JP4555580B2 - 硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイール、その製造方法及び該超砥粒ホイールを用いる研削方法 - Google Patents
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振動を吸収して研削模様の発生を抑制するために、低弾性率のゴムを結合剤とするダイヤモンドホイールを用いることが考えられるが、砥粒の支持剛性が小さいために、研削時に微細な砥粒が結合剤内部に埋没し、結合剤と被削材とが過度に接触して、研削抵抗の上昇により切れ味が低下するという問題がある。特に、硬く加工性の悪い超硬合金のような被加工物の場合には、切れ味が極端に低下する。このために、研磨能率を向上させ、効率的に平滑な鏡面を得ることができる工具の開発が試みられている。
例えば、NC研削加工などの機械加工により高精度に加工された非球面を、その非球面形状を崩すことなく鏡面に研磨仕上げするための非球面研磨工具として、複数に分割構成された研磨ペレット片を弾性部材を介在せしめて貼付皿に円環状に配設し、各研磨ペレット片を被加工面に圧接した状態で被加工体の回転に追従して回転自在に構成するとともに、貼付皿を介して被加工面上を摺動せしめるべく摺動作動自在に構成した非球面研磨工具が提案されている(特許文献1)。また、優れた切れ味を有し、精密仕上げ研磨作業において、研磨能率を著しく向上させ得る砥石として、砥粒を樹脂結合材によって平均粒子径0.5〜5mmの塊状集合体となした複合砥粒を、ゴム弾性配合物中に包蔵せしめ、成形してなる弾性研磨砥石が提案され、砥粒としてWA#180、弾性ゴムとして硬さHS60のクロロプレンゴムを用いた砥石が例示されている(特許文献2)。しかし、これらの砥石は、あらかじめ切削により形成された非球面などを仕上げ研磨するための研磨工具であって、切削のみにより平滑な表面を形成することはできない。また、レジンボンドの砥粒層と台金との間にゴムなどの低弾性率素材の層を設けて振動を吸収させようとすると、砥粒層には振動吸収作用がなく、砥粒層全体が振動する可能性があって、かえって形状精度を悪化させる原因となる。
すなわち、本発明は、
(1)超砥粒層を有する超砥粒ホイールであって、該超砥粒層が、平均粒径が1〜10μmの超砥粒をレジノイド結合剤で固めた顆粒であって、該顆粒の平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下である顆粒を、ゴム結合剤相中に分散してなることを特徴とする硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイール、
(2)レジノイド結合剤が、ポリイミド樹脂である(1)記載の硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイール、
(3)超砥粒層中の超砥粒をレジノイド結合剤で固めた顆粒とゴム結合剤との体積比が、15:85〜95:5である(1)記載の硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイール、
(4)平均粒径1〜10μmの超砥粒をレジノイド結合剤で固めたのち、粉砕することにより、平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下である顆粒とし、該顆粒をゴム結合剤中に分散し、ゴム結合剤を加硫することを特徴とする硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイールの製造方法、
(5)硬脆材料の被研削物を、平均粒径2〜20μmの超砥粒を有する超砥粒ホイールBを用いて精密研削したのち、平均粒径1〜10μmの超砥粒をレジノイド結合剤で固めた平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下である顆粒が、ゴム結合剤相中に分散してなる超砥粒ホイールAを用いて精密研削することによって、超砥粒ホイールBの精密研削後に発生していた研削模様が除去された滑らかな研削面を得ることを特徴とする研削方法、及び、
(6)被研削物の被研削面が、軸対称非球面である(5)記載の研削方法、
を提供するものである。
本発明の超砥粒ホイールに用いる超砥粒に特に制限はなく、例えば、ダイヤモンド砥粒、立方晶窒化硼素(CBN)砥粒などを挙げることができる。本発明に用いる超砥粒の平均粒径は、1〜10μmであることが好ましく、2〜8μmであることがより好ましい。超砥粒の平均粒径が1μm未満であると、超砥粒がレジノイド結合剤に埋没して、十分な研削力が得られないおそれがある。超砥粒の平均粒径が10μmを超えると、研削面の表面粗さが大きくなり、滑らかな表面を得ることが困難になるおそれがある。
本発明において、超砥粒をレジノイド結合剤で固めた顆粒の製造方法に特に制限はなく、例えば、超砥粒と熱硬化性のレジノイド結合剤のプレポリマーを混合し、加圧加熱することにより、超砥粒をレジノイド結合剤で固めることができ、あるいは、超砥粒と熱可塑性のレジノイド結合剤を溶融混練したのち、冷却することにより、超砥粒をレジノイド結合剤で固めることができる。本発明において、超砥粒とレジノイド結合剤の体積比は、20:80〜55:45であることが好ましく、30:70〜45:55であることがより好ましい。超砥粒とレジノイド結合剤の体積比が20:80未満であって、超砥粒の含有量が少ないと、超砥粒ホイールの研削力が不足するおそれがある。超砥粒とレジノイド結合剤の体積比が45:55を超えて、レジノイド結合剤の含有量が少ないと、顆粒における超砥粒の保持力が不足するおそれがある。
本発明において、超砥粒をレジノイド結合剤で固めた顆粒の粒径に特に制限はないが、顆粒の平均粒径が、超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下であることが好ましく、超砥粒の平均粒径の5倍以上で120μm以下であることがより好ましい。顆粒の平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍未満であると、十分な砥粒保持力が得られず、研削力が低下するおそれがある。顆粒の平均粒径が150μmを超えると、研削に作用する顆粒の振動が大きくなり、研削模様が発生するおそれがある。本発明において、超砥粒又は顆粒の平均粒径は、レーザー回折散乱法により求めたD50値である。
本発明において、超砥粒をレジノイド結合剤で固めた顆粒をゴム結合剤相中に分散させる方法に特に制限はなく、例えば、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、可塑剤などを配合した生ゴムに、さらに顆粒を配合して混練し、離型剤を塗布した金型に充填して加熱し、加硫して硬化させることができる。金型には超砥粒ホイールの台金をセットし、生ゴムの加硫による硬化と同時に、台金と超砥粒層からなる超砥粒ホイールを製造することができる。
本発明の超砥粒ホイールによれば、弾性係数の低いゴム結合剤を用いることにより、研削加工時の振動を吸収する効果により研削模様の発生を抑制し、良好な表面平滑性を得ることができる。さらに、適度な超砥粒支持力を有する超砥粒をレジノイド結合剤で固めた顆粒と、振動吸収力を有するゴム結合剤とを組み合わせることにより、超砥粒ホイールの切れ味と被研削物の表面平滑性を同時に向上させることが可能となる。
本発明の研削方法においては、被研削物を、平均粒径2〜20μmの超砥粒を有する超砥粒ホイールを用いて研削したのち、平均粒径1〜10μmの超砥粒をレジノイド結合剤で固めた平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下である顆粒が、ゴム結合剤相中に分散してなる超砥粒ホイールを用いて研削する。被研削物の研削を、平均粒径2〜20μmの超砥粒を有する超砥粒ホイールを用いる第1段の研削と、平均粒径1〜10μmの超砥粒をレジノイド結合剤で固めた平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下である顆粒が、ゴム結合剤相中に分散してなる超砥粒ホイールを用いる第2段の研削に分けて行うことにより、第1段の研削において、被研削物を高い形状精度に加工し、第2段の研削において、高い形状精度を維持したまま、研削模様のない滑らかな研削面を得ることができる。
本発明の研削方法によれば、手磨き法、弾性体を備えた磨き皿、風船ポリッシャー、カーブジェネレーターなどによる煩雑な研磨工程を必要とすることなく、研削工程のみで優れた平滑性を有する鏡面を得ることができる。本発明の研削方法は、従来より鏡面仕上げが難しいとされてきた凹状又は凸状の軸対称非球面を有するレンズ成形用の金型などに特に好適に適用することができる。
実施例1
直鎖型ポリイミド樹脂粉末[デュポン社、ベスペルSP]62.5体積%と、粒径5〜10μmのダイヤモンド砥粒[東名ダイヤモンド工業(株)、人造ダイヤモンドパウダー、IRM]37.5体積%を混合し、440℃で加熱加圧成形して、直径350mm、厚さ4mmの板状物を得た。この板状物を約8枚に割ったのち、粉砕機を用いて粉砕し、分級により篩い目#100を通過し、篩い目#325に留まった粒子として、粒径40〜150μmの顆粒を得た。
アクリロニトリルブタジエンゴム[日本ゼオン(株)、ニポール1042]100重量部、ファーネスブラック65重量部、フタル酸ジオクチル10重量部、酸化亜鉛5重量部、炭酸マグネシウムで表面処理したイオウ0.5重量部、テトラメチルチウラムジスルフィド2重量部、ジベンゾチアジルジスルフィド2重量部の混合物50体積%と、上記の顆粒50体積%を混合し、150℃で20分間加硫して、図1に示す形状の直径75mm、高さ34mmで、外周部分の断面が円弧である超砥粒ホイールAを作製した。同じ配合のアクリロニトリルブタジエンゴム組成物を同じ条件で加硫して得られた試験片は、比重1.19、硬さHS63であった。
直鎖型ポリイミド樹脂粉末[デュポン社、ベスペルSP]62.5体積%と、粒径8〜20μmのダイヤモンド砥粒[東名ダイヤモンド工業(株)、人造ダイヤモンドパウダー、IRM]37.5体積%を混合し、560℃で加熱加圧成形して、超砥粒ホイールAと同一の形状の超砥粒ホイールBを作製した。
炭化タングステンに、直径20mm、深さ0.5mmの凹型の軸対称非球面レンズ用金型の研削を行った。最初に超砥粒ホイールBを用いて、ワーク回転数4,900min-1、ホイール回転数400min-1、ホイール送り速度2mm/min、総切込み量5μmで研削した。高い研削精度で研削されているが、図5に示すような輪帯状の研削模様が発生している。次いで、超砥粒ホイールAを用いて、ワーク回転数4,900min-1、ホイール回転数400min-1、ホイール送り速度2mm/min、総切込み量0.2μmで研削した。高い形状精度を維持したまま、研削模様を除去して、滑らかな研削面を得ることができ、形状偏差は0.2μm以下であった。ここでいう形状偏差とは、設定した半径の値からの狂いの大きさをいう。
2 超砥粒層
3 超砥粒
4 レジノイド結合剤
5 顆粒
6 ゴム結合剤相
Claims (6)
- 超砥粒層を有する超砥粒ホイールであって、該超砥粒層が、平均粒径が1〜10μmの超砥粒をレジノイド結合剤で固めた顆粒であって、該顆粒の平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下である顆粒を、ゴム結合剤相中に分散してなることを特徴とする硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイール。
- レジノイド結合剤が、ポリイミド樹脂である請求項1記載の硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイール。
- 超砥粒層中の超砥粒をレジノイド結合剤で固めた顆粒とゴム結合剤との体積比が、15:85〜95:5である請求項1記載の硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイール。
- 平均粒径1〜10μmの超砥粒をレジノイド結合剤で固めたのち、粉砕することにより、平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下である顆粒とし、該顆粒をゴム結合剤中に分散し、ゴム結合剤を加硫することを特徴とする硬脆材料の精密研削用超砥粒ホイールの製造方法。
- 硬脆材料の被研削物を、平均粒径2〜20μmの超砥粒を有する超砥粒ホイールBを用いて精密研削したのち、平均粒径1〜10μmの超砥粒をレジノイド結合剤で固めた平均粒径が超砥粒の平均粒径の3倍以上で150μm以下である顆粒が、ゴム結合剤相中に分散してなる超砥粒ホイールAを用いて精密研削することによって、超砥粒ホイールBの精密研削後に発生していた研削模様が除去された滑らかな研削面を得ることを特徴とする研削方法。
- 被研削物の被研削面が、軸対称非球面である請求項5記載の研削方法。
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