JP4564733B2 - 複数の多孔質粘土と二酸化チタンで形成された素焼 - Google Patents

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Description

本発明は、珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトを含む多孔質粘土を主体とし、二酸化チタン光触媒を更に含む混合物を焼成してなり、空気浄化用の素材として特に有用な素焼及びその製造方法に関する。
最近の住宅は「高断熱高気密」のため一年中通して部屋内の温度が快適な温度に保たれるようになっている。しかし、室内の気密性が良い反面、通気性が悪くなり、汚れが蓄積され易くなっている。たとえば、通常の生活においても、タバコの煙(アセトアルデヒド)、料理をするときの油、野菜などの生物の腐敗臭(硫化水素)、アンモニアなどを含む汚れが部屋内の空気中に浮遊あるいは分散している状態が維持される機会が多くなる。これらの汚れを放置すると壁、天井、床、カーテン、家具、衣服等に付着したり、カビや悪臭の原因になったり、「ダニ」等の生息し易い状態になる。また、寝たきりの人の部屋とか小さい部屋に多人数が居住している場合などは人間の異様な体臭(低級脂肪酸)が充満している。加えて、昨今はペットブームによるペット老廃物(低級脂肪酸)からの汚れも多く見られる。更には、新建材、防腐剤、壁紙の接着剤等から出るホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)等の部屋内の空気中への放出による健康への懸念も高まっており、実際にその影響に悩まされている人々が増加している。
このような部屋内の空気中に放出された汚れの成分は、窓などを開放したり、喚起扇などを作動させて部屋の空気を屋外へ追い出す処理を行うことで、あるいは吸着剤を部屋に設置してこれを吸着させるなどの方法である程度除去することができる。ところが、頻繁に窓などを開放することは煩雑であり、また、喚起扇や吸着剤の使用でも完全に汚れ成分を十分に除去することはできず、また、これらの方法は汚れ成分を分解浄化する根本的な浄化方法ではない。
そこで、このような汚れに対する対策として、家庭用空気清浄機が注目されている。現在、家庭用空気清浄機による処理対象としての有害物質は2つの種類に大別される。1つは浮遊粒子状物質であり、2つ目はガス状物質である。これらの主な除去方式は、フィルターろ過方式、静電集塵方式及び化学反応方式がある。
これらの方式にはそれぞれ特徴があり、例えば、浮遊粒子状物質に対してフィルターろ過方式は効果的であるが、ガス状物質(ホルムアルデヒド、NOx、COなど)に対しての除去率は小さく、静電集塵方式ではガス状物質の除去効果が認められないことなどが報告されている(日本建築学会計画計論文集 第554号、35−40、2002年4月:非特許文献1)。一方、化学反応方式による一般的な処理としては、臭気物質に化学反応を起させ、臭気強度が減少した物質に変化させるための処理を挙げることができる。しかしながら、化学反応方式を用いた場合、装置が複雑となったり、小型化が困難であったり、操作やメンテナンスに専門的な知識を必要とする場合があり、更に、家庭における多種類の汚れの成分に対応できない場合もあり、一般家庭用としては適当でない場合が多い(例えば、「臭覚とにおい物質」、臭気対策研究会出版、発行年月日:2001年10月25日:非特許文献2)。
また、フィルターろ過方式におけるフィルター部は、数mm〜十数mmの厚さのフィルターを数層重ねて形成されている。このフィルターを数ヶ月に一回交換して、フィルター機能を維持している場合は、維持コストの低減に限界がある。また、
万一、フィルターの交換を怠ると、このフィルター部に吸着された有機物が逆にこのフィルター部より放出する可能性が生ずる。
近年、900℃以上で焼結した陶器に二酸化チタンをコートして、空気を浄化する製品(津軽焼き、唐津焼)も出現している。この場合、二酸化チタン独自では吸着機能を有していないし、粘土に孔は存在しないため吸着機能は無いものと思われる。さらに、二酸化チタンを塗布しただけでは長期間の使用において二酸化チタンコート層の基体部からの剥離が生じ、分解機能が低下する場合がある。
日本建築学会計画計論文集 第554号、35−40、2002年4月 「臭覚とにおい物質」、臭気対策研究会出版、発行年月日:2001年10月25日
先に述べた状況の中で、本発明者らは、多孔質材料と二酸化チタンを混入して吸着分解除去機能を有する素焼を開発する事を目標として鋭意研究を積み重ねた結果、特定の多孔質材料を組合せ、更にこれに二酸化チタン光触媒を混合して得られる素材を焼成することにより得られる素焼が、汚れの成分となる物質の分解除去特性に優れ、かつこの特性を特別な維持管理を必要とせずに長期にわたって維持し得るものであることを見出した。
本発明の目的は、原料として無機資源を利用するものであり、更に、その製造が容易かつ安価であり、汚れの成分の吸着分解機能に優れた素焼及びその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、生活環境の調整に有用な調湿及び空気浄化機能を有する素焼及びその製造方法を提供することにある。
本発明の素焼は、珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトを含む多孔質粘土を主体とし、二酸化チタン光触媒を更に含む混合物を成形して焼成してなることを特徴とするものである。
本発明の光触媒を含む多孔質体である素焼成形品の製造方法は、珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトを含む多孔質粘土を主体とし、二酸化チタン光触媒を更に含む混合物を成形して成形物を得る工程と、前記成形物を焼成して素焼成形品とする工程と、を有することを特徴とするものである。
この素焼の焼成温度は、500〜700℃の範囲とすることが好ましい。また、この素焼は、凹凸を有する面を有するように成形し、この面に二酸化チタン光触媒を含む塗布液を更に塗布してから焼成した面を有するものであることが好ましい。
本発明の空気清浄機は、筺体と、該筺体内に配置された物質の吸着分解材と、該物質の吸着分解材を配置した領域に空気を導入するための導入口と、該物質の吸着分解材の配置された領域からの空気を排出するための排出口とを有し、該物質の吸着分解材が空気中に含まれる物質の吸着及び分解の少なくとも一方の機能を有する空気清浄機であって、前記物質の吸着分解材が、上記の素焼であることを特徴とする空気清浄機である。この空気清浄には、素焼に光照射を行う光照射手段や、空気を空気導入口から素焼が配置された領域へ供給するための送風手段を更に有することが好ましい。
本発明によれば、
(1)素焼の多孔質構造内での毛管凝縮による調湿機能と、二酸化チタン光触媒による光触媒作用によって、吸湿作用と放湿作用を外気の湿度に応じて得ることができ、更に、微粒子状の、あるいはガス状の汚れの成分の吸着及び/または分解を行うことができる。
(2)素焼の少なくとも一面を凹凸面とすることで、この面での面方向及び厚さ方向において上記の調湿、並びに汚れの成分となる物質の吸着及び/または除去効果を、簡易な構造で効率よく得ることができる。
(3)素焼には数nm〜数百nmまでの細孔が混在しており、ガス状から各種の大きさの粒子状の汚れの成分となる多様な物質を吸着及び/または分解することが可能となる。
(4)主に素焼に配合した光触媒の作用によって、素焼の表面や多孔質の空孔内に吸着した物質が分解され、家庭などでの空気洗浄用等の用途では、特別な維持管理や定期的な交換の必要がなく、長期にわたって目的とする用途に利用可能である。
本発明にかかる素焼の原料である多孔質粘土としては、少なくとも珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトの3種が用いられる。これらの多孔質粘土の組み合わせを用いることで素焼中に独特な細孔分布が得られ、これによって調湿性、並びに汚染物質の吸着及び/または分解性に優れたものとなる。特に、これらの多孔質粘土を用いたことで、二酸化チタン光触媒の素焼表面(多孔質の空孔内壁を含む)に効果的に配置かつ固定され、容易に素焼から脱落することがなく、長期にわたって二酸化チタン光触媒の効果を維持することができる。すなわち、本発明にかかる素焼の効果は、珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトの3種類の多孔質粘土に特有な吸着性などの長所の活用、珪藻頁岩とセピオライトの調湿機能の活用、これらの多孔質粘土による二酸化チタン光触媒の保持、固定機能の活用、二酸化チタン光触媒の汚染物質の分解機能の活用に基づくものである。
ここで、上記の3種類の多孔質粘土に特有な長所を説明する。
珪藻土の細孔はマクロ(最大で約3μm)な細孔であり、無数の空隙が存在し、内部に大きな空隙を持ち、これが高い吸放湿特性を有する(「多孔性セラミックの開発」株式会社 シーエムシー出版、発行年月日 2000年3月10日)。数種類の珪藻土の中で珪藻頁岩(SiO2 Al23)(特許2001−219059号公報)は細孔半径2〜10nmが60%を占めるとされている。また、これには数百nmの細孔も多数観察されている。この珪藻頁岩における調湿作用については、相対湿度60%で急激な吸湿率の立ち上がりを示し、更に、毛管凝縮により高湿度でも高い吸湿作用が働き、湿度が下がると放湿作用の働きを示すことが知られている。
セピオライトは、結晶構造内にトンネル状の空孔を有する繊維状粘土鉱物(含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物)で、さまざまな気体状、液体状の分子を吸着されるといわれている(大阪大学 理学部 宇宙地球物理:地球惑星科学関連学会2000年6月27日、セッション:日本鉱物学会 Mb-006)。繊維状の形状の断面積は3.7Å〜9.3Åで、円の半径に換算すると0.33nmでゼオライトの有する孔径より小さい。セピオライトはトンネル状の細孔を持つため、比表面積が大きく、吸着性が高い。セピオライトの吸着機能には、その表面に存在する水分子が大きな役割を果たしていることが示唆されている(豊田中央研究所 R&Dレビュー Vol.28 No.2 (1993年6月)。即ち、吸着はセピオライト表面にあらかじめ吸着した水分子の層の上で起こることが示されている。このことから、セピオライトでの吸着機能は臭気物質などの親水性と密接な関係があり、セピオライトを配合することで、珪藻頁岩及びゼオライトの吸湿性を利用して補足した水分子がセピオライトにおいて有効に利用され、親水性物質の吸着に大きく貢献するものとなる。例えば、ホルムアルデヒドやアンモニアは水分子に強く反応してイオン化し、このイオン化を通してセピオライトなどの表面の水と結合するので、これらの物質に対する優れた吸着機能を発揮できる。
ゼオライトは、含水珪酸アルミナ珪酸塩鉱物で、水が立体網目構造の中に結合された水分子として存在しており、この水は沸騰水と呼ばれる。この水が加熱により除去されるとその部分が空洞となる。この空洞は細かな均一な孔であり、この径は大変小さく、数nmである。ゼオライトは基本的にこの孔の径に応じた大きさの分子吸着機能を有する。例えば、アンモニアイオン等の吸着に効果的な成分となる。もう一つのゼオライトの特性は陽イオン交換容量(C.E.C: Cation Exchange Capacity)が高いことである。ゆえに、アンモニア等の数nm以下の小さいガス性の分子を強力に取り込む能力がある。調湿機能については、ゼオライトは放湿性よりも吸湿性に優れる傾向にある。
これらの3種の各多孔質粘土の合計量100質量部に対する配合割合としては、珪藻頁岩15〜35質量部、好ましくは20〜30質量部、セピオライト25〜50質量部、好ましくは27〜47質量部、及びゼオライト18〜37質量部、好ましくは23〜35質量部とすることができる。なお、各多孔質粘土の配合量は、珪藻頁岩<ゼオライト<セピオライトの順で多くなるようにすることが更に好ましい。
これらの3成分に他に、これらの多孔質粘土以外の粘土や焼き物に使用される各種物質や添加剤を必要に応じて添加することができる。他の粘土としては、粘性を付与するための粘土、例えば信楽粘土などを挙げることができる。また、その他の物質としては、伊賀土などを挙げることができる。
これらの他の成分の配合割合は、最終的に得られる素焼における所望とする特性を損なわず、かつ他の成分を添加する効果が得られる範囲とされる。例えば、生地の成形性を更に向上する上で信楽粘土などの粘性の高い粘土を前記の3種の多孔質粘土の合計量100質量部に対して20〜40質量部程度配合することが好ましい。
生地中に含有させる二酸化チタン光触媒としては、光触媒機能を有する適当な粒径の二酸化チタン粒子や、適当な担体に二酸化チタンを含有あるいは被覆して光触媒としての機能を持たせたものなどを利用することができる。なお、二酸化チタン光触媒としては、所望とする光触媒による分解効果が得られるものであればよいが、例えば、アナターゼ型二酸化チタン光触媒を好ましいものとして挙げることができる。このような二酸化チタン光触媒は、石原産業、(株)光触媒研究所、エコデバイス株式会社及び(株)フォレステイ峯岸などから入手可能である。また、二酸化チタン光触媒の粒径も特に限定されないが、12nm〜70μmの範囲のものが好ましい。
二酸化チタン光触媒の配合割合は、目的とする光触媒効果が得られる範囲内とされるが、例えば、前記の3種の多孔質粘土の合計量100質量部に対して8〜16質量部の範囲から選択することができる。
生地の調製は、少なくとも、上記の3種の多孔質粘土と二酸化チタン光触媒とを、混合し、練り上げて、所望の形状に成形することにより行うことができる。生地成形品の強度や形状維持特性などを考慮して、必要に応じて水を添加してもよい。
生地成形品の形状は、最終的に得られる素焼の形状に応じたものとされる。例えば、円板や矩形の板状、筒状、棒状、ブロック状など各種の形状とすることができる。図1に筒状に成形された素焼の一例を示す。この素焼1は上下両端が開口している筒状の形状を有し、内壁面1aに、凹凸(ジグザグ)構造を形成することで、素焼に接触する空気の流れを、目的とする処理機能により適したものとしたものである。この凹凸(ジグザグ)構造としては、例えば、図1(b)の断面に示す構造などを挙げることができる。この場合、凹部の深さ(x)は0.5〜2mm程度、凹部の幅(z)は 0.5〜1.0mm程度、凸部の幅(y)は0.5〜2mm程度とすることができる。また、この凹凸(ジグザグ)構造の凹部(溝部)は凸部で区分されたものでも、らせん状に内壁に形成されたものでもよい。なお、この凹凸(ジグザク)構造の断面形状は図示したものに限定されず、素焼が所望とする機能をより効率よく発揮できるように表面積を増加させるものであればよい。このような凹凸(ジグザク)構造を設けることで、空気の接触面積が拡大し、調湿効果、物質吸着効果及び光触媒効果を更に高めることができる。
生地を焼成する前に、生地の光触媒による物質の分解処理を行わせる面に、更に二酸化チタン光触媒の塗布液を塗布してもよい。この塗布液は、二酸化チタン光触媒を水またはアルコールなどの液媒体に分散させて調製することができる。塗布処理は、スプレー、シャワー、刷毛塗り、スポンジロール塗り、ディッピングなどの各種の方法により行うことができ、塗布処理を行った後の生地を更に乾燥させて焼成を行う。この場合の二酸化チタン光触媒の塗布量は、70〜100mL/m2程度とすることが好ましい。塗布量が多すぎると、多孔質構造の機能を損なう恐れがあり、少なすぎると追加的に二酸化チタン触媒を塗布する効果を得ることができない。
上記のようにして調製した生地を焼成して素焼とする。焼成温度は500℃〜700℃の範囲から選択することができるが、600℃〜700℃の範囲とすることが好ましい。
焼成後に得られる素焼は、生地の形成に用いた3種の多孔質粘土と二酸化チタン光触媒から得られる調湿性、物質の吸着性及び物質の分解性などの特性に優れ、空気清浄用の材料として特に有用である。すなわち、先に示す3種の多孔質粘土から得られる広範な細孔径分布を有し、上記の優れた特性を発揮できる。これに対して、これらの3種の多孔質粘土のうちの1種または2種のみの組み合せでは本発明における効果を得ることが困難である。なお、上記の3種の多孔質粘土は、そのままでは素焼とした場合、つぼ、皿、茶碗などの生活用の器具としての強度が得られず、生活用の器具用の焼き物の原料としての利用は、強度得るための強い粘性の粘土やバインダー成分を多量に用いる場合に限られていた。これに対して、本発明の素焼は、本発明で目的とする効果を得るための多孔質性を維持できる程度の強度を少なくとも確保できるようにその材料構成が選択されており、従来にない組成を有する。
このように、3種類の多孔質粘土は空気中の水分を取り込める細孔が多く存在して、毛管凝縮により、湿度が高くなると水分を取り込む、湿度が低くなると水分を放出する、すなわち、人が空気を呼吸するように、水分を呼吸する調湿機能を有する。この調湿機能は、物質の吸着や分解にも重要な役割を果たしている。例えば、湿度がある程度以上になると水分が多孔質の細孔内に取り込まれる流れが生じ、この流れに乗って空気中の物質が素焼の表面(例えば上記の凹凸構造を有する表面)や細孔内に供給され、多孔質構造での吸着効果が得られ、更には表面にある二酸化チタンとの接触機会が増え、分解処理が促進される。また、湿度が低くなると急激に水分を放出する流れが生じ、その流れに汚染物質(粒子状やガス状)が含まれている場合には、これらが表面に存在する二酸化チタンと接することになり、そこで分解処理される。更に、多孔質内が乾燥状態になると、そこに吸着されていた汚染物質が吸着場所から離脱した場合でも、表面に存在する二酸化チタンと接触する機会を得ることができ、その状態でも分解処理が進行する。更に、この毛管凝縮作用による水分の保持が、親水性物質の吸着効率の向上にも寄与する。
なお、陶器や磁器、あるいは900℃以上の温度で焼結されたセラミックの表面は平滑で光沢を有する場合が多く、このような焼き物ではそこに到達した光のほとんどが反射されてしまい、酸化チタン光触媒を保持させた場合でも光の利用効率を上げるには限界があると考えられる。これに対して、本発明にかかる素焼では、酸化チタン光触媒を保持した部分が多孔質構造を保っており、この部分に到達した光は、一部は細孔内にも入り込み、二酸化チタン光触媒を機能させるために利用される。すなわち、本発明の素焼では、厚み方向の一部においても二酸化チタンの光触媒機能を、そこを通過する空気内の物質に対して作用させることが可能となる。
本発明にかかる素焼は、家庭用、工業用及び業務用の空気清浄機などの汚れ成分の吸着及び浄化を行う部材として好適に利用できる。例えば、花瓶型空気清浄機、つくばい型空気清浄機、フクロウ型空気清浄機、灰皿、行灯型空気清浄機、下駄箱、桜皮細工空気清浄機、竹細工素焼空気清浄機、一輪挿し空気清浄機、掃除機、脱衣籠、ペット用皿、加湿器、枕、ベット、足つぼマット、屋外用パネル、屋内用パネル、水泳用のプールの壁材などの空気清浄機能を持たせる部分に本発明の素焼を用いることができる。
その一例として、花瓶、つくばい及び行灯型の空気清浄機に本発明の素焼を適用した例を図2に示す。図2は空気清浄機の縦中央断面図である。この空気清浄機は、筒状の本体装飾ケース3を台座7の外周部に嵌合配置し、その内部に素焼固定帯2で保持した状態で筒状の素焼1を配置した構造を有する。素焼1の底部は開口状態となっており、その下部には送風ファン8が設置してあり、この送風ファン8によって台座7の胴部に設けられた通気口9からの空気を筒状素焼1の内部へ送り込むことができる。筒状素焼1の内壁面は図1(b)に示したような凹凸構造を有する。更に、筒状素焼1の内部には複数枚の活性炭プレート6が配置され、その中央部に設けられた貫通孔に紫外線ランプ5が挿入配置されている。なお、送風ファン及び紫外線ランプを作動させるための機器類及び配線については図示を省略している。固定帯2、台座7及び上部蓋部材4は、金属(例えばステンレス)、プラスチック、セラミック、木材、ガラスなどの所望とする空気清浄機の構造に応じて選択された材料で構成することができる。この例では、台座、本体装飾ケース及び固定帯によって筺体が形成されている。
更に、本体装飾ケース3の上部には筒状素焼1の内部からの空気を外部へ排出する開口部が形成されるように蓋部材4が配置されている。蓋部材4を外した状態の紫外線ランプ5、活性炭プレート6、筒状素焼1の位置関係を図2(b)に示す。
なお、活性炭プレート6は、チョップドカーボンファイバーやガラスファイバーと、活性炭を所定の形状に成形して得られたものである。この活性炭としては、竹から得られた活性炭が特に好ましい。また、カーボンファイバーやガラスファイバーは0.5〜1.0mm程度の太さで、1.0〜3.0mm程度の繊維長さに切断されたものが好ましい。また、活性炭プレートの厚さは、3.0〜6.0mm程度にすることが好ましい。また、活性炭プレートは、素焼1の内壁に設けた凹凸構造の一部を利用して素焼1の内部に配置することができる。あるいは、素焼1の内径を上方から下方に向けて小さくしておくことで、各位置の大きさに合わせて活性炭プレートの大きさを設定しておくことで、活性炭プレートの配置が可能となる。更には、活性炭プレートを配置するための凸部を別途素焼の内壁面に設けてもよい。
この空気清浄機では、送風ファン8を作動させ、更に紫外線ランプ5を点灯させることで空気の浄化処理を効果的に行うことができる。外気は台座7の胴部に設けられた通気口9から送風ファン8の配置された領域に吸引され、筒状素焼1の内部へ誘導される。活性炭プレート6が邪魔板として機能することで、空気は筒状素焼1の内部の凹凸構造表面方向に誘導され、それに沿って上部へ移動する。活性炭プレート6の形状を適切なものとし、送付ファン8の能力を調整することで、空気の流れを筒状素焼1の内壁面に効果的に当てることが可能となる。図示した例では、活性炭プレート6の端部の一部が筒状素焼1の内壁面と接触するようになっており、上下に複数段設置された活性炭プレートでこれらの接触位置が互い違いになるようになっている。
空気中に粒子状またはガス状の汚染物質が存在している場合は、先に述べた素焼1の機能によりこれが吸着及び/または分解される。更に、活性炭プレート6に空気が接触することによって活性炭に吸着できる疎水性有機物成分が空気から除去される。このようにして汚染物質が除去された空気は上部の開口部から排出される。
本体装飾ケース3を、円筒形和紙、桜皮、竹、ワーロン紙、信楽陶器などを所望とする形状に成形して用いることで、花瓶、つくばい、行灯、竹篭など所望とする形状とすることで各種の空気清浄機とすることができる。
例えば、つくばい型の空気清浄機を図3に示す。この空気清浄機は、筺体を構成する信楽焼のつくばい本体3内に、筒状の素焼1を配置し、その内部に活性炭プレート6、蛍光灯5及び空気ファン8を設置した構成を有する。空気清浄を行う場合の操作は、先に図2において説明したものと同様である。空気はAの導入口からファンによって吸引され、素焼1の内部と接触して、浄化された状態で、矢印Bで示した正面の開口から機外へ送り出される。なお、正面の開口と素焼1との間に適当なスペースを置たり、装飾用のパネルなどを配置することで正面からの開口から見える内部の範囲を装飾することができる。
なお、本発明に係る空気清浄機の構造は図2及び3に示す構造に限定されず、空気と素焼が接触でき、かつ素焼の所定部分に二酸化チタンの光触媒作用による汚染物質の分解に必要な光を照射できる構造とすればよい。例えば、素焼の形状及び大きさ、あるいはその強度などに応じて、固定帯を設けずに素焼きをそのまま配置してもよい。更に、自然光や部屋の照明を二酸化チタン光触媒に照射してその機能を発揮させる構造では、光照射用の蛍光灯の省略も可能である。また、自然光が入射可能であり、入射した自然光が素焼の汚染物質分解処理用の部分に到達できるようにしておくと、部屋内に入射した太陽光や部屋の照明からの光を利用し、夜間は空気清浄機内の蛍光灯を点灯して、その光を利用することもできる。更に、空気ファンも空気清浄機の構造によっては省略可能である。
本発明にかかる素焼を用いた上記の吸気清浄機の構成により処理可能である物質とその由来の代表例を以下に示す。
(1)素焼によって吸着及び/または分解される物質
親水性物質類
・ホルムアルデヒド:刺激臭(ガス体)、建材、カーペット、木製家具(接着材、溶剤)、石油、ガスを用いた暖房器具の使用
・アセトアルデヒド:油ミスト、タバコ臭、吸殻、防カビ材
・アンモニア:トイレ(排便、排尿)、風呂場(汗、腋臭、垢)、排水臭(下水)
・イソ吉草酸(低級脂肪酸):腋臭、足臭(むれた靴下)、カビ、ペット老廃物、下駄箱
・プロピオン酸(低級脂肪酸):刺激的なすっぱい臭い、腐敗バター臭、ペット老廃物、下駄箱
・ノルマル酸(低級脂肪酸):汗臭、ペット臭、老廃物、食物、下駄箱
・トリエチルアミン:腐敗魚臭、ペット臭、老廃物、食物、下駄箱
・メチルメルカプタン:腐ったたまねぎの臭い、風呂場、トイレ
疎水性物質類
・トルエン(揮発性で空気より重い):ガソリン臭、内装材料等の施工用接着剤、塗料、施工用接着剤、塗料を使用した家具
・スチレン(揮発性で空気より重い):都市ガスの臭い、断熱材、畳芯材、家具、包装材
・キシレン(揮発性で空気より重い):ガソリン臭
・ピリジン:タバコ臭、吸殻
(2)活性炭プレート
・アセトアルデヒド
・各種疎水性物質
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
実施例
ホルムアルデヒドの吸着及び分解処理が可能であることを確認するために以下の測定を行った。
(測定装置)
図4に示すチェンバーとして、45Lのポリエチレン容器を使用し、ガス測定器は理研計器社製MALTI GAS FINDER FPR−85、HCOH DETECTOR FP−30(ホルムアルデヒド専用測定器)及びガステック社のGSP−200を使用した。紫外線ランプはハリソン東芝ライテング(株)製、光触媒用冷陰極蛍光ランプで紫外線照射量は半径10〜20cmで0.1〜0.3mW/cm2である。有害物質としてはホルムアルデヒドを使用した。また、図示のとおり、送風ファンを容器内に設置した。チャンバー内からの測定用気体試料は、シリコンチューブと通して検知管または検知タブへ気体試料を導くことによりガス測定器へサンプリングした。
(測定用試料)
以下の6種の測定用試料(サイズ:Φ200mm、高さ260mm 円筒素焼)を用意した。
(A)普通セラミック(900℃以上で焼成された陶器)
(B)普通セラミックの全面に二酸化チタン塗布液を10mg/cm2の乾燥塗工量で塗布したもの。
(C)信楽粘土57質量部にゼオライト43質量部を混合して700℃で焼成したもの。
(D)信楽粘土60質量部にゼオライト36質量部及び二酸化チタン4質量部を混合して700℃で焼成したもの。
(E)信楽粘土25質量部、セピオライト27質量部、ゼオライト23質量部、珪藻頁岩21質量部及び二酸化チタン4質量部を混合して700℃で焼成したもの。
(F)セピオライト41質量部、ゼオライト31質量部、珪藻頁岩20質量部及び二酸化チタン8質量部を混合して700℃で焼成したもの。
(測定方法)
上記の装置を用いて以下の操作により測定を行った。チェンバー内にホルムアルデヒド溶液(0.6ppm 濃度)を1mg以下の所定量を滴下し、気化させた。チェンバー内の空気を送風ファンで作動させて撹拌した。チェンバー内の気相におけるホルムアルデヒドの濃度が一様になったところで、紫外線ランプを点灯した。点灯時から定期的(30分間隔)にチャンバー内の空気の一部をサンプリングして気体試料中のホルムアルデヒド濃度を測定した。
(測定結果)
得られた結果を図5に示す。図5は横軸が経過時間(h)であり、縦軸は有害物質であるホルムアルデヒドの除去率を示している。時間軸「0」表示は、紫外線ランプの照射開始時で、−0.5の表示はホルムアルデヒドの適下時である。時間が「−0.5」から「0」表示となるまで間は容器内の濃度が一様になるまでの時間である。残存率の表示方法はそれぞれの試料のホルムアルデヒド測定濃度の最大値で正規化している。図5に示す結果からは次の点が明らかとなった。
(1)曲線Bにおいて、900℃以上で焼成された通常のセラミックに二酸化チタン光触媒を塗布することにより、ホルムアルデヒド分解除去効果が現れていることがわかった。
(2)曲線Cでは、一般的に使用されている粘土に、ゼオライトを練り込み700℃で焼成された素焼の吸着効果が現れている。
(3)曲線Dは、上記の(2)二酸化チタン光触媒を充填して形成された素焼における除去曲線となっている。
(4)曲線Eは、上記(3)に信楽粘土、セピオライト及び珪藻頁岩を混入して700℃で焼成した素焼における分解除去特性を示している。
(5)曲線Fは、上記(4)の材料で信楽粘土を除いた場合の素焼の分解特性を示している。
以上の結果を総合すると、試料E及びFにおいて他の使用よりも顕著な分解特性が得られることが確認された。
本発明にかかる素焼の一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側壁を一部部分断面図である。 本発明にかかる空気清浄機の一例の構造を示す図であり、(a)が縦中央断面図、(b)は上方からの平面図である。 つくばい型の空気清浄機の一例の断面図である。 ホルムアルデヒドの分解試験に用いて装置の概要を示す図である。 ホルムアルデヒドの分解試験の結果を示す図である。
符号の説明
1 素焼
1a 内壁面
2 固定帯
3 本体装飾ケース
5 紫外線ランプ
6 活性炭プレート
7 台座7
8 送風ファン
9 通気口

Claims (6)

  1. 空気中に含まれる物質の吸着及び分解の少なくとも一方の機能を有する空気清浄機であって、
    筒状の本体を有する筺体と、
    該筒状の本体内に挿入配置された上下両端が開口する筒状の素焼と、
    該筒状の素焼を配置した領域に空気を導入するための導入口と、
    該筒状の素焼の配置された領域からの空気を排出するための排出口と、
    前記空気導入口から前記筒状の素焼の下端開口から上端開口へ空気を供給するための送風手段と、
    前記筒状の素焼内に設けられ、該筒状の素焼の内壁を光照射する光照射手段と、
    該筒状の素焼内に、該筒状の素焼の下端開口から上端開口への空気の流れを横切る方向で、かつ該筒状素焼の内壁面との間に空気を通す隙間を有して配置された活性炭プレートと、を有し、
    前記筒状の素焼が、珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトを含む多孔質粘土を主体とし、二酸化チタン光触媒を更に含む混合物を成形して得た筒状の生地の光触媒による分解処理を行わせる面に、二酸化チタンと液媒体からなる塗布液を塗布、乾燥してから焼成することにより得られるものであり、
    前記珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトの合計量100質量部に対し、珪藻頁岩15〜35質量部、セピオライト25〜50質量部及びゼオライト18〜37質量部を含み、
    前記珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトの配合量は、珪藻頁岩<ゼオライト<セピオライトの順で多く、
    前記活性炭プレートは、0.5〜1.0mmの太さ、1.0〜3.0mmの繊維長さのカーボンファイバーまたはグラスファイバーと、竹から得られた活性炭を成形して得られたものである
    ことを特徴とする空気清浄機。
  2. 前記焼成の温度が500〜700℃の範囲である請求項1に記載の空気清浄機。
  3. 前記筒状の素焼が、前記混合物を周方向に伸びる凹部と凸部が交互に形成された内壁面を有する筒状に成形し、更に少なくともこの内壁面に二酸化チタン光触媒を含む塗布液を塗布してから焼成したものである請求項1または2に記載の空気清浄機。
  4. 前記混合物中の二酸化チタンの配合量は、前記珪藻頁岩、セピオライト及びゼオライトの合計量100質量部に対し、8〜16質量部の範囲から選択される請求項1〜のいずれかに記載の空気清浄機。
  5. 前記活性炭プレートの複数が、前記筒状の素焼の下端から上端への方向に間隔を持って配置されており、各活性炭プレートで区分された領域の全てにおいて光照射されるように光照射手段が配置されている請求項1〜のいずれかに記載の空気清浄機。
  6. 前記光照射手段が、前記筒状の素焼の下端から上端へ伸びる単一光源を有する請求項1〜のいずれかに記載の空気清浄機。
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