JP4569070B2 - 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に電力用トランス等の鉄心として用いられる方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法に関し、特に、電磁鋼板の表面にフォルステライト等の被膜が生成するのを抑制するのに好適な仕上焼鈍方法を提案する。
【0002】
【従来の技術】
Siを含有し、結晶方位が(110)[001]方位や(100)[001]方位に高度に配向した方向性電磁鋼板は、優れた軟磁気特性を有することから、商用周波数帯域での各種鉄心材料として広く用いられている。この電磁鋼板に要求される特性としては、50Hzの周波数で1.7Tに磁化させた場合の鉄損であるW17/50(W/kg)の値が低いこと、および保磁力が小さいことが挙げられる。
【0003】
鉄損を低減するためには、鉄損を構成する2つの要素、すなわち渦電流損(We)とヒステリシス損(Wh)を低下することが有効である。近年、上記ヒステリシス損を低下させる方法として盛んに研究開発されている技術に、鋼板表面を平滑化する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、方向性電磁鋼板の2次再結晶焼鈍において、通常用いられているマグネシア(MgO)を主剤とする焼鈍分離剤は、鋼板表面に、主にフォルステライト(Mg2SiO4)からなる被膜を多量に形成し、地鉄とフォルステライトとの界面を荒らすため、サーマルエッチングや研磨による表面平滑化には不向きである。
【0004】
そこで、最近、フォルステライト被膜の生成を抑制する技術が検討されている。例えば、特許文献2には、アルミナ(Al2O3)あるいアルミナを主成分とする焼鈍分離剤を用いることにより、フォルステライト被膜の生成を抑制する技術が、また、特許文献3には、主剤であるMgOにアルカリ又はアルカリ土類金属の塩化物を2〜40重量部添加した焼鈍分離剤を適用する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭52−024499号公報
【特許文献2】
特開平05−156362号公報
【特許文献3】
特開昭64−062476号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献2の技術によれば、アルミナは鋼板表面のシリカやファイヤライトのようなSi含有酸化物との反応性が低いため、鋼板上にフォルステライトのような酸化物被膜が形成することがない。しかし、この技術を、コイル状態で行われる仕上焼鈍に適用した場合には、コイルの上端部に当たるエッジから100mm程度の部分では、シリカやスピネルのような酸化物が多量に形成されるという問題があった。これらの酸化物が存在すると、鋼板表面の均一性が損なわれ、また磁気特性も劣化するため、この部分は製品にならないという問題がある。
【0007】
また、特許文献3の技術でも、鋼帯の板幅方向の表面性状が不均一になるという問題があった。すなわち、仕上焼鈍時のコイル上端エッジから50mm程度の部分には、やはりフォルステライト被膜が生成し、その被膜の厚さは鋼帯の幅中央に向かって徐々に薄くなるものの、エッジから幅200mm程度までに亘って薄膜状または島状に残存し、磁気特性の劣化や外観不良を引き起こすことから、歩留りの低下を招くという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、方向性電磁鋼板の地鉄表面を仕上焼鈍で平滑化するに当たり、電磁鋼板の表面に酸化物被膜やフォルステライト被膜が生成、残存するのを効果的に抑制し、板幅方向の表面品質の不均一性を改善する有利な仕上焼鈍方法を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上述した仕上焼鈍時にコイル上端エッジ部に酸化物被膜やフォルステライト被膜が形成される原因について調査を行った。その結果、コイル上端部は焼鈍雰囲気ガスとの接触性がよいため、仕上焼鈍中のコイル近傍の雰囲気ガスが酸化性であった場合には、鋼中のSiが容易に選択酸化されて表層に酸化物を多量に形成することが判明した。また、塩化物等のハロゲン化物を添加した焼鈍分離剤を使用する場合には、コイル上端付近では、ハロゲン化物が蒸発あるいは分解してコイルの層間から散逸しやすいため、フォルステライト被膜の形成を抑制する効果が低下することが判明した。そして、これらの問題を防止するためには、コイル上端を、板等の遮蔽物で覆うことにより、コイル上端と雰囲気ガスとの接触を遮断し、あるいは塩素ガス等の分解ガスの散逸を防止することが有効であることを見出した。
【0011】
上記知見に基づき開発された本発明は、鋼板表面にハロゲン化物を焼鈍分離剤100重量部に対してハロゲンの量で0.1〜10重量部を添加した焼鈍分離剤を塗布してなるSi:2.0〜7.0mass%を含有する電磁鋼板のコイルを、焼鈍炉内にアップエンドの状態に載置すると共に、該コイル上端面を雰囲気ガスから遮蔽して焼鈍することを特徴とする方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る仕上焼鈍方法について具体的に説明する。
本発明における被焼鈍材である電磁鋼板は、仕上焼鈍の前までは、従来公知の方法で製造されたものが適用できるが、この発明で使用される電磁鋼板は、その成分組成として、Siを2.0〜7.0mass%含有するものであることが必要である。Siは、鋼板の電気抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効な成分であるが、7.0mass%を超えると、硬度が高くなり過ぎて製造や加工が困難になる。一方、2.0mass%未満では、2次再結晶焼鈍中に変態を生じて、安定した2次再結晶組織が得られないため、下限は2.0mass%とする必要がある。
【0013】
Si以外の素材成分は、インヒビター成分として、Alを初期鋼中に0.01mass%以上含有することにより、結晶配向性を向上することができる。なお、Alを添加する場合は、その含有量が0.06mass%を超えると、再び結晶配向性の劣化が生じるので0.06mass%以下とすることが好ましい。
【0014】
Nは、Alと結合してインヒビターとして働く元素であるが、含有量が多過ぎるとふくれ欠陥を発生するため、その含有量は0.02mass%以下に制限する。N含有量の下限値は、特に規定しないが、工業的に実現が可能である0.002mass%程度が好ましい。なお、AlNをインヒビターとして用いる場合には、素材段階で低N化しておき、1次再結晶焼鈍後に、後述する増窒素処理を行うことは、従来、必須であった熱間圧延前にスラブを1400℃以上の高温に加熱するという制約から解放することができ、操業の自由度が増すという観点からは好ましい。
【0015】
しかし、上記増窒素処理を行わない場合は、インヒビター成分として、初期鋼中にSe,Sを、合計で0.01〜0.06mass%含有することが推奨される。加えて、これらをMn化合物として析出させ、インヒビターとして機能させるためには、0.01〜0.2mass%のMnを含有させることが望ましい。それぞれ少なすぎると、2次再結晶を生じるための析出物が過少となり、また多すぎると熱延前の固溶が困難となるため、それぞれ上述した範囲内で添加することが好ましい。一方、増窒素処理を行う場合には、Mn,SeおよびSは必ずしも必要ではないが、鋼の延性改善等の目的で適宜添加することができる。この場合でも、上記と同様の理由で上下限を定めるのが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の素材には、上記の成分の他に、方向性電磁鋼板の電磁特性を改善する目的で、B,Bi,Sb,Mo,Te,Sn,P,Ge,As,Nb,Ni,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびInから選ばれる成分を単独または複合で0.0005〜2.0mass%含有させることが好ましい。これらの含有量が0.0005mass%未満では効果がほとんどなく、一方、2.0mass%を超えると、却って磁束密度の低下を招く。なお、素材の鋼中には、再結晶集合組織を制御して磁気特性を向上させる目的で、0.005〜0.2mass%程度のCを含有することが好ましい。
【0017】
なお、製品の状態においては、上述したC,S,SeおよびNはいずれも、磁気特性には有害な作用があり、特に鉄損を劣化させることから、それぞれC:0.003mass%以下、S+Se:0.002mass%以下、N:0.002mass%以下程度に低減することが好ましい。
【0018】
次に、本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明においては、上記所定の成分に調整された鋼塊やスラブを素材とし、公知の方法により熱間圧延を行い、必要に応じて熱延板焼鈍を行った後、冷間圧延または温間圧延により最終板厚とし、その後、1次再結晶焼鈍を行う。なお、本発明では、素材として、シートバーキャスト法、コイルキャスト法で得たものを用いることもできる。また、熱間圧延として、シートバー接合による連続熱延法を用いてもよい。
【0019】
本発明では、1次再結晶焼鈍後に、さらに増窒素処理を行ってもよい。上述したように、インヒビター成分としてのNを素材段階で低く抑えることにより、熱間圧延前のスラブ加熱温度の低温化を図ることができるが、2次再結晶に必要なインヒビターとしてのAlNを確保するため、仕上焼鈍前にNを鋼中に固溶させる増窒素処理を施すことが好ましい。具体的には、一次再結晶した鋼板を、アンモニアを含む雰囲気ガス中に加熱通板することなどにより行うことができる。
【0020】
次いで、アルミナ、シリカ、カルシア等、地鉄成分や地鉄表面のシリカとの反応性が低く、フォルステライトを形成しない酸化物を、焼鈍分離剤として鋼板に付着させる。低反応性の焼鈍分離剤としては他に、1200℃以上の高温で焼成して反応性を低下させた重焼マグネシアも用いることができる。
【0021】
また、本発明では、従来から広く方向性電磁鋼板の焼鈍分離剤として用いられてきた軽焼マグネシアに、後述するハロゲン化物の1種または2種以上を含有させたものを焼鈍分離剤として用いることもできる。ハロゲン化物の添加により、フォルステライト被膜の形成を阻害し、あるいは、一度形成したフォルステライト被膜の剥離を容易にするので、仕上焼鈍後、焼鈍分離剤を除去したときに平滑な地鉄表面が得られる。なお、上記マグネシアやカルシア等は、一部が水和して水酸化物となっていてもよい。
【0022】
上記軽焼マグネシアに添加するハロゲン化物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の他、Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ag,In,Sn,Sb,Pb,Bi等の塩化物や臭化物等を用いることができる。特に、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Sb,Sn,Pb,Bi,Mgの塩化物を用いた場合には、地鉄表面の平滑性が特に優れ、鉄損の低減に大きな効果がある。これらのハロゲン化物は、融点が低く、仕上焼鈍の比較的低い温度から融解し、地鉄成分や表面のシリカと焼鈍分離剤との反応を阻害し、あるいは、フォルステライト被膜の形成を阻害したり、あるいはフォルステライト被膜が地鉄界面にアンカーを形成するのを抑制したりする作用がある。また、高温域での不要な追加酸化を抑制し、サーマルエッチングによる表面の平滑化を助ける効果もある。
【0023】
添加するハロゲン化物の量は、その塩素、臭素、ヨウ素の合計の量で、焼鈍分離剤100重量部に対して0.1〜10重量部であることが必要である。0.1重量部よりも少ないと、剥離しやすいフォルステライト被膜の形成促進効果が得られない。また、10重量部よりも多い場合、フォルステライト形成反応が過剰になり、地鉄内部にフォルステライトが食い込むように形成されるため、冷却中における被膜の剥離を阻害したり、磁気特性を劣化させたりする。
【0024】
なお、上述した焼鈍分離剤には、その他に、2次再結晶の制御を目的として、公知の硫化物、水酸化物、ほう酸塩、硝酸塩、燐酸塩、炭酸塩、硫酸塩等を加えることができる。また、上記焼鈍分離剤の鋼板表面への付着量は、2〜50g/m2が好ましく、その付着方法は、水スラリーにして塗布・乾燥しても、静電塗布してもよく、方法による制限はない。
【0025】
次に、焼鈍分離剤を付着させた鋼板をコイルに巻き取り、高温の仕上焼鈍を行い2次再結晶させる。この仕上焼鈍では、コイルをアップエンドすなわちコイルの軸心が垂直方向の状態にして行うことで、高温におけるコイルの変形を、下側端部の一部に止めることができる。そして、本発明においては、コイル上側端面を、遮蔽物で覆うことが必須の要件である。
【0026】
コイル上端エッジ付近は、遮蔽物がない場合には、鋼板の層間に雰囲気ガスが侵入し、雰囲気ガスと鋼板とが接触し易い。そのため、焼鈍分離剤としてフォルステライトを形成しないアルミナやカルシア等を用いた場合には、酸化被膜が形成されないように制御した焼鈍分離剤や焼鈍条件であっても、コイル上端エッジから200mm以内の領域では、酸化被膜が形成されたり、表面の凹凸が増大したりしたりする。また、コイルエッジ付近は、仕上焼鈍の昇温過程において、炉内に残留した酸素や水蒸気あるいは炉内から発生した水蒸気等により追加酸化されるため、被膜の形成がより促進される傾向にあり、特に、一次再結晶焼鈍を低酸化性の雰囲気で行っている場合には、鋼板表面に形成される酸化皮膜(サブスケール)による耐酸化性が弱いため、この追加酸化の影響が大きい。
【0027】
一方、ハロゲン化物を添加した焼鈍分離剤を使用する場合には、仕上焼鈍における加熱によって、ハロゲン化物の一部が蒸発したり、あるいは分解してハロゲンガスとなって鋼板の層間から散逸したりする。特に、コイルエッジの近傍ではこの傾向が強いため、コイル上端に遮蔽物がない場合には、フォルステライト被膜が残存したり、表面平滑性の劣化が生じたりして、鉄損特性が劣化し、製品が得られなくなる。
【0028】
そこで、本発明では、コイル上端面を遮蔽物で覆うことによって、コイル上端部が雰囲気ガスと接触するのを防止し、あるいは、ハロゲン含有化合物の蒸発や分解を抑制してハロゲンの散逸を防止する。それによって、コイルエッジ付近での酸化物被膜やフォルステライト被膜の生成を抑制して、表面平滑性を向上することができるので、方向性電磁鋼板の全幅に亘って低鉄損化が可能となる。
【0029】
コイル上端部を雰囲気ガスから保護する遮蔽物としては、耐熱鋼やステンレス鋼の薄鋼板を用いることができるが、この場合には、薄鋼板とコイルとの焼付きを防止するために、鋼板表面に、耐火物やセラミックを溶射等により付着させたり、それらの粉を塗布したりすることが好ましい。あるいは、鋼板とコイルとの間に、耐火物やセラミックの粉を散布したり、耐火物シートを挟む等の対策を用いてもよい。また、上記の薄鋼板を用いる他に、厚さ1mm以上の耐火物製のシートや、セラミックス製の板をコイル上端に載せて遮蔽物としてもよい。遮蔽物が覆う範囲は、コイル上端面だけではなく、コイルの外周面や内周面の一部を含めて覆うようにしてもよい。雰囲気遮蔽物の厚さは、特に限定しないが、過度の重量がコイルに掛からないようにするのが好ましい。
【0030】
仕上焼鈍の条件は、従来公知の焼鈍温度パターンと雰囲気ガスを用いることができるが、特にハロゲン化物を含有した焼鈍分離剤を用いる場合には、1000℃以上までは水素を3%以下、より好ましくは0%の雰囲気ガスとすることで、ハロゲン化物がハロゲン化水素となって散逸するのを防止できるので、酸化被膜形成を抑制する効果と表面平滑性の向上効果が得られる。また、仕上焼鈍の最高温度を1100℃以上にすることは、サーマルエッチングによる表面平滑化が促進されるので好適である。なお、鋼板の冷却は、コイルの温度が200℃以下の低温になるまで非酸化性雰囲気下で行うことにより、鋼板表面の酸化を抑制しテンパーカラーの発生を防止することができる。
【0031】
2次再結晶焼鈍後の鋼板は、必要に応じてさらに、電解研磨、化学的研磨、物理的研磨、サーマルエッチング等の処理を施し、表面を平滑化することもできる。また、従来から低鉄損化に有効な手段として用いられている磁区細分化技術を適用することもできる。
【0032】
さらに、2次再結晶した鋼板の表面に、張力被膜を設けることにより、僅かな張力で効果的に鉄損を低減することができる。なお、方向性電磁鋼板は、一般に積層して使用されるので、層間に導通がないことが求められるが、そのためには、上記張力被膜は絶縁材としての機能を持たせることが好ましく、またこの目的のために別途、絶縁被膜を設けても良い。
【0033】
なお、電磁鋼板の厚みは特に規定しないが、渦電流損(We)の中の古典的渦電流損は、板厚の関数であることから、要求される鉄損に応じて板厚を定めればよく、通常は、0.1〜0.35mm程度である。
【0034】
【実施例】
C:0.06mass%、Si:3.5mass%、Mn:0.08mass%、S:0.002mass%、Se:0.018mass%、Al:0.03mass%、N:0.001mass%、Sb:0.01mass%およびCu:0.2mass%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1380℃に加熱した後、熱間圧延して厚さ2.0m、板幅1200mmの熱延鋼帯とし、この鋼帯を熱延板焼鈍、冷間圧延、中間焼鈍の後、温間圧延により板厚0.23mmの冷延鋼帯とした。その後、この冷延鋼帯に、脱炭を兼ねた1次再結晶焼鈍を施した後、この鋼帯を2分割し、1つには軽焼マグネシアにMgCl2・6H2OをClの重量で1重量部添加した焼鈍分離剤を、他の1つにはアルミナの焼鈍分離剤を、それぞれスラリーとして塗布、乾燥し、外径1.5mのコイルに巻取った。このときの焼鈍分離剤の付着量は、いずれも両面で13 g/m2とした。
【0035】
上記コイルをアップエンド(コイル軸心を垂直方向)にしてプレート上に置き、コイル上端面の半分を、アルミナとシリカの繊維で作られた厚さ3mmの耐火物シートで覆って雰囲気ガスとの接触を遮断し、残りの半分は、何も覆わずに雰囲気ガスとの接触を可能とした。このコイルを、1100℃までの加熱を窒素ガス雰囲気中で、続く1100℃から1200℃までの加熱を水素ガス雰囲気中で行い、引き続き、1200℃で10時間保持する純化焼鈍を兼ねた仕上焼鈍を行い、2次再結晶を起こさせた後、冷却して方向性電磁鋼帯とした。かくして得られた鋼帯を、水洗およびリン酸酸洗によって表面を洗浄し、さらに、4MPaの張力を加えながら820℃で20sec保持する平坦化焼鈍(連続焼鈍)を、H2ガスを3%含む窒素雰囲気中で行った。
【0036】
上記2本の仕上焼鈍後のコイルについて、巻き戻しを行い、遮蔽物の有無によるコイル上側エッジ部分の表面性状の差を調査した。なお、表面性状の良否の判定は、酸素目付量で評価した。すなわち、コイル全長からコイル上側エッジ部のサンプルを10点採取してそれぞれの幅方向の酸素目付量を測定し、その値が両面で0.4g/m2以上である部分のエッジからの長さを測定し、試料10点中の最大長さの値をもってエッジの表面不良部の幅とした。この結果を表1に示したが、遮蔽物を載置した部分は、焼鈍分離剤としてアルミナおよびハロゲン化物を添加した軽焼マグネシアのいずれを用いた場合でも、表面性状不良部は、コイルエッジから5mm以内に抑えられており、良好な結果が得られた。一方、遮蔽物で雰囲気ガスとの接触を抑制しなかった部分は、いずれの焼鈍分離剤を用いた場合も、コイルエッジから150mm以上まで表面性状不良部が及んでいることがわかった。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、鋼板の板幅方向のほぼ全域に亘って、表面に酸化物被膜やフォルステライト被膜が形成されずかつ表面が平滑化な方向性電磁鋼板を得ることができるので、鉄損不良および表面性状不良による歩留まり低下の低減に大きな効果が得られる。
Claims (1)
- 鋼板表面にハロゲン化物を焼鈍分離剤100重量部に対してハロゲンの量で0.1〜10重量部を添加した焼鈍分離剤を塗布してなるSi:2.0〜7.0mass%を含有する電磁鋼板のコイルを、焼鈍炉内にアップエンドの状態に載置すると共に、該コイル上端面を雰囲気ガスから遮蔽して焼鈍することを特徴とする方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法。
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