JP4557681B2 - スパッタイオンポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、スパッタイオンポンプに関する。スパッタイオンポンプは高真空若しくは超高真空領域以上の高い排気性能を備えている。
スパッタイオンポンプは、ポンプケース内で対向する一対のカソードと、カソードそれぞれと非接触状態で両カソード間に配置されたアノードとに対して、強力磁場のもとで発生するぺニング放電を利用するものである。即ち、カソード及びアノード間に発生するガス分子を、スパッタ作用(イオン化された気体分子の埋め込み)とゲッタ作用(スパッタ粒子により形成された蒸着層への収着)とにより排気するものである。また、放電スパッタを連続的に行うために、両カソードの外側をマグネットで挟んだ構造にしたり、このマグネットの外側をさらに鉄製のヨークにより覆う構造を用いることが多い。そして、これらにより、機械的振動を発生せずに、10-4〜10-9Pa範囲のいわゆる高真空若しくは超高真空領域への到達を可能としたものである。
このような高い排気性能を保つために、ポンプケースなどポンプ本体へのベーキング処理が不可欠である。従来のベーキング方法は、ポンプ本体やマグネットあるいはヨークなどの表面材質にテープヒータやシースヒータを巻回させ、これに通電加熱するものが一般的である。
ところが、このベーキング方法には種々の問題があり、例えば、
1)巻回ヒータの表面側が空気に露出するため、空気側への熱排出が多く、充分な加熱効率が得られない。
2)ポンプ本体の屈曲部や配管の複雑な部分へのヒータの巻回が困難である。
3)ヒータが露出しているため作業員に対する安全管理が必要となる。
4)ヒータ巻回部分とそれ以外の部分、あるいは、多重巻回部分とそれ以外の部分とで加熱が不均一になる。
5)マグネットあるいはヨーク位置の表面にヒータを巻回した場合、ポンプケースへの熱伝導が充分でなく、また、特に、マグネット上にヒータを巻回した場合に磁気特性減少の原因となりやすい。
そして、例えば特許文献1に示すものは、ポンプケースとマグネットとの間にヒータを介在させる構造を用いることにより、これらの問題に対処している。
特開平5-290791号公報(第2頁)
しかしながら、特許文献1の構造のスパッタイオンポンプにおいても、新たに問題点が生じる。その問題点のうち最たるものは、ケースとマグネットとの間にヒータを介在させることにより、マグネット間の距離が拡大することであり、これにより磁場強度が大きく減少して排気性能の低下を招くおそれがある。
また、特許文献1に示す構造では、ヒータとマグネットとが近接しているため、上記の減磁問題が依然として残ることになる。この対策のためにヒータとマグネットとの間に断熱材などを介在させる構造を採用することも考えられるが、この構造でもマグネット間のさらなる距離拡大を招くことになり、上記と同様に高度の排気性能の確保が困難になる。
さらに、磁場強度の問題が別側面からも生じる。即ち、スパッタイオンポンプに対して超高真空領域対応の要望が強まっており、搭載するマグネットの体積が増大する傾向にある。このため、以前のようにマグネットの対面構造やヨーク補強だけでは磁力線を内部に収束させることが難しく、このために磁力線の発散が生じることになる。そして、これに起因してポンプ周辺には漏洩した磁力線による残留磁場が発生し、周辺にある機器などに影響を及ぼすおそれがある。
本発明は、上記問題点に鑑み、減磁や磁場低下あるいは磁力線の漏洩などを誘引せず、所期の磁場強度を保ち得るベーキング処理機構を備えたスパッタイオンポンプを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、ポンプケース内側に、1個以上のアノード及びこれらアノードを介して互いに対向する一対のカソードにより構成されるポンプセルを備え、ポンプケース外側に、両カソードの対向方向に重ねて対向する一対のマグネットと、これら両マグネットを囲繞するヨークとを取り付けたイオンポンプにおいて、ポンプセルの側面部分に位置するポンプケース外側に加熱用ヒータを取り付けるものである。
これによれば、中空筒体構造のポンプセルにおいて、両マグネットに挟まれる両側を上下底面としたときの胴体部分に相当する側面部分に、ポンプケース外側から加熱ヒータを取り付けるため、両マグネットの間隔を増減させることなく、ベーキング用の加熱を行うことができる。また、加熱ヒータとマグネットとが平面的に重なる従来のヒータ取り付け構造と異なり、加熱ヒータとマグネットとが直接に面接触することがない。これらにより、ベーキング処理の際に、磁場強度減少や減磁問題の発生を抑制することができ、スパッタイオンポンプ本来の高い排気性能が得られる。
なお、加熱用ヒータとしては、ポンプケースに対する接触面積を極大化するため、プレート状のもの、あるいは、シースヒータ形状のものを用いることが望ましい。
ところで、スパッタイオンポンプのポンプケースは、上記ポンプセルに連通する空間部分を備えた構造で形成されることがある。この場合、ポンプケース内側でポンプセル部分に連なる空間部分に対して、空間部分に位置するポンプケース外側に、さらに加熱用ヒータを取り付けるようにしても良い。この空間部分は、両マグネットやヨークによる磁力線の磁束とは離間して位置するため、この部分へ取り付けた加熱ヒータが、ポンプセル部分の磁場強度に影響を与えることはないからである。
なお、これら加熱ヒータの構成材料には、マイカ(雲母)、ゴム、シリコン、セラミックスファイバなどの非磁性材料を用いることが望ましい。
さらに、上記したようにマグネット、ヨーク及び加熱用ヒータとを取り付けたポンプ本体を保温用筐体内に収容し、その際に、ポンプ本体と筐体との接触部分を位置固定治具のみに限定する。保温用筐体とポンプ本体とが互いの接触部分を位置固定治具のみに留めた状態で、筐体内にポンプ本体が収容されるため、内部のポンプ本体周囲に空間が確保される。したがって、内部輻射熱により、ポンプケース全体は、効率良くしかも均一に加熱される。また、ポンプに対する加熱部分が露出しないため、安全管理上の利点も得られる。
残留磁場の抑制をより有効に機能できるよう、ポンプ本体と筐体との位置固定治具には、非磁性材料(ステンレス、アルミニウム、セラミックスなど)を用いることが望ましい。
一方、保温用筐体の材質には、磁性材料(金属鉄、鉄-ニッケル合金など)を用いることが望ましい。これにより、内部に収容したポンプ本体から漏洩して発生する残留磁場を抑制することができる。
また、筐体内部の保温効果を確実に得るために、筐体内側の少なくとも一面を保温材料で形成する、あるいは、ポンプ本体と筐体との間隙を保温材料で充填することが望ましい。
本発明のスパッタイオンポンプは、ポンプセルの側面部分に、ポンプケース外側から加熱ヒータを取り付けるため、ベーキング処理の際に、磁場強度減少や減磁問題の発生を抑制することができ、スパッタイオンポンプ本来の高い排気性能が得られる。
また、加熱用ヒータ付きのポンプ本体ごと、保温用筐体内に収容することにより、ポンプケース全体は、内部輻射熱で効率良くしかも均一に加熱され、さらに、安全管理上の利点も得られる。
図1は、本発明のスパッタイオンポンプ1の概念図であり、ポンプケース2の空間部分2aがプレートヒータ3a、3bで覆われ、さらに、空間部分2aに連なるポンプセル部分2bがヨーク4で覆われている。なお、空間部分2aの上部は、吸気孔5に接続されている。
このように構成されたイオンポンプ1の内部構造は、ポンプケース2の空間部分2aとポンプセル2bとにより構成される。図1に示すように、ポンプセル2bはポンプケース2内の箱型突出部として形成される。そして、その内部には、一対のカソード6a、6bと、その間に複数個のアノード7とが配置されている。そして、一対のカソード6a、6bをさらに挟むようにしてポンプケース2の外側位置にマグネット8a、8bが配置される。さらに、このようなサンドイッチ構造に配置されたマグネット8a、8b及びポンプセル2b、2bを鉄製ヨーク4で包囲する。
イオンポンプ1の排気性能を維持するには、ペーキング処理が不可欠であるが、図1に示すように、本発明のイオンポンプでは、このためにプレートヒータ9を用いる。即ち、中空筒体構造のポンプセル2bにおいて、例えばマグネット8a、8b側の両面を上下底面としたときに胴体部分に相当する側面部分を覆うようにケース外側から、プレートヒータ9を取り付ける。このようにすることにより、マグネット8a、8bのそれぞれの間隔に影響を与えることがなく、また、マグネット8a、8bのそれぞれにヒータ9が直接に面接触することがない。したがって、マグネット8a、8bの間隔増大による磁場強度減少や、ヒータ9がマグネット8a、8bに直接接触することによる磁気特性低下(減磁)などが発生しにくくなる。
ところで、ポンプケース2の全体のベーキング処理のためには、空間部分2aに対しても加熱を行うことが望ましい。そこで、本発明のイオンポンプ1においては、空間部分2aの側面部分に、ケース外側からプレートヒータ3a、3bを取り付けた。
ただし、近年のマグネット体積の巨大化に伴い、漏洩する磁力線対策が必要である。そこで、これらヒータ3a、3b、9の材質には、マイカ、ゴム、シリコン、セラミックスファイバなどの非磁性材料を用いることが望ましい。非磁性材料を用いることにより不用意に磁力線漏洩が広がることなく、そのため、マグネット8a、8b間の磁力線形成への影響が極小化され、所期の磁場強度が得られる。同様の理由で、ポンプケース2にヒータ3a、3b、9を取り付ける際の固定ねじ等、あるいはスペーサ10などの位置固定治具にも非磁性材料を用いることが望ましい。
ところで、ベーキング処理に際してポンプケース2に対する加熱は、厳格な安全管理のもとで均一かつ効率的に行う必要がある。そこで、図1に示すように、本発明のスパッタイオンポンプ1は、ヒータ等を取り付けた状態のポンプケース2を、さらに保温箱11内に収容する構造とした。
図2に示すように、保温箱11は、一対の分割箱11a、11bにより構成されており、位置固定用の固定ねじ12のみにより、内部のポンプケース2と接続されている。そして、内部ポンプケース2(装着した加熱ヒータなどの付属品を含む)は、保温箱11の内面と間隙を保って配置される。したがって、保温箱11内部の輻射熱により、ポンプケース2の全体が効率良く均一に加熱されるのである。もちろん、加熱部分が装置外部に露出しないことにより安全管理上の利点も得られる。
あるいは、保温箱11の内側面にマイカなどの保温材料を貼付したり塗布したりすることにより、保温箱11内での保温効果が確実になる。また、内部に配置されたポンプケース2と保温箱11とを間隙空間により対峙させるのではなく、その間隙にマイカなどの保温材料を充填することにより、保温効果が増大して得られる。
ところで、上記したマグネット体積の巨大化に伴う、漏洩磁力線対策は、保温箱11においても重要である。即ち、保温箱11に対して漏洩磁力線対策を施すことにより、これを磁気シールドとして兼用できる。本発明においては、保温箱11の材質に、金属鉄、鉄-ニッケル合金などの磁性材料を用いることにより、残留磁場をこれに吸収し、外部への漏洩を最小限に留めるようにした。なお、保温箱11とポンプケース2とを接続固定する固定ねじ12や、分割状態の保温箱11a、11bを接続するための固定ねじ(図示せず)にも、非磁性材料(SUSやアルミニウム材料)を用いることが望ましい。
なお、保温箱11の部材形成に際して、折曲加工、絞り加工あるいは溶接などの工法を用いるのが一般的であるが、この場合に、分割箱の部材間の継目部分においても図3の各図に示す構造を用いるようにした。この目的は、図3(a)〜(f)の各図において、部材A及び部材Bの接触面積を極大化させてシールド効果を充分に得ることと、加工上の制約から部材A及び部材B間に隙間が生じるとしても両者が重複するようにして残留磁場の漏洩を防止することにある。
本発明で用いた加熱ヒータの取り付けや保温箱によるシールドは、スパッタイオンポンプに限らずベーキングが必要な高性能ポンプに活用可能である。
本発明スパッタイオンポンプの概念図 保温箱装着時の本発明スパッタイオンポンプの概念図 (a)〜(f)保温箱の分割部材の接合構造例を示す略断面図
符号の説明
1 スパッタイオンポンプ
2 ポンプケース
2a 空間部分
2b ポンプセル部分
3a、3b プレートヒータ
4 ヨーク
6a、6b カソード
7 アノード
8a、8b マグネット
9 プレートヒータ
10 スペーサ(位置固定治具)
11 保温箱(保温用筐体)
12 固定ねじ(位置固定治具)

Claims (6)

  1. ポンプケース内側に、1個以上のアノード及び該アノードを介して互いに対向する一対のカソードにより構成されるポンプセルを備え、ポンプケース外側に、前記両カソードの対向方向に重ねて対向する一対のマグネットと、該両マグネットを囲繞するヨークとを取り付けたイオンポンプにおいて、前記ポンプセルの両マグネットに挟まれる両側を上下底面としたときの胴体部分に相当する側面部分に位置するポンプケース外側に、加熱用ヒータを取り付け、前記ポンプケース内側でポンプセル部分に連なる空間部分に対して、該空間部分に位置するポンプケース外側に、さらに加熱用ヒータを取り付けることを特徴とするスパッタイオンポンプ。
  2. 前記マグネットとヨークと加熱用ヒータとを取り付けたポンプ本体を保温用筐体内に収容し、該ポンプ本体と該筐体との接触部分を位置固定治具のみに限定することを特徴とする請求項1に記載のスパッタイオンポンプ。
  3. 前記ポンプ本体と筐体との位置固定治具に、非磁性材料を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタイオンポンプ。
  4. 前記筐体に磁性材料を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスパッタイオンポンプ。
  5. 前記筐体内側の少なくとも一面を保温材料で形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスパッタイオンポンプ。
  6. 前記ポンプ本体と筐体との間隙を、保温材料で充填することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のスパッタイオンポンプ。
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