JP4556341B2 - 液晶表示装置および電子機器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置および電子機器に関し、より詳細には液晶表示装置の開口率を向上させて高精細化を実現するための液晶材料の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶プロジェクタ等の投写型液晶表示装置において光変調装置として用いられる液晶ライトバルブには、主としてアクティブマトリクス型の液晶表示装置が使用されているが、この液晶ライトバルブについては、高精細化、小型化、そして広視野角化が強く要求されている。
近年、液晶表示装置の広視野角化を図る手段の一つとして、基板に対して面内方向の横電界を発生させ、この横電界で液晶分子を基板に平行な面内で回転させることで光スイッチング機能を持たせるインプレイン・スイッチング(In-plane Switching, 以下IPSと略記する)技術が実用化されている。そして、近年上記IPS技術をさらに改良した形のフリンジフィールド・スイッチング(Fringe-Field Switching, 以下FFSと略記する)技術が、、"High-Transmittance, Wide-Viewing-Angle Nematic Liquid Crystal Display Controlled by Fringe-Field Switching", S.H.Lee et al., ASIA DISPLAY 98, p.371-374, "A High Quality AM-LCD using Fringe-Field Switching Technology", S.H.Lee et al., IDW'99, p.191-194 などに発表されている。
【0003】
図7はIPS方式とFFS方式の概念の違いを示す図であって、図7(a)はIPS方式、図7(b)はFFS方式をそれぞれ示している。一対の基板200、201間の液晶分子202が一対の電極203,204による横電界Eで駆動される点は同様であるが、セルギャップをd、電極幅をw、電極間距離をLとすると、これらの寸法の関係が、IPS方式ではL/d>1かつL/w>1であるのに対し、FFS方式ではL/d<1かつL/w<1、またはL/d=0かつL/w=0である。すなわち、IPS方式ではセルギャップや電極幅よりも電極間距離が大きいのに対し、FFS方式ではセルギャップや電極幅よりも電極間距離が小さい(図7(a)のIPS方式における電極203と電極204が充分に接近した状態)か、もしくは電極間距離が0、言い換えると、図7(b)に示すように一方の電極204(−極)の上方に絶縁層205を介して他方の電極203(+極)を積層した形態の電極構成を採用している。
【0004】
この電極構成の違いによって発生する電界の方向が若干変わり、IPS方式での電界方向は電極が対向する方向(図中Y方向)であるが、FFS方式、特に図7(b)の電極構造においては、電極203,204が積層されているため、横方向(図中Y方向)に加えて、特に電極203の縁の近傍で基板面に垂直な方向(図中Z方向)にも強い電界成分を持っている。その結果、IPS方式では電極203,204間に位置する液晶分子202は駆動されても電極の上方に位置する液晶分子はほとんど駆動されないが、FFS方式の場合、電極203,203間に位置する液晶分子は勿論のこと、電極203の上方に位置する液晶分子202も駆動されることになる。したがって、FFS方式においては、電極をインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)等の透明導電膜で形成すれば、電極の部分も表示に寄与させることができ、同じ条件のIPS方式の液晶表示装置に比べて開口率を大きくできるという利点を持っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成のFFS方式を採用するならば、電極上の液晶を駆動できるのでIPS方式よりも開口率を高めることができ、明るい画像が得られるとともに、表示の高精細化が可能である。しかし、高開口率化が可能なFFS方式といえども、更に画素を小型化して高精細化しようとすると、画素電極の中央部や画素電極間における液晶分子の配列の乱れ(ディスクリネーション)が無視できなくなるという課題があった。
横電界駆動の液晶表示装置におけるディスクリネーションは、画素電極と共通電極との間に発生する電界が液晶に作用できる範囲が限られているために起こるものであり、このディスクリネーションを低減するために画素電極の設計を最適化する等の手法があるが、高開口率を維持しながらディスクリネーションを低減するのには限界があり、電極から離れた位置の弱電界でも駆動することが可能な液晶材料を備えた液晶表示装置の開発が求められていた。
しかしながら、従来一般に用いられてきた縦電界方式(TNモードなど)の液晶表示装置に好適な液晶材料の研究はなされていたが、上記IPS方式やFFS方式のような横電界駆動の液晶表示装置に好適な液晶材料についての検討は現在まで少なかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、電極間に発生させた横電界により液晶を駆動して表示を行う液晶表示装置に用いて好適な液晶材料の特性を明らかにするとともに、この液晶材料を用いることによりディスクリネーションを防止して高精細化を可能とした液晶表示装置を提供することを目的とする。
また本発明は、上記高精細表示が可能な液晶表示装置を表示部に備えた電子機器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は、液晶層を構成する液晶分子が横電界によって駆動される場合の液晶分子の挙動を最適化することによって弱電界でも駆動可能な液晶材料とし、電界の発生位置から離れた液晶分子も確実に駆動できるようにすることによって液晶分子の配列の乱れであるディスクリネーションを防止することができると考えた。
そして、本発明者は、上記液晶材料の特性について鋭意検討を重ねた結果、液晶材料の弾性定数を適切に設定することによって、横電界により駆動される液晶分子の挙動を最適化することが可能であり、これにより弱電界でも駆動可能な液晶材料とすることができ、この弱電界での駆動が可能な液晶材料を用いることにより、横電界により液晶が駆動される液晶表示装置におけるディスクリネーションを防止して液晶表示装置の高精細化を実現できることを知見した。
【0008】
すなわち、本発明の液晶表示装置は、互いに対向する一対の基板間に液晶が挟持され、前記一対の基板の少なくとも一方に共通電極と画素電極とを有し、前記液晶は共通電極と画素電極とで発生する横電界により駆動される液晶表示装置であって、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板にフリンジフィールド・スイッチング方式の電極配置が採用されており、フリンジフィールド・スイッチング方式の電極配置を有する基板が、共通電極と該共通電極の一部の上方に絶縁層を介して形成された電極幅が5μm以下の画素電極とを有し、前記液晶を構成する液晶材料のスプレーモードの弾性定数K11、ツイストモードの弾性定数K22及びベンドモードの弾性定数K33が、K33/K11≧1.5かつ1.7≦(K33/K22−K33/K11)≦2.7なる関係式を満たし、平均透過率が0.6以上である。
【0009】
外部電界に応じた液晶分子の挙動は一般にスプレーモード(広がり)、ツイストモード(ねじり)、ベンドモード(曲がり)のそれぞれの歪みに対する弾性定数K11、K22、K33によって与えられ、特に、弾性定数比K33/K11、K33/K22は、立ち上がりの急峻性等を左右するパラメータである。そして、本発明に係る液晶は、この弾性定数比を横電界駆動の液晶表示装置に最適化することにより、電極から離れた位置の弱い電界でも駆動可能とされている。具体的には、上記液晶材料の弾性定数比K33/K11およびK33/K22を上記関係式を満たすように設定することにより、横電界により駆動される際に弱電界でも駆動可能な液晶を構成することが可能であり、その結果、この液晶を備える液晶表示装置において、電界の作用する範囲を広げることができ、画素電極中央部や電極間におけるディスクリネーションを防止することができる。尚、本発明者において上記弾性定数比の関係式における数値範囲は、本発明者が行ったシミュレーションにより導出されたものであり、前記数値範囲が最適であることの根拠は後に詳述する。
【0010】
本発明の液晶表示装置においては、液晶材料のスプレーモードの弾性定数K11、ツイストモードの弾性定数K22及びベンドモードの弾性定数K33が、1.7≦(K33/K22−K33/K11)≦2.7なる関係式を満たすことにより、横電界により駆動される際の液晶材料の挙動をより最適化することができ、したがって、液晶表示装置におけるディスクリネーションをより効果的に防止して、液晶表示装置の開口率を高め、より高精細な液晶表示装置を実現することできる。
【0011】
次に、本発明の液晶表示装置においては、前記液晶の駆動電圧を5V以下とすることができる。
本発明の係る構成によれば、弱電界でも駆動可能な液晶を備えたことにより、画素電極と共通電極とによって発生される電界を弱くした場合でも液晶を駆動することができるので、電界を発生させるための液晶表示装置の駆動電圧を5V以下に下げることができる。従って、液晶表示装置の低消費電力化を実現することができる。また、本発明の構成によれば、5V以下の駆動電圧により発生された電界によっても液晶の配向度が飽和するので、電極への駆動電圧の変動により液晶に作用する電界が変動した場合であっても、液晶の配向度が変化しないため、表示の明るさにむらを生じることがなく、均一な明るさの液晶表示装置を実現することができる。
【0012】
本発明の液晶表示装置においては、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板にフリンジフィールド・スイッチング方式の電極配置が採用されており、フリンジフィールド・スイッチング方式の電極配置を有する基板が、共通電極と該共通電極の一部の上方に絶縁層を介して形成された電極幅が5μm以下の画素電極とを有する構成とする。本発明の構成におけるフリンジフィールド・スイッチング(FFS)方式の電極配置とは、セルギャップをd、電極幅をw、電極間距離をLとすると、L/d<1かつL/w<1の構成、すなわちセルギャップよりも電極間距離が小さく、電極幅よりも電極間距離が小さい構成、またはL/d=0かつL/w=0(l=0)の構成、すなわち共通電極の一部の上方に絶縁層を介して画素電極を形成した構成を指す。特に後者の構成を採用した場合、共通電極の面積を広くとる(例えば共通電極をベタで形成する)ことができ、以下のような利点がある。
【0013】
FFS方式の電極配置を有する側の基板上の画素電極を透明導電膜で形成し、共通電極を金属膜で形成すると、この共通電極が電極としてのみならず反射層としても機能する。したがって、他方の基板上の画素電極と共通電極をともに透明導電膜で形成すれば、別の反射層や外付けの反射板などを追加することなく、反射型液晶表示装置が実現できる。
【0014】
さらに、画素電極と共通電極との間に介在する絶縁層中に、光を散乱させるためのビーズ等の粒子を添加したり、表面に凹凸を形成するならば、この絶縁層が光散乱層としても機能する。この構成によれば、新たに光散乱層を追加することなく、全面にわたって均一に明るい反射型液晶表示装置を実現することができる。
【0015】
本発明の液晶表示装置の液晶の駆動方式としては、インプレイン・スイッチング(IPS)方式、FFS方式のいずれを用いても良いが、FFS方式を採用することがより好ましい。FFS方式を採用するならば、上述のように画素電極の上方に位置する液晶分子も駆動されるので、電極を透明電極で構成することにより電極の部分も表示に寄与させることができ、同じ条件のIPS方式に比べて開口率を大きくすることができるので、より明るい表示を得ることができる。
【0016】
本発明の液晶表示装置においては、前記画素電極の電極幅を5μm以下とすることにより、画素電極の中央部に位置する液晶にまで画素電極端部からの電界を作用させることができるので、画素電極上に位置する液晶の駆動をより円滑にし、電界が作用しにくい電極中央部でも液晶を確実に駆動することができるので、全面にわたって均一な明るさの液晶表示装置を実現することができる。
【0017】
次に、本発明の電子機器は、先に記載の液晶表示装置を表示部に備えたことを特徴とする。本発明の係る構成によれば、より高精細の液晶表示部を備えた電子機器を実現することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
(液晶表示装置)
本実施形態の液晶表示装置は、透過型TFTカラー液晶表示装置の例であり、図1は、下基板の構成を示す平面図、図2は、図1のA−A線に沿う部分断面図である。本実施の形態では下基板にFFS方式の電極構成を採用している。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0020】
本実施の形態の液晶表示装置は、上基板、下基板からなる一対の基板間に液晶が挟持されている。下基板1の構成は図1に示すように、図中縦方向に延在する複数のデータ線3と図中横方向に延在する複数のゲート線3とが互いに交差するようにマトリクス状に設けられている。図中各画素の左下の部分においてゲート線3が画素の内側に向けて分岐し、さらにゲート線3に沿って延在する部分がゲート電極4となり、画素スイッチング用の薄膜トランジスタ5(Thin Film Transistor, 以下TFTと略記する)を構成している。そして図中縦方向に延在する複数本(図1においては10本)の電極指6aを有する櫛歯状の画素電極6が設けられ、画素電極6の各電極指6a間を連結する部分がゲート電極4と平面的に重なっている。
【0021】
図2に示す断面構造によると、下基板1と上基板7との間に液晶22が挟持されて構成されている。下基板1の構成は、ガラス等からなる基板13上に、ITO等の透明導電膜からなり、電極として機能する共通電極14が形成され、この共通電極14に透光性材料からなる絶縁層15が形成され、絶縁層15上にはITO等の透明導電膜からなる画素電極6が形成されている。
そして、画素電極6を覆うように基板全面に垂直配向処理がなされた配向膜16が形成されている。配向膜16の材料としては、ポリイミド、界面活性剤、カップリング剤、金属錯体等を用いることができる。さらに、金属膜と直鎖構造の硫黄化合物分子により金属膜表面に形成された単分子膜とを含む配向膜を用いることもできる。また、ラビング処理は行っても行わなくても良い。
【0022】
一方、上基板7は、図2に示すようにガラス等からなる透明基板17上に例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の着色層と遮光層(ブラックマトリクス)とを備えたカラーフィルター18が形成され、カラーフィルター18上にはカラーフィルタによって形成された凹凸を平坦化するための平坦化膜19が形成されている。そして、平坦化膜19を覆うように基板全面に配向膜21が形成されている。この配向膜21の材料は下基板1側と同様のものを用いることができる。
【0023】
本実施形態では、液晶の駆動に横電界を用いているので、視野角を広くすることができるとともに、光漏れ等の不良が発生することがない。さらに本実施の形態の場合、同じ横電界モードの基板でもFFS方式の電極構成を採用しているため、画素電極6上の液晶も駆動することが可能であり、画素電極6の部分も表示に寄与させることができるので、IPS方式を用いた場合と比べて開口率を向上させることができる。
また、FFS方式の中でも、本実施の形態のように積層型の構成を用いた場合、共通電極14をベタで形成することができるので、極めて容易に共通電極14を形成することができる。さらに、共通電極14をアルミニウムや銀などの高反射率の金属膜で形成するならば、この共通電極14を反射層として用いることができるので、FFS方式の特徴を生かして反射型液晶表示装置を極めて合理的に実現することができる。
【0024】
本実施形態では、下基板1の共通電極14と画素電極6で発生する横電界によって液晶22が駆動されるようになっており、この液晶22はその弾性定数がK33/K11≧1.5かつ、1.1≦(K33/K22−K33/K11)≦2.7なる関係式を満たすように構成されている。この構成により液晶22は低電圧でも駆動することが可能になり、作用する電界が比較的弱くなる画素電極6の上方に位置する液晶22も確実に駆動することができる。従って、本実施形態の液晶表示装置は、画素の全面にわたって均一な透過率を得ることができるので、均一でかつ明るい表示を得ることができる。
【0025】
さらに、上記弾性定数を、K33/K11≧1.5かつ、1.7≦(K33/K22−K33/K11)≦2.7なる関係式を満たすように設定するならば、電界の発生位置から離れた液晶もより確実に駆動することができるので、画素全面にわたって液晶の配向状態を揃えることができる。従って、より均一で明るい表示を得ることができる。
【0026】
(電子機器)
本発明に係る液晶表示装置を用いた電子機器の一例として、投射型表示装置の構成について、図5を参照して説明する。
【0027】
図5において、投射型表示装置1100は、本発明の液晶表示装置を3個用意し、夫々RGB用の液晶表示装置962R、962G及び962Bとして用いた投射型液晶表示装置の光学系の概略構成図を示す。
【0028】
本例の投射型表示装置の光学系には、光源装置920と、均一照明光学系923が採用されている。そして、投射型表示装置は、この均一照明光学系923から出射される光束Wを赤(R)、緑(G)、青(B)に分離する色分離手段としての色分離光学系924と、各色光束R、G、Bを変調する変調手段としての3つのライトバルブ925R、925G、925Bと、変調された後の色光束を再合成する色合成手段としての色合成プリズム910と、合成された光束を投射面100の表面に拡大投射する投射手段としての投射レンズユニット906を備えている。また、青色光束Bを対応するライトバルブ925Bに導く導光系927も備えている。
【0029】
均一照明光学系923は、2つのレンズ板921、922と反射ミラー931を備えており、反射ミラー931を挟んで2つのレンズ板921、922が直交する状態に配置されている。均一照明光学系923の2つのレンズ板921、922は、それぞれマトリクス状に配置された複数の矩形レンズを備えている。光源装置920から出射された光束は、第1のレンズ板921の矩形レンズによって複数の部分光束に分割される。そして、これらの部分光束は、第2のレンズ板922の矩形レンズによって3つのライトバルブ925R、925G、925B付近で重畳される。従って、均一照明光学系923を用いることにより、光源装置920が出射光束の断面内で不均一な照度分布を有している場合でも、3つのライトバルブ925R、925G、925Bを均一な照明光で照明することが可能となる。
【0030】
各色分離光学系924は、青緑反射ダイクロイックミラー941と、緑反射ダイクロイックミラー942と、反射ミラー943から構成される。まず、青緑反射ダイクロイックミラー941において、光束Wに含まれている青色光束Bおよび緑色光束Gが直角に反射され、緑反射ダイクロイックミラー942の側に向かう。赤色光束Rはこのミラー941を通過して、後方の反射ミラー943で直角に反射されて、赤色光束Rの出射部944からプリズムユニット910の側に出射される。
次に、緑反射ダイクロイックミラー942において、青緑反射ダイクロイックミラー941において反射された青色、緑色光束B、Gのうち、緑色光束Gのみが直角に反射されて、緑色光束Gの出射部945から色合成光学系の側に出射される。緑反射ダイクロイックミラー942を通過した青色光束Bは、青色光束Bの出射部946から導光系927の側に出射される。本例では、均一照明光学素子の光束Wの出射部から、色分離光学系924における各色光束の出射部944、945、946までの距離がほぼ等しくなるように設定されている。
【0031】
色分離光学系924の赤色、緑色光束R、Gの出射部944、945の出射側には、それぞれ集光レンズ951、952が配置されている。したがって、各出射部から出射した赤色、緑色光束R、Gは、これらの集光レンズ951、952に入射して平行化される。
このように平行化された赤色、緑色光束R、Gは、ライトバルブ925R、925Gに入射して変調され、各色光に対応した画像情報が付加される。すなわち、これらの液晶装置は、図示を省略している駆動手段によって画像情報に応じてスイッチング制御されて、これにより、ここを通過する各色光の変調が行われる。一方、青色光束Bは、導光系927を介して対応するライトバルブ925Bに導かれ、ここにおいて、同様に画像情報に応じて変調が施される。尚、本例のライトバルブ925R、925G、925Bは、それぞれさらに入射側偏光手段960R、960G、960Bと、出射側偏光手段961R、961G、961Bと、これらの間に配置された液晶装置962R、962G、962Bとからなる液晶ライトバルブである。
【0032】
導光系927は、青色光束Bの出射部946の出射側に配置した集光レンズ954と、入射側反射ミラー971と、出射側反射ミラー972と、これらの反射ミラーの間に配置した中間レンズ973と、ライトバルブ925Bの手前側に配置した集光レンズ953とから構成されている。集光レンズ946から出射された青色光束Bは、導光系927を介して液晶装置962Bに導かれて変調される。各色光束の光路長、すなわち、光束Wの出射部から各液晶装置962R、962G、962Bまでの距離は青色光束Bが最も長くなり、したがって、青色光束の光量損失が最も多くなる。しかし、導光系927を介在させることにより、光量損失を抑制することができる。
【0033】
各ライトバルブ925R、925G、925Bを通って変調された各色光束R、G、Bは、色合成プリズム910に入射され、ここで合成される。そして、この色合成プリズム910によって合成された光が投射レンズユニット906を介して所定の位置にある投射面100の表面に拡大投射されるようになっている。
また、図示を省略するが、液晶装置と偏光手段とを離間形成することにより、液晶装置と偏光手段との間には空気層ができるため、冷却手段を設け、液晶装置と偏光手段との間に冷風等の送風を送り込むことにより、液晶装置の温度上昇をさらに防ぐことができ、液晶装置の温度上昇による誤動作を防ぐことができる。
【0034】
以上説明した本実施形態は、液晶駆動方式としては便宜上、アクティブマトリクス方式の透過型液晶装置に用いられる液晶パネルとして説明したが、本発明の適用される液晶表示装置は、横電界により液晶を駆動する方式であれば問題なく適用することができるので、画像表示方式は前記の実施形態に限定されるものではなく、カラー表示、モノクロ表示どちらでも適応でき、また、透過型に限らず、反射型、半透過反射型、または投影型などであってもよいことは言うまでもない。
【0035】
(他の電子機器)
上記の各実施形態の液晶装置(電気光学装置)を用いた電子機器の他の例として、小型携帯情報端末等の携帯電子機器の構成について、図6を参照して説明する。
図6(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図6(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の液晶表示装置を用いた液晶表示部を示している。
図6(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図6(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は上記の液晶表示装置を用いた液晶表示部を示している。
図6(c)は、ワープロ、パソコン、PDA(Parsonal Disital Assistant )などの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図6(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は上記の液晶表示装置を用いた液晶表示部を示している。
【0036】
図6(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施の形態の液晶装置を用いた液晶表示部を備えているので、電極から離れた位置の弱電界でも駆動可能な液晶を採用することでディスクリネーションを防止することにより高精細化に対応した表示部を備える電子機器を実現することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
【実施例】
本発明者は、本発明の効果を検証するためのシミュレーションを行った。以下ではその結果について説明する。
【0038】
(実施例1)
本実施例では、図1及び図2に示す構成の液晶表示装置において、基板間に挟持される液晶の弾性定数比をパラメータとして変化させ、これによる液晶表示装置の透過率の変化を導出した。シミュレーションにあたっての条件として、画素電極幅wを5μm、画素電極間隔mを5μm、画素電極と共通電極との間の絶縁膜の膜厚を150nmとした。また、セルギャップdは3μmとした。
【0039】
まず、上記液晶表示装置において、液晶は基板面に平行な方向に配向させたものとし、電界印加時の液晶材料の挙動を表すパラメータとして、一般に用いられており、かつ計測可能である弾性定数比K33/K11、K33/K22およびこれらの差(K33/K22−K33/K11)を採用し、これらのパラメータを変化させることによる液晶表示装置の透過率の変化を導出した。
K33,K22,K11は液晶の物性値としてそれぞれ実際に合成できる範囲が決まっている。例えば、ある液晶分子材料の弾性定数K33は他の液晶分子材料の弾性定数K11の2倍までの液晶材料しか合成できなかったり、ある液晶分子材料の弾性定数K33は他の液晶分子材料の弾性定数K11の3倍までの液晶材料が開発できるなど。従って、実際の材料を考慮し、また値の無次元化を考慮しK33/K11,K33/K22をパラメータとして採用した。またこのパラメータの比はFFS方式の液晶モードを考える上で最適なパラメータである。
【0040】
まず、パラメータとして(K33/K22−K33/K11)を変化させた場合の液晶表示装置の透過率の変化を検証するために、K33/K11を1.9に固定して、表1に示すように(K33/K22−K33/K11)の値を1.0〜2.8の範囲で変化させた場合の透過率を導出した。表1にシミュレーションの結果を示し、図3に(K33/K22−K33/K11)=2.5,1.0とした場合のそれぞれの画素電極近傍における透過率分布を示す。
次に、K33/K11を変化させた場合の液晶表示装置の透過率の変化を検証するために(K33/K22−K33/K11)の値を2.5に固定して、K33/K11の値を1.0〜1.9の範囲で変化させた場合の透過率を導出した。
表2にこのシミュレーションの結果を示す。
【0041】
透過型の液晶表示装置として用いる場合には、その平均透過率が0.6以上であることが必要である。これは、平均透過率が0.6未満の場合には、平面視した際に楔形に配置されている電極形状の端部には、通常の電界方向には電界は発生しないことから、液晶分子の配向が乱れて透過率が低下し非常に暗いパネル表示となってしまう。また、平均透過率が0.6では、0.6に満たない透過率の場所も存在する。これらのことから、上記作用が平均透過率0.6以下のものは著しく大きいことから、明るい表示を得るためには平均透過率0.6以上が望まれる。
表1に示すように、1.1≦(K33/K22−K33/K11)≦2.7とされた液晶表示装置においては、0.6以上の平均透過率が得られることが確認された。また、1.7≦(K33/K22−K33/K11)≦2.7とするならば、0.65以上の高い平均透過率が得られることが確認された。そして、(K33/K22−K33/K11)=2.5とするならば、平均透過率0.7の明るい表示が可能であることが確認された。
また、表2に示すように、K33/K11が1.5以上とされた場合には、0.65以上の平均透過率が得られるが、K33/K11が1.5未満の場合には、(K33/K22−K33/K11)を上記範囲とした場合であっても、0.55以下の平均透過率しか得られないことが確認された。
【0042】
図3は、1本の電極指を中心としてその幅方向の透過率分布を示すグラフであり、横軸は電極指の中心からの距離を示し、縦軸は透過率を示している。そして、図3に符号30で示す曲線は、(K33/K22−K33/K11)=2.5とした場合の透過率分布を示す曲線であり、符号31で示す曲線は、(K33/K22−K33/K11)=1.0とした場合の透過率分布を示す曲線である。
図3に示すように、符号30で示されている(K33/K22−K33/K11)=2.5とした液晶表示装置の透過率分布は、符号31で示されている(K33/K22−K33/K11)=1.0とした液晶表示装置の透過率分布と比較して、平均透過率および透過率分布のいずれにおいても優れたものであり、特に、画素電極の上方における透過率の落ち込みが小さく、優れた透過特性を備えた液晶表示装置であることがわかる。以上から、本発明に係る液晶表示装置は、平均透過率及び透過率分布において優れた特性を有することが確認された。
【0043】
【表1】
Figure 0004556341
【0044】
【表2】
Figure 0004556341
【0045】
(実施例2)
本例では、画素電極幅を規定することによる効果を検証するために、図1および図2に示す構成の液晶表示装置において画素電極幅wおよび駆動電圧を変化させた場合の透過率の変化をシミュレーションにより導出した。シミュレーションにあたっての条件として、画素電極間隔mを5μm、画素電極と共通電極との間の絶縁膜の膜厚を1500Åとした。また、セルギャップdは3μmとした。また、液晶の弾性定数比は、それぞれK33/K11=1.9、(K33/K22−K33/K11)=2.5とした。
【0046】
上記構成の液晶表示装置について、画素電極幅wおよび駆動電圧を変化させて透過率を導出した結果を図4に示す。図4に示すグラフの横軸は駆動電圧(V)を示し、縦軸は最大透過率を示している。ここで最大透過率とは、画素内を全面点灯したときの平均透過率の最大を表す。図4に示すグラフから、画素電極幅wを4μm、5μmとした場合には、0.8以上の最大透過率が得られ、かつ5V未満の駆動電圧で透過率が飽和することが確認された。従って、本発明に係る液晶表示装置においては、例えば5Vの駆動電圧で駆動した際に、±0.5V程度の駆動電圧の変動があった場合にも安定して高い透過率が得られることが確認された。
一方、画素電極幅wを6μm、7μmとした場合には、駆動電圧を6Vまで上げてもそれぞれ0.55(w=6μm)、0.4(w=7μm)の最大透過率しか得られず、しかも、駆動電圧に対して最大透過率が飽和せず、駆動電圧の上昇に伴って透過率が上昇する傾向となっている。このことは画素電極幅を6μm以上とした場合には、駆動電圧の変動に対して透過率が変動することを示唆している。
【0047】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の液晶表示装置は、基板間に挟持される液晶材料のスプレーモードの弾性定数K11、ツイストモードの弾性定数K22及びベンドモードの弾性定数K33が、K33/K11≧1.5かつ1.7≦(K33/K22−K33/K11)≦2.7なる関係式を満たし、さらに、平均透過率を0.6以上としたので、液晶を低電圧で駆動することができ、これによって画素電極上の液晶も確実に駆動することができ、したがって、ディスクリネーションを防止して画素全面にわたり均一で明るい表示が可能である。
また、上記のように液晶の駆動範囲を広げることができるので、開口率を高めて明るい表示が得られ、高精細化に対応した液晶表示装置を提供することができる。
また本発明によれば、上記の高精細化に対応した液晶表示装置を表示部に備えたことにより、優れた視認性を有する表示部を備えた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の一実施の形態である液晶表示装置の下基板の構成を示す平面図である。
【図2】 図2は、図1に示す液晶表示装置のA−A線に沿う部分断面図である。
【図3】 図3は、本発明の実施例に係る画素電極幅方向の透過率分布を示すグラフである。
【図4】 図4は、本発明の実施例に係る駆動電圧と最大透過率の関係を示すグラフである。
【図5】 図5は、本発明に係る液晶表示装置を備えた電子機器の一例を示す図である。
【図6】 図6(a)〜(c)は、本発明に係る電子機器の他の例を示す図である。
【図7】 図7は、横電界モードの液晶表示装置((a)IPS方式、(b)FFS方式)の原理を説明するための図である。
【符号の説明】
1 下基板
6 画素電極
7 上基板
14 共通電極
22 液晶

Claims (3)

  1. 互いに対向する一対の基板間に液晶が挟持され、前記一対の基板の少なくとも一方に共通電極と画素電極とを有し、前記液晶は共通電極と画素電極とで発生する横電界により駆動される液晶表示装置であって、
    前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板にフリンジフィールド・スイッチング方式の電極配置が採用されており、フリンジフィールド・スイッチング方式の電極配置を有する基板が、共通電極と該共通電極の一部の上方に絶縁層を介して形成された電極幅が5μm以下の画素電極とを有し、
    前記液晶を構成する液晶材料のスプレーモードの弾性定数K11、ツイストモードの弾性定数K22及びベンドモードの弾性定数K33が、K33/K11≧1.5かつ1.7≦(K33/K22−K33/K11)≦2.7なる関係式を満たし、
    平均透過率が0.6以上であることを特徴とする液晶表示装置。
  2. 前記液晶の駆動電圧が5V以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 請求項1または2に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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