブだけでなく抗体やレクチンなどの生体分子も利用することができる。図2(A)が示すように標的分子5と擬似標的分子15と検体反応に影響を及ぼす夾雑物17を含有した検体6を標的分子結合素子固定部3裏面からピストン部8で濾過する。夾雑物17としては例えば繊維カスなど検体6に混入してしまったゴミのことを指す。濾過する方法としては、検体反応装置1の上下をひっくり返して検体6を標的分子結合素子固定部3下の検体保持手段7内にピペットなどを用いて導入し、ピストン部8を検体保持手段7に装着した後、検体反応装置1を再び表面が上面になるようひっくり返し、下側からピストン部8を押し上げることによって検体6を濾過する方法がとられる。また、標的分子結合素子固定部3下の検体保持手段7に開閉可能な検体導入口を設け、ピストン部8を検体保持手段7からはずすことなく検体6を導入することもできる。図2(B)に示すように擬似標的分子15は擬似標的分子結合素子16に結合し夾雑物17は検体6が濾過される際に標的分子結合素子固定部3であるフィルターメンブレンに阻まれ、裏面にトラップされる。表面に濾過された検体6中の標的分子5は表面の標的分子結合素子2に結合する。図2(C)に示すように反応後の検体6を表面から裏面に濾過することによって表面には標的分子結合素子2に結合した標的分子5が残る。この際、標的分子結合素子固定部3であるフィルターメンブレンの穴から検体6が濾過される際、標的分子5は標的分子結合素子2が固定化されている標的分子結合素子固定部3表面近傍を必ず通過するので標的分子5と標的分子結合素子2との接触確立が高くなる。標的分子5を含んだ検体6を標的分子結合素子固定部3表面から添加した場合、標的分子結合素子固定部3表面付近の検体は流動しにくいので、検体6中の標的分子5が標的分子結合素子2に接触する確率が低く、接触確立を改善するために検体6を攪拌させたり乱流を発生させたりするために振とうする手段が一般的に用いられる。しかしながら固相面との界面付近では流体は流れにくく攪拌がスムーズに起こらず接触確立の改善も十分にされない。したがって、標的分子5と標的分子結合素子2との反応効率も低い。標的分子結合素子固定部3であるメンブレンフィルターで検体6を濾過することによって、検体6中の標的分子5は標的分子結合素子固定部3表面に固定化されている標的分子結合素子2の付近を必ず通過するので、簡単に接触確立を上げることができ反応効率を改善することができる。また、検体6を裏面から表面方向に濾過した後、表面から裏面の方向に濾過し、再度裏面から表面方向に濾過し、このサイクルを繰り返すことによって、接触効率を飛躍的に上昇させ、反応効率を大幅に改善することができる。検体反応後、図2(D)が示すように、標的分子結合素子固定部3表面に洗浄液18を添加し、洗浄液18をピストン部8を用いて裏面に濾過することによって、標的分子結合素子2が固定化された標的分子結合素子固定部3表面を簡単に効率よく洗浄することができる。また、この洗浄操作を数回繰り返すことによって、洗浄効果をさらに上げることもできる。洗浄液18としては、例えば核酸を検出する際は2XSSC溶液が利用される。
また、例えばピエゾ素子で構成された起伏発生手段14を用いて、例えばフィルターメンブレンである標的分子結合素子固定部3に振動を加え、標的分子結合素子固定部3表面に連続的に起伏を発生させる。表面に起伏が発生することによって標的分子結合素子固定部3表面付近の検体6に乱流が起こりやすくなり、検体6を濾過する際にさらに標的分子5を標的分子結合素子2との接触確立が上昇し、反応効率を上昇させることができる。また、洗浄の際にも同様に標的分子結合素子固定部3表面に起伏を発生させることによって洗浄効率を上昇させることができる。なお、図2においては、起伏発生手段14を標的分子結合素子固定部3に接触させるように配置したが、標的分子結合素子固定部3自身を例えばピエゾ素子とし微細孔をあけたフィルターメンブレンとすることもできる。例えばピエゾ素子のような起伏発生手段14によって振動を発生させる場合、ピエゾ素子に流す電流の交流周波数と出力によって振動の強さを制御することができるが、出力が強すぎると標的分子結合素子固定部3表面上の検体6が飛び跳ねてしまい、検体反応が上手くいかなくなってしまう。また、検体6の組成によって粘性が異なってくるため、検体6が飛び跳ねてしまう条件は検体6の種類によって異なってくる。例えば0.02%Tween20を添加したPBSを用いる場合は、周波数として18〜80Hz、加速度として、15〜70m/s・sになるように出力を調節することによって、検体6が標的分子結合素子固定部3表面から飛び跳ねずに振動させることができる。
また、図2において検体保持手段7は、例えば金、鉄、銅、アルミなどの金属や塩化ビニル、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの樹脂で形成されているが熱可塑性の無い耐熱性の材料が望ましい。また、検体保持手段7に例えば0.1%BSA、PBSで10〜60分浸漬し親水性処理を施し、検体6が非特異的に結合しにくくすることができる。なお円形支持部4に厚みを設け、標的分子結合素子固定部3表面の検体6が保持されるようにすることもできる。
また、例えばナイロンメンブレンなどの標的分子結合素子固定部3に例えば金などの金属を蒸着したものを使用することもできる。例えば、真空蒸着法を利用し、10の3乗から10の4乗Paの環境で蒸着源を580℃に制御し、1分〜5分程度蒸着することによってメンブレン表面が金で被覆され標的分子結合素子固定部3ができる。なお、金は蒸着される金属の一例であって金に限られたものでなく、また蒸着方法も、真空蒸着法に限定されるものではなく、分子線蒸着や直流放電を利用した方法でもかまわない。例えば金蒸着された標的分子結合素子固定部3上に標的分子結合素子2として複数種類の一本鎖DNAをそれぞれ別々の独立したスポットとして固定化した標的生体分子検出チップ1を用いることによって、金属蒸着されたDNAマイクロアレイとして使用することができる。DNAマイクロアレイや検体反応装置1を用いた生体分子検出方法の標識検出工程において、例えば、標識分子である蛍光色素を検出する場合は標識分子に励起光を照射する際に標的分子結合素子固定部3を構成する樹脂が強い自家蛍光を発するため標識分子を検出するのが困難となる。金属蒸着フィルターメンブレン上に標的分子結合素子2を固定化することによって、樹脂の蛍光によるノイズを低減し、蛍光分子を感度良く検出することができるようになる。
上記構成において、検体反応装置1にトラップされた標的分子5を光学的に検知する際、標的分子結合素子固定部3上の光学的ノイズが小さいためノイズの影響が少なくなり、高い検出精度で標的分子5を検出することができるようになる。
また、金属蒸着をスポット状に行い標的分子結合素子固定部3上に形成された金属スポットに標的分子結合素子2を固定化することもできる。例えば、フォトマスクを使用したスパッタリングによって微小なスポット状に金属を蒸着し、蒸着されたスポット状の金属薄膜上に標的分子結合素子2を固定化する。例えば金をスポット状に蒸着したフィルターメンブレンを1mMのn―オクタンチオールなどのアルカンチオールに1〜24時間浸漬させることによって金属蒸着されたスポット上に単分子膜を導入し、単分子膜を介して標的分子結合素子2を固定化することができる。単分子膜は金属蒸着されていないところには形成されず、金属蒸着されたスポット上にのみ形成されるので、標的分子結合素子2は金属蒸着スポットの上にのみ固定化される。フォトマスクを使用したスパッタリングによる金属蒸着スポットの形状ばらつきは非常に小さいため、標的分子結合素子が固定化されるスポットを非常に精度良く作製することができる。例えば、スパッタリングによって直径20〜200μmの金属蒸着スポットが±0.1μm以下の精度で作製される。
図3は検体反応装置1を用いた検体反応によって標的分子5を検出する装置の一例を示している。図3が示すように、標的分子検出装置19は、少なくとも一つの光源20と受光手段21と光学判断手段22と検体反応装置固定化手段23とスポット位置表示手段24と制御部25と集光レンズ26を備えている。光源20としては例えば、連続発振レーザーやLEDなどが用いられ、通常光学フィルターを用いて一定波長の光が照射されるように調節されている。使用される光学フィルターとしては短波長カットフィルターや長波長カットフィルターやバンドパスフィルターが利用される。調節される波長領域としては530nm程度のグリーン光や、630nm程度のレッド光が単独または複数で使用されるが、これ以外の波長域であっても蛍光分子に対して干渉可能な波長域であれば何れの波長域であっても使用できる。検体反応装置1を検体反応装置固定化手段23に固定し、固定された検体反応装置1の標的分子結合素子固定部3上に光源20から予め定められた波長域で励起光27が照射され、励起光27によって発せられる反射光28を集光レンズ26が集光し受光手段21が受光する。受光手段21としては光電子倍増管や電荷結合素子(CCD)が使用される。例えば検体反応装置1としてDNAマイクロアレイが用いられる場合、Cy3やCy5などの蛍光分子で標識されたDNA分子が標的分子結合素子2上にそれぞれ独立し一定間隔で結合しており、これら蛍光分子あるいは発光分子はそれぞれ固有の吸収スペクトルと蛍光波長を持っており、蛍光分子に干渉する励起光源は蛍光分子の吸収スペクトルに対応した光源20が使用され、受光手段21には反射光の中から目的の波長を制限するための光学フィルターが併用される。例えばCy3やCy5から反射される蛍光はそれぞれ、570nm、670nmであるので、570nmまたは670nmの波長特性をもつ光を通過させる光学フィルターが併用される。また、光源20によって照射され発光した反射光28を受光する一定の時間を、例えば1秒〜10秒の間で調節して設定することによって、標的分子結合素子固定部3の蛍光量が強すぎる場合から弱い時まで対応して受光することができる。なお、設定した一定の受光時間は標的分子結合素子固定部3の蛍光量に合わせて調節することができ、蛍光が弱い時は10秒以上に設定することができ、また、蛍光が強すぎる時は1秒以下に設定することができる。制御部25は光源20に流れる電流量を制御することによって励起光27のオンオフあるいは強弱を制御する。制御部25としては光源20と受光手段21と光学判断手段22とスポット位置表示手段24を制御するためのものであって、例えばCPUなどが使用され、以下のステップで制御される。光源20から励起光27を一定の出力で照射するステップ、反射光28を受光手段21が受光するステップ、受光された反射光28が有効なシグナルであるか光学判断手段22で判断するステップ、光学判断手段22で有効なシグナルと判断された結果をスポット位置表示手段24に表示するステップ、光学判断手段22で有効なシグナルと判断されない場合に光源20の出力を変化させ再度励起光27を照射するステップ、再度反射光28を受光手段21が受光するステップ、再度受光された反射光28が有効なシグナルであるか再度光学判断手段22で判断するステップ、改めて光学判断手段22で有効なシグナルと判断された結果をスポット位置表示手段24に表示するステップを少なくとも含む。光学判断手段22とは、例えば予め一定のデータが記録格納されたメモリであり、例えば受光手段21であるCCDで取得された画像のピクセルの輝度値と光学判断手段22であるメモリに記録されたデータと比較することで有効なシグナルであるかどうか判断される。8ビット画像データであるピクセルあたりの輝度値10〜254が有効なシグナルであることを予め光学判断手段22であるメモリに記録しておき、受光手段21であるCCDで取得された8ビット画像データが10〜254である場合は有効なシグナルであると判断される。受光手段21であるCCDで取得された8ビット画像データが0〜9あるいは255である場合は有効なシグナルとは判断されず、有効なシグナルではないと判断された情報を制御部25であるCPUが受け取る。取得された8ビット画像データが0〜9である場合は、CPUが光源20の出力を上げて再度励起光27を照射するように制御する。また、8ビット画像データが255である場合は、CPUが光源20の出力を下げて再度励起光27を照射するように制御する。スポット位置表示手段24としては例えば液晶モニターが利用され、有効なシグナルであると判断された8ビット画像データが表示される。光学画像29としては例えばCCDで取得された8ビット画像であり、受光手段21によって取得された画像をそのまま表示し、また、光学判断手段22で判断された結果のみを表示する。また、制御部25は撮像された光学画像29を記憶し測定者が記憶された光学画像29を呼び出しスポット位置表示手段24に表示することもできる。検体反応装置固定化手段23としては、例えばスライドグラス上に作成されたDNAマイクロアレイを固定するためのスライドグラスを挟んで固定する治具で構成されており、また、マイクロウェルなどを固定する窪みを有した治具などが使用される。
また、ピストン部8を除去した検体反応装置1を固定するために平滑基準台30を用いることができる。平滑基準台30は例えば、標的分子結合素子固定部3と同心円の平らな面をもち、日本工業規格JISB0610の規定を満たした表面粗さで、例えば金属やガラスや樹脂で成形されている。例えばフィルターメンブレンである標的分子結合素子固定部3を固定している円形支持部4を平滑基準台30に設置することによってフィルターメンブレンの表面粗さを日本工業規格JISB0610の規定の表面粗さに調節することができる。このように平滑基準台30を用いることによってフィルターメンブレンなどの表面に起伏が生じる標的分子結合素子固定部3表面の起伏を無くし、標的分子検出装置19で検出する際に表面粗さによるノイズを除去することができるようになる。
また、標的分子結合素子2として炭素骨格を有した有機分子を用いることによって有機分子に結合する分子を標的分子として反応させ検出することができる。例えば有機分子としてDNAやRNAなどの一本鎖核酸プローブあるいはcDNAを用いることができるし、また、臨床マーカーである抗原に対する抗体を使用することができる。
また、標的分子結合素子2として利用する有機金属錯体として、例えばシスプラチンのような白金に塩素とアンモニアが配位した化合物を用いた場合、シスプラチンはDNAの二重螺旋に結合することができるため、シスプラチンを標的分子結合素子として用いることによって検体中の二重螺旋構造のDNAを結合し検出することができるようになる。また、有機金属錯体として亜鉛を配位したジンクフィンガーを有する転写因子:Rex−1などを利用することができ、Rex−1はDNAの特定の塩基配列を認識して結合するため、転写因子:Rex−1の結合する転写調節配列を有したDNAを結合し検出することができ、また、転写因子:Rex−1に直接結合して転写活性を調節する転写調節因子も結合して検出することができる。また、ジンクフィンガーを有する複数種類の転写因子をアレイ状に標的分子結合素子固定部3上に配置して、それぞれの転写因子に結合する転写調節配列を有した複数種類のDNAを同に結合し検出することもできる。また、有機金属錯体としてカルボキシペプチダーゼAなどのメタロプロテアーゼを利用することができ、カルボキシペプチダーゼAに対する活性阻害剤などを結合できるため、活性阻害剤のスクリーニングなどに用いることができる。
また、標的分子結合素子2として利用する糖質として、例えばシアル酸であるNeu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−を用いることによって、このシアル酸に結合するインフルエンザウイルスのヘマグルチニンを特異的に結合し検出することができる。
また、標的分子結合素子2として利用する脂質として、例えばスフィンゴミエリンを用いることによって、このスフィンゴミエリンに結合するウルシュ菌α毒素のスフィンゴミエリナーゼを検出することができるようになる。
上記構成において、検体6中に夾雑物17が混入していても、夾雑物17が標的分子結合素子固定部3の裏側にトラップされることによって、標的分子結合素子2が固定化されている標的分子結合素子固定部3表面に混入する夾雑物17を除去できる検体反応装置1になる。
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2の検体反応装置を示している。図4において実施の形態1と異なるところは、蓋部9に標的分子結合素子固定領域表示手段32が追加されている点である、図4において、実施の形態1と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。
図4(A)に示すように蓋部9を標的分子結合素子固定部3に被せた時、標的分子結合素子2が固定化されている領域を視覚的に表示する標的分子結合素子固定領域表示手段32が標的分子結合素子固定部3上に設けられている。図4(B)に示すように、検体6の量は検体反応に必要な最少量存在しているが、検体6が標的分子結合素子2が固定化されている領域からずれているかどうかが簡単にモニタリングすることができる。図4(C)に示すように、検体反応に必要な最少量を表示する検体蒸発限度表示手段13を満たし、かつ標的分子結合素子固定領域表示手段32を検体6が満たしている場合に正常に検体反応が進んでいると判断される。
また、検体6が検体反応に必要な最少量存在しているが標的分子結合素子固定領域表示手段32からずれてしまっている際、蓋部9を動かすことによって、蓋部9と標的分子結合素子固定部3に挟まれて保持されている検体6を動かすことができ、標的分子結合素子2が固定されている場所に検体6を移動させることができるようになる。
上記構成において、検体反応させる検体6の標的分子結合素子固定部3上における位置をモニタリングすることができるため、検体6が標的分子結合素子2の固定化されている領域からずれることによる検出精度の悪化を防止できる検体反応装置1になる。
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3の検体反応装置1を示している。
図5に示すように標的分子結合素子固定部3上面には標的分子5と特異的に結合する有機分子33が固定化されている。有機分子33としてDNAやRNAなどの一本鎖核酸プローブあるいはcDNAを用いることができ、また、臨床マーカーである抗原に対する抗体を使用することができる。例えばVOC分解菌であるDehalococcoides ethenogenes 195Rを検出するためにDehalococcoides ethenogenes 195RのゲノムのITS領域を含む数十〜数百の塩基配列を一本鎖核酸プローブとして利用し、土壌、河川水などのサンプルあるいは、培養液中から抽出した核酸を一本鎖核酸プローブとフィルターメンブレン上でハイブリダイゼーションさせることによって標的となるDehalococcoides ethenogenes 195Rゲノム由来の核酸を検体反応装置1に補足し、補足された核酸を検出することによってサンプル中のDehalococcoides ethenogenes 195Rの存在を選択的に検出することができる。
上記構成において、検体6中に含まれる有機分子33に結合する標的分子5が効率良く標的分子結合素子2に反応することができ、蒸発による検体6の減少や検体6の位置のずれによる検体反応の阻害を防止できる検体反応装置1となる。
(実施の形態4)
図6は本発明の実施の形態4の検体反応装置1を示している。
図6に示すように標的分子結合素子固定部3上面には標的分子5と特異的に結合する有機金属錯体34が固定化されている。有機金属錯体34として、例えばシスプラチンのような白金に塩素とアンモニアが配位した化合物を用いることができる。シスプラチンはDNAの二重螺旋に結合することができるため、シスプラチンを標的分子結合素子として用いることによって検体中の二重螺旋構造のDNAを選択的に検出することができるようになる。また、有機金属錯体として亜鉛を配位したジンクフィンガーを有する転写因子:Rex−1などを利用することができ、Rex−1はDNAの特定の塩基配列を認識して結合するため、転写因子:Rex−1の結合する転写調節配列を有したDNAを結合し検出することができ、また、転写因子:Rex−1に直接結合して転写活性を調節する転写調節因子も結合して検出することができる。また、ジンクフィンガーを有する複数種類の転写因子をアレイ状に標的分子結合素子固定部3上に配置して、それぞれの転写因子に結合する転写調節配列を有した複数種類のDNAを同に結合し検出することもできる。また、有機金属錯体としてカルボキシペプチダーゼAなどのメタロプロテアーゼを利用することができ、カルボキシペプチダーゼAに対する活性阻害剤などを結合できるため、活性阻害剤のスクリーニングなどに用いることができる。
上記構成において、検体6中に含まれる有機金属錯体34に結合する標的分子5が効率良く標的分子結合素子2に反応することができ、蒸発による検体6の減少や検体6の位置のずれによる検体反応の阻害を防止できる検体反応装置1となる。
(実施の形態5)
図7は本発明の実施の形態5の検体反応装置1を示している。
図7に示すように標的分子結合素子固定部3上面には標的分子5と特異的に結合する核酸35が固定化されている。核酸35としてDNAやRNAなどの一本鎖核酸プローブあるいはcDNAを用いることができる。例えばVOC分解菌であるDehalococcoides ethenogenes 195Rを検出するためにDehalococcoides ethenogenes 195RのゲノムのITS領域を含む数十〜数百の塩基配列を一本鎖核酸プローブとして利用し、土壌、河川水などのサンプルあるいは、培養液中から抽出した核酸を一本鎖核酸プローブとフィルターメンブレン上でハイブリダイゼーションさせることによって標的となるDehalococcoides ethenogenes 195Rゲノム由来の核酸を検体反応装置1に補足し、補足された核酸を検出することによってサンプル中のDehalococcoides ethenogenes 195Rの存在を選択的に検出することができる。
上記構成において、検体6中に含まれる核酸35に結合する標的分子5が効率良く標的分子結合素子2に反応することができ、蒸発による検体6の減少や検体6の位置のずれによる検体反応の阻害を防止できる検体反応装置1となる。
(実施の形態6)
図8は本発明の実施の形態6の検体反応装置1を示している。
図8に示すように標的分子結合素子固定部3上面には標的分子5と特異的に結合するタンパク質36あるいはペプチド37が固定化されている。
例えばタンパク質36として抗HBSモノクローナル抗体を用いることによって、検体6中に含まれるHBS抗原と特異的に結合反応させることができ、検体6中のHBS抗原の有無を検出することができる。また、例えばペプチド37としてHBS抗原のペプチド配列を用いることによって検体6中の抗HBS抗体と特異的に結合反応することによって検体6中の抗HBS抗体の有無を選択的に検出することができるようになる。
上記構成において、検体6中に含まれるタンパク質36あるいはペプチド37に結合する標的分子5が効率良く標的分子結合素子2に反応することができ、蒸発による検体6の減少や検体6の位置のずれによる検体反応の阻害を防止できる検体反応装置1となる。
(実施の形態7)
図9は本発明の実施の形態7の検体反応装置1を示している。
図9に示すように標的分子結合素子固定部3上面には標的分子5と特異的に結合する糖質38が固定化されている。例えば糖質38として、シアル酸であるNeu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−を用いることによって、検体6中に含まれるインフルエンザウイルスのヘマグルチニンがNeu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−と特異的に結合する。
上記構成において、検体6中に含まれる糖質38に結合する標的分子5が効率良く標的分子結合素子2に反応することができ、蒸発による検体6の減少や検体6の位置のずれによる検体反応の阻害を防止できる検体反応装置1となる。
(実施の形態8)
図10は本発明の実施の形態8の検体反応装置1を示している。
図10に示すように標的分子結合素子固定部3上面には標的分子5と特異的に結合する脂質39が固定化されている。例えば脂質39としてスフィンゴミエリンを用いることによって、検体6中に含まれるウルシュ菌α毒素のスフィンゴミエリナーゼとスフィンゴミエリンが特異的に結合する。
上記構成において、検体6中に含まれる脂質39に結合する標的分子5が効率良く標的分子結合素子2に反応することができ、蒸発による検体6の減少や検体6の位置のずれによる検体反応の阻害を防止できる検体反応装置1となる。
(実施の形態9)
図11は本発明の実施の形態9の検体反応装置1を示している。
図11(A)は金属を蒸着した金属蒸着メンブレン40を示しており、図11(B)は金属蒸着メンブレン40を用いた検体反応装置1の一部を示している。
図11(A)に示すように、例えばナイロンなどのメンブレンに0.2μm径の穴が開孔したメンブレンフィルターに真空蒸着法を利用し、10の3乗から10の4乗Paの環境で蒸着源を580℃に制御し、1分〜5分程度金を蒸着することによってメンブレン表面が金で被覆され金属蒸着メンブレン40ができる。なお、金は蒸着される金属の一例であって金に限られたものでなく、また蒸着方法も、真空蒸着法に限定されるものではなく、分子線蒸着や直流放電を利用した方法でもかまわない。
図11(B)に示すように、例えば金蒸着された金属蒸着メンブレン40上に標的分子結合素子2として複数種類の一本鎖DNAをそれぞれ別々の独立したスポットとして固定化した検体反応装置1を用いることによって、金属蒸着されたDNAマイクロアレイとして使用することができる。DNAマイクロアレイを用いた標的分子5の検出する場合、例えば、蛍光色素で標識した標的分子5に対してレーザー光を照射することによって光学的に検出するが、標的分子結合素子固定部3を構成する樹脂が強い自家蛍光を発する場合は、蛍光色素由来の信号より自家蛍光が強いために標識分子を検出するのが困難となる。金属蒸着メンブレン40上に標的分子結合素子2を固定化することによって、樹脂の蛍光によるノイズを低減し、蛍光分子を感度良く検出することができるようになる。
上記構成において、検体反応装置1を光学的に検知する際、金属蒸着メンブレン40の光学的ノイズが小さいため樹脂の自家蛍光などのバックやノイズの影響が少なくなり、高い検出精度で標的分子5を検出することができるようになる。
(実施の形態10)
図12は本発明の実施の形態10の標的分子結合素子固定部3上に金属蒸着スポット41が形成されている検体反応装置1を示している。
図12において実施の形態11と異なるところは、標的分子結合素子固定部3上に金属蒸着スポット41が形成されており、金属蒸着スポット41上に標的分子結合素子2が固定化されている点である、図12において、実施の形態11と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。
例えば、フォトマスクを使用したスパッタリングによって微小なスポット状に金属を蒸着し、同形のスポットを精度良く形成する。蒸着されたスポット状の金属薄膜上に標的分子結合素子2を固定化する。例えば金をスポット状に蒸着したフィルターメンブレンを1mMのn―オクタンチオールなどのアルカンチオールに1〜24時間浸漬させることによって金属蒸着スポット41上に単分子膜を導入し、単分子膜を介して標的分子結合素子2を固定化することができる。単分子膜は金属蒸着スポット41上にのみ形成されるので、標的分子結合素子2は金属蒸着メンブレン40上にのみ固定化される。フォトマスクを使用したスパッタリングによる金属蒸着スポット41の形状ばらつきは非常に小さいため、標的分子結合素子2が固定化されるスポットを非常に精度良く作製することができる。
上記構成において、標的分子結合素子2が固定化されている領域を目で簡単に確認でき、かつ、標的分子結合素子2に結合した生体分子を光学的に検出する際光学的ノイズが小さく精度良く検出できるようになる。また、標的分子結合素子2を固定化する際、金属蒸着スポット41上に正確に固定化できるようになるため、標的分子結合素子2が固定化されるスポット径を精度良くコントロールすることができるようになる。
(実施の形態11)
図3は本発明の実施の形態11の標的分子検出装置19を示している。
図3が示すように、標的分子検出装置19は、少なくとも一つの光源20と受光手段21と光学判断手段22と検体反応装置固定化手段23とスポット位置表示手段24と制御部25と集光レンズ26を備えている。光源20としては例えば、連続発振レーザーやLEDなどが用いられ、通常光学フィルターを用いて一定波長の光が照射されるように調節されている。使用される光学フィルターとしては短波長カットフィルターや長波長カットフィルターやバンドパスフィルターが利用される。調節される波長領域としては530nm程度のグリーン光や、630nm程度のレッド光が単独または複数で使用されるが、これ以外の波長域であっても蛍光分子に対して干渉可能な波長域であれば何れの波長域であっても使用できる。検体反応装置1を検体反応装置固定化手段23に固定し、固定された検体反応装置1の標的分子結合素子固定部3上に光源20から予め定められた波長域で励起光27が照射され、励起光27によって発せられる反射光28を集光レンズ26が集光し受光手段21が受光する。受光手段21としては光電子倍増管や電荷結合素子(CCD)が使用される。例えば検体反応装置1としてDNAマイクロアレイが用いられる場合、Cy3やCy5などの蛍光分子で標識されたDNA分子が標的分子結合素子2上にそれぞれ独立し一定間隔で結合しており、これら蛍光分子あるいは発光分子はそれぞれ固有の吸収スペクトルと蛍光波長を持っており、蛍光分子に干渉する励起光源は蛍光分子の吸収スペクトルに対応した光源20が使用され、受光手段21には反射光の中から目的の波長を制限するための光学フィルターが併用される。例えばCy3やCy5から反射される蛍光はそれぞれ、570nm、670nmであるので、570nmまたは670nmの波長特性をもつ光を通過させる光学フィルターが併用される。また、光源20によって照射され発光した反射光28を受光する一定の時間を、例えば1秒〜10秒の間で調節して設定することによって、標的分子結合素子固定部3の蛍光量が強すぎる場合から弱い時まで対応して受光することができる。なお、設定した一定の受光時間は標的分子結合素子固定部3の蛍光量に合わせて調節することができ、蛍光が弱い時は10秒以上に設定することができ、また、蛍光が強すぎる時は1秒以下に設定することができる。制御部25は光源20に流れる電流量を制御することによって励起光27のオンオフあるいは強弱を制御する。制御部25としては光源20と受光手段21と光学判断手段22とスポット位置表示手段24を制御するためのものであって、例えばCPUなどが使用され、以下のステップで制御される。光源20から励起光27を一定の出力で照射するステップ、反射光28を受光手段21が受光するステップ、受光された反射光28が有効なシグナルであるか光学判断手段22で判断するステップ、光学判断手段22で有効なシグナルと判断された結果をスポット位置表示手段24に表示するステップ、光学判断手段22で有効なシグナルと判断されない場合に光源20の出力を変化させ再度励起光27を照射するステップ、再度反射光28を受光手段21が受光するステップ、再度受光された反射光28が有効なシグナルであるか再度光学判断手段22で判断するステップ、改めて光学判断手段22で有効なシグナルと判断された結果をスポット位置表示手段24に表示するステップを少なくとも含む。光学判断手段22とは、例えば予め一定のデータが記録格納されたメモリであり、例えば受光手段21であるCCDで取得された画像のピクセルの輝度値と光学判断手段22であるメモリに記録されたデータと比較することで有効なシグナルであるかどうか判断される。8ビット画像データであるピクセルあたりの輝度値10〜254が有効なシグナルであることを予め光学判断手段22であるメモリに記録しておき、受光手段21であるCCDで取得された8ビット画像データが10〜254である場合は有効なシグナルであると判断される。受光手段21であるCCDで取得された8ビット画像データが0〜9あるいは255である場合は有効なシグナルとは判断されず、有効なシグナルではないと判断された情報を制御部25であるCPUが受け取る。取得された8ビット画像データが0〜9である場合は、CPUが光源20の出力を上げて再度励起光27を照射するように制御する。また、8ビット画像データが255である場合は、CPUが光源20の出力を下げて再度励起光27を照射するように制御する。スポット位置表示手段24としては例えば液晶モニターが利用され、有効なシグナルであると判断された8ビット画像データが表示される。光学画像29としては例えばCCDで取得された8ビット画像であり、受光手段21によって取得された画像をそのまま表示し、また、光学判断手段22で判断された結果のみを表示する。また、制御部25は撮像された光学画像29を記憶し測定者が記憶された光学画像29を呼び出しスポット位置表示手段24に表示することもできる。検体反応装置固定化手段23としては、例えばスライドグラス上に作成されたDNAマイクロアレイを固定するためのスライドグラスを挟んで固定する治具で構成されており、また、マイクロウェルなどを固定する窪みを有した治具などが使用される。
また、ピストン部8を除去した検体反応装置1を固定するために平滑基準台30を用いることができる。平滑基準台30は例えば、標的分子結合素子固定部3と同心円の平らな面をもち、日本工業規格JISB0610の規定を満たした表面粗さで、例えば金属やガラスや樹脂で成形されている。例えばフィルターメンブレンである標的分子結合素子固定部3を固定している円形支持部4を平滑基準台30に設置することによってフィルターメンブレンの表面粗さを日本工業規格JISB0610の規定の表面粗さに調節することができる。このように平滑基準台30を用いることによってフィルターメンブレンなどの表面に起伏が生じる標的分子結合素子固定部3表面の起伏を無くし、標的分子検出装置19で検出する際に表面粗さによるノイズを除去することができるようになる。また、光源20及び検体反応装置1及び受光手段21を収め外部の光を遮断する筐体31を設けることによって、外光の影響を受けずに精度良く光学画像29を取得できる標的分子検出装置19となる。例えば筐体31としては光を透過しない金属などで形成された箱型のものが利用される。
上記構成において、検体反応装置の標的分子結合素子固定部3表面を簡単に平滑にすることによって、標的分子結合素子固定部表面の凹凸によるノイズを削減し感度良く標的分子を光学的に検出することができる標的分子検出装置19となる。