JP4560942B2 - 切裂加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、切裂加工装置に関し、詳しくは、薄板状部材に所定の肉厚を残して切り裂き加工を施す切裂加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の切裂加工装置としては、レーザビームを用いて平坦な材料に線状のウィーク部を形成するものが提案されている(例えば、特開平10−85966号公報など)。この装置では、平坦な材料に所定の深さの線状の切り裂きを形成するために予め設定した基準値に達するまでレーザ放射を行なうことにより所定の深さの切り裂きを形成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした切裂加工装置では、レーザビーム放射装置が必要なために装置が高額化すると共に切裂加工のコストも高くなってしまう。また、装置そのものが複雑なものとなり、大型化してしまう。
【0004】
本発明の切裂加工装置は、簡易な構成で薄板状部材に所定の肉厚を残して切り裂き加工を施すことを目的の一つとする。また、本発明の切裂加工装置は、切り裂き加工の精度を向上させることを目的の一つとする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の切裂加工装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の切裂加工装置は、
薄板状部材に所定の肉厚を残して切り裂き加工を施す切裂加工装置であって、
前記薄板状部材を保持する保持台と、
円板状で回転により切り裂き加工が可能な回転加工刃と、
該回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記回転加工刃の回転半径とを検出する位置半径検出手段と、
該検出された前記回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記回転加工刃の回転半径とに基づいて前記薄板状部材の切り裂き加工を制御する切裂制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の切裂加工装置では、回転加工刃の保持台に対する回転中心位置と回転加工刃の回転半径とを検出し、この検出した回転中心位置と回転半径とに基づいて薄板状部材の切り裂き加工を制御する。回転加工刃の保持台に対する回転中心位置と回転加工刃の回転半径とに基づいて薄板状部材の切り裂き加工における切り裂き深さを演算することができるから、この切り裂き深さを制御することができる。即ち、簡易な構成で薄板状部材の切り裂き加工を精度よく行なうことができる。
【0008】
こうした本発明の切裂加工装置において、前記位置半径検出手段は、前記回転加工刃の少なくとも異なる3つの外周縁の位置を検出する外周縁検出手段と、前記回転加工刃の回転中心位置と一定の関係をもって前記保持台との位置関係を検出する位置関係検出手段とを備え、該検出された前記保持台との位置関係と前記検出された少なくとも異なる3つの外周縁の位置とに基づいて前記回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記回転加工刃の回転半径とを検出する手段であるものとすることもできる。
【0009】
また、本発明の切裂加工装置において、前記切裂制御手段は、前記回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記回転加工刃の回転半径とに基づいて前記薄板状部材の切り裂き加工の深さの適正を判定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、薄板状部材への切り裂き加工をより適正なものとすることができると共に回転加工刃の取り替えの判定も行なうことができる。
【0010】
さらに、本発明の切裂加工装置において、前記切裂制御手段は、前記回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記加工刃の回転半径とに基づいて前記所定の肉厚を残して切り裂き加工するよう前記回転加工刃の回転中心位置を駆動制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、薄板状部材により適正な切り裂き加工を行なうことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は本発明の一実施例である切裂加工装置20の構成の概略を示す構成図であり、図2は図1に例示する実施例の切裂加工装置20のA−A面から見た構成の概略を示す構成図である。なお、図1は、図2に例示する実施例の切裂加工装置20のB−B面から見た構成図となっている。実施例の切裂加工装置20は、図示するように、ワーク10を載置する表面がスチールなどの導電性材料により形成された載置台22と、円板状の回転加工刃24と、回転加工刃24の回転軸を軸支すると共に回転加工刃24を図中上下方向に移動可能なアクチュエータ26と、回転加工刃24の二つ一組の外周縁を検出する二組の外周縁検出器30a,30bと、外周縁検出器30a,30bの載置台22に対する位置を検出する位置検出センサ38と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット40とを備える。
【0012】
外周縁検出器30a,30bは、レーザ光を照射するスリット34a,34bを有するレーザ照射部31a,31bと、このレーザ照射部31a,31bからのレーザ光を受光するレーザ受光面36a,36bを有するレーザ受光部32a,32bとを備え、スリット34a,34bから直線状に照射されたレーザ光のうちレーザ受光面36a,36bで受光したレーザ光の端部を回転加工刃24の外周縁ra,rb,rc,rdとして検出する。
【0013】
位置検出センサ38は、例えば渦電流式の変位センサとして構成されており、導電性材料により形成された載置台22の表面との間隔が検出できるようになっている。
【0014】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM44と、一時的にデータを記憶するRAM46と、入出力ポート(図示せず)とを備える。この電子制御ユニット40には、外周縁検出器30a,30bのレーザ受光部32a,32bからの外周縁ra,rb,rc,rdの位置や位置検出センサ38からの載置台22の表面との間隔などが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット40からは、アクチュエータ26への駆動信号や外周縁検出器30a,30bのレーザ照射部31a,31bへの駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0015】
次に、こうして構成された実施例の切裂加工装置20の動作、特に回転加工刃24の位置の設定動作について説明する。図3は、実施例の切裂加工装置20の電子制御ユニット40により実行される加工刃位置制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、回転加工刃24による切り裂き加工が開始されたときから所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。
【0016】
加工刃位置制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット40のCPU42は、まず、外周縁検出器30a,30bにより検出される回転加工刃24の外周縁ra,rb,rc,rdの位置を入力すると共に位置検出センサ38により検出される載置台22との間隔を入力する処理を実行する(ステップS100)。
続いて、入力した外周縁ra,rb,rc,rdに基づいて回転加工刃24の回転軸の位置と半径とを計算すると共に計算した回転加工刃24の回転軸の位置と入力した載置台22との間隔とに基づいて載置台22に対する回転加工刃24の回転軸の位置を計算する(ステップS102)。即ち、外周縁ra,rb,rc,rdから外周縁検出器30a,30bに対する回転加工刃24の回転軸の位置を計算し、位置検出センサ38により検出される外周縁検出器30a,30bと載置台22との間隔から載置台22に対する回転加工刃24の回転軸の位置を計算するのである。なお、回転加工刃24の回転軸の位置と半径の計算は、回転加工刃24の異なる三つの外周縁の位置により計算できるから、外周縁ra,rb,rc,rdのうちいずれか一つは不要な計測点として扱うことができる。
【0017】
次に、計算した載置台22に対する回転加工刃24の回転軸の位置から回転加工刃24の半径を減じて切り裂き加工における切り残し部の肉厚Tを計算すると共に(ステップS104)、計算した肉厚Tとその目標値T*との偏差ΔTを計算する(ステップS106)。そして、計算した偏差ΔTの絶対値が許容誤差Trを超えているかを判定し(ステップS108)、許容誤差Trを超えているときには、回転加工刃24を偏差ΔTだけ上方に移動するようアクチュエータ26を駆動制御して(ステップS110)、本ルーチンを終了する。ここで回転加工刃24を偏差ΔTだけ上方に移動するのは、偏差ΔTをΔT=T*−Tによって計算したことに基づく。なお、偏差ΔTの絶対値が許容誤差Tr以下のときには、回転加工刃24の移動を行なわずに本ルーチンを終了する。
【0018】
以上説明した実施例の切裂加工装置20によれば、回転加工刃24の外周縁ra,rb,rc,rdと載置台22との間隔とに基づいて載置台22に対する回転加工刃24の回転軸の位置と回転加工刃24の半径とを計算し、これに基づいて切り裂き加工の肉厚Tが目標値T*の許容誤差Trの範囲内となるよう制御することができる。この結果、切り裂き加工の精度を向上させることができる。したがって、例えば、実施例の切裂加工装置20を車両室内に取り付けられるインナーパネルの一部にエアバックを展開するための開口部を加工する場合、0.8〜2mmの樹脂製のインナーパネルとしてのワーク10に切り裂き深さが0.5〜1.0mmの切り裂きを精度よく加工することができる。
【0019】
実施例の切裂加工装置20の外周縁検出器30a,30bでは、レーザ光を用いて回転加工刃24の外周縁ra,rb,rc,rdを検出するものとしたが、赤外線などのレーザ光以外の光を用いて回転加工刃24の外周縁ra,rb,rc,rdを検出するものとしてもよい。また、実施例の切裂加工装置20では、位置検出センサ38を渦電流式の変位センサとして構成したが、レーザ光を用いて変位を検出するレーザ光変位センサなど種々のセンサとして構成してもよい。
【0020】
また、実施例の切裂加工装置20では、外周縁検出器30a,30bと位置検出センサ38とを用いて載置台22に対する回転加工刃24の回転軸の位置を検出するものとしたが、載置台22に対する回転加工刃24の回転軸の位置を直接検出するものとしてもよい。
【0021】
さらに、実施例の切裂加工装置20では、回転加工刃24を図1中上下方向に移動可能なアクチュエータ26を設けたが、回転加工刃24を上下方向に固定するものとしてもよい。この場合、載置台22に対する回転加工刃24の回転軸の位置と回転加工刃24の半径とから、回転加工刃24の摩耗を判定するものとしてもよい。また、載置台22に対して回転加工刃24の回転軸の位置が予め固定されているものとすれば、回転加工刃24の半径だけを計算し、肉厚Tの制御に用いたり、回転加工刃24の摩耗の判定に用いることもできる。
【0022】
実施例の切裂加工装置20では、偏差ΔTの絶対値が許容誤差Trを超えているときだけ回転加工刃24を移動し、許容誤差Tr以下のときには回転加工刃24を移動しないものとしたが、偏差ΔTの絶対値が許容誤差Tr以下のときでも回転加工刃24を偏差ΔTだけ上方に移動するものとしてもよい。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である切裂加工装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】 図1に例示する実施例の切裂加工装置20のA−A面から見た構成の概略を示す構成図である。
【図3】 実施例の切裂加工装置20の電子制御ユニット40により実行される加工刃位置制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ワーク、20 切裂加工装置、22 載置台、24 回転加工刃、26アクチュエータ、30a,30b 外周縁検出器、31a,31b レーザ照射部、32a,32b レーザ受光部、34a,34b スリット、36a,36b レーザ受光面、38 位置検出センサ、40 電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM。
Claims (4)
- 薄板状部材に所定の肉厚を残して切り裂き加工を施す切裂加工装置であって、
前記薄板状部材を保持する保持台と、
円板状で回転により切り裂き加工が可能な回転加工刃と、
該回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記回転加工刃の回転半径とを検出する位置半径検出手段と、
該検出された前記回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記回転加工刃の回転半径とに基づいて前記薄板状部材の切り裂き加工を制御する切裂制御手段と
を備える切裂加工装置。 - 前記位置半径検出手段は、前記回転加工刃の少なくとも異なる3つの外周縁の位置を検出する外周縁検出手段と、前記回転加工刃の回転中心位置と一定の関係をもって前記保持台との位置関係を検出する位置関係検出手段とを備え、該検出された前記保持台との位置関係と前記検出された少なくとも異なる3つの外周縁の位置とに基づいて前記回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記回転加工刃の回転半径とを検出する手段である請求項1記載の切裂加工装置。
- 前記切裂制御手段は、前記回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記回転加工刃の回転半径とに基づいて前記薄板状部材の切り裂き加工の深さの適正を判定する手段である請求項1または2記載の切裂加工装置。
- 前記切裂制御手段は、前記回転加工刃の前記保持台に対する回転中心位置と前記加工刃の回転半径とに基づいて前記所定の肉厚を残して切り裂き加工するよう前記回転加工刃の回転中心位置を駆動制御する手段である請求項1または2記載の切裂加工装置。
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