JP4562878B2 - 圧電アクチュエータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として積層型圧電素子をケース形バネに収納してケース形バネで積層型圧電素子の伸縮方向に圧縮予圧荷重を与える構造の圧電アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、この種の圧電アクチュエータの研究開発分野では、電歪効果を有するセラミックス材料と電極材料とを交互に重ねた構造の積層型圧電素子を利用し、微少変位を高速にして高応答で制御可能な性能を得ている。
【0003】
ところが、こうした積層型圧電素子の単体に高電圧・高周波数の駆動電圧を印加すると、素子の伸縮に伴う慣性力で引っ張り応力が発生して素子自体が容易に破壊されてしまうため、実際に動作させるためには圧電素子に圧縮予圧荷重を与えておき、高電圧・高周波数の駆動時に発生する引っ張り応力による破壊を防止する構造にする必要がある。
【0004】
そこで、一般には金属製の外装用ケース形バネに積層型圧電素子を収納し、積層型圧電素子の伸縮方向に圧縮予圧荷重を与える構造としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した積層型圧電素子を金属製のケース形バネに収納して圧縮予圧荷重を与える構造の圧電アクチュエータの場合、分極工程後には積層型圧電素子が負の線膨張係数を持ち、広範な温度域で動作させると圧縮予圧荷重が大きく変化し、低温では過大となり、高温では過小となってしまうため、動作温度範囲域が狭い領域で限定されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、積層型圧電素子の負の線膨張係数に起因する圧縮予圧荷重の温度変化が改善されて動作温度範囲を拡大し得る圧電アクチュエータを提供すること。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、開口側から一軸方向に延びた圧電素子を収納した状態で該圧電素子の一端面が当接される当接面を有すると共に、該圧電素子の該一軸方向と合致する伸縮方向に圧縮予圧荷重を付与するケース形バネと、前記ケース形バネの前記開口側から前記ケース形バネに装着されて凸部の頂面が前記圧電素子の他端面に当接された状態で該圧電素子及び該ケース形バネを保持する底部材と、前記ケース形バネに係止されて所定の引っ張り荷重をかけた状態で前記底部材と固定されるフランジとを備えた圧電アクチュエータにおいて、前記底部材は、前記ケース形バネよりも線膨張係数が大きな材料から成り、前記ケース形バネ及び前記底部材は、前記圧電素子の伸縮方向における寸法が伸張されており、前記圧電素子の線膨張係数をKe,前記ケース形バネの線膨張係数をKs,前記底部材の線膨張係数をKb,前記圧電素子の伸縮方向における長さをLe,前記ケース形バネにおける前記圧電素子の伸縮方向での前記伸張された部分を含む前記開口端から該圧電素子の前記一端面に対応する位置までの長さをLs,前記底部材における前記圧電素子の伸縮方向での前記伸張された部分を含む前記凸部の長さをLbとした場合、Ls=(Kb−Ke/Kb−Ks)・Leなる関係と、Lb=(Ks−Ke/Kb−Ks)・Leなる関係とが成立することを特徴とする圧電アクチュエータが得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げ、本発明の圧電アクチュエータについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る圧電アクチュエータの基本構成を示した側面断面図である。この圧電アクチュエータの場合も、従来通りに金属製のケース形バネ2aに積層型圧電素子1を収納し、この積層型圧電素子1の伸縮方向に圧縮予圧荷重を与える構造としており、具体的には開口側から一軸方向(中心軸方向)に延びた円柱状の積層型圧電素子1を収納した状態で積層型圧電素子1の一端面が当接される当接面を有すると共に、積層型圧電素子1の一軸方向と合致する伸縮方向に圧縮予圧荷重を付与する底部を欠いた円筒状の外装用ケース形バネ2aと、このケース形バネ2aの開口側からケース形バネ2aに装着されて凸部の頂面が積層型圧電素子1の他端面に当接された状態で積層型圧電素子1及びケース形バネ2aを保持する底部材3aと、ケース形バネ2aに係止されて所定の引っ張り荷重をかけた状態で底部材3aと固定される固定フランジ4とを備えて構成されているが、ここでの底部材3aは、ケース形バネ2aよりも線膨張係数が大きな材料から成っている。
【0012】
このうち、ケース形バネ2a及び底部材3aは、通常の場合、バネ鋼又はステンレス鋼で製作されるが、ここではケース形バネ2aをインバー、底部材3aをジュラルミンで製作している。ケース形バネ2aの材料のインバーは近似的に線膨張が0であり、底部材3aの材料はジュラルミンであるため、圧電アクチュエータでは底部材3aの熱膨張によって積層型圧電素子1の負の線膨張係数に起因する圧縮予圧荷重の温度変化が僅かに緩和される。
【0013】
このような構成の圧電アクチュエータの場合、底部材3aの材料をケース形バネ2aの材料よりも線膨張係数が大きい材料としているため、積層型圧電素子1の負の線膨張に起因する圧縮予圧荷重の温度変化が緩和又は消去されるように改善され、動作温度範囲を拡大し得るものとなる。
【0014】
図2は、本発明の他の実施例に係る圧電アクチュエータの基本構成を示した側面断面図である。この圧電アクチュエータの場合、先の一実施例の場合と比べて同じ基本構成、即ち、開口側から一軸方向(中心軸方向)に延びた円柱状の積層型圧電素子1′を収納した状態で積層型圧電素子1′の一端面が当接される当接面を有すると共に、積層型圧電素子1′の一軸方向と合致する伸縮方向に圧縮予圧荷重を付与する底部を欠いた円筒状の外装用ケース形バネ2bと、このケース形バネ2bの開口側からケース形バネ2bに装着されて凸部の頂面が積層型圧電素子1′の他端面に当接された状態で積層型圧電素子1′及びケース形バネ2bを保持する底部材3bと、ケース形バネ2bに係止されて所定の引っ張り荷重をかけた状態で底部材3bと固定される固定フランジ4とを備え、底部材3bはケース形バネ2bよりも線膨張係数が大きな材料から成るように構成されているが、ここでは更に、ケース形バネ2b及び底部材3bにあっての積層型圧電素子1′の伸縮方向における寸法が伸張されている。
【0015】
具体的に言えば、この圧電アクチュエータの場合、底部材3bにあっての凸部における積層型圧電素子1′の伸縮方向に伸張された伸張部3b′は線膨張吸収部となっており、ケース形バネ2b及び底部材3bの線膨張係数の差により低温では底部材3bが相対的に収縮し、高温では底部材3bが伸張するように働き、これによって積層型圧電素子1′の負の線膨張に起因する圧縮予圧荷重の温度変化が緩和される。
【0016】
ここで、積層型圧電素子1′の線膨張係数をKe,ケース形バネ2bの線膨張係数をKs,底部材3bの線膨張係数をKb,積層型圧電素子1′の伸縮方向における長さをLe,ケース形バネ2bにおける積層型圧電素子1′の伸縮方向での伸張された部分を含む開口端から積層型圧電素子1′の一端面に対応する位置までの長さをLs,底部材3bにおける積層型圧電素子1′の伸縮方向での伸張された部分を含む凸部の長さをLbとした場合、Ls=Le+Lbなる関係と、Ls・Ks=Le・Ke+Lb・Kbなる関係とを満足するように、各部の長さ及び材料を選択すれば、各部の線膨張係数の違いは相殺され、温度に依らず圧縮予圧荷重は一定となる。
【0017】
そこで、これらの関係式をLb,Lsに関する連立方程式として解けば、Ls=(Kb−Ke/Kb−Ks)・Leなる関係と、Lb=(Ks−Ke/Kb−Ks)・Leなる関係とが成立し、図2に示す構成の圧電アクチュエータの外形寸法を線膨張係数との関係で特定することができる。
【0018】
従って、ここでの圧電アクチュエータの場合、積層型圧電素子1′の負の線膨張に起因する圧縮予圧荷重の温度変化が一定となって顕著に改善されるため、先の一実施例の場合と比べて動作温度範囲を一層適確に拡大し得るものとなる。
【0019】
尚、上述した各実施例に係る圧電アクチュエータでは、何れも積層型圧電素子1,1′を円柱状とすると共に、外装用ケース形バネ2a,2bを円筒状であるものとして説明したが、積層型圧電素子を角柱状とすると共に、外装用ケース形バネを積層型圧電素子の角柱断面の多角形と相似した断面多角形の側面部を有する構成としても良い。この場合、ケース形バネの寸法を積層型圧電素子の外形寸法よりも若干大きくなるようにすれば、ケース形バネの端部に発生する曲げ応力を低減することができる。
【0020】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の圧電アクチュエータによれば、底部材の材料をケース形バネの材料よりも線膨張係数が大きい材料とした上、ケース形バネ及び底部材にあっての積層型圧電素子の伸縮方向における寸法を伸張させて適切に決定することにより、積層型圧電素子の負の線膨張係数に起因する圧縮予圧荷重の温度変化が低減又は消去されるように改善され、結果として動作温度範囲を拡大し得るようになる。特に、ケース形バネ及び底部材を含む各部の長さ及び材料を適切に選択して線膨張係数の違いを相殺するように構成した場合には、温度に依らず圧縮予圧荷重が一定となるため、動作温度範囲を一層適確に拡大し得るようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る圧電アクチュエータの基本構成を示した側面断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る圧電アクチュエータの基本構成を示した側面断面図である。
【符号の説明】
1,1′ 積層型圧電素子
2a,2b ケース形バネ
3a,3b 底部材
3b′ 伸張部
4 固定フランジ
Claims (1)
- 開口側から一軸方向に延びた圧電素子を収納した状態で該圧電素子の一端面が当接される当接面を有すると共に、該圧電素子の該一軸方向と合致する伸縮方向に圧縮予圧荷重を付与するケース形バネと、前記ケース形バネの前記開口側から前記ケース形バネに装着されて凸部の頂面が前記圧電素子の他端面に当接された状態で該圧電素子及び該ケース形バネを保持する底部材と、前記ケース形バネに係止されて所定の引っ張り荷重をかけた状態で前記底部材と固定されるフランジとを備えた圧電アクチュエータにおいて、前記底部材は、前記ケース形バネよりも線膨張係数が大きな材料から成り、
前記ケース形バネ及び前記底部材は、前記圧電素子の伸縮方向における寸法が伸張されており、
前記圧電素子の線膨張係数をKe,前記ケース形バネの線膨張係数をKs,前記底部材の線膨張係数をKb,前記圧電素子の伸縮方向における長さをLe,前記ケース形バネにおける前記圧電素子の伸縮方向での前記伸張された部分を含む前記開口端から該圧電素子の前記一端面に対応する位置までの長さをLs,前記底部材における前記圧電素子の伸縮方向での前記伸張された部分を含む前記凸部の長さをLbとした場合、Ls=(Kb−Ke/Kb−Ks)・Leなる関係と、Lb=(Ks−Ke/Kb−Ks)・Leなる関係とが成立することを特徴とする圧電アクチュエータ。
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