JP4567274B2 - 薬液既充填小型注射器の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬液既充填注射器の製造方法に関わる。更に詳しくは、熱収縮性樹脂フィルムで被覆された薬液既充填注射器の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
予め所定量の薬液を充填した注射器において、注射器の先端部にゴム栓をし、熱収縮性樹脂フィルムを巻きつけて封印することは知られている(実用新案登録第3024311号)。これは、裏面に接着剤を塗布した熱収縮性樹脂フィルムを、注射器のシリンジ先端部に嵌合するゴム栓の側面とシリンジの外側面とに亙り、重複するように巻きつけて、熱収縮により封印するものである。なお、熱収縮により封印する装置としては、特開平8−143016記載の装置が知られており、これは熱風吹き付け機構が加熱対象物の一方向側にのみ設置されている。
【0003】
また、ミシン目が施され、表面に内容物を表示する印刷がされ、裏面に接着剤が塗布された熱収縮性樹脂フィルム(シュリンクラベル)も既に知られている(実開平2−136281号)。
【0004】
しかし、シリンジに嵌合するゴム栓側面とシリンジの外側面とをフィルムで覆うだけでは、フィルムとゴム栓との接着性が弱かった場合、フィルムの外形に影響させずにゴム栓のみを抜くことができ、内容物の改ざんが行われたか否かを一見して判別することは難しい。また、逆に、接着が充分に行われた場合は、フィルムにミシン目が設けられていても、ゴム栓を抜いて開封するとき力を要し、作業性が悪いという問題が生ずる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、開封されたか否かが容易に判別できると共に、取扱う上での作業性に優れ、開封が容易な熱収縮性樹脂フィルムで被覆された薬液既充填注射器の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シリンジ先端部にルアーロックアダプター及びティップキャップが装着された薬液既充填注射器の製造方法であって、ルアーロックアダプターの側面からティップキャップの天面の一部までを熱収縮性樹脂フィルムで被覆することにより封印し、該熱収縮性樹脂フィルムに円周に沿ってミシン目を設けることを特徴とする薬液既充填注射器の製造方法であり、熱収縮性樹脂フィルムのミシン目が、ルアーロックアダプターのティップキャップ側端部の近傍部分、就中、ルアーロックアダプターのティップキャップ側端部から、シリンジ側に向かって0〜3mm以内、好ましくは、2mm以内に設けられていることを特徴とする薬液既充填注射器の製造方法である。ここで、熱収縮性樹脂フィルムに設けられるミシン目のピッチのカットとツナギの比は3〜1:1、好ましくは2:1である。
【0007】
また、本発明の好ましい態様は、裏面に接着材が塗布されており、且つ、ミシン目に当たる部分の裏面に接着材の接着力を低下させる物質、例えば、インク又はニス等が線状に塗布されている熱収縮性樹脂フィルムで被覆し、封印する態様であるが、従来技術を採用して、ミシン目に当たる部分の裏面に接着材の接着力を低下させる物質を塗布する代わりに、接着剤を塗布しない帯を設けてもよい。
【0008】
ここで、熱収縮性樹脂フィルムのルアーロックアダプターを覆う部分が透明であり、ティップキャップを覆う部分が着色されていること、例えば、薬液既充填注射器中の薬剤の含量が異なる毎に、それに対応して熱収縮性樹脂フィルムのティップキャップを覆う部分の色として異なる色を用いること、更には、熱収縮性樹脂フィルムのティップキャップを覆う部分に施された色と同じ色をシリンジに貼るラベルの一部又は全部に施すことが好ましい。また、熱収縮性樹脂フィルムのティップキャップを覆う部分には、着色に加えて、開封方法を表示することができる。
【0009】
更に本発明は、ルアーロックアダプターの側面からティップキャップの天面の一部までが熱収縮性樹脂フィルムで被覆された薬液既充填注射器の製造方法であって、注射器に回転を与えながら、該熱収縮性樹脂フィルムを収縮させたい部位の両側から熱線又は熱風をあてること特徴とする製造方法であり、ここで、熱線又は熱風をあてるときの注射器の回転数は約0.25〜1回転であり、熱線又は熱風をあてる時の注射器の回転速度が8〜34回転/分相当である製造方法である。上記製造方法は、注射器中の薬液が生理活性蛋白質を含むものである場合に特に好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、薬液既充填注射器とは、図1に示す如き、プランジャーロッド2とシリンジ1から構成される注射器であって、薬液3が予め充填されており、シリンジ1の先端部近くにルアーロックアダプター7が設けられており、シリンジ1の先端部4を覆うようにティップキャップ5が装着された構造を有する注射器である。使用時には、ティップキャップ5を外して、別途用意されている注射針を取付ける。
【0011】
かかる包装形態においては、ティップキャップ5がシリンジ先端部4及びルアーロックアダプター7から外されて内容物が改ざんされることを防止し、或いは、ティップキャップ5が外された場合はそのことが容易に判別できることが必要である。そのために、本発明は、ルアーロックアダプター7の側面からティップキャップ5の天面6の一部までを熱収縮性樹脂フィルム10で被覆することにより封印し、且つ、開封を容易にし作業性を良くするために該熱収縮性樹脂フィルムに円周に沿ってミシン目11を設ける(図2、図3、図4参照)。
【0012】
キャップの側面とシリンジの側面とを被覆していた従来の封印方法に比べ、ルアーロックアダプター7の側面からティップキャップ5の天面6の一部まで被覆することにより、キャップが外されれば、必ず封印が破れるため、一見して改ざんの有無を判別することができる。即ち、封印を破ることなくキャップを外すことが不可能になり、内容物の改ざんが確実に防止される。また、天面6の一部まで被覆することによりキャップの自然脱落を防止することができる。
【0013】
本発明で用いられる熱収縮性樹脂フィルムは、通常、包装のために使用されるものであれば何れでも使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等のフィルムを挙げることができる。中でも、開封性、収縮性、環境適性等を考慮すると、ポリエチレンフィルムが尤も好ましい。
【0014】
本発明において熱収縮性樹脂フィルムに、円周に沿って設けられるミシン目の位置は、ルアーロックアダプター7のティップキャップ側端部8の近傍部分、就中、ルアーロックアダプター7のティップキャップ側端部8から、シリンジ側端部9に向かって0〜3mm以内、好ましくは、2mm以内に設けられていることが好ましい。本発明者等の検討によれば、ミシン目の位置が上記範囲より上部、即ち、ティップキャップ側であるときは、加熱時の熱収縮によりフィルムがミシン目のところで破れる確率が高いこと、逆にミシン目の位置が上記範囲より下部、即ち、シリンジ側であるときは、フィルムで覆われたティップキャップを捩じったとき、フィルムがミシン目の位置で破れにくいことが見出され、好ましいミシン目の位置が上記の位置であることが明らかにされた。
【0015】
本発明者等は、ミシン目の位置と共に、ミシン目のピッチについて検討を行い、カットとツナギの比が3〜1:1、好ましくは2:1であるとき、熱収縮時の破損がなく、且つ、開封時に確実にミシン目で破ることができることを見出した。
【0016】
更に、熱収縮性樹脂フィルムの裏面全体に接着剤を塗布した後、ミシン目に当たる部分の裏面に接着剤の接着性を低下させる物質、例えば、インクやニスを線状に印刷して塗布すると、開封時にミシン目で破ることが確実に行われる。フィルムのミシン目の裏側に接着剤を塗布しない方法が提案されている(実開平3−4557号)が、塗布すべきでない部分に接着剤がはみ出ることが起こる。従って、塗布しない処理操作より、線状に塗布する処理操作の方がより確実性が高い。なお、熱収縮性樹脂フィルムの裏面全体に塗布する接着剤として、従来使用されている接着剤ならば何れでも使用でき、更には、感圧性粘着剤も用いることができる。
【0017】
注射針が静脈を捕らえたことを確認するために、プランジャーロッド2を引いて血液の逆流をチェックすることが行われるが、熱収縮性樹脂フィルムのルアーロックアダプターを覆う部分13を透明にすることで、チェックを容易にする。また、フィルムのティップキャップを覆う部分12が着色されていること、例えば、薬液既充填注射器中の薬剤の含量が異なる毎に、それに対応して熱収縮性樹脂フィルムのティップキャップを覆う部分12の色を変えることで、使用時の誤認を防ぐことができる。
【0018】
更に、熱収縮性樹脂フィルム10のティップキャップを覆う部分12に施された色と同じ色をシリンジ1に貼るラベルの一部又は全部に施すことで、ティップキャップ5を取除いた後においても、含量の違いを確認することができ、誤認を防ぐことができる。また、熱収縮性樹脂フィルム9のティップキャップを覆う部分12には、着色に加えて、開封方法、例えば、捩じる方向を示す矢印を表示することができる。
【0019】
本発明の薬液既充填注射器中の薬剤が物理的ストレス、熱ストレス等のストレスに対して不安定な薬剤である場合、変質を起こす恐れがある。例えば、薬剤が蛋白成分である場合、過度の振動や過熱は蛋白の変性、アグリゲーション等を起こす。かかる問題を回避するためには、本発明の薬液既充填注射器に熱収縮性樹脂フィルムを貼り付ける際に、できる限り注射器内の薬剤に対して、物理的ストレス、熱ストレス等の影響を与えない方法を採用することが好ましい。
【0020】
本発明は、かかる注射器内の薬剤に対して物理的ストレス、熱ストレス等の影響を与えない、包装された注射器を製造する方法をも提供する。即ち、本発明の製造方法は、注射器をできる限り低速回転に保ち、且つ加熱する時間が短いことを特徴とする。具体的には、熱収縮性樹脂フィルムの収縮させたい部位(ルアーロックアダプターの側面からティップキャップの天面の一部まで)の両側から熱線又は熱風をあて、注射器を回転させながら熱源の間を通過させる(図5参照)。
図5に示すように、シリンジ1は2本の搬送コンベア14、15に挟まれて長い矢印の方向に移動するが、搬送コンベア14、15の移動速度を違えることによりシリンジの回転運動が生ずる。なお、図において16、17は相対して設けられた熱線又は熱風を当てる装置であり、短い矢印は熱線の方向又は熱風の吹き出す方向を示している。熱源を通過する間の該注射器の回転数は3回転以下、好ましくは約0.25〜1回転である。また、熱線又は熱風をあてる時の注射器の回転速度は、0〜120回転/分相当、好ましくは、8〜34回転/分である。注射器が熱源に曝される間の移動距離は約200 mmあればよく、その雰囲気温度は、195〜215℃、好ましくは200〜210℃である。かかる低速度回転で、しかも少ない回転で必要な加熱処理が行われるため、注射器の振動が最小限度に抑えられる。これが可能となるのは、熱線又は熱風をあてる装置を注射器のティップキャップ付近の両側に設けているためであり、かかる両側から加熱する方法は今まで知られていない。
【0021】
上記の熱ストレス等のストレスに対して不安定な薬剤としては、蛋白質、合成化合物、天然物を問わないが、特に、生理活性蛋白質が挙げられる。該生理活性蛋白質としては、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン等の造血因子、インターフェロン、IL-1やIL-6等のサイトカイン、モノクローナル抗体、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、血清アルブミン、血液凝固第VIII因子、レプチン、インシュリン、幹細胞成長因子(SCF)などを含むが、これらに限定されない。タンパク質の中でも、EPO、G−CSF、トロンボポエチン等の造血因子及び抗体、特にモノクロナール抗体が好ましく、さらに好ましくはEPO、G−CSF及びモノクローナル抗体である。
【0022】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって得られる薬液既充填注射器においては、キャップが外されれば、必ず封印が破れるため、一見して改ざんの有無を判別することができる。また、封印処理時のフィルムの破損が防止されると共に、開封作業を容易に行うことができる。更に、内容物の確認が例えば、薬剤含量の確認が容易であり、使用時の誤認を防ぐことができる。
【0023】
本発明において採用する封印の態様、即ち、ルアーロックアダプターの側面からティップキャップの天面の一部までを熱収縮性樹脂フィルムで覆って封印し、使用時にフィルムごとティップキャップを捻って開封する態様は、小型のシリンジ、例えば、容量が1ml程度のシリンジにおいて特に好ましい。10ml或いはそれ以上の容量の大型シリンジにおいては、封印の一部に抓みしろを設けて、使用時にその抓みしろを引くことで封印を破ることができるが、小型シリンジでは、抓みしろが小さくなり、作業性が悪くなるからである。また、フィルムごとティップキャップを捻って開封することにより、フィルムが静電気により指先に付着する等の不便を避けることができ、更には、フィルムとティップキャップとを一度に廃棄処理することができ、別々に捨てる等の手間を省くことができる。
【0024】
本発明の製造方法によれば、内容物である薬剤への影響を最小限に抑え、極わずかな時間で該注射器のティップキャップ周辺の全周に対して熱収縮性樹脂フィルム収縮を完全に行うことが可能であり、該薬液既充填注射器の自動化高速製造ラインの設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ルアーロックアダプターを備え、ティップキャップが嵌合したシリンジの断面図。
【図2】ルアーロックアダプターの側面からティップキャップの天面の一部までが熱収縮性樹脂フィルムで覆われた状態を示す断面図。
【図3】ティップキャップの天面の一部が熱収縮性樹脂フィルムで覆われた状態を示す。
【図4】ルアーロックアダプターの側面からティップキャップの天面の一部までが熱収縮性樹脂フィルムで覆われた状態を示す。
【図5】ルアーロックアダプターの側面からティップキャップの天面の一部までの熱収縮性樹脂フィルムを両側から加熱して収縮させる装置の一例を示す。
【符号の説明】
1:シリンジ
2:プランジャーロッド
3:薬液
4:シリンジ先端部
5:ティップキャップ
6:ティップキャップの天面
7:ルアーロックアダプター
8:ルアーロックアダプターのティップキャップ側端部
9:ルアーロックアダプターのシリンジ側端部
10:熱収縮性樹脂フィルム
11:ミシン目
12:熱収縮性樹脂フィルムの着色部分
13:熱収縮性樹脂フィルムの透明部分
14:シリンジ搬送コンベア−1
15:シリンジ搬送コンベア−2
16:熱線又は熱風を当てる装置−1
17:熱線又は熱風を当てる装置−2
Claims (3)
- シリンジ先端部近くにルアーロックアダプターが装着されており、且つ、ティップキャップがシリンジ先端部を覆うと共に、該ルアーロックアダプターの内側に挿入されるべくシリンジ先端部に嵌合されている薬液既充填小型注射器のルアーロックアダプターの側面からティップキャップの天面の一部までが熱収縮性樹脂フィルムで被覆された薬液が充填された小型注射器の製造方法であって、注射器に回転を与えながら、該熱収縮性樹脂フィルムを収縮させたい部位の両側から熱源線又は熱風をあてること、熱線又は熱風をあてるときの注射器の回転数が約025〜1回転であること、回転速度が8〜34回転/分相当であることを特徴とする薬液既充填小型注射器の製造方法。
- 熱線又は熱風をあてる時の雰囲気温度が195〜215℃である請求項1に記載の薬液既充填小型注射器の製造方法。
- 注射器に充填される薬液が生理活性蛋白質を含むものである、請求項1又は2に記載の薬液既充填小型注射器の製造方法。
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