JP4563318B2 - 放電表面処理用電極、放電表面処理装置および放電表面処理方法 - Google Patents

放電表面処理用電極、放電表面処理装置および放電表面処理方法 Download PDF

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Description

この発明は、金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体からなる放電表面処理用電極と被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において使用される放電表面処理用電極と、その製造方法と評価方法に関するものである。また、この放電表面処理用電極を用いた放電表面処理装置と放電表面処理方法にも関するものである。
航空機用ガスタービンエンジンのタービンブレードなどの表面処理には、高温環境下での強度と潤滑性を有する材料をコーティングまたは肉盛りする必要があるため、従来溶接や溶射などの方法が用いられている。溶接や溶射などの方法によって、高温環境下で酸化されて酸化物となり、潤滑性を発揮することが知られているCr(クロム)やMo(モリブデン)をベースとして含む材料の被膜を被加工物(以下、ワークという)上に厚く盛り上げている。ここで、溶接とは、ワークと溶接棒との間の放電により溶接棒の材料をワークに溶融付着させる方法のことをいい、溶射とは、金属材料を溶かした状態にし、スプレー状にワークに吹き付け被膜を形成する方法のことをいう。
しかしながら、この溶接や溶射のいずれの方法も人手による作業であり、熟練を要するために、作業をライン化することが困難であり、コストが高くなるという問題点がある。また、特に溶接は、熱が集中してワークに入る方法であるため、厚みの薄い材料を処理する場合や、単結晶合金や一方向凝固合金などの方向制御合金のように割れ易い材料を処理する場合では、溶接割れが発生し易く、歩留まりが低いという問題点があった。
このような問題点を解決するための技術として、液中放電によってワークである金属材料の表面をコーティングする方法が提案されている。たとえば、第1の従来技術には、まず、1次加工として、ワークに形成する被膜の成分を含む電極材料で液中放電を行った後に、2次加工として、別の銅電極やグラファイトなどのようなそれほど消耗しない電極でワークに堆積した電極材料に対して再溶融放電加工を行うものが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。これによれば、ワークである鋼材に対しては硬くしかも密着度のよい被覆層が得られる。しかしながら、超硬合金のような焼結材料の表面には強固な密着力を有する被覆層を形成することは困難である。また、この方法では、被膜を形成する1次加工と、被膜を再溶融放電加工してワークに密着させる2次加工という2段階のステップが必要であり、処理が複雑になってしまうという問題点があった。
第2の従来技術では、このような2段階の加工で被膜を形成する処理において、電極を交換することなく放電電気条件の変更のみで金属表面に硬質のセラミックス被膜を形成する技術が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。この第2の従来技術では、電極を構成する材料となるセラミックス粉末を理論密度の50%〜90%となるように、10t/cmと極めて高い圧力で圧縮成形して仮焼結したものを電極として用いている。
第3の従来技術では、Ti(チタン)等の硬質炭化物を形成する材料を電極として、ワークである金属材料との間に放電を発生させることによって、第1と第2の従来技術では必要であった再溶融の過程なしに、強固な硬質被膜を金属表面に形成している(たとえば、特許文献3参照)。これは、放電により消耗した電極材料と加工液中の成分であるC(炭素)が反応してTiC(炭化チタン)が生成することを利用するものである。また、TiH(水素化チタン)など、金属の水素化物の圧粉体電極によって、ワークである金属材料との間に放電を発生させると、Tiなどの金属材料を使用する場合よりも速くそして密着性のよい硬質被膜を形成することができる。さらに、TiH等の水素化物に他の金属やセラミックスを混合した圧粉体電極を用いて、ワークである金属材料との間に放電を発生させると高い硬度、耐磨耗性など様々な性質を有する硬質被膜を素早く形成することもできる。
また、第4の従来技術では、セラミックス粉末を圧縮成形し、予備焼結によって強度の高い圧粉体電極を製造し、この電極を用いて、TiCなどの硬質材料の被膜を放電表面処理によって形成している(たとえば、特許文献4参照)。この第4の従来技術の一例として、WC(炭化タングステン)粉末とCo(コバルト)粉末を混合した粉末からなる放電表面処理用電極(以下、単に電極ということもある)を製造する場合について説明する。WC粉末とCo粉末を混合し圧縮成形してなる圧粉体は、WC粉末とCo粉末を混合して圧縮成形しただけでもよいが、ワックスを混入した後に圧縮成形すれば圧粉体の成形性が向上するためより望ましい。しかし、ワックスは絶縁性物質であるため、電極中に大量に残ると、電極の電気抵抗が大きくなるため放電性が悪化する。そこで、ワックスを除去することが必要になる。このワックスは圧粉体を真空炉に入れて加熱することで除去される。この時、加熱温度が低すぎるとワックスを除去できず、温度が高すぎるとワックスがすすになってしまい、電極の純度を劣化させるので、ワックスが溶融する温度以上でかつワックスが分解してすすになる温度以下に加熱温度を保つ必要がある。つぎに、真空炉中の圧粉体を、高周波コイルなどにより加熱し、機械加工に耐えうる強度を与え、かつ硬化しすぎない程度に、たとえば白墨程度の硬度となるまで焼成する。このような焼成を予備焼結という。このとき、炭化物間の接触部においては相互に結合が進むが、焼結温度が比較的低く本焼結にまで至らない温度のため弱い結合となっている。このように予備焼結によって焼成された強度の高い電極で放電表面処理を行なうと、緻密で均質な被膜をワーク表面に形成することができる。
特開平5−148615号公報 特開平8−300227号公報 特開平9−192937号公報 国際公開第99/58744号パンフレット
第3と第4の従来技術に示されるように、圧紛体を焼成して得られる電極を用いた放電表面処理によって緻密な硬質被膜を形成することができる。しかし、このような放電表面処理によって厚膜を形成する場合には、第4の従来技術に開示されているように電極を製造しても電極の特性に大きな差異が現れてしまうという問題点があった。また、緻密な膜を形成することは困難であった。
この差異の原因の一つとして、電極を構成する素材の粉末の粒径の分布の違いが考えられる。これは、製造される電極ごとに粉末の粒径の分布に違いがあると、同じプレス圧で加圧して電極を成形しても、電極ごとに固まり具合が異なるので、最終的な電極の強度に違いが生じるからである。また、上記の電極の特性による差異の原因の他の一つとして、ワークに形成する被膜の材質を変えるために行われる電極の材質(成分)の変更が考えられる。これは、電極の材質を変更した場合、物性値の違いによって電極の強度が、変更前の電極の強度とは異なってしまうからである。
また、放電表面処理によって厚膜を形成する場合には、電極側からの材料の供給と、その供給された材料のワーク表面での溶融およびワーク材料との結合の仕方が被膜性能に最も影響を与えることも知られている。この電極材料の供給に影響を与える一つの指標が、電極の硬さである。たとえば第4の従来技術では、放電表面処理用電極の硬度を、機械加工に耐えうる強度でかつ硬化しすぎない硬さ(たとえば白墨程度の硬度)としている。このような硬度の電極によって、放電による電極材料の供給が抑えられ、供給された材料が十分溶融されるのでワーク表面に硬質セラミックス被膜の形成が可能となる。
さらに、放電表面処理用電極の硬さの指標としていた白墨程度という硬さは、非常に曖昧である。そして、この電極の硬さなどの特性によってワーク表面に形成される厚膜に差が生じてしまうという問題点もあった。電極となる粉末の材質や大きさが変わると、電極の成形条件が異なってしまう。そのため、電極の成形条件を多数変更して、被膜の形成テストを行い、その材質の放電表面処理用電極としての使用に適合する成形条件を決めるというプロセスが、電極の材質ごとに必要であるという問題点があった。すなわち、電極を構成する材質の種類だけ、良好な被膜を形成するための電極の成形条件を求めるテストが必要となり、手間がかかるという問題点があった。その他に、同じ材質の粉末を用いて同じ製造方法により電極を製造しても、季節(温度や湿度)によって粉末の体積が変化してしまうため、上記の材質が変わった場合と同様にそれぞれを実際に加工して被膜を形成させ、その電極を評価しなければならず、労力がかかっていた。
また、これらの従来の放電表面処理は、硬質被膜の形成、それも特に常温に近いところでの硬質被膜の形成に主眼がおかれ、硬質炭化物を主成分とする被膜を形成しているというのが現状であった。この方法では、10μm程度の薄膜しか形成できず、被膜の厚さを数10μm以上には厚くすることができなかった。従来は、炭化物を形成し易い材料の割合が多く含まれており、例えば、Tiなどの材料を電極に含むと、油中での放電により化学反応を起こし、被膜としてはTiCという硬質の炭化物になる。表面処理が進むにつれて、ワーク表面の材質が鋼材(鋼材に処理する場合)からセラミックスであるTiCに変わり、それに伴い、熱伝導や融点などの特性が変化していたからである。
ところが、本発明者らの実験によると、電極材質の成分に、炭化物を形成しないまたは炭化物を形成し難い材料を添加するに従い、被膜を厚くできることがわかってきた。これは、炭化しないまたは炭化し難い材料を電極に加えることで、炭化物にならず金属状態のまま被膜に残る材料が増えることによるものである。そして、この電極材料の選定が、被膜を厚く盛り上げるのに大きな意味を持つことが判明した。この場合でも、形成される被膜が、硬度、緻密性および均一性を有している。しかし、従来の放電表面処理は、上述したようにTiCやWCなどの常温に近いところで硬質性を発揮する被膜の形成に主眼が置かれており、航空機用ガスタービンエンジンのタービンブレードへの用途などの高温環境下で潤滑性を有する緻密で比較的厚い被膜(100μmのオーダー以上の厚膜)の形成に関しては注目されておらず、そのような厚い被膜を形成することができないという問題点があった。
一方、第2の従来技術には、電極を構成する材料となるセラミックス粉末を理論密度の50%〜90%となるように、10t/cmと極めて高い圧力で圧縮成形して仮焼結した電極を用いている。これは、(1)薄い硬質被膜を形成するのが目的であるため、電極を硬くするほど形成される被膜が強くなること、(2)材質の主成分がセラミックスであるため、電極を構成するセラミックス粉末を圧縮成形する際の圧力を高くしてもよいこと、などの理由による。しかし、放電表面処理で緻密な金属の厚膜を形成する場合に、第2の従来技術に示される方法で製造した電極を用いることはできない。これは、金属粉末を第2の従来技術に示されているように10t/cmと極めて高い圧力でプレスすると電極が固まってしまい、放電表面処理による被膜を形成することができず、このような電極で放電表面処理を行うとワークの表面を削る形彫放電加工となってしまうからである。つまり、第2の従来技術では、セラミックス粉末を使用しているので、上記のような高い圧力でプレスして放電表面処理用電極を製造しても問題ないが、その条件を金属粉末からなる放電表面処理用電極にそのまま当てはめることはできず、放電表面処理で緻密な金属の厚膜を形成するための放電表面処理用電極の製造方法については、従来知られていなかった。
この発明は上記に鑑みてなされたもので、放電表面処理方法によって被加工物上に緻密な厚膜を容易に形成することが可能な放電表面処理用電極を得ることを目的とする。
また、放電表面処理において高温環境下で潤滑性を有する厚い被膜を形成することができる放電表面処理用電極を得ることも目的とする
さらに、金属粉末を圧紛体電極として使用する放電表面処理において、面粗さを低下させることなく安定した放電を行わせ、厚い被膜を堆積させることが可能な放電表面処理用電極を得ることも目的とする。
さらにまた、これらの放電表面処理用電極を用いた放電表面処理装置とその方法を得ることも目的とする。
上記目的を達成するために、この発明にかかる放電表面処理用電極は、金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、前記粉末が、5〜10μmの平均粒径を有するとともに、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含み、前記電極が塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの範囲の硬さとなるように成形されることを特徴とする。
つぎの発明にかかる放電表面処理用電極は、金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、前記電極が、平均粒径−圧縮強度片対数相関図における対数目盛で平均粒径0.05μm、1μm、3μmに対してそれぞれ圧縮強度160MPa、100MPa、50MPaの値を直線で結んだ線分以下の圧縮強度であることを特徴とする。
つぎの発明にかかる放電表面処理用電極は、金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギにより、被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、熱伝導率が10W/mK以下であることを特徴とする。
つぎの発明にかかる放電表面処理方法は、金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法において、平均粒径−圧縮強度片対数相関図における対数目盛で平均粒径0.05μm、1μm、3μmに対してそれぞれ圧縮強度160MPa、100MPa、50MPaの値を直線で結んだ線分以下の圧縮強度を有する電極を使用して前記被膜を形成することを特徴とする。
つぎの発明にかかる放電表面処理方法は、金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法において、熱伝導率が10W/mK以下の電極を用いて前記被膜を形成することを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、この発明にかかる放電表面処理装置は、金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体からなる電極と、被膜が形成される被加工物とが加工液中または気中に配置され、前記電極と前記被加工物に電気的に接続される電源装置によって前記電極と前記被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成させる放電表面処理装置において、前記電極は、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含む平均粒径5〜10μmの粉末を、塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの範囲の硬さとなるように成形することを特徴とする。
つぎの発明にかかる放電表面処理装置は、金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体からなる電極と、被膜が形成される被加工物とが加工液中または気中に配置され、前記電極と前記被加工物に電気的に接続される電源装置によって前記電極と前記被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成させる放電表面処理装置において、前記電極は、平均粒径−圧縮強度片対数相関図における対数目盛で平均粒径0.05μm、1μm、3μmに対してそれぞれ圧縮強度160MPa、100MPa、50MPaの値を直線で結んだ線分以下の圧縮強度を有することを特徴とする。
つぎの発明にかかる放電表面処理装置は、金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体からなる電極と、被膜が形成される被加工物とが加工液中または気中に配置され、前記電極と前記被加工物に電気的に接続される電源装置によって前記電極と前記被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成させる放電表面処理装置において、前記電極は、10W/mK以下の熱伝導率を有することを特徴とする。
この発明によれば、粉末の粒径に応じて、放電表面処理用電極の硬さ、その圧縮強度、その体積に占める電極材料体積の割合、またはその熱伝導率を所定の範囲内に収まるように製造し、その電極を用いて放電表面処理を行うようにしたので、ワーク上に厚い緻密な被膜を形成することができる。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる放電表面処理用電極、放電表面処理用電極の製造方法と評価方法、放電表面処理装置および放電表面処理方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
実施の形態1.
最初に、この発明で用いられる放電表面処理方法とその装置の概要について説明する。第1図は、放電表面処理装置における放電表面処理の概略を示す図である。放電表面処理装置1は、被膜14を形成したい被加工物(以下、ワークという)11と、ワーク11の表面に被膜14を形成させるための放電表面処理用電極12と、ワーク11と放電表面処理用電極12に電気的に接続され両者間にアーク放電を起こさせるために両者に電圧を供給する放電表面処理用電源13と、を備えて構成される。放電表面処理を液中で行う場合には、ワーク11と放電表面処理用電極12のワーク11と対向する部分が、油などの加工液15で満たされるように加工槽16がさらに設置される。また、放電表面処理を気中で行う場合には、ワーク11と放電表面処理用電極12とは処理雰囲気中に置かれる。なお、第1図と以下の説明では、加工液中で放電表面処理を行う場合を例示する。また、以下では、放電表面処理用電極を単に電極と表記することもある。さらに、以下では、放電表面処理用電極12とワーク11との対向する面の間の距離のことを極間距離という。
このような構成の放電表面処理装置1における放電表面処理方法について説明する。放電表面処理は、たとえば、被膜14を形成したいワーク11を陽極とし、被膜14の供給元となる金属やセラミックスなどの平均粒径10nm〜数μmの粉末を成形した放電表面処理用電極12を陰極とし、これらの電極を加工液15中で両者が接触しないように図示しない制御機構によって極間距離を制御しながら、両者間に放電を発生させることによって行われる。
放電表面処理用電極12とワーク11との間に放電が発生すると、この放電の熱によりワーク11および電極12の一部は溶融される。ここで、電極12の粒子間結合力が弱い場合には、放電による爆風や静電気力によって溶融した電極12の一部(以下、電極粒子という)21が電極12から引き離され、ワーク11表面に向かって移動する。そして、電極粒子21がワーク11表面に到達すると、再凝固し被膜14となる。また、引き離された電極粒子21の一部が加工液15中や気中の成分22と反応したもの23もワーク11表面で被膜14を形成する。このようにして、ワーク11表面に被膜14が形成される。しかし、電極12の粉末間の結合力が強い場合には、放電による爆風や静電気力では電極12がはぎ取られず、電極材料をワーク11へ供給することができない。すなわち、放電表面処理による厚い被膜の形成の可否は、電極12側からの材料の供給とその供給された材料のワーク11表面での溶融およびワーク11材料との結合の仕方に影響される。そして、この電極材料の供給に影響を与えるのが、電極12の硬さすなわち硬度である。
ここで、放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極12の製造方法の一例について説明する。第2図は、放電表面処理用電極の製造プロセスを示すフローチャートである。最初に、ワーク11に形成したい被膜14の成分を有する金属やセラミックスなどの粉末を粉砕する(ステップS1)。複数の成分から成る場合には、所望の比率となるようにそれぞれの成分の粉末を混合して粉砕する。たとえば、市場に流通している平均粒径数十μmの金属やセラミックスなどの球形粉末を、ボールミル装置などの粉砕機で平均粒径3μm以下に粉砕する。粉砕を液体中で行ってもよいが、この場合には、液体を蒸発させて粉末を乾燥させる(ステップS2)。乾燥後の粉末は、粉末と粉末とが凝集して大きな塊を形成しているので、この大きな塊をバラバラにするとともにつぎの工程で使用するワックスと粉末とを十分に混合させるために、ふるいにかける(ステップS3)。たとえば、凝集した粉末が残っているふるいの網の上にセラミックス球または金属球を乗せて網を振動させると、凝集してできた塊は振動のエネルギや球との衝突によってバラバラとなり、網の目を通過する。この網の目を通過した粉末だけが以下の工程で使用される。
ここで、このステップS3で粉砕した粉末をふるいにかけることについて説明する。放電表面処理において、放電を発生させるために放電表面処理用電極12とワーク11の間に印可される電圧は、通常80V〜400Vの範囲である。この範囲の電圧を電極12とワーク11との間に印可すると、放電表面処理中の電極12とワーク11の間の距離は0.3mm程度となる。上述したように、放電表面処理においては、両極間に生じるアーク放電によって、電極12を構成する凝集した塊はその大きさのまま電極12から離脱する場合もあると推察できる。ここで、塊の大きさが極間距離以下(0.3mm以下)であれば、極間に塊が存在しても、つぎの放電を発生させることができる。また、放電は距離の近い箇所で発生するため、塊のあるところで放電が起こり、放電の熱エネルギや爆発力で塊を細かく砕くことができると考えられる。
しかし、電極12を構成する塊の大きさが極間距離以上(0.3mm以上)あると、放電によってその塊が電極12からそのままの大きさで離脱し、ワーク11上に堆積したり、電極12とワーク11の間の加工液15に満たされた極間を漂ったりする。前者のように大きな塊が堆積すると、放電は電極とワーク11の距離の近いところで発生するため、その部分で放電が集中し、その他の場所で放電を発生できなくなり、被膜14をワーク11表面に均一に堆積できなくなってしまう。また、この大きな塊は、大きすぎて放電の熱によっては完全に溶融することができない。そのため、被膜14は非常に脆く、手で削れるほどのものとなる。また、後者のように大きな塊が極間を漂うと電極12とワーク11の間を短絡させ、放電を発生できなくなる。つまり、被膜14を均一に形成しかつ安定した放電を得るためには、粉末が凝集することによって形成される、極間距離以上の大きさの塊が、電極を構成する粉末に存在してはならない。この粉末の凝集は、金属粉末や導電性セラミックスの場合に起こり易く、非導電性の粉末の場合には起こり難い。また粉末の平均粒径を小さくするほど粉末の凝集は起こり易い。したがって、このような粉末の凝集によって生成される塊による放電表面処理中の弊害を防ぐために、ステップS3での凝集した粉末をふるいにかける工程が必要となる。以上の趣旨から、ふるいを行う際には極間距離よりも小さいサイズの網の目を使用する必要がある。
その後、後の工程でのプレスの際に粉末内部へのプレスの圧力の伝わりを良くする場合には、必要に応じて粉末にパラフィンなどのワックスを重量比1%〜10%程度混入する(ステップS4)。粉末とワックスとを混合すると、成形性を改善することができるが、粉末の周囲が再び液体で覆われることになるので、その分子間力や静電気力の作用によって凝集し、大きな塊を形成してしまう。そこで、再び凝集した塊をバラバラにするためにふるいにかける(ステップS5)。ここでのふるいのかけ方は上述したステップS3での方法と同様である。
ついで、得られた粉末を圧縮プレスで成形する(ステップS6)。第3図は、粉末を成形する際の成形器の状態を模式的に示す断面図である。下パンチ104を金型(ダイ)105に形成されている孔の下部から挿入し、これらの下パンチ104と金型(ダイ)105で形成される空間に上記ステップS5でふるいにかけられた粉末(複数の成分から成る場合には粉末の混合物)101を充填する。その後、上パンチ103を金型(ダイ)105に形成されている孔の上部から挿入する。そして、加圧器などでこのような粉末101が充填された成形器の上パンチ103と下パンチ104の両側から圧力をかけて粉末101を圧縮成形する。以下では、圧縮成形された粉末101を圧粉体という。このとき、プレス圧力を高くすると電極12は硬くなり、低くすると電極12は柔らかくなる。また、電極材料の粉末101の粒径が小さい場合には電極12は硬くなり、粉末101の粒径が大きい場合には電極12は軟らかくなる。
その後、成形器から圧粉体が取り出され、真空炉または窒素雰囲気の炉で加熱する(ステップS7)。加熱の際に、加熱温度を高くすると電極12は硬くなり、加熱温度を低くすると電極12は軟らかくなる。また、加熱することで、電極12の電気抵抗を下げることもできる。そのため、ステップS4でワックスを混入しないで圧縮成形した場合でも加熱することには意味がある。これによって、圧粉体における粉末間の結合が進行し、導電性を有する放電表面処理用電極12が製造される。
なお、上述したステップS1の粉砕工程を省略した場合、すなわち平均粒径数十μmの粉末をそのまま使用した場合や、ステップS3のふるいの工程を省略し0.3mm以上の大きな塊が混在する場合でも、放電表面処理用電極12を成形することができる。ただし、その電極12は、表面の硬度がやや高くなったり、中心部の硬度が低いという硬さのばらつきを持つという問題はある。
また、酸化され難いCoやNi(ニッケル)、これらの合金、または酸化物やセラミックスの平均粒径3μm以下の粉末は市場に流通していることが多いので、このような粉末を用いる場合には、上述したステップS1の粉砕工程とステップS2の乾燥工程を省略することができる。
つぎに、上述した方法によって製造される放電表面処理用電極の具体的な実施の形態について説明する。実施の形態1では、電極を構成する粉末の平均粒径が5〜10μmの場合に、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成し難い材料の割合と、電極の硬さと、その電極によって形成される被膜の厚さとの関係について説明する。
この実施の形態1では、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成し難い材料の成分を変化させた放電表面処理用電極についてその電極の硬さと、放電表面処理方法によって被加工物上に形成される被膜の厚さの変化を試験した結果を以下に示す。試験に用いた放電表面処理用電極のベースとなる材質はCr(炭化クロム)粉末であり、これに炭化物を形成しない材料または炭化物を形成し難い材料としてCo粉末を添加した。添加するCoは体積で0〜80%の間で変化させ、試験される放電表面処理用電極の硬さは後述する所定の硬さとした。なお、電極は、粒径が5μmのCr粉末と粒径が5μmのCo粉末から第2図のフローチャートにしたがって製造したが、ステップS1の粉末の粉砕工程では、粒径が5μmの粉末が得られるような条件で粉砕を行い、ステップS4のワックスとの混合工程では、2〜3重量%のワックスを混合し、ステップS6のプレス工程では、粉末を約100MPaのプレス圧で圧縮成形し、ステップS7の加熱工程では、加熱温度を400℃〜800℃の範囲で変化させた。この加熱温度は、Cr粉末の割合が多いほど高くし、Co粉末の割合が多いほど温度を低くした。これは、Cr粉末の割合が多い場合には製造した電極が脆くなり易く、低い温度で加熱するとすぐに崩れてしまうのに対し、Co粉末の割合が多い場合には加熱温度が低くても電極の強度が強くなり易かったためである。
なお、この明細書で用いられる体積比(体積%)とは、混合されている材料それぞれをその材料の密度で割った値の比率のことをいう。具体的には、材料を複数混合した場合には、それぞれの体積の比率そのものであり、材料が合金の場合には、合金に含まれる材料(金属元素)のそれぞれをそれぞれの密度(比重)で割った値の比率を体積%としている。すなわち、目的とする成分の重量%をその成分の密度で除した値を、放電表面処理用電極に使用されるそれぞれの成分の重量%をその成分の密度で除した値を合計した値で除したものをいう。たとえば、この例のCr粉末とCo粉末の混合物におけるCo粉末の体積比(体積%)は、次式で表される。
Figure 0004563318
この式より、合金として混合する材料の元々の比重が近い材料であれば、重量%とほぼ同じになるのはいうまでない。
ここで、この実施の形態1での放電表面処理時における放電パルス条件について説明する。第4A図と第4B図は、放電表面処理時における放電のパルス条件の一例を示す図であり、第4A図は、放電時の放電表面処理用電極とワークの間にかかる電圧波形を示し、第4B図は、放電時に放電表面処理装置に流れる電流の電流波形を示している。第4A図に示されるように時刻tで両極間に無負荷電圧uiがかけられるが、放電遅れ時間td経過後の時刻tに両極間に電流が流れ始め、放電が始まる。このときの電圧が放電電圧ueであり、このとき流れる電流がピーク電流値ieである。そして時刻t2で両極間への電圧の供給が停止されると、電流は流れなくなる。すなわち、放電が停止する。ここで、t−tをパルス幅teという。この時刻t〜tにおける電圧波形を、休止時間toをおいて繰り返して両極間に印加する。つまり、この第4A図に示されるように、放電表面処理用電極12とワーク11との間に、パルス状の電圧を印加する。この例では、放電表面処理時において使用した放電のパルス条件は、ピーク電流値ie=10A、放電持続時間(放電パルス幅)te=64μs、休止時間to=128μsとした。また、試験では、15mm×15mmの面積の電極を用いて、ワーク11に対して放電表面処理を15分間行った。
第5図は、炭化物であるCr粉末に炭化物を形成し難いCo粉末量を変化させて製造した放電表面処理用電極におけるCo量の変化による被膜厚さの関係を示す図である。この第5図において、横軸は放電表面処理用電極に含まれるCoの体積%を示しており、縦軸は被加工物に形成される被膜の厚さ(μm)を対数メモリで示している。
上記の放電パルス条件に基づいて被膜を形成した場合、製造された電極内に含有されるCoの体積%によってワーク上に形成される被膜の厚さが異なっている。第5図によれば、Co含有量が10体積%以下の場合には10μm程の膜厚であったものが、Co含有量が30体積%程度から次第に厚くなり、Co含有量が40体積%を過ぎたころから10,000μm近くにまで厚くなることを示している。
このことについてさらに詳細に検討する。上記のような条件に基づいてワーク上に被膜を形成した場合、電極内のCo含有量が0体積%の場合、すなわちCr粉末が100体積%の場合には、形成できる被膜の厚さは10μm程度が限界であり、それ以上厚みを増すことはできない。
第6図は、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成し難い材料が放電表面処理用電極に含まれない場合の処理時間に対する被膜の形成の様子を示す図である。この第6図において、横軸は単位面積あたりの放電表面処理を行う処理時間(分/cm)を、縦軸は放電表面加工処理を行う前のワークの表面の位置を基準としたときの被膜の厚さ(ワークの表面位置)(μm)を示している。この第6図に示されるように、放電表面処理の初期の段階では、被膜が時間と共に成長して厚くなるが、あるところ(約5分/cm)で飽和する。その後しばらくは被膜の厚さは成長しないが、ある時間(約20分/cm)以上、放電表面処理を続けると被膜の厚さが減少しはじめ、最後には被膜の厚さはマイナスとなり、掘り込みすなわち除去加工に変わってしまう。しかし、除去加工に変わった状態においても、実際には、ワーク上の被膜は存在しており、10μm程度の厚さを有している。すなわち、被膜の厚さは適切な時間(処理時間が5〜20分/cmの間)で処理した状態とほとんど変わっていない。このような結果から、5〜20分の間での処理時間が適切と考えられる。
第5図に戻り、電極内に炭化物を形成し難い材料であるCo量を増やすにしたがい被膜を厚くできるようになり、電極中におけるCo含有量が30体積%を超えると形成される被膜の厚さが厚くなり始め、40体積%を超えると安定して厚膜が形成し易くなる。第6図では、Co含有量が30体積%程度から滑らかに膜厚が上昇するように記載しているが、これは、複数回の試験を行なった平均値であり、実際には、Co含有量が30体積%程度の場合には、被膜が厚く盛り上がらない場合があったり、厚く盛りあがった場合でも被膜の強度が弱い、すなわち金属片などで強く擦ると除去されてしまう場合があったりして、安定しなかった。したがって、好ましくはCo含有量が40体積%以上であるとよい。
このように被膜中に金属として残る材料を多くすることにより、炭化物になっていない金属成分を含む被膜を形成することができ、安定して厚膜を形成し易くできる。
第7図は、Co含有量が70体積%の電極を用いて放電表面処理を行った場合に形成された被膜の写真を示す。この写真は、厚膜の形成を例示するものであり、2mm程度の厚膜が形成されている場合を示している。この被膜は15分の処理時間で形成されたものであるが、処理時間を増せばさらに厚い被膜を形成することができる。
このようにして、電極内にCo等の炭化物を形成し難い材料または炭化物を形成しない材料を40体積%以上含有する電極を用いることによって、放電表面処理によりワーク表面に安定して厚い被膜を形成することができる。
上術した例では、炭化物を形成し難い材料としてCoを用いた場合を説明したが、Ni,Fe(鉄),Al(アルミニウム),Cu(銅),Zn(亜鉛)などでも同様の結果を得ることができた。
なお、ここでいう厚膜とは、組織の内部(パルス状の放電により形成する被膜であるため、最表面は面粗さが悪く一見光沢がないように見える)が金属光沢を持つような緻密な被膜のことをいう。たとえばCoのような炭化物を形成し難い材料の含有量が少ない場合でも、電極の強度(硬さ)を弱くするとワーク上の付着物は盛り上がることがある。しかし、この付着物は緻密な被膜ではなく、金属片などで擦ると容易に除去できるようなものであり、このような被膜はこの発明では厚膜とはいわない。同様に、上述の特許文献1などに記載されている堆積層は、このような緻密ではない被膜であり、金属片などで擦ると容易に除去できるものであるので、このような被膜もこの発明における厚膜とはいわない。
また、上記の説明においては、Cr粉末およびCo粉末を圧縮成形した後に加熱して電極を製造した場合について説明したが、圧縮成形した圧粉体をそのまま電極として使用してよい場合もある。しかし、緻密な厚膜を形成するためには、電極の硬さが硬すぎても軟らかすぎてもよくなく、適切な硬さが必要であるので、一般的には、加熱処理が必要である。圧粉体を加熱することは成形の維持や固形化につながる。
この電極の硬さは、電極材料の粉末の結合の強さに相関があり、放電による電極材料のワーク側への供給量に関係している。電極の硬さが高い場合には、電極材料の結合が強いため、放電が発生しても少量の電極材料しか放出されず、十分な被膜形成を行えない。逆に、電極の硬さが低い場合には、電極材料の結合が弱いため、放電が発生すると大量の材料が供給され、この量が多すぎる場合には、これらの材料を十分に放電パルスのエネルギで溶融させることができず、緻密な被膜を形成できなくなる。
同じ原料で同じ粒径の粉末を使用した場合、電極の硬さ、すなわち電極の材料の結合状態に影響をあたえるパラメータが、プレス圧と加熱温度である。この実施の形態1では、プレス圧の例として約100MPaを使用したが、このプレスをさらに上げると加熱温度を低くしても同じような硬さが得られる。逆に、プレス圧を低くすると、加熱温度を高めに設定する必要がある。
また、この実施の形態1では、放電表面処理時の放電パルス条件の例として1つの条件での試験結果を示したが、被膜の厚さなど異なるが、他の条件でも、同様の結果が得られることはいうまでない。
以上のように、厚膜を形成するためには材料的な条件が重要であることがわかるが、放電表面処理、特に厚膜形成の場合には他の条件も極めて重要であることがわかってきた。通常、放電表面処理用電極は、上述した第2図のフローチャートにしたがって、粉末材料を圧縮成形し、加熱して電極を製造する。その際、一般的には、圧縮成形の際のプレス圧と加熱処理の際の加熱温度により電極の状態を決めることが多い。すなわち、従来では電極の状態の管理はプレス圧と加熱温度などの所定の条件で成形した電極を使用して被膜形成を行ない、その状態によって判断していた。しかし、この方法では、電極の状態の管理のために被膜を形成しなければならず、手間がかかっていた。そこで、発明者らは電極の状態を管理する方法として(1)電極の電気抵抗、(2)電極の折り曲げ試験および(3)電極の硬さ試験の方法について検討した。
まず、(1)の電気抵抗は、放電表面処理用電極を所定の形状に切り出し、電気抵抗を測定する方法である。電気抵抗は、放電表面処理用電極がしっかり固まっているほど小さくなる傾向があり、放電表面処理用電極の強度のよい指標にはなるが、測定にばらつきが出易いこと、材料の物性値の影響を受けるため異なった材料の場合には異なった値となるので、異なる材料ごとに最適な状態の場合の値を把握しなければならないこと、などの問題点がある。
つぎに、(2)の折り曲げ試験は、放電表面処理用電極を所定の形状に切り出して、三点曲げ試験を行い、曲げに対する抵抗力を測定する方法である。この方法は、測定にばらつきが出易いこと、測定にコストがかかること、などの問題点がある。
そして、最後の(3)の硬さ試験は、放電表面処理用電極に圧子を押し付けてその圧痕の形状によって硬さを測定する方法や鉛筆などの測定子で放電表面処理用電極を引っかいて傷がつくかどうかで判断する方法などがある。
これら3つの方法は互いに強い相関を持つものであるが、測定の簡易性などの理由から(3)の鉛筆などの測定子による硬さ試験によって放電表面処理用電極の状態を判断する方法が最も適していることがわかった。そこで、電極の硬さとその電極により形成される被膜の性質の関係について以下に説明する。なお、以下に電極の硬さの基準として使用する指標は、電極を構成する粉末の粒径が大きく電極が軟らかい場合には、JIS K 5600−5−4にある塗膜用鉛筆引かき試験を、電極を構成する粉末の粒径が小さく電極が硬い場合には、ロックウェル硬さを用いた。上述のJIS K 5600−5−4の規格は本来塗装被膜の評価に使用されているものであるが、硬さの低い材料の評価には大変に都合がよい。もちろん、他の硬さ評価方法の結果とこの塗膜用鉛筆引かき試験の結果は換算できるものであり、他の硬さ評価方法を指標として用いてよいことは当然である。
上述したように厚膜を形成するためには材料的な条件が重要であるが、実験によって、厚膜形成の場合には他の条件、特に電極の硬さも極めて重要である。放電表面処理による厚膜の形成と放電表面処理用電極の硬さとの間の関係について、例としてCr30%−Co70%の体積比で製造された放電表面処理用電極の場合を例に挙げて説明する。第8図は、Cr30%−Co70%の体積比の放電表面処理用電極の硬さを変化させた場合の厚膜形成の状態を示す図である。この第8図において、横軸は硬さの評価に用いた塗膜用鉛筆の硬さによって測定された放電表面処理用電極の硬さを示し、左に向かうほど硬くなり右に向かうほど柔らかくなる。縦軸は放電表面処理用電極によって形成された被膜の厚さの評価状態である。この評価試験を行う際の放電表面処理時において使用された放電のパルス条件は、ピーク電流値ie=10A、放電持続時間(放電パルス時間)te=64μs、休止時間to=128μsである。また、評価試験では、15mm×15mmの面積の電極で被膜を形成した。
この第8図に示されるように、放電表面処理用電極の硬さが4B〜7B程度の硬さの場合に被膜の状態が非常に良好であり、緻密な厚膜が形成された。また、放電表面処理用電極の硬さがB〜4Bの間でも良好な厚膜が形成される。しかし、この範囲では、硬くなるにしたがって被膜の形成速度が遅くなる傾向があり、B程度の硬さでは厚膜の形成がかなり難しくなってしまう。さらにBよりも硬くなると厚膜の形成は不可能となり、放電表面処理用電極の硬さが硬くなるにしたがって工作物(ワーク)を除去しながら加工するようになってしまう。
一方、放電表面処理用電極の硬さが8B程度の硬さでも良好な厚膜を形成することができるが、組織の分析を行うと被膜中に空孔が徐々に増えていく傾向にある。さらに放電表面処理用電極の硬さが9B程度よりも柔らかくなると、電極成分が十分に溶融しないままに工作物に付着するような現象が見られ、被膜が緻密でなくポーラスなものとなってしまう。なお、上述した放電表面処理用電極の硬さと被膜の状態との間の関係は、使用する放電パルス条件によっても多少変化し、適切な放電パルス条件を使用した場合にはある程度良好な被膜を形成することができる範囲を拡大することもできる。以上のような傾向は、電極を構成する材料によらず、平均粒径が5〜10μmの大きさの粉末から製造される電極について確認された。
この実施の形態1によれば、粒径が5〜10μmの粉末で、放電表面処理用電極を構成する材料にCo,Ni,Fe,Al,Cu,Znなどの炭化物を形成しない材料または炭化物を形成し難い材料を40体積%以上添加し、塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの間、より好ましくは4B〜7Bの間の硬さになるように放電表面処理用電極を製造し、この放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行うことによって、ワーク上に厚膜を安定して形成することができるという効果を有する。また、この放電表面処理用電極を用いることによって、溶接や溶射の作業を代替することが可能となり、従来では溶射や溶接で行っていた作業をライン化することが可能となる。
実施の形態2.
放電表面処理において、放電により電極から電極材料が放出されるか否かは、電極を構成している粉末の結合強度による。つまり、結合強度が強ければ粉末は放電のエネルギにより放出され難くなり、弱ければ放出され易くなる。また、この結合強度は電極を構成する粉末の大きさにより異なる。たとえば、電極を構成する粉末の粒径が大きい場合には、電極中での粉末が互いに結合している点の数が少なくなるため、電極強度は弱くなるが、電極を構成する粉末の粒径が小さい場合には、電極中での粉末が互いに結合している点の数が多くなるため、電極強度は強くなる。したがって、放電により電極から電極材料が放出されるか否かは粉末の粒径の大きさによって異なる。上述した実施の形態1では、粒径が5〜10μm程度の粉末を使用した場合に、塗膜用鉛筆引かき試験による硬さでB〜8Bの硬さが最適値となったが、この実施の形態2では、粒径が1〜5μmの場合の電極の硬さと被膜の厚さについて説明する。
ここでは、Co,Cr,Niなどの成分を所定の比率で含む合金粉末を、例えばアトマイズ法やミルなどにより(粒径が3μm程度となるように)粉砕、混合して、実施の形態1の第2図のフローチャートにしたがって放電表面処理用電極を製造する場合を例に挙げる。ただし、ステップS4のワックスとの混合工程では、2〜3重量%のワックスを混合し、ステップS6のプレス工程では、電極を作製する際の粉末を約100MPaのプレス圧で圧縮成形し、ステップS7の加熱工程では、加熱温度を600℃〜800℃の範囲で変化させた。なお、この電極の製造において、ステップS7の加熱工程を省略し、混合粉末を圧縮成形して得られた圧粉体を電極として用いてもよい。また、上記の合金粉末の組成は、Cr20重量%、Ni10重量%、W(タングステン)15重量%、Co55重量%であり、この場合のCoの体積%は40%以上である。
製造した電極を用いて放電表面処理を行う際の放電のパルス条件は、第4A図と第4B図において、ピーク電流値ie=10A、放電持続時間(放電パルス幅)te=64μs、休止時間to=128μsとした。また、15mm×15mmの面積の電極で被膜を形成した。その結果、電極材料は粉末から構成されているが、合金を粉末化したものを使用しているので材質が均一でばらつきがないので、成分にばらつきのない良質の被膜を形成することができた。
もちろん、所定の組成となるように秤量した各材料の粉末(ここでは、Cr粉末、Ni粉末、W粉末、Co粉末)を混合して電極を製造する場合でも同様の電極を製造することは可能である。ただし、粉末の混合のばらつきが生じるなどの問題はあるので、若干性能が低下するのはやむをえない。
上記の説明では、Cr20重量%、Ni10重量%、W15重量%、残りがCoの比率の合金を粉末化した材料を使用したが、粉末化する合金の組成はこれに限られるものではなく、例えばCr25重量%、Ni10重量%、W7重量%、残りがCoの比率の合金や、Mo28重量%、Cr17重量%、Si(シリコン)3重量%、残りがCoの比率の合金、Cr15重量%、Fe8重量%、残りがNiの比率の合金、Cr21重量%、Mo9重量%、Ta(タンタル)4重量%、残りがNiの比率の合金、Cr19重量%、Ni53重量%、Mo3重量%、(Cd(カドミウム)+Ta)5重量%、Ti0.8重量%、Al0.6重量%、残りがFeの比率の合金などの、炭化物を形成し難い元素であるCo,Ni,Fe,Al,Cu,Znを体積%で40%以上含むものであればよい。
ただし、合金の合金比率が異なると材料の硬さなどの性質が異なるため、電極の成形性や被膜の状態に多少の差異が生じる。たとえば、電極材料の硬さが硬い場合には、プレスによる粉末の成形が困難になる。また、加熱処理により電極の強度を増す場合にも加熱温度を高めにするなどの工夫が必要である。例を挙げると、Cr25重量%、Ni10重量%、W7重量%、残りがCoの比率の合金は比較的軟らかく、Mo28重量%、Cr17重量%、Si3重量%、残りがCoの比率の合金は比較的硬い材料であるが、電極に必要な硬さを与えるための電極の加熱処理において、前者よりも後者の方が平均して100℃前後高めに加熱温度を設定する必要がある。
また、厚膜の形成のし易さは、実施の形態1に示したように、被膜の中に含まれる金属の量が多くなるにしたがって容易になる。電極の成分である合金粉末に含まれる材料としては、炭化物を形成し難い材料であるCo,Ni,Fe,Al,Cu,Znが多いほど緻密な厚膜を形成し易くなる。
種々の合金粉末で試験を実施したところ、実施の形態1と同様に電極中における炭化物を形成し難い材料または炭化物を形成しない材料の含有率が40体積%を超えると安定して厚膜が形成し易くなることが判明した。そして、電極中におけるCoの含有量が50体積%をこえると十分な厚みの厚膜を形成できるためより好ましいことが判明した。
また、炭化物を形成し難い材料であるCo,Ni,Fe,Al,Cu,Zn以外に合金の成分として混合される材料が炭化物を形成する材料であっても、その含まれる材料中で相対的に炭化物を形成し難い材料である場合には、被膜中にはCo,Ni,Fe,Al,Cu,Zn以外の金属成分が含まれることになり、Co,Ni,Fe,Al,Cu,Znの比率は、さらに少なくとも緻密な厚膜を形成することができる。
また、CrとCoの2元素からなる合金の場合には、電極中におけるCoの含有量が20体積%を超えるころから厚膜が形成し易くなることが判明した。Crは炭化物を形成する材料であるが、Tiなどの活性な材料と比べると炭化物を形成し難い材料である。すなわち、Crの場合には、炭化し易い材料ではあるが、Tiのような材料に比べると炭化し易さは低く、電極中にCrが含まれている場合には、その一部が炭化物になり、一部は金属のCrのまま被膜となるということになる。以上の結果から考察すると、被膜中に金属として残る材料の割合が体積で30%程度以上存在することが緻密な厚膜を形成するための必要であると考えられる。
粒径1〜5μmの粉末から製造された電極を用いて被膜を形成した場合の電極の硬さと被膜の厚さとの関係を調べた結果を以下に示す。なお、粒径が6μm程度の大きさの粉末で電極を製造した場合には、上述したJIS K 5600−5−4に規定されている塗膜用鉛筆引かき試験を用いることができるが、粒径がそれよりも小さい粉末で電極を製造した場合にはこの試験では対応できなくなる。そこで、この例では、1/4インチの鋼球を15kgfで押し付けたときの押し込み距離h(μm)から求められる硬さH=100−1000×hという硬さの指標を用いた。
その結果、電極の硬さが25〜35程度の硬さの場合が最も被膜の状態がよく、緻密な厚膜が形成できた。ただし、その範囲を多少外れても厚膜の形成が可能な範囲はあり、硬い方向では50程度の硬さまでは厚膜ができ、軟らかい方向では、20程度までは厚膜の形成はできる。しかし、硬くなるに従い被膜の形成速度は遅くなる傾向があり、50程度の硬さでは、厚膜の形成はかなり難しくなる。さらに硬くなると厚膜の形成はできなくなり、硬くなるに従い工作物側を除去加工するようになる。また、軟らかい方向では、20程度までの硬さでは厚膜の形成はできるが、未溶融の材料が増える傾向にあり、20程度より電極が軟らかくなると電極成分が十分溶融しないままに工作物側に付着するような現象が見られるようになる。なお、この電極硬さと被膜の状態の関係は、使用する放電パルス条件によっても多少変化し、適切な放電パルス条件を使用した場合にはある程度良好な被膜を形成できる範囲を拡大することもできる。
なお、この実施の形態2のように粉末の粒径が3μm程度(1μm〜5μm程度)になると、放電表面処理に適切な電極の硬さも高くなり、実施の形態1に示したようなJIS K 5600−5−4にある塗膜用鉛筆引かき試験では、測定が困難になってくる。そのため、ここでは、ロックウェル硬さ試験を使用した。ロックウェル硬さ試験は、球を所定の荷重で押しつけ、その圧痕の形状から硬さを求めるものである。荷重は高すぎると電極の破損につながるため、適度な強さにする必要がある。硬さ試験には、他にもビッカース硬さ試験などあり、電極の硬さの測定はもちろんできるが、この場合には圧痕の端部が崩れるなど見難いという問題があり、圧子形状は球の方がより望ましいといえる。
この実施の形態2によれば、炭化物を形成しない材料または形成し難い材料を40体積%以上含み、電極を構成する粉末の平均粒径を1〜5μmとした粉末から、硬さを20〜50となるように放電表面処理用電極を製造し、この電極を用いて放電表面処理を行うことによって、ワーク表面に緻密で厚い被膜を形成することができる。
実施の形態3.
実施の形態2と同じ材料の粉末を平均1μmにして電極を製造した。同一の材料であるにもかかわらず、粉末粒径を小さくすることで、放電表面処理に適切な電極硬さをさらに増すことができた。この場合にも、炭化物を形成しない材料または形成し難い材料が40体積%以上含むと安定して厚膜が形成し易くなった。
この場合、電極の硬さが30〜50程度の硬さの場合が最も被膜の状態がよく、緻密な厚膜が形成できた。ただし、その範囲を多少外れても厚膜の形成が可能な範囲はあり、硬い方向では60程度の硬さまでは厚膜ができ、軟らかい方向では、25程度までは厚膜の形成はできる。しかし、硬くなるに従い被膜の形成速度は遅くなる傾向があり、60程度の硬さでは、厚膜の形成はかなり難しくなる。さらに硬くなると厚膜の形成はできなくなり、硬くなるに従い工作物側を除去する除去加工となる。また、軟らかい方向では、25程度までの硬さでは厚膜の形成はできるが、未溶融の材料が増える傾向にあり、25程度より電極が軟らかくなると電極成分が十分溶融しないままに工作物側に付着するような現象が見られるようになる。なお、この電極硬さと被膜の状態の関係は、使用する放電パルス条件によっても多少変化し、適切な放電パルス条件を使用した場合にはある程度良好な被膜を形成できる範囲を拡大することもできる。また、平均粒径が1μm以下の粉末から製造した電極に関して、同様の結果が得られた。
この実施の形態3によれば、炭化物を形成しない材料または形成し難い材料を40体積%以上含み、電極を構成する粉末の平均粒径を1μm以下とした粉末から、硬さを25〜60となるように放電表面処理用電極を製造し、この電極を用いて放電表面処理を行うことによって、ワーク表面に緻密で厚い被膜を形成することができる。
実施の形態4.
この実施の形態4では、放電表面処理方法によってワークに形成する被膜を厚くすることが可能な放電表面処理用電極について説明する。
最初に、放電表面処理用電極を構成する粒径の大きさによる硬度の変化について説明する。第2図のフローチャートのステップS6のプレス工程で、粉末をプレス成形する際、プレス面や金型面に接した粉末から電極の内部に向かって圧力が伝わり、その際に、粉末はわずかに動く。このとき、粉末の平均粒径が数十μmほどの大きさである場合には、粉末と粉末の間に形成される空間が大きくなり、プレス面や金型面に接した(電極の表面の)粉末が、その空間を埋めるように動き、電極の表面に存在する粒子密度が増加し、その部分の摩擦が増大する。つまり、プレス圧力に対する反作用力を電極表面だけで保持できるようになり、電極内部へは圧力が伝わらなくなる。これが原因で電極に硬さの分布が形成される。
このような硬さの分布を有する放電表面処理用電極を用いて処理を行うと、以下の二つのいずれかの状態になる。1つ目は、電極の外周部が最適な硬さで、内部が柔らかすぎる場合である。この場合には、電極の外周部ではワーク上に被膜を堆積できるが、その内部ではワーク上に被膜を形成できないかぼろぼろの被膜を形成する。2つ目は、電極の外周部が硬すぎ、内部が柔らかい場合である。この場合には、外周部では放電表面処理中に電極が消耗されないため、除去加工となるが、その内部ではワーク上にぼろぼろの被膜を形成する。また、ワーク表面の除去加工となってしまうほどに電極外周部が硬い場合には、電極の内部は消耗されるが、外周部が消耗されないため、電極の放電する側の面は、外周部が突出した形状となり、外周部で多数の放電が発生するようになる。このようになると、放電集中を起こし易く、放電が不安定になる。これらはいずれも放電表面処理において望ましくない。
そこで、粒径の小さい粉末を用いて製造した放電表面処理用電極の硬さと被膜の形成について試験を行った。ここでは、平均粒径1.2μmの合金粉末のみを用いて、50mm×11mm×5.5mmの形状の放電表面処理用電極を、第2図に示される手順で製造した。このときに用いられた合金粉末は、Cr25wt%,Ni10wt%,W7wt%,C0.5wt%、残りがCoの比率の合金である。また、この組成の合金粉末の他にMo28wt%,Cr17wt%,Si3wt%、残りがCoの比率の合金、またはCr28wt%,Ni5wt%,W19wt%、残りがCoの比率の合金などを使用してもよい。なお、第2図のステップS6のプレス工程において、67MPaの圧力で粉末を圧縮成形し、また、異なる硬さを有する電極を得るために、ステップS7の加熱工程において、730℃および750℃の各温度で、圧紛体を真空炉で一時間加熱した。
最初に、加熱温度を変えて製造したそれぞれの電極の硬さについて調べた。なお、この実施の形態4では、電極の硬さとして電極の圧縮強度を用いた。第9図は、電極の圧縮強度を測定する実験装置の概要を示す写真である。第9図の実験装置では、毎秒1Nの割合で電極に負荷する力を増加させ、電極(Electrode)に負荷した力を電極上部のロードセル(Load Cell)で測定する。ある力になると電極表面に亀裂が入り、負荷していた力が開放されるので、その亀裂が入る直前の力から電極の圧縮強度を算出した。その結果、730℃で加熱した電極の圧縮強度は100MPaであり、750℃で加熱した電極の圧縮強度は180MPaであった。
つぎに、合金粉末から製造された電極の圧縮強度と被膜厚さの関係について説明する。このときの放電表面処理条件は、ピーク電流値を10Aとし、放電持続時間(放電パルス幅)を4μsとした。
第11図は、上記条件で放電表面処理を行ったときの電極の圧縮強度と被膜厚さとの関係を示す図である。この第11図において、横軸は放電表面処理用電極の圧縮強度(MPa)を示し、縦軸は横軸に示される圧縮強度を有する放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行った場合にワーク表面に形成される被膜厚さ(mm)を示している。また、縦軸の被膜厚さ0mmより小さい値は、被膜が形成されず、ワーク表面を削る除去加工を表している。この図にも示されるように、放電表面処理用電極の圧縮強度が100MPaの場合には、ワーク表面上に堆積加工を行うことができるが、圧縮強度が180MPaの場合ではワーク表面の除去加工になってしまう。特に、厚さ0.2mm以上の厚い被膜をワーク上に形成するためには、電極の圧縮強度が100MPa以下である必要がある。なお、電流のピークや放電時間が大きくなると、電極から供給される電極粉末の量が大きくなるだけで、電極から電極粉末をはぎ取る力は増加しないため、その他の加工条件でも第11図と同様な結果となった。
粉末を圧縮成形して製造される放電表面処理用電極の圧縮強度は、単位体積あたりに含まれる粒子と粒子の結合の数で決まる。平均粒径が大きくなると単位体積に含まれる粒子と粒子の結合の数が減るため、圧縮強度は下がる。つまり、平均粒径が同じであれば、圧縮強度を厚い被膜を形成可能なある値以下にすれば、どの材質でも厚い被膜を形成することができることを意味している。たとえば、この電極硬度に関して考察すると、平均粒径約1μmの合金粉末の圧紛体電極による放電表面処理においては、適正な被膜形成のための電極評価の一指針として圧縮強度が100MPa以下となるように管理することが重要であることが見出されたが、この厚い被膜を形成できる電極評価の一指針である圧縮強度は、平均粒径が同じであれば材質が変わっても変わらない。ただし、材質を変えた場合には、電極製造のための加熱温度やプレス圧力などの成形条件は変更しなければならない。
以上で説明したように、放電表面処理による厚い被膜の形成の可否を左右する主要因の一つが、電極の硬度であることが確認される。すなわち、平均粒径が約1μmの粉末を用いた場合、圧縮成形のときの圧力または加熱温度を変更して、圧縮強度が100MPa以下となるように製造した放電表面処理用電極で放電表面処理を行えば、ワーク表面に厚い被膜を形成することができる。放電によって発生する力は、電極粉末を引き離そうとするように作用し、この力の及ぶ範囲は、φ数十μm〜φ数mmである。つまり、このオーダの大きさで電極の強度を知る必要があるが、そのためには、電極のマクロな硬さを把握することができる圧縮強度が最適である。
さらに電極の粉末の粒径が小さくなる場合には、同じプレス圧力、同じ加熱温度で電極を製造しても、単位体積あたりの粒子数が増え、一つの粒子がその周囲の粒子と結合する面の数は変化しないが、単位体積に含まれる総結合面数が増加するため、電極が硬くなる。
近年、粉末の成形技術が進み、10nm〜100nmの平均粒径を持つ金属粉末やセラミックス粉末の製造が可能となった。そこで、平均粒径50nmのNi粉末を用いて放電表面処理用電極を製造した場合についての圧縮強度と被膜厚さとの関係について実験した。なお、平均粒径がナノオーダの粉末を用いて電極を製造する場合では、プレスのみで十分な強度を有する電極が得られるため、第2図のステップS7の加熱工程を省略してもよく、この例では加熱工程を省略している。また、製造した電極での放電表面処理における放電のパルス条件は、上述の第10図に示されるものと同じ条件で行った。実験の結果、圧縮強度が160MPaより小さい場合には、ワーク表面に堆積加工を行うことができるが、それ以上の圧縮強度の場合には、ワーク表面の除去加工になってしまうことが確認された。
ここで、平均粒径50nmのNi粉末の電極硬度に関して考察すると、Ni粉末の圧紛体電極による放電表面処理においては、適正な被膜形成のための電極評価の一指針として、圧縮強度が160MPa以下となるように管理することが重要であることが見出された。
上述したように、粉末を圧縮成形して製造される電極の圧縮強度は、単位体積あたりに含まれる粒子と粒子の結合の数で決まる。平均粒径が小さくなると単位体積に含まれる粒子と粒子の結合の数が増加するため、圧縮強度は上がる。また、上述したように、平均粒径50nmのNi粉末の圧紛体電極による放電表面処理においては、適正な被膜形成のための電極評価の一指針として、圧縮強度が160MPa以下となるように管理することが重要であることが見出された。このことは、平均粒径が1.2μmの場合の結果と合わせて考察すると、平均粒径に応じて厚い被膜を形成できる電極の圧縮強度が異なることを意味している。また、適正な被膜形成のための電極評価の一指針としての圧縮強度の値は、平均粒径が同じであれば、電極材料の材質によらない。これによって、平均粒径が小さい粉末からなる放電表面処理用電極が、厚い被膜を堆積できるか否かを見きわめる際には、その圧縮強度を大きくしてもよい。
さらにその他の電極材料として、平均粒径3μmのCo粉末を用い、同様の実験を行ったところ、被膜を堆積できる限界の電極の圧縮強度は、50MPa程度であることが確かめられた。この場合にも、放電表面処理による厚い被膜の形成の可否を左右する主要因の一つが、電極の硬度であることが確認された。すなわち、平均粒径3μmの粉末を用い、圧縮成形のときの圧力または加熱温度を変更し、圧縮強度が50MPa以下となる電極を製造し、その電極で放電表面処理を行えば、ワーク表面に厚い被膜を形成できることが確認された。
この場合にも、粉末を圧縮成形して製造される電極の圧縮強度は、単位体積あたりに含まれる粒子と粒子の結合の数で決まるため、適正な被膜形成のための電極評価の一指針としての圧縮強度の値は、平均粒径が同じであれば、電極材料の材質によらない。これによって、平均粒径が大きい粉末からなる放電表面処理用電極が、厚い被膜を堆積できるか否かを見きわめる際には、その圧縮強度を小さ目にする必要がある。
第11図は、平均粒径と厚い被膜の堆積が可能な電極の圧縮強度との関係を示す図である。この第11図において、横軸は放電表面処理用電極を構成する粉末の平均粒径(μm)を対数メモリで示しており、縦軸はワーク表面に被膜を形成することができる電極の圧縮強度である堆積限界圧縮強度(MPa)を示している。この図に示されるように、平均粒径が小さくなるほど堆積限界圧縮強度が増加する。
この実施の形態4によれば、平均粒径が1μmの粉末を原料とし、圧縮強度が100MPa以下となるように製造された放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行うことによって、ワーク上に高温環境下で潤滑性を有する緻密な厚膜を形成することができる。また、平均粒径が50nmの粉末の場合には、圧縮強度を160MPa以下となるように、また、平均粒径が3μmの粉末の場合には、圧縮強度が50MPa以下となるように、放電表面処理用電極を製造し、その放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行うことによって、ワーク上に高温環境下で潤滑性を有する緻密な厚膜を形成することができる。
さらに、この実施の形態4によれば、製造された放電表面処理用電極が放電表面処理に用いられる際に、ワーク上に厚い被膜を堆積できるか否かをその圧縮強度を用いて評価することができる。これによって、放電表面処理用電極が同じ条件で一度に大量に製造される場合の電極の評価方法へ適用することも可能である。具体的には、同じ条件で一度に大量に製造される電極の中から抽出される一個または数個の電極の圧縮強度の測定結果を、同時に製造された電極の評価とするものである。これによって、電極が大量生産される場合でもすべての電極の品質を管理することが可能となる。
実施の形態5.
この実施の形態5では、金属粉末を圧紛体電極として使用する放電表面処理において、面粗さを低下させることなく安定した放電を行わせ、厚い被膜を堆積させることが可能な放電表面処理用電極について説明する。
実施の形態1〜3で説明したように、放電表面処理によってワーク表面に厚膜を形成するためには、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成し難い材料を電極材質の成分に添加するという材料的な条件が重要である。しかし、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成し難い材料を単に電極に加えるだけでは、ワーク表面に形成された厚膜に空孔が残ってしまい、緻密な被膜の形成は困難であるという問題点があった。そこで、この実施の形態5では、厚膜でかつ緻密な被膜を形成するために必要な技術について説明する。
ここでは、Cr30%,Ni3%,Mo2%,W5%,Fe3%などを含んだCoベースの合金(以下、単にCo合金という)を例に挙げて説明する。このCo合金粉末は、市販されているものを使用した。なお、Co合金としては、Cr25%,Ni10%,W7%などを含んだCoベースの合金や、Cr20%,Ni10%,W15%などを含んだCoベースの合金などの、Coをベースとして含むものであればよい。
平均粒径3μm程度のCo合金粉末から、上述した第2図の工程に従って放電表面処理用電極を製造した。このときのステップS6におけるプレス工程でのプレス圧は93〜280MPa程度がよい。これ以上強くなると粉末がつぶれて電極の硬さにばらつきが生じたり、プレスの際に電極にエア割れが発生したりするからである。
以上のように製造されたCo合金粉末からなる放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行なうと、ワーク表面にCo合金の被膜が形成される。しかし、発明者らの実験により、被膜の性能が、電極中に占める電極材料である粉末の割合により大きく影響を受けることが明らかになってきた。電極は粉末材料を圧縮成形して作られているため、空間が多い状態になっている。この空間が多すぎると電極の強度が弱くなり、放電のパルスにより電極材料の供給が正常に行なわれなくなる。たとえば、放電の衝撃によって電極が広い範囲で崩れてしまうなどの現象が生じる。一方、空間が少なすぎると電極材料が強固に密着しすぎ、放電のパルスによる電極材料の供給が少なくなる現象が生じ、厚膜の形成ができなくなる。
ここで使用した粒径3μm程度の粉末は、粒径数十μmの粒径の粉末を粉砕して製造されるものであり、粒径の粒度分布が3μmをピークとした分布を持った粉末である。このようなある程度均一な粒径の粉末を圧縮成形して電極を製造する場合には、発明者らの実験によると、良好な被膜を形成することが可能な電極についての電極体積に占める電極材料の体積の割合(残りは空間になる)は、25%〜50%の範囲であった。ただし、電極材料の体積の割合(以下、電極材料体積の割合という)が25%の場合には、電極としてはかなり軟らかく強度が不足気味であった。逆に、電極材料体積の割合が50%では、電極としてはかなり硬く、一部にエア割れが生じる場合も見られた。この場合の電極材料体積の割合による被膜の状態の概略を表1に示す。ただし、この割合は、粉末粒径の分布などにより多少変化し、たとえば、粒径の分布が広い粉末を使用した場合には、電極の空間率(=(100−電極材料体積の割合)%)は小さくなる傾向になる。反対に粒径の分布が狭い粉末を使用した場合には、電極の空間率が大きくなる傾向になる。
Figure 0004563318
一方、粒径の異なる粉末を混合した場合、たとえば、上記の例で使用した粒径3μm程度の粉末に、粒径6μm程度の粉末を混合した場合には、良好な被膜を形成することが可能な電極についての電極体積に占める電極材料体積の割合は、40%〜65%の範囲であった。ただし、電極材料体積の割合が40%の場合には、電極としてはかなり軟らかく強度が不足気味であった。逆に、電極材料体積の割合が65%では、電極としてはかなり硬くなっていた。この場合の電極材料体積の割合による被膜の状態の概略を表2に示す。
Figure 0004563318
この実施の形態5によれば、電極体積に占める電極材料の体積比率を考慮した放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行うようにしたので、金属粉末を原料として製造された放電表面処理用電極でも、ワーク上に空孔のない緻密な被膜を形成することができる。
なお、上述した特許文献2では、きわめて高い圧力で形成できるセラミックスの電極において、理論密度の50%〜90%となるように圧縮成形した電極を使用する記載があるが、この実施の形態5のように、緻密な金属の厚膜を形成するものではなく、その技術範囲、用途、効果も異なるものである。
実施の形態6.
この実施の形態6では、金属粉末を圧縮成形して製造した放電表面処理用電極を用いた放電表面処理において、厚い被膜を堆積させる放電表面処理について説明する。
第2図に示される工程によって製造される放電表面処理用電極において、粉末と粉末の結合が強い場合には、粉末間の熱の移動がスムーズになり、つまり熱伝導率が大きくなり、反対に、その結合が弱い場合には、粉末間の熱の移動がスムーズに行かず、熱伝導率が小さくなる。加熱温度を高くすれば、粉末と粉末の金属結合が進み、電極の熱伝導率は大きくなる。反対に、加熱温度を低くすれば、粉末と粉末の金属結合があまり進まず、電極の熱伝導率は小さくなる。
電極の熱伝導率(単位長さ、単位温度あたりのエネルギ)が小さい場合には、局所的に高温になるため、放電の熱により電極材料を一瞬のうちに気化させることができる。この爆発力により電極の溶融部あるいは固体部を剥ぎ取り、電極から離脱したものがワーク表面に堆積される。一方、電極の熱伝導率が大きい場合には、熱が拡散し易いため、ヒートスポットを生じ難く、電極材料がほとんど気化しない。このため、爆発力が発生せず、電極材料をほとんど供給できなくなる。以上より、ワーク表面に厚い被膜を形成するためには、放電の熱によるワークを構成する材料の除去量よりも多い量の電極材料をワークに堆積させる必要があり、そのためには放電表面処理用電極の熱伝導率が小さくなければならない。
以下に、放電表面処理用電極の熱伝導率を小さくすることについて説明する。第2図の工程にしたがって、平均粒径1.2μmの合金粉末のみを用いて、50mm×11mm×5.5mmの形状の放電表面処理用電極を製造した。このときに用いられた合金粉末は、Cr25wt%,Ni10wt%,W7wt%,C0.5wt%、残りがCoの比率の合金である。また、この組成の合金粉末の他にMo28wt%,Cr17wt%,Si3wt%、残りがCoの比率の合金、またはCr28wt%,Ni5wt%,W19wt%、残りがCoの比率の合金を使用してもよい。なお、第2図のステップS6のプレス工程において、67MPaの圧力で粉末を圧縮成形し、また、異なる硬さを有する電極を得るために、ステップS7の加熱工程において、730℃および750℃の各温度で、圧紛体を真空炉で一時間加熱した。また、放電表面処理は、実施の形態4と同一の放電のパルス条件で行った。
最初に、加熱温度を変えて製造したそれぞれの電極の熱伝導率についてレーザーフラッシュ法によって調べた。その結果、730℃で加熱した電極の熱伝導率は10W/mKであり、750℃で加熱した電極の熱伝導率は12W/mKであった。
第12図は、熱伝導率の異なる放電表面処理用電極を用いて5分間放電表面処理した場合のワーク表面に形成される被膜厚さと放電表面処理用電極の熱伝導率の関係を示す図である。この第12図において、横軸は放電表面処理用電極の熱伝導率(W/mK)を示し、縦軸は横軸に示される熱伝導率を有する放電表面処理用電極で放電表面処理を行った場合にワーク表面に形成される被膜厚さ(mm)を示している。なお、縦軸の被膜厚さの値が負の場合には除去加工を表している。この図に示されるように、加工時間を同じにした場合には、熱伝導率が小さいほど被膜厚さが大きくなる。また、電極の熱伝導率を約11.8W/mK以上にすると、ワーク表面を除去する除去加工となる。これにより、厚い被膜を形成させるためには電極の熱伝導率が11.8W/mK以下でなければならないことが実験により見出された。特に、0.2mm以上の厚い被膜を形成するためには、電極の熱伝導率が10W/mK以下である必要がある。
放電表面処理後に、熱伝導率が12W/mKである放電表面処理用電極の放電が発生した面を観察すると、電極の粉末が溶融し、再凝固した結果である金属光沢を確認することができる。すなわち、放電が発生した面は粉末同士がわずかに結合した圧粉体ではなく、金属粉末が溶融して互いにくっついて形成された再凝固体となっている。一方、熱伝導率が10W/mKの放電表面処理用電極の放電が発生した面の状態は、光沢が観察されない。
このように、熱伝導率が10W/mK以上になると電極にヒートスポットが形成されず、電極とアーク柱の接する部分がほとんど気化しないため、爆発力が小さくなり電極に形成される溶融域がすべて除去できず、電極の表面に残ってしまう。そして、放電の繰り返しによってその溶融域が蓄積され、電極表面には溶融、再凝固した金属層が形成される。このような金属層が形成されると電極からワークに移行する電極粉がなくなり、ワーク表面を除去する除去加工となってしまう。
なお、この実施の形態6では、上記のような組成を有する合金粉末の場合について説明したが、Co合金粉末、Ni合金粉末またはFe合金粉末でも、同様に熱伝導率を10W/mK以下にした電極を製造し、それを用いて放電表面処理すれば厚い被膜を形成できる。
電極は粉末を圧縮成形した圧粉体であり、電極の熱伝導率を決定(支配)するのは、電極粉末の材質ではなく、粉末と粉末の結合状態である。そのために、あらゆる材料について、この熱伝導率(10W/mK)以下となるように電極を製造すれば、ワーク上に厚い被膜を形成することができる。たとえば、熱伝導率のよいCu(約300W/mK)やAl(200W/mK)を用いても、その粉末から製造した電極の熱伝導率が上記の熱伝導率(10W/mK)を満足するものであればワーク表面に厚い被膜を形成することができ、その熱伝導率が上記の熱伝導率以上であればワーク上に被膜を形成することができない。
この実施の形態6により、熱伝導率が10W/mK以下の電極を用いると厚い被膜を形成できることが実験により証明され、その値を厚い被膜を形成するための電極に必要な指標として用いることの有用性も証明された。このように、電極の指標として、熱伝導率を用いると、厚い被膜を形成できる電極を簡単に評価できるメリットがある。
なお、放電加工用の電極の熱伝導率に関して、特開昭54−124806号公報に電極の熱伝導率を0.5Kcal/cm・sec・℃以下とする点が記載されている。しかし、この特開昭54−124806号公報に記載の発明は、電極の消耗を避け、電極形状をワーク11に転写加工することを目的とした放電加工に関するものであり、この発明のようにワーク上に被膜を形成する放電表面処理用電極に関するものではない。
また、特開昭54−124806号公報には、熱伝導率の下限値の記載はないが、電極の熱伝導率を小さく(たとえば、10W/mK)した場合には、電極にヒートスポットが形成され、電極が消耗し、加工形状を転写するという放電加工の目的を達成できなくなってしまうのは明らかである。すなわち、電極を積極的に消耗させてワーク上に被膜を形成するこの実施の形態6のような放電表面処理とは、目的と手法が大きく異なるものである。さらに、0.5Kcal/cm・sec・℃(=209303W/mK)という値はあまりにも大きく、従来熱伝導率が最も高いとされている純銅の値398W/mKをはるかに上回っている。
この実施の形態6によれば、熱伝導率が10W/mK以下の放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行うようにしたので、金属粉末を原料として製造された放電表面処理用電極でもワーク上に厚い被膜を形成することができる。
実施の形態7.
この実施の形態7では、電極の評価方法として、所定の条件により実際に連続放電を発生させて、電極の消耗量、処理時間、形成される被膜厚さから、電極の良否を評価する方法について説明する。
実施の形態4に示した合金粉末(平均粒径1.2μmに粉砕したもの)を圧縮成形し、50mm×11mm×5.5mmの形状の放電表面処理用電極を製造した。この電極製造のプロセスは実施の形態4と同一である。このように製造された電極は、粉末粒径、製造条件などが管理されて製造されるが、製造の際の気温や湿度の違い、粉末の粉砕状態、ワックスと粉末の混合状態などによってばらつきが生じる場合もある。このようなばらつきを、電極硬さなどによって管理する方法については上記のように説明してきたが、この方法のほかに、電極を用いて直接に被膜の形成を行って調べることもできる。
第13A図〜第13C図は、成膜試験により電極の良否を判定する方法の概要を説明するための図である。これらの図には、実施の形態1の第1図で用いられたものと同一の構成要素には同一の符号を付している。なお、判定方法の概略に関する説明のための図であるので、電源や駆動軸などの構成要素は省略している。
この実施の形態7の電極の評価方法では、上記のように製造された電極で所定の量の放電表面処理によって被膜の形成を行う。上記の電極の場合、11mm×5.5mmの面が放電面となるように設置するのが処理の簡便さから望ましいが、別の面が放電面となるように設置してもよい。まず、第13A図に示されるように、この電極12とワーク11との間の位置決めを行う。つぎに、第13B図に示されるように、放電を開始し、被膜形成を行う。そして、第13C図に示されるように、ワーク11上には被膜14が形成される。この第13B図と第13C図において、符号17は放電のアーク柱を示している。ここで、電極12を図のZ軸の下向きに駆動する距離を所定の値に保って、成膜形成時間と形成された被膜厚さを測定した。なお、Z軸方向の送り量は2mmとした。電極をZ軸方向に2mm送っているので、被膜形成後の電極消耗量(長さ)は2mm+(形成された被膜厚さ)+(放電ギャップ)となる。放電ギャップは数10〜100μm程度である。また、放電表面処理条件は、ピーク電流値ie=10A、放電持続時間(放電パルス時間)te=4μsとした。実際に成膜試験を行った結果を表3に示す。
Figure 0004563318
この表3で、電極番号は、試験を行った電極に付された番号であり、被膜形成時間は放電表面処理時間を示し、被膜厚さは被膜形成時間内に形成された被膜の厚さを示しており、引張り強度は、ワーク11上に形成された被膜の上面に接着剤で試験片を接着し、ワークと被膜に接着した試験片を引張り試験機によって引張り試験を行い被膜が破断した圧力を示している。
電極番号No.1の電極は、被膜形成時間が16分であり、その際の被膜厚さは0.35mmであり、電極番号No.3,4もほぼ同様であった。電極番号No.2の電極は、電極番号No.1と比較すると、被膜形成時間が20分と長いが、被膜厚さは小さくなっている。電極番号No.5の電極は、逆に、被膜形成時間が13分と短く、被膜厚さは0.30mmとなっている。これらの電極によって形成された被膜の強度は、処理時間が通常(約16分)より長くても短くても低下する傾向にあり、処理時間や形成できる被膜厚さに最適値が存在することがわかる。この最適値は、電極材質、電極形状、処理条件などにより異なるが、所定の条件で被膜形成を行った場合の被膜形成時間や被膜厚さから電極の良否を判断することができる。この判断の基準は、たとえば、平均的な処理時間のプラスマイナス1割を良と判断し、その範囲から逸脱したものを不良とするなどのように設定することができる。
または、被膜の厚さでも同様のことができる。たとえば、上記試験では、電極の送り量を所定の値にして試験を行っているが、処理時間を所定の時間にして、その際の被膜厚さを判断基準として平均値のプラスマイナス1割を良と判断し、その範囲から逸脱したものを不良とするなどのように設定することができる。
この実施の形態7によれば、電極によりワーク上に所定の条件で被膜を形成した際の被膜形成時間または被膜厚さを用いて電極の良否を判定することができる。
以上のように、この発明は、ワーク表面に厚い被膜を形成させる処理を自動化することが可能な放電表面処理装置に適している。
第1図は、放電表面処理装置における放電表面処理の概略を示す図である。 第2図は、放電表面処理用電極の製造プロセスを示すフローチャートである。 第3図は、粉末を成形する際の成形器の状態を模式的に示す断面図である。 第4A図は、放電時の放電表面処理用電極とワークの間にかかる電圧波形を示す図である。 第4B図は、放電時に放電表面処理装置に流れる電流の電流波形を示す図である。 第5図は、Cr粉末に混合するCo粉末量を変化させて製造された放電表面処理用電極におけるCo量の変化による被膜厚さの関係を示す図である。 第6図は、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成し難い材料が放電表面処理用電極に含まれない場合の処理時間に対する被膜の形成の様子を示す図である。 第7図は、Co含有量が70体積%の電極を用いて放電表面処理を行った場合に形成された被膜の写真である。 第8図は、Cr30%−Co70%の体積比の放電表面処理用電極の硬さを変化させた場合の厚膜形成の状態を示す図である。 第9図は、電極の圧縮強度を測定する実験装置の概要を示す写真である。 第10図は、電極の圧縮強度と被膜厚さとの関係を示す図である。 第11図は、平均粒径と厚い被膜の堆積が可能な電極の圧縮強度との関係を示す図である。 第12図は、熱伝導率の異なる放電表面処理用電極を用いて放電表面処理した場合のワーク表面に形成される被膜厚さと放電表面処理用電極の熱伝導率の関係を示す図である。 第13A図は、成膜試験により電極の良否を判定する方法の概要を示す図である。 第13B図は、成膜試験により電極の良否を判定する方法の概要を示す図である。 第13C図は、成膜試験により電極の良否を判定する方法の概要を示す図である。

Claims (26)

  1. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、
    前記粉末は、5〜10μmの平均粒径を有するとともに、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含み、前記電極は塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの範囲の硬さとなるように成形されることを特徴とする放電表面処理用電極。
  2. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、
    前記粉末は、1〜5μmの平均粒径を有するとともに、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含み、前記電極は1/4インチ鋼球で15kgfで押し付けたときの押し込み距離をh(μm)としたときに求められる硬さH=100−1000×hにおいて20〜50の範囲の硬さとなるように成形されることを特徴とする放電表面処理用電極。
  3. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、
    前記粉末は、1μm以下の平均粒径を有するとともに、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含み、前記電極は1/4インチ鋼球で15kgfで押し付けたときの押し込み距離をh(μm)としたときに求められる硬さH=100−1000×hにおいて25〜60の範囲の硬さとなるように成形されることを特徴とする放電表面処理用電極。
  4. 前記炭化物を形成しないまたは炭化物を形成し難い成分は、Co,Ni,Fe,Al,Cu,Znの中から選択されることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1つに記載の放電表面処理用電極。
  5. 金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、
    前記電極は、平均粒径−圧縮強度片対数相関図における対数目盛で平均粒径0.05μm、1μm、3μmに対してそれぞれ圧縮強度160MPa、100MPa、50MPaの値を直線で結んだ線分以下の圧縮強度であることを特徴とする放電表面処理用電極。
  6. 前記電極を構成する粉末として、Co粉末、Co合金粉末、Ni粉末、またはNi合金粉末のいずれかが含まれることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の放電表面処理用電極。
  7. 金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギにより、被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、
    熱伝導率が10W/mK以下であることを特徴とする放電表面処理用電極。
  8. 平均粒径3μm以下の前記金属粉末または前記金属化合物の粉末を粉砕により微細化した粉末を用いることを特徴とする請求の範囲第項に記載の放電表面処理用電極。
  9. 前記金属化合物の粉末は、Co合金、Ni合金またはFe合金のいずれかであることを特徴とする請求の範囲第項または第項に記載の放電表面処理用電極。
  10. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法において、
    前記粉末は、5〜10μmの平均粒径を有するとともに、前記被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含み、塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの範囲の硬さとなるように成形される電極を使用して前記被膜を形成することを特徴とする放電表面処理方法。
  11. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法において、
    前記粉末は、1〜5μmの平均粒径を有するとともに、前記被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含み、1/4インチ鋼球で15kgfで押し付けたときの押し込み距離をh(μm)としたときに求められる硬さH=100−1000×hにおいて20〜50の範囲の硬さとなるように成形される電極を使用して前記被膜を形成することを特徴とする放電表面処理方法。
  12. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理方法において、
    前記粉末は、1μm以下の平均粒径を有するとともに、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含み、1/4インチ鋼球で15kgfで押し付けたときの押し込み距離をh(μm)としたときに求められる硬さH=100−1000×hにおいて25〜60の範囲の硬さとなるように成形される電極を使用して前記被膜を形成することを特徴とする放電表面処理方法。
  13. 前記炭化物を形成しないまたは炭化物を形成し難い成分は、Co,Ni,Fe,Al,Cu,Znの中から選択されることを特徴とする請求の範囲第10項〜第12項のいずれか1つに記載の放電表面処理方法。
  14. 金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法において、
    平均粒径−圧縮強度片対数相関図における対数目盛で平均粒径0.05μm、1μm、3μmに対してそれぞれ圧縮強度160MPa、100MPa、50MPaの値を直線で結んだ線分以下の圧縮強度を有する電極を使用して前記被膜を形成することを特徴とする放電表面処理方法。
  15. 金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物の間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法において、
    熱伝導率が10W/mK以下の電極を用いて前記被膜を形成することを特徴とする放電表面処理方法。
  16. 前記電極を構成する粉末は、Co合金、Ni合金またはFe合金のいずれかを含むことを特徴とする請求の範囲第15項に記載の放電表面処理方法。
  17. 前記電極と前記被加工物の間に、パルス幅が4〜100μsであり、ピーク電流値が5〜30Aであるパルス状の電流を供給することを特徴とする請求の範囲第15項に記載の放電表面処理方法。
  18. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体からなる電極と、被膜が形成される被加工物とが加工液中または気中に配置され、前記電極と前記被加工物に電気的に接続される電源装置によって前記電極と前記被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成させる放電表面処理装置において、
    前記電極は、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含む平均粒径5〜10μmの粉末を、塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの範囲の硬さとなるように成形することを特徴とする放電表面処理装置。
  19. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体からなる電極と、被膜が形成される被加工物とが加工液中または気中に配置され、前記電極と前記被加工物に電気的に接続される電源装置によって前記電極と前記被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成させる放電表面処理装置において、
    前記電極は、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含む平均粒径1〜5μmの粉末を、1/4インチ鋼球で15kgfで押し付けたときの押し込み距離をh(μm)としたときに求められる硬さH=100−1000×hにおいて20〜50の範囲の硬さとなるように成形することを特徴とする放電表面処理装置。
  20. 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体からなる電極と、被膜が形成される被加工物とが加工液中または気中に配置され、前記電極と前記被加工物に電気的に接続される電源装置によって前記電極と前記被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成させる放電表面処理装置において、
    前記電極は、被加工物に被膜を形成するための成分として、40体積%以上の炭化物を形成しないまたは形成し難い成分を含む平均粒径1μm以下の粉末を、1/4インチ鋼球で15kgfで押し付けたときの押し込み距離をh(μm)としたときに求められる硬さH=100−1000×hにおいて25〜60の範囲の硬さとなるように成形することを特徴とする放電表面処理装置。
  21. 前記炭化物を形成しないまたは炭化物を形成し難い成分は、Co,Ni,Fe,Al,Cu,Znの中から選択されることを特徴とする請求の範囲第18項〜第20項のいずれか1つに記載の放電表面処理装置。
  22. 金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体からなる電極と、被膜が形成される被加工物とが加工液中または気中に配置され、前記電極と前記被加工物に電気的に接続される電源装置によって前記電極と前記被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成させる放電表面処理装置において、
    前記電極は、平均粒径−圧縮強度片対数相関図における対数目盛で平均粒径0.05μm、1μm、3μmに対してそれぞれ圧縮強度160MPa、100MPa、50MPaの値を直線で結んだ線分以下の圧縮強度を有することを特徴とする放電表面処理装置。
  23. 前記電極を構成する粉末として、Co粉末、Co合金粉末、Ni粉末、またはNi合金粉末のいずれかが含まれることを特徴とする請求の範囲第22項に記載の放電表面処理装置。
  24. 金属または金属化合物の粉末を圧縮成形した圧粉体からなる電極と、被膜が形成される被加工物とが加工液中または気中に配置され、前記電極と前記被加工物に電気的に接続される電源装置によって前記電極と前記被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成させる放電表面処理装置において、
    前記電極は、10W/mK以下の熱伝導率を有することを特徴とする放電表面 処理装置。
  25. 平均粒径3μm以下の前記金属粉末または前記金属化合物の粉末を粉砕により微細化した粉末を用いることを特徴とする請求の範囲第24項に記載の放電表面処理装置。
  26. 前記金属化合物の粉末は、Co合金、Ni合金またはFe合金のいずれかであることを特徴とする請求の範囲第24項または第25項に記載の放電表面処理装置。
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