JP4565438B2 - 表面硬質透明シートとその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面硬質シートとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明樹脂フィルムの表面を硬質化した、表面硬質透明フィルム(通称ハードコートフィルムと言い、以下「HCフィルム」と呼ぶ)は、種々の用途に使われている。要求される硬質特性は用途に応じて変わり、硬度の向上は勿論であるが、その他に透明性、耐久性(耐摩耗性、耐クラック性、フィルム基板との密着性等)においてより厳しい要求が寄せられている。これまでに硬質化の手段としては、一般に、熱硬化又は紫外線硬化性のアクリル系、エポキシ系、ウレタン系又はシリコーン系の樹脂がコーティングすることが提案されている。これらの樹脂による硬化フィルムは、例えば、パソコン等の入力機器であるタッチパネル用フィルム基板として使用されている。しかし、より高い透明性を求められると、自ずから限界があるのでそれに答えられなくなってきている。特に携帯型の情報端末機器等のタッチパネルでは、ペン入力式のタッチパネルが多くなっており、該基板フィルムに従来より強い印圧が加わるために、これらの樹脂によるHCフィルムでは満足されなくなってきている。
【0003】
より高い透明性とより高い硬度を目的にした手段として二酸化ケイ素の薄膜を設ける方法がある。この具体的方法は、二酸化ケイ素を蒸着する方法、二酸化ケイ素の微粒子を前記樹脂に分散させる方法、ポリシラザンを化学的に分解して二酸化ケイ素膜を形成する方法、トリ又はテトラアルコキシシランを使ってゾル−ゲル法によって二酸化ケイ素に変えて膜を形成する方法、更にこれにコロイダルシリカを添加して同様にゾル−ゲル法によってシリカ粉体を含有する二酸化ケイ素膜を形成する方法がある。しかし、これらの方法は、基体が樹脂フィルムである場合に、膜の硬度が高いために屈曲して使用する場合に亀裂が入りやすいこと、温度変化によって該フィルム自体が収縮するために、膜の亀裂や剥離といった現象が発生しやすいという問題があった。亀裂については、極めて微細でも、一挙に透明性の低下に繋がるので望ましくない。
【0004】
これを解決するために、テトラアルコキシシラン及びトリアルコキシシランからなる多官能アルコキシシランにポリエチレングリコールを添加した塗布液を用いたゾル−ゲル法によって有機物を含有する二酸化ケイ素膜による表面硬質シートが特願平11−264234で示され、柔軟な樹脂フィルム基体に対しても亀裂のない硬質膜が得られた。しかし、膜の耐湿性等により優れたシートが望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高温高湿環境保存後も、高硬度、高い透明度、耐屈曲性を維持するシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の1.〜3.に関する。
1. 透明な基体にポリアルキレングリコールメタクリレート(以下「PAGM」と呼ぶ)の重合体、ポリアルキレングリコールアクリレート(以下「PAGA」と呼ぶ)の重合体並びにポリアルキレングリコールメタクリレート及びポリアルキレングリコールアクリレートの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する二酸化ケイ素薄膜を被覆してなる表面硬質透明シート。
2. テトラアルコキシシラン及びトリアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能アルコキシシラン、ポリアルキレングリコールメタクリレート及びポリアルキレングリコールアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種並びに重合開始剤を含有するヒドロゾル液を透明な基体に塗布し、該塗布膜を乾燥させると同時に、又は該塗布膜を乾燥させた後、ポリアルキレングリコールメタクリレート及びポリアルキレングリコールアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合処理を行うことを特徴とする表面硬質透明シートの製造方法。
3. ポリアルキレングリコールメタクリレートまたはポリアルキレングリコールアクリレートポリエチレングリコールが分子量200〜800である上記2.に記載の表面硬質透明シートの製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、二酸化ケイ素薄膜が適用される基体の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、非晶性環状ポリオレフィン、ポリメチルメタアクリレート、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、脂肪族ポリアミド、ポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂;エポキシ系、アクリル系、シリコーン系などの熱硬化性樹脂;ガラス板などが挙げられる。
【0008】
好ましい基体の厚みは、0.05〜1mm程度である。基体は透明であるのが好ましく、その全光線透過率は80%以上である。
【0009】
本発明の表面硬質透明シートは、柔軟な薄いフィルム状から、さらには硬質の厚い板状を含む上位概念として定義される。
【0010】
本発明は、特定の多官能アルコキシシランに、ポリアルキレングリコールメタクリレート及び/又はポリアルキレングリコールアクリレート並びに重合開始剤を添加して得られるヒドロゾル液を透明な基体に塗布し、該塗布膜を乾燥させると同時に、又は該塗布膜を乾燥させた後、ポリアルキレングリコールメタクリレート及び/又はポリアルキレングリコールアクリレートを重合させることに特徴を有し、これにより膜の耐湿性が飛躍的に向上する。特にPAGMまたはPAGAが選択される理由は次のとおりである。
【0011】
PAGMまたはPAGAの主鎖部分であるポリアルキレングリコールは水溶性であることで極めて良好な親和性をもって分子的レベルで分散した二酸化ケイ素被膜になる。この分子的分散状態になることで、より少量のPAGMまたはPAGAの混合量で大きな効果を発現することにもなる。また、PAGMの重合体、PAGAの重合体及びこれらの共重合体自身も極めて透明性の高いものであることで、本来極めて高い透明性のある二酸化ケイ素膜の透明性を損なうことなくそのまま維持できること、更にPAGMの重合体、PAGAの重合体又はこれらの共重合体が存在することで該樹脂シートなどの基体との密着性が向上するという利点がある。
【0012】
さらに、透明な基体上に塗布膜を形成した後、該塗布膜の乾燥と同時に又は乾燥後に、PAGMまたはPAGAを、これらの分子中に含まれる二重結合を用いて(共)重合させることによって、膜中のPAGMまたはPAGAを固定し、本来耐湿性の低い主鎖部分のポリアルキレングリコールの熱や水分による膨張収縮等の形態変化を防ぐことができ、結果的に、高温高湿環境での保存によっても膜中の応力発生が小さくなり、膜の亀裂の発生を防ぐことができ、膜の耐湿性が向上すると考えられる。
【0013】
多官能アルコキシシランに添加するPAGMまたはPAGAは、分子量の増大とともに水溶性は低下し、シリカ成分との相溶性が悪くなるので好ましい限界がある。この上限は重量平均分子量(本明細書において、特に断らない限り分子量は重量平均分子量を示す)で10000程度、好ましくは1000程度であり、より好ましくは800程度である。一方、分子量の下限は、分子量が小さいと重合処理後の膜の柔軟性が悪くなり膜に亀裂を生じやすくなるので、200程度、好ましくは400程度とするのがよい。
【0014】
PAGMは、メタクリル酸とポリアルキレングリコールとのエステルであり、具体的にはポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレンの炭素数が1〜3であるポリアルキレングリコールのモノ又はジメタクリレートである。また、PAGAは、アクリル酸とポリアルキレングリコールとのエステルであり、具体的にはポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジアクリレート等のアルキレンの炭素数が1〜3であるポリアルキレングリコールのモノ又はジアクリレートである。
【0015】
本発明によるPAGMの重合体、PAGAの重合体及び/又はこれらの共重合体を含む二酸化ケイ素膜自身の透明性は、ガラス板のそれ(全光線透過率95〜97%)よりも1〜3%程度は低いが、前記樹脂基体よりも高い。従って、これが被覆されたシートは、該基体自身の透明性よりも悪くなることはなく、より高い透明性を得ることができる。
【0016】
また、表面硬度は、ガラス板(一般に9H前後)に比較して低いが、該樹脂基体よりもはるかに高く、従ってこれが被覆されたシートは該基体よりも1〜3Hは高くなる。
【0017】
尚、ガラス板に、例えば後述する実施例1又は2のヒドロゾル(HC−1,HC−2)をコーティングし、加熱して被覆したシートの表面硬度は6〜7Hである。
【0018】
次に、本発明の表面硬質透明シートの製造手段について説明する。
【0019】
該手段としては、例えば所定量のPAGM及び/又はPAGA並びに重合開始剤を含む多官能アルコキシシランのヒドロゾル液を基体に塗布(コーティング)し、熱乾燥と同時に、又は熱乾燥した後、PAGMまたはPAGAの重合処理を行う方法がより効果的な方法であるが、本発明の課題を効率的に達成する方法であればいかような方法でもよい。
【0020】
多官能アルコキシシランは、アルコキシ基が3〜4個ケイ素に結合した化合物であり、加水分解し、重合して−O―Si―O−で繋がれた高分子量(網状)SiO2体になるものである。
【0021】
具体的には、トリアルコキシシランとしては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリ−iso―プロポキシシラン、トリ−t−ブトキシシラン等の炭素数1〜4のアルコキシ基でトリ置換されたシランが挙げられる。ここで残る1つの置換基は、水素原子、メチル,エチルなどの炭素数1〜4の低級アルキル基、フェニル基などの芳香族基が挙げられるが、メチル、エチル、フェニル等の有機基が好ましい。これは樹脂シートとの親和性が良くなりコーティングし易くなる傾向があるからである。
【0022】
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−iso―プロポキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等の炭素数1〜4のアルコキシ基でテトラ置換されたシラン;及びこれらのオリゴマーであるエチルシリケート、メチルシリケート等が挙げられる。
【0023】
これらトリ又はテトラアルコキシシランによる、より高硬度の二酸化ケイ素膜の形成のためには、テトラアルコキシシランが好ましいが、より安定した状態で、再現性良く良質の該膜を形成するためにはテトラアルコキシシランとトリアルコキシシランが併用された場合である。
【0024】
被覆の対象となる基体は、主として透明性の高い熱可塑性樹脂又は熱硬化の樹脂によるフィルム、又はシート状物であり、その種類は問わず一般に知られているものである。基体は、勿論ガラス板でも良いが、本発明は樹脂シートを使うのが好ましい。
【0025】
コーティングは次のように行う。
【0026】
まず前記テトラアルコキシシラン及びトリアルコキシシランにアルコール(エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等)と水の混合溶媒を添加し、混合する。
【0027】
該アルコールと水の添加により多官能アルコキシシランは、若干加水分解もするが実質的にはゲルまで進行せずに、ヒドロゾルを形成する。効率的にゾルから二酸化ケイ素膜に変えるためには、水の量は、最終的なヒドロゾル液において、多官能アルコキシシラン1モルに対して1〜4.5モル程度、好ましくは2〜4モル程度、アルコールは、1〜40モル程度、好ましくは2〜20モル程度にするのがよい。ここで水の量が2〜4モル程度が好ましいのは、次のような理由による。水は加水分解反応を左右し、これによる該膜の品質に影響を及ぼしやすい。即ち、水の量が上記した様な上限値以下であれば、膜が多孔質化して緻密性が失われ難く、逆に水の量が上記したような下限以上であれば、反応速度が遅くなったり、未反応物が残りやすくなることがなく、硬度が低下し難いので好ましい。アルコールの量は直接該反応に関わるものではないので厳しく限定されるものではないが、上記した上限量以下であれば反応速度が遅くなったり、コーティング厚みが薄くなるといった問題が生じ難く、逆に上記した下限量以上であれば、反応速度が速くなり膜質が荒れたり、コーティング厚みが厚くなり亀裂が入りやすくなるといった問題が生じにくいので好ましい。
【0028】
テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとを併用する場合の割合は、モル比で9:1〜5:5、好ましくは8:2〜6:4の範囲である。このモル比関係は、二酸化ケイ素膜の膜硬度の低下は防止しつつ、経時による亀裂の発生の危険性をより一層なくし、かつ樹脂シートとの密着性をより高めようとする点から好ましい。即ち、当該モル比は、テトラアルコキシシランは高い膜硬度の発現に作用し、トリアルコキシシランは膜に亀裂の発生防止と密着性とに作用することを、PAGM及び/又はPAGAの存在下で相乗的に発現するために好ましく設定されたモル比である。
【0029】
PAGM及び/又はPAGAは、そのまま、又は予め水及びアルコールに溶解して、多官能アルコキシシラン又は多官能アルコキシシラン溶液に添加するが、予め水及びアルコールに溶解しておいたものを添加する方がより好ましい。
【0030】
PAGM及び/又はPAGAの添加量は、上記多官能アルコキシシラン100重量部に対して、5〜30重量部程度、好ましくは10〜20重量部程度の範囲であることが好ましい。添加量が上記の下限以上であると、樹脂シートとの密着性が低下しにくく、また経時的にも二酸化ケイ素膜の亀裂が発生し難いので好ましい。また、添加量が上記の上限値以下であると、二酸化ケイ素膜の硬度が低下しにくいので好ましい。
【0031】
該PAGM及び/又はPAGAの重合処理のために重合開始剤を添加する必要がある。重合開始剤はラジカル重合に一般的に用いられているものが使用できる。例えば、熱処理用として、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾフェノン等の熱重合に通常用いられる開始剤が挙げられ、光重合用として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合に通常用いられる開始剤が挙げられる。重合開始剤の添加量はPAGMまたはPAGA100重量部に対して1〜5重量部程度である。
尚、前記加水分解反応を促進するために、前記ヒドロゾル液中に一般に使用される酸触媒(塩酸、硫酸、酢酸等)を添加してもよい。酸触媒を添加すると、より安定した性能、品質の二酸化ケイ素膜を再現性良く形成できるので好ましい。
添加する場合には、その量は多官能アルコキシシラン1モルに対して、0.005〜0.05モル程度が好ましく、特に0.01モル程度が好ましい。
【0032】
前記所定の成分と量が混合されるとヒドロゾル液となり、これを基体となる樹脂シートに、まず常温でコーティング(一般に知られているコーティング手段でよい)する。この塗膜を常温に所定時間放置することで強靱な二酸化ケイ素膜に変化し密着されるので、塗布時に指触乾燥させた後、1時間〜数日間程度室温に放置することが好ましい。その後、より強固な膜にするために、基体の耐熱性の範囲内のできるだけ高い温度に加熱乾燥することが好ましい。この場合の加熱温度は、通常50〜150℃程度である。加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定することができ、例えば、50℃であれば1〜3日間程度、150℃であれば1〜30分間程度である。その他の温度の場合も前記記載の範囲を参照して、加熱温度に応じて適宜設定することができる。
【0033】
二酸化ケイ素膜の厚さは、あまりに薄いと必要な表面硬度が得難く、逆にあまりに厚いと特に大きな屈曲で、多数回の反復で亀裂がでやすくなる。このことから最終的な膜厚として、0.2〜4μm程度が好ましく、0.5〜2.5μm程度がより好ましい。従って、乾燥及び重合処理後にかかる膜厚が得られるように、塗布時の膜厚を適宜設定する。
【0034】
本発明の表面硬質透明シートの製造方法においては、塗布膜の加熱乾燥と同時に、又は加熱乾燥後に、熱、光等による重合処理を行うことができる。光重合を行う場合には、例えば、上記ヒドロゾル液の塗布後、塗布膜を乾燥させるための加熱の後、或いは加熱と同時に、高圧水銀ランプ等により紫外線照射を行う。紫外線の照射エネルギーは、紫外線強度(ランプ出力)やランプとフィルムとの距離や照射時間で制御されるが、基材フィルムの劣化に至らない程度で、PAGM及びPAGAの重合に十分なエネルギーであることが必要である。
【0035】
熱による重合の場合は、塗布膜を乾燥させた後、例えば、100〜150℃程度にて30分間〜10時間程度加熱することにより重合させることができる。或いは、塗布膜の乾燥と同時に重合を行う場合には、例えば、100〜150℃程度にて30分間〜20時間程度加熱することにより乾燥及び重合を行うことができる。
【0036】
なお、より強固な膜にするために上記したような条件で加熱乾燥を行った場合は、その際、熱によりPAGM及び/又はPAGAの一部が重合している場合もある。
【0037】
尚、PAGMまたはPAGAによる作用は前記の通りであるが、実際の添加に際してはこれら作用効果に対して、PAGMまたはPAGAの分子量とそれに対する添加量とのバランスによっても効果上に若干の差が発生するので、この点も含めて、入念に事前検討し最適条件を設定することが好ましい。
【0038】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。
【0039】
(実施例1)
テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エタノール、蒸留水、塩酸(酸触媒)をモル比で各々0.8:0.2:2:4:0.01の割合で混合し、1時間撹拌して、ヒドロゾル液を得た。これとは別に、テトラエトキシシランとフェニルトリエトキシシランの合計100重量部に対して、分子量400のポリエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂製ブレンマーPDE400)10重量部と光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ製ダロキュアー1173)0.4重量部を、前記ヒドロゾル液に含まれるエタノールと同量のエタノール(2モル比)に添加し撹拌して溶解し、これを前記ヒドロゾル液と合わせて撹拌混合して、コーティング用ヒドロゾル液(HC−1)を調製した。
【0040】
次にロール形態の厚み188μmのPETフィルム(表面硬度2H、全光線透過率87.0%)上に、前記のHC−1液をグラビアコート法により、グラビアロール線数55、ロール回転数5rpm、リバース回転、ライン速度3m/分の条件で塗布し、連続乾燥炉中100℃で2分間乾燥した後、ロールに巻きとり1週間放置し熟成させた。次に、このフィルムを連続乾燥炉130℃で10分間乾燥させながら、高圧水銀ランプで598mJ/m2の紫外線照射を行った。
【0041】
形成された膜面は平滑であり、膜厚は1.2μm、表面硬度は3Hであった。
拡大顕微鏡で500倍率で観測したが、膜の亀裂は一切観察されなかった。また、フィルムの全光線透過率は90.0%であった。
【0042】
このフィルムを、60℃90%RHの高温高湿環境に500時間保存して同様の評価を行ったが、膜質の異常や硬度の低下は見られなかった。
【0043】
(実施例2)
テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エタノール、蒸留水、塩酸(酸触媒)をモル比で各々0.8:0.2:2:4:0.01の割合で混合し、1時間撹拌して、ヒドロゾル液を得た。これとは別に、テトラエトキシシランとフェニルトリエトキシシランの合計100重量部に対して、分子量600のポリエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂製ブレンマーPDE600)10重量部と光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティーケミカルズ製イルガキュアー184)0.4重量部を、前記ヒドロゾル液に含まれるエタノールと同量のエタノールに添加し撹拌して溶解し、これを前記ヒドロゾル液と合わせて撹拌混合して、コーティング用ヒドロゾル液(HC−2)を調製した。
【0044】
次に膜厚125μmの透明PETフィルムの上に、前記のHC−2液をスピンコーティング法により1000rpmにて20秒間塗布した。塗布後24時間常温に放置した後、100℃で10時間加熱し乾燥させ、その後高圧水銀ランプで598mJ/m2の紫外線照射を行った。
【0045】
形成された膜面は平滑であり、膜厚は1.5μm、表面硬度は3Hであった。
拡大顕微鏡で500倍率で観測したが、膜の亀裂は一切観察されなかった。また、フィルムの全光線透過率は89.1%であった。
【0046】
このフィルムを、60℃90%RHの高温高湿環境に500時間保存して同様の評価を行ったが、膜質の異常や硬度の低下は見られなかった。
【0047】
(比較例1)
実施例2において、ポリエチレングリコールジメタクリレートに替えて分子量600のポリエチレングリコールを用いた以外は同一条件でヒドロゾル液を調製し、実施例2と同様の条件でPETフィルムにコーティングし、熱乾燥してPETフィルムを二酸化ケイ素膜で被覆した。
【0048】
形成された膜面は平滑であり、膜厚は1.5μm、表面硬度は3Hであった。
拡大顕微鏡で500倍率で観測したが、膜の亀裂は一切観察されなかった。また、フィルムの全光線透過率は89.0%であった。しかし、このフィルムを、60℃90%RHの高温高湿環境に200時間保存したところ、フィルムの膜全面に亀裂が発生した。
【0049】
尚、各例で言う表面硬度はJIS−K5400の方法で測定した鉛筆硬度である。
【0050】
【発明の効果】
基体の樹脂シートよりも高い表面硬度と透明性と適度な柔軟性もつ表面硬質透明シートの耐湿性を格段に向上させ、機能部品としてより多くの用途に利用が可能になった。とりわけペン入力式タッチパネル基板やディスプレー保護板への利用に好適である。

Claims (3)

  1. 炭素数1〜4のアルコキシ基でトリ置換され、残る1つの置換基が炭素数1〜4の低級アルキル基又はフェニル基であるトリアルコキシシラン、及びテトラアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能アルコキシシラン、分子量が200〜800である、ポリアルキレングリコールメタクリレート及びポリアルキレングリコールアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種並びに重合開始剤を含有し、コロイダルシリカを含まないヒドロゾル液。
  2. 炭素数1〜4のアルコキシ基でトリ置換され、残る1つの置換基が炭素数1〜4の低級アルキル基又はフェニル基であるトリアルコキシシラン、及びテトラアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能アルコキシシラン、分子量が200〜800である、ポリアルキレングリコールメタクリレート及びポリアルキレングリコールアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種並びに重合開始剤を含有し、コロイダルシリカを含まないヒドロゾル液を透明な基体に塗布し、該塗布膜を乾燥させると同時に、又は該塗布膜を乾燥させた後、ポリアルキレングリコールメタクリレート及びポリアルキレングリコールアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合処理を行うことを特徴とする表面硬質透明シートの製造方法。
  3. 請求項2記載の方法により得られた表面硬質透明シート。
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