JP3847697B2 - 放電表面処理用電極 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属粉末もしくは金属の化合物の粉末、または、セラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体電極とワークとの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギによって、ワーク表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法における放電表面処理用電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液中放電によって金属材料の表面をコーティングして、耐食性、耐磨耗性を与える技術は既に特許出願され公知となっている。その技術の骨子はつぎのとおりである。第一に、WC(タングステンカーバイド)とCoの粉末を混合して圧縮成形した電極で液中放電を行うことにより電極材料をワークに堆積させる。この後、別の電極(例えば、銅電極やグラファイト電極など)によって、ワークに堆積した電極材料に対して再溶融放電加工を行い、より高い硬度と高い密着力を得る方法である。以下、この従来技術について説明する。
【0003】
まず、第1の従来技術について説明する(例えば、特許文献1参照)。WC−Coの混合圧粉体電極を用いて、ワーク(母材S50C)に液中で放電加工を行いWC−Coを堆積させる(1次加工)。ついで銅電極のようなそれほど消耗しない電極によって再溶融加工(2次加工)を行う。このように処理することで、1次加工の堆積のままでは、硬度(ビッカース硬度)がHv=1410程度であり、また空洞も多い組織を有する被覆層であったものが、2次加工の再溶融加工によって空洞が無くなり、硬度もHv=1750と向上した組織を有する被覆層が得られている。この第1の従来技術の方法によれば、鋼材に対しては硬くしかも密着度のよい被覆層が得られる。しかしながら、超硬合金のような焼結材料の表面には強固な密着力を有する被覆層を形成することは困難である。
【0004】
つぎに、出願人による第2の従来技術によれば、Ti等の硬質炭化物を形成する材料を電極として、ワークである金属材料との間に放電を発生させると、再溶融の過程なしに強固な硬質膜をワークである金属表面に形成できることを明らかにした(例えば、特許文献2参照)。これは、放電により消耗した電極材料と加工液中の成分であるCが反応してTiC(炭化チタン)が生成することによるものである。また、さらに、TiH2(水素化チタン)など、金属の水素化物の圧粉体電極によって、ワークである金属材料との間に放電を発生させると、Ti等の材料を使用する場合よりも速くそして密着性のよい硬質膜を形成することができることがわかった。さらに、TiH2等の水素化物に他の金属やセラミックスを混合した圧粉体電極により、ワークである金属材料との間に放電を発生させると硬度、耐磨耗性等様々な性質をもった硬質被膜を素早く形成することができることがわかっている。
【0005】
また、第3の従来技術によれば、予備焼結により強度の高い表面処理電極が製造できることがわかっている(例えば、特許文献3参照)。この第3の従来技術の一例として、WC粉末とCo粉末を混合した粉末からなる放電表面処理用電極を製造する場合について説明する。WC粉末とCo粉末を混合し圧縮成形してなる圧粉体は、WC粉末とCo粉末を混合して圧縮成形しただけでもよいが、ワックスを混入した後に圧縮成形すれば圧粉体の成形性が向上するためより望ましい。しかし、ワックスは絶縁性物質であるため、電極中に大量に残ると、電極の電気抵抗が大きくなるため放電性が悪化する。そこで、ワックスを除去することが必要になる。ワックスは圧粉体電極を真空炉に入れて加熱することで除去できる。この時、加熱温度が低すぎるとワックスが除去できず、温度が高すぎるとワックスがすすになってしまい、電極の純度を劣化させるので、ワックスが溶融する温度以上でかつワックスが分解してすすになる温度以下に加熱温度を保つ必要がある。つぎに、真空炉中の圧粉体を、高周波コイルなどにより加熱し、機械加工に耐えうる強度を与え、かつ硬化しすぎない程度に、例えば白墨程度の硬度となるまで焼成するが、炭化物間の接触部においては相互に結合を進行させるが本焼結にまで至らない弱い結合となるように比較的低い焼結温度で焼成している。このような電極で放電表面処理を行なうと、緻密で均質な被膜を形成できることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−148615号公報(第3〜5頁)
【特許文献2】
特開平9−192937号公報(第9頁)
【特許文献3】
国際公開第99/58744号パンフレット(第18〜20頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の放電表面処理では、耐磨耗性を有する薄膜形成、特に常温に近い温度における耐磨耗性を有する被膜に主眼をおいており、硬質の耐磨耗性を有する緻密な被膜を均一に形成することは可能である。しかしながら、これらの従来技術を用いて厚膜の形成を行うには、長時間の時間を必要とするという問題点があった。また、被膜の厚さをたとえば数10μm程度以上に厚くすることができないという問題点もあった。そのため、肉盛処理のような用途への使用が困難であった。これらのような問題点があるため、上述した従来の放電表面処理を用いて厚膜を形成することは、現実的ではなかった。
【0008】
また、厚膜形成技術は、厚膜の形成のほかに、溶接や溶射の代替など他の用途への展開を行うことができるようになる。たとえば、溶接や溶射は、人手による作業である上に、作業をライン化することが困難であるために、コストが高くなるという問題点があった。また、溶接された部分や溶射された部分で、溶接割れが発生してしまうという問題点もあった。
【0009】
一方、放電表面処理によって厚膜を形成する場合には、上述した特許文献3に開示されているように、作成された電極の特性によっても大きな差異が現れる。この差異の原因の一つとして、電極を構成する素材の粉末の粒径の分布に違いが考えられる。作成される電極ごとに粉末の粒径の分布に違いがあると、同じプレス圧で加圧して電極を成形しても、電極ごとに固まり具合が異なるので、最終的な電極の強度に違いが生じるからである。また、上記の電極の特性による差異の原因の一つとして、被加工物に形成する被膜の材質を変えるために行われる電極材質の変更が考えられる。電極の材質を変更した場合、物性値の違いによって電極の強度が、変更前の電極の強度とは異なってできてしまう。この場合には、電極の材質を変えているので、電極の成形条件が異なってしまうのはやむをえないが、電極の成形条件を多数変更し、被膜の形成テストを行い、その材質の電極にあった成形条件を決めるというプロセスが必要であるという問題点があった。すなわち、電極を構成する材質の種類だけ、成形条件を決めるテストが必要となっており、手間がかかるという問題点があった。
【0010】
この発明は上記に鑑みてなされたもので、放電表面処理方法によって被加工物上に厚膜を容易に形成することが可能な放電表面処理用電極を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明にかかる放電表面処理用電極は、被加工物に被膜を形成するための成分として、炭化物を形成しないまたは形成しにくい成分を含んで構成される放電表面処理用電極であって、塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの範囲の硬さとなるように成形されることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる放電表面処理用電極の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
この発明では、放電表面処理方法によって被加工物に形成する被膜を厚くするために、放電表面処理用電極材料に炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料を添加するとともに、このような材料からなる放電表面処理用電極が所定の硬さを有するように成形することを特徴とする。ここで、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料として、Co,Ni,Fe,Al,Cu,Znなどを挙げることができる。なお、この発明において、放電表面処理方法とは、絶縁性の油または水を主体とした加工液中で、放電表面処理用電極と被加工物との間に電圧を印加して放電を発生させ、この放電時の熱エネルギによって放出された放電表面処理用電極の構成材料またはこの構成材料の反応物質が、被加工物の表面に被膜を形成する方法をいう。
【0014】
以下に、放電表面処理用電極において炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料を添加することと、放電表面処理用電極が所定の硬さを有することに分けて詳細に説明する。
【0015】
まず、放電表面処理用電極において炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料を添加することについて説明する。従来の放電表面処理用電極には、炭化物を形成しやすい材料の割合が多く含まれていた。たとえば、Tiなどの材料を電極に含むと、放電表面処理に用いる加工液である油中での放電によってTiが化学反応して、TiCという硬質の炭化物になる。そこで、従来では特許文献2に示されるように、放電表面処理で生じる硬質のTiCを積極的に利用して、耐磨耗性を有する被膜の形成を行っていた。このような従来の放電表面処理用電極を用いた放電表面処理では、鋼材に放電表面処理を行う場合に、表面処理が進行するにつれて、被加工物表面の材質が鋼材からセラミックスであるTiCへと変化し、それにともない、熱伝導や融点などの特性が変化してしまう。
【0016】
これに対して、この発明による電極材質の成分に炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料を添加して放電表面処理用電極を作成した場合には、放電表面処理によって炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料がそのままの状態(金属の状態)で被膜に残る。これにより、金属の状態のまま被加工物の被膜に残る材料が増えることになり、被膜を厚く盛り上げるのに重要な役割を果たす。
【0017】
つぎに、この発明にかかる放電表面処理用電極について、硬質材料としてCr32粉末と、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料としてCo粉末を用いた場合を例に挙げて説明する。まず、Cr32粉末とCo粉末とを所定の比率となるように秤量したものを混合し、所定の形状を有する金型(ダイ)に入れた後に成型して所定の硬さを有する圧紛体を得る。
【0018】
図1は、成型する際に使用される成型器の断面形状を示す図である。下パンチ104を金型(ダイ)105に形成されている孔の下部から挿入し、これらの下パンチ104と金型(ダイ)105で形成される空間に混合したCr32粉末101とCo粉末102との混合物を充填する。その後、上パンチ103を金型(ダイ)105に形成されている孔の上部から挿入する。このようにCr32粉末とCo粉末との混合物が充填された成型器の上パンチ103と下パンチ104の両側から圧力がかかるように加圧器等で圧縮成型することによって、放電表面処理用電極が作製される。なお、必要に応じて、圧縮成型された圧紛体を放電表面処理用電極を構成する材料によって定まる所定の温度で加熱処理することも可能である。加熱処理することで、圧縮成型された電極の強度を増加させることができる。
【0019】
なお、Cr32粉末とCo粉末とを混合する際に、ワックスを混入してもよい。このように、ワックスを粉末に混合した後に圧縮成形すると、圧粉体の成形性が向上するからである。ただし、ワックスは絶縁性物質であるため、電極中に大量に残留してしまうと、電極の電気抵抗が大きくなってしまうために放電性が悪化するので、ワックスを除去することが必要になる。ワックスを除去する方法として、ワックスを含む圧縮成型された圧粉体電極を真空炉に入れて加熱する方法がある。これにより、圧紛体中のワックスが除去される。
【0020】
上述した方法によって作成した炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料の成分を変化させた放電表面処理用電極を用いて、放電表面処理方法によって被加工物上に形成される被膜の厚さの変化を試験した結果を以下に示す。試験に用いた放電表面処理用電極のベースとなる材質はCr32であり、これに炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料としてCoを添加した。添加するCoは体積で0〜80%の間で変化させ、試験される放電表面処理用電極の硬さは一定とした。また、放電表面処理時において使用した放電のパルス条件は、図2に示す条件で行った。すなわち、ピーク電流値ie=10A、放電持続時間(放電パルス幅)te=64μs、休止時間to=128μsである。なお、図2(a)は、放電時の電圧波形を示し、図2(b)は、放電時の電流波形を示している。また、試験では、15mm×15mmの面積の電極で被膜を形成した。このような条件の下、被加工物に対して、放電表面処理を15分間行った。
【0021】
図3は、炭化物であるCr32に炭化物を形成しにくいCo量を変化させて作成された放電表面処理電極のCo量の変化による厚膜の形成しやすさの変化を示す図である。この図3において、横軸は放電表面処理用電極に含まれるCoの体積パーセントを示しており、縦軸は被加工物に形成される被膜の厚さ(μm)を対数メモリで示している。
【0022】
この図3から、Coが0%の場合、すなわち、放電表面処理用電極がCr32のみから構成される場合には、被加工物上に形成される被膜の厚さは10μm程度が限度であり、それ以上被膜の厚さを増すことはできない。図4は、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料が放電表面処理用電極にない場合の処理時間に対する皮膜の形成の様子を示す図である。この図4において、横軸は単位面積あたりの放電表面処理を行う処理時間(分/cm2)を、縦軸は放電表面加工処理を行う前の被加工物の表面の位置を基準としたときの被膜の厚さ(被加工物の表面位置)(μm)を示している。この図4に示されるように、放電表面処理の初期の段階では、被膜が時間と共に成長して厚くなるが、あるところ(約5分/cm2)で飽和する。その後しばらくは被膜の厚さは成長しないが、ある時間(約20分/cm2)以上、放電表面処理を続けると被膜の厚さが減少しはじめ、最後には被膜の厚さはマイナスとなり、掘り込みに変わってしまう。しかし、掘り込みに変わった状態においても、実際には、被加工物上の被膜は存在しており、10μm程度の厚さを有している。すなわち、適切な時間(処理時間が10〜20分/cm2の間)で処理した状態とほとんど変わっていない。したがって、放電表面処理時間が長くなると、被加工物の部分の厚さが減少していることになる。
【0023】
図3に示されるように、Coが約30%までの間では、被加工物に形成される被膜の厚さは、Coが0%の場合とほとんど同じで、10μm程度となっている。しかし、Coが30%以上になると被加工物上に形成される被膜の厚さが急激に増加し、Coが約50%の場合では、約2〜3mmの厚さの被膜が被加工物上に形成されるようになる。しかし、Coが50%以上では、Coの量を増加させても被加工物上に形成される被膜の厚さは増加せず、ほぼ一定の厚さ(約2〜3mm)となる。
【0024】
このように、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料であるCo量を増やすにしたがい、被加工物上に形成される被膜の厚さを厚くすることができる。被加工物上に形成される被膜の厚さを厚くするためには、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料の放電表面処理用電極に対する体積割合を、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上とすることが望ましい。なお、Ni,Fe,Al,Cu,Znなどの他の炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料についても、同様の傾向を有する。
【0025】
つぎに、放電表面処理用電極が適当な硬さを有することが必要なことについて説明する。放電表面処理用電極は、通常、粉末材料を圧縮成形し、加熱して作成される。以下では、放電表面処理用電極の硬さとその放電表面処理用電極によって形成される被膜の性質との間の関係について説明する。なお、以下では、放電表面処理用電極の硬さの基準として引用する指標は、JIS K 5600−5−4に規定されている途膜用鉛筆引かき試験を用いた。この規格は、本来塗装被膜の評価に使用されているものであるが、硬さの低い材料の評価には都合のよい試験方法であることを知見したので、この発明において使用した。なお、この塗膜用鉛筆引かき試験の結果とその他の硬さ評価方法の結果とは相互に換算できるものであり、その他の硬さ評価方法を指標として用いてもよいことは当然である。
【0026】
放電表面処理による厚膜の形成と放電表面処理用電極の硬さとの間の関係について、例としてCr3230%−Co70%の体積比で作成された放電表面処理用電極の場合を例に挙げて説明する。図5は、Cr3230%−Co70%の体積比の放電表面処理用電極の硬さを変化させた場合の厚膜形成の状態を示す図である。この図5において、横軸は硬さの評価に用いた塗膜用鉛筆の硬さによって測定された放電表面処理用電極の硬さを示し、左に向かうほど硬くなり右に向かうほど柔らかくなる。縦軸は放電表面処理用電極によって形成された被膜の厚さの評価状態である。この評価試験を行う際の放電表面処理時において使用された放電のパルス条件は、ピーク電流値ie=10A、放電持続時間(放電パルス時間)te=64μs、休止時間to=128μsである。また、評価試験では、15mm×15mmの面積の電極で被膜を形成した。
【0027】
この図5に示されるように、放電表面処理用電極の硬さが4B〜7B程度の硬さの場合が最も被膜の状態が非常に良好であり、緻密な厚膜が形成された。また、放電表面処理用電極の硬さがB〜4Bの間でも良好な厚膜が形成される。しかし、この範囲では、硬くなるにしたがって被膜の形成速度が遅くなる傾向があり、B程度の硬さでは厚膜の形成がかなり難しくなってしまう。さらにBよりも硬くなると厚膜の形成は不可能となり、放電表面処理用電極の硬さが硬くなるにしたがって工作物(被加工物)を除去しながら加工するようになってしまう。一方、放電表面処理用電極の硬さが8B程度の硬さでも良好な厚膜を形成することができるが、組織の分析を行うと被膜中に空孔が徐々に増えていく傾向にある。さらに放電表面処理用電極が9B程度よりも柔らかくなると、電極成分が十分に溶融しないままに工作物に付着するような現象が見られ、被膜が緻密でなくポーラスなものとなってしまう。なお、上述した放電表面処理用電極の硬さと被膜の状態との間の関係は、使用する放電パルス条件によっても多少変化し、適切な放電パルス条件を使用した場合にはある程度良好な被膜を形成することができる範囲を拡大することもできる。
【0028】
なお、この放電表面処理用電極の硬さと形成される被膜との間の関係は、放電表面処理用電極にCo以外のNi,Fe,Al,Cu,Znなどの炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料を添加した場合一般について成立つ。
【0029】
上述したように、この実施の形態によれば、放電表面処理用電極を構成する材料にCo,Ni,Fe,Al,Cu,Znなどの炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料を30体積%以上、より好ましくは50体積%以上添加し、この放電表面処理用電極の硬さを塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの間、より好ましくは4B〜7Bの間になるようにして放電表面処理用電極を形成し、この放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行うことによって、被加工物上に厚膜を安定して形成することができるという効果を有する。また、この放電表面処理用電極を用いることによって、溶接や溶射の作業を代替することが可能となり、従来では溶射や溶接で行っていた作業をライン化することが可能となる。
【0030】
電極の状態を管理するには、従来では、プレス圧や加熱温度など所定の条件で成形した放電表面処理用電極を使用して被膜の形成を行い、形成された被膜の状態によって放電表面処理用電極の状態を判断していた。この方法では、放電表面処理用電極の状態を判断するたびに、テスト用の放電表面処理を行って被膜を形成しなければならず、手間がかかるという問題点があった。そこで、放電表面処理用電極の状態を管理する方法として、放電表面処理用電極の(1)熱伝導度、(2)電気抵抗、(3)折り曲げ試験および(4)硬さ試験について検討を行った。
【0031】
まず、(1)の熱伝導度は放電表面処理用電極の熱の伝わりやすさの指標であり、放電表面処理用電極がしっかり固まっているほど熱の伝わりやすさはよくなる傾向がある。測定には、放電表面処理用電極を所定の形状に切り出し、一端からレーザなどにより所定の熱量を入力し、他端の温度の変化を測定するなどの方法が採られている。この方法は、測定にコストがかかること、材料の物性値の影響を受けるため異なった材料の場合には異なった値となるので、異なる材料ごとに最適な状態の場合の値を把握しなければならないこと、などの問題点がある。
【0032】
つぎに、(2)の電気抵抗は、放電表面処理用電極を所定の形状に切り出し、電気抵抗を測定する方法である。電気抵抗は、放電表面処理用電極がしっかり固まっているほど小さくなる傾向があり、放電表面処理用電極の強度のよい指標にはなるが、測定にばらつきが出やすいこと、材料の物性値の影響を受けるため異なった材料の場合には異なった値となるので、異なる材料ごとに最適な状態の場合の値を把握しなければならないこと、などの問題点がある。
【0033】
つぎに、(3)の折り曲げ試験は、放電表面処理用電極を所定の形状に切り出して、三点曲げ試験を行い、曲げに対する抵抗力を測定する方法である。この方法は、測定にばらつきがでやすいこと、測定にコストがかかること、などの問題点がある。
【0034】
そして、最後の(4)の硬さ試験は、放電表面処理用電極に圧子を押し付けてその圧痕の形状によって硬さを測定する方法や鉛筆などの測定子で放電表面処理用電極を引っかいて傷がつくかどうかで判断する方法などがある。
【0035】
これら4つの方法は互いに強い相関を持つものであるが、測定の簡易性などの理由から(4)の鉛筆などの測定子による硬さ試験によって放電表面処理用電極の状態を判断する方法が最も適していることがわかった。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、放電表面処理用電極を構成する材料に、炭化物を形成しない材料または炭化物を形成しにくい材料を添加し、放電表面処理用電極の硬さが、塗膜用鉛筆引かき試験による硬度で所定の範囲の間、より好ましくは4B〜7Bの間になるように形成することによって、放電表面処理によって被加工物上に厚膜を安定に形成することができるという効果を有する。また、この放電表面処理用電極を用いることによって、溶接や溶射の作業を代替することが可能となり、従来では溶射や溶接で行っていた作業をライン化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 放電表面処理用電極を作成する成型器の断面を示す図である。
【図2】 放電表面処理図用電極のCo量の変化による厚膜の形成しやすさを試験するための放電のパルス条件を示す図であり、(a)は放電時の電圧波形図を示し、(b)は放電時の電流波形図を示している。
【図3】 炭化物であるCr32に炭化物を形成しにくいCo量を変化させて作成された放電表面処理電極のCo量の変化による厚膜の形成しやすさの変化を示す図である。
【図4】 炭化物を形成しにくい材料が放電表面処理用電極にない場合の処理時間に対する皮膜の形成の様子を示す図である。
【図5】 Cr3230%−Co70%の体積比の放電表面処理用電極の硬さを変化させた場合の厚膜形成の状態を示す図である。
【符号の説明】
101 Cr32粉末、102 Co粉末、103 上パンチ、104 下パンチ、105 金型(ダイ)。

Claims (3)

  1. 被加工物に被膜を形成するための成分として、Co,Ni,Fe,Al,Cu,Znのいずれかを30体積%以上含んで構成される放電表面処理用電極であって、
    塗膜用鉛筆引かき試験による硬度でB〜8Bの範囲の硬さとなるように成形されることを特徴とする放電表面処理用電極。
  2. 前記塗膜用鉛筆引かき試験による硬度4B〜7Bの範囲の硬さとなるように成形されることを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理用電極。
  3. 前記Co,Ni,Fe,Al,Cu,Znのいずれかは、50体積%以上含まれることを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理用電極。
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