JP4562901B2 - オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼板、特にバフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の経済性に優れた製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般のステンレス鋼板の2B製品板の製造方法は、スラブの熱間圧延→焼鈍・酸洗→冷間圧延→仕上げ焼鈍・酸洗→調質圧延の各工程から成る。
【0003】
ここで熱間圧延後の焼鈍工程は、熱間圧延後に粒界に析出したCr炭化物を粒内に固溶させる、すなわち溶体化させること及び熱間圧延後に残留した歪みを除去することを目的としており、その焼鈍処理はJIS G4304に規定されるように、オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種のSUS304では一般に1010〜1150℃の範囲で焼鈍を行った後、急冷処理でおこなわれている。
【0004】
その理由は、上記温度範囲より低温域で焼鈍を行った場合は、熱間圧延後に析出したCr炭化物の近傍にCr濃度の低下部が存在し、いわゆる鋭敏化状態となり、これに続く仕上げ焼鈍・酸洗でもそれらが残存した場合、製品での耐食性が劣るからである。また、上記温度域より高温域で焼鈍した場合は、結晶粒が粗大化し加工性が低下するためである。
【0005】
上記温度範囲内で焼鈍を行った場合は、焼鈍時に生成した酸化スケールの直下に脱Cr層が生成する。このようなCr濃度が低下した部分を選択的に溶解する酸組成を選択することで、効率的な脱スケールを実施している。
【0006】
このような酸組成としては、硝酸とふっ酸を混合した水溶液(以下、「硝ふっ酸溶液」という)で、硝酸濃度が80〜200g/l、ふっ酸濃度が10〜30g/lの範囲が一般的である。
【0007】
このような従来の硝ふっ酸溶液による酸洗工程では、上記のCr濃度が低下した粒界近傍の脱Cr層が選択的に浸食されて溝状となり、いわゆる粒界浸食溝が生成する。また焼鈍温度が低く十分Cr炭化物が溶体化されない場合には、上述したように粒界に沿って鋭敏化されており、この状態で従来の組成の硝ふっ酸溶液から成る酸洗液で酸洗を施すと、より深い粒界浸食溝が発生するという問題があった。
【0008】
このように発生した粒界浸食溝は、続く冷間圧延および仕上げ焼鈍・酸洗工程を経ても製品板に残存する。高光沢が求められるバフ研磨材では、そのバフ研磨工程で、通板速度の低下やパス回数の増加といった対策が採られていたが生産性、コストの面で問題であった。
【0009】
これらの対策として熱延鋼板の焼鈍・酸洗工程後に表面をベルト研削する工程を追加して、酸洗後に生じた粒界浸食溝を研削除去する方法が実施されるがこの場合もコストの増加を招いていた。
【0010】
最近、熱延鋼板の焼鈍・酸洗後のベルト研削工程を省略しても、このような酸洗後に粒界浸食溝が生じにくいオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法の検討が行われている。
【0011】
例えば酸洗方法による改善策としては、特公平3−60920号公報に熱延鋼板を機械的に予備脱スケールを行った後に、硝酸100〜400g/lおよびふっ酸75〜400g/lを含む酸洗液で脱スケールを行い、冷間圧延後に酸化スケールを生成させない光輝焼鈍(BA)を行う製造方法が提案されている。
【0012】
また特開平11−131271号公報には、硝酸20〜100g/lおよびふっ酸100〜300g/lを含む酸洗液で脱スケールを行う方法も提案されている。
【0013】
しかし上記の特公平3−60920号公報および特開平11−131271号公報に示された方法では、通常の焼鈍条件で硝ふっ酸溶液中のふっ酸濃度を高めることから、焼鈍・酸洗後に粒界浸食溝が一部残存する。また、特公平3−60920号公報の開示内容は仕上げ焼鈍を光輝焼鈍でおこなう製造方法についてであり、特開平11−131271号公報のそれは光沢ムラを発生させない製造方法についてであり、いずれもバフ研磨性の改善を目的とするものではない。
【0014】
熱間圧延条件を加味した方法としては、特公平2−50810号公報に、オーステナイト系ステンレス鋼の鋼片を熱間圧延後、650℃以下で巻き取り、焼鈍を省略して、予熱後20〜200g/lの硝酸と15〜100g/lのふっ酸、または硝酸20〜200g/lおよび塩酸20〜200g/l、塩化第二鉄30〜250g/lからなる水溶液中で酸洗することにより、熱延鋼板の焼鈍を省略しても、研磨性に優れる鋼板の製造方法が開示されている。しかし鋼板の化学組成によっては、熱間圧延後の巻き取り温度を低下させると、鋼帯が硬質化し、コイル巻き取り後の形状が崩れる等の問題がある。
【0015】
更に冷間圧延条件を加味した方法としては、特公平4−61048号公報に、仕上げ熱間圧延の終了温度を950℃以上1150℃未満とし、650℃以下で巻き取った熱延コイルを、80〜300g/lの硝酸及び10〜200g/lからなる酸洗液で表面を2〜10μm 除去した後、直径200mm以上のワークロールで30%以上の圧下率で圧延し、更に直径100mm以下のワークロールで20%以上の圧下率で圧延することで、研磨性の優れたオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法が記載されている。しかしながら、この方法は、特公平2−50810号公報に開示の方法と同様に熱延鋼板の焼鈍処理を省略するため、同様の問題がある。また冷間圧延ではワークロール径ごとの圧下率を規定しているのみで、酸洗での溶解量との関係は記載されていない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来にあってもいくつかの方法がすでに提案されているが、今日求められている経済性、品質特性を満足する方法は開発されていない。
【0017】
ここに、本発明の課題は、焼鈍・酸洗後のベルト研削工程が省略可能である、バフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の経済性に優れた製造方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、種々検討を重ねた。
表面光沢性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板は、表面の平滑化と高光沢をはかるために冷間圧延で得られた製品板をさらにバフ研磨する方法で製造されている。オーステナイト系ステンレス鋼板のバフ研磨性を悪化させる主要因が、熱延鋼板の焼鈍・酸洗後に生じる粒界浸食溝の残存と冷間圧延時のオイルピットであって、その防止対策として熱延鋼板の焼鈍・酸洗条件並びに冷間圧延工程の圧延条件の最適化を計ることが有効であることを見い出し、本発明を完成した。
【0019】
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼の鋼片に熱間圧延を行った後、得られた熱延鋼板に焼鈍・酸洗、及び冷間圧延を施す、各工程を備えたオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法であって、
前記熱延鋼板の焼鈍・酸洗工程において、800〜1050℃で焼鈍を行った後、硝酸:20〜100g/l、ふっ酸:50〜200g/lの混合水溶液中で次の条件で酸洗を行うことを特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法である冷間圧延後は、慣用手段にしたがって仕上焼鈍・酸洗及び調質圧延を施すことができる。
【0020】
予め熱延鋼板の酸洗液への浸漬時間と、引き続き行われる冷間圧延工程での総冷間圧下率、及び酸洗時に生じる粒界浸食溝の冷間圧延後の残存面積率との関係を求めておき、前記熱延鋼板の酸洗液への浸漬時間を、該関係に基づき冷間圧延後の粒界浸食溝の残存面積率が3〜6%となる浸漬時間に制御する。
【0021】
具体的には、本発明の主たる特徴は、800〜1050℃の温度範囲で焼鈍することと、高濃度ふっ酸(50〜200g/l)の硝弗酸水溶液により酸洗すること、更に冷間圧延での総冷間圧延率により決定される酸洗での浸漬時間により酸洗での溶解量を最小限に押さえること、である。
【0022】
通常の熱延鋼板焼鈍は、前述したとおり熱間圧延工程で生じた炭化物の溶体化処理および歪み取りを目的として、JIS G4304で規定されるように、オーステナイト系ステンレス鋼では1010℃以上1150℃以下で処理される。
この溶体化処理時には、鋼板表面にCr濃度の高いスケールが生成するが、スケール直下では、Crの拡散速度の違いにより粒界に沿って母材深さ方向にCr濃度の低下部が発生する。その後、通常の酸組成の酸洗液で酸洗を行った場合には、粒界に沿って溝状に粒界浸食溝が発生する。
【0023】
また、焼鈍温度が上記温度域より低くなると、未溶体化部が一部残存し、Cr炭化物が析出している粒界でCr濃度が低下する。従ってこの場合にも通常の酸組成の酸洗液での酸洗では、深い粒界浸食溝が生成されてしまう。
【0024】
これらオーステナイト系ステンレス鋼で発生する粒界浸食溝を低減させる酸洗条件については、ふっ酸濃度を高めた硝酸とふっ酸の混酸の酸組成が適しているが、これら酸組成について種々検討した結果、焼鈍温度が通常用いられる1010℃〜1150℃の範囲では、ふっ酸濃度が高い硝ふっ酸で酸洗しても粒界浸食溝は一部残存し、冷間圧延前の表面ベルト研削工程を省略した場合には、バフ研磨性は不十分である。
【0025】
しかしながら、1050℃以下の低温で焼鈍した後に、ふっ酸濃度が高い硝ふっ酸液で酸洗すると、その後の表面ベルト研削工程を省略しても、製品板のバフ研磨性は著しく改善されることを見い出した。
【0026】
また、ふっ酸の濃度範囲としては50g/l以上200g/l以下、硝酸濃度は30g/l以上100g/l以下が望ましいことがわかった。
しかしながら、上記方法で製品板のバフ研磨性は改善されるが、本発明における酸組成では溶解速度が大きいため、浸漬時間が長いと、無用に母材を溶解するため、歩留まりが低下し、更に酸消費量も多くなって、製造コストが増加する問題がある。上記問題は、酸洗に先立ち、酸洗後に生じた粒界浸食溝の冷間圧延後での残存率と、熱延鋼板の酸洗液への浸漬時間ならびに総冷間圧下率の関係を求めておくことにより、解決できることを見い出した。
【0027】
以上のように、1050℃以下の低温焼鈍とふっ酸濃度を高めた硝ふっ酸による酸洗とを組み合わせ、更に冷間圧延での総圧下率に応じた酸洗での浸漬時間を求めておくことにより、冷間圧延前の表面ベルト研削工程を省略しても、表面ベルト研削工程を含む従来工程と同等以上のバフ研磨性が得られ、かつ製造コストを最小限に抑えた製造方法を提案することが可能となった。
【0028】
本発明にかかる方法によりバフ研磨性が向上した理由は必ずしも明確ではないが、以下のように推定される。
▲1▼低温焼鈍により、焼鈍時のスケール生成によるスケール直下の表面粒界近傍のCr濃度の低下を軽減し、酸洗時の粒界浸食溝生成を抑制する。
【0029】
▲2▼一方、低温焼鈍により未溶体化部が残存しても、高濃度ふっ酸の硝弗酸液の酸洗によれば、粒界浸食溝が生じない。
▲3▼さらに低温焼鈍の第2の効果として、従来の焼鈍条件材より硬質のため、続いて実施される冷間圧延時に通常発生するオイルピットの欠陥(凹部)を防止する。
【0030】
このように、本発明の大きな特徴は、低温焼鈍と高濃度ふっ酸の硝弗酸酸洗との組み合わせによる粒界浸食溝と冷間圧延オイルピットの抑制、および、それによるバフ研磨性の改善である。
【0031】
以上のように、熱延鋼板の焼鈍および酸洗条件を規定することにより、バフ研磨性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼板の経済性に優れた製造方法を確立した。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明するが、熱間圧延工程については一般の製造方法でよく、本発明においても特に制限はなく、したがって、以下においては、それに続く熱延鋼板の焼鈍・酸洗工程および冷間圧延工程について説明する。
【0033】
焼鈍工程
焼鈍温度の上限は、焼鈍時のスケール生成により表面粒界近傍でのCr濃度の低下部を生成させないために1050℃、望ましくは1010℃とする。一方、下限は、Cr炭化物を適度に溶体化させる必要があるため800℃、望ましくは900℃とする。
【0034】
なお、焼鈍温度が800℃未満の場合、Crの拡散が進行せず、Cr炭化物は残留し、このような炭化物の残留が多すぎると、後工程での仕上げ焼鈍・酸洗においても十分に溶体化ができず、表面性状のみならず成形性も劣化するため望ましくない。
【0035】
酸洗工程
一部未溶体化部が残存していても粒界腐食を生じない酸組成としては、ふっ酸濃度を50g/l以上に高める必要がある。ふっ酸濃度は高いほどその効果は大きくなるが、200g/lを超えると逆に効果は低下するばかりか、コスト増を招くため、上限を200g/lとした。ふっ酸濃度は、望ましくは100g/l以上、150g/l以下である。
【0036】
さらに本発明で規定する焼鈍条件の場合、酸洗液中での硝酸濃度は極力低いことが望ましい。硝酸濃度が100g/lを超えると効果は急激に低下するため、その上限は100g/lとした。但し、低すぎるとその効果が得られないため下限を20g/lとした。望ましくは30g/l以上、90g/l以下である。
【0037】
酸洗液の温度としては、特に規定するものではないが、温度が低すぎると反応が進行しにくく、その効果が保てないが、高すぎると蒸発によるロスが大きく、またNOx ガスが発生しやすくなるので、50℃以上90℃以下が望ましい。
【0038】
この酸洗処理の前処理として、必要により機械的な予備脱スケール処理を行うが、この方法はショットブラスト、ベンダー、レベラー等一般に用いられている方法の何れかを単独または組み合わせて用いればよい。
【0039】
冷間圧延工程
熱延鋼板を焼鈍、ショットブラスト処理後、前記硝ふっ酸溶液で酸洗するに際して、酸洗液への浸漬時間が充分長いと粒界浸食溝はほとんど除去されるが、無用に母材を溶解するため、歩留まりが低下し、更に酸消費量も多くなって、製造コストが増加する問題がある。
【0040】
従って、酸洗時間は、鋼板の溶解減量及び粒界浸食溝の発生ができるだけ少なくなるように制御する必要がある。
そこで、本発明にあっては、酸洗に先立ち、酸洗後に生じる粒界浸食溝の冷間圧延後での残存率と、熱延鋼板の酸洗液への浸漬時間ならびに総冷間圧下率との関係を予め求めておく。
【0041】
すなわち、酸洗浸漬時間を種々変えて酸洗した鋼板について冷間圧延を行い、総圧下率を変化させた場合に粒界溝残存面積率がどのように変化するかを求めておくのである。
【0042】
図1は、後述する実施例において求めたグラフであり、酸洗浸漬時間を30〜90秒と種々変えた場合の総冷間圧下率と粒界浸食溝残存面積率との関係を示すグラフであり、このような関係を予め求めておくことにより、以下に説明するように適切な酸洗浸漬時間を容易に得ることができる
冷間圧延後の粒界浸食溝残存面積率が3〜6%の範囲内であれば、2B製品板をバフ研磨処理した場合に、比較的研磨量が少なく、かつ研磨効率が良くなり、バフ研磨性は良好となる。6%を超えると、バフ研磨性が劣化する。3%未満では研磨性は改善できるが、母材溶解量が増加して、歩留まりが低下し、酸消費量も増大するためコスト増となる。従って、本発明において冷間圧延後の粒界浸食溝残存面積率は、3〜6%とする。
【0043】
冷間圧延後の粒界浸食溝残存面積率を3〜6%の範囲内にするための酸洗時間は、下記のようにしてあらかじめ求めることができる。
すなわち、図1で示したような関係から、目標総圧下率における粒界浸食溝残存面積率が3〜6%になる酸洗浸漬時間を求めればよい。たとえば、図1の場合で、総圧下率を50%とする冷間圧延を行う場合、適切な酸洗浸漬時間は、およそ65秒であり、総圧下率が70%の場合にはおよそ40秒と短時間の酸洗で、製品板のバフ研磨性が改善できることがわかる。
【0044】
このように酸洗浸漬時間を段階的に変化させて酸洗した材料を冷間圧延して、各浸漬時間別に冷間圧下率と粒界浸食溝残存面積率の関係を求めておくことにより、最適な浸漬時間を容易に求めることができる。
【0045】
なお、前記熱延鋼板の酸洗液への浸漬時間の制御は、通板速度を変更することによって容易に行うことができる。ただし、一般にオーステナイト系ステンレス鋼の酸洗は、連続焼鈍酸洗ライン(APライン)で、焼鈍と連続して行われ、通板速度は焼鈍時間によって決まるため、大幅に変更することはできない。
【0046】
例えば、APラインの浸漬ロールの一方または両方が上下動が可能な装置においては、このロールの位置を制御することによって、鋼板の酸洗液へ浸漬している部分の長さを制御する方法を採用すればよい。
【0047】
冷間圧延に用いるワークロールとしては、直径250mm以下、表面粗さRa0.15μm 以下のものが望ましい。ワークロールの直径が250mmを超えるとワークロールと圧延材との間(ロールバイト内)に導入される圧延油量が増加して油膜厚が厚くなるため、高い総圧下率まで粒界浸食溝が残存するようになることがあるからである。
【0048】
また、ワークロールの表面粗さがRa0.15μm を超えるような粗く研削されたロールでは、鋼材表面への研削肌の転写痕が調質圧延後も残存してバフ研磨性を阻害するため好ましくない。
【0049】
仕上げ焼鈍・酸洗工程
冷間圧延鋼板は、例えば1050〜1200℃の温度で仕上げ焼鈍、次いで酸洗を行うが本発明において特に制限されない。
【0050】
調質圧延
調質圧延は光沢向上および形状の改善のために行い、その条件例は例えば圧下率0.1〜1%であるが、特に制限されない。
【0051】
このようにして得られた調質圧延後の冷間圧延鋼板はバフ研磨を行って所要表面性状とするが、本発明にかかる鋼板についてバフ研磨それ自体は特に制限されず、慣用のものを使用すればよい。
【0052】
次に、実施例によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
【0053】
【実施例】
オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS304鋼を、通常の条件で板厚3.2mmの熱延鋼板とし、1000℃で熱延鋼板の焼鈍を実施した。
この時の酸洗前の機械的予備脱スケールとしては、ベンダーとショットブラストによる処理を実施した。
【0054】
この鋼板より幅70mm、長さ150mmの酸洗試験片を切り出した。この試験片を、表1に示す条件Aの組成の酸洗液を用いて30〜90秒間で熱延鋼板の酸洗を実施した。酸洗時の酸洗液の液温は60℃とした。
【0055】
【表1】
【0056】
続いて、この熱延鋼板を表面研削することなしに、直径が100mm、表面粗さがRa=0.10μmのワークロールの圧延機で、総圧下率を40〜80%と変化させて冷間圧延を実施した後、試験片表面の粒界浸食溝面積率を測定して酸洗浸漬時間別に総冷間圧下率と粒界浸食溝残存面積率との関係を求めた。
【0057】
その結果を図1にグラフで示す。
なお、粒界浸食溝残存面積率は、画像処理装置を用いて測定し、100倍の視野に占める凹み部(粒界浸食溝残存部)の面積比率でもって示す。
【0058】
続いて、上記のSUS304熱延鋼板を用いて、表1に示すように1000℃及び1150℃で焼鈍し、更にベンダーとショットブラストによる予備脱スケールを実施したのち、表1に示す二つの酸洗液を用いて、表2に示す浸漬時間で酸洗した。
【0059】
その後、直径が90mm、表面粗さがRa=0.13μm のワークロールの圧延機で目標仕上げ板厚が、1.5mm(総冷間圧下率=53%)および1.0mm(総冷間圧下率=69%)の冷間圧延を行った。
【0060】
圧延に用いた圧延油は、市販のステンレス鋼用鉱油系ニート油であった。
これらの冷間圧延板を仕上げ焼鈍・酸洗した。焼鈍条件は1150℃、その後通常の中性塩電解及び硝ふっ酸溶液浸漬による酸洗を実施した。硝ふっ酸溶液の酸組成は、硝酸120g/l、ふっ酸15g/lであった。この酸洗後1%の調質圧延を行い製品とした。
【0061】
バフ研磨は、上記製品板を円盤状のサイザルバフを重ねた研磨装置を用いて、研磨剤:酸化クロムと油脂の混合物、回転数:1200rpm、通板速度:5mpm、パス回数:1パスで行った。
【0062】
製品板の研磨性の評価は、研磨後の表面観察により5段階に分類して行った。
値は大きいほど良好で、3以上を合格とした。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2から明らかなように、表1の条件Aで示される、1000℃の低温焼鈍およびふっ酸濃度の高い硝ふっ酸溶液の酸洗液で酸洗した場合でも、図1で求めた浸漬時間より短いNo. 1およびNo. 4では、冷間圧延後の粒界浸食溝残存面積率が大きく、バフ研磨性も劣っていた。
【0065】
また図1の浸漬時間よりも長いNo.3では、バフ研磨性は良好であるが、酸洗時での母材溶解量が大きく、酸コストも増加するため好ましくない。
一方、条件Aの焼鈍・酸洗条件で、かつ図1に示される浸漬時間で酸洗した場合は、No. 2およびNo. 5に示されるように粒界浸食溝残存率も3〜6%の範囲に収まっており、バフ研磨性も良好であり、母材溶解率も少ないことがわかる。
【0066】
なお、従来の熱延鋼板焼鈍酸洗条件である、表1の条件Bで実施した場合は、冷間圧延率を増加させてもバフ研磨性の改善効果は認められなかった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、熱延鋼板の焼鈍・酸洗後に表面ベルト研削工程を実施することなく、バフ研磨性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板を提供することが可能となった。これにより製品板製造コスト抑制、工程短縮さらにはバフ研磨時の研磨回数削減等の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において求めた浸漬時間と、総冷間圧下率と、粒界浸食溝残存面積率との関係を示したグラフである。
Claims (1)
- オーステナイト系ステンレス鋼の鋼片に熱間圧延を行った後、得られた熱延鋼板に焼鈍・酸洗、及び冷間圧延を施す各工程を備えたオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法であって、
前記熱延鋼板の焼鈍・酸洗工程において、800〜1050℃で焼鈍を行った後、硝酸:20〜100g/l、ふっ酸:50〜200g/lの混合水溶液中で酸洗を行い、さらに予め熱延鋼板の酸洗液への浸漬時間と、引き続き行われる冷間圧延工程での総冷間圧下率、及び酸洗時に生じる粒界浸食溝の冷間圧延後の残存面積率との関係を求めておき、前記熱延鋼板の酸洗液への浸漬時間を、該関係に基づき冷間圧延後の粒界浸食溝の残存面積率が3〜6%となる浸漬時間に制御することを特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
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