JP4563023B2 - インジケータ付きicカード - Google Patents
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Description
市場での使用中に壊れ、解析依頼等のために返却されたICカードは、それがどのような環境(温度、水、薬品への浸漬の有無等)で使用されたのかを知る手がかりは、殆どの場合なく、ICカードが使用可能な環境条件を逸脱して壊れたのか、正常な条件下で壊れたのかが判別できないケースが多い。
そこで、ICカードに、水、薬品、あるいは温度等のインジケータを組み込みすることが考えられるが、長期間使用でき、確実に検知する機能を有することが必要となる。
特許文献1は、センシング機能付きトランスポンディングカードであって、温度、湿度、気圧、時刻、脈拍、体温をICカードのセンサで検知し、無線で送信することを提案しているが、各センサの具体的構成については記載していない。
特許文献2は、化学センサカードについて提案している。このものは、カードに、固体化学センサと、増幅回路と、演算回路と、表示器と、電源とから構成される化学センサがICカードに組み込まれているものであるが、装置が複雑、かつ高コストになることが懸念される。
特許文献4は、応力センサおよび温度センサを備えるICカードを提案している。ICカードに加えられる過度の応力、温度条件に対して警告を発し、ICカードの故障を未然防止しようとするものである。カードに加えられる応力や温度をICチップのメモリに記憶することを提案しているが、特殊なICチップが必要になると考えられる。
特許文献5は、水濡れ検知用試験紙の製造方法等について、特許文献6は、水濡れ検知用印刷インキ組成物について、特許文献7は、水中浸漬時間インジケータについて記載している。いずれも本願に参照できる技術である。特許文献8、特許文献9、特許文献10は、不可逆性の温度履歴インジケータ等について記載している。当該技術も本願に参照できる技術である。
上記のように、ICカードにインジケータまたはセンサを組み込みすること自体は、提案された先行技術が存在するが、実用的なインジケータまたはセンサを組み込みしたICカード技術は検出できない。すなわち、従来の電気回路的に構成するセンサでは、ICカードの構成を複雑にし、かつコストを高くする問題がある。
そこで、本願発明者は、温度履歴、または水濡れ履歴を化学的に記録できる薄層にした実用的な履歴記録性ラベルを研究し、かつICカードの貼着位置を研究して本発明の完成に至ったものである。
また、通常の使用条件で使用してICカードに不具合が生じたと、間違って認識または報告された場合であっても、正しい使用履歴を把握できるので、過剰な対応を排除して、必要な最小限の対策を講じることができる。
本発明のICカードをまず、その形態から説明することとする。
図1、図2は、本発明のインジケータ付きICカードの第1実施形態、図3は、同第2実施形態、図4は、同第3実施形態、を示す図、図5は、温度履歴記録性ラベルの断面構成を示す図、図6は、水濡れ履歴記録性ラベルの断面構成を示す図、である。
ICモジュールを当該凹部に装着する際は、第1凹部51面またはICモジュールに熱接着テープ13を貼着して熱シールするか液状接着剤を用いて固定する方法を採用するが、完全に気密にはならないので、ICカードを水に浸漬した場合は水が下す浸入する。
また、ICモジュール埋設用凹部5は、ICモジュールの端子基板の実寸法よりは、縦横方向ともに、0.1mm程度大きくして熱シールの際の空気逃げ道とするのが通常である。したがって、この端子基板との隙間からも水が浸入することになる。この浸入した水が長期間にわたる場合は、モールド樹脂を浸透してワイヤやICチップに悪影響を及ぼすことになる。
検知ラベル自体は、1mm角から2mm角程度の大きさにもできるので、第1凹部表面に貼着する面積を確保できる。図1のように、第1凹部51のコーナー部2箇所に貼ることができ、4箇所であってもよい。第1凹部のコーナー部とするのは、辺の中央は接着強度を高めることが好ましいという理由と、特に第1凹部面短辺の中央は、接触・非接触両用ICカードでは、カード基体内のアンテナコイルとの接続に利用されることが多いからである。
なお参考のためであるが、ICモジュールは、ACF(Anisotropic Conductive Film)方式を採用して樹脂モールドしない方法が実用化されてきていて薄層化が促進されると考えられる。また、ICチップの回路面(パッド側)を基板側にしてACFと金バンプにより実装する方法によってもICモジュールの厚みを小さくできる。
第2実施形態では、上記第1実施形態と組み合わせして、ICカードの短辺側側面6に凹溝7を掘削し、当該凹溝7内に検知ラベル2を貼着することを特徴とする。
検知ラベル2を見えなくすることによる外観性の低下防止と不正行為の防止効果が同様に期待できる。また、ICモジュール装着側と反対側の短辺に設けるので、カード全体の履歴がわかり、カード全体の加熱か、局所的な加熱かの判断が可能となる。
側面からの凹溝7の掘削は、ICモジュール埋設用凹部と同様に、エンドミルによるザグリ方法で掘削するが、0.3〜0.5mm程度の細径ミル刃を用いる必要がある。深さは、3〜5mm程度もあれば十分である。図3の場合、凹溝7は1箇所であるが、短辺側側面6に2箇所設けてよいのは勿論のことである。
第3実施形態では、前記第1実施形態と組み合わせして、ICカードの短辺側上縁面8に凹溝9を掘削し、当該凹溝9内に検知ラベル2を貼着することを特徴とする。
第3実施形態の場合、凹溝9の検知ラベル2はICカード表面から視認可能であるが、敢えて見えるようにすることで、使用条件内での使用であると偽って報告することに対し、警告する効果を発揮できる。また、不正でない場合には、ICモジュール部とカード端部の両方の温度履歴がわかり、カード全体の加熱か局所的な加熱かの判断が可能となる。 凹溝9は、検知ラベル2の厚み程度の深さがあれば十分であるので、エンドミルで容易に掘削できる。
また、可逆的なラベルでは過去の状態を知ることができないので、不可逆であって履歴として残るものが必要となる。
そこで、温度履歴、および水濡れ履歴記録性ラベルの形態について検討してみる。
温度履歴記録性ラベルは、一般に、着色した示温素子とその背面にあるブラックカーボン層とからなるラベルであって、規定温度に達すると、示温素子が融けて流れ、背後にあるブラックカーボン層がインジケータ窓部に黒く見える構成になっている。表面は透明な窓部を有するカバーフィルムで覆われている。ブラックカーボン層の下面は粘着剤付きベースとなっている。
これらの熱溶融性物質には、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等の染料、有機または無機顔料等の色素が添加されている。
「ヒートラベル」は、ベースがポリエステルフィルムで、これにアクリル製の粘着剤を付着している。ラベルの厚みは、約300μmである。通常品は5点表示(5種の温度段階を表示する。)や6点表示、1点表示であるが、5〜6点表示のものから必要な領域を1×3mm程度に切り出して使用することが可能である。「テンプ・プレート」もほぼ同様の構成であるが、1mm角程度での使用が可能である。
しかし、上記市販品は、このものとは異なり吸収性の紙製基材は使用していない模様である。
また、これより高い温度(例えば、95°C〜100°C)のものも一緒に貼り、より高い温度がかかったことを履歴として残すことも有効である。
なお、参考のためであるが、3GPP規格(TS11.11)では、最大85°Cまでの動作保証の要求がある。
水濡れ履歴記録性ラベルには、特許文献7(特開2003−130862号公報)の先行技術がある。このものは、水溶性染料と水溶性染料拡散性インキビヒクルを含有するインキ、または水分指示薬含有シートからなる変色層が、非透水性基材上に付されて、水溶性樹脂フィルムで覆われていることを特徴とする水中浸漬時間インジケータ、を提案している。しかし、このものの市販品を未入手であるため、本願出願人による前記した特許文献5、特許文献6を参照して水濡れ履歴記録性ラベルを試作することとした。
「水に濡れると色調変化を示す試薬」としては、フルオレセインもしくはフルオレセインナトリウム(ウラニン)を挙げているが、水に濡れることにより色調変化を起こし、乾燥後も当該変化色調を維持するかぎりこれには限定されない。また、塩基性紙としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム繊維で抄紙された紙を、水溶性紙として推奨している。
また、「水に濡れると色調変化を示す試薬」の添加量は、使用する上記溶剤に対して、0.1〜0.5%(質量)、好ましくは0.2%(質量)である。フルオロセインナトリウム(ウラニン)は、水溶性試薬であるため、過剰に加えると色素の流れ出しがおこるため好ましくない。また、0.2%(質量)程度で基材紙に含浸処理を施すと、乾燥時と水濡れ時に顕著な色彩変化を示し、色素の流れ出しの少ない水濡れ試験紙を得ることが容易になり有利である。
非透水性基材としては、薄層の(8〜20μm程度)のプラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)等を好ましく用いることができる。
市販の水溶性樹脂フィルム、例えば、日本合成株式会社製のハイセロン(商標)には各種の品番があるため、冷水に溶解するタイプから温湯でのみ溶解するもの等、各種のフィルムを選択可能である。例えば、Hタイプは冷水では溶解しないが温水では溶解するため、湯温度に接したことを検知できる。
水溶性フィルム222を、厚みの異なる部分を有する塗膜とすれば、水浸漬時間の長短を知ることができる。ただし、水溶性フィルム222の水溶解時間は、湯温や撹拌の影響を大きく受けるので、目安となる程度である。
<水濡れ履歴記録性ラベルの準備>
2−メトキシエタノール60質量部とメチルエチルケトン(MEK)40質量部の混合溶液に、ウラニン0.2質量部および中性樹脂であるVA64(BASF(株)製コポリビドン樹脂)5質量部を加え、溶解して調整したコーティング溶液に、カルボキシメチルセルロース−ナトリウム繊維で抄紙した紙である(三島製紙株式会社製「MDP」ツボ量120g/m2 )のロール紙をディップコーターを用いて漬け込みし、乾燥処理し、水濡れ試験紙221を準備した(図6参照)。この試験紙は、水濡れすると瞬時に橙赤色から黄緑蛍光色に変色し、一度濡れると乾燥させても黄色を維持していた。
アイピー技研株式会社製の「テンプ・プレート」を購入し、4点表示ラベルから、87°Cと98°Cの部分を、1mm×1mmの大きさに切り出しし、温度履歴記録性ラベル21として準備した。温度履歴記録性ラベル部分の厚みは、約300μm(粘着剤付き)である。
この検知ラベル2は、示温素子の下面にブラックカーボン層があるので、規定温度に達し、示温素子が融解すると黒色に見える。
接触型ICチップが実装されたCOT(Chip On Tape;ガラスエポキシ基材、厚み110μm)のICチップやワイヤボンディング部周囲を囲みエポキシ系樹脂を滴下して樹脂モールドした。ICモジュール基板の大きさは、13.0mm×11.8mmとし、モールド樹脂部12は、大きさは8.0mm×8.0mm、基板厚みを含めないモールド樹脂部12の高さは、440μmとなった。
このCOT裏面に、モールド樹脂部12と温度履歴記録性ラベル部分(2箇所)を除いて第1凹部面に接する部分が被覆されるように、熱接着テープ13(厚み;50μm)を打ち抜いてラミネートした。熱接着テープはラミネートにより、約10μm圧縮する。
コア基材として、厚み360μmの硬質白色塩化ビニルシートを用い、これと同一材料で同一厚みの他のコアシート12の2枚を重ねて中心層とし、その両面にオーバーシートとして、厚み50μmの透明塩化ビニルシートを重ね、この4枚を仮止めした後、プレス機に導入して熱プレスを行った。熱プレス条件は150°C、98N/cm2 、時間20分、とした。その後、打ち抜き機により、各カードサイズの個片に打ち抜きした。
ICモジュール埋設用凹部5を、ザグリ機のNC切削加工により形成した。
まず、ICモジュール基板(接触端子板)と熱接着テープ13の厚みの合計厚さに相当する深さに第1凹部51を切削した。この段階での第1凹部51の大きさは、13.1×11.9mm、深さは150μmとした。このサイズは実際の端子基板よりも各0.1mm程度大きい開口であるが、その場合の適合性が良好だからである。次いで、ICモジュール4のモールド樹脂部12を納める第2凹部52を、大きさ8.2mm×8.2mm、深さがカード表面から720μm、第1凹部51表面から570μm深くなるように掘削した。
第1凹部面の角部分の2箇所(対角位置)に、温度履歴記録性ラベル21を貼着する部分を、1.1mm×1.1mmの大きさで、深さ300μmに切削した。ここに、先に準備した87°Cと98°Cの温度履歴記録性ラベル21を表示面を上側にして貼着した。当該ラベルを貼着した状態で、ラベル表面と第1凹部表面は均一な面になり、また、温度履歴記録性ラベル21を視認可能な状態になった。
先に準備した水濡れ履歴記録性ラベル22を第2凹部の底面に挿入した後、以下のようにICモジュールの装着を行った。
ICモジュール埋設用凹部5から離れている側の短辺側側面6に凹溝7を切削した。
凹溝7は短辺側側面のほぼ中央に、厚み0.5mm、幅4mm、深さ3mmの形状になるように、0.5mmのエンドミル刃を用いて切削した。
この凹溝7内にも先に準備した、87°Cと98°Cの温度履歴記録性ラベル21を表示面を上側にして貼着した。したがって、この実施例は、本発明の第2実施形態に該当するものである(図3参照)。
埋設用凹部の第1凹部51表面に、先に準備した熱接着テープ13をラミネート済みのICモジュール4をCOTから打ち抜いて搭載し、ヒーターブロックにより熱圧をかけて熱接着テープ13を溶かしてICモジュール4を固定した。ヒーターブロックの条件は、150°C、40N/cm2 、時間;1秒とした。
ただし、ヒーターブロックは、温度履歴記録性ラベル21の真上の端子面を直接押さえないよう、これを逃げるように切り欠きを設けたブロックを使用した。プレス温度でラベルが反応してしまうのを避けるためである。
上記により完成したインジケータ付きICカード5枚について以下の条件で試験を行った。
(1)ICカード全体を、100°Cの沸騰水中に、10分間浸漬する試験。
(2)ICカード全体を、88°C〜90°Cの熱湯中に、10分間浸漬する試験。
(3)ICカードのICモジュール側のみを、88°C〜90°Cの熱湯中に、10秒間浸漬する試験。
(4)ICカード全体を、55°Cの温湯中に、10分間浸漬する試験。
(5)ICカード全体を、10°Cの冷水中に、10分間浸漬する試験。
以上のように本発明のインジケータ付きICカードは、温度履歴や水濡れ履歴を明瞭に検知できることが確認できた。
温度履歴記録性ラベルや水濡れ履歴記録性ラベルの今後の一層の薄型化により、このようなインジケータ付きICカードの実用的価値は、ますます高まるものと考えられる。
2 検知ラベル
4 ICモジュール
5 ICモジュール埋設用凹部
6 短辺側側面
7 凹溝
8 短辺側上縁面
9 凹溝
10 ICカード基体
11 端子基板
12 モールド樹脂部
13 熱接着テープ
21 温度履歴記録性ラベル
22 水濡れ履歴記録性ラベル
Claims (4)
- ICカードの水浸入性にされたICモジュール埋設用凹部内に、温度履歴記録性ラベルと、水濡れ履歴記録性ラベルを貼着または挿入して有し、ICカードに不具合が発生した際に、ICモジュールを剥離してICモジュール埋設用凹部内の温度履歴記録性ラベルと水濡れ履歴記録性ラベルによりICカードのICモジュール部の温度履歴と水濡れ履歴を把握できることを特徴とするインジケータ付きICカード。
- ICモジュール埋設用凹部内の温度履歴記録性ラベルまたは水濡れ履歴記録性ラベルの貼着または挿入位置がICモジュール埋設用凹部のICモジュールを固定する第1凹部面であることを特徴とする請求項1に記載のインジケータ付きICカード。
- ICモジュール埋設用凹部内の温度履歴記録性ラベルまたは水濡れ履歴記録性ラベル貼着または挿入位置がICモジュール埋設用凹部の前記第1凹部の内側であってICモジュールのモールド樹脂部を納める第2凹部内であることを特徴とする請求項1に記載のインジケータ付きICカード。
- 水濡れ履歴記録性ラベルが水または湯浸漬時間を表示するものであることを特徴とする請
求項1乃至請求項3のいずれか1の請求項に記載のインジケータ付きICカード。
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