JP4562882B2 - 化粧料および基礎化粧品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の化学構造を有するブテンポリマーの水素添加処理物を含み、酸化安定性と低皮膚刺激性に優れ、さらに無色、無臭、安価などの特徴を有し、特に基礎化粧品として使用するための優れた特性を有する化粧料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開昭49−85243号公報には、100゜F(37.8℃)において15〜35cStの動粘度を有する水素添加処理されたCオレフィン重合体からなる化粧品用合成油を配合した化粧品用組成物が開示され、その特性として、無臭、安価、動物や人に対する低刺激性、貯蔵安定性などが挙げられている。
しかし、上記Cオレフィン重合体は、Cオレフィンがイソブチレン、n−ブテン、2−ブテン等を含むスペントC留分であるので、たとえ、後蒸留や水素添加処理を行い、粘度に対し100゜F(37.8℃)において15〜35cSt等の規格を設定しても、(1)第三級炭素原子を分子内に含む構造となるために酸化安定性に劣り、また(2)重合反応中に重合物から炭素原子が脱離する副反応が起こるので、Cオレフィン重合体の炭素数は4の倍数のみではなく、沸点が隣接した種々の炭素数の重合体の混合物となるため蒸留による特定分子量成分の精製分離が困難であり、酸化安定性に劣る成分や皮膚刺激性を有する炭素数19以下の成分を完全に除去できないなどの点で改善の余地がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、上記化粧品用合成油を配合した化粧品用組成物が、皮膚刺激性を示す成分を全く含まず、長期保存や屋外使用において安定であることという要求に応えることは困難である。特に、基礎化粧品の化粧料として使用する場合に、この欠点は大きな問題となる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の点について鋭意検討を行った結果、化粧品用組成物に含まれる水素添加処理されたC不飽和化合物の重合体の分子量(分布)、化学構造、使用する原料、重合方法等を特定のものに限定することにより、酸化安定性が優れている上に酸化劣化速度が非常に遅く、皮膚刺激性を示す成分を全く含まず、無色かつ無臭で、安価な化粧品用組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1は、Cオレフィン重合体の処理品を含む化粧料において、上記水素添加処理物は、13C−NMR測定において検出される7〜60ppmのシグナルの積分値に対する第三級炭素原子のシグナルの積分値の割合が0.08未満であり、かつ20、24、28および32からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭素数を有するものが主成分であることを特徴とする化粧料に関するものである。
本発明の第2は、本発明の第1において、Cオレフィン重合体が、重合触媒として含フッ素化合物を用いイソブテン単独またはイソブテンを含むCモノオレフィン類を重合してなり、かつ上記重合体の60モル%以上が末端ビニリデン構造を有することを特徴とする化粧料に関する。
本発明の第3は、本発明の第1または第2において、Cオレフィン重合体のフッ素含有量が10ppm以下であることを特徴とする化粧料に関する。
本発明の第4は、本発明の第1から第3のいずれかにおいて、炭素数24および/または28の水素添加処理物を主成分とすることを特徴とする化粧料に関する。
本発明の第5は、本発明の第1から第3のいずれかにおいて、炭素数20および/または24の水素添加処理物を主成分とすることを特徴とする化粧料に関する。
本発明の第6は、本発明の第1から第5のいずれかに記載の化粧料を用いてなる基礎化粧品に関するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
さらに本発明を詳しく説明する。
本発明に係るC不飽和化合物の重合体は、20、24、28および32からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭素数を有するものが主成分であり、かつ、その水素添加処理したものは、13C−NMR測定において検出される7〜60ppmのシグナルの積分値に対する第三級炭素原子のシグナルの積分値の割合が0.08未満である。(以下「ブテンオリゴマー水素化物」という。)
13C−NMR測定において検出される7〜60ppmのシグナルの積分値に対する第三級炭素原子のシグナルの積分値の割合とは、例えば、以下の手順で求めることができる。装置は400MHz NMR(日本電子(株)製)を使用し、内径5mmのNMR試料管に、分析試料:重クロロホルム=40:60(重量)の混合溶液を入れて測定サンプルとした。第三級炭素原子はDEPT測定により決定した。トリメチルシラン(TMS)を0ppmとして、7〜60ppmのシグナルの積分値を求め、下記式により第三級炭素原子の含有割合を計算した。
(第三級炭素原子の含有割合)
=(第三級炭素原子のシグナルの積分値)/(7〜60ppmのシグナルの積分値)本発明の効果を得るためには、この値が0.08未満であることが必須である。第三級炭素原子のシグナルの積分値の割合が0.08未満ということは、本発明のブテンオリゴマー水素化物の炭素数が例えば20または24である場合には、熱や紫外線などのエネルギーに対して不安定なために分解や酸化などを起こしやすい第三級炭素原子を1モルあたり2個以上含まないことを意味する。その結果、本発明のブテンオリゴマー水素化物は、優れた酸化安定性を示す。
【0006】
本発明に係るブテンオリゴマー水素化物は、例えば、イソブテン単独あるいは石油、ナフサ、ブタンなどの熱分解により生成するC留分からブタジエンを除いたブタジエンラフィネートを含フッ素系触媒で重合してブテンポリマーとし、これに含まれるオリゴマー成分を水素化して得ることができる。
この方法で得られる本発明に係るブテンポリマーの炭素数は、重合反応中に炭素原子が脱離する副反応が起こらないので、すべて4n(n≧2、nは自然数)で表わされる。そのため、特別な装置や技術を使用せず、蒸留により特定の分子量のものを精製分離することができる。したがって、本発明のブテンオリゴマー水素化物は、皮膚刺激性を示す炭素数19以下の成分を全く含まないので、前述の通り酸化安定性に優れ、酸化劣化速度が遅い上に、皮膚刺激性を示さないという特徴を有する。
【0007】
本発明のブテンオリゴマー水素化物を得る方法をさらに詳しく説明する。
まず第三級炭素原子が少ない炭素数4n(n≧2、nは自然数)のブテンポリマーを得るために、反応器を備えた重合帯域(反応帯域)にイソブテン単独あるいはイソブテンを含むC留分を供給し、含フッ素系触媒を用いて重合を行う。
重合反応器としては、撹拌型あるいはループ型などを任意に選択することができ、また反応器を複数個設けてもよい。
【0008】
重合の原料は、イソブテン単独、あるいはエチレンプラントにおいてナフサ、灯油、軽油、ブタンなどのクラッカーから得られるC留分からブタジエンを除いたブタジエンラフィネートを使用することができる。このブタジエンラフィネートは1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ブタン類からなる炭化水素混合物であり、さらに詳しくは、1−ブテンを約10〜40重量%、2−ブテンを約1〜40重量%、イソブテンを約35〜70重量%、ブタジエンを約0.5重量%以下、およびブタン類を約10〜30重量%含むものである。この組成範囲にあれば他のモノマーは特に限定されず、流動接触分解(FCC)装置からの分解成分などに含まれるC留分でもよい。
【0009】
また、上記の組成を変更したブタジエンラフィネートを使用してもよい。例えば蒸留で組成を変更したり、イソブテンを追加してイソブテン濃度を増大させ、または接触ヒドロ異性化等の反応により1−ブテン濃度を低減するなど化学的あるいは物理的操作により変更することができる。いずれの場合も、イソブテン含有量が多いほうが好ましく、重合原料中の水分は触媒の活性を阻害するので通常10ppm以下に調整する。
【0010】
重合反応には含フッ素系触媒を用いることが好ましい。
含フッ素系触媒としては、三フッ化ホウ素系触媒の他、二価ニッケル化合物をハロゲン化ヒドロカルビルアルミニウムおよびトリフルオロ酢酸と接触させて得られる触媒、例えばニッケル・ヘプタノエートとジクロロエチルアルミニウムおよびトリフルオロ酢酸との相互作用で形成されたもの等が挙げられる。この二価ニッケル系含フッ素系触媒は、特開昭57−837626号公報において提案されている。
【0011】
本発明においては、三フッ化ホウ素系触媒を用いるが、さらに好ましくは含酸素化合物を錯化剤とする錯体触媒として用いる。
三フッ化ホウ素の錯化剤として好ましいものは、水、アルコール類、ジアルキルエーテル類であり、これらは単独でも適当な割合で混合して使用してもよい。
アルコール類としては、炭素数1〜21の脂肪族あるいは芳香族アルコールが適当である。炭化水素基は直鎖状、分岐状、脂環式、あるいは環を含むものでもよい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、デカノール、ベンジルアルコール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。
ジアルキルエーテル類としては、炭素数1〜20の脂肪族あるいは芳香族の同一または異なる炭化水素基を持つジアルキルエーテルが好ましい。炭化水素基は直鎖状、分岐状、脂環式、あるいは環を含むものでもよい。具体的には、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテル、プロピルブチルエーテル、ジペンチルエーテル、フェニルメチルエーテル、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル等が挙げられる。
【0012】
錯化剤の供給量は原料中のイソブテン1molに対し、0.03〜1,000mmolが好ましい。0.03mmolより少ないと反応が進行し難く、1,000mmolより多いと異性化や転化などの副反応が起こるので好ましくない。
触媒供給量はイソブテン1molに対し、三フッ化ホウ素として0.1〜500mmolが適当である。触媒供給量が0.1mmol未満では触媒量が少ないため反応が進行し難く、500mmol より多いと触媒コストが増大し、経済的でないために好ましくない。
【0013】
三フッ化ホウ素錯体触媒は常法に従って調製する。例えば、あらかじめ室温以下に冷却した錯化剤に冷却しながらガス状の三フッ化ホウ素を所定量吹き込んで調製する。または、触媒と錯化剤を別々に反応系内に供給し、系内で錯体を形成させてもよい。
重合反応温度は、−100〜50℃が好ましく、さらに好ましくは−50〜20℃である。温度が低すぎるとイソブテンの転化率が低くなり、高すぎると異性化や転位反応などの副反応が起こるため、いずれも好ましくない。
【0014】
反応形式は回分式および連続式のいずれを用いることも可能である。しかしながら、工業生産の場合には連続式のほうが経済的でありかつ効率がよいので、以下、連続式の例について説明する。
連続式では原料と触媒の接触時間が重要であり、本発明においては5分〜4時間が好ましい。接触時間が5分未満では十分なイソブテンの転化率が得られず、4時間以上では経済的損失が大きい上に、異性化や転位反応などの副反応が促進されるので、いずれも好ましくない。
重合反応液については、適当な失活剤、例えば水、アルカリ水、アルコールなどを用いて触媒を失活させる。その後、中和および水洗浄を行って有機層から触媒を除去した後、蒸留により未反応C成分を除去する。
上記の方法で製造したブテンポリマーは、第三級炭素原子が少なく、ポリマー中の不飽和結合の60%以上がビニリデン構造であり、炭素数はすべて4n(n≧2、nは自然数)で表わされる。
【0015】
上記のブテンポリマー中には、触媒に由来する残留フッ素がフッ素原子換算で1ppm以上、場合によっては数百ppm含まれている。この残留フッ素は、常法により失活およびそれに続く水洗を行っても除去することが困難な有機フッ素であり、フッ化水素となって装置を腐食させたり、後続の水素化反応においては触媒毒として反応を阻害する。したがって、ブテンポリマー中のフッ素濃度は10ppm以下が好ましい。
【0016】
そこで、アルミニウム原子を含む処理剤と接触させてフッ素化合物の除去を行う。フッ素化合物中のフッ素原子はアルミニウムを含む処理剤中に固定されて除去される。フッ素化合物を除去する具体的な方法については、特許(国際出願番号 PCT/JP00/01036)に詳しく示されている。この方法で脱フッ素処理を行うことにより、ブテンポリマー中のフッ素濃度は10ppm以下に減少する。
【0017】
次に、上記ブテンポリマーを適宜に蒸留することにより炭素数36以下のブテンオリゴマーを得る。ブテンオリゴマーの量はブテンポリマーに対して5〜30%である。
上記の蒸留で得たブテンオリゴマーは、ポリマー末端に二重結合を持つために化学的に不安定である。そこで水素化反応を行い飽和炭化水素として、酸化による皮膚刺激性物質の生成および臭気の発生や変色を防ぐ。
水素化反応は金属触媒の存在下、高温で水素と反応させることによって行う。金属触媒としては白金属、ニッケル属、例えば銅、ニッケル、パラジウム、白金などを1種のみまたは2種以上を組み合わせて用いる。またこれらの金属をケイソウ土、アルミナ、シリカなどの担体に付着させて用いてもよい。
反応形式は連続式でも回分式でもよく、反応条件としては、温度が65〜250℃、水素圧が常圧〜100kgf/cm2(9.8MPa)であり、触媒量はブテンオリゴマーに対する金属量として、0.00015〜1.0重量%が好ましい。水素化反応が進行したか否かの確認はヨウ素価測定により行い、ヨウ素価が1.0g-I/100g未満になればよい。
水素化したブテンオリゴマーを適宜に蒸留し、留出温度145〜160℃/6〜7mmHg(8.0〜9.3hPa)の留分を得る。これをガスクロマトグラフィー(キャピラリカラム:HT−5、12m、温度30〜250℃、5℃/minで昇温)により分析すると、炭素数20のものが95%以上を占める。また、蒸留塔底の残留物を同様にガスクロマトグラフィーで分析すると、炭素数24および28のものが70%以上含まれている。
【0018】
以上の方法で得た炭素数20および/または24ならびに炭素数24および/または28のブテンオリゴマーは、本発明の化粧料として各種化粧用組成物に使用することができ、その配合量は、具体的な目的に応じて決定される。特に、基礎化粧品に配合されるとき、その効果が最も効果的に発揮される。基礎化粧品を例示すれば、化粧水(清浄用化粧水、収斂用化粧水、柔軟性化粧水、多層状化粧水)、クリーム類(バニシングクリーム、モイスチャークリーム、アイクリーム、クレンジングクリーム、マッサージクリーム、エモリエントクリーム、ナリシングクリーム、ナイトクリーム、ベースクリーム、リップクリーム)、乳液類(クレンジングローション、ハンドローション、ボディローション、エモリエントローション、ミルキーローション、ナリシングローション、モイスチャーローション、サンタンローション、クレンジングミルク等)、パック(ピールオフパック、粉末パック、ウォッシングパック、オイルパック、ワックスパック等)、石鹸(化粧石鹸、透明石鹸、薬用石鹸、液状石鹸、紙石鹸、髭剃り石鹸等)、ボディーシャンプー、洗顔クリームなどが挙げられる。また、基礎化粧品以外に口紅、アイシャドー、ファンデーション、ヘアクリームなどにも用いられる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
<実施例1> 化粧品用油(1)
(1)ブテンオリゴマーの製造
イソブテンを含むブタジエンラフィネート(エチレンクラッカーからのブタジエン抽出残分)を原料に用いた。ガスクロマトグラフィーによる原料の組成は以下の通りである(重量%)。
Figure 0004562882
内容積4Lの連続式重合装置に原料を4L/hの流量で送入し、三フッ化ホウ素を原料中のオレフィン1molに対し8.27mmol供給した。ジエチルエーテルおよびエタノールを、三フッ化ホウ素に対するモル比がそれぞれ1.00および0.03となるように別々に供給した。反応器内を−10℃に維持しながら重合反応を行った結果、イソブテンの転化率は95%であった。
続いて反応液に2%水酸化ナトリウム水溶液を入れて錯体触媒の失活および中和を行い、さらに有機層を脱イオン水で3回洗浄し、乾燥を行って未反応C成分を蒸留により回収した。13C−NMRにより求めた不飽和結合中のビニリデン骨格含有率は94mol%であった。
【0020】
(2)ブテンポリマーの脱ハロゲン処理
容量100mlの固定床容器に、200℃で2時間減圧乾燥した活性アルミナ(商品名:PSG−D25、PROCATALYSE社製)を粉砕して粒径0.5mmから1.4mmに分級したものを充填した。
固定床温度を170℃、WHSVを1h-1として、上記(1)に記載のブテンポリマーを接触させ、脱ハロゲン処理を行った。
処理後のWickbold−比色法により求めた残留フッ素濃度は、1ppm以下であった。
【0021】
(3)ブテンオリゴマーの回収
上記(2)で得られたブテンポリマー6,800gを、真空ポンプおよび窒素線を接続した内容積10Lの回分式蒸留装置に仕込んだ。塔底を220℃まで加熱し、2mmHg(2.7hPa)の減圧下で留出するブテンオリゴマーを回収した。回収量は1,700gであった。
【0022】
(4)ブテンオリゴマーの水素化
内容積5Lのオートクレーブに上記(3)で得たブテンオリゴマー3,068gおよび5%Pd−アルミナ触媒153gを仕込み、高純度水素を用いて圧力50kgf/cm2(4.9MPa)まで昇圧し、200℃で3時間反応を行った。反応の進行により圧力が減少した場合は、その都度高純度水素で所定の圧力まで昇圧を行った。反応終了後、反応液を吸引ろ過することにより触媒を除去した。
反応後におけるブテンオリゴマー水素化物のヨウ素価は1.0g-I/100g未満であり、また13C−NMR測定において反応前に見られたオレフィンを示すピークはすべて消失していた。以上の結果により、水素化反応が進行したことを確認した。
【0023】
(5)ブテンオリゴマー水素化物の精製
真空ポンプと窒素線を接続した内容積10Lの回分式蒸留装置に、ブテンオリゴマー水素化物4,410gおよびフラックス油として前記(3)においてブテンオリゴマーを回収した残部のブテンポリマー2,446gを仕込み、減圧蒸留を行った。その結果、留出温度142〜152℃/9mmHg(12.0hPa)の無色、無臭の液体を1,316g得た。
このオリゴマー水素化物は、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、炭素数がすべて20であり、13C−NMRにより求めた第三級炭素原子の割合が0.051であった。また25℃における動粘度は13.2cStであった。
【0024】
<実施例2> 化粧品用油(2)
実施例1と同様にして、ブテンオリゴマーの製造、ブテンポリマーの脱フッ素処理、ブテンオリゴマーの回収およびブテンオリゴマーの水素化を行った。ブテンオリゴマー水素化物の精製においては、実施例1の場合と同じ装置を用い、ブテンオリゴマー水素化物を7,263g仕込み、減圧蒸留を行った。留出温度142〜152℃/9mmHg(12.0hPa)の成分が留出した時点で蒸留を停止した。
蒸留塔底に残ったブテンオリゴマー水素化物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、炭素数24および28の化合物の含有量は79.3%であり、13C−NMRにより求めた第三級炭素原子の含有割合は0.044であった。
【0025】
<比較例1>
撹拌機、温度計、滴下漏斗、ガス導入管およびガス排気管を備えた重合用フラスコ内部を乾燥窒素で十分に置換し、実施例1に示したブタジエンラフィネート198gを仕込んだ。−20℃まで冷却し、塩化アルミニウム粉末1.0gを添加して重合を開始した。温度を−20〜0℃に保ちながら1時間重合を行った。重合終了後、5%水酸化ナトリウム水溶液を加えて触媒を失活させ、未反応C成分を留去し、ブテンポリマー45gを得た。このブテンポリマーの13C−NMRによる不飽和結合中のビニリデン骨格含有率は0であった。
以降の工程は実施例1と同様に行い、炭素数16〜35のブテンオリゴマー水素化物を得た。このブテンオリゴマー水素化物は、13C−NMRにより求めた第三級炭素原子の割合が0.121であり、また25℃における動粘度は20.7cStであった。
実施例1および比較例1のブテンオリゴマー水素化物について、ガスクロマトグラフィーにより求めた炭素数の組成を表1に示す。
【表1】
Figure 0004562882
表1から分るように、実施例1のブテンオリゴマー水素化物は炭素数20のものが100mol%であったが、比較例1では炭素数20以外の成分が4割以上含まれていた。
【0026】
(加熱試験)
実施例1、比較例1について加熱試験を行った。
各試料50gを150℃に加熱し、空気を流量0.21〜0.24L/hで6時間吹き込んだ。加熱前後の過酸化物価および酸価を測定した結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0004562882
表2から、実施例1のブテンオリゴマー水素化物は、比較例1のものよりも過酸化物価および酸価が低いので、酸化安定性が高いことが分る。
【0027】
(酸化安定性試験)
酸化安定性試験は、日本油化学会協会の制定による基準油脂分析試験法2.5.1.2 CDM(Conductometric Determination Method)に従って行った。この試験法はAOCS(American Oil Chemists’ Society、米国油化学協会)の制定によるAOCS Official Method Cd12b-92 Oil Stability Index(OSI)に相当する。CDM値は、酸化により生成した揮発性分解物を水中に捕集して水の導電率を測定し、その値が急激に変化する折曲点が現れるまでの経過時間で表す。CDM値が大きいほど酸化安定性が高いことを示す。試験方法は以下の通りである。
イオン交換水50mlを入れた測定容器と試料3gを入れた反応容器とを接続する。120±0.2℃に調整された恒温槽に上記反応容器を入れて10分間放置した後、清浄空気を流量20L/hで吹き込むと同時に導電率の測定を開始し、導電率が300μS/cmに到達したところで測定を終了する。なお、測定温度はCDM値の大きさに応じて、100℃または140℃とすることができる。
実施例1および比較例1について、CDM試験を行い、CDM値および水の導電率が40μS/cmに到達した時間を表3に示す。
【表3】
Figure 0004562882
表3の結果から、実施例1のブテンオリゴマー水素化物は、比較例1のものよりよりCDM値が大きく、さらに導電率が40μS/cmに到達するまでの時間が長いことが分る。したがって、前述の加熱試験の結果も考慮すれば、実施例1のものは酸化安定性に優れているだけでなく、酸化劣化速度も遅い材料である。これは第三級炭素原子が少ないことによる効果である。
【0028】
さらに実施例1および比較例1の性状を表4に示す。
表中の「酸・アルカリ性」の測定法は以下の通りである。
試料10mlに熱湯10mlとフェノールフタレイン試薬1滴を加えて激しく振り混ぜるとき、液は赤色を呈しない。また、これに0.02N水酸化ナトリウム0.20mlを加えて振り混ぜるとき赤色を呈する。
【表4】
Figure 0004562882
【0029】
(ヒト皮膚一次刺激性試験)
健康な男女40名(男19名、女21名)を被験者とし、実施例1で得た化粧品油(1) 0.1mlをパッチテスト用絆創膏の円形布地部に塗布し、上腕部内側に貼付した。また、対照として絆創膏のみを並列に貼付した。24時間後に皮膚症状を肉眼的に観察し評価を行った。評価方法は、日本パッチテスト研究会の下記基準により、症状(紅班、浮腫、水疱など)の有無を確認した。
日本パッチテスト研究会の基準:
0 反応なし
0.5 軽い紅班
1 紅班
2 紅班+浮腫
3 紅班+浮腫+丘疹、漿液性丘疹、小水疱
4 大水疱
結果を表5に示す。
【表5】
Figure 0004562882
表5の結果から、実施例1で得られたブテンオリゴマー水素化物はほとんど無刺激性であることが分る。
【0030】
(製造例1)化粧水の試作
本発明のブテンオリゴマー水素化物を用いて、下記の手順により化粧水を試作した。配合割合は表6の通りである。
【表6】
Figure 0004562882
成分Aに成分Bを加え、さらに成分Cを加えて混合溶解させた。これに色素を加えて、2〜3日冷却し、吸着剤を用いて析出物を吸着ろ過した。
試作品は従来品よりも酸化劣化を起こし難く、皮膚への刺激が少なく、肌への感触が爽快であった。
【0031】
(製造例2) エモリエントクリームの試作
本発明のブテンオリゴマー水素化物を用いて、下記の手順でエモリエントクリームを試作した。配合割合は表7の通りである。
【表7】
Figure 0004562882
成分Aを70〜75℃に加熱して溶解した後、ろ過を行った。これを撹拌しながら、その中へ73〜78℃に加熱溶解後、ろ過を行った成分Bを添加した。高速ホモミキサーで乳化し、静置して脱泡し、冷却後、55〜60℃の香料を添加して室温まで冷却した。
試作品は従来品よりも酸化劣化を起こし難く、皮膚への刺激が少なかった。
【0032】
(製造例3) ファンデーションの試作
本発明のブテンオリゴマー水素化物を用いて、下記の手順でファンデーションを試作した。配合割合は表8の通りである。
【表8】
Figure 0004562882
成分Aを約70℃に加熱して溶解した後、粉砕して篩分けした顔料を添加し、約70℃で混合分散させた後ろ過を行った。これにあらかじめ70〜75℃に加熱して溶解した後、ろ過した成分Bを添加し、撹拌して乳化させた。脱泡後、香料を55〜60℃で添加し、室温まで冷却した。
試作品は従来品より酸化劣化を起こし難く、皮膚への刺激が少なく、肌への感触が爽快であった。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、20、24、28および32からなる群から選ばれる炭素数を有するものが主成分である本発明のブテンオリゴマー水素化物は、酸化安定性に優れている上に酸化劣化速度が遅く、皮膚刺激性成分を全く含まない上に、無色かつ無臭であり、しかも安価な材料である。またこれらを配合した化粧品は、上記の特徴を有するため、特に基礎化粧品に適している。

Claims (6)

  1. オレフィン重合体の水素添加処理物を含む化粧料において、該C オレフィン重合体は重合触媒として含フッ素化合物を用いイソブテン単独またはイソブテンを含むC モノオレフィン類を重合してなり、かつ該重合体の60モル%以上が末端ビニリデン構造を有するものであり、該水素添加処理物は、13C−NMR測定において検出される7〜60ppmのシグナルの積分値に対する第三級炭素原子のシグナルの積分値の割合が0.08未満であり、かつ20、24、28および32からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭素数を有するものからなることを特徴とする化粧料。
  2. 前記C オレフィン重合体のフッ素含有量が10ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料
  3. 前記水素添加処理物が炭素数24および/または28の水素添加処理物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料
  4. 前記水素添加処理物が炭素数20および/または24の水素添加処理物からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の化粧料
  5. 前記含フッ素化合物が三フッ化ホウ素系触媒であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の化粧料。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の化粧料を用いてなる基礎化粧品。
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