JP4559579B2 - プレス装置の押しズレ防止構造 - Google Patents

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【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、プレス成形する過程で被加工物の端部がダイから離れてしまう場合にその位置ズレを防止するガイド部を設けたプレス装置の押しズレ防止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車輌のアクスルケースのプレス成形は、被加工物の形状や工法から成形過程で被加工物を拘束する手段がないために、成形時に押しズレや、バラツキが発生しやすく、これに起因する精度不良が発生していた。
また、押しズレが発生すると金型製作時の玉成に時間がかかり、コストアップを余儀なくされるという問題点があった。
そこで、これらを改善するために、図6および図7で示すように、被加工物(ブランク材)20をセットする位置決め用のネスト21と被加工物20の隙間Sを狭くしたり、上記ネスト21を高くしたりする等の対策を講じたが、いずれも成形開始までは被加工物20のセット位置決めの精度を向上させることができるが、成形が始まると、位置決めの効果を失なってしまい、またネスト21を狭くした場合には、被加工物20を搬入した際の作業性が悪くなるという新たな問題も発生していた。
これらの問題は、成形過程で被加工物20がパンチ22で曲げられて変形し一時的にダイ23から離れるプレス成形においても同様である。
一方、フォーム成形時、押しズレを減少させる手段として、被加工物に予め設定してある穴を利用し、その穴にパイロットピンを挿入してプレス加工するパイロットピン方式が知られているが、被加工物にパイロット穴を設定できない場合にはこの方式を用いることができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、プレス成型の過程において被加工物がパンチで曲げられて変形し一時的にダイから離れる場合に、この変形する端部の動きに沿ってガイドするガイド部を設けて位置ズレを防ぎながらプレス成形を行うことができるプレス装置の押しズレ防止構造を提供することにある。
【0004】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
被加工物をプレス成形する過程で被加工物の少なくとも一部がパンチで曲げられて変形し一時的にダイから離れるプレス装置の押しズレ防止構造において、
上記パンチ側に、被加工物の端部が前記成形過程で動く軌跡と同じ形状に形成されたガイド部を設け、
前記被加工物の両端部に外方に開口する凹溝又は外方へ突出する突片を形成し、
前記ガイド部が上記被加工物の凹溝又は突片と嵌合して摺動自在な突状又は凹溝状の縁部を内側に有しており、
前記被加工物の凹溝又は突片に前記ガイド部の突状又は凹溝状の縁部を掛止め、ダイから一時的に離れた際に前記被加工物の凹溝又は突片をガイド部の突状又は凹溝状の縁部でガイドしてなる、という技術的手段を講じている。
また、請求項2の発明では、
被加工物が、アクスルケース用のブランクからなっており、被加工物の端部に凹部または突部を形成し、ガイド部は上記凹部または突部に摺動自在に嵌合する突状または凹溝状の縁部を内側に有している、という技術的手段を講じている。
更に、請求項3の発明では、
被加工物が、アクスルケース用の被加工物からなっており、両端部に外方に開口する凹溝を形成し、ガイド部が上記凹溝に嵌め込まれて摺動自在な突状の縁部を有してなる、という技術的手段を講じている。
【0005】
以下に、この発明のプレス装置の押しズレ防止構造を車輌のアクスルケース成形用に適用した場合の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
このプレス装置1は、図1に示すように、上部に設けられたパンチ2と、パンチ2に対応するダイ3とを有しており、パンチ2側にはガイド部4が連動するよう一体的に取り付けられている。
【0006】
一方、被加工物の一例として示すブランク10は、長手方向の上下の中央で内側に向かって湾曲して窪む中央縁部11と、該中央縁部11から左右へ延び先端に向かって漸次幅狭となるように湾曲する各側縁部12と、側縁部12の先端に形成された端縁部13を有するようにトリミングされた平板からなっている。
【0007】
パンチ2は、中央が隆起する山型からなっており、その両端にガイド部4が垂下している。
このガイド部4は、プレートからなっており内側の縁部5の形状を、前記パンチ2でプレス加工する成形過程でブランク10がパンチ2で曲げられて変形し端縁部13側が一時的にダイから離れて動く軌跡Lと同じ形状に形成している。
【0008】
そして、このガイド部4はパンチ2と一体に固着されて連動し、パンチ2の下降時には、図2に示すように、ダイ3の対向する一対の構成片3a、3aの間に形成された隙間6に出没自在に挿入できるように、前記ガイド部4の厚みと上記隙間6の幅が設定されているので、プレス成形作業の邪魔とならない。
【0009】
一方、ブランク10の側端部13には、上記ガイド部4の縁部5を摺動自在に嵌合ずる溝部9が形成されている。
本実施例の場合は、上記溝部9が形成される端縁部13は、後工程で切ってすてる部分であるので、任意に切欠きを形成することができる。
【0010】
上記構成からなっているので、図3に示すようにダイ3上にブランク10をセットし、次いでパンチ2を下降してガイド部4の縁部5の下端を、ブランク10の溝部9に差し込んでおく。
また、ブランク10の他の個所は従来同様に適宜にネスト7等を用いて位置決めする。
【0011】
次いで、図4(a)(b)に示すように、パンチ2でプレス加工する成形過程で、ブランク10がパンチで曲げられ両端縁部13は変形して一時的にダイから離れるが、その際にもブランク10は端縁部13の溝部9がガイド部4の縁部5により常に拘束されているので、位置ズレを生ずることがない。
【0012】
これにより、ブランク10のセットから成形過程及び成形終了までワークを拘束し続けるので、押しズレを減少させることができ、また製品精度を安定し、向上させることができる。
また、金型製作期間の短縮や金型費用の低減をはかることができる。
更に、このガイド部4を用いることにより、ブランク10のセット位置決めも精度よくできるので、従来のネストは、ブランク10搬入時のラフネストとすることができ、搬入作業性も向上させることができる。
【0013】
上記実施例では、ブランク10の端縁部13に凹状の溝部9を形成し、ガイド部4の縁部5を上記凹溝に嵌合する突状のレールまたはブレードとしたが、逆に端縁部13に突片9’を形成し、ガイド部4の縁部5を凹溝状のレールに形成するものでもよい(図5参照)。
【0014】
更に、端縁部13に長穴を形成し、ガイド部4は上記長穴に嵌挿するピンからなるものでもよい。このピンは、前記縁部5(軌跡L)と同じ形状に形成されていればよい。
これらの溝部や突片あるいは長穴は、ガイド部4に対応するものとして形成されるものであるか、あるいは、ブランク10自体に予め形成された構成の一部として用いられるものを利用するものでもよい。
そして、成形後に切除されても、そのまま残してもよい。
【0015】
また、上記実施例では、アクスルケースを例にしたので、左右両端部が変形したが、いずれか一方だけが変形するものでもよい。
その場合は、ガイド部4は一方だけに設けられ、またブランク10に形成されるガイド部4の受部も一方だけでよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【0016】
【発明の効果】
この発明は上記構成よりなっているので、被加工物のセットから成形過程及び成形終了までワークを拘束し続けることができるので、押しズレを減少でき、製品精度の安定性を向上させることができる。
また、この発明によれば金型製作期間の短縮や金型費用の低減をはかることができて有益である。
更に、このガイドを用いることにより被加工物材のセットの位置決めも精度よく行えるので、ネストは、被加工物材搬入時のラフネストとすることができ、搬入作業性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】押しズレ防止構造の実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の側方から見たa−a線断面図である。
【図3】同正面図である。
【図4】(a)は成形途中の状態、(b)は成形終了の状態を示す正面図である。
【図5】異なる実施例の押しズレ防止構造の斜視図である。
【図6】従来のプレス成形を説明する斜視図。
【図7】図6のb−b線断面図である。
【符号の説明】
1 プレス装置
2 パンチ
3 ダイ
3a 構成片
4 ガイド部
5 縁部
6 隙間
9 溝部
10 ブランク
13 端縁部

Claims (3)

  1. 被加工物をプレス成形する過程で被加工物の少なくとも一部がパンチで曲げられて変形し一時的にダイから離れるプレス装置の押しズレ防止構造において、
    上記パンチ側に、被加工物の端部が前記成形過程で動く軌跡と同じ形状に形成されたガイド部を設け、
    前記被加工物の両端部に外方に開口する凹溝又は外方へ突出する突片を形成し、
    前記ガイド部が上記被加工物の凹溝又は突片と嵌合して摺動自在な突状又は凹溝状の縁部を内側に有しており、
    前記被加工物の凹溝又は突片に前記ガイド部の突状又は凹溝状の縁部を掛止め、ダイから一時的に離れた際に前記被加工物の凹溝又は突片をガイド部の突状又は凹溝状の縁部でガイドしてなることを特徴とするプレス装置の押しズレ防止構造。
  2. 被加工物が、アクスルケース用のブランクからなっており、被加工物の端部に凹部または突部を形成し、ガイド部は上記凹部または突部に摺動自在に嵌合する突状または凹溝状の縁部を内側に有していることを特徴とする請求項1に記載のプレス装置の押しズレ防止構造。
  3. 被加工物が、アクスルケース用のブランクからなっており、両端部に外方に開口する凹溝を形成し、ガイド部が上記凹溝に嵌め込まれて摺動自在な突状の縁部を有してなることを特徴とする請求項1に記載のプレス装置の押しズレ防止構造。
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