JP4565797B2 - ブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、ブレーキ用マスターシリンダおよび該ブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車に関し、特にマスターシリンダ本体部にブレーキ用作動油補給用のサブタンクが一体に設けられ、その長軸方向が略上下方向になるようにして使用されるブレーキ用マスターシリンダと、該ブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車に関する。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】
従来、特に自動二輪車において、フロントブレーキの作動油圧生成手段としてよく使用されるブレーキ用マスターシリンダは、そのマスターシリンダ本体部にブレーキ用作動油補給用のサブタンクが一体に設けられ、マスターシリンダ本体部の長軸方向を地面と略平行にしてレイアウトされている(実開平3−2962号公報、特開平10−236374号公報参照)。
【0003】
このようなブレーキ用マスターシリンダにおいては、サブタンクとマスターシリンダ本体部とを仕切る隔壁に形成される複数のポートを作動油補給口から加工形成するために、該作動油補給口を塞ぐ蓋は、マスターシリンダ本体部の長軸に略平行に設けられている。
【0004】
ここで、メンテナンス時の作動油補給を考えると、蓋は、地面に略平行に配置される必要があるため、マスターシリンダ本体部の長軸方向も、地面に略平行に配置するしかなく、そうしたときには、完成車において、ブレーキ用マスターシリンダを配置し取付けるためのスペースの確保が困難になる。
【0005】
そこで、このようなブレーキ用マスターシリンダの配置・取付けスペースの確保の困難を回避するために、ブレーキ用マスターシリンダを、その長軸方向を地面に略垂直にしてレイアウトしようとすると、ブレーキ用作動油補給用のサブタンクは、マスターシリンダ本体部とは別部品として設けられ、該サブタンクとマスターシリンダ本体部とは、ラバー製ブレーキホースにより連通接続されることになる(特開昭63−258285号公報参照)。
【0006】
しかしながら、別部品とされたサブタンクの取付け用スペースの確保やブレーキホースを通すためのスペースの確保も、それ程容易ではない。また、他にサブタンクやブレーキホースを固定するためのステーやボルト等が必要になり、部品点数も増加する。
【0007】
本願の発明は、従来のブレーキ用マスターシリンダが有する前記のような問題点を解決して、特にマスターシリンダ本体部にブレーキ用作動油補給用のサブタンクが一体に設けられ、その長軸方向が略上下方向になるようにして使用されるブレーキ用マスターシリンダにおいて、装置の小型化と構造の簡単化、省スペース化を図るとともに、該ブレーキ用マスターシリンダが自動二輪車に搭載された場合の自動二輪車のスリム化を図ることができるブレーキ用マスターシリンダおよび該ブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記のような課題を解決したブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車に係り、その請求項1に記載された発明は、マスターシリンダ本体部(6)に、ブレーキ用作動油補給用のサブタンク(7)が一体に設けられたブレーキ用マスターシリンダ(2)が搭載された自動二輪車において、前記マスターシリンダ本体部(6)は車体上下方向に長尺となるように配置され、マスターシリンダ本体部(6)に突設されたステー(12)が、ブラケット(15)を介しボルト連結されることにより、側面視くの字状のピボットプレート(14)の後方に取付けられ、前記サブタンク(7)は、マスターシリンダ本体部(6)より車両後方側に配設されるとともに、前記サブタンク(7)の上方端部は前記マスターシリンダ本体部(6)のブレーキホース取付部(33)を超えて延出し、前記サブタンク(7)の上方端部には、その開口がキャップ(30)により閉塞されるブレーキ用作動油補給のための開口部(27)が設けられ、該キャップ(30)による前記開口部(27)の閉塞は該キャップ(30)がボルトねじ(31)により前記上方端部の上方端壁に締付けられることにより液密になされ、前記マスターシリンダ本体部(6)の上端部に設けたブレーキホース取付部(33)に、ブレーキホース(8)を接続する目玉金具(20)がバンジョウボルト(21)により締着され、サブタンク(7)の上方端部は、ブレーキホース(8)のマスターシリンダ本体部(6)側取付け部の頂部をなすバンジョウボルト(21)の頭部を越えて延出し、前記バンジョウボルト(21)は、前記マスターシリンダ本体部(6)の軸線より前方にシフトして取り付けられ、前記ブレーキホース(8)は、前記ブレーキホース取付部(33)からピボットプレート(14)の後方を車幅方向外側から内側に巡って延出し、車体前方に凸の湾曲部を形成した後、後方へ向かって延びることを特徴とするブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車である。
【0009】
請求項1に記載された発明は、前記のように構成されているので、キャップ自体がボルトねじにより直接サブタンク上方端部の上方端壁に締付けられるので前記開口部の閉塞が確実になされ、走行中にライダーの足がふれる等して該キャップは簡単に弛むようなことはない。
また、キャップ自体がボルトねじにより直接サブタンクの上方端部の上方端壁に締付けられるので前記開口部の閉塞が確実になされ走行中にライダーの足がふれる等して該キャップは簡単に弛むようなことがない。すなわち、当該ブレーキ用マスターシリンダは、乗車状態のライダーの脚部内側面に配置しているので、ライダーの乗車姿勢の変化による前後動により、キャップ側面がライダーの脚部で前後にこすられることが考えられるが、このようにこすられた場合であっても当該キャップは簡単に弛むようなことはない。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車において、サブタンク(7)は、縦長形状に形成され、その長軸方向がマスターシリング本体部の長軸方向と略平行に配設されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載のブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車において、マスターシリンダ本体部(6)の長軸方向の上端部に、マスターシリンダ本体部(6)の長軸方向と直交する方向にブレーキホースの取付け座(33)が形成されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車において、前記サブタンク(7)にはオイル残存量確認用開口(35)が付設されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車において、前記バンジョウボルト(21)は、前記マスターシリンダ本体部(6)内のシリンダ室(6a)の軸線に対し、サブタンク(7)がマスターシリンダ本体部(6)と一体に設けられる側と反対の方向にシフトしていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図7を参照して本願発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態におけるブレーキ用マスターシリンダが適用されたディスク型ブレーキ装置を自動二輪車のリヤ側に取付けた状態における取付け構造を示す右外側面図、図2は、図1の取付け構造を反対側から見た左側面図、図3は、図1の部分拡大断面図、図4は、図3の部分拡大図、図5は、図1のブレーキ用マスターシリンダのサブタンク内に配設されるオイルセパレーター一体型ダイアフラムの斜視図、図7は、図1のA方向から見たブレーキ用マスターシリンダとスウィングアームを中心とする部分の概略平面図である。
【0013】
図1ないし図3において、本実施形態におけるブレーキ用マスターシリンダ2が適用されたディスク型ブレーキ装置1は、自動二輪車の後輪3の車軸に一体に結合されたブレーキディスク4と、該ブレーキディスク4を両側面から挟み付ける一対の摩擦パッド(図示されず)を有するキャリパ5と、該一対の摩擦パッドにピストン(図示されず)を介して加えられる作動油圧を発生するマスターシリンダ本体部6と、該マスターシリンダ本体部6と一体に設けられたブレーキ用作動油補給用のサブタンク7と、これらキャリパ5とマスターシリンダ本体部6との間を接続して作動油をマスターシリンダ本体部6からキャリパ5に導くブレーキホース8と、ブレーキペタル(図示されず)を備えてマスターシリンダ本体部6内のピストン9に連動連結されたリンク機構10とからなっている。
【0014】
キャリパ5は、詳細には図示されていないが、スイングアーム11の後端部にボルトにより堅固に取付けられている。
【0015】
マスターシリンダ2は、マスターシリンダ本体部6とサブタンク7とからなり、マスターシリンダ本体部6に突設された2本のステー12,13(図3参照)が、ピボットプレート14に突設されたブラケット15に形成された2つのボルト孔の位置で、該ブラケット15にそれぞれボルト連結されることにより、ピボットプレート14に堅固に取付けられている。
【0016】
ピボットプレート14は、図1に図示されるように、右側面視くの字状をなし、自動二輪車の車体フレームの中枢部にあって、図1においてその上端部には、メインフレームの上半部分(図示されず)が右方(車両前方)斜め上方向に指向して一体に連結され、そのくの字状の折曲部には、左方(車両後方)斜め上方向に指向してリヤフレームの一部をなすロアリヤフレーム16の下端部がボルト連結部17においてボルト連結されている。車体フレーム構造は、左右略対称に形成されている。なお、18はアッパリヤフレーム、19は排気マフラーである。
【0017】
ブレーキホース8のマスターシリンダ本体部6側の端部は、目玉金具20を備えており、図3により良く図示されるように、該目玉金具20がマスターシリンダ本体部6の長軸方向一端である上端部の取付け座33にバンジョウボルト21により締着されることにより、マスターシリンダ本体部6に取付けられている。
ブレーキホース8のマスターシリンダ本体部6側の取付け部は、目玉金具20とバンジョウボルト21とを含んでいる。
【0018】
取付け座33は、マスターシリンダ本体部6の長軸方向と直交する方向に形成されている。目玉金具20と取付け座33との間および目玉金具20とバンジョウボルト21の頭部との間には、オイルシール34がそれぞれ介装されている。
【0019】
なお、バンジョウボルト21の軸線は、マスターシリンダ本体部6内のシリンダ室6aの軸線に対し、サブタンク7がマスターシリンダ本体部6と一体に設けられる側と反対の方向にわずかにシフトされている。このようにすることにより、ブレーキホース8の取付け部を収めるスペースが確保されるとともに、バンジョウボルト21の締着作業がし易くなる。
【0020】
このようにして、ブレーキホース8のマスターシリンダ本体部6側の端部は、目玉金具20の内部通路とバンジョウボルト21の内部通路とを介してマスターシリンダ本体部6内のシリンダ室6aと流体連通され、かつ、該マスターシリンダ本体部6の長軸回りに取付け角度調節可能にされて、マスターシリンダ本体部6に取付けられている。
【0021】
ブレーキホース8は、図2に図示されるように、マスターシリンダ本体部6への接続部から、ロアリヤフレーム16の下端部のボルト連結部17を外側から内側に巡って、スウィングアーム11の上端面に沿い、後方に延びている。そして、そのキャリパ5側の端部が、該キャリパ5に連結されている。
【0022】
ブレーキホース8は、スウィングアーム11の上端面の複数個所において、締結具22により固定されている。したがって、いま、スウィングアーム11が上下に揺動すると、ブレーキホース8は、ロアリヤフレーム16の下端部のボルト連結部17を外側から内側に巡る部分の湾曲部が変形して、スウィングアーム11の上下揺動に追随することができる。
【0023】
次にブレーキ用マスターシリンダ2の詳細構造について説明する。図3に図示されるように、ブレーキ用マスターシリンダ2は、自動二輪車の車体フレーム(ピボットプレート14)に取付けられた状態において、その軸線がやや車輪後方(図3においてやや左方)に傾斜するが、車体の略上下方向になるようにして、車体の右側方に取付けられている。
【0024】
ブレーキ用マスターシリンダ2は、前記のとおり、マスターシリンダ本体部6とブレーキ用作動油補給用のサブタンク7とからなっていて、これらは、鋳造により一体に形成されている。
【0025】
サブタンク7は、縦長形状に形成され、その長軸方向がマスターシリンダ本体部6の長軸方向(シリンダ室6aの長軸方向)と平行になるようにして、マスターシリンダ本体部6より車両後方側に配設されており、また、図7に図示されるように、その長軸がマスターシリンダ本体部6の長軸よりも車体右側方外方に位置するようにして配設されている。
【0026】
サブタンク7の内面形状は円筒形状にされ、その内径は、シリンダ室6aの内径よりやや大きくされ、その作動油貯留室7aは、シリンダ室6aに対して軸方向に位相をずらされて配置されている。
【0027】
マスターシリンダ本体部6のシリンダ室6aには、ピストン9が摺動自在に嵌装されており、このピストン9は、リンク機構10を介してブレーキペダルの操作者(ライダー)により往復動させられる。そして、車両走行に制動が必要とされるとき、シリンダ室6a内の作動油を加圧して、ブレーキホース8を介して該作動油をキャリパ5に送り出す。32は、ピストン9の外端部とリンク機構10の末端部とを連結する自在継手である。
【0028】
マスターシリンダ本体部6とサブタンク7とを仕切る隔壁23の図3において下方部分には、第1のポート24と第2のポート25とが、互いに接近し、軸線を平行にして、それぞれ貫通形成されている。第1のポート24は、径が比較的大きくされ、第2のポート25は、径が非常に小さくされた部分をもっていて、第2のポート25の絞り効果は、第1のポート24のそれより大きくされている。
【0029】
他方、サブタンク7には、その長軸方向の下方部に第1の開口部26、上方端部(一端部)に第2の開口部27、これら第1、第2の開口部26、27の中間部に第3の開口部35が、それぞれ形成されている。
【0030】
第1の開口部26は、第1のポート24の軸腺と第2のポート25の軸腺とが通る位置に形成されている。したがって、これら両ポート24,25は、第1の開口部26から図示されない工具を入れて、隔壁23に機械加工を施すことにより形成することが可能である。そして、この機械加工後に、第1の開口部26は、盲栓28により閉塞される。
【0031】
サブタンク7の最も高い位置である上方端部(長軸方向の一端部)は、ブレーキホース8のマスターシリンダ本体部6側取付け部の頂部をなすバンジョウボルト21の頭部を越えて延出させられており、そこに、前記のとおり、第2の開口部27が形成されている。この第2の開口部27は、サブタンク7内のブレーキ用作動油の残量が少なくなったとき、新たにブレーキ用作動油を補給するために使用される。
【0032】
第2の開口部27は、常時は袋状のダイアフラム29aを一体に備えたゴム製の蓋29と、該蓋29の上に被せられる樹脂製の押え板36と、金属製のキャップ30とにより、液密に閉塞されている。これらの蓋29と押え板36とキャップ30とは、ボルトねじ31により、サブタンク7の上方端部の上方端壁に液密に共締めされている。
【0033】
ダイアフラム29aは、サブタンク7の作動油貯留室7a内に配設され、膨張、収縮が可能な袋状のものであって、蓋29と一体に形成されている。そして、図5により良く図示されているように、自然状態で細長い帯状の袋単体29a-1、29a−2、29a−3を120度間隔で三方に配した形状をなしており、その図5において上端は、袋単体29a−1、29a−2、29a−3に対応させて蓋29に120度間隔で貫通形成された細溝29b−1,29b−2,29b−3を介して外部に連通されている。
【0034】
ダイアフラム29aの図5において下端は、樹脂製のオイルセパレーター38に固着されており、その袋状の内部空間は、ここで、閉塞されている。オイルセパレーター38は、ダイアフラム29aとは別体にされて、接着剤もしくは熱溶着によりダイアフラム29aに固着されているが、ダイアフラム29aと一体に形成されてもよい。
【0035】
オイルセパレーター38は、円板状のものであって、その径はサブタンク7の作動油貯留室7aの径と略同径にされ、その外周面には、周方向に等間隔に半円状の小孔通路38aが形成されている。
【0036】
したがって、作動油貯留室7a内において、オイルセパレーター38より上位にあるブレーキ用作動油が、車両の走行に伴う振動により空気を吸い込んで泡立ったとしても、作動油は、小孔通路38aを介して行き来するが、作動油に混じった気泡は、オイルセパレーター38の板面により分離され、堰止められるので、マスターシリンダ本体部6のシリンダ6a内に入り込むことはない。
【0037】
ダイアフラム29aの膨張、収縮は、次のようにして行われる。ダイアフラム29aの袋単体29a−1、29a−2、29a−3は、蓋29に形成された細溝29b−1、29b−2、29b−3を介し、さらに、図4に図示されるように、押え板36の内面に穿設された通路36a、キャップ30の周壁に形成された通路30aを介して外部に連通されている。
【0038】
押え板36の内面に穿設された通路36aは、詳細には図示されていないが、細溝29b−1、29b−2、29b−3を共通に覆う円形凹所と、該円形凹所を通路30aに連通させる細溝とからなっている。
【0039】
また、キャップ30の周壁に形成された通路30aは、詳細には図示されていないが、キャップ30の軸心に指向して断面U字状に切り落とされた部分と、該断面U字状に切り落とされた部分の溝底に連なり、周方向に所定長内周壁を削り取って形成された細溝部分30bとからなっている。
【0040】
したがって、いま、マスターシリンダ本体部6のピストン9がシリンダ6a内に往復動して、作動油がシリンダ6aとサブタンク7の作動油貯留室7aとの間を行き来すると、作動油貯留室7a内に配設されたダイアフラム29aは、作動油貯留室7a内の作動油および充満空気により収縮もしくは膨張させられるが、このとき、ダイアフラム29aの内部に充填された空気は、細溝29b−1、29b−2、29b−3、通路36a、通路30aを介して外部との間を出入りするので、前記した作動油貯留室7a内の作動油および充満空気によるダイアフラム29aの収縮もしくは膨張作用によく応答することができる。
【0041】
第3の開口部35には、蓋37が被着されている。この蓋37は、サブタンク7内に残存するブレーキ用作動油の残量を確認することができるように、窓を備えている。
【0042】
次に、ディスク型ブレーキ装置1の作用について説明する。いま、車両走行中に制動が必要とされたとき、ブレーキペダルが踏まれて、リヤブレーキレバー10を介してピストン9がシリンダ6a内を前進すると、シリンダ室6a内の作動油は加圧されるが、この加圧された作動油は、ブレーキホース8を介してキャリパ5に送られる。
【0043】
同時に、一部の作動油は、第2のポート25を介してサブタンク7の作動油貯留室7a内に押し戻されるが、この押し戻された作動油は、作動油貯留室7a内においてダイアフラム29aが収縮することによって吸収されるとともに、第1のポート24を介してピストン9の大径頭部の背後の油室6b内に流れ込むことによっても吸収される。
【0044】
このようにして、ピストン9によるシリンダ室6a内の作動油の加圧作用は緩慢にされて、キャリパ5内の一対の摩擦パッドがブレーキディスク4を両側面から挟み付けることにより発揮されるディスク型ブレーキ装置1の制動作用の初期作動は緩やかなものにされ、ドライバーの安全が図られている。
【0045】
そして、ピストン9がシリンダ室6a内をさらに前進して、第2のポート25を塞ぐと、ピストン9によるシリンダ室6a内の作動油の加圧作用は最高度に高まり、加圧された作動油は、その全量がブレーキホース8を介してキャリパ5に送られる。このようにして、ディスク型ブレーキ装置1の制動作用が全面的に発揮される。
【0046】
本実施形態は、前記のように構成されているので、さらに、次のような効果を奏することができる。
マスターシリンダ本体部6にブレーキ用作動油補給用のサブタンク7が一体に設けられてなるブレーキ用マスターシリンダ2において、サブタンク7は、縦長形状に形成され、その長軸方向がマスターシリンダ本体部6の長軸方向と略平行になるように配設されている。
【0047】
この結果、マスターシリンダ本体部6にブレーキ用作動油補給用のサブタンク7が一体に設けられてなるブレーキ用マスターシリンダ2は、全体が縦長形状に形成されるので、四方に嵩張ることがなくなり、その構造の簡単化とスリム化、省スペース化とを図ることができる。
【0048】
また、マスターシリンダ本体部6の長軸方向の一端部には、マスターシリンダ本体部6の長軸方向と直交する方向にブレーキホース8の取付け座33が形成され、該取付け座33には、ブレーキホース8の取付け部が締着され、サブタンク7の長軸方向の一端部が、ブレーキホース8の取付け部を越えて延出させられ、そこに、ブレーキ用作動油の補給口である第2の開口部27が設けられている。
【0049】
この結果、ブレーキホース8のマスターシリンダ本体部6への接続部の構造が小型化、簡単化される。
【0050】
また、ブレーキ用作動油の補給等のメンテナンス時には、ブレーキホース8のマスターシリンダ本体部6側の取付け部(目玉金具20、バンジョウボルト21)が、このメンテナンス作業の作業性を阻害することがない。
【0051】
さらに、サブタンク7の上方端壁にはその開口がキャップ30により閉塞されるブレーキ用作動油補給のための開口部27が設けられ、該キャップ30による前記開口部27の閉塞は該キャップ30がボルトねじ31により前記上方端壁に締付けられることにより液密になされることから、前記開口部27のキャップ30による閉塞が確実になされ該キャップ30は簡単に弛むようなことはない。
【0052】
また、サブタンク7の内面形状は、円筒形状にされ、該サブタンク7内には、袋状のダイアフラム29aと、複数の小孔通路38aを有するオイルセパレーター38とが配設され、ダイアフラム29aは、その内部が外気に連通して膨張もしくは収縮することができるようにされている。
【0053】
この結果、ディスク型ブレーキ装置1の初期作動時、ブレーキ用作動油の一部はサブタンク7内に押し戻されるが、この押し戻された作動油は、ダイアフラム29aが収縮することにより吸収されるので、ブレーキ装置1の初期作動が緩慢化されて、ドライバーの安全を図ることができる。
【0054】
さらに、車両走行中、サブタンク7内の作動油は、振動により空気を吸い込んで泡立つが、作動油に混じった気泡は、オイルセパレーター38により分離され、堰止められるので、マスターシリンダ本体部6のシリンダ6a内に入り込むことがなく、ブレーキ装置1は常に正確に作動して、ブレーキ用マスターシリンダ2の信頼性を向上することができる。
【0055】
また、オイルセパレーター38は、ダイアフラム29aと一体に設けられているので、オイルセパレーター38の設置が容易になり、部品点数が削減される。
【0056】
さらに、本実施形態におけるブレーキ用マスターシリンダ2が搭載された自動二輪車においては、ブレーキ用マスターシリンダ2は、マスターシリンダ本体部6の長軸方向が車体の略上下方向になるようにして、車体側方に配設されている。
【0057】
この結果、ブレーキ用マスターシリンダ2は、その全体の縦長形状が車体の略上下方向に沿うようにして、車体側方に配設されるので、車体の前後方向への長さを短くすることができ、転倒等によりマスターシリンダ2に外力がかかっても、マスターシリンダ2の取付け部にかかるモーメントを小さくすることができる。
【0058】
これにより、マスターシリンダ2の取付け部におけるステー12,13等を軽量化することができる。また、車幅方向への出っ張りも少なくすることができ、自動二輪車をスリム化することができる。
【0059】
また、本実施形態におけるブレーキ用マスターシリンダ2が搭載された自動二輪車においては、ブレーキ用マスターシリンダ2は、サブタンク7の長軸がマスターシリンダ本体部6の長軸よりも車体右側方外方に位置するように配設されている。
【0060】
この結果、ブレーキ用マスターシリンダ2がリヤブレーキ用マスターシリンダとして使用される場合、スウィングアーム11を後方に行くにしたがい幅広に構成することができ、ピボット幅(左右ピボットプレート14が配置される部分の車幅方向幅)を広げることなく、幅広タイヤを装着することができる。
【0061】
本実施形態において、オイルセパレーター38は、ダイアフラム29aと一体に設けられたが、必ずしもこれに限定されず、図6に図示されるように、ダイアフラム29aと別体に設けられてもよい。
【0062】
この場合には、サブタンク7の作動油貯留室7aの円筒形状は、大径部と小径部とからなる段付き円筒形状に形成され、その段部にオイルセパレーター38を嵌着させて取付けるようにすることができる。なお、ダイアフラム29aの袋単体29a−1、29a−2、29a−3の下端部は、熱溶着により封じられる。
【0063】
本実施形態においては、ブレーキ用マスターシリンダ2が適用されたディスク型ブレーキ装置1は、自動二輪車の後輪側に取付けられたが、これに限定されず、前輪側に取付けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態におけるブレーキ用マスターシリンダが適用されたディスク型ブレーキ装置を自動二輪車のリア側に取付けた状態における取付け構造を示す右外側面図である。
【図2】図1の取付け構造を反対側から見た左内側面図である。
【図3】図1の部分拡大断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図1のブレーキ用マスターシリンダのサブタンク内に配設されるオイルセパレーター一体型ダイアフラムの斜視図である。
【図6】オイルセパレーターの変形例を示す図3と同様の図である。
【図7】図1のA方向から見たブレーキ用マスターシリンダとスウィングアームを中心とする部分の概略平面図である。
【符号の説明】
1・・・ディスク型ブレーキ装置、2・・・ブレーキ用マスターシリンダ、3・・・後輪、4・・・ブレーキディスク、5・・・キャリパ、6・・・マスターシリンダ本体部、6a・・・シリンダ室、7・・・サブタンク、7a・・・作動油貯留室、8・・・ブレーキホース、9・・・ピストン、10・・・リンク機構、11・・・スウィングアーム、12、13・・・ステー、14・・・ピボットプレート、15・・・ブラケット、16・・・ロアリヤフレーム、17・・・ボルト連結部、18・・・アッパリヤフレーム、19・・・排気マフラー、20・・・目玉金具、21・・・バンジョウボルト、22・・・締結具、23・・・隔壁、24・・・第1のポート、25・・・第2のポート、26・・・第1の開口部、27・・・第2の開口部、28・・・蓋、29・・・蓋、29a・・・ダイアフラム、29a−1、29a−2、29a−3・・・袋単体、29b−1、29b−2,29b−3・・・細溝、30・・・キャップ、30a・・・通路、30b・・・細溝部分、31・・・ボルト、32・・・自在継手、33・・・取付け座、34・・・オイルシール、35・・・第3の開口部、36・・・押え板、36a・・・通路、37・・・蓋、38・・・オイルセパレーター、38a・・・小孔通路
Claims (5)
- マスターシリンダ本体部(6)に、ブレーキ用作動油補給用のサブタンク(7)が一体に設けられたブレーキ用マスターシリンダ(2)が搭載された自動二輪車において、
前記マスターシリンダ本体部(6)は車体上下方向に長尺となるように配置され、マスターシリンダ本体部(6)に突設されたステー(12)が、ブラケット(15)を介しボルト連結されることにより、側面視くの字状のピボットプレート(14)の後方に取付けられ、
前記サブタンク(7)は、マスターシリンダ本体部(6)より車両後方側に配設されるとともに、
前記サブタンク(7)の上方端部は前記マスターシリンダ本体部(6)のブレーキホース取付部(33)を超えて延出し、
前記サブタンク(7)の上方端部には、その開口がキャップ(30)により閉塞されるブレーキ用作動油補給のための開口部(27)が設けられ、該キャップ(30)による前記開口部(27)の閉塞は該キャップ(30)がボルトねじ(31)により前記上方端部の上方端壁に締付けられることにより液密になされ、
前記マスターシリンダ本体部(6)の上端部に設けたブレーキホース取付部(33)に、ブレーキホース(8)を接続する目玉金具(20)がバンジョウボルト(21)により締着され、サブタンク(7)の上方端部は、ブレーキホース(8)のマスターシリンダ本体部(6)側取付け部の頂部をなすバンジョウボルト(21)の頭部を越えて延出し、
前記バンジョウボルト(21)は、前記マスターシリンダ本体部(6)の軸線より前方にシフトして取り付けられ、
前記ブレーキホース(8)は、前記ブレーキホース取付部(33)からピボットプレート(14)の後方を車幅方向外側から内側に巡って延出し、車体前方に凸の湾曲部を形成した後、後方へ向かって延びる
ことを特徴とするブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車。 - サブタンク(7)は、縦長形状に形成され、その長軸方向がマスターシリング本体部の長軸方向と略平行に配設されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車。
- マスターシリンダ本体部(6)の長軸方向の上端部に、マスターシリンダ本体部(6)の長軸方向と直交する方向にブレーキホースの取付け座(33)が形成されることを特徴とする請求項1または2記載のブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車。
- 前記サブタンク(7)にはオイル残存量確認用開口(35)が付設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車。
- 前記バンジョウボルト(21)は、前記マスターシリンダ本体部(6)内のシリンダ室(6a)の軸線に対し、サブタンク(7)がマスターシリンダ本体部(6)と一体に設けられる側と反対の方向にシフトしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のブレーキ用マスターシリンダが搭載された自動二輪車。
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