以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。
[第1実施形態]
まず、図1を用いて、第1実施形態に係る走行制御装置1の構成について説明する。図1は、走行制御装置1の構成を示すブロック図である。
走行制御装置1は、アクセルペダルの操作状態などに基づいてアクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違いを検知し、ペダルの踏み間違いが検知された場合に、ガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」という)の駆動力および/またはブレーキの制動力を調節することにより、ペダルの踏み間違い時に生じる、急発進や急加速などの運転者の意思に反した車両挙動を抑制するものである。
そのため、走行制御装置1は、主として、アクセルペダルのストローク(以下「開度」ともいう)を検出するアクセルストロークセンサ11、アクセルペダルの操作状態などに基づいてアクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違いを判定し、その判定結果に応じた踏み間違い判定情報を出力する踏み間違い判定ECU10、および踏み間違い判定情報に基づいて電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ということもある)35やブレーキアクチュエータ36などを制御して走行制御を行う走行支援ECU30とを有して構成されている。
なお、本実施形態では、アクセルストロークセンサ11が、特許請求の範囲に記載のアクセル操作量検出手段に相当し、踏み間違い判定ECU10および走行支援ECU30が制御手段に相当する。
アクセルストロークセンサ11は、踏み間違い判定ECU10に接続されており、検出されたアクセルペダルの開度は、踏み間違い判定ECU10に出力される。
ここで、走行制御装置1が搭載された車両に適用されるアクセルペダルのアクセルストロークとアクセル踏力との関係、すなわちアクセル踏力特性を図3に示す。図3において、横軸はアクセルストローク(mm)であり、縦軸はアクセル踏力(N)である。図3に示されるように、アクセル踏力は、アクセルストロークがゼロから駆動力制御上定められる全開位置WOTまで増加するに伴って単調増加するように設定されている。なお、全開位置WOTが、コンベンショナルな車両でのフルストロークに相当する。
また、アクセルペダルには、ゴムやスプリングなどの弾性部材および/またはショックアブソーバなどの緩衝部材を有して構成されるストロークシミュレータが設けられており、その設定によって、アクセルストロークが全開位置WOTに達したことを運転者に対して感覚的に認識させるための節度感が付与されている。そのため、アクセル踏力は、全開位置WOTにおいて所定の幅をもって階段状に上昇する。
さらに、アクセルペダルをそれ以上踏み込むことができないストッパ位置Fと全開位置WOTとの略中間位置(以下、単に「中間位置」という)Mにおいても、アクセルストロークが中間位置Mに達したことを運転者に対して感覚的に認識させるための節度感がストロークシミュレータによって付与されている。そのため、アクセル踏力は、中間位置Mにおいても所定の幅をもって階段状に上昇する特性となっている。中間位置Mは、ストッパ位置Fと全開位置WOTとの略中間であって、踏み間違いを適切に判定することができる位置に設定される。全開位置WOTと中間位置Mとの間、および中間位置Mとストッパ位置Fとの間は、アクセルストロークが増加するに伴って、アクセル踏力が単調増加するように設定されている。
なお、上述した全開位置WOTでのアクセルストローク値が特許請求の範囲に記載の第1しきい値に相当し、中間位置Mでのアクセルストローク値が第2しきい値に相当する。また、ストッパ位置Fでのアクセルストローク値が第3しきい値に相当する。また、以下、全開位置WOT(第1しきい値)と中間位置M(第2しきい値)との間の領域を第1領域と呼び、中間位置Mとストッパ位置F(第3しきい値)との間の領域を第2領域という。
踏み間違い判定ECU10は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM及び12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM等により構成されている。踏み間違い判定ECU10は、アクセルストロークセンサ11から読み込まれたアクセルペダルの操作状態、例えば踏み込み、踏み増しや踏み戻し(または解除)状態などに基づいてアクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違いを判定し、その判定結果に応じた踏み間違い判定情報を走行支援ECU30に出力する。なお、踏み間違いの判定方法などの詳細については後述する。また、踏み間違い判定ECU10には、ステアリングホイールに加えられる前後方向の荷重を検出するステアリング荷重センサ12も踏み間違い判定ECU10に接続されており、検出結果が踏み間違い判定ECU10に入力される。
ここで、踏み間違い判定ECU10および走行支援ECU30は、例えばCAN(Controller Area Network)などの通信回線20で接続されており、相互にデータの交換が可能となるように構成されている。踏み間違い判定ECU10から出力される踏み間違い判定情報、駆動力制御/制動力制御情報や各種センサ情報などは、この通信回線を介して走行支援ECU30に入力される。
走行支援ECU30も、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM及び12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM等により構成されている。この構成によって、走行支援ECU30の内部には、スロットルバルブ35を制御するスロットル制御部31、ブレーキアクチュエータ36を制御するブレーキ制御部32、およびブザー37やディスプレイ38を制御するメータ制御部33などが構築されている。
走行支援ECU30には、エンジンに供給される空気量を調節するスロットルバルブ35や各車輪に取り付けられたブレーキを作動させるホイールシリンダに供給される油圧を調節するブレーキアクチュエータ36などが接続されている。走行支援ECU30は、踏み間違い判定ECU10から入力された、踏み間違い判定情報、駆動力制御/制動力制御情報や各種センサ情報などに基づいて、電子制御式スロットルバルブ35およびブレーキアクチュエータ36などを制御することにより、車両に付与される駆動力および制動力を調節して、ペダルの踏み間違い時に生じ得る、例えば急発進や急加速などの運転者の意思に反した車両挙動を抑制する。なお、本実施形態では、スロットルバルブ35の目標スロットル開度が特許請求の範囲に記載の駆動制御量に相当し、ホイールシリンダの目標油圧が特許請求の範囲に記載の制動制御量に相当する。
走行支援ECU30には、ブザー37やディスプレイ38なども接続されている。ブザー37は、全開位置WOTを超えてアクセルペダルが踏み込まれたときなどに、走行支援ECU30から出力される信号に応じて警告音や音声情報などを発することにより運転者に注意を促す。また、ディスプレイ38は、危険情報や危険回避情報などの各種情報を表示することによって運転者に注意を促す。なお、ブザーに代えてスピーカなどを用いてもよい。また、ディスプレイ38としては、液晶ディスプレイやヘッドアップディスプレイなどが好適に用いられる。
次に、図2、4〜7を参照して、走行制御装置1の動作について説明する。図2は、走行制御装置1による走行制御の処理手順を示すフローチャートである。この制御は、車両の電源がオンにされてからオフにされるまでの間、踏み間違い判定ECU10および走行支援ECU30によって所定のタイミングで繰り返し実行される。
ステップS100では、アクセルストロークセンサ11から読み込まれたアクセルストロークが全開位置WOTを超えているか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルストロークが全開位置WOT以下の場合には、一旦、本処理から抜け、通常の駆動力制御および制動力制御が実行される。一方、アクセルストロークが全開位置WOTを超えているときには、ステップS102に処理が移行する。
ステップS102では、ブザー37を駆動して警告音を発するとともに、ディスプレイ38に警告情報などを表示して、アクセルペダルの踏み込み量が全開位置WOTを超えていることを運転者に認識させて、運転者の注意を喚起する。また、ブレーキアクチュエータ36が駆動されてホイールシリンダに供給される油圧が増大され、車両の各車輪に制動力が付与される。ここで、アクセルストロークと制動力との関係を図4に示す。図4に示されるように、アクセルストロークが全開位置WOTを超えた第1,第2領域では、アクセルストロークの増大に伴って、車輪に付与される制動力が指数関数的に増大される。さらに、図5に示されるように、アクセルストロークが全開位置WOTを超えた第1,第2領域では、アクセルストロークの増大に伴って、スロットルバルブ35が閉弁側に駆動されて吸入空気量が絞られエンジン出力、すなわち駆動力が低減される。なお、図5は、中間位置Mの手前でアクセルペダルの踏み込みが解除された場合における、アクセルストロークとスロットル開度との関係を示す図である。
続くステップS104では、アクセルペダルが第1領域で戻されたか否か、すなわち、全開位置WOTを超えて踏み込まれたアクセルペダルが中間位置Mを超えることなく戻されたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが第1領域で戻された場合には、ステップS106に処理が移行する。一方、アクセルペダルの戻し操作が行われていないときには、ステップS110に処理が移行する。
ステップS106では、アクセルぺダルの踏み込みは運転者の意思に基づくものであり、ブレーキペダルとの踏み間違いではないと判断される。ここで、アクセルペダルが第1領域で戻された場合には、警告音、警告表示、全開位置WOTを超える際のアクセルペダルの節度感、および/または駆動力低減や制動力付与による車両加速度の減少を運転者が認識していると判断できる。この場合、運転者は冷静であると推測されることから、アクセルペダルの踏み込みは運転者の意思に基づく正しい操作であり、運転者は加速を望んでいると判断することができる。
したがって、第1領域でアクセルペダルが戻された場合には、駆動力を復帰させることが好ましい。そのため、図5に示されるように、第1領域では、アクセルストロークの減少に伴って、スロットルバルブ35が開弁側に駆動されて吸入空気量が増大されエンジン出力、すなわち駆動力が増大される(ステップS108)。さらにアクセルペダルが戻され、アクセルストロークが全開位置WOT以下になったときには、通常のスロットル開度特性(図5参照)に基づいてスロットルバルブ35が開閉される。一方、図4に示されるように、第1領域でアクセルペダルが戻された場合には、アクセルストロークの減少に伴って車輪に付与される制動力が減少される。なお、アクセルストロークが全開位置WOT以下の領域では、通常の制動制御が実行される。その後、本処理から一旦抜ける。
ステップS104が否定された場合、すなわち、アクセルペダルの戻し操作が行われていないときには、ステップS110において、アクセルストロークが中間位置Mを超えているか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルストロークが中間位置Mを超えている場合には、ステップS112に処理が移行する。一方、アクセルストロークが中間位置Mを超えていないときには、ステップS104に処理が移行し、第1領域でアクセルペダルの戻し操作が行われるか、またはアクセルストロークが中間位置Mを超えるまで、ステップS104およびステップS110が繰り返して実行される。
ステップS112では、ブザー37を駆動して警告音を発するとともに、ディスプレイ38に警告情報などを表示して、アクセルペダルの踏み込み量が中間位置Mを超えていることを運転者に認識させて、運転者の注意を喚起する。また、ホイールシリンダに供給される油圧がさらに増大され、車両の各車輪に付与される制動力が増大される(図4参照)。また、アクセルストロークの増大に伴って、スロットルバルブ35がさらに閉弁側に駆動されて吸入空気量が絞られエンジン出力、すなわち駆動力が低減される(図5参照)。
次に、ステップS114では、アクセルペダルが第2領域で戻されたか否か、すなわち、中間位置Mを超えて踏み込まれたアクセルペダルがストッパ位置Fに達することなく戻されたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが第2領域で戻された場合には、ステップS116に処理が移行する。一方、アクセルペダルの戻し操作が行われていないときには、ステップS134に処理が移行する。
ステップS116では、アクセルぺダルの踏み込みは運転者の意思に基づくものではなく、ブレーキペダルとの踏み間違いであると判断される。すなわち、アクセルペダルが中間位置Mを超えて踏み込まれた後に戻された場合には、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた運転者が、心理的な動揺や運転技量の低さなどにより、警告音、警告表示、アクセルペダルの節度感、および/または駆動力低減や制動力付与による車両加速度の減少を認識できなかったか、若しくは認識できたとしても、アクセルペダルの踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えを咄嗟に行うことができなかったものと推測される。
したがって、第2領域でアクセルペダルが戻された場合には、駆動力を復帰させないことが好ましい。そのため、ステップS118において、図6に実線で示されるように、アクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度(すなわち駆動力)が保持される。ここで、図6は、ストッパ位置Fの手前でアクセルペダルの踏み込みが解除された場合における、アクセルストロークとスロットル開度との関係を示す図である。
続くステップS120では、アクセルペダルが全開位置WOTを下回る位置まで戻されたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが全開位置WOTを下回る位置まで戻された場合には、ステップS122に処理が移行する。一方、アクセルペダルが全開位置WOTを下回る位置まで戻されていない場合には、ステップS118に処理が移行し、アクセルペダルが全開位置WOTを下回る位置に戻されるまで、第2領域でアクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度が保持される(図6の実線参照)。
続いて、ステップS122では、全開位置WOTを下回る位置まで戻されたアクセルペダルが、再び踏み込まれたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが再び踏み込まれた場合には、ステップS128に処理が移行する。一方、アクセルペダルが踏み込まれていないときにはステップS124に処理が移行する。
ステップS124では、正規のアクセルストローク−スロットル開度特性において、アクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度に対応するアクセルストローク(図6中の点E)までアクセルペダルが戻されたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが当該アクセルストロークまで戻された場合にはステップS126に処理が移行する。一方、アクセルペダルがまだ戻されていないときには、ステップS122に処理が移行し、アクセルペダルが再び踏み込まれるか、若しくは上記アクセルストロークまでアクセルペダルが戻されるまで、ステップS122およびステップS124が繰り返して実行される。なお、その間、第2領域でアクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度が保持される(図6の実線参照)
ステップS126では、正規のアクセルストローク−スロットル開度特性に基づいてスロットル開度が定められる。その後、本処理から一旦抜ける。
ステップS122が肯定された場合、ステップS128では、アクセルストローク−スロットル開度特性が変更される。すなわち、図6に破線で示されるように、アクセルペダルが再び踏み込まれた時点でのスロットル開度と全開位置WOTでのスロットル開度とを結ぶ直線が新たなアクセルストローク−スロットル開度特性として設定される。そして、該アクセルストローク−スロットル開度特性に基づいてスロットル開度が定められる。
続くステップS130では、アクセルペダルの戻し操作が行われたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルの戻し操作が行われた場合には、ステップS118に処理が移行し、戻し操作が行われた時点でのスロットル開度が保持される(図6の一点鎖線参照)。その後、上述したステップS120〜ステップS130に則り処理が実行される。一方、アクセルペダルの戻し操作が行われていない場合には、ステップS132に処理が移行する。
ステップS132では、アクセルペダルが全開位置WOTまで踏み込まれたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが全開位置WOTまで踏み込まれた場合には、正規のアクセルストローク−スロットル開度特性に基づいてスロットル開度が定められた後、本処理から一旦抜ける。一方、アクセルペダルが全開位置WOTまで踏み込まれていないときには、ステップS130に処理が移行し、アクセルペダルの戻し操作が行われるか、若しくはアクセルペダルが全開位置WOTまで踏み込まれるまで、ステップS130およびステップS132が繰り返して実行される。
上記ステップS114が否定された場合、ステップS134では、アクセルストロークがストッパ位置Fに達したか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルストロークがストッパ位置Fに達している場合には、ステップS136に処理が移行する。一方、アクセルストロークがストッパ位置Fに達していないときには、ステップS134に処理が移行し、第2領域でアクセルペダルの戻し操作が行われるか、若しくはアクセルストロークがストッパ位置Fに達するまで、ステップS114およびステップS134が繰り返して実行される。
アクセルペダルが戻されることなく、ストッパ位置Fに達した場合、ステップS136では、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた運転者が心理的なパニック状態にあり、運転者自身では、踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えができない状況にあると推測される。
したがって、ストッパ位置Fまでアクセルペダルが踏み込まれた場合には、駆動力を自動的に最小化またはゼロにすることが好ましい。そのため、図7に示されるように、アクセルペダルの踏み込みが解除されてアクセルストロークがゼロになるまで(ステップS140)、スロットルバルブ35が全閉されて吸入空気量が絞られエンジン出力、すなわち駆動力が最小化される(ステップS138)。また、図4に示されるように、アクセルストロークがストッパ位置Fから全開位置WOTまで減少する間は、車輪に制動力が付与されるため、車両が減速される。なお、アクセルストロークが全開位置WOT以下の領域では、通常の制動制御が実行される。すなわち、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて車輪に制動力が付与される。その後、本処理から一旦抜ける。
本実施形態によれば、アクセルストロークの全開位置WOTおよび中間位置Mでアクセルペダルに節度感が付与される。また、全開位置WOTを超える領域では、警告音や警告表示が発せられるとともに、駆動力低減や制動力付与により車両加速度が減少される。これらの方法により運転者に注意を喚起しつつ、運転者によるアクセルペダルの戻し操作を検出することにより、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いを精度よく検出することができる。
すなわち、アクセルペダルが第1領域で戻された場合には、警告音、警告表示、全開位置WOTを超える際のアクセルペダルの節度感、および/または駆動力低減や制動力付与による車両加速度の減少を運転者が認識していると判断できる。この場合、運転者は冷静であると推測されることから、アクセルペダルの踏み込みは運転者の意思に基づく正しい操作であり、ブレーキペダルとの踏み間違いではなく、運転者は加速を望んでいると判断することができる。
また、アクセルペダルが中間位置Mを超えて踏み込まれた後に戻された場合には、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた運転者が、心理的な動揺や運転技量の低さなどにより、警告音、警告表示、アクセルペダルの節度感、および/または駆動力低減や制動力付与による車両加速度の減少を認識できなかったか、若しくは認識できたとしても、アクセルペダルの踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えを咄嗟に行うことができなかったものと推測される。したがって、アクセルぺダルの踏み込みは運転者の意思に基づくものではなく、ブレーキペダルとの踏み間違いであると判断できる。
一方、アクセルペダルが戻されることなく、ストッパ位置Fに達した場合には、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた運転者が心理的なパニック状態にあり、運転者自身では、踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えができない状況にあると推測される。したがって、この場合も、アクセルぺダルの踏み込みは運転者の意思に基づくものではなく、ブレーキペダルとの踏み間違いであると判断することができる。
また、本実施形態によれば、第1領域でアクセルペダルが戻された場合には、アクセルストロークの減少に伴って、スロットルバルブ35が開弁側に駆動されて吸入空気量が増大されエンジン出力、すなわち駆動力が増大される。第2領域でアクセルペダルが戻された場合には、アクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度(すなわち駆動力)が保持される。また、ストッパ位置Fまでアクセルペダルが踏み込まれた場合には、アクセルペダルの踏み込みが解除されてアクセルストロークがゼロになるまで、スロットルバルブ35が全閉されて吸入空気量が絞られエンジン出力、すなわち駆動力が最小化される。その結果、運転者の意思に反した車両挙動を抑制することが可能となる。
また、本実施形態によれば、アクセルペダルが全開位置WOTを超えて踏み込まれた場合には、アクセルストロークの増大に伴って、車輪に付与される制動力が指数関数的に増大される。その結果、車両を減速することができるため、ペダルを踏み間違えたときの安全性をより向上することが可能となる。
[第2実施形態]
次に、図8を用いて、第2実施形態に係る走行制御装置2の構成について説明する。図8は走行制御装置2の構成を示すブロック図である。なお、図8において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
走行制御装置2は、例えばニューラルネットワークやファジイ推論などのアルゴリズムを利用して運転者の状態を認識する運転者状態認識ECU50をさらに備えている。運転者状態認識ECU50は、特許請求の範囲に記載された状態検出手段として機能する。ここで、運転者状態認識ECU50により認識される運転者状態としては、先急ぎ、ストレス、驚き、怒りなどの心理状態、初級運転、熟練運転などの運転技量などが挙げられる。なお、これらの心理状態や運転技量に加えて、覚醒度、疲労などの身体状態を認識してもよい。
運転者状態認識ECU50には、運転者の発話音声を認識する発話音声認識センサ56、運転者の顔の表情や皮膚温度を検出する顔表情・皮膚温度認識センサ57、運転者の呼吸数を検出する呼吸センサ58、および運転者の心拍数を検出する心拍センサ59などが接続されており、各センサの検出結果が運転者状態認識ECU50に入力される。
一方、踏み間違い判定ECU10には、上述したアクセルストロークセンサ11、ステアリング荷重センサ12に加えて、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキストロークセンサ13、ステアリングホイールの操舵角を検出するステアリング舵角センサ14、車速を検出する車速センサ15、車両の前後左右加速度を検出する前後左右加速度センサ16、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ17、前方車両との車間距離を検出する車間距離センサ18、および走行車線に対する自車両位置を検出する白線横位置センサ19などが接続されており、各センサの検出結果が踏み間違い判定ECU10に入力される。なお、車間距離センサ18や白線横位置センサ19は、各センサ単体で構成してもよいし、あるいは、車両前方を撮像するカメラと画像処理などを行うECUなどで構成してもよい。
運転者状態認識ECU50は、上述した通信回線20に接続されており、踏み間違い判定ECU10および走行支援ECU30との間で相互にデータの交換を行うことができる。踏み間違い判定ECU10に入力された各種センサの検出結果などは、この通信回線20を介して、運転者状態認識ECU50に送信される。一方、運転者状態認識ECU50により認識された運転者の状態などは通信回線20を介して踏み間違い判定ECU10に送信される。
運転者状態認識ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM及び12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM等により構成されている。
運転者状態認識ECU50は、直接入力される各種センサ情報および通信回線20を介して入力される各種センサ情報を、ニューラルネットワークやファジイ推論などのアルゴリズムを用いて処理することにより、先急ぎ(焦り)、ストレス(緊張)、驚き、怒りなどの心理状態や運転技量などの運転者状態を認識する。そのため、運転者状態認識ECU50の内部には、運転者の運転技量を判定して運転技量判定値aを設定する運転技量判定部51、運転者の先急ぎの程度を判定して先急ぎ判定値bを設定する先急ぎ判定部52、運転者のストレスの程度を判定してストレス判定値cを設定するストレス判定部53、運転者の驚きの程度を判定して驚き判定値を設定する驚き判定部54、および運転者の怒りの程度を判定して怒り判定値を設定する怒り判定部55などが構築されている。
その他の構成については、第1実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
次に、図9、10を参照して、走行制御装置2の動作について説明する。図9,10は、走行制御装置2による走行制御の処理手順を示すフローチャートである。この制御は、車両の電源がオンにされてからオフにされるまでの間、踏み間違い判定ECU10、走行支援ECU30、および運転者状態認識ECU50によって所定のタイミングで繰り返し実行される。
ステップS200では、車速センサ15により検出された車速、前後左右加速度センサ16により検出された車両の前後左右加速度、およびヨーレートセンサ17により検出された車両のヨーレートが読み込まれるとともに、メモリに記憶される。
続くステップS202では、ステップS200で読み込まれた車速、前後左右加速度、およびヨーレートなどの変動状態から運転のスムーズさが識別され、この運転のスムーズさに応じて運転技量が判定されて運転技量判定値aが設定される。ここで、変動が小さく運転がスムーズなほど運転者の技量が高い(熟練者)と判定され、運転技量判定値aにより小な値が設定される。もっとも運転技量が高いと判定された場合には、運転技量判定値aとして0.1が設定される。一方、変動が大きく運転がラフなほど運転者の技量が低い(初心者)と判定され、運転技量判定値aにより大きな値が設定される。もっとも運転技量が低いと判定された場合、運転技量判定値aとして0.9が設定される。すなわち、運転技量判定値aは、運転のスムーズさに応じて0.1〜0.9の範囲で設定される(図11参照。なお、図11は運転者の状態と状態判定値との関係のを示す表である。)。
次に、ステップS204では、アクセルストロークセンサ11により検出されたアクセルストローク、車間距離センサ18により検出された前方車両との車間距離、および車速センサ15により検出された車速が読み込まれるとともに、メモリに記憶される。
続くステップS206では、ステップS204で読み込まれたアクセルストローク、車間距離、および車速などに基づいて、運転者の先急ぎの程度が判定され、その判定結果に応じて先急ぎ判定値bが設定される。より詳細には、例えばアクセルペダルの無駄踏みが多い、車間距離が狭い、車速が高いなどといった、より前に行きたいという意思を示す運転行動が認識された場合には、先急ぎの程度が強い(切迫、苛々状態)と判定され、先急ぎ判定値bにより大きな値が設定される。もっとも先急ぎの程度が強いと判定された場合には、先急ぎ判定値bとして0.9が設定される。一方、アクセルペダルの無駄踏みが少なく、車間距離が広く、車速が低い場合、すなわちより前に行きたいという意思を示す運転行動が認識されないときには、先急ぎの程度が弱い(余裕がある状態)と判定され、先急ぎ判定値bにより小さな値が設定される。もっとも先急ぎの程度が弱いと判定された場合には、先急ぎ判定値bとして0.1が設定される。すなわち、先急ぎ判定値bは、より前に行きたいという意思を示す運転行動の程度に応じて0.1〜0.9の範囲で設定される(図11参照)。
次に、ステップ208では、呼吸センサ58により検出された運転者の呼吸数、心拍センサ59により検出された運転者の心拍数、および顔表情・皮膚温度認識センサ57により検出された散瞳が読み込まれるとともに、メモリに記憶される。
続くステップS210では、ステップS208で読み込まれた呼吸数、心拍数、および散瞳などに基づいて、運転者のストレスの程度が判定され、その判定結果に応じてストレス判定値cが設定される。自律神経(交感神経)活動は、呼吸数や心拍数、散瞳などに表れるため、これらの検出結果が総合的に判断されることによって、運転者のストレスの程度が判定される。ここで、運転者のストレスが強いほど、ストレス判定値cに大きな値が設定される。もっともストレスが強いと判定された場合には、ストレス判定値として0.9が設定される。一方、もっともストレスが弱いと判定された場合には、ストレス判定値として0.1が設定される。すなわち、ストレス判定値cは、運転者のストレスの程度に応じて0.1〜0.9の範囲で設定される(図11参照)。
次に、ステップS212では、発話音声認識センサ56により検出された運転者の発話音声や顔表情・皮膚温度認識センサ57により検出された運転者の表情が読み込まれるとともに、メモリに記憶される。
続くステップS214では、ステップS212で読み込まれた発話音声や顔の表情などに基づいて運転者の驚きの程度が判定され、その判定結果に応じて驚き判定値dが設定される。より詳細には、例えば「ワッ」「ウワッ」などの驚きを表す声や声の上擦り、顔の表情などが総合的に判断されて、一つの事象に心を奪われた状態の程度が認識され、該程度に応じて驚き判定値dが設定される。ここで、一つの事象に心を奪われた状態の程度が強いほど驚きが強いと判定され、驚き判定値dにより大きな値が設定される。もっとも驚きが強い(驚愕)と判定された場合には、驚き判定値として0.9が設定される。一方、もっとも驚きが弱い(冷静)と判定された場合には、驚き判定値dとして0.1が設定される。すなわち、驚き判定値dは、運転者の驚きの程度に応じて0.1〜0.9の範囲で設定される(図11参照)。
次に、ステップS216では、発話音声認識センサ56により検出された運転者の発話音声や顔表情・皮膚温度認識センサ57により検出された運転者の皮膚温度が読み込まれるとともに、メモリに記憶される。
続くステップS218では、ステップS216で読み込まれた発話音声や皮膚温度などに基づいて運転者の怒りの程度が判定され、その判定結果に応じて怒り判定値eが設定される。より詳細には、例えば怒声や顔面紅潮(皮膚温度)などが総合的に判断されて、冷静でない攻撃的な状態の程度が認識され、該程度に応じて怒り判定値eが設定される。ここで、攻撃的な状態の程度が強いほど怒りが強いと判定され、怒り判定値eにより大きな値が設定される。もっとも怒りが強い(激怒)と判定された場合には、怒り判定値として0.9が設定される。一方、もっとも怒りが弱い(冷静)と判定された場合には、怒り判定値eとして0.1が設定される。すなわち、怒り判定値eは、運転者の怒りの程度に応じて0.1〜0.9の範囲で設定される(図11参照)。
次に、ステップS220では、アクセルストロークセンサ11から読み込まれたアクセルストロークが全開位置WOTを超えているか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルストロークが全開位置WOT以下の場合には、一旦、本処理から抜け、通常の駆動力制御および制動力制御が実行される。一方、アクセルストロークが全開位置WOTを超えているときには、ステップS222に処理が移行する。
ステップS222では、上述したステップS102と同様に、ブザー37を駆動して警告音を発するとともに、ディスプレイ38に警告情報などを表示して、アクセルペダルの踏み込み量が全開位置WOTを超えていることを運転者に認識させて、運転者の注意を喚起する。また、ブレーキアクチュエータ36が駆動されてホイールシリンダに供給される油圧が増大され、車両の各車輪に制動力が付与される。さらに、アクセルストロークの増大に伴って、スロットルバルブ35が閉弁側に駆動されて吸入空気量が絞られエンジン出力、すなわち駆動力が低減される。
続くステップS224では、アクセルペダルが第1領域で戻されたか否か、すなわち、全開位置WOTを超えて踏み込まれたアクセルペダルが中間位置Mを超えることなく戻されたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが第1領域で戻された場合には、ステップS226に処理が移行する。一方、アクセルペダルの戻し操作が行われていないときには、ステップS228に処理が移行する。
ステップS226では、アクセル戻し判定値αとして0.1が設定される。その後、ステップS240に処理が移行する。
ステップS228では、アクセルストロークが中間位置Mを超えているか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルストロークが中間位置Mを超えている場合には、ステップS230に処理が移行する。一方、アクセルストロークが中間位置Mを超えていないときには、ステップS224に処理が移行し、第1領域でアクセルペダルの戻し操作が行われるか、またはアクセルストロークが中間位置Mを超えるまで、ステップS224およびステップS228が繰り返して実行される。
ステップS230では、上述したステップS112と同様に、ブザー37を駆動して警告音を発するとともに、ディスプレイ38に警告情報などを表示して、アクセルペダルの踏み込み量が中間位置Mを超えていることを運転者に認識させて、運転者の注意を喚起する。また、ホイールシリンダに供給される油圧がさらに増大され、車両の各車輪に付与される制動力が増大される。また、アクセルストロークの増大に伴って、スロットルバルブ35がさらに閉弁側に駆動されて吸入空気量が絞られエンジン出力、すなわち駆動力が低減される。
次に、ステップS232では、アクセルペダルが第2領域で戻されたか否か、すなわち、中間位置Mを超えて踏み込まれたアクセルペダルがストッパ位置Fに達することなく戻されたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが第2領域で戻された場合には、ステップS234に処理が移行する。一方、アクセルペダルの戻し操作が行われていないときには、ステップS236に処理が移行する。
ステップS234では、アクセル戻し判定値αとして0.5が設定される。その後、ステップS240に処理が移行する。
ステップS236では、アクセルストロークがストッパ位置Fに達したか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルストロークがストッパ位置Fに達している場合には、ステップS238に処理が移行する。一方、アクセルストロークがストッパ位置Fに達していないときには、ステップS232に処理が移行し、第2領域でアクセルペダルの戻し操作が行われるか、若しくはアクセルストロークがストッパ位置Fに達するまで、ステップS232およびステップS236が繰り返して実行される。
ステップS238では、アクセル戻し判定値αとして0.9が設定される。
次に、ステップS240では、運転技量判定値a、先急ぎ判定値b、ストレス判定値c、驚き判定値d、怒り判定値e、およびアクセル戻し判定値αが次式(1)に代入され、踏み間違い判定指数Erが算出される。
Er=α×{a+(b+c+d+e)/4}/2・・・(1)
したがって、踏み間違い判定指数Erは、0.02〜0.81の値をとり得る。また、踏み間違い判定指数Erは、運転技量が低く、先急ぎが強く、ストレスが強く、驚きが強く、怒りが強く、かつアクセルペダルの戻し操作が遅いほど値が大きくなる。逆に、踏み間違い判定指数Erは、運転技量が高く、先急ぎが弱く、ストレスが弱く、驚きが弱く、怒りが弱く、かつアクセルペダルの戻し操作が早いほど値が小さくなる。
続いて、図10に示されるステップS242では、踏み間違い判定指数Erがしきい値x(例えば、0.3)未満であるか否かについての判断が行われる。ここで、踏み間違い判定指数Erがしきい値x未満である場合には、ステップS244に処理が移行する。一方、踏み間違い判定指数Erがしきい値x以上のときにはステップS246に処理が移行する。
踏み間違い判定指数Erがしきい値x未満である場合には、運転者は比較的運転技量が高く、かつ冷静な状態であると判定することができるため、アクセルペダルの踏み込みは運転者の意思に基づく正しい操作であり、運転者は加速を望んでいると判断することができる。すなわち、この場合には、警告音、警告表示、全開位置WOTを超える際のアクセルペダルの節度感、および/または駆動力低減や制動力付与による車両加速度の減少を運転者が冷静に認識して、アクセルペダルの踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えを咄嗟に行ったものと推測される。
したがって、この場合には、上述したステップS108と同様に、アクセルペダルの踏み戻しに伴って駆動力を復帰させること(第1の制御態様)が好ましい。そのため、第1領域では、アクセルストロークの減少に伴って、スロットルバルブ35が開弁側に駆動されて吸入空気量が増大されエンジン出力、すなわち駆動力が増大される(ステップS244)。さらにアクセルペダルが戻され、アクセルストロークが全開位置WOT以下になったときには、通常のスロットル開度特性に基づいてスロットルバルブ35が開閉される(図5参照)。一方、第1領域でアクセルペダルが戻された場合には、アクセルストロークの減少に伴って車輪に付与される制動力が減少される。なお、アクセルストロークが全開位置WOT以下の領域では、通常の制動制御が実行される。その後、本処理から一旦抜ける。
ステップS242は否定された場合、ステップS246では、踏み間違い判定指数Erがしきい値x以上、かつしきい値y(例えば、0.6)以下であるか否かについての判断が行われる。ここで、踏み間違い判定指数Erがしきい値x以上かつしきい値y以下である場合には、ステップS248に処理が移行する。一方、踏み間違い判定指数Erがしきい値yより大きいときにはステップS264に処理が移行する。
踏み間違い判定指数Erがしきい値x以上かつしきい値y以下である場合には、運転者の運転技量は高くなく、かつ比較的冷静さを失っている状態であると判定することができるため、アクセルぺダルの踏み込みは運転者の意思に基づくものではなく、ブレーキペダルとの踏み間違いであると判断される。すなわち、この場合には、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた運転者が、心理的な動揺や運転技量の低さなどにより、警告音、警告表示、アクセルペダルの節度感、および/または駆動力低減や制動力付与による車両加速度の減少を認識できなかったか、若しくは認識できたとしても、アクセルペダルの踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えを咄嗟に行うことができなかったものと推測される。
したがって、この場合には、アクセルペダルの踏み戻しに伴って駆動力を復帰させることは好ましくない。そのため、上述したステップS118と同様に、ステップS248において、アクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度、すなわち駆動力が保持される(第2の制御態様、図6参照)。
続くステップS250では、アクセルペダルが全開位置WOTを下回る位置まで戻されたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが全開位置WOTを下回る位置まで戻された場合には、ステップS252に処理が移行する。一方、アクセルペダルが全開位置WOTを下回る位置まで戻されていない場合には、ステップS250に処理が移行し、アクセルペダルが全開位置WOTを下回る位置に戻されるまで、第2領域でアクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度が保持される(図6の実線参照)。
続いて、ステップS252では、全開位置WOTを下回る位置まで戻されたアクセルペダルが、再び踏み込まれたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが再び踏み込まれた場合には、ステップS258に処理が移行する。一方、アクセルペダルが踏み込まれていないときにはステップS254に処理が移行する。
ステップS254では、正規のアクセルストローク−スロットル開度特性において、アクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度に対応するアクセルストローク(図6の点E)までアクセルペダルが戻されたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが当該アクセルストロークまで戻された場合にはステップS256に処理が移行する。一方、アクセルペダルがまだ戻されていないときには、ステップS252に処理が移行し、アクセルペダルが再び踏み込まれるか、若しくは上記アクセルストロークまでアクセルペダルが戻されるまで、ステップS252およびステップS254が繰り返して実行される。なお、その間、第2領域でアクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度が保持される(図6の実線参照)
ステップS256では、正規のアクセルストローク−スロットル開度特性に基づいてスロットル開度が定められる。その後、本処理から一旦抜ける。
ステップS252が肯定された場合、ステップS258では、アクセルストローク−スロットル開度特性が変更される。すなわち、図6に破線で示されるように、アクセルペダルが再び踏み込まれた時点でのスロットル開度と全開位置WOTでのスロットル開度とを結ぶ直線が新たなアクセルストローク−スロットル開度特性として設定される。そして、該アクセルストローク−スロットル開度特性に基づいてスロットル開度が定められる。
続くステップS260では、アクセルペダルの戻し操作が行われたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルの戻し操作が行われた場合には、ステップS248に処理が移行し、戻し操作が行われた時点でのスロットル開度が保持される(図6の一点鎖線参照)。その後、上述したステップS250〜ステップS260に則り処理が実行される。一方、アクセルペダルの戻し操作が行われていない場合には、ステップS262に処理が移行する。
ステップS262では、アクセルペダルが全開位置WOTまで踏み込まれたか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルが全開位置WOTまで踏み込まれた場合には、正規のアクセルストローク−スロットル開度特性に基づいてスロットル開度が定められた後、本処理から一旦抜ける。一方、アクセルペダルが全開位置WOTまで踏み込まれていないときには、ステップS260に処理が移行し、アクセルペダルの戻し操作が行われるか、若しくはアクセルペダルが全開位置WOTまで踏み込まれるまで、ステップS260およびステップS262が繰り返して実行される。
上記ステップS246が否定された場合、すなわち踏み間違い判定指数Erがしきい値yより大きいときには、運転者の運転技量が低く、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた運転者が心理的なパニック状態にあり、運転者自身では、踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えができない状況にあると推測される。したがって、このような場合には、駆動力を自動的に最小化またはゼロにすること(第3の制御態様)が好ましい。そのため、図7に示されるように、アクセルペダルの踏み込みが解除されてアクセルストロークがゼロになるまで(ステップS266)、スロットルバルブ35が全閉されて吸入空気量が絞られエンジン出力、すなわち駆動力が最小化される(ステップS264)。また、図4に示されるように、アクセルストロークがストッパ位置Fから全開位置WOTまで減少する間は、車輪に制動力が付与されるため、車両が減速される。なお、アクセルストロークが全開位置WOT以下の領域では、通常の制動制御が実行される。すなわち、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて車輪に制動力が付与される。その後、本処理から一旦抜ける。
上述したように、踏み間違いの起こしやすさや踏み間違いを起こしたときの対応力は、その運転者の心理状態、身体状態や運転技量などによって異なる。本実施形態によれば、先急ぎ、ストレス、驚き、怒りなどの心理状態や運転技量などの運転者状態が認識される。そして、アクセルペダルの操作状態に加えて、運転者の状態が総合的に考慮されて踏み間違いが判定されるため、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いをより精度よく判断することが可能となる。
すなわち、踏み間違い判定指数Erは、運転技量が低く、先急ぎが強く、ストレスが強く、驚きが強く、怒りが強く、かつアクセルペダルの戻し操作が遅いほど大きな値をとり、運転技量が高く、先急ぎが弱く、ストレスが弱く、驚きが弱く、怒りが弱く、かつアクセルペダルの戻し操作が早いほど小さな値をとる。
そのため、踏み間違い判定指数Erがしきい値x未満である場合には、運転者は比較的運転技量が高く、かつ冷静な状態であると判定することができるため、警告音、警告表示、全開位置WOTを超える際のアクセルペダルの節度感、および/または駆動力低減や制動力付与による車両加速度の減少を運転者が冷静に認識して、アクセルペダルの踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えを咄嗟に行ったものと推測することができる。したがって、アクセルペダルの踏み込みは運転者の意思に基づく正しい操作であり、運転者は加速を望んでいると判断することができる。
また、踏み間違い判定指数Erがしきい値x以上かつしきい値y以下である場合には、運転者の運転技量は高くなく、かつ比較的冷静さを失っている状態であると判定することができるため、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた運転者が、心理的な動揺や運転技量の低さなどにより、警告音、警告表示、アクセルペダルの節度感、および/または駆動力低減や制動力付与による車両加速度の減少を認識できなかったか、若しくは認識できたとしても、アクセルペダルの踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えを咄嗟に行うことができなかったものと推測することができる。したがって、アクセルぺダルの踏み込みは運転者の意思に基づくものではなく、ブレーキペダルとの踏み間違いであると判断することができる。
一方、踏み間違い判定指数Erがしきい値yより大きいときには、運転者の運転技量が低く、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた運転者が心理的なパニック状態にあり、運転者自身では、踏み込みの解除やブレーキペダルへの踏み替えができない状況にあると推測することができる。したがって、この場合も、アクセルぺダルの踏み込みは運転者の意思に基づくものではなく、ブレーキペダルとの踏み間違いであると判断することができる。
また、踏み間違い判定指数Erがしきい値x未満である場合には、アクセルストロークの減少に伴って、スロットルバルブ35が開弁側に駆動されて吸入空気量が増大されエンジン出力、すなわち駆動力が増大される。踏み間違い判定指数Erがしきい値x以上かつしきい値y以下である場合には、アクセルペダルが戻された時点でのスロットル開度、すなわち駆動力が保持される。また、踏み間違い判定指数Erがしきい値yより大きいときには、アクセルペダルの踏み込みが解除されてアクセルストロークがゼロになるまで、スロットルバルブ35が全閉されて吸入空気量が絞られエンジン出力、すなわち駆動力が最小化される。このように、本実施形態によれば、アクセルペダルの操作状態に加えて、運転者の状態が総合的に考慮されて踏み間違え時の制御態様が決定されるため、運転者の意思に反した車両挙動をより適切に抑制することが可能となる。
また、本実施形態によれば、アクセルペダルが全開位置WOTを超えて踏み込まれた場合には、アクセルストロークの増大に伴って、車輪に付与される制動力が指数関数的に増大される。その結果、車両を減速することができるため、ペダルを踏み間違えたときの安全性をより向上することが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。本実施形態では、駆動力を発生させる機関としてガソリンエンジンを用いたが、ガソリンエンジンに代えて、例えばディーゼルエンジンや電動モータを用いてもよい。またガソリンエンジン(またはディーゼルエンジン)に加えて電動モータを用いてもよい。なお、本実施形態では、駆動力を発生させる機関としてガソリンエンジンを用いたため、スロットル開度が駆動制御量に相当したが、ガソリンエンジンに代えてディーゼルエンジンを用いた場合には燃料噴射量が駆動制御量に相当する。また、ガソリンエンジンに代えて電動モータを用いる電気自動車では、供給電力量が駆動制御量に相当する。さらにガソリンエンジンに加えて電動モータを用いるハイブリッド車では、スロットル開度および供給電力量が駆動制御量に相当する。
また、ECU構成や機能分担は、上記実施形態に限られない。例えば、踏み間違い判定ECU10、走行支援ECU30、および運転者状態認識ECU50は、ハード的に一体化または一部を共有する構成とされていてもよい。
また、認識される運転者の状態や運転者の状態を推定するために用いられる情報を取得するセンサの種類は上記実施形態に限られない。
さらに、上記実施形態では、制御態様を3つの領域で切り替えたが、さらに多くの領域で切り替えるようにしてもよい。
1…走行制御装置、10…踏み間違い処理ECU、11…アクセルストロークセンサ、30…走行支援ECU、35…電子制御式スロットルバルブ、36…ブレーキアクチュエータ、37…ブザー、38…ディスプレイ、50…運転者状態認識ECU、51…運転技量判定部、52…先急ぎ判定部、53…ストレス判定部、54…驚き判定部、55…怒り判定部。