JP4563265B2 - 有機機能性素子用基板、および有機機能性素子 - Google Patents

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Description

本発明は、各種ディスプレーや発光素子等に好適に用いられる有機エレクトロルミネッセント(以下、有機ELともいう。)素子や有機半導体素子、太陽電池素子等の有機機能性素子、その製造に用いられる有機機能性素子用基板、および濡れ性変化層形成用塗工液等に関するものである。
従来、有機EL素子の有機EL層や、太陽電池素子の光電変換層、有機半導体素子の有機半導体層等、有機機能性素子の有機機能性層を形成する際には、機能性材料をシャドウマスクを介して蒸着する方法、インクジェットにより塗りわける方法、スクリーン印刷を用いる方法等、種々のパターニング方法が用いられていた。中でも近年、緻密に機能性層を形成することができる方法として、光触媒を用いた方法が提案されている(例えば特許文献1および2参照)。この方法は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成し、この濡れ性変化層表面に濡れ性の異なるパターンを形成することにより、有機機能性層をパターニングするというものである。この方法によれば、上記濡れ性の差を利用して高精細に有機機能性層を形成することができ、パターニングに要する手間を大幅に省略することができる点で有用である。
しかしながら、上記濡れ性変化層は電極層と有機機能性層との間に形成されるものであり、基本的に絶縁性である。そのため、例えば有機機能性層が有機EL層である場合には、電極から有機EL層へのキャリア注入効率が低下し、有機EL層の発光特性が低下する等の問題が生じることがある。また、例えば有機機能性層が光電変換層である有機薄膜太陽電池においては、上記濡れ性変化層の絶縁性によって、光電変換層内部で発生した電荷を効率良く外部回路へ取出すことができないという問題が生じることがある。
このような問題を解決するため、上述した濡れ性変化層中に、例えば鉄や銅等の金属塩を発光特性物質として濡れ性変化層中に添加する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、上記発光特性向上物質である鉄や銅の金属塩のカウンターイオンの種類によっては、濡れ性変化層形成用塗工液中での分散安定性が低い場合があり、また特に濡れ性変化層中に光触媒が含有されている場合には、光触媒の分散安定性も低下することがある。そのため、均一に濡れ性変化層を形成することが難しく、濡れ性変化層の電気特性を向上させることや、この濡れ性変化層上に目的とするパターン状に、高精細に有機機能性層を形成することが困難となる場合があるという問題があった。
特開2000−223270号公報 特開2004−71286号公報 特開2002−15867号公報
そこで、電気特性に優れ、簡易な工程で高精細なパターン状に有機機能性層を形成することが可能な有機機能性素子用基板、およびその有機機能性素子用基板を用いた有機機能性素子の提供が望まれている。
本発明は、基材と、上記基材上に形成された電極層と、上記電極層を覆うように形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層とを有する有機機能性素子用基板であって、上記濡れ性変化層が非イオン性導電性無機材料を含有していることを特徴とする有機機能性素子用基板を提供する。
本発明によれば、上記濡れ性変化層中には、分散性が良好な非イオン性導電性無基材料が含有されており、濡れ性変化層が優れた電気特性を有するものとすることができる。また本発明によれば、上記濡れ性変化層が形成されていることから、この濡れ性変化層の表面に形成された濡れ性の異なるパターンを利用して、高精細に有機機能性層を形成することが可能な有機機能性素子用基板とすることができる。
上記発明においては、上記非イオン性導電性無機材料が酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、フッ化処理酸化スズ、インジウムスズ酸化物、およびヨウ化銅からなる群から選択される1つ、または2つ以上の物質であることが好ましく、特に酸化スズ、またはアンチモンドープ酸化スズ、フッ化処理酸化スズ、およびインジウムスズ酸化物からなる群から選択される1つ、または2つ以上の物質であることが好ましい。これにより、濡れ性変化層がより良好な電気特性を有するものとすることができるからである。
また上記発明においては、上記濡れ性変化層が光触媒を含有していてもよい。この場合、濡れ性変化層中の光触媒の作用を利用して濡れ性変化層表面に濡れ性が変化したパターンを形成することができ、別途光触媒を含有する層を用いる必要がない、という利点を有している。また、イオン性の導電性材料と光触媒とを混合して濡れ性変化層形成用塗工液を作製した場合、光触媒の分散安定性が低下することがあり、この溶液を用いて濡れ性変化層を均一に形成することが困難となる場合がある。しかしながら、本発明によれば、導電性材料として、非イオン性のものが用いられていることから、濡れ性変化層形成用塗工液中での光触媒等の分散安定性を良好なものとすることができ、濡れ性変化層が均一に形成されているものとすることができるのである。
また本発明は、上述した有機機能性素子用基板の、上記濡れ性変化層上に形成された有機機能性層と、上記有機機能性層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機機能性素子を提供する。
本発明によれば、上述した有機機能性素子用基板上に、濡れ性変化層が形成されていることから、この濡れ性変化層上に形成された濡れ性変化パターンの濡れ性の差を利用して、上記有機機能性層が高精細に形成されたものとすることができる。また、上記濡れ性変化層中には非イオン性導電性無機材料が含有されており、濡れ性変化層の電気特性が優れていることから、有機機能性層が効率的に機能を発揮することが可能となる。
また本発明は、上述した有機機能性素子の、上記有機機能性層が有機EL層であることを特徴とする有機EL素子を提供する。本発明によれば、上記濡れ性変化層が形成されていることから、濡れ性変化層表面の濡れ性の差を利用して、例えば発光層等の有機EL層が高精細なパターン状に形成されているものとすることができる。また上記濡れ性変化層の電気特性が優れていることから、有機EL層の発光特性を良好なものとすることができる。
本発明は、中性域のpHを有し、かつ酸化チタンと、撥液性を有する置換基がポリシロキサンを構成するSi原子に直接結合しているポリシロキサンと、非イオン性導電性無機材料とを含有することを特徴とする濡れ性変化層形成用塗工液を提供する。
本発明によれば、上記非イオン性導電性無機材料を含有することから、濡れ性変化層形成用塗工液を用いて濡れ性変化層を形成した際に、濡れ性変化層が導電性を有するものとすることができる。また、イオン性の導電性無機材料と光触媒とを含有させた場合には、分散安定性が低くなることがあり、光触媒の凝集等が生じる場合があるが、本発明においては、非イオン性導電性無機材料が用いられていることから、分散安定性が高く、安定して濡れ性変化層を形成することが可能なものとすることができる。
また本発明は、基材および上記基材上に形成された電極層を有するパターニング用基板の、上記電極層上に、上述した濡れ性変化層形成用塗工液を塗布して濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、上記濡れ性変化層にパターン状にエネルギーを照射することにより、上記濡れ性変化層上に撥液性領域と親液性領域とからなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程とを有することを特徴とする有機機能性素子用基板の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記濡れ性変化層形成用塗工液を用いることから、濡れ性変化層を安定して形成することができる。したがって、濡れ性変化パターン形成工程において、目的とするパターン状に高精細に濡れ性変化パターンを形成することができ、この濡れ性変化パターンの濡れ性の差を利用して高精細に有機機能性層を形成可能な有機機能性素子用基板を製造することができるのである。また、上記濡れ性変化層中には、非イオン性導電性無機材料が含有されていることから、濡れ性変化層の電気特性が優れたものとすることができ、高品質な有機機能性素子を製造することができる。
本発明によれば、目的とするパターン状に、高精細に有機機能性層を形成可能な有機機能性素子用基板とすることができる。また、濡れ性変化層の電気特性が優れており、有機機能性層の機能を十分に発揮させることが可能な有機機能性素子を形成可能な有機機能性素子用基板とすることができるという効果も奏する。
本発明は、各種ディスプレーや発光素子等に好適に用いられる有機EL素子や有機半導体素子、太陽電池素子等の有機機能性素子、その製造に用いられる有機機能性素子用基板、および濡れ性変化層形成用塗工液等に関するものである。以下、それぞれについてわけて説明する。
A.有機機能性素子用基板
まず、本発明の有機機能性素子用基板について説明する。本発明の有機機能性素子用基板は、基材と、上記基材上に形成された電極層と、上記電極層を覆うように形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層とを有する有機機能性素子用基板であって、上記濡れ性変化層が非イオン性導電性無機材料を含有していることを特徴とするものである。
本発明の有機機能性素子用基板は、例えば図1に示すように、基材1と、上記基材1上に形成された電極層2と、上記電極層2上に形成された濡れ性変化層3とを有するものである。またこの際、上記濡れ性変化層3は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであって、非イオン性導電性無機材料を含有している。
ここで、従来濡れ性変化層の電気特性を向上させるために、例えば鉄や銅を含むイオン性の導電性材料が用いられていた。しかしながらこのイオン性の導電性材料は溶液中での分散安定性が低い場合があり、また特に濡れ性変化層形成用塗工液中に光触媒が含有されている場合には、光触媒の分散安定性も低下させる要因となる場合もあった。そのため、濡れ性変化層を均一に形成することが難しかった。
一方、本発明においては、上記濡れ性変化層の電気特性を向上させるために、非イオン性の導電性無機材料が用いられており、この非イオン性導電性無機材料は、濡れ性変化層形成用塗工液中での分散安定性に優れている。したがって、本発明によれば、上記濡れ性変化層が均一に形成されたものとすることが可能であり、濡れ性変化層の電気特性を良好なものとすることができる。これにより、濡れ性変化層が、例えば電極層と有機機能性層との間でのキャリアの移動を促進すること等ができ、濡れ性変化層上に形成された有機機能性層がその機能を十分に発揮することが可能なものとすることができる。
また有機機能性素子用基板が、上記濡れ性変化層を有することから、上記濡れ性変化層にパターン状に光触媒の作用を及ぼすことにより、濡れ性の変化した濡れ性変化パターンを容易に形成することが可能であり、この濡れ性変化パターンの濡れ性の差を利用して、高精細に有機機能性層を形成することが可能となるのである。以下、本発明の有機機能性素子用基板の各構成について説明する。
1.濡れ性変化層
まず、本発明に用いられる濡れ性変化層について説明する。本発明に用いられる濡れ性変化層は、後述する電極層を覆うように形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであって、非イオン性導電性無機材料を含有しているものである。
上記濡れ性変化層は、上記非イオン性導電性無機材料を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではない。例えば、非イオン性導電性無機材料と、光触媒と、光触媒の作用により濡れ性が変化する材料とを含有する光触媒含有層(第1の態様)であってもよく、また光触媒を含有しておらず、非イオン性導電性無機材料とバインダとを含有する濡れ性可変層(第2の態様)であってもよい。なお、濡れ性変化層の形成に用いられる濡れ性変化層形成用塗工液中に、光触媒と導電性材料とが含有されている場合、分散安定性が低下することがあり、濡れ性変化層を均一に形成することができない場合がある。そこで本発明においては特に、上記濡れ性変化層が光触媒含有層である場合が、本発明の利点を活かせるという面で好ましい。以下、それぞれの態様ごとにわけて説明する。
(1)第1の態様
本発明に用いられる濡れ性変化層の第1の態様は、濡れ性変化層が、非イオン性導電性無機材料と、光触媒と、濡れ性が変化する材料とを含有する光触媒含有層とされている場合である。この光触媒含有層は、光触媒含有層自体に含有される光触媒の作用により濡れ性が変化することから、製造工程が少なく、効率的に濡れ性変化パターンを形成することができる点で有用である。
本態様においては、例えば図2に示すように、光触媒含有層3´に対して、フォトマスク11等を用いてパターン状にエネルギー12を照射することにより(図2(a))、光触媒含有層3´上に、濡れ性が変化した濡れ性変化パターン4が形成される(図2(b))。この際、通常、上記エネルギー照射された部分が親液性領域、エネルギー照射されていない領域が撥液性領域として用いられることとなる。
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、本態様の有機機能性素子用基板を用いて有機機能性素子を製造する際に使用される有機機能性層形成用塗工液に対する濡れ性が良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、有機機能性層形成用塗工液に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
本態様に用いられる光触媒含有層はエネルギー照射された部分の液体との接触角が低下するものであることが好ましく、エネルギー照射により形成される親液性領域と、エネルギー未照射の撥液性領域との、有機機能性層形成用塗工液に対する接触角は、少なくとも1°以上、好ましくは5°以上、特に10°以上異なることが好ましい。
またエネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、エネルギー照射により液体との接触角が低下して、表面張力40mN/mの液体との接触角が9°以下、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下の濡れ性を示すことが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、有機機能性層を形成する際に、この部分での有機機能性層形成用塗工液の広がりが劣る可能性があり、有機機能性層に欠け等の問題が生じる可能性があるからである。
一方、上記光触媒含有層は、エネルギー照射されていない部分、すなわち撥液性領域においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上の濡れ性を示すことが好ましい。エネルギー照射されていない部分は、撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、有機機能性層を形成する際に、パターニング特性が低下する可能性があるからである。
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液が用いられる。
本態様の光触媒含有層中に含有される非イオン性導電性無機材料としては、溶液中で電離しないものであって、導電性を有する無機材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、フッ化処理酸化スズ、インジウムスズ酸化物、およびヨウ化銅等が挙げられる。なお、上記イオン性導電性無機材料は光触媒含有層中に1種類のみ含有されていてもよく、また2種類以上が組み合わせて用いられていてもよい。
本態様においては、上記の非イオン性導電性無機材料の中でも酸化スズ、またはアンチモンドープ酸化スズ、フッ化処理酸化スズ、およびインジウムスズ酸化物からなる群から選択される1つ、または2つ以上の物質が用いられていることが好ましく、特に酸化スズおよびアンチモンドープ酸化スズが用いられていることが好ましい。スズ系の材料は、比較的安価であり、材料の安全性等の面で優れているからである。
上記非イオン性導電性無機材料は、光触媒含有層中に1重量%〜80重量%程度、中でも1重量%〜60重量%程度、特に1重量%〜40重量%程度含有されていることが好ましい。これにより、光触媒含有層の電気特性を良好なものとすることができるからである。
また、本態様に用いられる光触媒としては、光半導体として知られている例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化鉄(Fe)等のような金属酸化物を挙げることができる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。本態様においては、これらの中でも酸化チタンを用いることが特に好ましい。酸化チタンは、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定であり、毒性もなく、入手も容易である点で有利である。
酸化チタンには、正方晶系に属するアナターゼ型およびルチル型と、斜方晶系に属するブルッカイト型とがあり、本態様ではいずれも使用することができ、またこれらを混合して使用することもできる。本態様においてはこれらの中でも、アナターゼ型酸化チタンを用いることが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。このようなアナターゼ型酸化チタンとしては、例えば塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))を挙げることができる。また、ブルッカイト型酸化チタンも光触媒活性が高いことが知られており、好適に使用できる。
なお、光触媒含有層中に光触媒が含有されていることは、X線光電子分光法、ラザフォード後方散乱分光法、核磁気共鳴分光法、または質量分析法を用いて、あるいはこれらの方法を組み合わせて確認することができる。
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、この光触媒含有層の濡れ性を変化させることができ、かつ、有機機能性層と電極層との導通を阻害しない程度の量であれば特に限定されるものではない。
また、本態様の光触媒含有層中に含有される濡れ性が変化する材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解または変性されて光触媒含有層表面の濡れ性を変化させることが可能なものであれば特に限定されるものではないが、本態様においては特に、光触媒の作用により劣化、分解されないような高い結合エネルギーを有する主鎖をもつオルガノポリシロキサン等であることが好ましい。上記オルガノポリシロキサンは、バインダとしての役割も果たすことができ、光触媒含有層の強度を高いものとすることができるからである。
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水性や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。本態様においては、上記オルガノポリシロキサンの中でも、フルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。これにより、光触媒含有層の濡れ性の変化を大きいものとすることができるからである。なお、このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば特開2002−15867号公報に記載されているものと同様とすることができる。
また、本態様においては、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
またさらに、本態様においては、光触媒含有層に、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
また、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
また、上記光触媒含有層の形成方法としては、例えば非イオン性導電性無機材料と、光触媒と、上記オルガノポリシロキサン等とを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を電極層が形成された基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
本態様の光触媒含有層の厚みは、10nm〜1000nmであることが好ましく、中でも10nm〜500nm、特に10nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。光触媒含有層が薄すぎると濡れ性の違いが明確に発現しなくなり、濡れ性変化パターンの形成が困難になるからである。逆に、光触媒含有層が厚すぎると電気特性が低下し、本態様の有機機能性素子用基板を用いて有機機能性素子とした際に、有機機能性素子の電気特性に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
なお、上記光触媒含有層上に濡れ性変化パターンを形成する方法については、後で詳しく説明するので、ここでの説明は省略する。
(2)第2の態様
本発明に用いられる濡れ性変化層の第2の態様は、光触媒を含有しておらず、非イオン性導電性無機材料とバインダとを含有する層である。なおこの場合、濡れ性可変層上に濡れ性変化パターンを形成する際、別途光触媒を含有する層が必要とされる。例えば図3に示すように、濡れ性可変層6と電極層2との間に光触媒処理層5を形成し、フォトマスク11等を用いてエネルギー12をパターン状に照射することにより、光触媒処理層5中の光触媒の作用によって濡れ性可変層6の濡れ性を変化させ、濡れ性変化パターンを形成してもよい。また例えば図4に示すように、基体21と、その基体21上に形成された光触媒処理層5とを有する光触媒処理層側基板22を準備し、光触媒処理層5と濡れ性可変層6とを対向させた状態で、例えばフォトマスク11等を用いてエネルギー12を照射し、光触媒処理層5の作用によって濡れ性可変層6の濡れ性を変化させて、濡れ性変化パターンを形成してもよい。なお、上記光触媒処理層は、上述した光触媒含有層と同様の層とすることができる。
ここで、本態様に用いられる濡れ性可変層についても、エネルギー照射された部分の液体との接触角が低下するものであることが好ましく、エネルギー照射により形成される親液性領域と、エネルギー未照射の撥液性領域との、有機機能性層形成用塗工液に対する接触角は、少なくとも1°以上、好ましくは5°以上、特に10°以上異なることが好ましい。
またエネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、エネルギー照射により液体との接触角が低下して、表面張力40mN/mの液体との接触角が9°以下、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下の濡れ性を示すことが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、有機機能性層を形成する際に、この部分での有機機能性層形成用塗工液の広がりが劣る可能性があり、有機機能性層に欠け等の問題が生じる可能性があるからである。
一方、濡れ性可変層は、エネルギー照射されていない部分、すなわち撥液性領域においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上の濡れ性を示すことが好ましい。エネルギー照射されていない部分は、撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、有機機能性層を形成する際に、パターニング特性が低下する可能性があるからである。なお、上記液体との接触角は、上述した方法により求められる値である。
ここで、本態様に用いられる濡れ性可変層中に含有される非イオン性導電性無機材料は、上述した光触媒含有層中に含有される非イオン性導電性無機材料と同様とすることができる。また本態様に用いられる濡れ性可変層中には、非イオン性導電性無機材料は1重量%〜80重量%程度、中でも1重量%〜60重量%程度、特に1重量%〜40重量%程度含有されていることが好ましい。これにより、濡れ性可変層の電気特性を良好なものとすることができるからである。
また、本態様に用いられる濡れ性が変化する材料としては、上述した第1の態様に用いられるものと同様とすることができる。また、濡れ性可変層には、上記第1の態様の光触媒含有層に用いられているものと同様の界面活性剤や、添加剤等を含有させてもよい。また濡れ性可変層の形成方法としても、上述した光触媒含有層の形成方法と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
本態様の濡れ性可変層の膜厚としては、10nm〜1000nm程度、中でも10nm〜500nm程度、特に10nm〜200nm程度とされることが好ましい。
また、上記濡れ性変化パターンの形成方法については、後で詳しく説明するので、ここでの説明は省略する。
2.電極層
次に、本発明に用いられる電極層について説明する。本発明に用いられる電極層は、後述する基材上に形成されるものであれば特に限定されるものではなく、有機機能性素子用基板の用途等に応じて適宜選択される。またパターン状に形成されているものであってもよく、また全面に形成されているものであってもよい。
このような電極層は、透明性を有するものであってもよく、また有しないものであってもよい。また上記電極層は陽極であってもよく、また陰極であってもよい。通常、本発明の有機機能性素子用基板を用いて有機機能性素子を製造する際には、上記濡れ性変化層上に形成された有機機能性層上に第2電極層が形成されることとなる。この際、電極層および第2電極層のうち、どちらか一方が陽極、もう一方が陰極とされる。
陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料を用いることが好ましく、具体的にはITO、酸化インジウム、金のような仕事関数の大きい金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等を挙げることができる。
一方、陰極としては、電子が注入しやすいように仕事関数の小さい導電性材料を用いることが好ましく、例えばMgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類およびアルカリ土類金属類、または、アルカリ金属類およびアルカリ土類金属類の合金などが挙げられる。
陽極および陰極のどちらにおいても抵抗が小さいことが好ましく、一般には金属材料が用いられるが、有機化合物または無機化合物を用いてもよい。
このような電極層の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、
例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法などを挙げることができる。また、電極層のパターニング方法としては、所望のパターンに精度よく形成することができる方法であれば特に限定されないが、具体的にはフォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
3.基材
本発明に用いられる基材は、有機機能性素子用基板の用途等により適宜選択される。このような基材として具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等を挙げることができる。また、基材は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施したものであってもよい。
またさらに、基材表面と上記電極層や上記濡れ性変化層との密着性を向上させるために、基材上にアンカー層が形成されていてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
4.有機機能性素子用基板
本発明の有機機能性素子用基板は、上記基材、電極層、および濡れ性変化層を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば遮光部等、上記以外の部材が機能性素子用基板の用途に応じて、適宜形成されていてもよい。また上記濡れ性変化層が、上述した濡れ性可変層である場合等には、上記濡れ性可変層と隣接するように、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されていてもよい。
ここで、本発明の有機機能性素子用基板は、上記濡れ性変化層上に濡れ性変化パターンが形成されていないものであってもよいが、本発明においては特に、上記濡れ性変化層の表面に、濡れ性がパターン状に変化した濡れ性変化パターンが形成されていることが好ましい。これにより、本発明の有機機能性素子用基板を用いて有機機能性素子を形成する際、別途濡れ性変化パターンを形成する工程を行うことなく、濡れ性変化パターンに沿って高精細に有機機能性層を形成可能なものとすることができるからである。以下、上述した濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを形成する方法について説明する。
(濡れ性変化パターンの形成方法)
本発明においては、上記濡れ性変化層がエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化するものであることから、上記濡れ性変化層にパターン状に光触媒の作用を及ぼすことによって、容易に濡れ性変化パターンを形成することができる。濡れ性変化パターンとしては、濡れ性変化層上に形成される有機機能性層の形状に合わせて適宜選択されるものであり、そのパターンは特に限定されるものではない。
ここで本発明における濡れ性変化パターンの形成方法は、2つの態様がある。第1の態様としては、上述した有機機能性素子用基板中に光触媒を含有する層が形成されている場合、すなわち濡れ性変化層が光触媒含有層とされている場合、および濡れ性変化層が濡れ性可変層とされており、隣接して光触媒処理層が形成されている場合であり、第2の態様としては、上記有機機能性素子用基板中に光触媒が含有されていない場合、すなわち上記濡れ性変化層が濡れ性可変層とされており、隣接して光触媒処理層が形成されていない場合である。以下、それぞれの態様ごとにわけて説明する。
(1)第1の態様
まず、上記有機機能性素子用基板中に、光触媒が含有されている場合の濡れ性変化パターンの形成方法について説明する。上記有機機能性素子用基板中に、光触媒が含有されている場合、すなわち濡れ性変化層が光触媒含有層とされている場合、および濡れ性変化層が濡れ性可変層とされており、隣接して光触媒処理層が形成されている場合には、上記濡れ性変化層に対してパターン状にエネルギーを照射することにより、濡れ性変化パターンを形成することができる。
この際、照射するエネルギーは、上記光触媒を励起させて濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることが可能なものであれば、いかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
通常このようなエネルギー照射に用いられる光の波長は、400nm以下、好ましくは150nm〜380nmの範囲から設定される。これは、上記光触媒含有層や光触媒処理層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。また、上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、濡れ性変化層表面の濡れ性が変化するのに十分な照射量とする。この際、光触媒が含有されている層を加熱しながらエネルギー照射することにより、効率的に濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
また、上記エネルギーの照射方向は基材や電極層の透明性等に応じて適宜選択され、例えば基材側からであってもよく、また濡れ性変化層側からであってもよい。
(2)第2の態様
次に、上記有機機能性素子用基板中に、光触媒が含有されていない場合の濡れ性変化パターンの形成方法について説明する。上記有機機能性素子用基板中に光触媒が含有されていない場合には、上述したように、光触媒を含有する光触媒処理層と、上記濡れ性変化層とを対向させて配置し、エネルギーを照射することにより、上記濡れ性変化パターンを形成することができる。
このような濡れ性変化パターンの形成に用いられる光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板としては、通常、基体と、その基体上に光触媒処理層が形成されているものとすることができる。この際、上記光触媒処理層上、または基体上に遮光部が形成されていてもよく、この場合、光触媒処理層側基板側から全面にエネルギーを照射することにより、フォトマスク等を用いることなく、濡れ性変化パターンを形成することができる、という利点を有する。以下、このような光触媒処理層側基板に用いられる基体や光触媒処理層、および光触媒処理層側基板を用いたエネルギー照射方法について説明する。
a.光触媒処理層
まず、光触媒処理層側基板に用いられる光触媒処理層について説明する。本態様に用いられる光触媒処理層は、濡れ性変化層の濡れ性を変化させることが可能な構成であれば、特に限定されるものではない。
例えば図4に示すように、上記光触媒処理層5が基体21上に全面に形成されたものであってもよく、また光触媒処理層が、基体上にパターン状に形成されていてもよい。このように光触媒処理層をパターン状に形成することにより、エネルギー照射の際に、フォトマスク等を用いる必要がない、という利点を有する。この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではなく、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
また本態様に用いられる光触媒処理層は、光触媒単独で形成されたものであってもよく、バインダと混合して形成されたものであってもよい。この場合の光触媒処理層に用いられる光触媒やバインダ、光触媒の形成方法等は、上述した光触媒含有層に用いられるものと同様とすることができる。
また光触媒のみからなる光触媒処理層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒処理層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒処理層とすることが可能であり、これにより濡れ性変化層の濡れ性を均一に変化させることが可能であり、またバインダを用いる場合と比較して効率的に濡れ性変化層の濡れ性を変化させることが可能となる。
また、光触媒のみからなる光触媒処理層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
b.基体
次に、光触媒処理層側基板に用いられる基体について説明する。本態様に用いられる基体を構成する材料は、エネルギーの照射方向等により適宜選択される。このような基体としては、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
なお、基体表面と光触媒処理層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
c.エネルギー照射
次に、本態様におけるエネルギー照射について説明する。本態様においては、上記濡れ性変化層と、上記光触媒処理層とを所定の間隙をおいて配置し、所定の方向からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層上に濡れ性変化パターンを形成することができる。
上記の配置とは、実質的に光触媒の作用が濡れ性変化層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と濡れ性変化層とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
本態様において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって濡れ性変化層の濡れ性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の濡れ性変化層に対して特に有効である。
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の濡れ性変化層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と濡れ性変化層との間に形成することは極めて困難である。したがって、濡れ性変化層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して濡れ性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに濡れ性変化層上の濡れ性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
このように比較的大面積の濡れ性変化層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と濡れ性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層側基板と濡れ性変化層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
このように光触媒処理層と濡れ性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に濡れ性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が濡れ性変化層に届き難くなり、この場合も濡れ性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
本態様においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。また、本態様における濡れ性変化パターンの形成の際に用いられるエネルギー等については、上記第1の態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
B.有機機能性素子
次に、本発明の有機機能性素子について説明する。本発明の有機機能性素子は、上述した有機機能性素子用基板の上記濡れ性変化層上に形成された有機機能性層と、上記有機機能性層上に形成された第2電極層とを有するものである。
本発明の有機機能性素子は、例えば図5に示すように、基材1と、その基材1上に形成された電極層2と、電極層2上に形成された濡れ性変化層3と、その濡れ性変化層3の濡れ性が変化した濡れ性変化パターン4上に形成された有機機能性層7と、有機機能性層7上に形成された第2電極層8とを有するものである。
本発明によれば、上記有機機能性素子用基板には、上記濡れ性変化層が形成されていることから、この濡れ性変化層の濡れ性変化パターンを利用して、高精細に有機機能性層が形成されたものとすることができる。またこの際、上記濡れ性変化層中には非イオン性導電性無機材料が含有されていることから、濡れ性変化層の電気特性が優れているものとすることができ、有機機能性層の機能をより良好に発揮することが可能となるのである。
以下、本発明の有機機能性素子の各構成について説明する。なお、上記基材、電極層、濡れ性変化層、および濡れ性変化パターンについては、上述した「A.機能性素子用基板」の項で説明したので、ここでの詳しい説明は省略する。
1.有機機能性層
まず、本発明に用いられる有機機能性層について説明する。本発明に用いられる有機機能性層は、上記濡れ性変化層の濡れ性変化パターンを利用して形成されるものであり、機能を発揮する層であれば、特に限定されるものではない。また有機機能性層は複数の層が積層されたもの等であってもよい。このような有機機能性層の機能等は、有機機能性素子の種類に応じて適宜選択されることとなる。
このような有機機能性層は、例えば有機機能性素子が有機EL素子である場合には、少なくとも発光層を含む有機EL層とされる。また、有機機能性素子が有機薄膜太陽電池である場合には、例えばバルクヘテロ型の光電変換層等とされる。また、有機機能性素子が有機半導体素子である場合には、上記有機機能性層は有機半導体層とされる。
また上記有機機能性層は、通常、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により形成することができ、塗布方法や膜厚等、有機機能性層の種類に応じて適宜選択されることとなる。
2.第2電極層
次に、本発明に用いられる第2電極層について説明する。本発明に用いられる第2電極層は、上記有機機能性層上に形成されたものであれば特に限定されるものではなく、有機機能性層上全面に形成されているものであってもよく、またパターン状に形成されているものであってもよい。また陽極であっても陰極であってもよい。また透明性等は適宜選択される。このような第2電極層としては、上述した電極層と同様とすることができる。
3.有機機能性素子
本発明の有機機能性素子は、上述した有機機能性素子形成用基板上に有機機能性層および第2電極層が形成されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば第2電極層上に対向基板が形成されていてもよく、またその対向基板と第2電極層との間に遮光部等が形成されているものであってもよい。
本発明の有機機能性素子は、有機機能性層が有機EL層である有機EL素子、有機機能性層が光電変換層である有機薄膜太陽電池素子、または有機機能性層が有機半導体層である有機半導体素子であることが好ましい。このような有機機能性素子とすることにより、上述した濡れ性変化層の濡れ性の差を利用して高精細に有機機能性層が形成されたものとすることができ、また上記濡れ性変化層の電気特性を活かして、有機機能性層がその機能を十分に発揮することが可能となるからである。
C.有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。本発明の有機EL素子は、上述した有機機能性素子の有機機能性層が有機EL層とされているものである。本発明の有機EL素子は、例えば図6に示すように、基材1と、その基材1上に形成された電極層2と、その電極層2を覆うように形成された濡れ性変化層3上に形成された、濡れ性変化層3の濡れ性が変化した濡れ性変化パターン4と、その濡れ性変化パターン4上に形成された有機EL層7´と、その有機EL層7´上に形成された第2電極層8とを有するものである。また通常、電極層2の一部を覆うように、絶縁層9が形成されることとなる。
本発明によれば、上記濡れ性変化層中に非イオン性導電材料が含有されていることから、例えば発光層等の有機EL層が高精細なパターン状に形成されているものとすることができる。また上記濡れ性変化層が優れた電気特性を有することから、有機EL層の発光特性を良好なものとすることができるのである。以下、本発明の有機EL素子に用いられる有機EL層について説明する。なお、本発明の有機EL素子に用いられる基材、電極層、第2電極層、濡れ性変化層については、上述したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また上記絶縁層については、一般的な有機EL素子に用いられるものと同様とすることができる。
1.有機EL層
本発明に用いられる有機EL層は、上記濡れ性変化層上に形成されたものであり、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布によるウェットプロセスで有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
発光層以外に有機EL層内に形成される有機層としては、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層を挙げることができる。さらに、その他の有機層としては、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を挙げることができるが、通常これらは上記電荷注入層に電荷輸送の機能を付与することにより、電荷注入層と一体化される場合が多い。その他、有機EL層内に形成される有機層としては、キャリアブロック層のような正孔あるいは電子の突き抜けを防止し、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
本発明においては、上記濡れ性変化層が上記非イオン性導電性無機材料を含有していることから、この濡れ性変化層が、例えば正孔注入層もしくは正孔輸送層、または正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層からなる正孔注入輸送層としての役割を兼ねることができる。この場合には、有機EL層として、正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入機能および正孔輸送機能を有する単一の正孔注入輸送層を設ける必要はない。
以下、このような有機EL層の各構成について説明する。
(1)発光層
本発明における有機EL層の必須構成である発光層としては、例えば色素系発光材料、金属錯体系発光材料、高分子系発光材料等の発光材料を用いることができる。
色素系発光材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
また、金属錯体系発光材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロビウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
さらに、高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール等、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。
上記発光層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピング剤を添加してもよい。このようなドーピング剤としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜500nm程度とすることができる。
本発明においては、上述したように、濡れ性変化層が例えば正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入機能および正孔輸送機能を有する単一の層からなる正孔注入輸送層としての役割を兼ねる場合には、濡れ性変化層上に、有機EL層として発光層がパターン状に形成されていることが好ましい。発光層が赤・緑・青の3色の発光層となるようにパターン状に形成されていることにより、カラー表示が可能な有機EL素子とすることができるからである。
(2)電荷注入輸送層
本発明においては、電極層または第2電極層と発光層との間に電荷注入輸送層が形成されていてもよい。ここでいう電荷注入輸送層とは、上記発光層に電極層または第2電極層からの電荷を安定に輸送する機能を有するものであり、このような電荷注入輸送層を発光層と電極層または第2電極層との間に設けることにより、発光層への電荷の注入が安定化し、発光効率を高めることができる。
このような電荷注入輸送層としては、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送する正孔注入輸送層、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送する電子注入輸送層とがある。以下、正孔注入輸送層および電子注入輸送層について説明する。
(i)正孔注入輸送層
本発明に用いられる正孔注入輸送層としては、発光層に正孔を注入する正孔注入層、および正孔を輸送する正孔輸送層のいずれか一方であってもよく、正孔注入層および正孔輸送層が積層されたものであってもよく、または、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
本発明においては、通常、有機EL素子用基板の電極層が陽極となることから、正孔注入輸送層は発光層と電極層との間に形成される。
正孔注入輸送層に用いられる材料としては、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン誘導体等を用いることができる。具体的には、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
また、正孔注入輸送層の厚みとしては、陽極から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されないが、具体的には0.5nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
(ii)電子注入輸送層
本発明に用いられる電子注入輸送層としては、発光層に電子を注入する電子注入層、および電子を輸送する電子輸送層のいずれか一方であってもよく、電子注入層および電子輸送層が積層されたものであってもよく、または、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
本発明においては、通常、第2電極層が陰極となることから、電子注入輸送層は発光層と第2電極層との間に形成される。
電子注入層に用いられる材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミリチウム合金、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、およびアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を用いることができる。
上記電子注入層の厚みとしては、電子注入機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
また、電子輸送層に用いられる材料としては、電極層もしくは第2電極層から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な材料であれば特に限定されるものではなく、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、またはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等を挙げることができる。
上記電子輸送層の厚みとしては、電子輸送機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層からなる電子注入輸送層としては、電子輸送性の有機材料にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属をドープした金属ドープ層を形成し、これを電子注入輸送層とすることができる。上記電子輸送性の有機材料としては、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体等を挙げることができ、ドープする金属としては、Li、Cs、Ba、Sr等が挙げられる。
上記の単一の層からなる電子注入輸送層の厚みとしては、電子注入機能および電子輸送機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
2.有機EL素子
本発明の有機EL素子は、上記基材、電極層、濡れ性変化層、有機EL層、および第2電極層を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば絶縁層やバリア層等、必要に応じて適宜有していてもよい。
D.濡れ性変化層形成用塗工液
次に、本発明の濡れ性変化層形成用塗工液について説明する。本発明の濡れ性変化層形成用塗工液は、中性域のpHを有し、かつ酸化チタンと、撥液性を有する置換基がポリシロキサンを構成するSi原子に直接結合しているポリシロキサンと、非イオン性導電性無機材料とを含有することを特徴とするものである。本発明の濡れ性変化層形成用塗工液が塗布されて形成された濡れ性変化層は、エネルギーが照射されることにより、液体との接触角が低下することとなる。
従来、濡れ性変化層形成用塗工液が塗布されて形成される濡れ性変化層の電気特性を改良するため、濡れ性変化層形成用塗工液中に、例えば鉄や銅等を含む金属塩を含有させる方法が用いられていた。しかしながら、上記イオン性導電性材料は、濡れ性変化層形成用塗工液中での分散安定性が低い場合があり、また特に中性域のpHを有する濡れ性変化層形成用塗工液中では、光触媒を凝集させる場合があった。そのため、濡れ性変化層形成用塗工液の製造の際や、濡れ性変化層を形成する際、複雑な条件調整を行う必要があった。
一方、本発明においては、非イオン性導電性無機材料が用いられていることから、濡れ性変化層形成用塗工液中での非イオン性導電性無機材料の分散性や、酸化チタンの分散性を良好なものとすることができ、均一に濡れ性変化層を形成することが可能となる。また濡れ性変化層形成用塗工液の調製の際や、濡れ性変化層を形成する際、複雑な条件調整を行う必要のないものとすることもできる。
以下、本発明の濡れ性変化層形成用塗工液について各材料ごとに説明する。
1.非イオン性導電性無機材料
まず、本発明の濡れ性変化層形成用塗工液に用いられる非イオン性導電性無機材料について説明する。本発明に用いられる非イオン性導電性無機材料は、溶液中で電離することのない、導電性の無機材料であって、濡れ性変化層が形成された際に、濡れ性変化層の電気特性を向上させることが可能なものであれば特に限定されるものではない。このような非イオン性導電性無機材料としては例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、フッ化処理酸化スズ、インジウムスズ酸化物、およびヨウ化銅等が挙げられる。なお、上記イオン性導電性無機材料は濡れ性変化層形成用塗工液中に1種類のみ含有されていてもよく、また2種類以上が組み合わせて用いられていてもよい。
本発明においては、上記の非イオン性導電性無機材料の中でも酸化スズ、またはアンチモンドープ酸化スズ、フッ化処理酸化スズ、およびインジウムスズ酸化物からなる群から選択される1つ、または2つ以上の物質が用いられていることが好ましく、特に酸化スズおよびアンチモンドープ酸化スズが用いられていることが好ましい。スズ系の材料は、比較的安価であり、材料の安全性等の面で優れているからである。
また、非イオン性導電性無機材料は、濡れ性変化層形成用塗工液の固形分中に、1重量%〜80重量%程度、中でも1重量%〜60重量%程度、特に1重量%〜40重量%程度含有されていることが好ましい。これにより、濡れ性変化層形成用塗工液が塗布されて濡れ性変化層とされた際、濡れ性変化層の電気特性が良好なものとすることができるからである。
上記非イオン性導電性無機材料の平均粒径としては、100nm以下であることが好ましく、中でも60nm以下とされていることが好ましい。これにより、形成される濡れ性変化層の平坦性を高いものとすることができるからである。
2.酸化チタン
次に、本発明の濡れ性変化層形成用塗工液に用いられる酸化チタンについて説明する。本発明の濡れ性変化層形成用塗工液に用いられる酸化チタンは、濡れ性変化層形成用塗工液を塗布した際に、光触媒として作用し、表面の濡れ性を変化させるものであれば特に限定されるものではなく、上述した「A.有機機能性素子用基板」の光触媒含有層の項で説明したものと同様とすることができる。
また、酸化チタンの粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こることから、本発明においては、平均粒径が100nm以下であることが好ましく、特に80nm以下の酸化チタンを使用することが好ましい。
また、酸化チタンは、濡れ性変化層形成用塗工液の固形分中に、5重量%〜80重量%程度、中でも20重量%〜80重量%程度、特に40重量%〜80重量%程度含有されていることが好ましい。これにより、濡れ性変化層形成用塗工液が塗布されて濡れ性変化層とされた際、エネルギー照射により濡れ性変化層の液体との接触角を変化させることができるからである。
3.ポリシロキサン
次に、本発明の濡れ性変化層形成用塗工液に用いられるポリシロキサンについて説明する。本発明に用いられるポリシロキサンは、撥液性を有する置換基がポリシロキサンを構成するSi原子に直接結合しているものである。ここで、撥液性を有する置換基として具体的には、アルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基等が挙げられる。この撥液性を有する置換基が、ポリシロキサンを構成するSi原子に直接結合していることから、濡れ性変化層形成用塗工液を塗布して濡れ性変化層を形成した際に、撥液性を発現することができるのである。また、この濡れ性変化層にエネルギーが照射されることにより、上記光触媒の作用によりこれらの置換基が分解等され、親液性を発現するのである。ここで、撥液性を有する置換基がポリシロキサンを構成するSi原子に直接結合するとは、O原子等を介さず、ポリシロキサンを構成する骨格のSi原子と、上記のような置換基が結合していることをいう。また、本発明に用いられる上記ポリシロキサンは、通常、複数のアルコキシル基、アセチル基、またはハロゲンを置換基として有するものである。
このような撥液性の置換基を有するポリシロキサンは、加水分解により縮合し、濡れ性変化層を形成した際に、主骨格が上記酸化チタンの光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えばゾルゲル反応等により加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するもの等を挙げることができる。
この場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物を含む珪素化合物の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であることが好ましく、上記2種類以上の珪素化合物等どうしの加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物等であってもよい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
本発明においては、上記撥液性を有する置換基の中でも、フルオロアルキル基であることが特に好ましい。上記フルオロアルキル基を含む珪素化合物として具体的には、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができ、例えば特開2002−15867号公報に記載されているものと同様とすることができる。
また、上記ポリシロキサンは、濡れ性変化層形成用塗工液の固形分中に、5重量%〜80重量%程度、中でも5重量%〜60重量%程度、特に5重量%〜40重量%程度含有されていることが好ましい。これにより、濡れ性変化層形成用塗工液が塗布されて濡れ性変化層とされた際、エネルギー照射により濡れ性変化層の液体との接触角が変化するものとすることができるからである。
4.濡れ性変化層形成用塗工液
次に、本発明の濡れ性変化層形成用塗工液について説明する。本発明の濡れ性変化層形成用塗工液は、中性域のpHを有し、かつ上述した非イオン性導電性無機材料、酸化チタン、および上述したポリシロキサンを含有することを特徴とするものである。
本発明の濡れ性変化層形成用塗工液における中性域のpHとは、pHが、4.5〜9.5の範囲内をいうこととし、中でも4.5〜8の範囲内、特に4.5〜7.5の範囲内であることが好ましい。
ここで、本発明の濡れ性変化層形成用塗工液は、上述した酸化チタンおよびアルキルシリケートを含有する中性酸化チタンゾル液と、上記ポリシロキサンの加水分解液とを分けて調製してこれらを混合し、さらにこの混合液に、上述した非イオン性導電性無機材料が分散された分散液を混合して製造されることが好ましい。
これは、本発明に用いられる上記ポリシロキサンは、中性域では加水分解され難い性質を有するものが多く、上記中性酸化チタンゾル液中に、上記ポリシロキサンを加えた場合、熱を加えたとしても加水分解され難いからである。
中性酸化チタンゾル液の調製に用いられるアルキルシリケートは、上記酸化チタンの分散安定化剤として用いられるものであり、濡れ性変化層形成用塗工液を中性域で安定なものとする目的で用いられる。
このようなアルキルシリケートの一般式としてSinn-1 (OR)2n+2(但しSiはケイ素、Oは酸素、Rはアルキル基を示す。)で表される化合物である。ここで、nは1〜6の範囲内、Rは炭素数が1〜4のアルキル基であるものがケイ素の割合が多い点でより好ましい。
以下、具体的な濡れ性変化層形成用塗工液の製造方法について説明する。
(濡れ性変化層形成用塗工液の製造方法)
本発明において、上述したように、酸化チタンおよびアルキルシリケートを含有する中性酸化チタンゾル液と、上記ポリシロキサンの加水分解液とを分けて調製してこれらを混合し、さらにこの混合液に、上述した非イオン性導電性無機材料が分散された分散液を混合して製造されることが好ましい。
酸化チタンと、アルキルシリケートとを有する中性酸化チタンゾル液としては、アルキルシリケートと酸化チタンゾルとを混合した後、中性化することにより得ることができる。ここで、中性酸化チタンゾル液のpHは、中性酸化チタンゾル液中で、上記酸化チタン等の分散が安定な領域をいうこととし、具体的には、pHが、4.5〜9.5の範囲内、中でも4.5〜8の範囲内、特に4.5〜7.5の範囲内であることが好ましい。
上記酸化チタンゾルは、常法により得られる酸化チタンゾルを用いることが可能であり、例えば、含水酸化チタンなどの酸化チタンを一塩基酸またはその塩で解膠処理したり、四塩化チタンを低温の水に添加した後透析したり、塩酸水溶液にチタンアルコキシドを添加したりして得ることができる。
次に、これらの酸化チタンゾルとアルキルシリケートとを常法により混合する。両者を混合する際には、酸化チタン水性ゾルを親水性有機溶媒で希釈したり、あるいは、アルキルシリケートも親水性有機溶媒で希釈してもよい。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、ケトン類、カルボン酸エステル類など、親水性のものであれば特に限定されるものではないが、アルキルシリケートの溶解性が良好である点でアルコールが好ましい。酸化チタンゾルの親水性有機溶媒による希釈の倍率は重量比で1.2〜5倍がより好ましく、一方、アルキルシリケートを親水性有機溶媒による希釈の倍率は重量比で1.5〜5倍がより好ましい。酸化チタンゾルおよびアルキルシリケートの両者を親水性有機溶媒で希釈した後に混合することにより、酸化チタンの凝集を生じさせることなく両者を混合することができるためより好ましい。酸化チタンゾルの希釈用の親水性有機溶媒と、アルキルシリケートの希釈用の親水性有機溶媒とは、必ずしも同じ化合物を用いる必要はない。
次いで、得られた混合物を中性化することにより中性酸化チタンゾルを得ることができる。上記酸化チタンゾルの中性化は、常法により行うことができるが、イオン交換による方法、中和剤を添加する方法、透析による方法から選ばれる少なくとも一つの方法により行うことが好ましい。特に、イオン交換した後、中和剤を添加して中性化することが、不純物の含有量を少なくすることができるためより好ましい。
イオン交換する方法においては、イオン交換樹脂を用いて行う。例えば、上記混合物に陽イオン交換樹脂または陰イオン交換樹脂を添加して陽イオン、陰イオンを除去し、その後、イオン交換樹脂を分離する。イオン交換樹脂としては、強酸性、弱酸性の区別無く、また、陰イオン交換樹脂としては、強塩基性、弱塩基性の区別無く、いずれも、例えば市販のアーバンライト(オルガノ社製)、ダイアイオン(三菱化学社製)などを用いることができる。
また、中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などのアルカリ、あるいは、塩酸、硝酸、酢酸、塩素酸、クロル酸などの一塩基酸またはその塩、硫酸、フッ酸などの酸またはその塩を用いることができる。
このようにして得られた中性酸化チタンゾルを、その用途に応じて所望の固形分濃度に調整したり、所望のpHに調整したりしてもよい。
またポリシロキサンの加水分解液としては、上述したポリシロキサンを、無機酸または有機酸を溶解させた水またはアルコール等に加水分解させることにより得ることができる。ここで、アルコールの炭素数は4以下であることが好ましい。
この際、ポリシロキサンの加水分解液に用いられるポリシロキサンおよび必要に応じて用いられるアルコキシシランの量は10重量%〜90重量%の範囲内、中でも50%〜80%の範囲内であることが好ましい。
またこの際、上記ポリシロキサンの加水分解液が強酸である場合には、上記中性酸化チタンゾル液と混合する際に、中性酸化チタンゾルの分散状態が変化させ、酸化チタンが微分散された状態を壊す可能性がある。そのため、最終的に中性酸化チタンゾルに加える際の上記加水分解液のpHは、2〜7の範囲内、好ましくは5〜7の範囲内となる。
次に、上記中性酸化チタンゾル液と、上記ポリシロキサンの加水分解液とを混合する。この際、上記中性酸化チタンゾル液と、ポリシロキサンの加水分解液との混合比は、上記中性酸化チタンゾル液の重量を1とした場合に、ポリシロキサンの加水分解液の重量が0.1〜1、中でも0.1〜0.5の範囲内であることが好ましい。これにより、中性域のpHとすることができ、また安定な濡れ性変化層形成用塗工液とすることができるからである。
続いて上記混合液に、非イオン性導電性無機材料の分散液を混合する。非イオン性導電性無機材料の分散液としては、上述した非イオン性導電性無機材料を水、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドに分散させたものとすることができる。また混合量については、濡れ性変化層形成用塗工液が塗布されて形成される濡れ性変化層に必要とされる電気特性に合わせて、適宜選択されることとなる。
E.有機機能性素子用基板の製造方法
次に、本発明の有機機能性素子用基板の製造方法について説明する。本発明の有機機能性素子用基板の製造方法は、基材および上記基材上に形成された電極層を有するパターニング用基板の、上記電極層上に、上述した濡れ性変化層形成用塗工液を塗布して濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、上記濡れ性変化層にパターン状にエネルギーを照射することにより、上記濡れ性変化層上に撥液性領域と親液性領域とからなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程とを有することを特徴とする方法である。
本発明の有機機能性素子用基板の製造方法は、例えば図7に示すように、基材1およびその基材1上に形成された電極層2が形成されたパターニング用基板の電極層2上に、上述した濡れ性変化層形成用塗工液を塗布して濡れ性変化層3を形成する濡れ性変化層形成工程(図7(a))と、その濡れ性変化層に、例えばフォトマスク11等を用いてエネルギー12を照射し(図7(b))、エネルギー照射に伴う酸化チタンの作用により表面が親液性とされた親液性領域(aで示される領域)、および濡れ性が変化せず、撥液性である撥液性領域(bで示される領域)からなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程(図7(c))とを有するものである。
本発明によれば、上記濡れ性変化層形成用塗工液を用いることから、濡れ性変化層を安定して形成することができる。したがって、濡れ性変化パターン形成工程において、目的とするパターン状に高精細に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成することができ、この濡れ性変化パターンの濡れ性の差を利用して高精細に有機機能性層を形成可能な有機機能性素子用基板を製造することができるのである。また、上記濡れ性変化層中には、非イオン性導電性無機材料が含有されていることから、濡れ性変化層の電気特性が優れたものとすることができ、高品質な有機機能性素子を製造することができる。
以下、本発明の有機機能性素子用基板の製造方法の各工程について説明する。
1.濡れ性変化層形成工程
まず、本発明の有機機能性素子用基板の製造方法における濡れ性変化層形成工程について説明する。本発明の有機機能性素子用基板の製造方法における濡れ性変化層形成工程は、基材と、その基材上に形成された電極層とを有するパターン形成用基板上に、上述した中性域のpHを有し、かつ非イオン性導電性無機材料と、酸化チタンと、撥液性を有する置換基がポリシロキサンを構成するSi原子に直接結合しているポリシロキサンとを含有する濡れ性変化層形成用塗工液を塗布し、乾燥または硬化させることにより、エネルギー照射部分の濡れ性が、液体との接触角が低下する方向に変化する濡れ性変化層を形成する工程である。
上記濡れ性変化層形成用塗工液の塗布は、上記濡れ性変化層形成用塗工液を均一に塗布することが可能な方法であれば、特にその塗布方法は限定されるものではなく、例えばスピンコート法、スリットコート法、ビードコート法、スプレーコート法、ディップコート法、またはスリットコート法およびスピンコート法等を用いることができる。
またこの濡れ性変化層形成用塗工液の乾燥または硬化方法は、特に限定されるものではないが、本発明においては、ホットプレート、赤外線ヒーター、またはオーブンを用いて行われることが好ましい。これにより、均一な濡れ性変化層を形成することが可能となるからである。
なお、本発明に用いられる基材およびその上に形成された電極層を有するパターン形成体用基板については、上述した「A.有機機能性素子用基板」の項で説明した基材および電極層が積層されたものとすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
また、濡れ性変化層形成用塗工液については、上述した「D.濡れ性変化層形成用塗工液」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
2.濡れ性変化パターン形成工程
次に、本発明のパターン形成体の製造方法における濡れ性変化パターン形成工程について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法におけるパターン形成工程は、上記濡れ性変化層上にパターン状にエネルギーを照射することにより、上記濡れ性変化層上に撥液性領域と親液性領域とからなる濡れ性変化パターンを形成する工程である。
本発明においては、エネルギー照射により形成される親液性領域と、エネルギー未照射の撥液性領域との、有機機能性層形成用塗工液に対する接触角が、少なくとも1°以上、好ましくは5°以上、特に10°以上異なることが好ましい。
またエネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が9°以下、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下の濡れ性を示すことが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、有機機能性層を形成する際に、この部分での有機機能性層形成用塗工液の広がりが劣る可能性があり、有機機能性層に欠け等の問題が生じる可能性があるからである。
一方、エネルギー照射されていない部分、すなわち撥液性領域においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上の濡れ性を示すことが好ましい。エネルギー照射されていない部分は、撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、有機機能性層を形成する際に、パターニング特性が低下する可能性があるからである。
なお、本工程におけるエネルギーの照射方法や照射されるエネルギーについては、上述した「A.有機機能性素子用基板」の濡れ性変化パターンの形成方法の項で説明した方法と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
3.その他
本発明の有機機能性素子用基板の製造方法においては、上記濡れ性変化層形成工程、および濡れ性変化パターン形成工程を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば上述した工程以外に、濡れ性変化層形成用塗工液調製工程等を有していてもよい。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例]
(濡れ性変化層形成用塗工液の製造)
<中性酸化チタンゾル液の製造>
酸性の酸化チタンゾルSTS-01(石原産業(株)製、商品名)と分散安定剤メチルシリケート51(一般式Sin-1(OCH2n+2(但しnは3〜5)、コルコート(株)製、商品名)とを混合し、これに湿潤した陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA-910(オルガノ(株)製、商品名)を攪拌しながら添加し、イオン交換により中性化した。次いで、イオン交換樹脂をろ過後、メタノールを添加してpH6.4、固形分0.25%の中性酸化チタンゾル液を調製した。この試料は、メチルシリケート中のケイ素をSiOに換算した量と酸化チタン中のチタンをTiOに換算した量との重量比(SiO/TiO)が1であった。
<フルオロアルキルシラン加水分解液の製造>
続いて、イソプロピルアルコール30gとフルオロアルキルアルコキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製TSL8233)とテトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製TSL8114)3gと0.05規定塩酸2.5gとを混合し8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより100倍に希釈し、フルオロアルキルシラン加水分解液を調整した。
<中性酸化チタンとフルオロアルキルシラン加水分解液の混合>
上記中性酸化チタンゾルと上記フルオロアルキルシラン加水分解液とを混合し、pH5.7の実質的に中性の撥液性の混合液を得た。
<上記混合液と導電性材料分散液の混合>
上記混合液と非イオン性導電性無機材料の水分散体SN-100S(石原産業(株)製、商品名)とを混合し、濡れ性変化層形成用塗工液を得た。上記濡れ性変化層形成用塗工液の平均粒径を濃厚系粒径アナライザー(FPAR-1000、大塚電子社製)により測定したところ、80nmであった。
(濡れ性変化層の形成および濡れ性変化パターンの形成)
25mm角ガラス基板からなる基材上に、電極層として透明電極(ITO)を形成した。続いて、この電極層を覆うように、スピンコータを用い、上述した濡れ性変化層形成用塗工液を塗布し、乾燥膜厚が100nmになるように成膜した。次に上記濡れ性変化層に、パターンマスクを介して紫外線を照射することで、濡れ性変化性層上に濡れ性の高いパターンを形成した。
(有機EL層の形成)
上記導電性材料含有濡れ性変化層上の濡れ性の高い部分にマイクロシリンジを用いたシリンジ法を用いて下記の有機EL層形成用塗工液を塗布し、乾燥させて有機EL層を形成させた。
<有機EL層形成用塗工液>
ポリフェニレンビニレン誘導体(ADS製 ADS100RE)1gをトルエン(関東化学(株)製 ELグレード)99gで溶解させて有機EL層形成用塗工液を得た。
(電子注入輸送層および第2電極の形成)
上記有機EL層上に、LiF膜3nm、Ca膜10nm、およびAl膜150nm厚になるように真空蒸着し、電子注入層および第2電極を形成した。これにより、有機EL素子を得た。
[比較例]
導電性材料分散液として、塩化第二鉄をイソプロピルアルコールで溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。この際、上記濡れ性変化層形成用塗工液の平均粒径を濃厚系粒径アナライザー(FPAR-1000、大塚電子社製)により測定したところ、700nmであった。
[評価]
比較例では、均一に濡れ性変化層を形成することが困難であった。また、実施例の電気特性を確認したところ、導電性材料を添加することによって素子の駆動電圧が低下することを確認した。
本発明の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。 本発明に用いられる濡れ性変化層のパターニング方法を説明する説明図である。 本発明に用いられる濡れ性変化層を説明するための説明図である。 本発明に用いられる濡れ性変化層を説明するための説明図である。 本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の一例を示す工程図である。 本発明の有機EL素子用基板の製造方法の一例を示す工程図である。
符号の説明
1 …基材
2 …電極層
3 …濡れ性変化層
4 …濡れ性変化パターン
5 …光触媒処理層
6 …濡れ性可変層
7 …有機機能性層
8 …第2電極層
9 …絶縁層

Claims (8)

  1. 基材と、前記基材上に形成された電極層と、前記電極層を覆うように形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層とを有する有機機能性素子用基板であって、
    前記濡れ性変化層が非イオン性導電性無機材料を含有していることを特徴とする有機機能性素子用基板。
  2. 前記非イオン性導電性無機材料が酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、フッ化処理酸化スズ、インジウムスズ酸化物、およびヨウ化銅からなる群から選択される1つ、または2つ以上の物質であることを特徴とする請求項1に記載の有機機能性素子用基板。
  3. 前記非イオン性導電性無機材料が、酸化スズ、またはアンチモンドープ酸化スズ、フッ化処理酸化スズ、およびインジウムスズ酸化物からなる群から選択される1つ、または2つ以上の物質であることを特徴とする請求項2に記載の有機機能性素子用基板。
  4. 前記濡れ性変化層が光触媒を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の有機機能性素子用基板。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の有機機能性素子用基板の、前記濡れ性変化層上に形成された有機機能性層と、前記有機機能性層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機機能性素子。
  6. 請求項5に記載の有機機能性素子の、前記有機機能性層が有機エレクトロルミネッセント層であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
  7. 中性域のpHを有し、かつ酸化チタンと、撥液性を有する置換基がポリシロキサンを構成するSi原子に直接結合しているポリシロキサンと、非イオン性導電性無機材料とを含有することを特徴とする濡れ性変化層形成用塗工液。
  8. 基材および前記基材上に形成された電極層を有するパターニング用基板の、前記電極層上に、請求項7に記載の濡れ性変化層形成用塗工液を塗布して濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、
    前記濡れ性変化層にパターン状にエネルギーを照射することにより、前記濡れ性変化層上に撥液性領域と親液性領域とからなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と
    を有することを特徴とする有機機能性素子用基板の製造方法。
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