以下、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
<実施例1>
先ず、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第1の実施態様について図1〜図9に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用する内燃機関の冷却水循環系を示す図である。内燃機関1は、軽油を燃料とする圧縮着火式の内燃機関(ディーゼル機関)又はガソリンを燃料とする火花点火式の内燃機関(ガソリン機関)であり、自動車に搭載される機関である。
前記内燃機関1は、シリンダヘッド1aとシリンダブロック1bを備えている。シリンダヘッド1a及びシリンダブロック1bの各々には、本発明に係る熱媒体としての冷却水を流通させるためのヘッド側冷却水路2aとブロック側冷却水路2bとが形成され、それらヘッド側冷却水路2aとブロック側冷却水路2bとが相互に連通している。
前記ヘッド側冷却水路2aには、第1冷却水路4が接続され、この第1冷却水路4は、ラジエター5の冷却水流入口に接続されている。前記ラジエター5の冷却水流出口は、第2冷却水路6を介してサーモスタットバルブ7に接続されている。
前記サーモスタットバルブ7には、前記第2冷却水路6に加えて、第3冷却水路8とバイパス水路9とが接続されている。前記第3冷却水路8は、内燃機関1の機関出力軸(クランクシャフト)の回転トルクを駆動源とする機械式ウォーターポンプ10の吸込口に接続されている。前記機械式ウォーターポンプ10の吐出口には、前記ブロック側冷却水路2bが接続されている。一方、前記バイパス水路9は、ヘッド側冷却水路2aに接続されている。
ここで、前記したラジエター5は、該ラジエター5内を流通する冷却水と外気との間で熱交換を熱交換器である。また、前記したサーモスタットバルブ7は、冷却水の温度に応じて、第2冷却水路6とバイパス水路9との何れか一方を遮断する流路切換バルブである。具体的には、サーモスタットバルブ7は、該サーモスタットバルブ7を流れる冷却水の温度が所定の開弁温度:Temp1(例えば、80℃〜90℃)未満であるときは、第2冷却水路6を遮断すると同時にバイパス水路9を開放して、第3冷却水路8とバイパス水路9とを導通させる。前記サーモスタットバルブ7は、該サーモスタットバルブ7を流れる冷却水の温度が前記開弁温度:Temp1以上であるときは、第2冷却水路6を開放すると同時にバイパス水路9を遮断して、第3冷却水路8と第2冷却水路6とを導通させる。
次に、前記した第1冷却水路4の途中にはヒータホース11が接続され、このヒータホース11は前記した第3冷却水路8の途中に接続されている。前記ヒータホース11の途中には、冷却水と室内暖房用空気との間で熱交換を行うヒータコア12が配置されている。このヒータコア12は、本発明に係る機関関連要素の一実施態様である。
前記ヒータコア12と前記第3冷却水路8との間に位置するヒータホース11の途中には、第1バイパス通路13aが接続されている。この第1バイパス通路13aは、電動ウォーターポンプ14の冷却水吸込口に接続されている。
前記電動ウォーターポンプ14は、電動モータによって駆動されるウォーターポンプであり、前記した冷却水吸込口から吸い込んだ冷却水を冷却水吐出口から吐出するよう構成されている。
前記電動ウォーターポンプ14の冷却水吐出口は、第2バイパス通路13bを介して蓄熱容器15の冷却水入口に接続されている。蓄熱容器15は、冷却水が持つ熱を蓄熱しつつ冷却水を貯蔵する容器であり、前記冷却水入口から新規の冷却水が流入すると、その代わりに該蓄熱容器15内に貯蔵されていた冷却水を冷却水出口から排出するよう構成されている。
尚、蓄熱容器15の冷却水入口と冷却水出口との各々には、冷却水の逆流を防止するワンウェイバルブ15a、15bが取り付けられている。
前記蓄熱容器15の冷却水出口には、第3バイパス通路13cが接続されており、この第3バイパス通路13cは、ヒータコア12と第1冷却水路4との間に位置するヒータホース11に接続されている。
尚、ヒータコア12と第1冷却水路4との間に位置するヒータホース11において、第3バイパス通路13cの接続部位を基準にして第1冷却水路4側の部位を第1ヒータホース11aと称するとともに、ヒータコア12側の部位を第2ヒータホース11bと称するものとする。更に、ヒータコア12と第3冷却水路8との間に位置するヒータホース11において、第1バイパス通路13aの接続部位を基準にしてヒータコア12側の部位を第3ヒータホース11cと称するとともに、第3冷却水路8側の部位を第4ヒータホース1
1dと称するものとする。
前記した第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとの接続部には、流路切換弁16が設けられている。この流路切換弁16は、前記3つの通路の何れか1つの通路を選択的に遮断する。流路切換弁16は、例えば、ステップモータ等からなるアクチュエータによって駆動されるようになっている。
上記したヒータホース11、第1バイパス通路13a、第2バイパス通路13b、第3バイパス通路13c、及び電動ウォーターポンプ14は、本発明に係る供給手段に相当するものである。
また、前記した第3バイパス通路13cにおいて蓄熱容器15の冷却水出口の近傍には、該第3バイパス通路13c内を流れる冷却水の温度(すなわち、蓄熱容器15から流出する冷却水の温度)に対応した電気信号を出力する第1水温センサ17が取り付けられている。更に、前記した第1冷却水路4におけるヘッド側冷却水路2aとの接続部位の近傍には、該第1冷却水路4内を流れる冷却水の温度に対応した電気信号を出力する第2水温センサ18が取り付けられている。
このように構成された冷却水循環系には、当該冷却水循環系の作動状態を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)39が併設されている。この
ECU39は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、入力ポート、出力ポート、A/Dコンバータ等から構成される算術論理演算回路である。このECU39は、内燃機関1の運転状態を制御するためのECUと独立して設けられるようにしてもよく、或いは兼用されるにしてもよい。
ECU39には、前述した第1水温センサ17及び第2水温センサ18に加えて、車室内に設けられたイグニッションスイッチ40、スタータスイッチ41、及び室内暖房装置のスイッチ(ヒータスイッチ)42が電気的に接続され、それら各種センサの出力信号がECU39へ入力されるようになっている。
更に、ECU39には、前述した電動ウォーターポンプ14と流路切換弁16が電気的に接続され、ECU39が電動ウォーターポンプ14及び流路切換弁16を制御することが可能となっている。
具体的には、ECU39は、ROMに記憶されているアプリケーションプログラムに従って動作し、前記冷却水循環系における冷却水の流れを切り換えるための冷却水流れ切換制御を実行する。
以下、本実施の形態における冷却水流れ切換制御について述べる。先ず、内燃機関1が運転状態にあるときは、機械式ウォーターポンプ10がクランクシャフトの回転トルクを受けて作動する。これに対し、ECU39は、第2ヒータホース11bを遮断させるべく流路切換弁16を制御するとともに、電動ウォーターポンプ14を停止状態に制御する。
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10のみが作動することになり、その際の冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1未満であれば該サーモスタットバルブ7が第2冷却水路6を遮断すると同時にバイパス水路9を開放することになる。
従って、内燃機関1が運転状態にあり、且つ冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1未満であるときは、図2に示すように、機械式ウォーターポンプ10→
ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→バイパス水路9→サーモスタットバルブ7→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
図2に示すような循環回路が成立した場合は、内燃機関1から流出した比較的低温の冷却水がラジエター5を迂回して流れることになるため、冷却水がラジエター5によって不要に冷却されないことになる。この結果、内燃機関1の暖機が妨げられることがない。
その後、内燃機関1の暖機が完了して、冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1以上になると、サーモスタットバルブ7が第2冷却水路6を開放すると同時にバイパス水路9を遮断することになる。
つまり、内燃機関1が運転状態にあり且つ冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1以上であるときは、図3に示すように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水路4→ラジエター5→第2冷却水路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
図3に示すような循環回路が成立した場合は、内燃機関1から流出した比較的高温の冷却水がラジエター5を流通することになるため、冷却水の熱がラジエター5によって放熱される。この場合、ラジエター5によって放熱された後の比較的低温の冷却水が内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ流入することになるため、内燃機関1の熱が冷却水へ伝達されるようになる。この結果、内燃機関1の過熱が防止される。
また、内燃機関1が運転状態にあり且つ冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1以上であるときに、ヒータスイッチ42がオンにされると、ECU39は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持しつつ、第3バイパス通路13cを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bを導通させるべく流路切換弁16を制御する。
この場合、図4に示すように、前述した図3の説明で述べた循環回路と同一の循環回路が成立すると同時に、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水路4→第1ヒータホース11a→流路切換弁16→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第4ヒータホース11d→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
図4に示すような循環回路が成立した場合には、内燃機関1から流出した比較的高温の冷却水がヒータコア12へ流入することになるため、ヒータコア12において冷却水の熱が室内暖房用空気へ伝達されることになる。この結果、室内暖房用空気が暖められることになる。
一方、内燃機関1が冷間始動される場合や始動直後の冷間状態にある場合は、吸気ポート壁面や燃焼室壁面の温度が低くなるため、燃料噴射弁から噴射された燃料が気化し難い。このため、燃料噴射弁から噴射された燃料が吸気ポート壁面や燃焼室壁面に付着し易くなり、可燃性の高い混合気を形成することが困難となる。更に、内燃機関1が冷間状態にある場合は、圧縮行程上死点における気筒内(燃焼室内)の温度(所謂、圧縮端温度)も低くなるため、燃料が着火及び燃焼し難くなる。
このように内燃機関1において可燃性の高い混合気が形成され難く且つ燃料が着火及び
燃焼し難くなると、始動性の低下、燃焼安定性の低下、或いは未燃燃料成分の排出量増加による排気エミッションの悪化などが誘発される。
そこで、内燃機関1が冷間状態にある時は、第2ヒータホース11bを遮断すべく流路切換弁16を制御するとともに電動ウォーターポンプ14を作動させることにより、図5に示すような、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水路4→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水路8→第4ヒータホース11d→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路を成立させる方法が考えられる。
図5に示すような循環回路が成立すると、電動ウォーターポンプ14から吐出された冷却水が第2バイパス通路13bを介して蓄熱容器15に流入し、それと入れ代わりに蓄熱容器15内の高温な冷却水(以下、蓄熱温水と称する)が冷却水出口から排出される。
蓄熱容器15の冷却水出口から排出された蓄熱温水は、第3バイパス通路13c、流路切換弁16、第1ヒータホース11a、及び第1冷却水路4を介して、内燃機関1のヘッド側冷却水路2aへ流入し、次いでヘッド側冷却水路2aからブロック側冷却水路2bへ流入する。
このように蓄熱容器15に貯蔵されていた蓄熱温水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ流入すると、それと入れ代わりにヘッド側冷却水路2a内及びブロック側冷却水路2b内に元々滞留していた低温の冷却水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから排出される。この結果、蓄熱温水の熱が内燃機関1のシリンダヘッド1aやシリンダブロック1bへ伝達され、シリンダヘッド1a及びシリンダブロック1bが暖められる。
尚、図5に示すような循環回路では、蓄熱容器15からの蓄熱温水がヘッド側冷却水路2aを経由した後にブロック側冷却水路2bへ供給されるため、シリンダヘッド1aが優先的に暖められる。更に、図5に示すような循環回路では、蓄熱容器15からヘッド側冷却水路2aへ至る経路にヒータコア12等の熱容量の大きな部材が存在しないため、蓄熱容器15にて蓄えられていた熱が不要に放熱されることなくシリンダヘッド1aへ伝達されるようになる。
蓄熱容器15内に貯蔵されていた蓄熱温水によってシリンダヘッド1aが優先的に暖められると、シリンダヘッド1aの図示しない吸気ポートの壁面温度や燃焼室の壁面温度などが速やかに上昇する。
この場合、内燃機関1の始動時や始動直後における燃料の気化が促進されるとともに圧縮端温度が高められるため、燃料の着火性及び燃焼性の向上、壁面付着燃料量の減少等が図られ、その結果、始動性の向上、暖機運転時間の短縮、排気エミッションの向上などを図ることが可能となる。
また、内燃機関1が冷間状態にある場合は、冷却水の温度も低くなるため、室内暖房用空気を十分に暖めることが困難となり、所望の暖房性能を得ることが不可能となる。従って、内燃機関1が冷間状態にあるときに所望の暖房性能を得るためには、ヒータコア12を流通する冷却水の温度を高める必要がある。
これに対し、内燃機関1が冷間状態にあり且つヒータスイッチ42がオンである時は、第1ヒータホース11aを遮断すべく流路切換弁16を制御するとともに、電動ウォータ
ーポンプ14を作動させることにより、図6に示すような、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路を成立させる方法が考えられる。
図6に示すような循環回路が成立すると、電動ウォーターポンプ14から吐出された冷却水が第2バイパス通路13bを介して蓄熱容器15に流入し、それと入れ代わりに蓄熱容器15内の蓄熱温水が冷却水出口から排出される。
蓄熱容器15の冷却水出口から排出された蓄熱温水は、第3バイパス通路13c、流路切換弁16、及び第2ヒータホース11bを介して、ヒータコア12へ流入し、それと入れ代わりにヒータコア12内に元々滞留していた低温の冷却水が該ヒータコア12から排出される。そして、蓄熱温水の熱がヒータコア12を介して室内暖房用空気へ伝達され、室内暖房用空気が好適に暖められるようになる。この結果、内燃機関1が冷間状態にあるときの室内暖房性能を向上させることが可能となる。
ところで、内燃機関1が冷間状態にある場合に、前述した図5の説明で述べたような循環回路が成立すると内燃機関1の始動性、燃焼安定性、及び排気エミッションを向上させることは可能となるが室内暖房性能を向上させることが困難となる一方、前述した図6の説明で述べたような循環回路が成立すると室内暖房性能を向上させることは可能となるが内燃機関1の始動性、燃焼安定性、及び排気エミッションを向上させることが困難となる。
そこで、本実施の形態における冷却水流れ切換制御では、ECU39は、内燃機関1が冷間状態にあり且つヒータスイッチ42がオン状態にあるときは、内燃機関1に対する蓄熱温水の供給とヒータコア12に対する蓄熱温水の供給とを、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点からの経過時間に応じて切り換えるようにした。
具体的には、ECU39は、図7に示すように、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点から所定時間:T1内は第2ヒータホース11bを遮断すべく流路切換弁16を制御
することにより前述した図5の説明で述べたような循環回路を成立させ、前記した所定時間:T1が経過した後は第1ヒータホース11aを遮断すべく流路切換弁16を制御する
ことにより前述した図6の説明で述べたような循環回路を成立させるようにしてもよい。この場合、蓄熱温水は、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点から所定時間:T1内
は内燃機関1を暖め、前記した所定時間:T1が経過した後はヒータコア12(室内暖房
用空気)を暖めることになる。この結果、室内暖房性能に比して内燃機関1の始動性や排気エミッションが優先的に向上するようになる。
また、ECU39は、図8に示すように、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点から所定時間:T1内は第1ヒータホース11aを遮断すべく流路切換弁16を制御するこ
とにより前述した図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、前記した所定時間:T1が経過した後は第2ヒータホース11bを遮断すべく流路切換弁16を制御することに
より前述した図5の説明で述べたような循環回路を成立させるようにしてもよい。この場合、蓄熱温水は、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点から所定時間:T1内はヒー
タコア12(室内暖房用空気)を暖め、前記した所定時間:T1が経過した後は内燃機関
1を暖めることになる。この結果、内燃機関1の始動性や排気エミッションに比して室内暖房性能が優先的に向上するようになる。
尚、内燃機関1とヒータコア12との何れへ優先的に蓄熱温水を供給するかについては
、本発明が適用される自動車の使用環境に応じて定めればよい。
ここで、内燃機関1が冷間状態にあるときの冷却水流れ切換制御について図9に沿って具体的に説明する。ここでは、蓄熱温水をヒータコア12に優先して内燃機関1へ供給する場合の冷却水流れ切換制御について述べる。
図9は、内燃機関1が冷間状態にあるときの冷却水流れ切換制御ルーチンを示すフローチャート図である。冷却水流れ切換制御ルーチンは、予めECU39のROMに記憶されているルーチンであり、イグニッションスイッチ40がオフからオンへ切り換えられたことをトリガとしてECU39が実行するルーチンである。
冷却水流れ切換制御ルーチンでは、ECU39は、先ずS901においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられたか否かを判別する。
前記S901においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられていないと判定された場合は、ECU39は、本ルーチンの実行を終了する。
一方、前記S901においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられたと判定された場合は、ECU39は、S902へ進み、内燃機関1内の冷却水温度(機関側水温):THWを入力する。ここで、機関側水温:THWとしては、第2水温センサ18の出力信号値を用いることができる。
S903では、ECU39は、前記S902において入力された機関側水温:THWが所
定温度(内燃機関1の暖機完了後における水温、若しくはそれに近似した温度(例えば、40℃)):Tbase未満であるか否かを判別する。
前記S903において前記機関側水温:THWが前記所定温度以上であると判定された場
合は、ECU39は、内燃機関1及びヒータコア12を暖める必要がないとみなし、本ルーチンの実行を終了する。これは、機関側水温:THWが所定温度以上である場合には、内
燃機関1の吸気ポート壁面や燃焼室壁面などの温度も十分に高く、且つ、室内暖房用空気を暖める上で必要となる熱量を冷却水が十分に備えていることになるからである。前記S903において前記機関側水温:THWが前記所定温度未満であると判定された場合は、E
CU39は、S904へ進み、第2ヒータホース11bを遮断させるべく流路切換弁16を制御する。
S905では、ECU39は、電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を印加する。
この場合、前述した図5の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水路4→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水路8→第4ヒータホース11d→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ供給され、以て内燃機関1が速やかに暖められることになる。
ここで図9に戻り、S906では、ECU39は、カウンタ:Cを起動させる。このカウンタ:Cは、電動ウォーターポンプ14が作動開始した時点からの経過時間を計測するものである。
S907では、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1を越えた
か否かを判別する。前記した所定時間:T1は、例えば、内燃機関1のヘッド側冷却水路
2a及びブロック側冷却水路2bのうち少なくともヘッド側冷却水路2a内の冷却水が蓄熱容器15内からの蓄熱温水と入れ替わるまでに要する時間としてもよい。
前記S907においてカウンタ:Cの計時時間:Cが所定時間:T1以下であると判定
された場合には、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:T1を越
えるまで当該S907の処理を繰り返し実行する。この場合、カウンタ:Cの計測時間が所定時間:T1を越えるまでの期間、言い換えれば、電動ウォーターポンプ14の作動開
始時点から所定時間:T1内は、流路切換弁16が第2ヒータホース11bを遮断するた
め、その間は蓄熱容器15内の蓄熱温水が内燃機関1へ供給されることになる。
その後、前記カウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1を越えると、ECU39は
、前記S907においてカウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1を越えていると判
定してS908へ進むことになる。
S908では、ECU39は、ヒータスイッチ42がオンであるか否かを判別する。
前記S908においてヒータスイッチ42がオンであると判定された場合は、ECU39は、S909へ進み、第1ヒータホース11aを遮断させるべく流路切換弁16を制御する。すなわち、ECU39は、第2ヒータホース11bが遮断された状態から第1ヒータホース11aが遮断された状態へ切り換えるべく流路切換弁16を制御する。
この場合、前述した図6の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水がヒータコア12へ供給され、以てヒータコア12において蓄熱温水の熱が室内暖房用空気へ伝達されることになる。
ここで図9に戻り、S910では、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが予め設定された所定時間:Tmaxを越えたか否かを判別する。前記した所定時間:Tmaxは、電動ウォーターポンプ14の作動開始から蓄熱容器15内の冷却水が全て入れ替わる(蓄熱容器15内に貯蔵されていた蓄熱温水の全てが該蓄熱容器15内から排出される)までに要する時間に基づいて決定される時間である。
前記S910においてカウンタ:Cの計測時間が前記所定時間:Tmax以下であると判
定された場合は、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間が前記所定時間:Tmaxを越え
るまで当該S910の処理を繰り返し実行する。
前記S910においてカウンタ:Cの計測時間が前記所定時間:Tmaxを越えていると
判定された場合は、ECU39は、S911へ進み、電動ウォーターポンプ14の作動を停止させ、本ルーチンの実行を終了する。
また、前述したS908においてヒータスイッチ42がオフであると判定された場合は、ECU39は、S909及びS910の処理をスキップしてS911へ進み、電動ウォーターポンプ14の作動を停止させた後に本ルーチンの実行を終了する。
このようにECU39が冷却水流れ切換制御ルーチンを実行することにより、蓄熱容器15から内燃機関1への蓄熱温水の供給と蓄熱容器15からヒータコア12への蓄熱温水
の供給とが電動ウォーターポンプ14の作動開始時点からの経過時間に応じて切り換えられるため、内燃機関1とヒータコア12(室内暖房用空気)の双方が好適に昇温されるようになる。
特に、本実施の形態では、蓄熱容器15に貯蔵されていた蓄熱温水により、先ず内燃機関1が暖められ、次いでヒータコア12(室内暖房用空気)が暖められるため、内燃機関1の始動性や排気エミッションを向上させた上で室内暖房性能を高めることもできる。
尚、本実施の形態では、イグニッションスイッチ32がオフからオンへ切り換えられたことをトリガとして冷却水流れ切換制御ルーチンが実行される例について述べたが、自動車の運転席のドアが開閉されたこと、或いは、自動車の運転席に運転者が着座したこと等をトリガとして実行されるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、本発明に係る機関関連要素としてヒータコア12を例に挙げて説明したが、トランスミッションの潤滑油(以下、トランスミッションオイルと称する)と冷却水との間で熱交換を行うミッションオイルクーラであってもよい。
内燃機関1が冷間状態にあるときはトランスミッションオイルも低温となるため、トランスミッションオイルの粘性が高くなり、内燃機関1がトランスミッションを作動させる際に必要となるトルクが高くなる傾向がある。内燃機関1がトランスミッションを作動させる際に必要となるトルクが高くなると、内燃機関1の燃料消費率が悪化する。
そこで、蓄熱容器15に貯蔵されていた蓄熱温水により、内燃機関1とミッションオイルクーラ(トランスミッションオイル)とを順次暖めるようにすれば、内燃機関1の排気エミッションと燃料消費率を好適に向上させることが可能となる。
また、本実施の形態では、機械式ウォーターポンプによる冷却水の流れ方向と電動ウォーターポンプによる冷却水の流れ方向が逆になる場合を例に挙げたが、双方による冷却水の流れ方向が同一であってもよく、その際には、内燃機関1において冷却水がブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2aの順に流れるよう機械式ウォーターポンプ10及び電動ウォーターポンプ14が配置されるようにしてもよく、或いは、内燃機関1において冷却水がヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2bの順に流れるよう機械式ウォーターポンプ10及び電動ウォーターポンプ14が配置されるようにしてもよい。
<実施例2>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第2の実施態様について図10〜図20に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
図10は、本実施の形態における内燃機関1の冷却水循環系の概略構成を示す図である。前述した第1の実施の形態と本実施の形態との差異は、第1の実施の形態における蓄熱装置を備えた内燃機関は、本発明に係る機関関連要素としてヒータコア又はミッションオイルクーラの何れか一方のみを備えていたが、本実施の形態における蓄熱装置を備えた内燃機関は、本発明に係る機関関連要素としてヒータコアとミッションオイルクーラの双方を備えている点にある。
具体的には、流路切換弁16には、第1ヒータホース11a、第2ヒータホース11b、及び第3バイパス通路13cに加え、第1のトランスミッション用冷却水路43aが接続され、流路切換弁16は前記した4つの通路のうち少なくとも1つの通路を遮断するよう構成されている。
前記第1のオイルクーラ通路43aは、熱交換器44の冷却水流入口に接続されている。前記熱交換器44は、内燃機関1に連結された図示しないトランスミッションの潤滑油(トランスミッションオイル)と冷却水との間で熱交換を行うものである。
前記熱交換器44の冷却水流出口には第2のトランスミッション用冷却水路43bが接続され、その第2のトランスミッション用冷却水路43bは第3ヒータホース11cと第4ヒータホース11dと第1バイパス通路13aとの合流部に接続されている。
このように構成された冷却水循環系に対し、ECU39は、以下のような手順に従って冷却水流れ切換制御を実行する。
先ず、内燃機関1が運転状態にあるときは、機械式ウォーターポンプ10がクランクシャフトの回転トルクを受けて作動するため、ECU39は、第2ヒータホース11bを遮断させるべく流路切換弁16を制御するとともに、電動ウォーターポンプ14を停止状態に制御する。
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10のみが作動することになり、その際の冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1未満であれば該サーモスタットバルブ7が第2冷却水路6を遮断すると同時にバイパス水路9を開放することになる。
従って、内燃機関1が運転状態にあり、且つ冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1未満であるときは、図11に示すように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→バイパス水路9→サーモスタットバルブ7→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
図11に示すような循環回路が成立した場合は、内燃機関1から流出した比較的低温の冷却水がラジエター5を迂回して流れることになるため、冷却水がラジエター5によって不要に冷却されないことになる。この結果、内燃機関1の暖機が妨げられることがない。
その後、内燃機関1の暖機が完了して、冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1以上になると、サーモスタットバルブ7が第2冷却水路6を開放すると同時にバイパス水路9を遮断することになる。
つまり、内燃機関1が運転状態にあり且つ冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1以上であるときは、図12に示すように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水路4→ラジエター5→第2冷却水路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
図12に示すような循環回路が成立した場合は、内燃機関1から流出した比較的高温の冷却水がラジエター5を流通することになるため、冷却水の熱がラジエター5によって放熱される。この場合、ラジエター5によって放熱された後の比較的低温の冷却水が内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ流入することになるため、内燃機関1の熱が冷却水へ伝達されるようになる。この結果、内燃機関1の過熱が防止される。
また、内燃機関1が運転状態にあり且つ冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁
温度:Temp1以上であるときに、ヒータスイッチ42がオンにされると、ECU39は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持するとともに、第3バイパス通路13c及び第1のトランスミッション用冷却水路43aを遮断し且つ第1ヒータホース11a及び第2ヒータホース11bを導通させるべく流路切換弁16を制御する。
この場合、図13に示すように、前述した図12の説明で述べた循環回路と同一の循環回路が成立すると同時に、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水路4→第1ヒータホース11a→流路切換弁16→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第4ヒータホース11d→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
図13に示すような循環回路が成立した場合には、内燃機関1から流出した比較的高温の冷却水がヒータコア12へ流入することになるため、ヒータコア12において冷却水の熱が室内暖房用空気へ伝達されることになる。この結果、室内暖房用空気が暖められることになる。
また、内燃機関1が運転状態にあり且つ冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1以上であるときに、トランスミッションオイルを暖める或いは冷却する必要が生じると、ECU39は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持するとともに、第2ヒータホース11b及び第3バイパス通路13cを遮断し且つ第1ヒータホース11a及び43aを導通させるべく流路切換弁16を制御する。
この場合、図14に示すように、前述した図12の説明で述べた循環回路と同一の循環回路が成立すると同時に、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水路4→第1ヒータホース11a→流路切換弁16→第1のトランスミッション用冷却水路43a→熱交換器44→第2のトランスミッション用冷却水路43b→第4ヒータホース11d→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
図14に示すような循環回路が成立した場合には、内燃機関1から流出した冷却水が熱交換器44を循環するため、冷却水とトランスミッションオイルとの間で熱交換が行われることになる。この結果、トランスミッションオイルが冷却水によって加熱或いは冷却されることになる。
また、内燃機関1が運転状態にあり且つ冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:Temp1以上であるときに、トランスミッションオイルを暖める或いは冷却する必要が生じるとともにヒータスイッチ42がオンにされると、ECU39は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持するとともに、第3バイパス通路13cを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bと第1のトランスミッション用冷却水路43aとを導通させるべく流路切換弁16を制御する。
この場合、図15に示すように、前述した図12の説明で述べた循環回路と、図13の説明で述べた循環回路と、図14の説明で述べた循環回路とが成立することになる。
この結果、内燃機関1から流出した冷却水がヒータコア12及び熱交換器44を流通することになるため、ヒータコア12において冷却水の熱が室内暖房用空気へ伝達されるとともに、熱交換器44において冷却水とトランスミッションオイルとの間で熱交換が行われることになり、室内暖房用空気の昇温とトランスミッションオイルの加熱或いは冷却とが図られる。
一方、内燃機関1が冷間始動される場合や始動直後の冷間状態にある場合は、吸気ポート壁面や燃焼室壁面の温度が低くなるため、燃料噴射弁から噴射された燃料が気化し難い。このため、燃料噴射弁から噴射された燃料が吸気ポート壁面や燃焼室壁面に付着し易くなり、可燃性の高い混合気を形成することが困難となる。更に、内燃機関1が冷間状態にある場合は、圧縮行程上死点における気筒内(燃焼室内)の温度(所謂、圧縮端温度)も低くなるため、燃料が着火及び燃焼し難くなる。
このように内燃機関1において可燃性の高い混合気が形成され難く且つ燃料が着火及び燃焼し難くなると、始動性の低下、燃焼安定性の低下、或いは未燃燃料成分の排出量増加による排気エミッションの悪化などが誘発される。
そこで、内燃機関1が冷間状態にある時は、第2ヒータホース11b及び第1のトランスミッション用冷却水路43aを遮断すべく流路切換弁16を制御するとともに、電動ウォーターポンプ14を作動させることにより、図16に示すような、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水路4→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水路8→第4ヒータホース11d→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路を成立させる方法が考えられる。
図16に示すような循環回路が成立すると、蓄熱容器15内の蓄熱温水が内燃機関1の第1バンク1a及び第2バンク1bへ順次流入し、それと入れ代わりにヘッド側冷却水路2a内及びブロック側冷却水路2b内に元々滞留していた低温の冷却水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから排出される。
この場合、蓄熱温水の熱が内燃機関1のシリンダヘッド1aやシリンダブロック1bへ伝達され、シリンダヘッド1a及びシリンダブロック1bが暖められることになる。
この結果、シリンダヘッド1aの図示しない吸気ポートの壁面温度や燃焼室の壁面温度などが速やかに上昇し、始動性の向上、暖機運転時間の短縮、排気エミッションの向上などが図られる。
また、内燃機関1が冷間状態にある場合には、冷却水の温度も低くなるため、室内暖房用空気を十分に暖めることが困難となり、所望の暖房性能を得ることが不可能となる。従って、内燃機関1が冷間状態にあるときに所望の暖房性能を得るためには、ヒータコア12を流通する冷却水の温度を高める必要がある。
これに対し、内燃機関1が冷間状態にあり且つヒータスイッチ42がオンである時には、第1ヒータホース11a及び第1のトランスミッション用冷却水路43aを遮断し且つ第2ヒータホース11b及び第3バイパス通路13cを導通させるべく流路切換弁16を制御するとともに、電動ウォーターポンプ14を作動させることにより、図17に示すような、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路を成立させる方法が考えられる。
図17に示すような循環回路が成立すると、蓄熱容器15に蓄えられていた蓄熱温水がヒータコア12を流通することになるため、蓄熱温水の熱がヒータコア12を介して室内暖房用空気へ伝達され、室内暖房用空気が好適に暖められるようになる。
また、内燃機関1が冷間状態にある場合は、トランスミッションオイルが低温で粘性の高い状態となるため、内燃機関1がトランスミッションを作動させる際に必要となるトルクは、トランスミッションオイルが高温で粘性の低い状態である時に比して高くなる。このように内燃機関1がトランスミッションを作動させる際に必要となるトルクが高くなると、内燃機関1の燃料消費率が悪化する場合がある。
このため、内燃機関1が冷間状態にある時は、トランスミッションオイルを暖めることにより、トランスミッションオイルの粘性を低下させ、以て内燃機関1がトランスミッションを作動させる際に必要となるトルクを低下させることが好ましい。
そこで、内燃機関1が冷間状態にある場合は、第1ヒータホース11a及び第2ヒータホース11bを遮断し且つ第3バイパス通路13c及び第1のトランスミッション用冷却水路43aを導通させるべく流路切換弁16を制御するとともに、電動ウォーターポンプ14を作動させることにより、図18に示すような、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→第1のトランスミッション用冷却水路43a→熱交換器44→第2のトランスミッション用冷却水路43b→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路を成立させる方法が考えられる。
図18に示すような循環回路が成立すると、蓄熱容器15に蓄えられていた蓄熱温水が熱交換器44を流通することになるため、蓄熱温水の熱が熱交換器44を介してトランスミッションオイルへ伝達され、トランスミッションオイルが暖められるようになる。
このようにトランスミッションオイルが暖められると、トランスミッションオイルの粘性が低下するため、内燃機関1がトランスミッションを作動させる際に必要となるトルクが低下する。この結果、内燃機関1の燃料消費率悪化が防止されるようになる。
ところで、内燃機関1が冷間状態にある場合に、前述した図16の説明で述べたような循環回路が成立すると内燃機関1の始動性と燃焼安定性と排気エミッションを向上させることは可能となるが、室内暖房性能を向上させること及び内燃機関1の燃料消費率を向上させることは困難となり、前述した図17の説明で述べたような循環回路が成立すると室内暖房性能を向上させることは可能となるが、内燃機関1の始動性、燃焼安定性、排気エミッション、及び燃料消費率を向上させることは困難となり、前述した図18の説明で述べたような循環回路が成立すると内燃機関1の燃料消費率を向上させることは可能となるが、内燃機関1の始動性、燃焼安定性、排気エミッションを向上させること、及び室内暖房性能を向上させることは困難となる。
そこで、本実施の形態における冷却水流れ切換制御では、ECU39は、内燃機関1が冷間状態にあり且つヒータスイッチ42がオン状態にあるときは、内燃機関1に対する蓄熱温水の供給と、ヒータコア12に対する蓄熱温水の供給と、熱交換器44に対する蓄熱温水の供給とを、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点からの経過時間に応じて切り換えるようにした。
具体的には、ECU39は、図19に示すように、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点から所定時間:T1内は第1ヒータホース11aと第3バイパス通路13cとを導
通(第2ヒータホース11bと第2のトランスミッション用冷却水路43bを遮断)させるべく流路切換弁16を制御することにより前述した図16の説明で述べたような循環回路を成立させ、前記した所定時間:T1が経過した時点から所定時間:T2内は第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとを導通(第1ヒータホース11aと第1のトラ
ンスミッション用冷却水路43aを遮断)させるべく流路切換弁16を制御することにより前述した図17の説明で述べたような循環回路を成立させ、前記した所定時間:T2が
経過した後は第3バイパス通路13cと第1のトランスミッション用冷却水路43aとを導通(第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bを遮断)させるべく流路切換弁16を制御することにより前述した図18で述べたような循環回路を成立させるようにしてもよい。
この場合、蓄熱温水は、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点から所定時間:T1
内は内燃機関1を暖め、前記した所定時間:T1が経過した時点から所定時間:T2内はヒータコア12(室内暖房用空気)を暖め、更に前記した所定時間:T2が経過した後は熱
交換器44(トランスミッションオイル)を暖めることになる。
尚、蓄熱温水が内燃機関1とヒータコア12と熱交換器44とを暖める順については、図19の説明で述べたような順に限られるものではなく、本発明が適用される自動車の使用環境に応じて定めればよい。但し、トランスミッションオイルは、冷却水に比して暖まり難く、内燃機関1やヒータコア12より後に暖められるようにしても十分な効果を得ることができることから、熱交換器44に比して内燃機関1やヒータコア12を優先的に暖めるようにすることが好ましい。
以下、内燃機関1が冷間状態にあるときの冷却水流れ切換制御について図20に沿って具体的に説明する。ここでは、蓄熱温水が内燃機関1、ヒータコア12、熱交換器44の順に暖める場合の冷却水流れ切換制御について述べる。
図20は、内燃機関1の始動時における冷却水流れ切換制御ルーチンを示すフローチャート図である。冷却水流れ切換制御ルーチンは、予めECU39のROMに記憶されているルーチンであり、イグニッションスイッチ40がオフからオンへ切り換えられたことをトリガとしてECU39が実行するルーチンである。
冷却水流れ切換制御ルーチンでは、ECU39は、先ずS2001においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられたか否かを判別する。
前記S2001においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられていないと判定された場合は、ECU39は、本ルーチンの実行を終了する。
一方、前記S2001においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられたと判定された場合は、ECU39は、S2002へ進み、第2水温センサ18の出力信号値(機関側水温):THWを入力する。
S2003では、ECU39は、前記S2002において入力された機関側水温:THW
が所定温度:Tbase未満であるか否かを判別する。
前記S2003において前記機関側水温:THWが前記所定温度以上であると判定された
場合は、ECU39は、内燃機関1、ヒータコア12(室内暖房用空気)、及び熱交換器44(トランスミッションオイル)を暖める必要がないとみなし、本ルーチンの実行を終了する。但し、冷却水の温度が十分に高い場合であってもトランスミッションオイルの温度が低い場合もあるため、ECU39は、前述した図18の説明で述べたような循環回路を成立させることにより、トランスミッションオイルのみを暖めるようにしてもよい。
前記S2003において前記機関側水温:THWが前記所定温度未満であると判定された
場合は、ECU39は、S2004へ進み、第1ヒータホース11aと第3バイパス通路
13cとを導通(第2ヒータホース11bと第1のトランスミッション用冷却水路43aを遮断)させるべく流路切換弁16を制御する。
S2005では、ECU39は、電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を印加する。
この場合、前述した図16の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水路4→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水路8→第4ヒータホース11d→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ供給され、以て内燃機関1が速やかに暖められることになる。
ここで図20に戻り、S2006では、ECU39は、カウンタ:Cを起動させる。このカウンタ:Cは、電動ウォーターポンプ14が作動開始した時点からの経過時間を計測するものである。
S2007では、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1を越え
たか否かを判別する。前記した所定時間:T1は、例えば、内燃機関1のヘッド側冷却水
路2a及びブロック側冷却水路2bのうち少なくともヘッド側冷却水路2a内の冷却水が蓄熱容器15内からの蓄熱温水と入れ替わるまでに要する時間としてもよい。
前記S2007においてカウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1以下である場合
には、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:T1を越えるまで当
該S2007の処理を繰り返し実行する。この場合、カウンタ:Cの計測時間が所定時間:T1を越えるまでの期間、言い換えれば、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点か
ら所定時間:T1内は、流路切換弁16が第1ヒータホース11aと第3バイパス通路1
3cとを導通させるため、その間は蓄熱容器15内の蓄熱温水が内燃機関1へ供給されることになる。
その後、前記カウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1を越えると、ECU39は
、前記S2007においてカウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1を越えていると
判定してS2008へ進む。
S2008では、ECU39は、ヒータスイッチ42がオンであるか否かを判別する。
前記S2008においてヒータスイッチ42がオンであると判定された場合は、ECU39は、S2009へ進み、第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとを導通(第1ヒータホース11aと第1のトランスミッション用冷却水路43aを遮断)させるべく流路切換弁16を制御する。
この場合、前述した図17の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水がヒータコア12へ供給され、以てヒータコア12において蓄熱温水の熱が室内暖房用空気へ伝達されることになる。
ここで図20に戻り、S2010では、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが
所定時間:T1+T2を越えたか否かを判別する。ここで、所定時間:T2は、例えば、ヒ
ータコア12内の冷却水が蓄熱容器15からの蓄熱温水と入れ替わるまでに要する時間としてもよい。
前記S2010においてカウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1+T2以下である場合には、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:T1+T2を越えるまで当該S2010の処理を繰り返し実行する。この場合、前述した所定時間:T1が
経過した時点から所定時間:T2内は、流路切換弁16が第2ヒータホース11bと第3
バイパス通路13cとを導通させるため、その間は蓄熱容器15内の蓄熱温水がヒータコア12へ供給されることになる。
その後、前記カウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1+T2を越えると、ECU39は、前記S2010においてカウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:T1+T2を越えていると判定してS2011へ進む。
S2011では、ECU39は、第3バイパス通路13cと第1のトランスミッション用冷却水路43aとを導通(第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bを遮断)させるべく流路切換弁16を制御する。
この場合、前述した図18の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1のトランスミッション用冷却水路43a→熱交換器44→第2のトランスミッション用冷却水路43b→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水が熱交換器44へ供給され、以て熱交換器44において蓄熱温水の熱がトランスミッションオイルへ伝達されることになる。
ここで図20に戻り、S2012では、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが所定時間:Tmaxを越えたか否かを判別する。前記した所定時間:Tmaxは、電動ウォーターポンプ14の作動開始から蓄熱容器15内の冷却水が全て入れ替わる(蓄熱容器15内に貯蔵されていた蓄熱温水の全てが該蓄熱容器15内から排出される)までに要する時間に基づいて決定される時間である。
前記S2012においてカウンタ:Cの計測時間が前記所定時間:Tmax以下であると
判定された場合は、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間が前記所定時間:Tmaxを越
えるまで当該S2012の処理を繰り返し実行する。
前記S2012においてカウンタ:Cの計測時間が前記所定時間:Tmaxを越えている
と判定された場合は、ECU39は、S2013へ進み、電動ウォーターポンプ14の作動を停止させた後に本ルーチンの実行を終了する。
また、前述したS2008においてヒータスイッチ42がオフであると判定された場合は、ECU39は、S2009〜S2012の処理をスキップしてS2013へ進み、電動ウォーターポンプ14の作動を停止させた後に本ルーチンの実行を終了する。
このようにECU39が冷却水流れ切換制御ルーチンを実行することにより、蓄熱容器15から内燃機関1への蓄熱温水の供給と、蓄熱容器15からヒータコア12への蓄熱温水の供給と、蓄熱容器15から熱交換器44への蓄熱温水の供給とが電動ウォーターポンプ14の作動開始時点からの経過時間に応じて切り換えられるため、内燃機関1とヒータコア12(室内暖房用空気)と熱交換器44(トランスミッションオイル)とが好適に昇温されるようになる。
特に、本実施の形態では、蓄熱容器15に貯蔵されていた蓄熱温水により、先ず内燃機関1が暖められ、次いでヒータコア12(室内暖房用空気)が暖められ、更に熱交換器44(トランスミッションオイル)が暖められるため、内燃機関1の始動性や排気エミッションを向上させた上で室内暖房性能の向上と内燃機関1の燃料消費率向上とを図ることができる。
<参考例1>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第1の参考例について図21に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1の実施の形態では、蓄熱容器15内の蓄熱温水を内燃機関1とヒータコア12とへ選択的に供給可能な構成において、蓄熱温水の供給開始時点からの経過時間に応じて内燃機関1とヒータコア12とへ順次蓄熱温水を供給する例について述べたが、本参考例では、蓄熱温水の供開始時点における内燃機関1の温度に応じて内燃機関1とヒータコア12との何れか一方へ蓄熱温水を供給する例について述べる。
本参考例における冷却水流れ切換制御では、ECU39は、蓄熱温水の供給開始時点、すなわち、電動ウォーターポンプ14の作動を開始させる際の内燃機関1の温度を求める。
その際、内燃機関1の温度を求める方法としては、内燃機関1のシリンダヘッド1aやシリンダブロック1bに温度センサを取り付ける方法、既存の温度センサのうち内燃機関1の温度と相関のある温度を検出する温度センサの出力信号値で代用する方法を例示することができる。
内燃機関1の温度と相関のある温度としては、内燃機関1を循環する冷却水の温度、内燃機関1の潤滑油(エンジンオイル)の温度、内燃機関1の吸入空気温度、或いは外気温度などを例示することができる。本参考例における内燃機関1では、内燃機関1を循環する冷却水の温度を検出するための第2水温センサ18が既に存在しているため、第2水温センサ18が検出する機関側水温:THWを内燃機関1の温度として用いるものとする。
ECU39は、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点における機関側水温:THWが
非常に低い(例えば、0℃未満)場合には蓄熱容器15の蓄熱温水をヒータコア12へ供給するようにし、機関側水温:THWが常温(例えば、0℃以上且つ40℃以下)である場
合には、蓄熱容器15の蓄熱温水を内燃機関1へ供給するようにしてもよい。
これは、蓄熱容器15に蓄えられている蓄熱温水の量は有限であるのに対し、内燃機関1の熱容量が比較的大きいため、内燃機関1の温度(機関側水温:THW)が非常に低い場
合に蓄熱容器15内の蓄熱温水を内燃機関1へ供給しても内燃機関1を十分に暖めることは困難となるからである。
以下、本参考例における冷却水流れ切換制御について図21に沿って説明する。図21は、内燃機関1が冷間状態にあるときの冷却水流れ切換制御ルーチンを示すフローチャート図である。冷却水流れ切換制御ルーチンは、予めECU39のROMに記憶されているルーチンであり、イグニッションスイッチ40がオフからオンへ切り換えられたことをトリガとしてECU39が実行するルーチンである。
冷却水流れ切換制御ルーチンでは、ECU39は、先ずS2101においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられたか否かを判別する。
前記S2101においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられていないと判定された場合は、ECU39は、本ルーチンの実行を終了する。
一方、前記S2101においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられたと判定された場合は、ECU39は、S2102へ進み、第2水温センサ18の出力信号値(機関側水温):THWを入力する。
S2103では、ECU39は、前記S2102において入力された機関側水温:THW
が第1の所定温度:thw1(例えば、0℃)以上であるか否かを判別する。
前記S2103において前記機関側水温:THWが前記所定温度未満であると判定された
場合は、ECU39は、内燃機関1の温度が非常に低いため蓄熱容器15内の蓄熱温水のみで内燃機関1を所望の温度域まで昇温させることは困難であるとみなし、S2104へ進む。
S2104では、ECU39は、第1ヒータホース11aを遮断し且つ第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとを導通させるべく流路切換弁16を制御する。
前記したS2104の処理を実行し終えたECU39は、S2107へ進み、電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を印加する。
この場合、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水がヒータコア12へ供給され、ヒータコア12において蓄熱温水の熱が室内暖房用空気へ伝達されることになる。この結果、車両の室内が速やかに暖められ、以て車室内を運転に適した温度とすることが可能となる。
ここで図21に戻り、S2108では、ECU39は、カウンタ:Cを起動させる。このカウンタ:Cは、電動ウォーターポンプ14が作動開始した時点からの経過時間を計測するものである。
S2109では、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが予め設定された所定時間:Tmaxを越えたか否かを判別する。前記した所定時間:Tmaxは、電動ウォーターポンプ14の作動開始から蓄熱容器15内の冷却水が全て入れ替わる(蓄熱容器15内に貯蔵されていた蓄熱温水の全てが該蓄熱容器15内から排出される)までに要する時間に基づいて決定される時間である。
前記S2109においてカウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:Tmax以内であ
ると判定された場合は、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:Tmaxを越えるまで当該S2109の処理を繰り返し実行する。
前記S2109においてカウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:Tmaxを越えて
いると判定された場合は、ECU39は、S2110へ進み、電動ウォーターポンプ14の作動を停止させた後に本ルーチンの実行を終了する。
また、前記したS2103において機関側水温:THWが第1の所定温度:thw1(例えば
、0℃)以上であると判定された場合は、ECU39は、S2105へ進み、機関側水温:THWが第1の所定温度:thw1以上且つ第2の所定温度(例えば、40℃):thw2以下(thw1≦THW≦thw2)であるか否かを判別する。
前記S2105において機関側水温:THWが第1の所定温度:thw1以上且つ第2の所定
温度:thw2以下であると判定された場合、すなわち、機関側水温:THWが常温域にあると
判定された場合は、ECU39は、蓄熱容器15内の蓄熱温水のみで内燃機関1を所望の温度域まで昇温させることが可能であるとみなし、S2106へ進む。
S2106では、ECU39は、第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第3バイパス通路13cとを導通させるべく流路切換弁16を制御する。
前記したS2106の処理を実行し終えたECU39は、S2107へ進み、電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を印加する。
この場合、前述した第1の実施の形態における図5の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水路4→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水路8→第4ヒータホース11d→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ供給され、以て内燃機関1が速やかに暖められることになる。
ここで図21に戻り、ECU39は、前記S2107の処理を実行し終えると、前述したS2108〜S2110と同一の処理を実行した後に本ルーチンの実行を終了する。
また、前述したS2105において機関側水温:THWが前記第1の所定温度:thw1以上
且つ前記第2の所定温度:thw2以下ではないと判定された場合、すなわち、機関側水温:THWが前記第2の所定温度:thw2より高いと判定された場合は、ECU39は、内燃機関
1の吸気ポート壁面や燃焼室壁面などの温度も十分に高く、且つ、冷却水が室内暖房用空気を暖める上で必要となる熱量を十分に備えているとみなし、本ルーチンの実行を終了する。
このように蓄熱温水の供給開始時点における内燃機関1の温度(機関側水温:THW)に
応じて蓄熱温水の供給先が定められると、蓄熱容器15に蓄えられている有限な蓄熱温水により内燃機関1とヒータコア12(室内用暖房装置)との少なくとも一方を確実に暖めることが可能となる。
従って、本参考例に係る冷却水流れ切換制御によれば、蓄熱容器15内の蓄熱温水を内燃機関1とヒータコア12との何れか一方へ供給可能な蓄熱装置を備えた内燃機関において、内燃機関1とヒータコア12との少なくとも一方が好適に暖められることになる。
尚、本参考例では、本発明に係る機関関連要素としてヒータコア12を例に挙げて説明したが、トランスミッションの潤滑油(以下、トランスミッションオイルと称する)と冷却水との間で熱交換を行うミッションオイルクーラであってもよい。
また、本参考例における冷却水流れ切換制御では、カウンタ:Cの計測時間に基づいて電動ウォーターポンプ14の作動停止時期を決定する例について述べたが、室内暖房用空気の温度又は内燃機関1の温度(機関側水温:THW)に基づいて電動ウォーターポンプ1
4の作動停止時期を決定するようにしてもよい。例えば、室内暖房用空気又は内燃機関1
の温度が所定温度まで上昇した時点で電動ウォーターポンプ14の作動を停止させるようにしてもよく、或いは、室内暖房用空気又は内燃機関1の温度が電動ウォーターポンプ14の作動開始時の温度から所定温度上昇した時点で電動ウォーターポンプ14の作動を停止するようにしてもよい。
<参考例2>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第2の参考例について図22に基づいて説明する。ここでは、前述した第2の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第2の実施の形態では、蓄熱容器15内の蓄熱温水を内燃機関1とヒータコア12と熱交換器44とへ選択的に供給可能な構成において、蓄熱温水の供給開始時点からの経過時間に応じて内燃機関1とヒータコア12と熱交換器44とへ順次蓄熱温水を供給する例について述べたが、本参考例では、蓄熱温水の供開始時点における内燃機関1の温度に応じて内燃機関1とヒータコア12と熱交換器44との何れか1つへ蓄熱温水を供給する例について述べる。
本参考例における冷却水流れ切換制御では、ECU39は、蓄熱温水の供給開始時点、すなわち、電動ウォーターポンプ14の作動を開始させる際の内燃機関1の温度を求める。
その際、内燃機関1の温度としては、機関側水温:THW(第2水温センサ18の出力信
号値)を用いることができる。
ここで、蓄熱容器15に蓄えられている蓄熱温水の量は有限であるのに対し、内燃機関1の熱容量が比較的大きいため、内燃機関1の温度(機関側水温:THW)が非常に低い場
合は蓄熱容器15内の全ての蓄熱温水が内燃機関1へ供給されても内燃機関1を十分に暖めることが困難となる。このため、内燃機関1の温度(機関側水温:THW)が非常に低い
場合は、蓄熱容器15内の蓄熱温水をヒータコア12へ供給することにより、車室内を運転に適した温度とすることが適当である。
一方、内燃機関1の温度(機関側水温:THW)が常温より高い場合は、内燃機関1の吸
気ポート壁面や燃焼室壁面などの温度も十分に高く、且つ、冷却水が室内暖房用空気を暖める上で必要となる熱量を十分に備えていることになるが、内燃機関1が低負荷・低回転運転された後などは機関側水温:THWが高くともトランスミッションオイルが低くなるこ
とが想定されるため、蓄熱容器15内の蓄熱温水を利用してトランスミッションオイルを暖めることにより内燃機関1の燃料消費率を向上させることが適当である。
従って、電動ウォーターポンプ14の作動開始時点における機関側水温:THWが非常に
低い(例えば、0℃未満)場合には蓄熱容器15の蓄熱温水をヒータコア12へ供給するようにし、機関側水温:THWが常温(例えば、0℃以上且つ40℃以下)である場合には
蓄熱容器15の蓄熱温水を内燃機関1へ供給するようにし、更に機関側水温:THWが常温
より高い(例えば、40℃より高い)場合には蓄熱容器15の蓄熱温水を熱交換器44へ供給することが好ましい。
以下、本参考例における冷却水流れ切換制御について図22に沿って説明する。図22は、内燃機関1が冷間状態にあるときの冷却水流れ切換制御ルーチンを示すフローチャート図である。冷却水流れ切換制御ルーチンは、予めECU39のROMに記憶されているルーチンであり、イグニッションスイッチ40がオフからオンへ切り換えられたことをトリガとしてECU39が実行するルーチンである。
冷却水流れ切換制御ルーチンでは、ECU39は、先ずS2201においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられたか否かを判別する。
前記S2201においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられていないと判定された場合は、ECU39は、本ルーチンの実行を終了する。
一方、前記S2201においてイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換えられたと判定された場合は、ECU39は、S2202へ進み、第2水温センサ18の出力信号値(機関側水温):THWを入力する。
S2203では、ECU39は、前記S2202において入力された機関側水温:THW
が第1の所定温度:thw1(例えば、0℃)以上であるか否かを判別する。
前記S2203において前記機関側水温:THWが前記第1の所定温度未満であると判定
された場合は、ECU39は、内燃機関1の温度が非常に低いため蓄熱容器15内の蓄熱温水のみで内燃機関1を所望の温度域まで昇温させることは困難であるとみなし、S2204へ進む。
S2204では、ECU39は、第2ヒータホース11bと第3バイパス通路13cとを導通(第1ヒータホース11aと第1のトランスミッション用冷却水路43aを遮断)させるべく流路切換弁16を制御する。
前記したS2204の処理を実行し終えたECU39は、S2208へ進み、電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を印加する。
この場合、前述した第2の実施の形態における図17の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第2ヒータホース11b→ヒータコア12→第3ヒータホース11c→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水がヒータコア12へ供給され、ヒータコア12において蓄熱温水の熱が室内暖房用空気へ伝達されることになる。この結果、車両の室内が速やかに暖められ、以て車室内を運転に適した温度とすることが可能となる。
ここで図22に戻り、S2209では、ECU39は、カウンタ:Cを起動させる。このカウンタ:Cは、電動ウォーターポンプ14が作動開始した時点からの経過時間を計測するものである。
S2210では、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが予め設定された所定時間:Tmaxを越えたか否かを判別する。前記した所定時間:Tmaxは、電動ウォーターポンプ14の作動開始から蓄熱容器15内の冷却水が全て入れ替わる(蓄熱容器15内に貯蔵されていた蓄熱温水の全てが該蓄熱容器15内から排出される)までに要する時間に基づいて決定される時間である。
前記S2210においてカウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:Tmax以内であ
ると判定された場合は、ECU39は、カウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:Tmaxを越えるまで当該S2210の処理を繰り返し実行する。
前記S2210においてカウンタ:Cの計測時間:Cが前記所定時間:Tmaxを越えて
いると判定された場合は、ECU39は、S2211へ進み、電動ウォーターポンプ14の作動を停止させた後に本ルーチンの実行を終了する。
また、前記したS2203において機関側水温:THWが第1の所定温度:thw1(例えば
、0℃)以上であると判定された場合は、ECU39は、S2205へ進み、機関側水温:THWが第1の所定温度:thw1以上且つ第2の所定温度(例えば、40℃):thw2以下(thw1≦THW≦thw2)であるか否かを判別する。
前記S2205において機関側水温:THWが第1の所定温度:thw1以上且つ第2の所定
温度:thw2以下であると判定された場合、すなわち、機関側水温:THWが常温域にあると
判定された場合は、ECU39は、蓄熱容器15内の蓄熱温水のみで内燃機関1を所望の温度域まで昇温させることが可能であるとみなし、S2206へ進む。
S2206では、ECU39は、第1ヒータホース11aと第3バイパス通路13cとを導通(第2ヒータホース11bと第2のトランスミッション用冷却水路43bを遮断)させるべく流路切換弁16を制御する。
前記したS2206の処理を実行し終えたECU39は、S2208へ進み、電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を印加する。
この場合、前述した第2の実施の形態における図16の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1ヒータホース11a→第1冷却水路4→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水路8→第4ヒータホース11d→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bへ供給され、以て内燃機関1が速やかに暖められることになる。
ここで図22に戻り、ECU39は、前記S2208の処理を実行し終えると、前述したS2209〜S2211と同一の処理を実行した後に本ルーチンの実行を終了する。
また、前述したS2205において機関側水温:THWが前記第1の所定温度:thw1以上
且つ前記第2の所定温度:thw2以下ではないと判定された場合、すなわち、機関側水温:THWが前記第2の所定温度:thw2より高いと判定された場合は、ECU39は、内燃機関
1の吸気ポート壁面や燃焼室壁面などの温度も十分に高く、且つ、冷却水が室内暖房用空気を暖める上で必要となる熱量を十分に備えているが、トランスミッションオイルの温度が低い可能性があるとみなし、S2207へ進む。
S2207では、ECU39は、第3バイパス通路13cと第1のトランスミッション用冷却水路43aとを導通(第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bを遮断)させるべく流路切換弁16を制御する。
前記したS2207の処理を実行し終えたECU39は、S2208へ進み、電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を印加する。
この場合、前述した第2の実施の形態における図18の説明で述べたように、電動ウォーターポンプ14→第2バイパス通路13b→蓄熱容器15→第3バイパス通路13c→流路切換弁16→第1のトランスミッション用冷却水路43a→熱交換器44→第2のトランスミッション用冷却水路43b→第1バイパス通路13a→電動ウォーターポンプ1
4の順に冷却水が流れる循環回路が成立するため、蓄熱容器15内の蓄熱温水が熱交換器44へ供給され、熱交換器44において蓄熱温水の熱がトランスミッションオイルへ伝達されることになる。この結果、トランスミッションオイルが速やかに暖められ、該トランスミッションオイルの粘性が低下するため、内燃機関1がトランスミッションを作動させる際に必要となるトルクが低下し、以て内燃機関1の燃料消費率を向上させることが可能となる。
ここで図22に戻り、ECU39は、前記S2208の処理を実行し終えると、前述したS2209〜S2211と同一の処理を実行した後に本ルーチンの実行を終了する。
このように蓄熱温水の供給開始時点における内燃機関1の温度(機関側水温:THW)に
応じて蓄熱温水の供給先が定められると、蓄熱容器15に蓄えられている有限な蓄熱温水により内燃機関1とヒータコア12(室内用暖房装置)と熱交換器44(トランスミッションオイル)との少なくとも1つを確実に暖めることが可能となる。
従って、本参考例に係る冷却水流れ切換制御によれば、蓄熱容器15内の蓄熱温水を内燃機関1とヒータコア12と熱交換器44との何れか1つへ供給可能な蓄熱装置を備えた内燃機関において、内燃機関1と室内暖房用空気とトランスミッションオイルとの少なくとも1つが好適に暖められることになる。
この結果、内燃機関1の始動性及び排気エミッション、室内暖房性能、或いは内燃機関1の燃料消費率を確実に向上させることが可能となる。
尚、本参考例における冷却水流れ切換制御では、カウンタ:Cの計測時間に基づいて電動ウォーターポンプ14の作動停止時期を決定する例について述べたが、室内暖房用空気の温度、内燃機関1の温度(機関側水温:THW)、或いはトランスミッションオイルの温
度に基づいて電動ウォーターポンプ14の作動停止時期を決定するようにしてもよい。例えば、室内暖房用空気の温度、内燃機関1の温度、或いはトランスミッションオイルの温度が所定温度まで上昇した時点で電動ウォーターポンプ14の作動を停止させるようにしてもよく、或いは、室内暖房用空気の温度、内燃機関1の温度、或いはトランスミッションオイルの温度が電動ウォーターポンプ14の作動開始時の温度から所定温度上昇した時点で電動ウォーターポンプ14の作動を停止するようにしてもよい。